国木田独歩
1871.08.30 〜 1908.06.23
“国木田独歩”に特徴的な語句
言
喫驚
決定
學校
思
來
其処
處
歸
居
氣
其
知
者
以前
微笑
感
老人
先生
方
最早
今
事
顏
宜
時
了
此
出
妻
心
口
如何
可
直
何処
聞
眼
上
自分
遂
見
眼
中
決
生徒
更
書籍
翁
元來
著者としての作品一覧
あの時分(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
さて、明治の御代もいや栄えて、あの時分はおもしろかったなどと、学校時代の事を語り合う事のできる紳士がたくさんできました。 落ち合うごとに、いろいろの話が出ます。何度となく繰り返され …
読書目安時間:約14分
さて、明治の御代もいや栄えて、あの時分はおもしろかったなどと、学校時代の事を語り合う事のできる紳士がたくさんできました。 落ち合うごとに、いろいろの話が出ます。何度となく繰り返され …
遺言(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
今度の戦で想い出した、多分太沽沖にあるわが軍艦内にも同じような事があるだろうと思うからお話しすると、横須賀なるある海軍中佐の語るには、 わが艦隊が明治二十七年の天長節を祝したのは、 …
読書目安時間:約6分
今度の戦で想い出した、多分太沽沖にあるわが軍艦内にも同じような事があるだろうと思うからお話しすると、横須賀なるある海軍中佐の語るには、 わが艦隊が明治二十七年の天長節を祝したのは、 …
初孫(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
この度は貞夫に結構なる御品御贈り下されありがたく存じ候、お約束の写真ようよう昨日でき上がり候間二枚さし上げ申し候、内一枚は上田の姉に御届け下されたく候、ご覧のごとくますます肥え太り …
読書目安時間:約5分
この度は貞夫に結構なる御品御贈り下されありがたく存じ候、お約束の写真ようよう昨日でき上がり候間二枚さし上げ申し候、内一枚は上田の姉に御届け下されたく候、ご覧のごとくますます肥え太り …
運命論者(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
秋の中過、冬近くなると何れの海浜を問ず、大方は淋れて来る、鎌倉も其通りで、自分のように年中住んで居る者の外は、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網の男、或は浜づたいに往通う行商を …
読書目安時間:約35分
秋の中過、冬近くなると何れの海浜を問ず、大方は淋れて来る、鎌倉も其通りで、自分のように年中住んで居る者の外は、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網の男、或は浜づたいに往通う行商を …
画の悲み(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
画を好かぬ小供は先ず少ないとしてその中にも自分は小供の時、何よりも画が好きであった。(と岡本某が語りだした)。 好きこそ物の上手とやらで、自分も他の学課の中画では同級生の中自分に及 …
読書目安時間:約10分
画を好かぬ小供は先ず少ないとしてその中にも自分は小供の時、何よりも画が好きであった。(と岡本某が語りだした)。 好きこそ物の上手とやらで、自分も他の学課の中画では同級生の中自分に及 …
画の悲み(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
畫を好かぬ小供は先づ少ないとして其中にも自分は小供の時、何よりも畫が好きであつた。(と岡本某が語りだした)。 好きこそ物の上手とやらで、自分も他の學課の中畫では同級生の中自分に及ぶ …
読書目安時間:約10分
畫を好かぬ小供は先づ少ないとして其中にも自分は小供の時、何よりも畫が好きであつた。(と岡本某が語りだした)。 好きこそ物の上手とやらで、自分も他の學課の中畫では同級生の中自分に及ぶ …
置土産(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
餅は円形きが普通なるわざと三角にひねりて客の目を惹かんと企みしようなれど実は餡をつつむに手数のかからぬ工夫不思議にあたりて、三角餅の名いつしかその近在に広まり、この茶店の小さいに似 …
読書目安時間:約14分
餅は円形きが普通なるわざと三角にひねりて客の目を惹かんと企みしようなれど実は餡をつつむに手数のかからぬ工夫不思議にあたりて、三角餅の名いつしかその近在に広まり、この茶店の小さいに似 …
おとずれ(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
五月二日付の一通、同十日付一通、同二十五日付の一通、以上三通にてわれすでに厭き足りぬと思いたもうや。もはやかかる手紙願わくは送りたまわざれとの御意、確かに承りぬ。されど今は貴嬢がわ …
読書目安時間:約28分
五月二日付の一通、同十日付一通、同二十五日付の一通、以上三通にてわれすでに厭き足りぬと思いたもうや。もはやかかる手紙願わくは送りたまわざれとの御意、確かに承りぬ。されど今は貴嬢がわ …
河霧(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
上田豊吉がその故郷を出たのは今よりおおよそ二十年ばかり前のことであった。 その時かれは二十二歳であったが、郷党みな彼が前途の成功を卜してその門出を祝した。 『大いなる事業』ちょう言 …
読書目安時間:約16分
上田豊吉がその故郷を出たのは今よりおおよそ二十年ばかり前のことであった。 その時かれは二十二歳であったが、郷党みな彼が前途の成功を卜してその門出を祝した。 『大いなる事業』ちょう言 …
窮死(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
九段坂の最寄にけちなめし屋がある。春の末の夕暮れに一人の男が大儀そうに敷居をまたげた。すでに三人の客がある。まだランプをつけないので薄暗い土間に居並ぶ人影もおぼろである。 先客の三 …
読書目安時間:約13分
九段坂の最寄にけちなめし屋がある。春の末の夕暮れに一人の男が大儀そうに敷居をまたげた。すでに三人の客がある。まだランプをつけないので薄暗い土間に居並ぶ人影もおぼろである。 先客の三 …
牛肉と馬鈴薯(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
明治倶楽部とて芝区桜田本郷町のお堀辺に西洋作の余り立派ではないが、それでも可なりの建物があった、建物は今でもある、しかし持主が代って、今では明治倶楽部その者はなくなって了った。 こ …
読書目安時間:約33分
明治倶楽部とて芝区桜田本郷町のお堀辺に西洋作の余り立派ではないが、それでも可なりの建物があった、建物は今でもある、しかし持主が代って、今では明治倶楽部その者はなくなって了った。 こ …
源おじ(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
都より一人の年若き教師下りきたりて佐伯の子弟に語学教うることほとんど一年、秋の中ごろ来たりて夏の中ごろ去りぬ。夏の初め、彼は城下に住むことを厭いて、半里隔てし、桂と呼ぶ港の岸に移り …
読書目安時間:約24分
都より一人の年若き教師下りきたりて佐伯の子弟に語学教うることほとんど一年、秋の中ごろ来たりて夏の中ごろ去りぬ。夏の初め、彼は城下に住むことを厭いて、半里隔てし、桂と呼ぶ港の岸に移り …
恋を恋する人(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
秋の初の空は一片の雲もなく晴て、佳い景色である。青年二人は日光の直射を松の大木の蔭によけて、山芝の上に寝転んで、一人は遠く相模灘を眺め、一人は読書している。場所は伊豆と相模の国境に …
読書目安時間:約17分
秋の初の空は一片の雲もなく晴て、佳い景色である。青年二人は日光の直射を松の大木の蔭によけて、山芝の上に寝転んで、一人は遠く相模灘を眺め、一人は読書している。場所は伊豆と相模の国境に …
郊外(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
⦅一⦆ 時田先生、名は立派なれど村立小学校の教員である、それも四角な顔の、太い眉の、大きい口の、骨格のたくましい、背の低い、言うまでもなく若い女などにはあまり好かれない方の男。 そ …
読書目安時間:約23分
⦅一⦆ 時田先生、名は立派なれど村立小学校の教員である、それも四角な顔の、太い眉の、大きい口の、骨格のたくましい、背の低い、言うまでもなく若い女などにはあまり好かれない方の男。 そ …
号外(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
ぼろ洋服を着た男爵加藤が、今夜もホールに現われている。彼は多少キじるしだとの評がホールの仲間にあるけれども、おそらくホールの御連中にキ的傾向を持っていないかたはあるまいと思われる。 …
読書目安時間:約11分
ぼろ洋服を着た男爵加藤が、今夜もホールに現われている。彼は多少キじるしだとの評がホールの仲間にあるけれども、おそらくホールの御連中にキ的傾向を持っていないかたはあるまいと思われる。 …
少年の悲哀(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
少年の歓喜が詩であるならば、少年の悲哀もまた詩である。自然の心に宿る歓喜にしてもし歌うべくんば、自然の心にささやく悲哀もまた歌うべきであろう。 ともかく、僕は僕の少年の時の悲哀の一 …
読書目安時間:約12分
少年の歓喜が詩であるならば、少年の悲哀もまた詩である。自然の心に宿る歓喜にしてもし歌うべくんば、自然の心にささやく悲哀もまた歌うべきであろう。 ともかく、僕は僕の少年の時の悲哀の一 …
少年の悲哀(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
少年の歡喜が詩であるならば、少年の悲哀も亦た詩である。自然の心に宿る歡喜にして若し歌ふべくんば、自然の心にさゝやく悲哀も亦た歌ふべきであらう。 兎も角、僕は僕の少年の時の悲哀の一ツ …
読書目安時間:約11分
少年の歡喜が詩であるならば、少年の悲哀も亦た詩である。自然の心に宿る歡喜にして若し歌ふべくんば、自然の心にさゝやく悲哀も亦た歌ふべきであらう。 兎も角、僕は僕の少年の時の悲哀の一ツ …
小春(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
十一月某日、自分は朝から書斎にこもって書見をしていた。その書はウォーズウォルス詩集である、この詩集一冊は自分に取りて容易ならぬ関係があるので。これを手に入れたはすでに八年前のこと、 …
読書目安時間:約20分
十一月某日、自分は朝から書斎にこもって書見をしていた。その書はウォーズウォルス詩集である、この詩集一冊は自分に取りて容易ならぬ関係があるので。これを手に入れたはすでに八年前のこと、 …
鹿狩り(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
『鹿狩りに連れて行こうか』と中根の叔父が突然に言ったので僕はまごついた。『おもしろいぞ、連れて行こうか、』人のいい叔父はにこにこしながら勧めた。 『だッて僕は鉄砲がないもの。』 『 …
読書目安時間:約15分
『鹿狩りに連れて行こうか』と中根の叔父が突然に言ったので僕はまごついた。『おもしろいぞ、連れて行こうか、』人のいい叔父はにこにこしながら勧めた。 『だッて僕は鉄砲がないもの。』 『 …
詩想(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
丘の白雲 大空に漂う白雲の一つあり。童、丘にのぼり松の小かげに横たわりて、ひたすらこれをながめいたりしが、そのまま寝入りぬ。夢は楽しかりき。雲、童をのせて限りなき蒼空をかなたこなた …
読書目安時間:約3分
丘の白雲 大空に漂う白雲の一つあり。童、丘にのぼり松の小かげに横たわりて、ひたすらこれをながめいたりしが、そのまま寝入りぬ。夢は楽しかりき。雲、童をのせて限りなき蒼空をかなたこなた …
酒中日記(新字新仮名)
読書目安時間:約52分
五月三日(明治三十〇年) 「あの男はどうなったかしら」との噂、よく有ることで、四五人集って以前の話が出ると、消えて去くなった者の身の上に、ツイ話が移るものである。 この大河今蔵、恐 …
読書目安時間:約52分
五月三日(明治三十〇年) 「あの男はどうなったかしら」との噂、よく有ることで、四五人集って以前の話が出ると、消えて去くなった者の身の上に、ツイ話が移るものである。 この大河今蔵、恐 …
女難(新字新仮名)
読書目安時間:約46分
今より四年前のことである、(とある男が話しだした)自分は何かの用事で銀座を歩いていると、ある四辻の隅に一人の男が尺八を吹いているのを見た。七八人の人がその前に立っているので、自分も …
読書目安時間:約46分
今より四年前のことである、(とある男が話しだした)自分は何かの用事で銀座を歩いていると、ある四辻の隅に一人の男が尺八を吹いているのを見た。七八人の人がその前に立っているので、自分も …
石清虚(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
雲飛といふ人は盆石を非常に愛翫した奇人で、人々から石狂者と言はれて居たが、人が何と言はうと一切頓着せず、珍しい石の搜索にのみ日を送つて居た。 或日近所の川に漁に出かけて彼處の淵此所 …
読書目安時間:約8分
雲飛といふ人は盆石を非常に愛翫した奇人で、人々から石狂者と言はれて居たが、人が何と言はうと一切頓着せず、珍しい石の搜索にのみ日を送つて居た。 或日近所の川に漁に出かけて彼處の淵此所 …
空知川の岸辺(新字旧仮名)
読書目安時間:約20分
余が札幌に滞在したのは五日間である、僅に五日間ではあるが余は此間に北海道を愛するの情を幾倍したのである。 我国本土の中でも中国の如き、人口稠密の地に成長して山をも野をも人間の力で平 …
読書目安時間:約20分
余が札幌に滞在したのは五日間である、僅に五日間ではあるが余は此間に北海道を愛するの情を幾倍したのである。 我国本土の中でも中国の如き、人口稠密の地に成長して山をも野をも人間の力で平 …
たき火(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
北風を背になし、枯草白き砂山の崕に腰かけ、足なげいだして、伊豆連山のかなたに沈む夕日の薄き光を見送りつ、沖より帰る父の舟遅しとまつ逗子あたりの童の心、その淋しさ、うら悲しさは如何あ …
読書目安時間:約8分
北風を背になし、枯草白き砂山の崕に腰かけ、足なげいだして、伊豆連山のかなたに沈む夕日の薄き光を見送りつ、沖より帰る父の舟遅しとまつ逗子あたりの童の心、その淋しさ、うら悲しさは如何あ …
竹の木戸(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
大庭真蔵という会社員は東京郊外に住んで京橋区辺の事務所に通っていたが、電車の停留所まで半里以上もあるのを、毎朝欠かさずテクテク歩いて運動にはちょうど可いと言っていた。温厚しい性質だ …
読書目安時間:約25分
大庭真蔵という会社員は東京郊外に住んで京橋区辺の事務所に通っていたが、電車の停留所まで半里以上もあるのを、毎朝欠かさずテクテク歩いて運動にはちょうど可いと言っていた。温厚しい性質だ …
富岡先生(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
何公爵の旧領地とばかり、詳細い事は言われない、侯伯子男の新華族を沢山出しただけに、同じく維新の風雲に会しながらも妙な機から雲梯をすべり落ちて、遂には男爵どころか県知事の椅子一にも有 …
読書目安時間:約31分
何公爵の旧領地とばかり、詳細い事は言われない、侯伯子男の新華族を沢山出しただけに、同じく維新の風雲に会しながらも妙な機から雲梯をすべり落ちて、遂には男爵どころか県知事の椅子一にも有 …
怠惰屋の弟子入り(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
亞弗利加洲にアルゼリヤといふ國がある、凡そ世界中此國の人ほど怠惰者はないので、それといふのも畢竟は熱帶地方のことゆえ檸檬や、橙の花咲き亂れて其得ならぬ香四方に立ちこめ、これに觸れる …
読書目安時間:約7分
亞弗利加洲にアルゼリヤといふ國がある、凡そ世界中此國の人ほど怠惰者はないので、それといふのも畢竟は熱帶地方のことゆえ檸檬や、橙の花咲き亂れて其得ならぬ香四方に立ちこめ、これに觸れる …
二少女(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
夏の初、月色街に満つる夜の十時ごろ、カラコロと鼻緒のゆるそうな吾妻下駄の音高く、芝琴平社の後のお濠ばたを十八ばかりの少女、赤坂の方から物案じそうに首をうなだれて来る。 薄闇い狭いぬ …
読書目安時間:約15分
夏の初、月色街に満つる夜の十時ごろ、カラコロと鼻緒のゆるそうな吾妻下駄の音高く、芝琴平社の後のお濠ばたを十八ばかりの少女、赤坂の方から物案じそうに首をうなだれて来る。 薄闇い狭いぬ …
二老人(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
秋は小春のころ、石井という老人が日比谷公園のベンチに腰をおろして休んでいる。老人とは言うものの、やっと六十歳で足腰も達者、至って壮健のほうである。 日はやや西に傾いて赤とんぼの羽が …
読書目安時間:約13分
秋は小春のころ、石井という老人が日比谷公園のベンチに腰をおろして休んでいる。老人とは言うものの、やっと六十歳で足腰も達者、至って壮健のほうである。 日はやや西に傾いて赤とんぼの羽が …
初恋(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
僕の十四の時であった。僕の村に大沢先生という老人が住んでいたと仮定したまえ。イヤサ事実だが試みにそう仮定せよということサ。 この老人の頑固さ加減は立派な漢学者でありながらたれ一人相 …
読書目安時間:約5分
僕の十四の時であった。僕の村に大沢先生という老人が住んでいたと仮定したまえ。イヤサ事実だが試みにそう仮定せよということサ。 この老人の頑固さ加減は立派な漢学者でありながらたれ一人相 …
春の鳥(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
今より六七年前、私はある地方に英語と数学の教師をしていたことがございます。その町に城山というのがあって、大木暗く茂った山で、あまり高くはないが、はなはだ風景に富んでいましたゆえ、私 …
読書目安時間:約16分
今より六七年前、私はある地方に英語と数学の教師をしていたことがございます。その町に城山というのがあって、大木暗く茂った山で、あまり高くはないが、はなはだ風景に富んでいましたゆえ、私 …
日の出(旧字旧仮名)
読書目安時間:約22分
某法學士洋行の送別會が芝山内の紅葉館に開かれ、會の散じたのは夜の八時頃でもあらうか。其崩が七八名、京橋區彌左衞門町の同好倶樂部に落合つたことがある。 小介川文學士が伴ふて來た一人の …
読書目安時間:約22分
某法學士洋行の送別會が芝山内の紅葉館に開かれ、會の散じたのは夜の八時頃でもあらうか。其崩が七八名、京橋區彌左衞門町の同好倶樂部に落合つたことがある。 小介川文學士が伴ふて來た一人の …
非凡なる凡人(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
五六人の年若い者が集まって互いに友の上を噂しあったことがある、その時、一人が—— 僕の小供の時からの友に桂正作という男がある、今年二十四で今は横浜のある会社に技手として雇われもっぱ …
読書目安時間:約17分
五六人の年若い者が集まって互いに友の上を噂しあったことがある、その時、一人が—— 僕の小供の時からの友に桂正作という男がある、今年二十四で今は横浜のある会社に技手として雇われもっぱ …
疲労(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
京橋区三十間堀に大来館という宿屋がある、まず上等の部類で客はみな紳士紳商、電話は客用と店用と二種かけているくらいで、年じゅう十二三人から三十人までの客があるとの事。 ある年の五月半 …
読書目安時間:約6分
京橋区三十間堀に大来館という宿屋がある、まず上等の部類で客はみな紳士紳商、電話は客用と店用と二種かけているくらいで、年じゅう十二三人から三十人までの客があるとの事。 ある年の五月半 …
星(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
都に程近き田舎に年わかき詩人住みけり。家は小高き丘の麓にありて、その庭は家にふさわしからず広く清き流れ丘の木立ちより走り出でてこれを貫き過ぐ。木々は野生えのままに育ち、春は梅桜乱れ …
読書目安時間:約5分
都に程近き田舎に年わかき詩人住みけり。家は小高き丘の麓にありて、その庭は家にふさわしからず広く清き流れ丘の木立ちより走り出でてこれを貫き過ぐ。木々は野生えのままに育ち、春は梅桜乱れ …
まぼろし(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
文造は約束どおり、その晩は訪問しないで、次の日の昼時分まで待った。そして彼女を訪ねた。 懇親の間柄とて案内もなく客間に通って見ると綾子と春子とがいるばかりであった。文造はこの二人の …
読書目安時間:約10分
文造は約束どおり、その晩は訪問しないで、次の日の昼時分まで待った。そして彼女を訪ねた。 懇親の間柄とて案内もなく客間に通って見ると綾子と春子とがいるばかりであった。文造はこの二人の …
節操(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
『房、奥様の出る時何とか言つたかい。』と佐山銀之助は茶の間に入ると直ぐ訊た。 『今日は講習会から後藤様へ一寸廻るから少し遅くなると被仰いました。』 『飯を食せろ!』と銀之助は忌々し …
読書目安時間:約9分
『房、奥様の出る時何とか言つたかい。』と佐山銀之助は茶の間に入ると直ぐ訊た。 『今日は講習会から後藤様へ一寸廻るから少し遅くなると被仰いました。』 『飯を食せろ!』と銀之助は忌々し …
都の友へ、B生より(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
(前略) 久しぶりで孤獨の生活を行つて居る、これも病氣のお蔭かも知れない。色々なことを考へて久しぶりで自己の存在を自覺したやうな氣がする。これは全く孤獨のお蔭だらうと思ふ。此温泉が …
読書目安時間:約5分
(前略) 久しぶりで孤獨の生活を行つて居る、これも病氣のお蔭かも知れない。色々なことを考へて久しぶりで自己の存在を自覺したやうな氣がする。これは全く孤獨のお蔭だらうと思ふ。此温泉が …
武蔵野(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
「武蔵野の俤は今わずかに入間郡に残れり」と自分は文政年間にできた地図で見たことがある。そしてその地図に入間郡「小手指原久米川は古戦場なり太平記元弘三年五月十一日源平小手指原にて戦う …
読書目安時間:約32分
「武蔵野の俤は今わずかに入間郡に残れり」と自分は文政年間にできた地図で見たことがある。そしてその地図に入間郡「小手指原久米川は古戦場なり太平記元弘三年五月十一日源平小手指原にて戦う …
湯ヶ原ゆき(旧字旧仮名)
読書目安時間:約16分
定めし今時分は閑散だらうと、其閑散を狙つて來て見ると案外さうでもなかつた。殊に自分の投宿した中西屋といふは部室數も三十近くあつて湯ヶ原温泉では第一といはれて居ながら而も空室はイクラ …
読書目安時間:約16分
定めし今時分は閑散だらうと、其閑散を狙つて來て見ると案外さうでもなかつた。殊に自分の投宿した中西屋といふは部室數も三十近くあつて湯ヶ原温泉では第一といはれて居ながら而も空室はイクラ …
湯ヶ原より(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
内山君足下 何故そう急に飛び出したかとの君の質問は御尤である。僕は不幸にして之を君に白状してしまはなければならぬことに立到つた。然し或はこれが僕の幸であるかも知れない、たゞ僕の今の …
読書目安時間:約11分
内山君足下 何故そう急に飛び出したかとの君の質問は御尤である。僕は不幸にして之を君に白状してしまはなければならぬことに立到つた。然し或はこれが僕の幸であるかも知れない、たゞ僕の今の …
夜の赤坂(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
東京の夜の有様を話して呉れとの諸君のお望、可しい、話しましよう、然し僕は重に赤坂区に住んで居たから、赤坂区だけの、実地に見た処を話すことに致します。 先づ第一に叔母様などは東京を如 …
読書目安時間:約15分
東京の夜の有様を話して呉れとの諸君のお望、可しい、話しましよう、然し僕は重に赤坂区に住んで居たから、赤坂区だけの、実地に見た処を話すことに致します。 先づ第一に叔母様などは東京を如 …
わかれ(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
わが青年の名を田宮峰二郎と呼び、かれが住む茅屋は丘の半腹にたちて美わしき庭これを囲み細き流れの北の方より走り来て庭を貫きたり。流れの岸には紅楓の類を植えそのほかの庭樹には松、桜、梅 …
読書目安時間:約24分
わが青年の名を田宮峰二郎と呼び、かれが住む茅屋は丘の半腹にたちて美わしき庭これを囲み細き流れの北の方より走り来て庭を貫きたり。流れの岸には紅楓の類を植えそのほかの庭樹には松、桜、梅 …
忘れえぬ人々(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
多摩川の二子の渡しをわたって少しばかり行くと溝口という宿場がある。その中ほどに亀屋という旅人宿がある。ちょうど三月の初めのころであった、この日は大空かき曇り北風強く吹いて、さなきだ …
読書目安時間:約19分
多摩川の二子の渡しをわたって少しばかり行くと溝口という宿場がある。その中ほどに亀屋という旅人宿がある。ちょうど三月の初めのころであった、この日は大空かき曇り北風強く吹いて、さなきだ …
翻訳者としての作品一覧
糸くず(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
市が立つ日であった。近在近郷の百姓は四方からゴーデルヴィルの町へと集まって来た。一歩ごとに体躯を前に傾けて男はのそのそと歩む、その長い脚はかねての遅鈍な、骨の折れる百姓仕事のために …
読書目安時間:約13分
市が立つ日であった。近在近郷の百姓は四方からゴーデルヴィルの町へと集まって来た。一歩ごとに体躯を前に傾けて男はのそのそと歩む、その長い脚はかねての遅鈍な、骨の折れる百姓仕事のために …
“国木田独歩”について
国木田 独歩(くにきだ どっぽ、1871年8月30日(明治4年7月15日) - 1908年(明治41年)6月23日)は、日本の小説家、詩人、ジャーナリスト、編集者。千葉県銚子生まれ、広島県広島市、山口県育ち。
幼名を亀吉、後に哲夫と改名した。筆名は独歩の他、孤島生、鏡面生、鉄斧生、九天生、田舎漢、独歩吟客、独歩生などがある。
(出典:Wikipedia)
幼名を亀吉、後に哲夫と改名した。筆名は独歩の他、孤島生、鏡面生、鉄斧生、九天生、田舎漢、独歩吟客、独歩生などがある。
(出典:Wikipedia)
“国木田独歩”と年代が近い著者
きょうが命日(4月26日)
ダニエル・デフォー(1731年)
ビョルンステェルネ・ビョルンソン(1910年)
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)