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牧逸馬
牧逸馬
1900.01.17 〜 1935.06.29
アリゾナの女虎(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間6分
「課長さんは居ますか」 「いま鳥渡座席にいませんが——私は秘書です。何か御用ですか」 「ヴァン・ドュ・マアクと云う者です。南太平洋鉄道会社の専属探査員ですが——今、駅にちょっと変な …
生きている戦死者(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
背の高い、物腰の柔かい上品な男だった。頭髪は黒く、頬骨が高くて、一見韃靼人の血が混っていることを思わせる剽悍な顔をしていた。一九一二年の春の初めである。匈牙利の首都ブダペストから四 …
運命のSOS(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間7分
生と死は紙一枚の差だ。天と地の間にこれ以上怪奇な事実はあるまい。 そしてその怪奇な事実を時として最も端的に示すものに、海洋ほど不遠慮な存在はないのだ。この意味で、海こそは一番の怪奇 …
斧を持った夫人の像(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
「求縁——インデアナ州ラ・ポウト郡の風光明媚なる地域に、収穫多き農園を経営する美貌の寡婦、最も便宜なる近き将来において財産と人生を併合する意思の下に、相当以上の資財ある紳士との御交 …
海妖(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
有名な巴里の新聞マタン紙の創設者の一人に、アルフレッド・エドワルドという富豪がある。マタン紙は、今では相当古く、その言論など世界的に権威あるものだが、エドワルド氏は、創業当時から莫 …
消えた花婿(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
ブライトンと言えば、倫敦を控えて、英国第一の海岸の盛り場である。 殊に週末旅行に持って来いのところから、日曜が賑う。 この三月二十九日も、日曜日だった。 海の季節としては、すこし早 …
上海された男(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
Ⅰ 夜半に一度、隣に寝ている男の呻声を聞いて為吉は寝苦しい儘、裏庭に降立ったようだったが、昼間の疲労で間もなく床に帰ったらしかった。その男は前日無免許の歯医者に歯を抜いて貰った後が …
女肉を料理する男(新字新仮名)
読書目安時間:約51分
人気が荒いので世界的に有名なロンドンの東端区に、ハンベリイ街という町がある。凸凹の激しい、円い石畳の間を粉のような馬糞の藁屑が埋めて、襤褸を着た裸足の子供たちが朝から晩まで往来で騒 …
助五郎余罪(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
慶応生れの江戸っ児天下の助五郎は寄席の下足番だが、頼まれれば何でもする。一番好きなのは選挙と侠客だ。だからちょぼ一仲間では相当な顔役にもなっているし、怖い団体にも二つ三つ属している …
「世界怪奇実話」序文(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
一、僕の「世界怪奇実話全集」である。読物として、文句なしに面白いものでありたい。これが僕の念願だ。 一、世界怪奇実話——怪奇は、謂わば荒唐だ。同時に実話は、文字通り厳正に事実だ。荒 …
戦雲を駆る女怪(新字新仮名)
読書目安時間:約60分
露独連絡の国際列車は、ポーランドの原野を突っ切って、一路ベルリンを指して急ぎつつある。 一九一一年の初夏のことで、ロシアの国境を後にあの辺へさしかかると、車窓の両側に広大な緑色の絨 …
双面獣(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間12分
レスリイ・シュナイダア夫人は、七歳になる娘ドロシイの登校を見送って、ブレント・クリイクと呼ばれる郊外に近いロレイン街の自宅から、二町ほど離れたディクシイ国道の曲り角までドロシイの手 …
チャアリイは何処にいる(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
七月一日だった。 夏の早いアメリカの東部である。四日の独立祭を目のまえに控えて、フィラデルフィアの町は、もう襲いかけた炎熱の下に喘いでいた。 人事的には、この独立祭からアメリカじゅ …
沈黙の水平線(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
嘗つてそんな船は存在もしていなかったように、何らの手懸りもなく、船全体から乗客、乗組員の全部が、そっくり其の儘、海洋という千古の大神秘に呑まれ去った例は、古来、かなりある。が、この …
土から手が(新字新仮名)
読書目安時間:約46分
山のように材木を満載した貨物自動車の頂上に据わって、トニィ・フェルナンデは、キャリフォルニア州聖マテオ郡のソウヤー仮部落街道を、仕事先から自宅を指して走らせていた。一九一九年、三月 …
舞馬(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
植峰——植木屋の峰吉というよりも、消防の副小頭として知られた、浅黒いでっぷりした五十男だった。雨のことをおしめりとしか言わず、鼻のわきの黒子に一本長い毛が生えていて、その毛を浹々と …
ヤトラカン・サミ博士の椅子(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
マカラム街の珈琲店キャフェ・バンダラウェラは、雨期の赤土のような土耳古珈琲のほかに、ジャマイカ産の生薑水をも売っていた。それには、タミル族の女給の唾と、適度の蠅の卵とが浮かんでいた …
夜汽車(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
私が在米中の見聞から取材した創作でして、あちらの生活に泡のように浮んでは消える探偵小品的興味を、私の仮装児ヘンリイ・フリント君に取扱わせた短篇の一つでございます。 大戦当時の英国首 …
浴槽の花嫁(新字新仮名)
読書目安時間:約48分
英国ブラックプウルの町を、新婚の夫婦らしい若い男女が、貸間を探して歩いていた。彼らが初めに見にはいった家は、部屋は気に入った様子で、ことに女の方はだいぶ気が動いたようだったが風呂が …
ロウモン街の自殺ホテル(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
ホテル・アムステルダムの女主人セレスティンは、三階から駈け降りて来た給仕人の只ならぬ様子にぎょっとして、玄関わきの帳場から出て来た。 巴里人らしい早口で、 「何をあわてているんです …
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間8分
三幕六場 人物 成吉思汗二十七歳 合撒児成吉思汗の弟二十四歳 木華里四天王の一人、近衛隊長三十歳 哲別長老、四天王の一人六十歳 忽必来参謀長、四天王の一人 速不台箭筒士長、四天王の …