大阪圭吉（おおさかけいきち）
1912.03.20 〜 1945.07.02
著者としての作品一覧
あやつり裁判（新字新仮名）
いったい裁判所なんてとこは、いってみりゃア世の中の裏ッ側みたいなとこでしてね……いろんな罪人ばっかり、落ちあつまる……そ …
石塀幽霊（新字新仮名）
秋森家というのは、吉田雄太郎君のいるＮ町のアパートのすぐ西隣にある相当に宏い南向きの屋敷であるが、それは随分と古めかしい …
動かぬ鯨群（新字新仮名）
「どかんと一発撃てば、それでもう、三十円丸儲けさ」 いつでも酔って来るとその女は、そう云ってマドロス達を相手に、死んだ夫 …
カンカン虫殺人事件（新字新仮名）
Ｋ造船工場の第二号乾船渠に勤めている原田喜三郎と山田源之助の二人が行方不明になってから五日目の朝の事である。 失踪者の一 …
寒の夜晴れ（新字新仮名）
また雪の季節がやって来た。雪というと、すぐに私は、可哀そうな浅見三四郎のことを思い出す。 その頃私は、ずっと北の国の或る …
気狂い機関車（新字新仮名）
日本犯罪研究会発会式の席上で、数日前に偶然にも懇意になったＭ警察署の内木司法主任から、不思議な殺人事件の急電を受けて冷い …
銀座幽霊（新字新仮名）
みち幅三間とない横町の両側には、いろとりどりの店々が虹のように軒をつらねて、銀座裏の明るい一団を形づくっていた。青いネオ …
坑鬼（新字新仮名）
室生岬の尖端、荒れ果てた灰色の山の中に、かなり前から稼行を続けていた中越炭礦会社の滝口坑は、ここ二、三年来めきめき活況を …
香水紳士（新字新仮名）
品川の駅で、すぐ前の席へ、その無遠慮なお客さんが乗り込んで来ると、クルミさんは、すっかり元気をなくしてしまった。 「今日 …
三狂人（新字新仮名）
赤沢医師の経営する私立脳病院は、Ｍ市の郊外に近い小高い赭土山の上にこんもりした雑木林を背景に、火葬場へ行く道路を見下すよ …
三の字旅行会（新字新仮名）
赤帽の伝さんは、もうしばらく前から、その奇妙な婦人の旅客達のことに、気づきはじめていた。 伝さんは、東京駅の赤帽であった …
死の快走船（新字新仮名）
太い引きずるような波鳴りの聞えるうらさびた田舎道を、小一時聞も馬を進ませつづけていた私達の前方には、とうとう岬の、キャプ …
闖入者（新字新仮名）
富士山の北麓、吉田町から南へ一里の裾野の山中に、誰れが建てたのか一軒のものさびた別荘風の館がある。その名を、岳陰荘と呼び …
デパートの絞刑吏（新字新仮名）
多分独逸物であったと思うが、或る映画の試写会で、青山喬介——と知り合いになってから、二カ月程後の事である。 早朝五時半。 …
灯台鬼（新字新仮名）
わたし達の勤めている臨海試験所のちょうど真向いに見える汐巻灯台の灯が、なんの音沙汰もなく突然吹き消すように消えてしまった …
とむらい機関車（新字新仮名）
——いや、全く左様ですよ。こう時候がよくなりますと、こうして汽車の旅をするのも、大変楽ですな……時に、貴下はどちらまで？ …
白妖（新字新仮名）
むし暑い闇夜のことだった。 一台の幌型自動車が、熱海から山伝いに箱根へ向けて、十国峠へ登る複雑な登山道を疾走り続けていた …
花束の虫（新字新仮名）
岸田直介が奇怪な死を遂げたとの急報に接した弁護士の大月対次は、恰度忙しい事務もひと息ついた形だったので、歳若いながらも仕 …
幽霊妻（新字新仮名）
——じゃァひとつ、すっかり初めっから申し上げましょう……いや全く、私もこの歳になるまで、ずいぶん変わった世間も見てきまし …