)” の例文
金重のった鋏はジョキリと一鋏で真直まっすぐに剪れるので大層に行われました。金重は六十五になりますが、無慾な爺さんでございます。
「これやみんな、てめえのために、夜の眼も寝ずにった小柄だから、ここにあるだけくれてやる。からだに仕舞って持ってゆけ!」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや! たとえわたしの先祖がったところで、いまは、刀はあくまでも小野塚家のもの、わしとてもそれに、指一本れようとは思い申さぬ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
どうかして彼奴きやつの正体を見届けて呉れようと思つたのですが、亡者のはりつけにつかふ釘をつ悪魔そつくりに、顔ぢゆうを煤で塗りたくつてをりますのでして。
少禄しょうろくの者ではまず手中しがたい! しがたいとするなら、いうまでもなく高禄の者が、それもよほどの数寄者すきしゃ好事家こうずかが、買うか、たせたかに相違ないのです。
チョンまげを結った阿爺おとっさんがってくれたのだ。高瀬はその鉄の目方の可成かなりあるガッシリとした柄のついた鍬を提げて、家の裏に借りて置いた畠の方へ行った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どこでそんなものをつんだろう? 何か工場のようなものでも地獄にあるのかな? でも修道院では坊主どもはきっと、地獄に天井があるものと考えてるんだろう。
此人のつた包丁はが脆いといふ評判、結局は其土地を喰詰めて、五年前にこの村に移つた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
早速、近郷の鍛冶工かじこうをよんできて、張飛は、一丈何尺という蛇矛じゃぼこってくれと注文し、関羽は重さ何十斤という偃月刀えんげつとうきたえさせた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
造酒は、かたわらの愛刀、阪東ばんどうろう幸村ゆきむらって野分のわけの称ある逸剣を取って、ニヤニヤ笑いながら、「金打きんちょうしよう」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
富「是はアノうちのおとっさんがって置いたおあつらえのすえが一挺残ってあるんですが、お役に立つか立たないか知りませんが、お使い料になすってくださいな」
以前もと十里許り離れた某町に住つてゐたが、鉈、鎌、まさかりなどの荒道具が得意な代り、此人のつた包丁は刃が脆いといふ評判、結局は其土地を喰詰めて、五年前にこの村に移つた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
鎌だのすきだのをちをつたになあ! それに、ええ力持ぢやつた! ほんとに
「もっと痩せろ。そち達、少年の肉は、刀のごとくってって細身にするほど斬れ味はよくなるものだぞ。さ、つづいて来い」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臨終の際まで精根をらし神気をこめてったと言い伝えられている夜泣きの大小、乾雲丸と坤竜丸こんりゅうまるを……というので、全国に手分けをして物色すると、いまその一腰ひとふり
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
自分のつ剣に、自分が抱いた新しい信念を吹きこんで、その一口ひとふりを、彼はまず、佐久間象山へ贈ろうと、発心したのであった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれのつところの刀は、にえ至って細く、三杉の小亀文みだれが多くまたすずやきもあり、ことにその二代兼元なる関の孫六となると、新刀最上々の大業物おおわざものとして世にきこえているが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『聞いているか、大夫のことじゃ、存分、ち込んであろう、侍は、奉公じゃ、ほかに仕事はない。山鹿先生の士道を読んだか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こやつ。国吉のったこの鉄砲の試しには、ちょうどよい生き物だ。彼方むこうかきのそばへ引き立て、木にくくって立たせておけ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『——下の抽斗ひきだしじゃ。この正月、山浦真雄やまうらさねおち上げて来た一腰があるじゃろう。二尺六寸ほどな物で、新しい木綿もめんに巻き、まだ白鞘しらさやの儘で』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「武蔵野ばかりにゃ月は照らねえ。どこの野末で、馬沓まぐつっても、おら、おめえの一人ぐらい、これから先はきっと安気に送らせるからな」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野鍛冶のった小柄が、一本いくらに売れるかと考えれば、十年、つちの鬼になって稼いでも、二百両の金がまるかどうだか。百も、知っていた。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今、早速に、其方が鍛ちにかかっている山寺源太夫様の御下命の品にせよ、ここで一際ひときわすぐれたものち上げねば、名折れの上の名折れになろうと
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵が今、数本の中から握り取った刀には、さやの上から握っただけでも、何かしら、それをった刀鍛冶の魂が手にこたえてくるような気がした。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれの親方のった矢の根は、南蛮鉄なんばんてつでも射抜いぬいてしまうってんで、ほうぼうの大名だいみょうから何万ていう仕事がきているんだ。おれはそこの秘蔵ひぞう弟子だ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父おじいさんは、百姓だった。その百姓から身を起して、一旗挙げようとした時に、これを刀鍛冶にたせなすった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おめきながら割って入り、先ごろたせたばかりの丈余の蛇矛じゃぼこ——牙形きばがた大矛おおぼこを先につけた長柄を舞わして、賊将程遠志のかぶとの鉢金から馬の背骨に至るまで斬り下げた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後ではさだめし、不浄者とお思いになりましょうが、範宴はもいちど自分をなおして参ります。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拝借するといわなかったのは、もう是非にかかわらず、返す気持が起らなかったからである。名工のった名作には、人の気持をそこまでつかむ怖ろしい力が必然あるのであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三条小鍛冶さんじょうこかじという名工がひところ住んでいて、それから、ここの池の水が、刀をつのによいというので、諸国から、刀鍛冶が集まって、いつのまにか、一つの鍛冶聚落ぶらくができていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姉川あねがわだって、長篠ながしのだって、こっちの大勝ちはあたりめえなことさ。おれたちの御大将おんたいしょうはべつもんだが、はばかりながらおれたちのったものには、槍一本、やじりひとつにも気が入っているんだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど……。今の世には、書をかくより、歌をよむより、刀をつ人間のほうが、求められているとみえる」一軒の鍛冶かじ小屋の前に立って、宗業は、漠然と、鍛冶のする仕事を眺めていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鍛冶かじといっても、無論、鎌やすきの耕具をもッぱらにつ野鍛冶でありましょう、あるじというのは半五郎といって、白毛まじりの髪の毛から見れば、もう年配も五十の坂をだいぶこえているらしいが
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかなか業刀わざものらしいので、武蔵が、詰問きつもんすると、男は、これは自分のった刀で、実は、あなたの体を借りて、自身で鍛ったこの刀の切れ味を試してみようとしたのですと、不心得を謝して云った。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今が今——というように、小六から性急せっかちにいいつけられて、鍛冶小屋へ飛んで戻るなり、鉄砲の関金をち直していた国吉は、邸のうちに何が起ったのも、時が経ったのも、物音も一切知らなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このわれらをして、天下ち直しの大善業に向けしめ給わるよう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)