槙村浩
1912.06.01 〜 1938.09.03
著者としての作品一覧
明日はメーデー(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
古ぼけたぜんまいがぜいぜいと音を立てて軋る もう十二時になるのに あなたはまだ帰ってこない くすぶった電球の下で 私はもう一度紙きれを拡げてみる ———八時までにはかならず帰る 待 …
読書目安時間:約3分
古ぼけたぜんまいがぜいぜいと音を立てて軋る もう十二時になるのに あなたはまだ帰ってこない くすぶった電球の下で 私はもう一度紙きれを拡げてみる ———八時までにはかならず帰る 待 …
誤って健康を伝えられた同志たちに(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
健康の一語をかる/″\しく口にするな! 健康の錯誤は健康の犠牲よりいたましい これほどわたしら共同の仕事の大きな邪魔者があろうか! どちらがより多く仕事が出来るか? 獄内で坐ってい …
読書目安時間:約1分
健康の一語をかる/″\しく口にするな! 健康の錯誤は健康の犠牲よりいたましい これほどわたしら共同の仕事の大きな邪魔者があろうか! どちらがより多く仕事が出来るか? 獄内で坐ってい …
異郷なる中国の詩人たちに(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
わたしらはあなたの国では、正しい詩人は舌をひっこぬかれると聞いた わたしらはなお聞いた———資本をつなぐ軍部と軍閥の鉄道の上に ひっこぬかれた詩人らの舌が わたしらの故郷の海のさん …
読書目安時間:約2分
わたしらはあなたの国では、正しい詩人は舌をひっこぬかれると聞いた わたしらはなお聞いた———資本をつなぐ軍部と軍閥の鉄道の上に ひっこぬかれた詩人らの舌が わたしらの故郷の海のさん …
生ける銃架:――満洲駐屯軍兵卒に――(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
高粱の畠を分けて銃架の影はけふも続いて行く 銃架よ、お前はおれの心臓に異様な戦慄を与へる——血のやうな夕日を浴びてお前が黙々と進むとき お前の影は人間の形を失ひ、お前の姿は背嚢に隠 …
読書目安時間:約4分
高粱の畠を分けて銃架の影はけふも続いて行く 銃架よ、お前はおれの心臓に異様な戦慄を与へる——血のやうな夕日を浴びてお前が黙々と進むとき お前の影は人間の形を失ひ、お前の姿は背嚢に隠 …
板垣先生の銅像を拝して(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
たそがれ告ぐる鐘の音に 誘はれて散る木々の葉の 雪は夕日に照りはへて げに厳めしの銅像や (二)自由の祖先高知市の 偉人を偲ぶ銅像の 其の勇ましき姿こそ 永き偉人のかたみなれ (大 …
読書目安時間:約1分
たそがれ告ぐる鐘の音に 誘はれて散る木々の葉の 雪は夕日に照りはへて げに厳めしの銅像や (二)自由の祖先高知市の 偉人を偲ぶ銅像の 其の勇ましき姿こそ 永き偉人のかたみなれ (大 …
犬の一年(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
今年は犬のお正月 犬さん大そうよろこんで 初日の出をば拝みて 「ヤァお目出度う」ワンワンワン 花の咲き出す春の頃 梅桃桜花見して 犬さん酒にほろよひで 三味線ひいてワンワンワン 暑 …
読書目安時間:約1分
今年は犬のお正月 犬さん大そうよろこんで 初日の出をば拝みて 「ヤァお目出度う」ワンワンワン 花の咲き出す春の頃 梅桃桜花見して 犬さん酒にほろよひで 三味線ひいてワンワンワン 暑 …
うさぎの餅つき(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ベッタラコ/\ 「十五夜お月さんにそなへましょ お月のやうにまるくして それを見てゐる人々の 心もまるくいたしましょ」 歌を歌って手拍子を とってをどって餅をつく はたらき者のウサ …
読書目安時間:約1分
ベッタラコ/\ 「十五夜お月さんにそなへましょ お月のやうにまるくして それを見てゐる人々の 心もまるくいたしましょ」 歌を歌って手拍子を とってをどって餅をつく はたらき者のウサ …
英雄ナポレオン(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
南欧の夜の更け行けば 空には清き星の数 銀河の影もたなびきて 風は香りて薫ばしき 月は折しも青く冴え 波も静けき海原に 俄に殺気みなぎりて なびく異国の旗の影 沖の鴎も怪みて 水の …
読書目安時間:約2分
南欧の夜の更け行けば 空には清き星の数 銀河の影もたなびきて 風は香りて薫ばしき 月は折しも青く冴え 波も静けき海原に 俄に殺気みなぎりて なびく異国の旗の影 沖の鴎も怪みて 水の …
大江満雄に(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
こゝに機械の哲学者がある——— 彼は思考し、血潮の中に機械のどよめきをでなく、血潮と共に脈動する機械のリズムを感ずる 彼ははつらつたる工場の諧調を背負うて、齟齬しながら鈍重に歩いて …
読書目安時間:約1分
こゝに機械の哲学者がある——— 彼は思考し、血潮の中に機械のどよめきをでなく、血潮と共に脈動する機械のリズムを感ずる 彼ははつらつたる工場の諧調を背負うて、齟齬しながら鈍重に歩いて …
大きな夢(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
大きな夢を夕べ見た ヒマラヤ山を引ぬいて 万里の長城ひっかつぎ 太平洋を背に負ひ 北極の氷まるのみし あんまり重くてバッタリと そこに倒れて下じきだ 「いたい/\」と思ったら 何だ …
読書目安時間:約1分
大きな夢を夕べ見た ヒマラヤ山を引ぬいて 万里の長城ひっかつぎ 太平洋を背に負ひ 北極の氷まるのみし あんまり重くてバッタリと そこに倒れて下じきだ 「いたい/\」と思ったら 何だ …
小熊秀雄と藤原運(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
サガレン。絶北の植民地。———こゝに小熊秀雄かつて行商の鍬と共に放浪し 数年後藤原運またショベルを携えて徘徊した 小熊秀雄は自然を最もよく背后の凹影に見た 藤原運は自然を最もよく前 …
読書目安時間:約1分
サガレン。絶北の植民地。———こゝに小熊秀雄かつて行商の鍬と共に放浪し 数年後藤原運またショベルを携えて徘徊した 小熊秀雄は自然を最もよく背后の凹影に見た 藤原運は自然を最もよく前 …
おさんどん(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
おさんどんが舟こいだ 真黒どんが舟こいだ そんなに舟こいでどこへ行く 夢のお国へよめ入に 誰がなかうどしましたか なかうどはきつねでございます 「それ見ろ、きつねにだまされた 大方 …
読書目安時間:約1分
おさんどんが舟こいだ 真黒どんが舟こいだ そんなに舟こいでどこへ行く 夢のお国へよめ入に 誰がなかうどしましたか なかうどはきつねでございます 「それ見ろ、きつねにだまされた 大方 …
お節供(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
五月五日はお節供だ いろ/\並んだ人形の 中から飛出す金太郎 けものを集めて角力をやらす そこへ大きな大虎が ノッコリノッコリやって来ると 今までの元気はどこへやら 顔はまっ青ふる …
読書目安時間:約1分
五月五日はお節供だ いろ/\並んだ人形の 中から飛出す金太郎 けものを集めて角力をやらす そこへ大きな大虎が ノッコリノッコリやって来ると 今までの元気はどこへやら 顔はまっ青ふる …
おどり子の出世(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
或所に一人のおどり子がありました。大へんおどる事が上手でした。或日お父さんに向って「お父さん、私はこれから月世界をまはって来たいと思ひます、どうかやって下さい」と云ひますとお父さん …
読書目安時間:約3分
或所に一人のおどり子がありました。大へんおどる事が上手でした。或日お父さんに向って「お父さん、私はこれから月世界をまはって来たいと思ひます、どうかやって下さい」と云ひますとお父さん …
楽隊(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ゴロ/\/\/\ピーカピカ 空の上では楽隊が あちら此方をねりまはる その楽隊の真先は 太鼓たたいて雷さん ピカ/\光らす稲妻さん ポン/\/\/\クツ々々 森の中やら川の中 音楽 …
読書目安時間:約1分
ゴロ/\/\/\ピーカピカ 空の上では楽隊が あちら此方をねりまはる その楽隊の真先は 太鼓たたいて雷さん ピカ/\光らす稲妻さん ポン/\/\/\クツ々々 森の中やら川の中 音楽 …
間島パルチザンの歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
思ひ出はおれを故郷へ運ぶ 白頭の嶺を越え、落葉松の林を越え 蘆の根の黒く凍る沼のかなた 赭ちゃけた地肌に黝ずんだ小舎の続くところ 高麗雉子が谷に啼く咸鏡の村よ 雪溶けの小径を踏んで …
読書目安時間:約7分
思ひ出はおれを故郷へ運ぶ 白頭の嶺を越え、落葉松の林を越え 蘆の根の黒く凍る沼のかなた 赭ちゃけた地肌に黝ずんだ小舎の続くところ 高麗雉子が谷に啼く咸鏡の村よ 雪溶けの小径を踏んで …
京都帝国大学(十四行詩)(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
十二の仮面のような頭蓋時計。肩を垂れ硬張った淫売婦のような白い建物。塀。涸れた レプラの血行路のように交叉する国道 白い上っ張りと黒服とが朝から晩までこの中え出入りする 彼等はもっ …
読書目安時間:約2分
十二の仮面のような頭蓋時計。肩を垂れ硬張った淫売婦のような白い建物。塀。涸れた レプラの血行路のように交叉する国道 白い上っ張りと黒服とが朝から晩までこの中え出入りする 彼等はもっ …
華厳経と法華経(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
華厳経と法華経は古来仏教の二大聖典として、併称された。両者は一世紀、家族奴隷の制度が頂点に達していた時代ヒンドスタンで生れ、中央アジアを経て北伝し、本国では半農奴制が爛熟期から崩壊 …
読書目安時間:約7分
華厳経と法華経は古来仏教の二大聖典として、併称された。両者は一世紀、家族奴隷の制度が頂点に達していた時代ヒンドスタンで生れ、中央アジアを経て北伝し、本国では半農奴制が爛熟期から崩壊 …
小犬と太郎さん(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
或所に太郎といふ子供がありました。太郎は大へん犬ずきでした。或日太郎はお母さんに二十銭お小づかいをいたゞきました。太郎は「何を買はうかなあ」といひ乍ら町を歩いて居ました。太郎はあち …
読書目安時間:約3分
或所に太郎といふ子供がありました。太郎は大へん犬ずきでした。或日太郎はお母さんに二十銭お小づかいをいたゞきました。太郎は「何を買はうかなあ」といひ乍ら町を歩いて居ました。太郎はあち …
孝太郎と悪太郎(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
或所に孝太郎といふ人がありました。家は大へん貧乏でありました。所が其の隣に悪太郎と云ふ人がありましたが家は大金持でした。孝太郎は大へん孝行者で家が貧乏なため中風にかゝってゐるお父さ …
読書目安時間:約3分
或所に孝太郎といふ人がありました。家は大へん貧乏でありました。所が其の隣に悪太郎と云ふ人がありましたが家は大金持でした。孝太郎は大へん孝行者で家が貧乏なため中風にかゝってゐるお父さ …
獄中のコンミューンの戦士の詩を憶って(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
コンミューンの戦士をして墓の中より起たしめよ、よし東方の墓堀り人夫らが 釘づけ、磐石の錘を据え置こうと わが森山啓氏が肩をすくめ、全身の力もて突立ち上る時 あなたはアトラスのように …
読書目安時間:約1分
コンミューンの戦士をして墓の中より起たしめよ、よし東方の墓堀り人夫らが 釘づけ、磐石の錘を据え置こうと わが森山啓氏が肩をすくめ、全身の力もて突立ち上る時 あなたはアトラスのように …
獄内にてドイツの同志を思う歌:――高知牢獄にて――(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
鎌と槌をうちぬく ひろ/″\とした 美くしい 自由の花園をへだてゝ 砲口をそなえた二つの牢獄がそゝり立つ! ———日本! 東方の突端 この蜜房のようなじめ/\した数千の牢獄の一画に …
読書目安時間:約5分
鎌と槌をうちぬく ひろ/″\とした 美くしい 自由の花園をへだてゝ 砲口をそなえた二つの牢獄がそゝり立つ! ———日本! 東方の突端 この蜜房のようなじめ/\した数千の牢獄の一画に …
四季(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
春の神様陽気だな 天女の羽や夢御殿 梅、桃、桜、色々の 花を咲かせて楽しんだ なぜ/\こんなに陽気だろ 夏の神様大おこり はげた頭を光らして 春の神様追ひやって 雷さまがおきに入り …
読書目安時間:約1分
春の神様陽気だな 天女の羽や夢御殿 梅、桃、桜、色々の 花を咲かせて楽しんだ なぜ/\こんなに陽気だろ 夏の神様大おこり はげた頭を光らして 春の神様追ひやって 雷さまがおきに入り …
詩諷:大江鉄麿諷射宣言(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
「われ/\は諷射しよう!」 と詩人大江鉄麿は、幅広いこめかみを引きつけて吃りながら言った 「保留と伏字の泥沼で、編輯者が自分で自分の評判を悪くしたとき 犬の詩を書く代りに書かすこと …
読書目安時間:約1分
「われ/\は諷射しよう!」 と詩人大江鉄麿は、幅広いこめかみを引きつけて吃りながら言った 「保留と伏字の泥沼で、編輯者が自分で自分の評判を悪くしたとき 犬の詩を書く代りに書かすこと …
出征(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
今宵電車は進行を止め、バスは傾いたまゝ動かうともせぬ 沿道の両側は雪崩れうつ群衆、提灯と小旗は濤のように蜒り 歓呼の声が怒濤のように跳ね返るなかをおれたちは次々にアーチを潜り、舗道 …
読書目安時間:約4分
今宵電車は進行を止め、バスは傾いたまゝ動かうともせぬ 沿道の両側は雪崩れうつ群衆、提灯と小旗は濤のように蜒り 歓呼の声が怒濤のように跳ね返るなかをおれたちは次々にアーチを潜り、舗道 …
シュレジェンの織工によせて(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
おなじみの古調で ハイネはしみじみとシュレジェンの織工の歌をぼくに告げた 無慈悲な神々、王と、不実な祖国とえ三重の呪咀を織りこんだむかしの労働者の歌を その后ぼくは皇帝の監獄部屋で …
読書目安時間:約1分
おなじみの古調で ハイネはしみじみとシュレジェンの織工の歌をぼくに告げた 無慈悲な神々、王と、不実な祖国とえ三重の呪咀を織りこんだむかしの労働者の歌を その后ぼくは皇帝の監獄部屋で …
人民詩人への戯詩(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
「ここは穴だ 黒くて臭い」 これは中野重治の生涯のスローガンだった 彼は帝国ホテルのまん中で立停り 鼻をいじりながらこう呟いた それから機関車の後姿を見送って うや/\しく敬礼しな …
読書目安時間:約4分
「ここは穴だ 黒くて臭い」 これは中野重治の生涯のスローガンだった 彼は帝国ホテルのまん中で立停り 鼻をいじりながらこう呟いた それから機関車の後姿を見送って うや/\しく敬礼しな …
水車小屋(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
村のはづれの水車小屋 ひとり淋しく立って居る 向の川の水車 しぶきをパッと散らしては ぐる/\/\と威勢よく 風吹く時も雨の日も 休まずたはまず廻ってる お日さん西に沈みかけ 夕の …
読書目安時間:約1分
村のはづれの水車小屋 ひとり淋しく立って居る 向の川の水車 しぶきをパッと散らしては ぐる/\/\と威勢よく 風吹く時も雨の日も 休まずたはまず廻ってる お日さん西に沈みかけ 夕の …
青春:献じる詩(牢獄にて)(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
(若き日の孤独を灼きつくす情熱を われらに与えよ われらをして戦いに凍えたる手と疲れたる唇に 友を亨けしめよ 銀の鉛屋根の上に 朽葉色の標燈の照らす夜を われらの老いたる母のひとり …
読書目安時間:約9分
(若き日の孤独を灼きつくす情熱を われらに与えよ われらをして戦いに凍えたる手と疲れたる唇に 友を亨けしめよ 銀の鉛屋根の上に 朽葉色の標燈の照らす夜を われらの老いたる母のひとり …
世界大戦の後:(時事問題)(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
今より凡そ八年前大正三年の六月も将にくれんとする時、突如天の一方より来った飛電は全欧否全世界の人民を驚倒せしめ、わづか九日の間で英仏独墺露の五強国は戈をふるって立った。我大日本帝国 …
読書目安時間:約2分
今より凡そ八年前大正三年の六月も将にくれんとする時、突如天の一方より来った飛電は全欧否全世界の人民を驚倒せしめ、わづか九日の間で英仏独墺露の五強国は戈をふるって立った。我大日本帝国 …
世相の一面(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
「熊さん今日はどうしたか、朝から病気でお休か」 「いや/\会社もこまるでネ、賃銀ね上げの怠業さ」 (二)「熊さん今日はどうしたか、又怠業ヂャあるまいネ」 「イエ/\どうしてもう今日 …
読書目安時間:約1分
「熊さん今日はどうしたか、朝から病気でお休か」 「いや/\会社もこまるでネ、賃銀ね上げの怠業さ」 (二)「熊さん今日はどうしたか、又怠業ヂャあるまいネ」 「イエ/\どうしてもう今日 …
一九三二・二・二六:―白テロに斃た××聯隊の革命的兵士に―(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
営舎の高窓ががた/\と揺れる ばったのやうに塀の下にくつゝいてゐる俺達の上を 風は横なぐりに吹き 芝草は頬を、背筋を、針のやうに刺す 兵営の窓に往き来する黒い影と 時どき営庭の燈に …
読書目安時間:約3分
営舎の高窓ががた/\と揺れる ばったのやうに塀の下にくつゝいてゐる俺達の上を 風は横なぐりに吹き 芝草は頬を、背筋を、針のやうに刺す 兵営の窓に往き来する黒い影と 時どき営庭の燈に …
田木繁に(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
(前半紛失) このエピソードを思い出すたびに、わたしらはなぜか最近のあなたの詩を思い出さずにはいられない 昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている 同志田木繁、こん …
読書目安時間:約1分
(前半紛失) このエピソードを思い出すたびに、わたしらはなぜか最近のあなたの詩を思い出さずにはいられない 昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている 同志田木繁、こん …
ダッタン海峡:――ダッタン海峡以南、北海道の牢獄にある人民××革命の同志たちに――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
春の銀鼠色が朝の黒樺を南からさしのばした腕のように一直線に引っつかんで行く 凍った褐色の堀割が、白いドローキの地平を一面に埋める ———ダッタン海峡!ふいに一匹の迷い栗鼠が雪林から …
読書目安時間:約3分
春の銀鼠色が朝の黒樺を南からさしのばした腕のように一直線に引っつかんで行く 凍った褐色の堀割が、白いドローキの地平を一面に埋める ———ダッタン海峡!ふいに一匹の迷い栗鼠が雪林から …
長詩:バイロン・ハイネ――獄中の一断想――(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
その時僕は牢獄の中に坐ってゐた 格子が 僕と看守の腰のピストルとの間をへだてゝゐた 看守は わざ/\低くつくりつけた窓からのぞきこむために 朝々うやうやしく僕にお辞儀し 僕はまだ脱 …
読書目安時間:約17分
その時僕は牢獄の中に坐ってゐた 格子が 僕と看守の腰のピストルとの間をへだてゝゐた 看守は わざ/\低くつくりつけた窓からのぞきこむために 朝々うやうやしく僕にお辞儀し 僕はまだ脱 …
鶴と鴬(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
よく昔から梅に鶯、松に鶴と申します。これは或所のお話です。近頃は日本付近にあまり鶴が居ないので珍らしいものです。これは朝鮮と支那との境の山奥に珍らしくも猟人等の手をのがれて命をつな …
読書目安時間:約3分
よく昔から梅に鶯、松に鶴と申します。これは或所のお話です。近頃は日本付近にあまり鶴が居ないので珍らしいものです。これは朝鮮と支那との境の山奥に珍らしくも猟人等の手をのがれて命をつな …
テレモピレノ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
一峯吹く嵐音絶えて鐘の音遠く月落ちて 露は真珠としたゝりつ風や松葉を払ふらむ 二友に別れし雁一つ空に声して飛び行けば 苔むす石碑人絶えて無情の草木涙あり 三訪ふ人稀の石碑に霧や不断 …
読書目安時間:約1分
一峯吹く嵐音絶えて鐘の音遠く月落ちて 露は真珠としたゝりつ風や松葉を払ふらむ 二友に別れし雁一つ空に声して飛び行けば 苔むす石碑人絶えて無情の草木涙あり 三訪ふ人稀の石碑に霧や不断 …
電灯と浦島(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
昔は電気がなかったから 昔の昔大昔生れて死んだ浦島に 電気を見せてやったなら 大へんびっくりするだろと 電気を見せたら「オーヤオヤ」 「此の電気はエライ暗いなあ」 ハテナハテナ 昔 …
読書目安時間:約1分
昔は電気がなかったから 昔の昔大昔生れて死んだ浦島に 電気を見せてやったなら 大へんびっくりするだろと 電気を見せたら「オーヤオヤ」 「此の電気はエライ暗いなあ」 ハテナハテナ 昔 …
同志下司順吉(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
———同志よ固く結べ生死を共にせん ———いかなる迫害にもあくまで屈せずに ———われら若き兵士プロレタリアの それは牢獄の散歩の時間だった 独房の前で彼のトランクを小脇に抱えてい …
読書目安時間:約2分
———同志よ固く結べ生死を共にせん ———いかなる迫害にもあくまで屈せずに ———われら若き兵士プロレタリアの それは牢獄の散歩の時間だった 独房の前で彼のトランクを小脇に抱えてい …
同志古味峯次郎:――現在高知牢獄紙折工なる同氏に――(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
誰がこの困難無比の時代に 労働者の利益のために最も正しい道を選んだか ———壁に頭を打ちあてるようなこの時代に その一つの例をおれは示そう———確かに正しく! 古味峯次郎君 彼は鋼 …
読書目安時間:約7分
誰がこの困難無比の時代に 労働者の利益のために最も正しい道を選んだか ———壁に頭を打ちあてるようなこの時代に その一つの例をおれは示そう———確かに正しく! 古味峯次郎君 彼は鋼 …
入所時感想録(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
六三五番氏名吉田豊道 一犯罪するに至った筋道を記せ 自分ハ最初世上ノ俗論ニ迷ハサレテ、マルクス主義ハ一箇ノユートピアニ過ギナイト信ジテ居タ。シカモ世上ノ反マルクス主義論ハ矛盾百出迷 …
読書目安時間:約2分
六三五番氏名吉田豊道 一犯罪するに至った筋道を記せ 自分ハ最初世上ノ俗論ニ迷ハサレテ、マルクス主義ハ一箇ノユートピアニ過ギナイト信ジテ居タ。シカモ世上ノ反マルクス主義論ハ矛盾百出迷 …
野兎の歌(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
(ふん、芸術家ってものは、獄中ですらきれ/″\ながら守りたてゝいる組織を、あまり勝手に外で、解散しすぎるぢゃないか。そんな組織なら連袂脱盟して政治専一にしろよ。——と言った別れしな …
読書目安時間:約3分
(ふん、芸術家ってものは、獄中ですらきれ/″\ながら守りたてゝいる組織を、あまり勝手に外で、解散しすぎるぢゃないか。そんな組織なら連袂脱盟して政治専一にしろよ。——と言った別れしな …
ハイカラさんとムカシさん(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ハイカラさんの一人言 「ハイカラにせねば大正の文明にをくれるよ」 そこへ出て来た昔さん 「左様でござるか拙者には トント合てんがゆき申さぬ ハイカラ、ハイカラと申す者 唐、天竺の言 …
読書目安時間:約1分
ハイカラさんの一人言 「ハイカラにせねば大正の文明にをくれるよ」 そこへ出て来た昔さん 「左様でござるか拙者には トント合てんがゆき申さぬ ハイカラ、ハイカラと申す者 唐、天竺の言 …
ハンニバル雪のアルプ越(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
嗚呼英雄やハンニバル にくさはにくしローマ国 未だ十歳の少年が ローマを討てと叫びたり (二)あたりは暗き森の中 神を拝してひざまづき 必ずローマ討たなんと 誓は立てぬおごそかに此 …
読書目安時間:約1分
嗚呼英雄やハンニバル にくさはにくしローマ国 未だ十歳の少年が ローマを討てと叫びたり (二)あたりは暗き森の中 神を拝してひざまづき 必ずローマ討たなんと 誓は立てぬおごそかに此 …
母校を去るにのぞみて(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
思へば四年の其の間教へを受けし学び舎に今日ぞ別れん別れても心はなどて別るべき (二)我は学びぬこの部屋に我は遊びぬこの庭に一つ/\の思ひ出に今ぞ身にしむ師の教桜の花に送られて小鳥の …
読書目安時間:約1分
思へば四年の其の間教へを受けし学び舎に今日ぞ別れん別れても心はなどて別るべき (二)我は学びぬこの部屋に我は遊びぬこの庭に一つ/\の思ひ出に今ぞ身にしむ師の教桜の花に送られて小鳥の …
ポスト(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
夕方に雨が降り出した 小供は家へ走りこむ ポストは家へはいれない 雷ごろ/\なり出して ポストはシク/\泣いて居る 今まで町で遊んでた 四つ辻かどに立って居る そのまゝ其所で立ずく …
読書目安時間:約1分
夕方に雨が降り出した 小供は家へ走りこむ ポストは家へはいれない 雷ごろ/\なり出して ポストはシク/\泣いて居る 今まで町で遊んでた 四つ辻かどに立って居る そのまゝ其所で立ずく …
松の影(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
何百年のその間 村の境に立ってゐる 一本松の松の影 今はだん/\枯れて来て 「かうまではかなく成ったか」と 空をあふいで一人言 「この私が生れたは 丁度今からかぞへたら 六百年の其 …
読書目安時間:約1分
何百年のその間 村の境に立ってゐる 一本松の松の影 今はだん/\枯れて来て 「かうまではかなく成ったか」と 空をあふいで一人言 「この私が生れたは 丁度今からかぞへたら 六百年の其 …
毛利孟夫に(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
これやこの毛利孟夫 山間の獄にペンを撫し 戦いに病める君が身を養わんと 函数を釣り 積分にゆあみし ひねもす 土地と資本の 数字と 符号の 時空における 不統一の空隙を逍遥する 君 …
読書目安時間:約1分
これやこの毛利孟夫 山間の獄にペンを撫し 戦いに病める君が身を養わんと 函数を釣り 積分にゆあみし ひねもす 土地と資本の 数字と 符号の 時空における 不統一の空隙を逍遥する 君 …
餅の歌:――全農の林延造氏に――(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
餅とは 何と 鋤き返された幼い南の郊外の野の思い出のように 甘いものだろう! 高岡の ひとりぼっちの 叩き廻っても後の沼地一ぱいがらんどうな響きしかはね返してこぬ 豚箱の中で 僕は …
読書目安時間:約4分
餅とは 何と 鋤き返された幼い南の郊外の野の思い出のように 甘いものだろう! 高岡の ひとりぼっちの 叩き廻っても後の沼地一ぱいがらんどうな響きしかはね返してこぬ 豚箱の中で 僕は …
森山啓に(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
漠冥たる成層が旋律を地上で引き裂く 私はあなたの健康がそれに耐え得るかを気遣った こんな場合、あなたは物狂わしくなるにはあまりに古典的だ そしてあなたのE線はひとりでに鳴ることを止 …
読書目安時間:約1分
漠冥たる成層が旋律を地上で引き裂く 私はあなたの健康がそれに耐え得るかを気遣った こんな場合、あなたは物狂わしくなるにはあまりに古典的だ そしてあなたのE線はひとりでに鳴ることを止 …
郵便さん(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ポストにカチ/\かぎはめて 郵便物をとり出して スタンプをしたらエッサッサ 隣の村へとエッサッサ お腰でカバンがガッタガタ お腰でわらぢがブーラブラ 早く行け/\エッサッサ 早く行 …
読書目安時間:約1分
ポストにカチ/\かぎはめて 郵便物をとり出して スタンプをしたらエッサッサ 隣の村へとエッサッサ お腰でカバンがガッタガタ お腰でわらぢがブーラブラ 早く行け/\エッサッサ 早く行 …
夢御殿(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
夢に夢見る夢御殿サンゴルビーの屋根や床 ダイヤモンドの床鏡庭には金の築山や 銀をとかした噴水に不老の泉くみませう 不死の薬の雨がふり金銀宝石ちりばめた よろひかぶとのいでたちに 出 …
読書目安時間:約1分
夢に夢見る夢御殿サンゴルビーの屋根や床 ダイヤモンドの床鏡庭には金の築山や 銀をとかした噴水に不老の泉くみませう 不死の薬の雨がふり金銀宝石ちりばめた よろひかぶとのいでたちに 出 …
養蚕の歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
我が日の本の帝国の国をば富ます第一は二寸の虫の 吐き出づる白き生糸と知られける (二)遠くは昔神代より伝へ/\て三千年 蚕の糸も集まれば国の命をつなぐなり生糸の光沢かゞやきて光は及 …
読書目安時間:約1分
我が日の本の帝国の国をば富ます第一は二寸の虫の 吐き出づる白き生糸と知られける (二)遠くは昔神代より伝へ/\て三千年 蚕の糸も集まれば国の命をつなぐなり生糸の光沢かゞやきて光は及 …
私は紙である(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
高い/\一万尺あまりもあらうといふ山の上に私は生れたのでした、或日一人の金持らしい人が登ってまゐりまして私や私の仲間を見て「惜しいものだ、りっぱな紙に成るのに」といはれました。私は …
読書目安時間:約3分
高い/\一万尺あまりもあらうといふ山の上に私は生れたのでした、或日一人の金持らしい人が登ってまゐりまして私や私の仲間を見て「惜しいものだ、りっぱな紙に成るのに」といはれました。私は …
我々は牢獄で何をなすべきか(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
現在ほど、国家機構に直面する牢獄におけるわれ/\の態度の乱れ勝ちな、しかも現在ほど、その統一を必要とする時代はない。 われ/\はこれについて、苦惨な体験にもとづき、左の如きものを基 …
読書目安時間:約4分
現在ほど、国家機構に直面する牢獄におけるわれ/\の態度の乱れ勝ちな、しかも現在ほど、その統一を必要とする時代はない。 われ/\はこれについて、苦惨な体験にもとづき、左の如きものを基 …
“槙村浩”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)