“う”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
6.9%
6.1%
5.6%
5.5%
4.5%
4.3%
4.1%
4.1%
3.9%
3.5%
(他:2311)51.5%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
すぐの階子段はしごだんあがつて、ふすまをけると、むツとけむりのくらむよりさきに、つくゑまへ
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あめは、庭先にわさきのぼけのはなたると、あか花片はなびらあめたれてばらばらと、とれてちました。
びっこのお馬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
相模灘さがみなだ沿岸えんがん沿ふて、およ波濤はたうつところ、およ船舶せんぱくよこたはるところ
机の上の玉葱たまねぎだの、繃帯ほうたいをした少女の顔だの、芋畠いもばたけの向うの監獄だのはいつのにかどこかへ消えせていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この最後の一首は、磯辺いそべ病院でせられたまくらもとの、手帳に書きのこされてあったというが、末の句をなさずかれたのだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
秋津野あきつぬあさゐるくもせゆけば昨日きのふ今日けふひとおもほゆ 〔巻七・一四〇六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
事実、彼女の心のなかには、あのふしだらな単調な生活にも破壊されず、けっしてむこともなく、絶えず一つの思念を、凝視してゆく活力があった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
で彼らは好んで、不誠実な皮肉な侮辱的な小文の方法に頼って、それを毎日むことなき執拗しつようさをもって、適当な場所にくり返し掲載した。
それでもかまはずまずたゆまずつづけるうちある日彼は虱のやうにへばりついてる席をはなれひよこひよことそばへきてれいの舌たらずみたいに
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
わな/\身悶みもだえするしろあしが、あの、釣竿つりざをつた三にんのやうに、ちら/\とちういたが
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
縁日えんにち金魚きんぎよどんぶりかせて——(こほりへてもいゝ)——のちにひきものにたせてかへ
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
達吉たつきちは、あの、みんなからおくられて、さびしい田舎道いなかみちをいった父親ちちおや姿すがたおもかべました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それではいくら佳句かく好詩こうしができたにしても、る当人の愉快はただ二三同好どうこうの評判だけで、その評判を差し引くと
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はるみじかなに不滅ふめついのちぞと』云々うん/\うたひと自由じいう干渉かんせふるぞ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さて女大学の離縁法は右に記したる七去にして、民法親族編第八百十二条に、夫婦の一方は左の場合に限り離婚の訴を提起することをと記して、
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わたしまれるまえから、このおき時計どけいは、いえにあったので、それだけ、したしみぶかいかんがするのであります。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
依つて更に還つて、但馬たじまの國に船てをし、その國に留まつて、但馬のマタヲの女のマヘツミと結婚してんだ子はタヂマモロスクです。
「うん、そうだ。なんでもそうだよ。ふるいものはむくりむくりとあたらしいものにまれかわって、はじめて活動かつどうするのだ。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
汝の信ずる所正し、そは大いなるもちひさきもすべてこの生をくる者は汝の思ひが未だ成らざるさきに現はるゝかの鏡を見ればなり 六一—六三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
……平和な家庭に温かい父母の愛をけて育った彼が、世俗と縁の遠い書物に没頭し始めたのだから、「放心癖」になるのも自然だったかも知れない。
日本婦道記:小指 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかしその印象を受ける度毎に、その美しい夢のようなものは、容貌の立派な男女のける福で、自分なぞには企て及ばないというような気がする。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
おもひみる天風北溟ほくめい荒濤くわうたうを蹴り、加賀の白山をちてへらず、雪のひづめの黒駒や、乗鞍ヶ嶽駒ヶ嶽をかすめて
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
老人はそこで手をった。するとはたして林の中と土手の蔭から二人の武士が、見えぬ手に引かれでもしたように鷺足さぎあしをして進んで来た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
でね、此を聞くと、人のい、気の優しい、哥太寛の御新姐ごしんぞが、おゝ、と云つて、そでひらく……主人もはた、と手をつて、
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宇治はき里であると名をさえ悲しんだ古人もあるのに、またこのように心をおひかれになるというのも、八の宮の姫君たちがおいでになるからである。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
からず面白おもしろからずくらしたきねがひなるに、春風はるかぜふけばはなめかしき、枯木かれきならぬこヽろのくるしさよ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くにも人目ひとめはぢれば二かい座敷ざしきとこなげふしてしのなみだ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるごろからなかのいい三にんは、つれあって、ちの田川先生たがわせんせいをおたずねしたのであります。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
貴下きか委任いにんけたる紀念塔きねんたふ建立けんりつは、首尾しゆびよく成就じやうじゆしたれども、その歸途きと
何万なんまんというものが、ぞろぞろかみさまのところあつまってて、めいめい、おいいわたしをけました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ルピック氏——なにはともあれ、今日は帰ったほうがよかろう。わしは、なるべく日曜までいることにする。そうしたら、今日のめ合わせをしよう。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
るといつかのように、二のからすが、うえまって、一のからすが、またなにやらめているのです。
一本のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
御維新ごゐしん以来このかた城趾しろあとくさへる、ほりまる、むらさとくなりましたところ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれはどこへいったら、あれとおなじいや、ふでっているだろうかと、そればかりおもっていたのでありました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
薄汚うすぎたなばあさんが一ぴきもんっている、はなかめくびうごきを見詰みつめていた千きち
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ちょうどその時分じぶんおなむらんでいる百しょうで、うしをいいったというはなしをききました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人の髪の毛の焦げるような一種異様な臭気がどこからともなく身に迫って鼻をったと思うと、ぞっとするように物寂しい夜気が骨にまでも沁み渡る。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
と大喝一声、ひるむ処を附け入って、こぶしいなずま手錬のあてに、八蔵は急所をたれ、蹈反ふんぞりて、大地はどうと響きけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余りの可恐おそろしさに直行は吾を忘れてその顔をはたとち、ひるむところを得たりととざせば、外より割るるばかりに戸を叩きて、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ちょうどの花の真っ白に咲いているかきの間に、小さい枝折戸しおりどのあるのをあけてはいって、権右衛門は芝生の上に突居ついいた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここだけ畳を三畳ほどに、賽銭さいせんの箱が小さくすわって、花瓶はながめに雪をった一束のの花が露を含んで清々すがすがしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早朝上刻じょうこくから、お呼び寄せの大太鼓が、金線を溶かしたお城の空気をふるわせて、トーッ! トウトーットッとおやぐら高く——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
皆まで嘘でなかろう、虎が蝟に制せらるるは昨今聞かぬが豪猪やまあらしつとてそのはりに犯され致命傷を受くる事は近年も聞くところだ。
かれは高い山のいただきへついた時のような呼吸の逼塞ひっそくをおぼえだした。指をやらなくても感じられるくらい、乱れた脈をっていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、人間にさほど霊の感知がありうるならば、父子同じ血をもっているお綱の血のうちへ、世阿弥の今つ脈音がひびいてゆかないものだろうか。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新九郎と食い合った鍔がっきり、身を捻じかわそうとしたが刹那、の毛のゆるみを生じて、たたたたたたと岩押しに押してきた対手あいての剛剣。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その川のはるか下に、黒いものが二つ三つ、の鳥かと思うように、流れの光を乱しているのは、おおかた町の子供たちが、水でも浴びているのであろう。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もし身共みどもの鳥ならば、すぐに其処へ渡るのぢやが、……しかしあの講師も阿弥陀仏には、広大無辺くわうだいむへんの慈悲があると云うた。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのしろあとのまん中に、小さな角山かくやまがあって、上のやぶには、めくらぶどうのにじのようにれていました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ちやうど桃の実のれる頃で、果物好きな乙羽は、汽車の窓から桃の実をしこたまひ込むで、次ぎから次ぎへともなく貪り食つた。
夜はしずかに小雨あがりの湿っぽい土になく虫の音のほか、何事をも起りそうもない沈んだ静かさのうちに、闇はしだいにれてゆくようであった。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
連中底の下から手で押し上げると、雨水は四隅からほとばしって、寝ているところへ流れ込む、空鍋を宛てがってけたり、茶碗で汲みこぼしたり
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
信栄の歿した時、信美は猶いとけなかつたので、信美の祖父信政は信栄の妹曾能に婿を取り、所謂いはゆる中継として信栄の後をけしめた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いつでもしかし、念頭に置いて欲しい問題は、この時代の和歌は常に『古今集』伝統をまもる人々の生活の上にけ継がれた詩であったことである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
わが將來ゆくすゑの事につきて諸〻のいたましきことばを聞きたり、但し命運我をつとも我よく自らとれにふるをうるを覺ゆ 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「かわいそうにこのわしは、片目を鉄砲でたれているため、だいぶ苦しがっている。はやくその霊泉れいせんで洗ってやるがよい。すぐなおる」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——到底、味方に追いつけるはずもなし、まごまごしていれば、敵の兵船と附近の陸兵とのハサミちにあって、捕虜となることは知れきっている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実界にのみ馳求する思想は、高遠なる思慕をまず、我恋愛道の、肉情を先にして真正の愛情を後にする所以、こゝに起因するところ少しとせず。
他界に対する観念 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかるに、不幸ふこうあねは、あること、また、たか階段かいだんからちて、まれもつかぬちんばになってしまった。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、どうしておまえさんは、まれわったようにかみがたくさんになって、しかもくろくなって、うつくしくなったのか。」
夕焼け物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この一面の雪景色の中で、わずかに単調を破るものは、ところどころに見える暗いもりと、低く舞うえたからすの群とのみだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これをあの実に不愉快にして愚劣なる「洛陽らくようゆ」のごときものに比べるとそれはいかなる意味においても比較にならぬほどよい。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
えた者の求める正義と、飽いた者の求める正義とは、同じ正義でも、気持の上で大きな開きがあることは、次郎と恭一との場合だけには限られないであろう。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
なかにも、ちょうは、くろはちわった、真紅まっかなばらのはなたときには、ほんとうに、びっくりしてしまいました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
りょう一は、いえかえると、友吉ともきちからもらった草花くさばなはちえて、如露じょろみずをやりました。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なんだい、ザネリ」とジョバンニは高くさけかえしましたが、もうザネリはこうのひばのわった家の中へはいっていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
馬鹿ばかやつらだ。もう秋風あきかぜつたじやないか、ゑるもくも、それがどうした。運命うんめいはみんな一つだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「ううん、ううん」とかれは言った。「二人いればにはしない。一人が一人を助けるからね。持っている者が持っていない者にやれるのだ」
有王 なぜそのようなことをおっしゃいますか、私が生きている限りはたとえご不自由とは申せ、海山をあさってもあなたをえさせはいたしませぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
え切ってきりきりいたむ腹、かわき切ってひりひりいたむ喉、目は砂ぼこりでかすみ、腰に結びつけられた重荷のくびきの情け容赦のない重さ。
我れゆるとも可なり、我の妻子さいしにして路頭ろとうまよふに至るも我はしのばん、真理しんりは我と我の家族かぞくより大なり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
綾小路は目と耳とばかりで生活しているような男で、芸術をさえ余り真面目には取り扱っていないが、明敏な頭脳がいつも何物にかえている。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すみやかに手はずして見かけ次第もらさずち取れという意味のことがしたためてあり、万一討ちもらしたら他領までも付け入って討ち取るように
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
美しい男、美しい女、彼等はかつて恋人同志であった。そして実はつものと討たれるものであった。それが双方ともほとんど同時に去って行くのだ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから信濃しなのへおはいりになり、そこの国境くにざかいの地の神をち従えて、ひとまずもとの尾張おわりまでお帰りになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
けては置かじとささややうにて、心済まねば謂ひも出でず、もしそれ胸中の疑磈ぎくわいを吐きて智識のをしへけむには
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天下てんかぴんやすくて千りょう値打ねうちはいです。」と、りこうもの感歎かんたんいたしました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、半身はんしんを斜めにして、あふれかゝる水の一筋ひとすじを、たましずくに、さっと散らして、赤く燃ゆるやうな唇にけた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ななめに、紙燭ししょくの黄色い明かりがながれた。その明かりに、いた僧形そうぎょうのかげを見ると、顔をだした公卿侍くげざむらいは、
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
起とうとしながら、ばばはふと、顔の前にき出している文字に気をとられた。それは、洞窟の壁に彫りこんである何人なんぴとかの願文だった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の物をいう時のほかは其の口を固く一文字にむすんでいたが、その大きい眼の中には怪しい笑みがかんでいるのを侍従は見逃がさなかった。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
匂よ。すみれ苧環をだまき、櫻草、丁字草ちやうじさう五形げんげ華鬘草けまんさうたぐひは皆此方にゑて枕元を飾るべし。
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
街路樹に柳をえている町はあるが、その青い蔭にも今は蝙蝠の飛ぶを見ない。勿論、泥草鞋や馬の沓などを振りまわしているような馬鹿な子供はない。
薬前薬後 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
シベリア、北支那方面から我が日本に分布せる宿根草で水辺あるいは湿原に野生し、我邦では無論かく自生もあれど通常は多くこれを池畔にえてある。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
主人は茫乎ぼうことして、その涙がいかなる心理作用に起因するかを研究するもののごとく、袴の上と、つ向いた雪江さんの顔を見つめていた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いいにくそうに伝兵衛がいうと、お那珂なかは、畳へ手をついて、何かいうつもりなのが、そのまま、泣きじゃくって、してしまった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もくり……と毒水どくすい波紋はもんがよれたかと思うと、せになった水死人すいしにん水草みずぐさの根をゆらゆらとはなれる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清八も、お絹も、縁側から覗く善兵衞も、娘のお冬も、庭に突つ立つて居る下男の友吉も、嚴肅げんしゆくなものにたれて默つてしまひました。
真に凡庸ぼんようのありふれた達人使い手のたぐいではない——と心ひそかに重蔵は得知えしらぬ渇仰かつごうたれたのであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いたずらな豪奢ごうしゃのうすら冷い触覚と、着物に対する甘美な魅惑とが引き浪のあとに残る潮の響鳴のように、私の女ごころをつ。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)