中井正一
1900.02.14 〜 1952.05.18
著者としての作品一覧
新しい神話を追い求めつつ(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
夜の家庭の雑談の中で、十歳の女の子が、「神様はほんとにあるの、地球の外は宇宙でしょう。神様は何処に棲むの?」と問うた。 皆はっと顔を見あわせて、一瞬たじろいだ。そう簡単に答えられる …
読書目安時間:約2分
夜の家庭の雑談の中で、十歳の女の子が、「神様はほんとにあるの、地球の外は宇宙でしょう。神様は何処に棲むの?」と問うた。 皆はっと顔を見あわせて、一瞬たじろいだ。そう簡単に答えられる …
生きている空間:――映画空間論への序曲(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
ヘーゲルの弁証法が生れる周囲には、その頃の青年ドイツ派ロマン的皮肉があると考える人々がある。ロマン的皮肉とは、ヘーゲルの友人のゾルゲルで代表されるところの一つの表現、自分達の凡ての …
読書目安時間:約8分
ヘーゲルの弁証法が生れる周囲には、その頃の青年ドイツ派ロマン的皮肉があると考える人々がある。ロマン的皮肉とは、ヘーゲルの友人のゾルゲルで代表されるところの一つの表現、自分達の凡ての …
うつす(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
インドの王様が——たいていの物語はこれで始まる——二人の画家に壁画を描かしめた。その壁は相面した二つの巌壁である。ようやく期日が迫るにあたって、一人の画家は彩色美しく極楽の壮厳を描 …
読書目安時間:約7分
インドの王様が——たいていの物語はこれで始まる——二人の画家に壁画を描かしめた。その壁は相面した二つの巌壁である。ようやく期日が迫るにあたって、一人の画家は彩色美しく極楽の壮厳を描 …
生まれ変った赤坂離宮(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
二つの足で立つようになるために、人間は二十万年もころんでは立ち、ころんでは立ちしたんだろう。そして、手が自由になったとき、どんな気持ちがしただろう。 ものをつかんで、土の上に立った …
読書目安時間:約4分
二つの足で立つようになるために、人間は二十万年もころんでは立ち、ころんでは立ちしたんだろう。そして、手が自由になったとき、どんな気持ちがしただろう。 ものをつかんで、土の上に立った …
映画と季感(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
これまで映画は、夏興行のものを、冬撮ることになり、ブルブル慄えながら裸かものを撮り、夏の真中に着物をいっぱい着込んで、塩をいっぱいまいて雪のつもりにしたものであった。 しかしそれは …
読書目安時間:約6分
これまで映画は、夏興行のものを、冬撮ることになり、ブルブル慄えながら裸かものを撮り、夏の真中に着物をいっぱい着込んで、塩をいっぱいまいて雪のつもりにしたものであった。 しかしそれは …
映画のもつ文法(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
すべての民族の言語が、文法をそれぞれもっているのをみて、私はいつも考えさせられるのである。誰もこれをつくる約束の会議を開いたのでもないのに、ちょうど水晶が結晶をつくるように、精密な …
読書目安時間:約5分
すべての民族の言語が、文法をそれぞれもっているのをみて、私はいつも考えさせられるのである。誰もこれをつくる約束の会議を開いたのでもないのに、ちょうど水晶が結晶をつくるように、精密な …
絵画の不安(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
真に在るものは不安の上にある、というハイデッガーの考えかたには何ものか深いものがある。存在して、しかも存在のさながらの姿より隔てられているという嘆き。存在のふるさとに還りたきのぞみ …
読書目安時間:約12分
真に在るものは不安の上にある、というハイデッガーの考えかたには何ものか深いものがある。存在して、しかも存在のさながらの姿より隔てられているという嘆き。存在のふるさとに還りたきのぞみ …
過剰の意識(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
何年前であったか、親不知子不知のトンネルをでたころであった。前に座っていた胸を病んでいると思える青年が、突然 「ああ海はいい、海はいいなあ……」 といって、一直線にのびている黒い日 …
読書目安時間:約5分
何年前であったか、親不知子不知のトンネルをでたころであった。前に座っていた胸を病んでいると思える青年が、突然 「ああ海はいい、海はいいなあ……」 といって、一直線にのびている黒い日 …
カットの文法(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
『詩経』は中国での万葉集ともいうべき、まことに可憐な詩句と自由な愛がうたわれている。しかし、この詩篇を注釈した中国の最古の最大の美学者は、「詩は志なり」「詩は刺なり」といい放ってい …
読書目安時間:約5分
『詩経』は中国での万葉集ともいうべき、まことに可憐な詩句と自由な愛がうたわれている。しかし、この詩篇を注釈した中国の最古の最大の美学者は、「詩は志なり」「詩は刺なり」といい放ってい …
壁(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
群青のところどころ剥げて、木目の寂びてあらわなる上に、僅かに仏像が残っている。みずからの渉跡を没することでみずから無の示す空寂の美わしさを現わす仏像を載せて、壁はみずからを時の錆に …
読書目安時間:約6分
群青のところどころ剥げて、木目の寂びてあらわなる上に、僅かに仏像が残っている。みずからの渉跡を没することでみずから無の示す空寂の美わしさを現わす仏像を載せて、壁はみずからを時の錆に …
機構への挑戦:――「場所」から「働き」へ――(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
私はこの半年間にこんな経験をした。 私は大きな組織と機関に属する者としてものの考え方が、場所とかスペースの考え方では割切れない、新たな考え方「働き」或いは「機能」(ファンクション) …
読書目安時間:約4分
私はこの半年間にこんな経験をした。 私は大きな組織と機関に属する者としてものの考え方が、場所とかスペースの考え方では割切れない、新たな考え方「働き」或いは「機能」(ファンクション) …
巨像を彫るもの(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
これまで、誰でも図書館とは、寂かな、がらんとした庫のようなシーンとした、け押されるような感じのところとなっていたのである。そこには古い本があればあるほど、威張れたのである。また、そ …
読書目安時間:約5分
これまで、誰でも図書館とは、寂かな、がらんとした庫のようなシーンとした、け押されるような感じのところとなっていたのである。そこには古い本があればあるほど、威張れたのである。また、そ …
霧の中のヨードル(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
一九二二年頃の事である。 朝日新聞が写真班を組織して、富山から大町へぬけるコースを募集したことがあった。藤木九三氏、長谷川写真班員等も同行した。 そのとき剱と立山の「主」、かの有名 …
読書目安時間:約2分
一九二二年頃の事である。 朝日新聞が写真班を組織して、富山から大町へぬけるコースを募集したことがあった。藤木九三氏、長谷川写真班員等も同行した。 そのとき剱と立山の「主」、かの有名 …
近代美の研究(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間51分
教権による重い刑罰によって脅かされたにもかかわらず、地球の自転がついに人類の真実として獲られたことは、思想的歴史の上に深い意味をもっている。このことがまたやがて客観と主観、したがっ …
読書目安時間:約1時間51分
教権による重い刑罰によって脅かされたにもかかわらず、地球の自転がついに人類の真実として獲られたことは、思想的歴史の上に深い意味をもっている。このことがまたやがて客観と主観、したがっ …
芸術の人間学的考察(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
ハイデッガーが存在に問いを発するにあたって、人間に優先性をあたえたのは、人間がすでに存在の会得をもち、彼のありかた existentia によって、それが何であるか essenti …
読書目安時間:約15分
ハイデッガーが存在に問いを発するにあたって、人間に優先性をあたえたのは、人間がすでに存在の会得をもち、彼のありかた existentia によって、それが何であるか essenti …
言語は生きている(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
フンボルトは、言葉はエルゴン(創られたるもの)ではなくして、エネルゲイヤ(創るちから)であると云う。 ほんとうに言葉は生きているように思われる。と云うか、同じ言葉を十年くらいで、も …
読書目安時間:約11分
フンボルトは、言葉はエルゴン(創られたるもの)ではなくして、エネルゲイヤ(創るちから)であると云う。 ほんとうに言葉は生きているように思われる。と云うか、同じ言葉を十年くらいで、も …
現代美学の危機と映画理論(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
個人主義文化が、封建主義文化を引きはなすために、戦った歴史の跡は決して容易なものではなかった。幾千の人が火であぶられ幾万の人が鎖でつながれたかわからない。一六〇〇年代は、大きなその …
読書目安時間:約14分
個人主義文化が、封建主義文化を引きはなすために、戦った歴史の跡は決して容易なものではなかった。幾千の人が火であぶられ幾万の人が鎖でつながれたかわからない。一六〇〇年代は、大きなその …
国立国会図書館(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
戦後の春、こんなところにと思われる爆撃の跡に、一杯に青草が生えて来た。 自然にとって戦争なんて、一つの物理的現象にしかすぎなかったのかとつくづく驚かされた。しかし、文化というか、十 …
読書目安時間:約6分
戦後の春、こんなところにと思われる爆撃の跡に、一杯に青草が生えて来た。 自然にとって戦争なんて、一つの物理的現象にしかすぎなかったのかとつくづく驚かされた。しかし、文化というか、十 …
国立国会図書館について(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
歴史変革の任務 今年の冬の夜のことであった。 アメリカ国会図書館使節の招宴に金森館長と共に列席した。 参議院図書館運営委員長である羽仁氏はあいさつの席上で「自分は日本民主化のため、 …
読書目安時間:約5分
歴史変革の任務 今年の冬の夜のことであった。 アメリカ国会図書館使節の招宴に金森館長と共に列席した。 参議院図書館運営委員長である羽仁氏はあいさつの席上で「自分は日本民主化のため、 …
国会図書館のこのごろ(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
立ちあがりのときは、どうなることかと思っていたが、二年半もたってみれば、どうやら一つのコースに乗ってきたようである。 上野図書館を支部図書館とすることになって、働いている人が約五百 …
読書目安時間:約5分
立ちあがりのときは、どうなることかと思っていたが、二年半もたってみれば、どうやら一つのコースに乗ってきたようである。 上野図書館を支部図書館とすることになって、働いている人が約五百 …
国会図書館の窓から(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
日射しの暖かい南向きの窓に、開くともなしに、美しい装釘の本をひもどく、といった、読書のよろこび、「閑」というこころもちの深い厳しさ、こんな世界から、だんだん遠ざかりつつある。 どこ …
読書目安時間:約4分
日射しの暖かい南向きの窓に、開くともなしに、美しい装釘の本をひもどく、といった、読書のよろこび、「閑」というこころもちの深い厳しさ、こんな世界から、だんだん遠ざかりつつある。 どこ …
色彩映画の思い出(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
バンジャマン・クレミュウは『不安と再建』の中で、一九三〇年は、すべての領域で決定的な年であったといっている。世界的な経済危機、ロシアのダンピング、トーキーが欧州を風靡した年である。 …
読書目安時間:約5分
バンジャマン・クレミュウは『不安と再建』の中で、一九三〇年は、すべての領域で決定的な年であったといっている。世界的な経済危機、ロシアのダンピング、トーキーが欧州を風靡した年である。 …
色彩映画のシナリオ(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
私はフィルムが色彩を駆使するにあたって、それを「天然色映画」と名づけているのに、反対である。すでに映画が芸術であるかぎり、映画は、必ずしも天然の色と称するもののみに似ることをのみ標 …
読書目安時間:約5分
私はフィルムが色彩を駆使するにあたって、それを「天然色映画」と名づけているのに、反対である。すでに映画が芸術であるかぎり、映画は、必ずしも天然の色と称するもののみに似ることをのみ標 …
実践について:――馬になった話――(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
山口県の「光」に鉄道の講演会に行った帰途であった。柳井の駅で駅員が、「中井先生はいませんか。中井先生はいませんか」と叫んでいる。フト私の事かも知れんと思って、顔を出すと、「真直ぐに …
読書目安時間:約8分
山口県の「光」に鉄道の講演会に行った帰途であった。柳井の駅で駅員が、「中井先生はいませんか。中井先生はいませんか」と叫んでいる。フト私の事かも知れんと思って、顔を出すと、「真直ぐに …
支部図書館三周年に寄せて(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
三年前、第一回の支部図書館準備会の会合に出席した人々の何人が、この三年目の今日、かかるかたちで三周年を迎えることができると想像しえたであろう。「大陸の法律をやっている私たちには、か …
読書目安時間:約2分
三年前、第一回の支部図書館準備会の会合に出席した人々の何人が、この三年目の今日、かかるかたちで三周年を迎えることができると想像しえたであろう。「大陸の法律をやっている私たちには、か …
集団文化と読書(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
「金沢文庫」「足利文庫」などといっていたものが、「図書館」となるには、なんといっても、時代の流れを感ぜずにいられない。封建領主の財宝であり、庫の中に収められる所有物であったものから …
読書目安時間:約4分
「金沢文庫」「足利文庫」などといっていたものが、「図書館」となるには、なんといっても、時代の流れを感ぜずにいられない。封建領主の財宝であり、庫の中に収められる所有物であったものから …
少年に文化を嗣ぐこゝろを(旧字新仮名)
読書目安時間:約2分
大塚金之助博士に或雜誌記者が、博士の一生に最も感銘深かった記憶は何でございますかとたずねた。 博士は次の樣に答えられたそうである。 博士の少年の頃、圖書館へ行って、本を要求したとき …
読書目安時間:約2分
大塚金之助博士に或雜誌記者が、博士の一生に最も感銘深かった記憶は何でございますかとたずねた。 博士は次の樣に答えられたそうである。 博士の少年の頃、圖書館へ行って、本を要求したとき …
真理を求めて:――平和祭に寄す(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
ロマン・ロランは第一次大戦にあたって彼の「戦いを超えて」の中で次のようにいっている。 「真理を求めようとはしないで、それを所有していると称するものと議論することは不可能である。ドイ …
読書目安時間:約2分
ロマン・ロランは第一次大戦にあたって彼の「戦いを超えて」の中で次のようにいっている。 「真理を求めようとはしないで、それを所有していると称するものと議論することは不可能である。ドイ …
スポーツの美的要素(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
スポーツが人々によって研究され始めたのは、それを遊戯の一部としてであった。遊戯論については多くの人々が関心をもっている。それを今類別するならば大体五つに分れるかと思う。まず第一は剰 …
読書目安時間:約18分
スポーツが人々によって研究され始めたのは、それを遊戯の一部としてであった。遊戯論については多くの人々が関心をもっている。それを今類別するならば大体五つに分れるかと思う。まず第一は剰 …
組織としての図書館へ:――マックリーシュの業績――(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
一九三九年、アーチボルド・マックリーシュ氏がアメリカ国会図書館長に任命されたときは、全米図書館人は、彼がこの道のズブの素人であるという理由をもって反対したものであった。 彼は詩人で …
読書目安時間:約7分
一九三九年、アーチボルド・マックリーシュ氏がアメリカ国会図書館長に任命されたときは、全米図書館人は、彼がこの道のズブの素人であるという理由をもって反対したものであった。 彼は詩人で …
大会を終りて(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
今度の大会を顧みて、私たちは図書館なるものの概念が、一九五〇年にふさわしく、新たなる意味を、日本においてもおのずから新たにつくられつつあることを、確然と見ずにいられない。 日本全国 …
読書目安時間:約3分
今度の大会を顧みて、私たちは図書館なるものの概念が、一九五〇年にふさわしく、新たなる意味を、日本においてもおのずから新たにつくられつつあることを、確然と見ずにいられない。 日本全国 …
大衆の知恵(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
私はこの雑誌の五号で「カットの文法」という文章を書いたが、あの中で私は次のように書いた。カットをつなぐのは、ほんとうは、観衆なのである。観衆が、あの場面と場面をどんなこころで、つな …
読書目安時間:約5分
私はこの雑誌の五号で「カットの文法」という文章を書いたが、あの中で私は次のように書いた。カットをつなぐのは、ほんとうは、観衆なのである。観衆が、あの場面と場面をどんなこころで、つな …
脱出と回帰(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
日本の伝説の中で、光の美しさを描いているものでは、何といっても、手力男の命が、あの巌壁を開く時、さしはじめる光の、あの強烈な感じの右に出るものはあるまい。あの伝説、暗さへの没入、そ …
読書目安時間:約12分
日本の伝説の中で、光の美しさを描いているものでは、何といっても、手力男の命が、あの巌壁を開く時、さしはじめる光の、あの強烈な感じの右に出るものはあるまい。あの伝説、暗さへの没入、そ …
探偵小説の芸術性:――文学のメカニズム――(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
ラテン語で書かれたすべての哲学書がいつでもイヴの犯した罪なしには書きはじめられなかったように、ドイツ語のあらゆる哲学書も歴史の末にあるという最後の審判なしにはその本を書き終ることが …
読書目安時間:約8分
ラテン語で書かれたすべての哲学書がいつでもイヴの犯した罪なしには書きはじめられなかったように、ドイツ語のあらゆる哲学書も歴史の末にあるという最後の審判なしにはその本を書き終ることが …
「壇」の解体(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
文壇、画壇、楽壇、歌壇、俳壇、乃至学壇、評壇等々、それはそれぞれ犯すべからざる神聖なるにわである。空間的な特殊ななわ張りである。その中に置かれることで、或種の安心と尊敬をむさぼるこ …
読書目安時間:約12分
文壇、画壇、楽壇、歌壇、俳壇、乃至学壇、評壇等々、それはそれぞれ犯すべからざる神聖なるにわである。空間的な特殊ななわ張りである。その中に置かれることで、或種の安心と尊敬をむさぼるこ …
蓄音器の針(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
何の針をとって見てもヴィクターのソフトはヴィクターのソフトだ。針は現にひとつひとつ違っているんだがやはりヴィクターのソフトだ。どのひとつひとつもが一つの「型」にしかすぎない。 「型 …
読書目安時間:約2分
何の針をとって見てもヴィクターのソフトはヴィクターのソフトだ。針は現にひとつひとつ違っているんだがやはりヴィクターのソフトだ。どのひとつひとつもが一つの「型」にしかすぎない。 「型 …
知識と政治との遊離(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
現在往々にして、知識層が政治に期待を失って、その行動の方向を失わんとしつつあると伝えられている。それは敗戦再出発の歴史的瞬間にある日本民族にとって、寒心すべき事態であるといえよう。 …
読書目安時間:約12分
現在往々にして、知識層が政治に期待を失って、その行動の方向を失わんとしつつあると伝えられている。それは敗戦再出発の歴史的瞬間にある日本民族にとって、寒心すべき事態であるといえよう。 …
地方の青年についての報告(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
十万の労働者が月十銭の会費で、労働文化協会を組織しているんだというと、誰でもほんとか、といって驚く。広島県ではこの夢のような組織が、十一月で一年の誕生日を迎えようとしている。 この …
読書目安時間:約5分
十万の労働者が月十銭の会費で、労働文化協会を組織しているんだというと、誰でもほんとか、といって驚く。広島県ではこの夢のような組織が、十一月で一年の誕生日を迎えようとしている。 この …
地方文化運動報告:――尾道市図書館より――(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
終戦の混乱から広島県の東部地方がその身辺を整理しはじめたのは昨年の九月中旬頃からであった。図書館もその本を疎開先より帰し、館の汚れた窓ガラスを拭き終えたのは九月の末頃であった。これ …
読書目安時間:約12分
終戦の混乱から広島県の東部地方がその身辺を整理しはじめたのは昨年の九月中旬頃からであった。図書館もその本を疎開先より帰し、館の汚れた窓ガラスを拭き終えたのは九月の末頃であった。これ …
調査機関(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
西洋の近代文明の特徴の一つは、科学的・実証的精神である。この精神によって人間は解放せられ、民主的社会が形成せられ、産業技術が発展したのである。近世以前には東洋は西洋よりもむしろ高い …
読書目安時間:約20分
西洋の近代文明の特徴の一つは、科学的・実証的精神である。この精神によって人間は解放せられ、民主的社会が形成せられ、産業技術が発展したのである。近世以前には東洋は西洋よりもむしろ高い …
聴衆0の講演会(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
夢のような終戦、疎開先から帰る荷馬車のほこりっぽい街、内海の潮の香のただよう尾道市の図書館の暗い部屋で、私は、何となく「暗澹」という文字を胸に書いてみた。 何処から、このごみごみし …
読書目安時間:約10分
夢のような終戦、疎開先から帰る荷馬車のほこりっぽい街、内海の潮の香のただよう尾道市の図書館の暗い部屋で、私は、何となく「暗澹」という文字を胸に書いてみた。 何処から、このごみごみし …
図書館協会六十周年に寄せて:――大衆に奉仕する一大組織体へ(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
ユネスコの国際的報告書を読むと、日本はイスラエルとパキスタンにはさまれて、日本は図書館に関して処女地 Virgin Soil であると書いてあるにすぎぬのである。 私はこの数行を読 …
読書目安時間:約5分
ユネスコの国際的報告書を読むと、日本はイスラエルとパキスタンにはさまれて、日本は図書館に関して処女地 Virgin Soil であると書いてあるにすぎぬのである。 私はこの数行を読 …
図書館に生きる道(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
人々が自然の美しさの中に見とれるということは、その中に定かではないが、漲っている深い秩序にあっと驚き、その中に、溶け入り、ともに秩序に諧和し、それと一つになり、力がぬけ、それに打ち …
読書目安時間:約3分
人々が自然の美しさの中に見とれるということは、その中に定かではないが、漲っている深い秩序にあっと驚き、その中に、溶け入り、ともに秩序に諧和し、それと一つになり、力がぬけ、それに打ち …
図書館の未来像(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
概念は常に、技術の進展とともに変化してきた。図書館の概念もみずから、異なり発展しつつある。 文庫時代は、それは封建領主の財宝であって、大衆へのサービスの機能は全然考えられていないの …
読書目安時間:約3分
概念は常に、技術の進展とともに変化してきた。図書館の概念もみずから、異なり発展しつつある。 文庫時代は、それは封建領主の財宝であって、大衆へのサービスの機能は全然考えられていないの …
図書館法楽屋話(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
この議会で図書館法が通過したことは、全図書館人にとって、まことに感慨深いものがあるのである。 人々にとって、予算の背景のないあんな法案が何になるかという感じもあるであろうが、あの法 …
読書目安時間:約8分
この議会で図書館法が通過したことは、全図書館人にとって、まことに感慨深いものがあるのである。 人々にとって、予算の背景のないあんな法案が何になるかという感じもあるであろうが、あの法 …
図書館法ついに通過せり(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
この数年間、わが図書館界は、この法のために、実に多くの討論をし、実に多くの交渉をし、海を越え山を越えて、ここに辿り来ったのである。 勿論われわれは、未だ多くの夢をもっている。しかし …
読書目安時間:約3分
この数年間、わが図書館界は、この法のために、実に多くの討論をし、実に多くの交渉をし、海を越え山を越えて、ここに辿り来ったのである。 勿論われわれは、未だ多くの夢をもっている。しかし …
図書館法と出版界(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
終戦後、アメリカが図書館界に示した関心はまことに深いものがあった。その一つは国立国会図書館の設立であり、その二は図書館法の制定であり、その三は、図書館学校のためにアメリカの費用でア …
読書目安時間:約5分
終戦後、アメリカが図書館界に示した関心はまことに深いものがあった。その一つは国立国会図書館の設立であり、その二は図書館法の制定であり、その三は、図書館学校のためにアメリカの費用でア …
図書館法の成立:――燃えひろがる火は点ぜられた――(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
あの戦争のさ中、或る兵器を造っている人が次のような面白いことをいった。 「『零戦』のような飛行機ができるためには、五十年位義務教育が行われている、文化の高い国でないと出来ない。例え …
読書目安時間:約5分
あの戦争のさ中、或る兵器を造っている人が次のような面白いことをいった。 「『零戦』のような飛行機ができるためには、五十年位義務教育が行われている、文化の高い国でないと出来ない。例え …
図書館法を地方の万人の手に(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
三年前のことであった。 戦い敗れ、青年の魂の表皮には、まだ生ま生ましい傷痕が赤い肌をあらわにしているときであった。 広島県の田島の青年が、突然、私の家にやって来た。リュックサックか …
読書目安時間:約4分
三年前のことであった。 戦い敗れ、青年の魂の表皮には、まだ生ま生ましい傷痕が赤い肌をあらわにしているときであった。 広島県の田島の青年が、突然、私の家にやって来た。リュックサックか …
二十世紀の頂における図書館の意味(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
本年はちょうど二十世紀半ばの、世界歴史にとって深い意味をもつ年である。思うにこの二千年の歴史はこの年を称して危機の年、あるいは世界史にとって重大な年といっているが、なるほど多くの対 …
読書目安時間:約3分
本年はちょうど二十世紀半ばの、世界歴史にとって深い意味をもつ年である。思うにこの二千年の歴史はこの年を称して危機の年、あるいは世界史にとって重大な年といっているが、なるほど多くの対 …
日本の美(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間22分
これからいろいろ「日本の美」について、お話をいたしますにあたって、まず、この章は、西洋の美と東洋の美の関係について、のべさせていただきます。 いろいろの世界の学者の議論の中に、一つ …
読書目安時間:約1時間22分
これからいろいろ「日本の美」について、お話をいたしますにあたって、まず、この章は、西洋の美と東洋の美の関係について、のべさせていただきます。 いろいろの世界の学者の議論の中に、一つ …
野に山にかかる虹の橋(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
一九五〇年の新しい年があけるにあたって、日本の図書館は何を自らに省みるべきであろうか。 この世紀の前半、私達は、まず図書館の建設、本の集積に力をつくして来た。この事は互いに競争し、 …
読書目安時間:約3分
一九五〇年の新しい年があけるにあたって、日本の図書館は何を自らに省みるべきであろうか。 この世紀の前半、私達は、まず図書館の建設、本の集積に力をつくして来た。この事は互いに競争し、 …
美学入門(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間48分
美学とは何を学ぶ学問であろうか。大体人々は価値のあるものとして、真実であること、善良であること、美しくきれいであることの三つを好み、尊敬し、愛するのではないだろうか。その真実につい …
読書目安時間:約2時間48分
美学とは何を学ぶ学問であろうか。大体人々は価値のあるものとして、真実であること、善良であること、美しくきれいであることの三つを好み、尊敬し、愛するのではないだろうか。その真実につい …
物理的集団的性格(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
やや重い感じのする回転音、……フィルムは三フィート、五フィートと記録していく。胸につきあげてくるような緊まった感じ、ちょうど運転手が瞬時もまじろぐことのできないような瞬間に経験する …
読書目安時間:約13分
やや重い感じのする回転音、……フィルムは三フィート、五フィートと記録していく。胸につきあげてくるような緊まった感じ、ちょうど運転手が瞬時もまじろぐことのできないような瞬間に経験する …
「焚書時代」の出現(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
立法部門が自分で立法機関をもつということ、この当り前のことが、今までなかったということが、実は不思議だといえば不思議だったわけである。 しかしこの当り前のことが行なわれるために、今 …
読書目安時間:約3分
立法部門が自分で立法機関をもつということ、この当り前のことが、今までなかったということが、実は不思議だといえば不思議だったわけである。 しかしこの当り前のことが行なわれるために、今 …
「焚書時代」を脱却:――図書館法成立にあたって(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
これまで書店と図書館は、あたかも商売仇のような感じをお互いにもっていたときもあった。 それは図書館が個々に孤立して、その数の少ないときはその意味もあった。 今ここに図書館法が通過し …
読書目安時間:約2分
これまで書店と図書館は、あたかも商売仇のような感じをお互いにもっていたときもあった。 それは図書館が個々に孤立して、その数の少ないときはその意味もあった。 今ここに図書館法が通過し …
「見ること」の意味(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
見るということは、光の物理作用と、眼の知覚作用の総合作用だと誰でも考えているし、またそれにちがいはない。素朴的にいわば客観を主観にうつしとる作用だという考えかたである。しかし、この …
読書目安時間:約8分
見るということは、光の物理作用と、眼の知覚作用の総合作用だと誰でも考えているし、またそれにちがいはない。素朴的にいわば客観を主観にうつしとる作用だという考えかたである。しかし、この …
民族の血管:――出版機構は常に新鮮に――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
生物が生きているというしるしは、それが自分の中の古いもの、疲れたものを間断なく棄てて、日に新たに日に日に新たに、その生きている汁液をめぐらしているというところにある。 出版とは、民 …
読書目安時間:約3分
生物が生きているというしるしは、それが自分の中の古いもの、疲れたものを間断なく棄てて、日に新たに日に日に新たに、その生きている汁液をめぐらしているというところにある。 出版とは、民 …
雪(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
朝から、空は暗く、チラチラ窓のふちから、雪が散りこぼれて來た。 もうすでに六十日、これから何百日ゐるかわからない留置場で、私は、この雪をめづらしい外からまぎれ込んだ、自由の世界から …
読書目安時間:約4分
朝から、空は暗く、チラチラ窓のふちから、雪が散りこぼれて來た。 もうすでに六十日、これから何百日ゐるかわからない留置場で、私は、この雪をめづらしい外からまぎれ込んだ、自由の世界から …
リズムの構造(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
『レ・ミゼラブル』の中に次のような一節がある。「もはや希望がなくなったところには、ただ歌だけが残るという。マルタ島の海では、一つの漕刑船が近づく時、櫂の音が聞える前にまず歌の声が聞 …
読書目安時間:約16分
『レ・ミゼラブル』の中に次のような一節がある。「もはや希望がなくなったところには、ただ歌だけが残るという。マルタ島の海では、一つの漕刑船が近づく時、櫂の音が聞える前にまず歌の声が聞 …
「良書普及運動」に寄せて(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
アメリカのテネシー谿谷の水を合理的処理をすることで、かつて、洪水で人々の苦労の種であった落差が、今や、電力となり、木材の運搬の水路となり、光と、動力の根源とさえなったことは有名な事 …
読書目安時間:約3分
アメリカのテネシー谿谷の水を合理的処理をすることで、かつて、洪水で人々の苦労の種であった落差が、今や、電力となり、木材の運搬の水路となり、光と、動力の根源とさえなったことは有名な事 …
歴史の流れの中の図書館:――個人的なものから集団的なものへ――(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
何か急流のように流れている世の中である。大きな潮の高まりが、せき止めようもなく、高まってゆき、何ものもがその流れの中に、身をゆすぶっているような感じである。 この流れが何処から起り …
読書目安時間:約9分
何か急流のように流れている世の中である。大きな潮の高まりが、せき止めようもなく、高まってゆき、何ものもがその流れの中に、身をゆすぶっているような感じである。 この流れが何処から起り …
レンズとフィルム:――それも一つの性格である――(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
引金を引くような心持ちで指でふれる時、フィルムはすでに回転している。レコーダーは五フィート、十フィートと記録していく、重い感じの機械音を撮るものにとっては、ある大きな組織の中に巻き …
読書目安時間:約11分
引金を引くような心持ちで指でふれる時、フィルムはすでに回転している。レコーダーは五フィート、十フィートと記録していく、重い感じの機械音を撮るものにとっては、ある大きな組織の中に巻き …
“中井正一”について
中井 正一(なかい まさかず、1900年(明治33年)2月14日 - 1952年(昭和27年)5月18日)は、日本の美学者・評論家・社会運動家。国立国会図書館副館長をつとめた。相愛女子専門学校(現:相愛女子短期大学・相愛大学)講師。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“中井正一”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)