石川啄木
1886.02.20 〜 1912.04.13
“石川啄木”に特徴的な語句
許
恁
煙草
家
揶揄
奈何
怒
少許
主婦
渠
火光
出
調戯
大逵
怎
遙
恁
猶
書
此
再
那麽
何有
然
怎
人
煖爐
明日
夜
材料
平生
寝
呉
来
来
居
真
汝
靠
御座
其麽
此方
貴方
熱
態
俺
恁麽
全然
可
穏
著者としての作品一覧
足跡(新字旧仮名)
読書目安時間:約35分
冬の長い国のことで、物蔭にはまだ雪が残つて居り、村端の溝に芹の葉一片青んではゐないが、晴れた空はそことなく霞んで、雪消の路の泥濘の処々乾きかゝつた上を、春めいた風が薄ら温かく吹いて …
読書目安時間:約35分
冬の長い国のことで、物蔭にはまだ雪が残つて居り、村端の溝に芹の葉一片青んではゐないが、晴れた空はそことなく霞んで、雪消の路の泥濘の処々乾きかゝつた上を、春めいた風が薄ら温かく吹いて …
足跡(旧字旧仮名)
読書目安時間:約35分
冬の長い國のことで、物蔭にはまだ雪が殘つて居り、村端れの溝に芹の葉一片青んでゐないが、晴れた空はそことなく霞んで、雪消の路の泥濘の處々乾きかゝつた上を、春めいた風が薄ら温かく吹いて …
読書目安時間:約35分
冬の長い國のことで、物蔭にはまだ雪が殘つて居り、村端れの溝に芹の葉一片青んでゐないが、晴れた空はそことなく霞んで、雪消の路の泥濘の處々乾きかゝつた上を、春めいた風が薄ら温かく吹いて …
新しい歌の味ひ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
人聲の耳にし入らば、このゆふべ、 涙あふれむ、—— もの言ふなかれ。(哀果) 「妻よ、子よ、また我が老いたる母よ、どうか物を言はないで呉れ、成るべく俺の方を見ないやうにして呉れ、俺 …
読書目安時間:約3分
人聲の耳にし入らば、このゆふべ、 涙あふれむ、—— もの言ふなかれ。(哀果) 「妻よ、子よ、また我が老いたる母よ、どうか物を言はないで呉れ、成るべく俺の方を見ないやうにして呉れ、俺 …
A LETTER FROM PRISON(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間13分
この一篇の文書は、幸徳秋水等二十六名の無政府主義者に關する特別裁判の公判進行中、事件の性質及びそれに對する自己の見解を辨明せむがために、明治四十三年十二月十八日、幸徳がその擔當辯護 …
読書目安時間:約1時間13分
この一篇の文書は、幸徳秋水等二十六名の無政府主義者に關する特別裁判の公判進行中、事件の性質及びそれに對する自己の見解を辨明せむがために、明治四十三年十二月十八日、幸徳がその擔當辯護 …
郁雨に与ふ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約16分
郁雨君足下。 函館日々新聞及び君が予の一歌集に向つて與へられた深大の厚意は、予の今茲に改めて滿腔の感謝を捧ぐる所である。自分の受けた好意を自分で批評するも妙な譯ではあるが、實際あれ …
読書目安時間:約16分
郁雨君足下。 函館日々新聞及び君が予の一歌集に向つて與へられた深大の厚意は、予の今茲に改めて滿腔の感謝を捧ぐる所である。自分の受けた好意を自分で批評するも妙な譯ではあるが、實際あれ …
一握の砂(新字旧仮名)
読書目安時間:約34分
函館なる郁雨宮崎大四郎君 同国の友文学士花明金田一京助君 この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて …
読書目安時間:約34分
函館なる郁雨宮崎大四郎君 同国の友文学士花明金田一京助君 この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて …
「一握の砂」広告(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
其身動く能はずして其心早く一切の束縛より放たれたる著者の痛苦の聲は是也。 著者の歌は從来青年男女の間に限られたる明治新短歌の領域を擴張して廣く讀者を中年の人々に求む。 (明治44・ …
読書目安時間:約1分
其身動く能はずして其心早く一切の束縛より放たれたる著者の痛苦の聲は是也。 著者の歌は從来青年男女の間に限られたる明治新短歌の領域を擴張して廣く讀者を中年の人々に求む。 (明治44・ …
一日中の楽しき時刻(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
復啓、以前は夕方に燈火のつく頃と、夜が段々更けて十二時が過ぎ、一時となり一時半となる頃が此上なき樂しきものに候ひしが、近頃はさる事も無御座候。樂しき時刻といふもの何日よりか小生には …
読書目安時間:約2分
復啓、以前は夕方に燈火のつく頃と、夜が段々更けて十二時が過ぎ、一時となり一時半となる頃が此上なき樂しきものに候ひしが、近頃はさる事も無御座候。樂しき時刻といふもの何日よりか小生には …
公孫樹(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
秋風死ぬる夕べの 入日の映のひと時、 ものみな息をひそめて、 さびしさ深く流るる。 心のうるみ切なき ひと時、あはれ、仰ぐは 黄金の秋の雲をし まとへる丘の公孫樹。 光栄の色よ、な …
読書目安時間:約1分
秋風死ぬる夕べの 入日の映のひと時、 ものみな息をひそめて、 さびしさ深く流るる。 心のうるみ切なき ひと時、あはれ、仰ぐは 黄金の秋の雲をし まとへる丘の公孫樹。 光栄の色よ、な …
一利己主義者と友人との対話(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
Bおい、おれは今度また引越しをしたぜ。 Aそうか。君は来るたんび引越しの披露をして行くね。 Bそれは僕には引越し位の外に何もわざわざ披露するような事件が無いからだ。 A葉書でも済む …
読書目安時間:約12分
Bおい、おれは今度また引越しをしたぜ。 Aそうか。君は来るたんび引越しの披露をして行くね。 Bそれは僕には引越し位の外に何もわざわざ披露するような事件が無いからだ。 A葉書でも済む …
いろ/\の言葉と人(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
少年の頃、「孝」といふ言葉よりも、「忠」といふ言葉の方が強く私の胸に響いた。「豪傑」といふ言葉よりも、「英雄」といふ言葉の方に親しみがあつた。そして、「聖人」とか「君子」とかいふ言 …
読書目安時間:約2分
少年の頃、「孝」といふ言葉よりも、「忠」といふ言葉の方が強く私の胸に響いた。「豪傑」といふ言葉よりも、「英雄」といふ言葉の方に親しみがあつた。そして、「聖人」とか「君子」とかいふ言 …
所謂今度の事:林中の鳥(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
二三日前の事である。途で渇を覺えてとあるビイヤホオルに入ると、窓側の小さい卓を圍んで語つてゐる三人連の紳士が有つた。私が入つて行くと三人は等しく口を噤んで顏を上げた。見知らぬ人達で …
読書目安時間:約12分
二三日前の事である。途で渇を覺えてとあるビイヤホオルに入ると、窓側の小さい卓を圍んで語つてゐる三人連の紳士が有つた。私が入つて行くと三人は等しく口を噤んで顏を上げた。見知らぬ人達で …
歌のいろ/\(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
○日毎に集つて來る投書の歌を讀んでゐて、ひよいと妙な事を考へさせられることがある。——此處に作者その人に差障りを及ぼさない範圍に於て一二の例を擧げて見るならば、此頃になつて漸く手を …
読書目安時間:約12分
○日毎に集つて來る投書の歌を讀んでゐて、ひよいと妙な事を考へさせられることがある。——此處に作者その人に差障りを及ぼさない範圍に於て一二の例を擧げて見るならば、此頃になつて漸く手を …
歌集「嘲笑」序文(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私はこの集の著者に一度も會つたことが無い。その作つた歌もあまり讀んだことが無い。隨つてどんな性格の人、どんな傾向の人かも知る筈が無い。しかし斯ういふことは容易に想像することが出來る …
読書目安時間:約2分
私はこの集の著者に一度も會つたことが無い。その作つた歌もあまり讀んだことが無い。隨つてどんな性格の人、どんな傾向の人かも知る筈が無い。しかし斯ういふことは容易に想像することが出來る …
火星の芝居(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
『何か面白い事はないか?』 『俺は昨夜火星に行って来た』 『そうかえ』 『真個に行って来たよ』 『面白いものでもあったか?』 『芝居を見たんだ』 『そうか。日本なら「冥途の飛脚」だ …
読書目安時間:約3分
『何か面白い事はないか?』 『俺は昨夜火星に行って来た』 『そうかえ』 『真個に行って来たよ』 『面白いものでもあったか?』 『芝居を見たんだ』 『そうか。日本なら「冥途の飛脚」だ …
悲しき思出:(野口雨情君の北海道時代)(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
◎本年四月十四日、北海道小樽で逢つたのが、野口君と予との最後の会合となつた。其時野口君は、明日小樽を引払つて札幌に行き、月の末頃には必ず帰京の途に就くとの事で、大分元気がよかつた。 …
読書目安時間:約7分
◎本年四月十四日、北海道小樽で逢つたのが、野口君と予との最後の会合となつた。其時野口君は、明日小樽を引払つて札幌に行き、月の末頃には必ず帰京の途に就くとの事で、大分元気がよかつた。 …
悲しき玩具(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
呼吸すれば、 胸の中にて鳴る音あり。 凩よりもさびしきその音! 眼閉づれど、 心にうかぶ何もなし。 さびしくも、また、眼をあけるかな。 途中にてふと気が変り、 つとめ先を休みて、今 …
読書目安時間:約13分
呼吸すれば、 胸の中にて鳴る音あり。 凩よりもさびしきその音! 眼閉づれど、 心にうかぶ何もなし。 さびしくも、また、眼をあけるかな。 途中にてふと気が変り、 つとめ先を休みて、今 …
硝子窓(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
○ 『何か面白い事は無いかねえ。』といふ言葉は不吉な言葉だ。此二三年來、文學の事にたづさはつてゐる若い人達から、私は何囘この不吉な言葉を聞かされたか知れない。無論自分でも言つた。— …
読書目安時間:約10分
○ 『何か面白い事は無いかねえ。』といふ言葉は不吉な言葉だ。此二三年來、文學の事にたづさはつてゐる若い人達から、私は何囘この不吉な言葉を聞かされたか知れない。無論自分でも言つた。— …
閑天地(新字旧仮名)
読書目安時間:約48分
(「閑天地」は実に閑天地なり。野鵰の㯙雲に舞ひ、黄牛の草に眠るが如し。又春光野に流れて鳥初めて歌ひ、暮風清蔭に湧いて蜩の声を作すが如し。未だ許さず、生きんが為めにのみ生き、行かんが …
読書目安時間:約48分
(「閑天地」は実に閑天地なり。野鵰の㯙雲に舞ひ、黄牛の草に眠るが如し。又春光野に流れて鳥初めて歌ひ、暮風清蔭に湧いて蜩の声を作すが如し。未だ許さず、生きんが為めにのみ生き、行かんが …
菊池君(新字旧仮名)
読書目安時間:約47分
私が釧路の新聞へ行つたのは、恰度一月下旬の事、寒さの一番酷しい時で、華氏寒暖計が毎朝零下二十度から三十度までの間を昇降して居た。停車場から宿屋まで、僅か一町足らずの間に、夜風の冷に …
読書目安時間:約47分
私が釧路の新聞へ行つたのは、恰度一月下旬の事、寒さの一番酷しい時で、華氏寒暖計が毎朝零下二十度から三十度までの間を昇降して居た。停車場から宿屋まで、僅か一町足らずの間に、夜風の冷に …
菊池君(旧字旧仮名)
読書目安時間:約47分
私が釧路の新聞へ行つたのは、恰度一月下旬の事、寒さの一番酷しい時で、華氏寒暖計が毎朝零下二十度から三十度までの間を昇降して居た。停車場から宿屋まで、僅か一町足らずの間に、夜風の冷に …
読書目安時間:約47分
私が釧路の新聞へ行つたのは、恰度一月下旬の事、寒さの一番酷しい時で、華氏寒暖計が毎朝零下二十度から三十度までの間を昇降して居た。停車場から宿屋まで、僅か一町足らずの間に、夜風の冷に …
雲は天才である(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間4分
六月三十日、S——村尋常高等小學校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活氣のない懶うげな悲鳴をあげて、——恐らく此時計までが學校教師の單調なる生活に感化されたのであらう …
読書目安時間:約1時間4分
六月三十日、S——村尋常高等小學校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活氣のない懶うげな悲鳴をあげて、——恐らく此時計までが學校教師の單調なる生活に感化されたのであらう …
雲は天才である(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間4分
六月三十日、S——村尋常高等小学校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活気のない懶うげな悲鳴をあげて、——恐らく此時計までが学校教師の単調なる生活に感化されたのであらう …
読書目安時間:約1時間4分
六月三十日、S——村尋常高等小学校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活気のない懶うげな悲鳴をあげて、——恐らく此時計までが学校教師の単調なる生活に感化されたのであらう …
雲間寸観(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
大木頭 ◎二十三日の議會は豫報の如く所謂三派連合の氣勢の下に提出せられたる内閣不信任の決議案の討議に入り、小氣味よき活劇を演出したるものの如く候。同日午后一時十分開會、諸般の報告終 …
読書目安時間:約10分
大木頭 ◎二十三日の議會は豫報の如く所謂三派連合の氣勢の下に提出せられたる内閣不信任の決議案の討議に入り、小氣味よき活劇を演出したるものの如く候。同日午后一時十分開會、諸般の報告終 …
刑余の叔父(新字旧仮名)
読書目安時間:約18分
一年三百六十五日、投網打の帰途に岩鼻の崖から川中へ転げ落ちて、したたか腰骨を痛めて三日寝た、その三日だけは、流石に、盃を手にしなかつたさうなと不審がられた程の大酒呑、酒の次には博奕 …
読書目安時間:約18分
一年三百六十五日、投網打の帰途に岩鼻の崖から川中へ転げ落ちて、したたか腰骨を痛めて三日寝た、その三日だけは、流石に、盃を手にしなかつたさうなと不審がられた程の大酒呑、酒の次には博奕 …
氷屋の旗(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
親しい人の顔が、時として、凝乎と見てゐる間に見る見る肖ても肖つかぬ顔——顔を組立ててゐる線と線とが離れ/\になつた様な、唯不釣合な醜い形に見えて来る事がある。それと同じ様に、自分の …
読書目安時間:約2分
親しい人の顔が、時として、凝乎と見てゐる間に見る見る肖ても肖つかぬ顔——顔を組立ててゐる線と線とが離れ/\になつた様な、唯不釣合な醜い形に見えて来る事がある。それと同じ様に、自分の …
心の姿の研究(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
夏の街の恐怖 焼けつくやうな夏の日の下に おびえてぎらつく軌条の心。 母親の居睡りの膝から辷り下りて 肥った三歳ばかりの男の児が ちょこ/\と電車線路へ歩いて行く。 八百屋の店には …
読書目安時間:約3分
夏の街の恐怖 焼けつくやうな夏の日の下に おびえてぎらつく軌条の心。 母親の居睡りの膝から辷り下りて 肥った三歳ばかりの男の児が ちょこ/\と電車線路へ歩いて行く。 八百屋の店には …
札幌(新字旧仮名)
読書目安時間:約20分
半生を放浪の間に送つて来た私には、折にふれてしみ/″\思出される土地の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい様な懐しい記憶を私の心に残した土地は無い。あの大きい田舎町めいた、道幅の広い …
読書目安時間:約20分
半生を放浪の間に送つて来た私には、折にふれてしみ/″\思出される土地の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい様な懐しい記憶を私の心に残した土地は無い。あの大きい田舎町めいた、道幅の広い …
札幌(旧字旧仮名)
読書目安時間:約20分
半生を放浪の間に送つて來た私には、折にふれてしみじみ思出される土地の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい樣な懷しい記憶を私の心に殘した土地は無い。あの大きい田舍町めいた、道幅の廣い物 …
読書目安時間:約20分
半生を放浪の間に送つて來た私には、折にふれてしみじみ思出される土地の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい樣な懷しい記憶を私の心に殘した土地は無い。あの大きい田舍町めいた、道幅の廣い物 …
散文詩(旧字旧仮名)
読書目安時間:約20分
路に迷つたのだ! と氣のついた時は、此曠野に踏込んでから、もう彼是十哩も歩いてゐた。朝に旅籠屋を立つてから七八哩の間は潦に馬の足痕の新しい路を、森から野、野から森、二三度人にも邂逅 …
読書目安時間:約20分
路に迷つたのだ! と氣のついた時は、此曠野に踏込んでから、もう彼是十哩も歩いてゐた。朝に旅籠屋を立つてから七八哩の間は潦に馬の足痕の新しい路を、森から野、野から森、二三度人にも邂逅 …
詩(新字旧仮名)
読書目安時間:約25分
啄木鳥 いにしへ聖者が雅典の森に撞きし、 光ぞ絶えせぬみ空の『愛の火』もて 鋳にたる巨鐘、無窮のその声をぞ 染めなす『緑』よ、げにこそ霊の住家。 聞け、今、巷に喘げる塵の疾風 よせ …
読書目安時間:約25分
啄木鳥 いにしへ聖者が雅典の森に撞きし、 光ぞ絶えせぬみ空の『愛の火』もて 鋳にたる巨鐘、無窮のその声をぞ 染めなす『緑』よ、げにこそ霊の住家。 聞け、今、巷に喘げる塵の疾風 よせ …
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
数日前本欄(東京朝日新聞の文芸欄)に出た「自己主張の思想としての自然主義」と題する魚住氏の論文は、今日における我々日本の青年の思索的生活の半面——閑却されている半面を比較的明瞭に指 …
読書目安時間:約20分
数日前本欄(東京朝日新聞の文芸欄)に出た「自己主張の思想としての自然主義」と題する魚住氏の論文は、今日における我々日本の青年の思索的生活の半面——閑却されている半面を比較的明瞭に指 …
渋民村より(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
杜陵を北へ僅かに五里のこの里、人は一日の間に往復致し候へど、春の歩みは年々一週が程を要し候。御地は早や南の枝に大和心綻ろび初め候ふの由、満城桜雲の日も近かるべくと羨やみ上げ候。こゝ …
読書目安時間:約10分
杜陵を北へ僅かに五里のこの里、人は一日の間に往復致し候へど、春の歩みは年々一週が程を要し候。御地は早や南の枝に大和心綻ろび初め候ふの由、満城桜雲の日も近かるべくと羨やみ上げ候。こゝ …
唱歌(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
澁民尋常小學校生徒のために。 丙午七月一日作歌。 文の林の淺緑 樹影しづけきこの庭に 桂の庵の露むすび 惠みの星を迎ぎ見て 春また春といそしめば 心の枝も若芽すも。 芽ぐめる枝に水 …
読書目安時間:約1分
澁民尋常小學校生徒のために。 丙午七月一日作歌。 文の林の淺緑 樹影しづけきこの庭に 桂の庵の露むすび 惠みの星を迎ぎ見て 春また春といそしめば 心の枝も若芽すも。 芽ぐめる枝に水 …
小説「墓場」に現れたる著者木下氏の思想と平民社一派の消息(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
木下尚江著小説「墓場」。 明治四十一年(一九〇八)十二月十三日東京本郷弓町一丁目二番地昭文堂宮城伊兵衞發行。翌四十二年二月再版。著者の著作の順序からいへば「乞食」の後、「勞働」の前 …
読書目安時間:約5分
木下尚江著小説「墓場」。 明治四十一年(一九〇八)十二月十三日東京本郷弓町一丁目二番地昭文堂宮城伊兵衞發行。翌四十二年二月再版。著者の著作の順序からいへば「乞食」の後、「勞働」の前 …
消息(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
本誌の編輯は各月當番一人宛にてやる事に相成り、此號は小生編輯致し候。隨つて此號編輯に關する一切の責任は小生の負ふ所に候。 締切までに小生の机上に堆積したる原稿意外に多く爲めに會計擔 …
読書目安時間:約3分
本誌の編輯は各月當番一人宛にてやる事に相成り、此號は小生編輯致し候。隨つて此號編輯に關する一切の責任は小生の負ふ所に候。 締切までに小生の机上に堆積したる原稿意外に多く爲めに會計擔 …
女郎買の歌(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
『惡少年を誇稱す 糜爛せる文明の子』 諸君試みに次に抄録する一節を讀んで見たまへ。 ○ しばらくは若い人達の笑聲が室の中にみちて、室の中は蒸すやうになつた。その中に頼んだ壽司とサイ …
読書目安時間:約3分
『惡少年を誇稱す 糜爛せる文明の子』 諸君試みに次に抄録する一節を讀んで見たまへ。 ○ しばらくは若い人達の笑聲が室の中にみちて、室の中は蒸すやうになつた。その中に頼んだ壽司とサイ …
赤痢(新字旧仮名)
読書目安時間:約30分
凸凹の石高路、その往還を右左から挾んだ低い茅葺屋根が、凡そ六七十もあらう、何の家も、何の家も、古びて、穢くて、壁が落ちて、柱が歪んで、隣々に倒り合つて辛々支へてる様に見える。家の中 …
読書目安時間:約30分
凸凹の石高路、その往還を右左から挾んだ低い茅葺屋根が、凡そ六七十もあらう、何の家も、何の家も、古びて、穢くて、壁が落ちて、柱が歪んで、隣々に倒り合つて辛々支へてる様に見える。家の中 …
赤痢(旧字旧仮名)
読書目安時間:約30分
凹凸の石高路その往還を左右から挾んだ低い茅葺屋根が、凡そ六七十もあらう。何の家も、何の家も、古びて、穢なくて、壁が落ちて、柱が歪んで、隣々に倒り合つて辛々支へてる樣に見える。家の中 …
読書目安時間:約30分
凹凸の石高路その往還を左右から挾んだ低い茅葺屋根が、凡そ六七十もあらう。何の家も、何の家も、古びて、穢なくて、壁が落ちて、柱が歪んで、隣々に倒り合つて辛々支へてる樣に見える。家の中 …
性急な思想(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
最近数年間の文壇及び思想界の動乱は、それにたずさわった多くの人々の心を、著るしく性急にした。意地の悪い言い方をすれば、今日新聞や雑誌の上でよく見受ける「近代的」という言葉の意味は、 …
読書目安時間:約8分
最近数年間の文壇及び思想界の動乱は、それにたずさわった多くの人々の心を、著るしく性急にした。意地の悪い言い方をすれば、今日新聞や雑誌の上でよく見受ける「近代的」という言葉の意味は、 …
雪中行:小樽より釧路まで(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
(第一信)岩見沢にて 一月十九日。雪。 僅か三時間許りしか眠らなかつたので、眠いこと話にならぬ。頬を脹らして顔を洗つて居ると、頼んで置いた車夫が橇を牽いて来た。車夫が橇を牽くとは、 …
読書目安時間:約8分
(第一信)岩見沢にて 一月十九日。雪。 僅か三時間許りしか眠らなかつたので、眠いこと話にならぬ。頬を脹らして顔を洗つて居ると、頼んで置いた車夫が橇を牽いて来た。車夫が橇を牽くとは、 …
葬列(旧字旧仮名)
読書目安時間:約43分
久し振で歸つて見ると、嘗ては『眠れる都會』などと時々土地の新聞に罵られた盛岡も、五年以前とは餘程その趣きを變へて居る。先づ驚かれたのは、昔自分の寄寓して居た姉の家の、今裕福らしい魚 …
読書目安時間:約43分
久し振で歸つて見ると、嘗ては『眠れる都會』などと時々土地の新聞に罵られた盛岡も、五年以前とは餘程その趣きを變へて居る。先づ驚かれたのは、昔自分の寄寓して居た姉の家の、今裕福らしい魚 …
葬列(新字旧仮名)
読書目安時間:約43分
久し振で帰つて見ると、嘗ては『眠れる都会』などと時々土地の新聞に罵られた盛岡も、五年以前とは余程その趣を変へて居る。先づ驚かれたのは、昔自分の寄寓して居た姉の家の、今裕福らしい魚屋 …
読書目安時間:約43分
久し振で帰つて見ると、嘗ては『眠れる都会』などと時々土地の新聞に罵られた盛岡も、五年以前とは余程その趣を変へて居る。先づ驚かれたのは、昔自分の寄寓して居た姉の家の、今裕福らしい魚屋 …
大硯君足下(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
大硯君足下。 近頃或人が第二十七議會に對する希望を叙べた文章の中に、嘗て日清及び日露の兩戰役に當つて、滿場一人の異議もなく政府の計畫を翼贊して、以て擧國一致の範を國民に示した外に、 …
読書目安時間:約4分
大硯君足下。 近頃或人が第二十七議會に對する希望を叙べた文章の中に、嘗て日清及び日露の兩戰役に當つて、滿場一人の異議もなく政府の計畫を翼贊して、以て擧國一致の範を國民に示した外に、 …
第十八号室より(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
いつとなく腹が膨れ出した。たゞそれだけの事であつた。初めは腹に力がたまつたやうで、歩くに氣持が可かつた。やがてそろ/\膨れが目に付くやうになつた時は、かうして俺も肥えるのかと思つた …
読書目安時間:約6分
いつとなく腹が膨れ出した。たゞそれだけの事であつた。初めは腹に力がたまつたやうで、歩くに氣持が可かつた。やがてそろ/\膨れが目に付くやうになつた時は、かうして俺も肥えるのかと思つた …
田園の思慕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
獨逸の或小説家がその小説の中に、田園を棄てて相率ゐて煤煙と塵埃とに濁つた都會の空氣の中に紛れ込んで行く人達の運命を批評してゐるさうである。さうした悲しい移住者は、思ひきりよく故郷と …
読書目安時間:約5分
獨逸の或小説家がその小説の中に、田園を棄てて相率ゐて煤煙と塵埃とに濁つた都會の空氣の中に紛れ込んで行く人達の運命を批評してゐるさうである。さうした悲しい移住者は、思ひきりよく故郷と …
鳥影(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間53分
小川静子は、兄の信吾が帰省するといふので、二人の小妹と下男の松蔵を伴れて、好摩の停車場まで迎ひに出た。もと/\、鋤一つ入れたことのない荒蕪地の中に建てられた、小さい三等駅だから、乗 …
読書目安時間:約2時間53分
小川静子は、兄の信吾が帰省するといふので、二人の小妹と下男の松蔵を伴れて、好摩の停車場まで迎ひに出た。もと/\、鋤一つ入れたことのない荒蕪地の中に建てられた、小さい三等駅だから、乗 …
鳥影(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2時間53分
小川靜子は、兄の信吾が歸省するというふので、二人の妹と下男の松藏を伴れて、好摩の停車場まで迎ひに出た。もと/\鋤一つ入れたことのない荒蕪地の中に建てられた小さい三等驛だから、乘降の …
読書目安時間:約2時間53分
小川靜子は、兄の信吾が歸省するというふので、二人の妹と下男の松藏を伴れて、好摩の停車場まで迎ひに出た。もと/\鋤一つ入れたことのない荒蕪地の中に建てられた小さい三等驛だから、乘降の …
トルストイ翁論文(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
レオ・トルストイ翁のこの驚嘆すべき論文は、千九百四年(明治三十七年)六月二十七日を以てロンドン・タイムス紙上に發表されたものである。その日即ち日本皇帝が旅順港襲撃の功勞に對する勅語 …
読書目安時間:約7分
レオ・トルストイ翁のこの驚嘆すべき論文は、千九百四年(明治三十七年)六月二十七日を以てロンドン・タイムス紙上に發表されたものである。その日即ち日本皇帝が旅順港襲撃の功勞に對する勅語 …
NAKIWARAI を読む(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
この集を一讀して先づ私の感じたのは、著者土岐哀果氏が蓋し今日無數の歌人中で最も歌人らしくない歌人であらうといふ事であつた。其の作には歌らしい歌が少い——歌らしい歌、乃ち技巧の歌、作 …
読書目安時間:約2分
この集を一讀して先づ私の感じたのは、著者土岐哀果氏が蓋し今日無數の歌人中で最も歌人らしくない歌人であらうといふ事であつた。其の作には歌らしい歌が少い——歌らしい歌、乃ち技巧の歌、作 …
日本無政府主義者陰謀事件経過及び付帯現象(旧字旧仮名)
読書目安時間:約30分
明治四十三年(西暦一九一〇)六月二日 東京各新聞社、東京地方裁判所檢事局より本件の犯罪に關する一切の事の記事差止命令を受く。各新聞社皆この命令によつて初めて本件の發生を知れり。命令 …
読書目安時間:約30分
明治四十三年(西暦一九一〇)六月二日 東京各新聞社、東京地方裁判所檢事局より本件の犯罪に關する一切の事の記事差止命令を受く。各新聞社皆この命令によつて初めて本件の發生を知れり。命令 …
人間の悲哀(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
人間の悲哀とは、自己の範圍を知ることである。生れ落ちた時、私は何も知らなかつた。その時何の悲しみがあつたらう。經驗と教育とは日一日と私の、自己及自己以外の事物に關する知識を廣くし、 …
読書目安時間:約1分
人間の悲哀とは、自己の範圍を知ることである。生れ落ちた時、私は何も知らなかつた。その時何の悲しみがあつたらう。經驗と教育とは日一日と私の、自己及自己以外の事物に關する知識を廣くし、 …
農村の中等階級(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
近頃農村の經營といふ事に關する著書が月に一册か二册は缺かさず出版されてゐる。新聞や雜誌にも同じ問題がちよい/\繰返されてゐる。かういふ傾向は、不知不識の間に爲政者の商工偏重の政策と …
読書目安時間:約3分
近頃農村の經營といふ事に關する著書が月に一册か二册は缺かさず出版されてゐる。新聞や雜誌にも同じ問題がちよい/\繰返されてゐる。かういふ傾向は、不知不識の間に爲政者の商工偏重の政策と …
葉書(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
××村の小學校では、小使の老爺に煮炊をさして校長の田邊が常宿直をしてゐた。その代り職員室で使ふ茶代と新聞代は宿直料の中から出すことにしてある。宿直料は一晩八錢である。茶は一斤半とし …
読書目安時間:約24分
××村の小學校では、小使の老爺に煮炊をさして校長の田邊が常宿直をしてゐた。その代り職員室で使ふ茶代と新聞代は宿直料の中から出すことにしてある。宿直料は一晩八錢である。茶は一斤半とし …
葉書(新字旧仮名)
読書目安時間:約24分
××村の小学校では、小使の老爺に煮炊をさして校長の田辺が常宿直をしてゐた。その代り職員室で用ふ茶代と新聞代は宿直料の中から出すことにしてある。宿直料は一晩八銭である。茶は一斤半とし …
読書目安時間:約24分
××村の小学校では、小使の老爺に煮炊をさして校長の田辺が常宿直をしてゐた。その代り職員室で用ふ茶代と新聞代は宿直料の中から出すことにしてある。宿直料は一晩八銭である。茶は一斤半とし …
初めて見たる小樽(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
新らしき声のもはや響かずなった時、人はその中から法則なるものを択び出ず。されば階級といい習慣といういっさいの社会的法則の形成せられたる時は、すなわちその社会にもはや新らしき声の死ん …
読書目安時間:約8分
新らしき声のもはや響かずなった時、人はその中から法則なるものを択び出ず。されば階級といい習慣といういっさいの社会的法則の形成せられたる時は、すなわちその社会にもはや新らしき声の死ん …
病院の窓(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間7分
野村良吉は平日より少し早目に外交から歸つた。二月の中旬過の、珍らしく寒さの緩んだ日で、街々の雪がザクザク融けかかつて來たから、指先に穴のあいた足袋が氣持惡く濡れて居た。事務室に入つ …
読書目安時間:約1時間7分
野村良吉は平日より少し早目に外交から歸つた。二月の中旬過の、珍らしく寒さの緩んだ日で、街々の雪がザクザク融けかかつて來たから、指先に穴のあいた足袋が氣持惡く濡れて居た。事務室に入つ …
病院の窓(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間7分
野村良吉は平日より少し早目に外交から帰つた。二月の中旬過の、珍らしく寒さの緩んだ日で、街々の雪がザクザク融けかかつて来たから、指先に穴のあいた足袋が気持悪く濡れて居た。事務室に入つ …
読書目安時間:約1時間7分
野村良吉は平日より少し早目に外交から帰つた。二月の中旬過の、珍らしく寒さの緩んだ日で、街々の雪がザクザク融けかかつて来たから、指先に穴のあいた足袋が気持悪く濡れて居た。事務室に入つ …
病室より(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
外は海老色の模造革、パチンと開けば、内には溝状に橄欖色の天鵞絨の貼つてある、葉卷形のサツクの中の檢温器!37 といふ字だけを赤く、三十五度から四十二度までの度をこまかに刻んだ、白々 …
読書目安時間:約8分
外は海老色の模造革、パチンと開けば、内には溝状に橄欖色の天鵞絨の貼つてある、葉卷形のサツクの中の檢温器!37 といふ字だけを赤く、三十五度から四十二度までの度をこまかに刻んだ、白々 …
漂泊(旧字旧仮名)
読書目安時間:約26分
曇つた日だ。 立待岬から汐首の岬まで、諸手を擴げて海を抱いた七里の砂濱には、荒々しい磯の香りが、何憚らず北國の強い空氣に漲つて居る。空一面に澁い顏を開いて、遙かに遙かに地球の表面を …
読書目安時間:約26分
曇つた日だ。 立待岬から汐首の岬まで、諸手を擴げて海を抱いた七里の砂濱には、荒々しい磯の香りが、何憚らず北國の強い空氣に漲つて居る。空一面に澁い顏を開いて、遙かに遙かに地球の表面を …
漂泊(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
曇ツた日だ。 立待崎から汐首の岬まで、諸手を拡げて海を抱いた七里の砂浜には、荒々しい磯の香りが、何憚らず北国の強い空気に漲ツて居る。空一面に渋い顔を開いて、遙かに遙かに地球の表面を …
読書目安時間:約27分
曇ツた日だ。 立待崎から汐首の岬まで、諸手を拡げて海を抱いた七里の砂浜には、荒々しい磯の香りが、何憚らず北国の強い空気に漲ツて居る。空一面に渋い顔を開いて、遙かに遙かに地球の表面を …
天鵞絨(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間7分
理髮師の源助さんが四年振で來たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた樣に、口から口に傳へられて、其午後のうちに村中に響き渡つた。 村といつても狹いもの。盛岡から青森へ、北上川に縺れて …
読書目安時間:約1時間7分
理髮師の源助さんが四年振で來たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた樣に、口から口に傳へられて、其午後のうちに村中に響き渡つた。 村といつても狹いもの。盛岡から青森へ、北上川に縺れて …
天鵞絨(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間8分
理髪師の源助さんが四年振で来たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた様に、口から口に伝へられて、其午後のうちに村中に響き渡つた。 村といつても狭いもの。盛岡から青森へ、北上川に縺れて …
読書目安時間:約1時間8分
理髪師の源助さんが四年振で来たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた様に、口から口に伝へられて、其午後のうちに村中に響き渡つた。 村といつても狭いもの。盛岡から青森へ、北上川に縺れて …
不穏(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
其日も、私は朝から例の氣持に襲はれた。何も彼も興味が失せて、少しの間も靜かにしてゐられないやうに氣が苛々してゐた。新聞を見ても少し長い記事になると、もう五六行讀んだ許りで、終末まで …
読書目安時間:約2分
其日も、私は朝から例の氣持に襲はれた。何も彼も興味が失せて、少しの間も靜かにしてゐられないやうに氣が苛々してゐた。新聞を見ても少し長い記事になると、もう五六行讀んだ許りで、終末まで …
二筋の血(新字旧仮名)
読書目安時間:約24分
夢の様な幼少の時の追憶、喜びも悲みも罪のない事許り、それからそれと朧気に続いて、今になつては、皆、仄かな哀感の霞を隔てゝ麗かな子供芝居でも見る様に懐かしいのであるが、其中で、十五六 …
読書目安時間:約24分
夢の様な幼少の時の追憶、喜びも悲みも罪のない事許り、それからそれと朧気に続いて、今になつては、皆、仄かな哀感の霞を隔てゝ麗かな子供芝居でも見る様に懐かしいのであるが、其中で、十五六 …
二筋の血(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
夢の樣な幼少の時の追憶、喜びも悲みも罪のない事許り、それからそれと朧氣に續いて、今になつては、皆、仄かな哀感の霞を隔てゝ麗かな子供芝居でも見る樣に懷かしいのであるが、其中で、十五六 …
読書目安時間:約24分
夢の樣な幼少の時の追憶、喜びも悲みも罪のない事許り、それからそれと朧氣に續いて、今になつては、皆、仄かな哀感の霞を隔てゝ麗かな子供芝居でも見る樣に懷かしいのであるが、其中で、十五六 …
文芸中毒(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
我が田に水を引くといふことがある。當人は至極眞面目なのだらうが、傍から見ると、隨分片腹痛い場合がある。氣の毒でもあり、笑止でもある。新聞の論説や政治家の談話などといふものは、毎日の …
読書目安時間:約2分
我が田に水を引くといふことがある。當人は至極眞面目なのだらうが、傍から見ると、隨分片腹痛い場合がある。氣の毒でもあり、笑止でもある。新聞の論説や政治家の談話などといふものは、毎日の …
道(新字旧仮名)
読書目安時間:約44分
○○郡教育会東部会の第四回実地授業批評会は、十月八日の土曜日にT——村の第二尋常小学校で開かれる事になつた。選択科目は尋常科修身の一学年から四学年までの合級授業で、謄写版に刷つた其 …
読書目安時間:約44分
○○郡教育会東部会の第四回実地授業批評会は、十月八日の土曜日にT——村の第二尋常小学校で開かれる事になつた。選択科目は尋常科修身の一学年から四学年までの合級授業で、謄写版に刷つた其 …
無題(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
幸徳等所謂無政府共産主義者の公判開始は近く四五日の後に迫り來れり。事件が事件なるだけに、思慮ある國民の多數は、皆特別の意味を以て此公判の結果に注目し居ることなるべし。予も其の一人な …
読書目安時間:約2分
幸徳等所謂無政府共産主義者の公判開始は近く四五日の後に迫り來れり。事件が事件なるだけに、思慮ある國民の多數は、皆特別の意味を以て此公判の結果に注目し居ることなるべし。予も其の一人な …
無題:月刊文芸雑誌 樹木と果実 初号三月一日発行(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
『樹木と果實』は赤色の表紙に黒き文字を以て題號を印刷する雜誌にして主に土岐哀果、石川啄木の二人之を編輯す。雜誌は其種類より言へば正に瀟洒たる一文學雜誌なれども、二人の興味は寧ろ所謂 …
読書目安時間:約1分
『樹木と果實』は赤色の表紙に黒き文字を以て題號を印刷する雜誌にして主に土岐哀果、石川啄木の二人之を編輯す。雜誌は其種類より言へば正に瀟洒たる一文學雜誌なれども、二人の興味は寧ろ所謂 …
無名会の一夕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
この頃の短い小説には、よく、若い人達の自由な集會——文學者とか、新聞雜誌の記者とか、會社員とか、畫家とか、乃至は貧乏華族の息子とか、芝居好の金持の若旦那とか——各自新しい時代の空氣 …
読書目安時間:約1分
この頃の短い小説には、よく、若い人達の自由な集會——文學者とか、新聞雜誌の記者とか、會社員とか、畫家とか、乃至は貧乏華族の息子とか、芝居好の金持の若旦那とか——各自新しい時代の空氣 …
弓町より(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
食うべき詩 詩というものについて、私はずいぶん長い間迷うてきた。 ただに詩についてばかりではない。私の今日まで歩いてきた路は、ちょうど手に持っている蝋燭の蝋のみるみる減っていくよう …
読書目安時間:約17分
食うべき詩 詩というものについて、私はずいぶん長い間迷うてきた。 ただに詩についてばかりではない。私の今日まで歩いてきた路は、ちょうど手に持っている蝋燭の蝋のみるみる減っていくよう …
弓町より(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
詩といふものに就いて、私は随分、長い間迷うて来た。 啻に詩に就いて許りではない。私の今日迄歩いて来た路は、恰度手に持つてゐる蝋燭の蝋の見る/\減つて行くやうに、生活といふものゝ威力 …
読書目安時間:約17分
詩といふものに就いて、私は随分、長い間迷うて来た。 啻に詩に就いて許りではない。私の今日迄歩いて来た路は、恰度手に持つてゐる蝋燭の蝋の見る/\減つて行くやうに、生活といふものゝ威力 …
吉井君の歌(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
自分も作家の一人である場合、他人の作を讀んで滿足の出來ないことが、却つて一種の滿足である事がある。又時として、人が一生懸命やつた仕事にその人と同じ位の興味を打込むことの出來ないのを …
読書目安時間:約2分
自分も作家の一人である場合、他人の作を讀んで滿足の出來ないことが、却つて一種の滿足である事がある。又時として、人が一生懸命やつた仕事にその人と同じ位の興味を打込むことの出來ないのを …
予の地方雑誌に対する意見(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
隨分長らく御無沙汰致し候ものかな、御許し下され度候、貴兄には相變らず御清適『白虹』のため御盡力の由奉賀候、さて御申越の課題については小生別に意見と云ふ程のものも無し、有つたところで …
読書目安時間:約1分
隨分長らく御無沙汰致し候ものかな、御許し下され度候、貴兄には相變らず御清適『白虹』のため御盡力の由奉賀候、さて御申越の課題については小生別に意見と云ふ程のものも無し、有つたところで …
呼子と口笛(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
一九一一・六・一五・TOKYO われらの且つ読み、且つ議論を闘はすこと、 しかしてわれらの眼の輝けること、 五十年前の露西亜の青年に劣らず。 われらは何を為すべきかを議論す。 され …
読書目安時間:約7分
一九一一・六・一五・TOKYO われらの且つ読み、且つ議論を闘はすこと、 しかしてわれらの眼の輝けること、 五十年前の露西亜の青年に劣らず。 われらは何を為すべきかを議論す。 され …
我が最近の興味(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
ヴオルガ河岸のサラトフといふ處で、汽船アレクサンダア二世號が出帆しようとしてゐた時の事だ。客は恐ろしく込んでゐた。一二等の切符はすつかり賣切れて了つて、三等室にも林檎一つ落とす程の …
読書目安時間:約6分
ヴオルガ河岸のサラトフといふ處で、汽船アレクサンダア二世號が出帆しようとしてゐた時の事だ。客は恐ろしく込んでゐた。一二等の切符はすつかり賣切れて了つて、三等室にも林檎一つ落とす程の …
我等の一団と彼(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間13分
人が大勢集つてゐると、おのづから其の間に色分けが出來て來る——所謂黨派といふものが生れる。これは何も珍らしいことではないが、私の此間までゐたT——新聞の社會記者の中にもそれがあつた …
読書目安時間:約1時間13分
人が大勢集つてゐると、おのづから其の間に色分けが出來て來る——所謂黨派といふものが生れる。これは何も珍らしいことではないが、私の此間までゐたT——新聞の社會記者の中にもそれがあつた …
“石川啄木”について
石川 啄木(いしかわ たくぼく、1886年〈明治19年〉2月20日 - 1912年(明治45年〉4月13日)は、岩手県出身の日本の歌人、詩人。「啄木」は雅号で、本名は石川 一(いしかわ はじめ)。
旧制盛岡中学校中退後、『明星』に寄稿する浪漫主義詩人として頭角を現し、満19歳で最初の詩集を刊行した。しかし、経済的事情から代用教員や新聞記者として勤める傍ら小説家を志すも失敗、東京で新聞の校正係になってから1910年に刊行した初の歌集『一握の砂』は三行分かち書き形式で生活に即した新しい歌風を取り入れ、歌人として名声を得た。また、同年に起きた幸徳事件(大逆事件)を契機として、社会主義への関心を深め、文学評論も執筆したが、結核により満26歳で没した。
(出典:Wikipedia)
旧制盛岡中学校中退後、『明星』に寄稿する浪漫主義詩人として頭角を現し、満19歳で最初の詩集を刊行した。しかし、経済的事情から代用教員や新聞記者として勤める傍ら小説家を志すも失敗、東京で新聞の校正係になってから1910年に刊行した初の歌集『一握の砂』は三行分かち書き形式で生活に即した新しい歌風を取り入れ、歌人として名声を得た。また、同年に起きた幸徳事件(大逆事件)を契機として、社会主義への関心を深め、文学評論も執筆したが、結核により満26歳で没した。
(出典:Wikipedia)
“石川啄木”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)