島崎藤村
1872.03.25 〜 1943.08.22
“島崎藤村”に特徴的な語句
恵那山
左様
十曲峠
勝重
蓬莱屋
駕籠
彼女
庄屋
桝田屋
野尻
鉄胤
温
継立
組頭
旨
助郷
熟
公卿
桟
羽
小前
亭主
阿爺
行燈
伊那
杉
碇泊
笠
側
部屋
報知
母
暮田正香
莫大
落合
代
薩摩
問屋
上松
最早
停車場
枕
旅舎
父
逢
二人
信濃
母
伐
馬籠
著者としての作品一覧
灯火(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
飯島夫人——栄子は一切の事を放擲する思をした後で、子供を東京の家の方に残し、年をとつた女中のお鶴一人連れて、漸く目的とする療養地に着いた。箱根へ、熱海へと言つて夫や子供と一緒によく …
読書目安時間:約15分
飯島夫人——栄子は一切の事を放擲する思をした後で、子供を東京の家の方に残し、年をとつた女中のお鶴一人連れて、漸く目的とする療養地に着いた。箱根へ、熱海へと言つて夫や子供と一緒によく …
秋草(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
過日、わたしはもののはじに、ことしの夏のことを書き添えるつもりで、思わずいろいろなことを書き、親戚から送って貰った桃の葉で僅かに汗疹を凌いだこと、遅くまで戸も閉められない眠りがたい …
読書目安時間:約5分
過日、わたしはもののはじに、ことしの夏のことを書き添えるつもりで、思わずいろいろなことを書き、親戚から送って貰った桃の葉で僅かに汗疹を凌いだこと、遅くまで戸も閉められない眠りがたい …
朝飯(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
五月が来た。測候所の技手なぞをして居るものは誰しも同じ思であろうが、殊に自分はこの五月を堪えがたく思う。其日々々の勤務——気圧を調べるとか、風力を計るとか、雲形を観察するとか、また …
読書目安時間:約6分
五月が来た。測候所の技手なぞをして居るものは誰しも同じ思であろうが、殊に自分はこの五月を堪えがたく思う。其日々々の勤務——気圧を調べるとか、風力を計るとか、雲形を観察するとか、また …
嵐(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間14分
子供らは古い時計のかかった茶の間に集まって、そこにある柱のそばへ各自の背丈を比べに行った。次郎の背の高くなったのにも驚く。家じゅうで、いちばん高い、あの子の頭はもう一寸四分ぐらいで …
読書目安時間:約1時間14分
子供らは古い時計のかかった茶の間に集まって、そこにある柱のそばへ各自の背丈を比べに行った。次郎の背の高くなったのにも驚く。家じゅうで、いちばん高い、あの子の頭はもう一寸四分ぐらいで …
ある女の生涯(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間5分
おげんはぐっすり寝て、朝の四時頃には自分の娘や小さな甥なぞの側に眼をさました。慣れない床、慣れない枕、慣れない蚊帳の内で、そんなに前後も知らずに深く眠られたというだけでも、おげんに …
読書目安時間:約1時間5分
おげんはぐっすり寝て、朝の四時頃には自分の娘や小さな甥なぞの側に眼をさました。慣れない床、慣れない枕、慣れない蚊帳の内で、そんなに前後も知らずに深く眠られたというだけでも、おげんに …
家:01 (上)(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間16分
橋本の家の台所では昼飯の仕度に忙しかった。平素ですら男の奉公人だけでも、大番頭から小僧まで入れて、都合六人のものが口を預けている。そこへ東京からの客がある。家族を合せると、十三人の …
読書目安時間:約4時間16分
橋本の家の台所では昼飯の仕度に忙しかった。平素ですら男の奉公人だけでも、大番頭から小僧まで入れて、都合六人のものが口を預けている。そこへ東京からの客がある。家族を合せると、十三人の …
家:02 (下)(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間46分
橋本の正太は、叔父を訪ねようとして、両側に樹木の多い郊外の道路へ出た。 叔父の家は広い植木屋の地内で、金目垣一つ隔てて、直にその道路へ接したような位置にある。垣根の側には、細い乾い …
読書目安時間:約4時間46分
橋本の正太は、叔父を訪ねようとして、両側に樹木の多い郊外の道路へ出た。 叔父の家は広い植木屋の地内で、金目垣一つ隔てて、直にその道路へ接したような位置にある。垣根の側には、細い乾い …
伊香保土産(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
にはかに思ひ立つて伊香保まで出掛けた。日頃わたしは避暑の旅に出たこともなく、夏は殆んど東京の町中に暮してゐるが、そのかはり春蚕、秋蚕の後の骨休めを心掛ける農家の人達のやうに、自分の …
読書目安時間:約7分
にはかに思ひ立つて伊香保まで出掛けた。日頃わたしは避暑の旅に出たこともなく、夏は殆んど東京の町中に暮してゐるが、そのかはり春蚕、秋蚕の後の骨休めを心掛ける農家の人達のやうに、自分の …
伊豆の旅(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
汽車は大仁へ着いた。修善寺通ひの馬車はそこに旅人を待受けて居た。停車場を出ると、吾儕四人は直に馬車屋に附纏はれた。其日は朝から汽車に乘りつゞけて、最早乘物に倦んで居たし、それに旅の …
読書目安時間:約24分
汽車は大仁へ着いた。修善寺通ひの馬車はそこに旅人を待受けて居た。停車場を出ると、吾儕四人は直に馬車屋に附纏はれた。其日は朝から汽車に乘りつゞけて、最早乘物に倦んで居たし、それに旅の …
犬(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
此節私はよく行く小さな洋食屋がある。あそこの鯛ちり、こゝの蜆汁、といふ風によく猟つて歩いた私は大きな飲食店などにも飽き果てゝ、その薄汚い町中の洋食屋に我儘の言へる隠れ家を見つけて置 …
読書目安時間:約9分
此節私はよく行く小さな洋食屋がある。あそこの鯛ちり、こゝの蜆汁、といふ風によく猟つて歩いた私は大きな飲食店などにも飽き果てゝ、その薄汚い町中の洋食屋に我儘の言へる隠れ家を見つけて置 …
烏帽子山麓の牧場(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
水彩畫家B君は歐米を漫遊して歸つた後、故郷の根津村に畫室を新築した。以前、私達の學校へは同じ水彩畫家のM君が教へに來て呉れて居たが、M君は澤山信州の風景を描いて、一年ばかりで東京の …
読書目安時間:約6分
水彩畫家B君は歐米を漫遊して歸つた後、故郷の根津村に畫室を新築した。以前、私達の學校へは同じ水彩畫家のM君が教へに來て呉れて居たが、M君は澤山信州の風景を描いて、一年ばかりで東京の …
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間24分
私の子供が初めて小學校へ通ふやうに成つた其翌日から、私は斯の手紙を書き始めます。昨日の朝、吾家では子供の爲に赤の御飯を祝ひました。輝く燈火の影に夜更しすることの多い都會の生活の中で …
読書目安時間:約1時間24分
私の子供が初めて小學校へ通ふやうに成つた其翌日から、私は斯の手紙を書き始めます。昨日の朝、吾家では子供の爲に赤の御飯を祝ひました。輝く燈火の影に夜更しすることの多い都會の生活の中で …
岩石の間(新字新仮名)
読書目安時間:約54分
懐古園の城門に近く、桑畠の石垣の側で、桜井先生は正木大尉に逢った。二人は塾の方で毎朝合せている顔を合せた。 大尉は塾の小使に雇ってある男を尋ね顔に、 「音はどうしましたろう」 「中 …
読書目安時間:約54分
懐古園の城門に近く、桑畠の石垣の側で、桜井先生は正木大尉に逢った。二人は塾の方で毎朝合せている顔を合せた。 大尉は塾の小使に雇ってある男を尋ね顔に、 「音はどうしましたろう」 「中 …
北村透谷の短き一生(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
北村透谷君の事に就ては、これまでに折がある毎に少しずつ自分の意見を発表してあるから、私の見た北村君というものの大体の輪廓は、已に世に紹介した積りである。北村君の生涯の中の晩年の面影 …
読書目安時間:約17分
北村透谷君の事に就ては、これまでに折がある毎に少しずつ自分の意見を発表してあるから、私の見た北村君というものの大体の輪廓は、已に世に紹介した積りである。北村君の生涯の中の晩年の面影 …
旧主人(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間11分
今でこそ私もこんなに肥ってはおりますものの、その時分は瘠ぎすな小作りな女でした。ですから、隣の大工さんの御世話で小諸へ奉公に出ました時は、人様が十七に見て下さいました。私の生れまし …
読書目安時間:約1時間11分
今でこそ私もこんなに肥ってはおりますものの、その時分は瘠ぎすな小作りな女でした。ですから、隣の大工さんの御世話で小諸へ奉公に出ました時は、人様が十七に見て下さいました。私の生れまし …
再婚について(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
神坂も今は秋の収穫でいそがしくもまた楽しい時と思います。 ことしの秋は、柳ちゃんを連れて神坂の土を踏みたいとは、かねてから楽しみにしていたことでしたが、いろいろの都合で十一月の初め …
読書目安時間:約4分
神坂も今は秋の収穫でいそがしくもまた楽しい時と思います。 ことしの秋は、柳ちゃんを連れて神坂の土を踏みたいとは、かねてから楽しみにしていたことでしたが、いろいろの都合で十一月の初め …
桜の実の熟する時(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間44分
思わず彼は拾い上げた桜の実を嗅いで見て、お伽話の情調を味った。 それを若い日の幸福のしるしという風に想像して見た。 これは自分の著作の中で、年若き読者に勧めて見たいと思うものの一つ …
読書目安時間:約3時間44分
思わず彼は拾い上げた桜の実を嗅いで見て、お伽話の情調を味った。 それを若い日の幸福のしるしという風に想像して見た。 これは自分の著作の中で、年若き読者に勧めて見たいと思うものの一つ …
山陰土産(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間45分
一大阪より城崎へ 朝曇りのした空もまだすゞしいうちに、大阪の宿を發つたのは、七月の八日であつた。夏帽子一つ、洋傘一本、東京を出る前の日に「出來」で間に合はせて來た編あげの靴も草鞋を …
読書目安時間:約1時間45分
一大阪より城崎へ 朝曇りのした空もまだすゞしいうちに、大阪の宿を發つたのは、七月の八日であつた。夏帽子一つ、洋傘一本、東京を出る前の日に「出來」で間に合はせて來た編あげの靴も草鞋を …
三人の訪問者(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
「冬」が訪ねて来た。 私が待受けて居たのは正直に言うと、もっと光沢のない、単調な眠そうな、貧しそうに震えた、醜く皺枯れた老婆であった。私は自分の側に来たものの顔をつくづくと眺めて、 …
読書目安時間:約7分
「冬」が訪ねて来た。 私が待受けて居たのは正直に言うと、もっと光沢のない、単調な眠そうな、貧しそうに震えた、醜く皺枯れた老婆であった。私は自分の側に来たものの顔をつくづくと眺めて、 …
幸福(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
「幸福」がいろいろな家へ訪ねて行きました。 誰でも幸福の欲しくない人はありませんから、どこの家を訪ねましても、みんな大喜びで迎えてくれるにちがいありません。けれども、それでは人の心 …
読書目安時間:約3分
「幸福」がいろいろな家へ訪ねて行きました。 誰でも幸福の欲しくない人はありませんから、どこの家を訪ねましても、みんな大喜びで迎えてくれるにちがいありません。けれども、それでは人の心 …
刺繍(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
ふと大塚さんは眼が覚めた。 やがて夜が明ける頃だ。部屋に横たわりながら、聞くと、雨戸へ来る雨の音がする。いかにも春先の根岸辺の空を通り過ぎるような雨だ。その音で、大塚さんは起された …
読書目安時間:約20分
ふと大塚さんは眼が覚めた。 やがて夜が明ける頃だ。部屋に横たわりながら、聞くと、雨戸へ来る雨の音がする。いかにも春先の根岸辺の空を通り過ぎるような雨だ。その音で、大塚さんは起された …
死の床(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
「柿田さん、なんでもかんでも貴方に被入しつて頂くやうに、私が行つて院長さんに御願ひして来て進げる——左様言つて、引受けて来たんですよ。」 流行の服装をした女の裁縫師が、あの私立病院 …
読書目安時間:約8分
「柿田さん、なんでもかんでも貴方に被入しつて頂くやうに、私が行つて院長さんに御願ひして来て進げる——左様言つて、引受けて来たんですよ。」 流行の服装をした女の裁縫師が、あの私立病院 …
出発(新字旧仮名)
読書目安時間:約37分
時計屋へ直しに遣つてあつた八角形の柱時計が復た部屋の柱の上に掛つて、元のやうに音がし出した。その柱だけにも六年も掛つて居る時計だ。三年前に叔母さんが産後の出血で急に亡くなつたのも、 …
読書目安時間:約37分
時計屋へ直しに遣つてあつた八角形の柱時計が復た部屋の柱の上に掛つて、元のやうに音がし出した。その柱だけにも六年も掛つて居る時計だ。三年前に叔母さんが産後の出血で急に亡くなつたのも、 …
食堂(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
お三輪が東京の方にいる伜の新七からの便りを受取って、浦和の町からちょっと上京しようと思い立つ頃は、震災後満一年にあたる九月一日がまためぐって来た頃であった。お三輪に、彼女が娵のお富 …
読書目安時間:約33分
お三輪が東京の方にいる伜の新七からの便りを受取って、浦和の町からちょっと上京しようと思い立つ頃は、震災後満一年にあたる九月一日がまためぐって来た頃であった。お三輪に、彼女が娵のお富 …
新生(新字新仮名)
読書目安時間:約11時間11分
「岸本君——僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。然し実を言えば何も書く材料は無いのである。黙していて済むことである。君と僕との交誼が深ければ深いほど、黙していた …
読書目安時間:約11時間11分
「岸本君——僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。然し実を言えば何も書く材料は無いのである。黙していて済むことである。君と僕との交誼が深ければ深いほど、黙していた …
蝉の子守唄(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ねん/\よ。おころりよ。ころ、ころ、ころ、ころ、おころりよ。 ねん/\よ。おころりよ。おゝしいつく/\、ねんねしな。 ねん/\よ。おころりよ。みん、みん、みん、みん、ねんねしな。 …
読書目安時間:約1分
ねん/\よ。おころりよ。ころ、ころ、ころ、ころ、おころりよ。 ねん/\よ。おころりよ。おゝしいつく/\、ねんねしな。 ねん/\よ。おころりよ。みん、みん、みん、みん、ねんねしな。 …
装釘に就て:『春』と『家』及び其他(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
近頃出した『千曲川のスケツチ』は装釘としては、宜い案です。国の方で父の碑を立てるに就て歌抔を集めた遺稿を、東京で印刷して欲しいと云ふので、有島さんに描いて貰つた表紙は赤ちやけた黒い …
読書目安時間:約6分
近頃出した『千曲川のスケツチ』は装釘としては、宜い案です。国の方で父の碑を立てるに就て歌抔を集めた遺稿を、東京で印刷して欲しいと云ふので、有島さんに描いて貰つた表紙は赤ちやけた黒い …
足袋(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
「比佐さんも好いけれど、アスが太過ぎる……」 仙台名影町の吉田屋という旅人宿兼下宿の奥二階で、そこからある学校へ通っている年の若い教師の客をつかまえて、頬辺の紅い宿の娘がそんなこと …
読書目安時間:約3分
「比佐さんも好いけれど、アスが太過ぎる……」 仙台名影町の吉田屋という旅人宿兼下宿の奥二階で、そこからある学校へ通っている年の若い教師の客をつかまえて、頬辺の紅い宿の娘がそんなこと …
短夜の頃(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
毎日よく降つた。もはや梅雨明けの季節が來ている。町を呼んで通る竿竹賣の聲がするのも、この季節にふさはしい。蠶豆賣の來る頃は既に過ぎ去り、青梅を賣りに來るにもやゝ遲く、すゞしい朝顏の …
読書目安時間:約5分
毎日よく降つた。もはや梅雨明けの季節が來ている。町を呼んで通る竿竹賣の聲がするのも、この季節にふさはしい。蠶豆賣の來る頃は既に過ぎ去り、青梅を賣りに來るにもやゝ遲く、すゞしい朝顏の …
力餅(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間11分
わたしが皆さんのようなかたとおなじみになったのは、以前に三冊の少年の読本を書いた時からでした。わたしも皆さんにお話しするのを楽しみに思うものですから、こんど新規に一冊の読本を用意し …
読書目安時間:約2時間11分
わたしが皆さんのようなかたとおなじみになったのは、以前に三冊の少年の読本を書いた時からでした。わたしも皆さんにお話しするのを楽しみに思うものですから、こんど新規に一冊の読本を用意し …
千曲川のスケッチ(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間43分
序 敬愛する吉村さん——樹さん——私は今、序にかえて君に宛てた一文をこの書のはじめに記すにつけても、矢張呼び慣れたように君の親しい名を呼びたい。私は多年心掛けて君に呈したいと思って …
読書目安時間:約2時間43分
序 敬愛する吉村さん——樹さん——私は今、序にかえて君に宛てた一文をこの書のはじめに記すにつけても、矢張呼び慣れたように君の親しい名を呼びたい。私は多年心掛けて君に呈したいと思って …
藤村いろは歌留多(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
「歌留多」の函 「歌留多」のなかに折りたたみで入っていたパンフレット 長いこと私は民話を書くことを思ひ立つて、未だにそれを果さずにゐますが、このいろはがるたもそんな心持から作つて見 …
読書目安時間:約2分
「歌留多」の函 「歌留多」のなかに折りたたみで入っていたパンフレット 長いこと私は民話を書くことを思ひ立つて、未だにそれを果さずにゐますが、このいろはがるたもそんな心持から作つて見 …
藤村詩抄:島崎藤村自選(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間15分
若菜集、一葉舟、夏草、落梅集の四卷をまとめて合本の詩集をつくりし時に 遂に、新しき詩歌の時は來りぬ。 そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の預言者の如く叫び、あるものは西の …
読書目安時間:約1時間15分
若菜集、一葉舟、夏草、落梅集の四卷をまとめて合本の詩集をつくりし時に 遂に、新しき詩歌の時は來りぬ。 そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の預言者の如く叫び、あるものは西の …
突貫(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
私は今、ある試みを思ひ立つて居る。もし斯の仕事が思ふやうに捗取つたら、いづれそれを持つて山を下りようと思ふ。けれども斯のことは未だ誰にも言はずにある。 今日まで私は酷だ都合の好いこ …
読書目安時間:約17分
私は今、ある試みを思ひ立つて居る。もし斯の仕事が思ふやうに捗取つたら、いづれそれを持つて山を下りようと思ふ。けれども斯のことは未だ誰にも言はずにある。 今日まで私は酷だ都合の好いこ …
並木(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
近頃相川の怠ることは会社内でも評判に成っている。一度弁当を腰に着けると、八年や九年位提げているのは造作も無い。齷齪とした生涯を塵埃深い巷に送っているうちに、最早相川は四十近くなった …
読書目安時間:約19分
近頃相川の怠ることは会社内でも評判に成っている。一度弁当を腰に着けると、八年や九年位提げているのは造作も無い。齷齪とした生涯を塵埃深い巷に送っているうちに、最早相川は四十近くなった …
伸び支度(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
十四、五になる大概の家の娘がそうであるように、袖子もその年頃になってみたら、人形のことなぞは次第に忘れたようになった。 人形に着せる着物だ襦袢だと言って大騒ぎした頃の袖子は、いくつ …
読書目安時間:約13分
十四、五になる大概の家の娘がそうであるように、袖子もその年頃になってみたら、人形のことなぞは次第に忘れたようになった。 人形に着せる着物だ襦袢だと言って大騒ぎした頃の袖子は、いくつ …
破戒(新字旧仮名)
読書目安時間:約6時間47分
この書の世に出づるにいたりたるは、函館にある秦慶治氏、及び信濃にある神津猛氏のたまものなり。労作終るの日にあたりて、このものがたりを二人の恩人のまへにさゝぐ。 第壱章 蓮華寺では下 …
読書目安時間:約6時間47分
この書の世に出づるにいたりたるは、函館にある秦慶治氏、及び信濃にある神津猛氏のたまものなり。労作終るの日にあたりて、このものがたりを二人の恩人のまへにさゝぐ。 第壱章 蓮華寺では下 …
芭蕉(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
佛蘭西の旅に行く時、私は鞄の中に芭蕉全集を納れて持つて行つた。異郷の客舍にある間もよく取出して讀んで見た。『冬の日』、『春の日』から、『曠野』、『猿簑』を經て『炭俵』にまで到達した …
読書目安時間:約12分
佛蘭西の旅に行く時、私は鞄の中に芭蕉全集を納れて持つて行つた。異郷の客舍にある間もよく取出して讀んで見た。『冬の日』、『春の日』から、『曠野』、『猿簑』を經て『炭俵』にまで到達した …
婦人の笑顔(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
古人の言葉に、 「おふくは、鼻の低いかはりに、瞼が高うて、好いをなごじやの、なんのかのとて、いつかいお世話でござんす。」 これは、名高い昔の禅僧が残した言葉で、おふくが文を持つ立姿 …
読書目安時間:約2分
古人の言葉に、 「おふくは、鼻の低いかはりに、瞼が高うて、好いをなごじやの、なんのかのとて、いつかいお世話でござんす。」 これは、名高い昔の禅僧が残した言葉で、おふくが文を持つ立姿 …
二人の兄弟(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
一榎木の実 皆さんは榎木の実を拾ったことがありますか。あの実の落ちて居る木の下へ行ったことがありますか。あの香ばしい木の実を集めたり食べたりして遊んだことがありますか。 そろそろあ …
読書目安時間:約5分
一榎木の実 皆さんは榎木の実を拾ったことがありますか。あの実の落ちて居る木の下へ行ったことがありますか。あの香ばしい木の実を集めたり食べたりして遊んだことがありますか。 そろそろあ …
船(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
山本さん——支那(しな)の方に居る友人の間には、調戯(からかい)半分に、しかし悪い意味で無く「頭の禿(は)げた坊ちゃん」として知られていた——この人は帰朝して間もなく郷里(くに)か …
読書目安時間:約27分
山本さん——支那(しな)の方に居る友人の間には、調戯(からかい)半分に、しかし悪い意味で無く「頭の禿(は)げた坊ちゃん」として知られていた——この人は帰朝して間もなく郷里(くに)か …
ふるさと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間27分
はしがき 父さんが遠い外國の方から歸つた時、太郎や次郎への土産話にと思ひまして、いろ/\な旅のお話をまとめたのが、父さんの『幼きものに』でした。あの時、太郎はやうやく十三歳、次郎は …
読書目安時間:約1時間27分
はしがき 父さんが遠い外國の方から歸つた時、太郎や次郎への土産話にと思ひまして、いろ/\な旅のお話をまとめたのが、父さんの『幼きものに』でした。あの時、太郎はやうやく十三歳、次郎は …
分配(新字新仮名)
読書目安時間:約36分
四人もある私の子供の中で、亡くなった母さんを覚えているものは一人もない。ただいちばん上の子供だけが、わずかに母さんを覚えている。それもほんの子供心に。ようやくあの太郎が六歳ぐらいの …
読書目安時間:約36分
四人もある私の子供の中で、亡くなった母さんを覚えているものは一人もない。ただいちばん上の子供だけが、わずかに母さんを覚えている。それもほんの子供心に。ようやくあの太郎が六歳ぐらいの …
訪西行庵記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
はらからと袂を分ち、むつましきかぎりに別れをつげて、たゞ/\ものくるはしき一筋にうかれそめ、難波西海のあたりをさまよふこと二月あまり、菅笠の破れたるをいたゞき、身には合羽のふりたる …
読書目安時間:約3分
はらからと袂を分ち、むつましきかぎりに別れをつげて、たゞ/\ものくるはしき一筋にうかれそめ、難波西海のあたりをさまよふこと二月あまり、菅笠の破れたるをいたゞき、身には合羽のふりたる …
芽生(新字新仮名)
読書目安時間:約57分
浅間の麓(ふもと)へも春が近づいた。いよいよ私は住慣れた土地を離れて、山を下りることに決心した。 七年の間、私は田舎(いなか)教師として小諸(こもろ)に留まって、山の生活を眺(なが …
読書目安時間:約57分
浅間の麓(ふもと)へも春が近づいた。いよいよ私は住慣れた土地を離れて、山を下りることに決心した。 七年の間、私は田舎(いなか)教師として小諸(こもろ)に留まって、山の生活を眺(なが …
桃の雫(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3時間5分
年若い時分には、私は何事につけても深く/\と入つて行くことを心掛け、また、それを歡びとした。だん/\この世の旅をして、いろ/\な人にも交つて見るうちに、淺く/\と出て行くことの歡び …
読書目安時間:約3時間5分
年若い時分には、私は何事につけても深く/\と入つて行くことを心掛け、また、それを歡びとした。だん/\この世の旅をして、いろ/\な人にも交つて見るうちに、淺く/\と出て行くことの歡び …
山家ものがたり(旧字旧仮名)
読書目安時間:約17分
空に出でゝ星くずの明かにきらめくを眺むれば、おのれが心中にも少さき星のありて、心の闇を照すべしと思ふなり。涓々たる谷の小河の草の間を流れ行くを見れば、おのれが心中にも細き小河のあり …
読書目安時間:約17分
空に出でゝ星くずの明かにきらめくを眺むれば、おのれが心中にも少さき星のありて、心の闇を照すべしと思ふなり。涓々たる谷の小河の草の間を流れ行くを見れば、おのれが心中にも細き小河のあり …
雪の障子(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
めずらしいものが降った。旧冬十一月からことしの正月末へかけて、こんな冬季の乾燥が続きに続いたら、今に飲料水にも事欠くであろうと言われ、雨一滴来ない庭の土は灰の塊のごとく、草木もほと …
読書目安時間:約3分
めずらしいものが降った。旧冬十一月からことしの正月末へかけて、こんな冬季の乾燥が続きに続いたら、今に飲料水にも事欠くであろうと言われ、雨一滴来ない庭の土は灰の塊のごとく、草木もほと …
夜明け前:01 第一部上(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間53分
木曾路はすべて山の中である。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い …
読書目安時間:約6時間53分
木曾路はすべて山の中である。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い …
夜明け前:02 第一部下(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間23分
第八章「もう半蔵も王滝から帰りそうなものだぞ。」 吉左衛門は隠居の身ながら、忰半蔵の留守を心配して、いつものように朝茶をすますとすぐ馬籠本陣の裏二階を降りた。彼の習慣として、ちょっ …
読書目安時間:約6時間23分
第八章「もう半蔵も王滝から帰りそうなものだぞ。」 吉左衛門は隠居の身ながら、忰半蔵の留守を心配して、いつものように朝茶をすますとすぐ馬籠本陣の裏二階を降りた。彼の習慣として、ちょっ …
夜明け前:03 第二部上(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間20分
第一章円山応挙が長崎の港を描いたころの南蛮船、もしくはオランダ船なるものは、風の力によって遠洋を渡って来る三本マストの帆船であったらしい。それは港の出入りに曳き船を使うような旧式な …
読書目安時間:約6時間20分
第一章円山応挙が長崎の港を描いたころの南蛮船、もしくはオランダ船なるものは、風の力によって遠洋を渡って来る三本マストの帆船であったらしい。それは港の出入りに曳き船を使うような旧式な …
夜明け前:04 第二部下(新字新仮名)
読書目安時間:約7時間20分
第八章母刀自の枕屏風に いやしきもたかきもなべて夢の世をうら安くこそ過ぐべかりけれ 花紅葉あはれと見つつはるあきを心のどけくたちかさねませ おやのよもわがよも老をさそへども待たるる …
読書目安時間:約7時間20分
第八章母刀自の枕屏風に いやしきもたかきもなべて夢の世をうら安くこそ過ぐべかりけれ 花紅葉あはれと見つつはるあきを心のどけくたちかさねませ おやのよもわがよも老をさそへども待たるる …
路傍の雑草(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
学校の往還に——すべての物が白雪に掩はれて居る中で——日の映つた石垣の間などに春待顔な雑草を見つけることは、私の楽しみに成つて来た。長い間の冬籠りだ。せめて路傍の草に親しむ。 南向 …
読書目安時間:約3分
学校の往還に——すべての物が白雪に掩はれて居る中で——日の映つた石垣の間などに春待顔な雑草を見つけることは、私の楽しみに成つて来た。長い間の冬籠りだ。せめて路傍の草に親しむ。 南向 …
若菜集(新字旧仮名)
読書目安時間:約39分
こゝろなきうたのしらべは ひとふさのぶだうのごとし なさけあるてにもつまれて あたゝかきさけとなるらむ ぶだうだなふかくかゝれる むらさきのそれにあらねど こゝろあるひとのなさけに …
読書目安時間:約39分
こゝろなきうたのしらべは ひとふさのぶだうのごとし なさけあるてにもつまれて あたゝかきさけとなるらむ ぶだうだなふかくかゝれる むらさきのそれにあらねど こゝろあるひとのなさけに …
藁草履(新字新仮名)
読書目安時間:約52分
長野県北佐久郡岩村田町大字金(かね)の手(て)の角にある石が旅人に教えて言うには、これより南、甲州街道。 この道について南へさして行くと、八つが岳(たけ)山脈の麓(ふもと)へかけて …
読書目安時間:約52分
長野県北佐久郡岩村田町大字金(かね)の手(て)の角にある石が旅人に教えて言うには、これより南、甲州街道。 この道について南へさして行くと、八つが岳(たけ)山脈の麓(ふもと)へかけて …
翻訳者としての作品一覧
パスカルの言葉(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
(ある人のために、パスカルの言葉を抄録する) 些細なことが私達を慰める。何故といふに些細なことが私達を悲ませるから。 ソロモンとヨブとは、奈何なる人よりも人間の悲みを知つて居たし、 …
読書目安時間:約6分
(ある人のために、パスカルの言葉を抄録する) 些細なことが私達を慰める。何故といふに些細なことが私達を悲ませるから。 ソロモンとヨブとは、奈何なる人よりも人間の悲みを知つて居たし、 …
“島崎藤村”について
島崎 藤村(しまざき とうそん、1872年3月25日(明治5年2月17日) - 1943年(昭和18年)8月22日)は、日本における詩人又は小説家である。本名は島崎 春樹(しまざき はるき)。信州木曾の中山道馬籠(現在の岐阜県中津川市馬籠)生まれ。帝国芸術院会員。
『文学界』に参界し、ロマン主義に際した詩人として『若菜集』などを出版する。さらに、主な活動事項を小説に転じたのち、『破戒』や『春』などで代表的な自然主義作家となった。作品は他に、日本自然主義文学の到達点とされる『家』、姪との近親姦を告白した『新生』、父である島崎正樹をモデルとした歴史小説の大作『夜明け前』などが存在する。
(出典:Wikipedia)
『文学界』に参界し、ロマン主義に際した詩人として『若菜集』などを出版する。さらに、主な活動事項を小説に転じたのち、『破戒』や『春』などで代表的な自然主義作家となった。作品は他に、日本自然主義文学の到達点とされる『家』、姪との近親姦を告白した『新生』、父である島崎正樹をモデルとした歴史小説の大作『夜明け前』などが存在する。
(出典:Wikipedia)
“島崎藤村”と年代が近い著者
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
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エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)