小栗虫太郎（おぐりむしたろう）
1901.03.14 〜 1946.02.10
著者としての作品一覧
一週一夜物語（新字新仮名）
読書目安時間：約18分
一、大人 OGrie 僕は、「実話」というのが大の嫌いだから、ここには本当のことを書く。 というものの、どうもこれが難題なので、弱る。作らず、嘘でなく、じっさい僕が聴いた他人の告白 …
オフェリヤ殺し（新字新仮名）
読書目安時間：約59分
序、さらば沙翁舞台よ すでに国書の御印も済み 幼友達なれど毒蛇とも思う二人の者が 使節の役を承わり、予が行手の露払い まんまと道案内しようとの魂胆。 何んでもやるがよいわ。おのが仕 …
紅毛傾城（新字新仮名）
読書目安時間：約51分
序ベーリング黄金郷の所在を知ること ならびに千島ラショワ島の海賊砦のこと 四月このかた、薬餌から離れられず、そうでなくてさえも、夏には人一倍弱いのであるが、この夏私は、暑気が募るに …
黒死館殺人事件（新字新仮名）
読書目安時間：約9時間53分
聖アレキセイ寺院の殺人事件に法水が解決を公表しなかったので、そろそろ迷宮入りの噂が立ちはじめた十日目のこと、その日から捜査関係の主脳部は、ラザレフ殺害者の追求を放棄しなければならな …
「黒死館殺人事件」著者之序（新字新仮名）
読書目安時間：約3分
「黒死館殺人事件」の完成によって、それまで発表した幾つかの短篇は、いずれも、路傍の雑草のごとく、哀われ果敢ないものになってしまった。のみならず、本篇が「新青年」に連載中は、褒められ …
後光殺人事件（新字新仮名）
読書目安時間：約49分
一、合掌する屍体 前捜査局長で目下一流の刑事弁護士である法水麟太郎は、招かれた精霊の去る日に、新しい精霊が何故去ったか——を突き究めねばならなかった。と云うのは、七月十六日の朝、普 …
獅子は死せるに非ず：終刊の辞に代えて（新字新仮名）
読書目安時間：約2分
「シュピオ」に、終刊号が出ることになった。 われわれは、ほぼ所期の目的を達成したのであるから、此処で終止符を打つことにする。 人は惜しまれ……花は爛漫のとき……そして「シュピオ」は …
失楽園殺人事件（新字新仮名）
読書目安時間：約29分
湯の町Ｋと、汀から十丁の沖合にある鵯島との間に、半ば朽ちた、粗末な木橋が蜿蜒と架っている。そして、土地ではその橋の名を、詩人青秋氏の称呼が始まりで、嘆きの橋と呼んでいるのだ。 その …
地虫（新字新仮名）
読書目安時間：約52分
大都市は、海にむかって漏泄の道をひらいている。その大暗渠は、社会の穢粕と疲憊とを吸いこんでゆく。その汚水は、都市の秘密、腐敗、醜悪を湛えてまんまんと海に吐きだす。ところが、どんな都 …
白蟻（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間49分
かようなことを、作者として、口にすべきではないであろうが、自分が書いた幾つかのなかでも、やはり好きなものと、嫌いなものとの別が、あるのは否まれぬと思う。わけても、この「白蟻」は、巧 …
人外魔境：01 有尾人（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間18分
フランスの自動車会社シトロエンの探検隊——。これは、米国地理学協会ほどの大規模なものではないが、とにかく一営利会社としてはなかなかの仕事をしている。最初は、アフリカのサハラ沙漠を牽 …
人外魔境：03 天母峰（新字新仮名）
読書目安時間：約43分
わが折竹孫七の六年ぶりの帰朝は、そろそろ、魔境、未踏地の材料も尽きかけて心細くなっていた私にとり、じつに天来の助け舟のようなものであった。では、それほど私を悦ばせる折竹とはいかなる …
人外魔境：05 水棲人（新字新仮名）
読書目安時間：約41分
折竹孫七が、ブラジル焼酎の“Pinga”というのを引っさげて、私の家へ現われたのが大晦日の午後。さては今日こそいよいよ折竹め秘蔵のものを出すな。このブラジル焼酎を飲りながらアマゾン …
人外魔境：08 遊魂境（新字新仮名）
読書目安時間：約42分
いよいよ本篇から、魔境記も大ものばかりになってくる。まず、その手初めが“Ser-mik-suah”グリーンランド中部高原の北緯七十五度あたり、氷河と峻険と猛風雪と酷寒、広茫数百の氷 …
人外魔境：10 地軸二万哩（新字新仮名）
読書目安時間：約41分
——折竹氏、中央亜細亜へゆく。世界の屋根、パミール高原中の大魔境「大地軸孔」をさぐるため、近日ロンドンを出発、英印連絡空路により、アフガニスタンのグワダールへ赴く予定。 とこんな記 …
聖アレキセイ寺院の惨劇（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間6分
聖アレキセイ寺院——。世俗に聖堂と呼ばれている、このニコライ堂そっくりな天主教の大伽藍が、雑木林に囲まれた東京の西郊Ｉの丘地に、Ｒ大学の時計塔と高さを競って聳り立っているのを……。 …
絶景万国博覧会（新字新仮名）
読書目安時間：約32分
なんにしろ明治四十一年の事とて、その頃は、当今の接庇雑踏とは異なり、入谷田圃にも、何処かもの鄙びた土堤の悌が残っていた。遠見の北廓を書割にして、茅葺屋根の農家がまだ四五軒も残ってい …
潜航艇「鷹の城」（新字新仮名）
読書目安時間：約2時間9分
第一編海底の惨劇 一、海—武人の墓 それは、夜暁までに幾ばくもない頃であった。 すでに雨は止み、波頭も低まって、その轟きがいくぶん衰えたように思われたが、闇はその頃になるとひとしお …
「太平洋漏水孔」漂流記（新字新仮名）
読書目安時間：約37分
竜宮から来た孤児 前作「天母峯」で活躍した折竹孫七の名を、読者諸君はお忘れではないと思う。 アメリカ自然科学博物館の名鳥獣採集者として、非番でも週金五百ドルはもらう至宝的存在だ。そ …
人魚謎お岩殺し（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間7分
今こそ、二三流の劇場を歩いているとはいえ、その昔、浅尾里虹の一座には、やはり小屋掛けの野天芝居時代があった。 それでこそ、その名は私たちの耳に、なかなか親しみ深くでもあり、よしんば …
方子と末起（新字新仮名）
読書目安時間：約23分
一、髪を切られる少女 （方子からの手紙） 末起ちゃん、お手紙有難う。 ほんとうにお姉さまは、末起ちゃんのために二年越しの敷布のうえがすこしも淋しくはありません。 行くんですってね… …
夢殿殺人事件（新字新仮名）
読書目安時間：約56分
一、密室の孔雀明王 ——（前文略）違法とは存じましたけれども、貴方様がお越しになるまで、所轄署への報告を差控える事に致しました。と申しますのは、まことにそれが、現世では見ようにも見 …