北大路魯山人
1883.03.23 〜 1959.12.21
“北大路魯山人”に特徴的な語句
炊
美味
判
適宜
醤油
飯
肴
魚河岸
難
作行
拵
江戸前
匁
煎茶
辺
一概
如何
陋習
馳走
大
大
蓋
料
現今
匂
鮎
佃煮
熱飯
茶漬
嗜好
真似
味噌汁
素人
奴
吟味
京阪
駄目
獲
不味
美味
刺身
生
鉋
叶
大方
所詮
固
竹田
碌
鳴鶴
著者としての作品一覧
愛陶語録(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
なにしろ根がずぶの素人の陶作家、固より何の教養もあろうはずもなく、はじめは随分気のひけたものである。今でこそ、素人なればこその見識をそのまま仕事に打ち込むことができるのだ、などと言 …
読書目安時間:約15分
なにしろ根がずぶの素人の陶作家、固より何の教養もあろうはずもなく、はじめは随分気のひけたものである。今でこそ、素人なればこその見識をそのまま仕事に打ち込むことができるのだ、などと言 …
明石鯛に優る朝鮮の鯛(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
たいについて、京都、大阪で、子ども時分から聞きこんでいることは、玄海灘を越してきたたいでなくては美味くないということだ。玄海灘を通過してきたたいには、その骨にイボのような珠みたいな …
読書目安時間:約4分
たいについて、京都、大阪で、子ども時分から聞きこんでいることは、玄海灘を越してきたたいでなくては美味くないということだ。玄海灘を通過してきたたいには、その骨にイボのような珠みたいな …
味を知るもの鮮し(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
食物はなんとしても「美味く」あって欲しい。美味くなくてはよろこびというものがない。美味いものを食うと、人間誰しも機嫌がよくなる。必ずニコニコする。これが健康をつくる源になっているよ …
読書目安時間:約8分
食物はなんとしても「美味く」あって欲しい。美味くなくてはよろこびというものがない。美味いものを食うと、人間誰しも機嫌がよくなる。必ずニコニコする。これが健康をつくる源になっているよ …
甘鯛の姿焼き(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
この料理は、東京に昔からあるものだが、大きいのでちょっと厄介である。金串を打つのにコツがあり、なにも知らずに、ただやたらに何本も串を打ってはいけない。 最初に金串を扇形になるように …
読書目安時間:約3分
この料理は、東京に昔からあるものだが、大きいのでちょっと厄介である。金串を打つのにコツがあり、なにも知らずに、ただやたらに何本も串を打ってはいけない。 最初に金串を扇形になるように …
アメリカの牛豚(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
小島政二郎君 シカゴの話の続きを書きます。シカゴでは、もう一軒、アイルランド人の経営している料理屋へ行ってみました。ここはやはりロブスター(伊勢えびの類。ただし伊勢えびには鋏がない …
読書目安時間:約3分
小島政二郎君 シカゴの話の続きを書きます。シカゴでは、もう一軒、アイルランド人の経営している料理屋へ行ってみました。ここはやはりロブスター(伊勢えびの類。ただし伊勢えびには鋏がない …
鮎の食い方(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
いろいろな事情で、ふつうの家庭では、鮎を美味く食うように料理はできない。鮎はまず三、四寸ものを塩焼きにして食うのが本手であろうが、生きた鮎や新鮮なものを手に入れるということが、家庭 …
読書目安時間:約5分
いろいろな事情で、ふつうの家庭では、鮎を美味く食うように料理はできない。鮎はまず三、四寸ものを塩焼きにして食うのが本手であろうが、生きた鮎や新鮮なものを手に入れるということが、家庭 …
鮎の試食時代(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
あゆがうまいという話は、味覚にあこがれを持ちながら、自由に食うことのできない貧乏書生などにとっては、絶えざる憧憬の的である。わたしも青年の頃、ご多分に漏れず、あゆを心ゆくまで食いた …
読書目安時間:約3分
あゆがうまいという話は、味覚にあこがれを持ちながら、自由に食うことのできない貧乏書生などにとっては、絶えざる憧憬の的である。わたしも青年の頃、ご多分に漏れず、あゆを心ゆくまで食いた …
鮎の名所(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。京阪や東京でいうと、七月がよい。地方によっては、早い遅いがある。子を持つ前の最大なのがよい。子を持ってからは二番目といってよ …
読書目安時間:約4分
あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。京阪や東京でいうと、七月がよい。地方によっては、早い遅いがある。子を持つ前の最大なのがよい。子を持ってからは二番目といってよ …
鮎ははらわた(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
鮎の美味いのは大きさから言うと、一寸五分ぐらいから四、五寸ぐらいまでのものである。それ以上に大きく育ったものは、第一香気が失われ、大味で不味い。卵を持ち始めると、そのほうへ精分を取 …
読書目安時間:約3分
鮎の美味いのは大きさから言うと、一寸五分ぐらいから四、五寸ぐらいまでのものである。それ以上に大きく育ったものは、第一香気が失われ、大味で不味い。卵を持ち始めると、そのほうへ精分を取 …
鮎を食う(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
鮎は水が清くて、流れの急な、比較的川幅の広い川で育ったのでないと、発育が充分でなく、その上、味も香気も、ともによくない。これが鮎のよしあしを決定する大体の条件である。 食べるにはは …
読書目安時間:約4分
鮎は水が清くて、流れの急な、比較的川幅の広い川で育ったのでないと、発育が充分でなく、その上、味も香気も、ともによくない。これが鮎のよしあしを決定する大体の条件である。 食べるにはは …
洗いづくりの美味さ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
美味いさかな、それはなんと言っても、少数の例外は別として関西魚である。さかなによっては、紀州、四国、九州ももちろん瀬戸内海に同列するものである。伊勢湾あたりから漸時西方に向かい、瀬 …
読書目安時間:約3分
美味いさかな、それはなんと言っても、少数の例外は別として関西魚である。さかなによっては、紀州、四国、九州ももちろん瀬戸内海に同列するものである。伊勢湾あたりから漸時西方に向かい、瀬 …
洗いづくりの世界(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
これから当分はさかなの洗いづくりの季節である。洗いにもいろいろあるが、一番美味いのは鮎の洗いである。鮎の五、六寸ぐらいの、もちろん獲りたてのものか、または生かしてあるのでなければな …
読書目安時間:約5分
これから当分はさかなの洗いづくりの季節である。洗いにもいろいろあるが、一番美味いのは鮎の洗いである。鮎の五、六寸ぐらいの、もちろん獲りたてのものか、または生かしてあるのでなければな …
鮑の水貝(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
あわびの水貝は、あわびを切っただけでよいようなものであるが、これは元来、江戸前の料理だ。それと言うのも、関西にあわびがないからだ。あわびにかぎらず、貝というものは、東京を本場としな …
読書目安時間:約2分
あわびの水貝は、あわびを切っただけでよいようなものであるが、これは元来、江戸前の料理だ。それと言うのも、関西にあわびがないからだ。あわびにかぎらず、貝というものは、東京を本場としな …
鮑の宿借り作り(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
これは美食倶楽部時代の創案になるもので、今では茶寮料理の名物の一つに数えられている。 原料のあわびは房州のもの、関西方面では伊勢鳥羽浦、山陰では舞鶴あたりから相当いいものが出るが、 …
読書目安時間:約2分
これは美食倶楽部時代の創案になるもので、今では茶寮料理の名物の一つに数えられている。 原料のあわびは房州のもの、関西方面では伊勢鳥羽浦、山陰では舞鶴あたりから相当いいものが出るが、 …
鮟鱇一夕話(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
獅子文六氏との対談で、熱海の福島慶子女史は「アメリカのパン、あんなもの問題じゃない。金魚の餌でしょう」とタンカを切っておられたが、その味覚識見はさすが見上げたものだ。そうはっきりい …
読書目安時間:約4分
獅子文六氏との対談で、熱海の福島慶子女史は「アメリカのパン、あんなもの問題じゃない。金魚の餌でしょう」とタンカを切っておられたが、その味覚識見はさすが見上げたものだ。そうはっきりい …
生き烏賊白味噌漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
東京で西京漬けと呼んでいるのは、京都産の白味噌に魚類を漬け込んだものを言う。白味噌は京都が本場で、京都以外でできているものもないではないが、品が落ちる——となっている。白味噌は辛味 …
読書目安時間:約3分
東京で西京漬けと呼んでいるのは、京都産の白味噌に魚類を漬け込んだものを言う。白味噌は京都が本場で、京都以外でできているものもないではないが、品が落ちる——となっている。白味噌は辛味 …
一茶の書(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
われと来て遊べや親のない雀 痩蛙まけるな一茶是に有り 一茶自身の運命にも、なにかそうしたところがありはしなかっただろうか。 それはともかくとして、その書であるが、素質的にいって、大 …
読書目安時間:約2分
われと来て遊べや親のない雀 痩蛙まけるな一茶是に有り 一茶自身の運命にも、なにかそうしたところがありはしなかっただろうか。 それはともかくとして、その書であるが、素質的にいって、大 …
いなせな縞の初鰹(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
鎌倉を生きて出でけん初鰹芭蕉 目には青葉山ほととぎすはつ鰹素堂 初がつおが出だしたと聞いては、江戸っ子など、もう矢も楯もたまらずやりくり算段……、いや借金してまで、その生きのいいと …
読書目安時間:約3分
鎌倉を生きて出でけん初鰹芭蕉 目には青葉山ほととぎすはつ鰹素堂 初がつおが出だしたと聞いては、江戸っ子など、もう矢も楯もたまらずやりくり算段……、いや借金してまで、その生きのいいと …
猪の味(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
猪の美味さを初めてはっきり味わい知ったのは、私が十ぐらいの時のことであった。当時、私は京都に住んでいたが、京都堀川の中立売に代々野獣を商っている老舗があって、私はその店へよく猪の肉 …
読書目安時間:約9分
猪の美味さを初めてはっきり味わい知ったのは、私が十ぐらいの時のことであった。当時、私は京都に住んでいたが、京都堀川の中立売に代々野獣を商っている老舗があって、私はその店へよく猪の肉 …
インチキ鮎(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
前に村井弦斎のわた抜きあゆの愚を述べたが、あゆは名が立派だけにずいぶんいかがわしいものを食わせるところがある。そうしたインチキあゆのことを、少し述べよう。 東京ではむかし生きたあゆ …
読書目安時間:約5分
前に村井弦斎のわた抜きあゆの愚を述べたが、あゆは名が立派だけにずいぶんいかがわしいものを食わせるところがある。そうしたインチキあゆのことを、少し述べよう。 東京ではむかし生きたあゆ …
薄口醤油(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
今日は簡単に薄口醤油の話をしてみたいと思う。なぜなら、よい料理を作ろうとするには、醤油は重大問題だからだ。 東京人は、主として濃口醤油をもって調理するが、これは深く考えて欲しいもの …
読書目安時間:約3分
今日は簡単に薄口醤油の話をしてみたいと思う。なぜなら、よい料理を作ろうとするには、醤油は重大問題だからだ。 東京人は、主として濃口醤油をもって調理するが、これは深く考えて欲しいもの …
鰻の話(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
私は京都に生まれ、京都で二十年育ったために、京、大阪に詳しい。その後、東京に暮して東京も知るところが多い。従って批判する場合、依怙贔屓がないといえよう。うなぎの焼き方についても、東 …
読書目安時間:約7分
私は京都に生まれ、京都で二十年育ったために、京、大阪に詳しい。その後、東京に暮して東京も知るところが多い。従って批判する場合、依怙贔屓がないといえよう。うなぎの焼き方についても、東 …
美味い豆腐の話(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
美味い湯豆腐を食べようとするには、なんといっても豆腐のいいのを選ぶことが一番大切である。いかに薬味、醤油を吟味してかかっても、豆腐が不味ければ問題にならない。 そんなら、美味い豆腐 …
読書目安時間:約4分
美味い湯豆腐を食べようとするには、なんといっても豆腐のいいのを選ぶことが一番大切である。いかに薬味、醤油を吟味してかかっても、豆腐が不味ければ問題にならない。 そんなら、美味い豆腐 …
海にふぐ山にわらび(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
ふしぎなような話であるが、最高の美食はまったく味が分らぬ。しかし、そこに無量の魅力が潜んでいる。 日本の食品中で、なにが一番美味であるかと問う人があるなら、私は言下に答えて、それは …
読書目安時間:約3分
ふしぎなような話であるが、最高の美食はまったく味が分らぬ。しかし、そこに無量の魅力が潜んでいる。 日本の食品中で、なにが一番美味であるかと問う人があるなら、私は言下に答えて、それは …
海の青と空の青(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
春の海はひねもすのたりのたりとしているそうである。 夏の海はつよい太陽の光をはねかえして輝き渡る。海も光るが、沖の一線にもくもくと盛り上った入道雲も輝く、空も輝く、海に遊ぶ人々の肌 …
読書目安時間:約7分
春の海はひねもすのたりのたりとしているそうである。 夏の海はつよい太陽の光をはねかえして輝き渡る。海も光るが、沖の一線にもくもくと盛り上った入道雲も輝く、空も輝く、海に遊ぶ人々の肌 …
梅にうぐいす(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
ある日……なんでもわたしの話はある日である。何月、何日といわねば気に入らぬひとがあったら、なんでもある日で片付けるわたしの話は気に入らぬかもしれぬが、わたしはつまらんことは一切覚え …
読書目安時間:約6分
ある日……なんでもわたしの話はある日である。何月、何日といわねば気に入らぬひとがあったら、なんでもある日で片付けるわたしの話は気に入らぬかもしれぬが、わたしはつまらんことは一切覚え …
遠州の墨蹟(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
小堀遠州といえば、先ず第一に京都の桂離宮を思い出す人も多いことであろう。また、お茶の世界になじんでいる人々は、ここに掲げたような墨蹟や、あるいは遠州作の茶杓花入れを思い浮べる人も多 …
読書目安時間:約1分
小堀遠州といえば、先ず第一に京都の桂離宮を思い出す人も多いことであろう。また、お茶の世界になじんでいる人々は、ここに掲げたような墨蹟や、あるいは遠州作の茶杓花入れを思い浮べる人も多 …
欧米料理と日本(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
四月上旬(注・昭和二十九年)には日本を発って、アメリカからヨーロッパを回ってくる予定で、いま準備中である。自作陶芸の展示会を欧州各地で開き、文化交流のために一役買って出るというのが …
読書目安時間:約3分
四月上旬(注・昭和二十九年)には日本を発って、アメリカからヨーロッパを回ってくる予定で、いま準備中である。自作陶芸の展示会を欧州各地で開き、文化交流のために一役買って出るというのが …
お米の話(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
近頃は以前のように、やれ播州の米がうまいとか、越後米にかぎるとかいうような話はあまり聞かない。ただ米でありさえすればあり難がるご時世ではあるが、しかし以前でも、米の味に詳しいという …
読書目安時間:約3分
近頃は以前のように、やれ播州の米がうまいとか、越後米にかぎるとかいうような話はあまり聞かない。ただ米でありさえすればあり難がるご時世ではあるが、しかし以前でも、米の味に詳しいという …
お茶漬けの味(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
お茶漬けの話にかぎらないが、料理というものは、財力豊かな人のものと、財力不自由な人のものとでは、常に天と地ほどの相違がある。しかし、財力豊かで、刺身よかれ、牛肉よかれと、どんな材料 …
読書目安時間:約4分
お茶漬けの話にかぎらないが、料理というものは、財力豊かな人のものと、財力不自由な人のものとでは、常に天と地ほどの相違がある。しかし、財力豊かで、刺身よかれ、牛肉よかれと、どんな材料 …
衰えてきた日本料理は救わねばならぬ(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
講演会なんかといいますと、学校の仕事みたいでなんだかけちくさくおもしろくありませんから、講演会なんかといわないで、膝つき合わせて皆様もわたしも語るという会にいたしましょう。 まず、 …
読書目安時間:約9分
講演会なんかといいますと、学校の仕事みたいでなんだかけちくさくおもしろくありませんから、講演会なんかといわないで、膝つき合わせて皆様もわたしも語るという会にいたしましょう。 まず、 …
織部という陶器(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
私の独断によると、織部という陶器は、古田織部という茶人の意匠及び発明に始まるものではない。 古田織部より以前に、織部という陶器は産れておったのだ。もっとも、その当時は織部という名称 …
読書目安時間:約3分
私の独断によると、織部という陶器は、古田織部という茶人の意匠及び発明に始まるものではない。 古田織部より以前に、織部という陶器は産れておったのだ。もっとも、その当時は織部という名称 …
化学調味料(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
化学調味料は近来非常に宣伝されているが、わたしは化学調味料の味は気に入らない。料理人の傍らに置けば、不精からどうしても過度に用いるということになってしまうので、その味に災いされる。 …
読書目安時間:約3分
化学調味料は近来非常に宣伝されているが、わたしは化学調味料の味は気に入らない。料理人の傍らに置けば、不精からどうしても過度に用いるということになってしまうので、その味に災いされる。 …
覚々斎原叟の書(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
これは旨い字か、拙い字か、おとなか、子どもか、手の字か、心の字か、はた人格の賜物か、それとも、学者の書か、高僧の筆か、あるいは書家の字か……。書家なら、もっと字をうまくまとめるはず …
読書目安時間:約2分
これは旨い字か、拙い字か、おとなか、子どもか、手の字か、心の字か、はた人格の賜物か、それとも、学者の書か、高僧の筆か、あるいは書家の字か……。書家なら、もっと字をうまくまとめるはず …
夏日小味(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
夏の暑さがつづくと、たべものも時に変ったものが欲しくなる。私はそうした場合、よくこんなものをこしらえて、自分自身の食欲に一種の満足を与える。 雪虎——これはなんのことはない、揚げ豆 …
読書目安時間:約4分
夏の暑さがつづくと、たべものも時に変ったものが欲しくなる。私はそうした場合、よくこんなものをこしらえて、自分自身の食欲に一種の満足を与える。 雪虎——これはなんのことはない、揚げ豆 …
数の子は音を食うもの(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
お正月になると、大概の人は数の子を食う。私は正月でなくても、好物として、ふだんでもよろこんで食っている。なかなか美味いものだ。 さて、どんな味があるかと言われてもちょっと困るが、と …
読書目安時間:約4分
お正月になると、大概の人は数の子を食う。私は正月でなくても、好物として、ふだんでもよろこんで食っている。なかなか美味いものだ。 さて、どんな味があるかと言われてもちょっと困るが、と …
家畜食に甘んずる多くの人々(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
ひとは偉そうな顔はしていても、また自由、自由と、自由を叫んでみても、みながみな、家畜に等しく、宛てがわれたままの食べ物を口にして、うまいとかまずいとかいってはいるが、日常の事務的行 …
読書目安時間:約3分
ひとは偉そうな顔はしていても、また自由、自由と、自由を叫んでみても、みながみな、家畜に等しく、宛てがわれたままの食べ物を口にして、うまいとかまずいとかいってはいるが、日常の事務的行 …
家庭料理の話(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
世間の人は、自分の身近にある有価値な、美味いものを利用することに無頓着のようだ。 出盛りのさんまより場違いのたいをご馳走と思い込む、卑しい陋習から抜けきらないところに原因があるよう …
読書目安時間:約5分
世間の人は、自分の身近にある有価値な、美味いものを利用することに無頓着のようだ。 出盛りのさんまより場違いのたいをご馳走と思い込む、卑しい陋習から抜けきらないところに原因があるよう …
雅美ということ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
獣は「人」のように「美」というものの世界を知らない。 美を意識し、おのずから美を取り入れざるべからざる「人」の生活は、自然の天与であって、誰の所業でも無い。即ち天の人に与えたもうた …
読書目安時間:約3分
獣は「人」のように「美」というものの世界を知らない。 美を意識し、おのずから美を取り入れざるべからざる「人」の生活は、自然の天与であって、誰の所業でも無い。即ち天の人に与えたもうた …
窯を築いて知り得たこと(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
もしそれ技術的の方面、製作上の道程などを子細に考えるならば、それは殆ど数知れぬまでに未知の世界を知ったと言うべきである。 しかし、左様なことは余りにも専門的に渉る。で、ここで一般的 …
読書目安時間:約5分
もしそれ技術的の方面、製作上の道程などを子細に考えるならば、それは殆ど数知れぬまでに未知の世界を知ったと言うべきである。 しかし、左様なことは余りにも専門的に渉る。で、ここで一般的 …
河井寛次郎近作展の感想(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
河井寛次郎氏の製陶もとうとう世の末になってしまった。作陶家として異様に大きく名を成したのは大正八、九年頃のように思うが、その後、今日までには長い製陶生活が続いているわけである。人の …
読書目安時間:約2分
河井寛次郎氏の製陶もとうとう世の末になってしまった。作陶家として異様に大きく名を成したのは大正八、九年頃のように思うが、その後、今日までには長い製陶生活が続いているわけである。人の …
河井寛次郎氏の個展を観る(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
今年も高島屋であなたの陶器展を見せてもらいました。あなたは会場におられなかったようでした。 また例の病いを出して頭ごなしに言うわけではありませんが、あなたの作陶は土の仕事がまずいで …
読書目安時間:約5分
今年も高島屋であなたの陶器展を見せてもらいました。あなたは会場におられなかったようでした。 また例の病いを出して頭ごなしに言うわけではありませんが、あなたの作陶は土の仕事がまずいで …
鑑賞力なくして習字する勿れ(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
芸術の中でも、絵画は努力次第で一寸楽しめる境地までは漕ぎつけることが出来るものであるが、書道となるとなかなかに至難である。現代人が書と漢字を等閑に付しているのは、要するにわからない …
読書目安時間:約4分
芸術の中でも、絵画は努力次第で一寸楽しめる境地までは漕ぎつけることが出来るものであるが、書道となるとなかなかに至難である。現代人が書と漢字を等閑に付しているのは、要するにわからない …
感想(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
今春、思いがけない大雪が降って、都下全体交通ストップ、自動車などは一夜に皆エンコして一歩も前進できない因果な時、拙作陶の展示会を催すことになった。この大雪では誰一人見る人はなかろう …
読書目安時間:約2分
今春、思いがけない大雪が降って、都下全体交通ストップ、自動車などは一夜に皆エンコして一歩も前進できない因果な時、拙作陶の展示会を催すことになった。この大雪では誰一人見る人はなかろう …
カンナとオンナ(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
ひぐらしの鳴き声が涼しい。 わたしは、わたしのテーブルの前に坐って料理をし、客はわたしのテーブルの前に坐っていた。 わたしは、料理をいつも自分で作りつつ食べ、客にもすすめる。 客は …
読書目安時間:約4分
ひぐらしの鳴き声が涼しい。 わたしは、わたしのテーブルの前に坐って料理をし、客はわたしのテーブルの前に坐っていた。 わたしは、料理をいつも自分で作りつつ食べ、客にもすすめる。 客は …
胡瓜(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
今日では温室栽培の向上によって、くだもの、野菜など季節がなくなってしまった。早晩、俳諧歳時記など書き改めねばならなくなりそうだ。とはいっても、やはり旬のものに越したことはない。 あ …
読書目安時間:約2分
今日では温室栽培の向上によって、くだもの、野菜など季節がなくなってしまった。早晩、俳諧歳時記など書き改めねばならなくなりそうだ。とはいっても、やはり旬のものに越したことはない。 あ …
狂言『食道楽』(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
登場人物大名目鼻口手心耳 大名「まかり出でたるは、このあたりの大名でござる。われ日頃より、美食をなしてござれば、当年とって百一歳でござるが、これごらんあれ、栄養は満々点、ヒフの色は …
読書目安時間:約10分
登場人物大名目鼻口手心耳 大名「まかり出でたるは、このあたりの大名でござる。われ日頃より、美食をなしてござれば、当年とって百一歳でござるが、これごらんあれ、栄養は満々点、ヒフの色は …
京都のごりの茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
京都のごりは加茂川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。桂川では今でもたくさん獲れる。ごりは浅瀬の美しい、水の流れる河原に棲息する身長一寸ばかりの小ざかな …
読書目安時間:約2分
京都のごりは加茂川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。桂川では今でもたくさん獲れる。ごりは浅瀬の美しい、水の流れる河原に棲息する身長一寸ばかりの小ざかな …
近作鉢の会に一言(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
料理は食器なしでは存在しないようです。 料理に対する食器の存在は人間に於ける着物の存在でしょう。着物なしでは人間が生活出来ないように、料理も食器なしでは独立することは出来ません。そ …
読書目安時間:約4分
料理は食器なしでは存在しないようです。 料理に対する食器の存在は人間に於ける着物の存在でしょう。着物なしでは人間が生活出来ないように、料理も食器なしでは独立することは出来ません。そ …
くちこ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
このごろ、酒に適する、また、美食家の気に入る美味いものの第一品はくちこの生であろう。この生のくちこは、東京には売っていない。自分たちは加州金沢から取り寄せるのである。この風味はちょ …
読書目安時間:約3分
このごろ、酒に適する、また、美食家の気に入る美味いものの第一品はくちこの生であろう。この生のくちこは、東京には売っていない。自分たちは加州金沢から取り寄せるのである。この風味はちょ …
車蝦の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。これまた、その材料の吟味いかんによる。これから述べようとするのは、東京の一流てんぷら屋の自慢するまきと称する車えびの一尾七、八匁までの小形のもの …
読書目安時間:約2分
えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。これまた、その材料の吟味いかんによる。これから述べようとするのは、東京の一流てんぷら屋の自慢するまきと称する車えびの一尾七、八匁までの小形のもの …
芸術的な書と非芸術的な書(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
いかなる書を芸術といい、いかなる書を非芸術というか。 少しばかり日頃の一家言といったようなものをお話させていただきます。 今日は私の考えとして文字というものも当然芸術だと思っておる …
読書目安時間:約16分
いかなる書を芸術といい、いかなる書を非芸術というか。 少しばかり日頃の一家言といったようなものをお話させていただきます。 今日は私の考えとして文字というものも当然芸術だと思っておる …
芸美革新(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
今後に望まれる工芸作陶界は、まずそれに相応しい可能の許す限りの高き教養を基礎に、自由思想を育成し、真の自由人と思想家の出現に努め、この作陶人をして思い切った自由を作陶の上に振舞わし …
読書目安時間:約6分
今後に望まれる工芸作陶界は、まずそれに相応しい可能の許す限りの高き教養を基礎に、自由思想を育成し、真の自由人と思想家の出現に努め、この作陶人をして思い切った自由を作陶の上に振舞わし …
弦斎の鮎(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
毎年のことながら、春から夏、秋と昔からいう年魚の季節となる。 わたしの舌は、あゆを世間で騒ぐほどうまいものだとは思っていないが、なんとなし高貴な魅力があってうれしいものだ。川魚のう …
読書目安時間:約3分
毎年のことながら、春から夏、秋と昔からいう年魚の季節となる。 わたしの舌は、あゆを世間で騒ぐほどうまいものだとは思っていないが、なんとなし高貴な魅力があってうれしいものだ。川魚のう …
乾山の陶器(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
一口に乾山と言えば、乾山の陶器を想い出すのが世間の通例である。乾山について絵画の天才を想起する者は、大部分玄人筋であると言える。能書乾山を識り、乾山の能書を叫ぶものは通の通である。 …
読書目安時間:約7分
一口に乾山と言えば、乾山の陶器を想い出すのが世間の通例である。乾山について絵画の天才を想起する者は、大部分玄人筋であると言える。能書乾山を識り、乾山の能書を叫ぶものは通の通である。 …
現代茶人批判(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
『陶』の紙上で、現代の茶道人として名のある松永耳庵さんは、作陶家に諭さんその心として、汝らはすべからく茶を知れ、そして茶家の指導を受けよ、しからざれば茶器は生まれないぞ……と垂教さ …
読書目安時間:約18分
『陶』の紙上で、現代の茶道人として名のある松永耳庵さんは、作陶家に諭さんその心として、汝らはすべからく茶を知れ、そして茶家の指導を受けよ、しからざれば茶器は生まれないぞ……と垂教さ …
現代能書批評(新字新仮名)
読書目安時間:約39分
人の価値は、厳密にいえば、棺を覆うて始めて決まる。だから人を批評せんとならば、その人が棺を覆うてからでなければ完全な事はいえない。殊に互いにこの世にあるうちは、兎角無益な感情に囚わ …
読書目安時間:約39分
人の価値は、厳密にいえば、棺を覆うて始めて決まる。だから人を批評せんとならば、その人が棺を覆うてからでなければ完全な事はいえない。殊に互いにこの世にあるうちは、兎角無益な感情に囚わ …
高野豆腐(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
これにもよい悪いがずいぶんあるからご注意願いたい。悪いのは、凍らして乾かす時の不出来に由来し、いざというときに固くてものにならないのや、やわらかすぎていけないものなどである。 どの …
読書目安時間:約3分
これにもよい悪いがずいぶんあるからご注意願いたい。悪いのは、凍らして乾かす時の不出来に由来し、いざというときに固くてものにならないのや、やわらかすぎていけないものなどである。 どの …
古唐津(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
古唐津というものの良さは、日本陶器として古瀬戸、古備前、古萩、古伊賀、古信楽等の類品と共にいずれを姉とし、いずれを妹とすべくもないまでに、著しく他に優れた良さと日本趣味に富む野趣を …
読書目安時間:約1分
古唐津というものの良さは、日本陶器として古瀬戸、古備前、古萩、古伊賀、古信楽等の類品と共にいずれを姉とし、いずれを妹とすべくもないまでに、著しく他に優れた良さと日本趣味に富む野趣を …
古器観道楽(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間19分
在銘 高サ七寸六分 胴廻五寸七分 口径二寸九分 この壺の銘には「太平十年五月十六日造」とある。「太平」は遼の年号で、その十年は宋の仁宗の天聖八年(西暦一〇三〇)にあたり、天下が宋の …
読書目安時間:約1時間19分
在銘 高サ七寸六分 胴廻五寸七分 口径二寸九分 この壺の銘には「太平十年五月十六日造」とある。「太平」は遼の年号で、その十年は宋の仁宗の天聖八年(西暦一〇三〇)にあたり、天下が宋の …
古九谷観(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
大聖寺の臣後藤才次郎なるもの徳川の万治年間、九州有田の製陶秘奥を探り、帰来所謂古九谷焼が創まる。あるいは中国に渡って古赤絵付けの法を得た。こんないきさつを無上に詮議だてして興がって …
読書目安時間:約4分
大聖寺の臣後藤才次郎なるもの徳川の万治年間、九州有田の製陶秘奥を探り、帰来所謂古九谷焼が創まる。あるいは中国に渡って古赤絵付けの法を得た。こんないきさつを無上に詮議だてして興がって …
小ざかな干物の味(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
干ものの美味いのに当ったよろこびは格別である。ことに中干しとか、生乾しとか言った類いの最上物に当るうれしさは、筆に尽しがたい。東京近くで言うと、熱海の干ものがなかなか評判だ。もとも …
読書目安時間:約4分
干ものの美味いのに当ったよろこびは格別である。ことに中干しとか、生乾しとか言った類いの最上物に当るうれしさは、筆に尽しがたい。東京近くで言うと、熱海の干ものがなかなか評判だ。もとも …
個性(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
ある晴れた日の午後であった。と、こう書き出しても、芥川賞をもらうつもりで、文学的に書き出したのではないから心配しないでくれ給え。いったいこのごろは、何賞何々賞というものが多過ぎるよ …
読書目安時間:約6分
ある晴れた日の午後であった。と、こう書き出しても、芥川賞をもらうつもりで、文学的に書き出したのではないから心配しないでくれ給え。いったいこのごろは、何賞何々賞というものが多過ぎるよ …
古染付の絵付及び模様(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
明の古染付に対する大体の観察は上巻に於てこれを述べた。ここでは特にその絵付及び模様に就てすこしばかり考へて見度いと志した。 言ふ迄もなく明の古染付なるものは、その時代の文化を最も能 …
読書目安時間:約8分
明の古染付に対する大体の観察は上巻に於てこれを述べた。ここでは特にその絵付及び模様に就てすこしばかり考へて見度いと志した。 言ふ迄もなく明の古染付なるものは、その時代の文化を最も能 …
古陶磁の価値:――東京上野松坂屋楼上にて――(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
展覧会のことはただいまお聞きのとおりでございますから繰り返して申し上げませぬが、私に喋れといわれましたことは、古陶磁はなぜそんなに尊いかということをいってくれというお話でありました …
読書目安時間:約19分
展覧会のことはただいまお聞きのとおりでございますから繰り返して申し上げませぬが、私に喋れといわれましたことは、古陶磁はなぜそんなに尊いかということをいってくれというお話でありました …
琥珀揚げ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
この名前は、昭和十年ごろ、私が勝手につけたもので、てんぷらのようであって、てんぷらとも違うものだ。てんぷらより簡単にできるし、腕前がなくてもたやすくできる現代的な料理で、存外美味い …
読書目安時間:約3分
この名前は、昭和十年ごろ、私が勝手につけたもので、てんぷらのようであって、てんぷらとも違うものだ。てんぷらより簡単にできるし、腕前がなくてもたやすくできる現代的な料理で、存外美味い …
昆布とろ(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
昆布とろというのは、昆布とかつおぶしの煮だしだけでつくるとろろ汁である。夏の朝、食事の進まないようなとき、あるいはなにを食っても口が不味いとき、またはなにも口に運ぶ気が起こらないと …
読書目安時間:約5分
昆布とろというのは、昆布とかつおぶしの煮だしだけでつくるとろろ汁である。夏の朝、食事の進まないようなとき、あるいはなにを食っても口が不味いとき、またはなにも口に運ぶ気が起こらないと …
昆布とろの吸い物(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
関西では「昆布とろの椀」で通ずるようになっているので、ここではそうしておこう。これくらい簡単で、明瞭な美味さを感ずるものは、ほかに類がないかも知れない。 関西人はことに昆布を食いつ …
読書目安時間:約2分
関西では「昆布とろの椀」で通ずるようになっているので、ここではそうしておこう。これくらい簡単で、明瞭な美味さを感ずるものは、ほかに類がないかも知れない。 関西人はことに昆布を食いつ …
西園寺公の食道楽(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
五月の大事変(注・昭和七年五月十五日、陸海軍将校ら首相官邸などを襲撃、犬養首相を射殺した、世に言う五・一五事件)直後、緊張しきっている帝都へ、興津の坐漁荘を出て乗り込まれた西園寺公 …
読書目安時間:約6分
五月の大事変(注・昭和七年五月十五日、陸海軍将校ら首相官邸などを襲撃、犬養首相を射殺した、世に言う五・一五事件)直後、緊張しきっている帝都へ、興津の坐漁荘を出て乗り込まれた西園寺公 …
材料か料理か(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
おいしいごちそうを作るにはどうしたらよいでしょうか?などという声をよく聞く。 おいしいものとはなにか、ということをまず考えてみよう。人間は習慣の動物である。 毎日、必ずコーヒーを飲 …
読書目安時間:約3分
おいしいごちそうを作るにはどうしたらよいでしょうか?などという声をよく聞く。 おいしいものとはなにか、ということをまず考えてみよう。人間は習慣の動物である。 毎日、必ずコーヒーを飲 …
坐辺師友(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
益友と交わることの有益を説き聞かせた者は孔子である。誰しも生まれながらに、それを感付いていない者はなかろうが、孔子のような人から明瞭に言われてみると、また感を更たにすると言うもの。 …
読書目安時間:約4分
益友と交わることの有益を説き聞かせた者は孔子である。誰しも生まれながらに、それを感付いていない者はなかろうが、孔子のような人から明瞭に言われてみると、また感を更たにすると言うもの。 …
残肴の処理(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
星岡時代、残肴を見て感あり、料理人一同に留意を促すゆえんを述べたことがある。 料理を出して、お客のところから残ってきたものを、他ではどんなふうに始末しているかわたしは知らない。わた …
読書目安時間:約4分
星岡時代、残肴を見て感あり、料理人一同に留意を促すゆえんを述べたことがある。 料理を出して、お客のところから残ってきたものを、他ではどんなふうに始末しているかわたしは知らない。わた …
三州仕立て小蕪汁(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
味噌汁は簡単にできるものでありながら、その実が、日常どこの家庭でも美味くつくられてはいないようなので、一言申し上げようと思う。味噌汁は、中身の如何にかかわらず、時間をかけて煮てはい …
読書目安時間:約4分
味噌汁は簡単にできるものでありながら、その実が、日常どこの家庭でも美味くつくられてはいないようなので、一言申し上げようと思う。味噌汁は、中身の如何にかかわらず、時間をかけて煮てはい …
山椒(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
この刺激食品は香味と辛味がすばらしい特色を持っているところから、成年以上の大人になると、たいがいはこれを好み、日常食膳に喜ばれていることはご承知の通りだ。実さんしょうの佃煮(から煮 …
読書目安時間:約1分
この刺激食品は香味と辛味がすばらしい特色を持っているところから、成年以上の大人になると、たいがいはこれを好み、日常食膳に喜ばれていることはご承知の通りだ。実さんしょうの佃煮(から煮 …
山椒魚(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
ひとつ変ったたべものの話をしよう。 長い間には、ずいぶんいろいろなものを食ったが、いわゆる悪食の中には、そう美味いものはない。 「変ったたべものの中で美味いものは?」 と問われるな …
読書目安時間:約6分
ひとつ変ったたべものの話をしよう。 長い間には、ずいぶんいろいろなものを食ったが、いわゆる悪食の中には、そう美味いものはない。 「変ったたべものの中で美味いものは?」 と問われるな …
椎茸の話(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
どこの国、いずこの地方に行ってもお国自慢というものがある。歴史、人物、料理、産物など、時に応じ、人によってお国自慢の仕方も違う。生椎茸を例にとるなら、やはり例外でなく、京都の人は「 …
読書目安時間:約2分
どこの国、いずこの地方に行ってもお国自慢というものがある。歴史、人物、料理、産物など、時に応じ、人によってお国自慢の仕方も違う。生椎茸を例にとるなら、やはり例外でなく、京都の人は「 …
塩昆布の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
私の語るのは、ことわるまでもなく趣味の茶漬けで、安物の実用茶漬けではない。そのつもりで考えていただきたい。 とは申しても、もともと昆布のことであるから、さして高価なものではない。と …
読書目安時間:約2分
私の語るのは、ことわるまでもなく趣味の茶漬けで、安物の実用茶漬けではない。そのつもりで考えていただきたい。 とは申しても、もともと昆布のことであるから、さして高価なものではない。と …
塩鮭・塩鱒の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
さけとますとは、素人目には一見似たものではあるが、味から言えば、さけよりますの方がはるかに優る。 さけは淡塩があり、またやわらかいものがある。東京では、これらの中から自由に選択する …
読書目安時間:約3分
さけとますとは、素人目には一見似たものではあるが、味から言えば、さけよりますの方がはるかに優る。 さけは淡塩があり、またやわらかいものがある。東京では、これらの中から自由に選択する …
志野焼の価値(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
古伊賀、古志野は日本の生んだ純日本的作風を有することが先ず第一の権威に価いする。そうしてこれらの真価は、三、四百年前、すでに識者の重きを加えるところとなって、爾来今日までその声価は …
読書目安時間:約5分
古伊賀、古志野は日本の生んだ純日本的作風を有することが先ず第一の権威に価いする。そうしてこれらの真価は、三、四百年前、すでに識者の重きを加えるところとなって、爾来今日までその声価は …
習書要訣:――美の認識について――(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
普通習書と申しますと、ご承知の通り筆をもって習うことが主なんでございますが、実は筆をもって習うということもさることながら、書を分ろう、書というものはどういう「質」のものであるかとい …
読書目安時間:約23分
普通習書と申しますと、ご承知の通り筆をもって習うことが主なんでございますが、実は筆をもって習うということもさることながら、書を分ろう、書というものはどういう「質」のものであるかとい …
春屋の書について(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
春屋は大徳寺の名僧で、慶長十六年示寂している。 高僧の墨蹟には能書が多い。儒者の書には存外能書がない。これは仏教と儒教の影響する現象である。同じ高僧でも鎌倉以上に溯っては、いよいよ …
読書目安時間:約3分
春屋は大徳寺の名僧で、慶長十六年示寂している。 高僧の墨蹟には能書が多い。儒者の書には存外能書がない。これは仏教と儒教の影響する現象である。同じ高僧でも鎌倉以上に溯っては、いよいよ …
「春夏秋冬 料理王国」序にかえて(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
簡単に言って、料理とは単に舌先だけで味わうものではなく、また弄ぶものでもない。 耳から、目から、鼻からと、様々な感覚を動員して、「美」と「味」の調和を楽しむものだと思う。 色どり、 …
読書目安時間:約2分
簡単に言って、料理とは単に舌先だけで味わうものではなく、また弄ぶものでもない。 耳から、目から、鼻からと、様々な感覚を動員して、「美」と「味」の調和を楽しむものだと思う。 色どり、 …
小生のあけくれ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
山というほどの山ではないが、山中での朝夕起臥三十余年、ほとんど社交のない生活を営みながら、小生は時に快速船のように、何事をも進ませずにはいられないクセを持っている。 自慢ではないが …
読書目安時間:約3分
山というほどの山ではないが、山中での朝夕起臥三十余年、ほとんど社交のない生活を営みながら、小生は時に快速船のように、何事をも進ませずにはいられないクセを持っている。 自慢ではないが …
食器は料理のきもの(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
私はどうして陶磁器ならびに漆器などをつくるようになったか——みなさま大方はご存じのことと思いますが、私は料理を始めてから、ここにこうして窯を築き、陶磁器ならびに漆器類を、みずからつ …
読書目安時間:約8分
私はどうして陶磁器ならびに漆器などをつくるようになったか——みなさま大方はご存じのことと思いますが、私は料理を始めてから、ここにこうして窯を築き、陶磁器ならびに漆器類を、みずからつ …
書道習学の道(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
世間、書を説く者は多いが、それは必ず技巧的にのみ観察したものであり、かつ、外見にのみ凝視することに殆ど決定的に偏している。すなわち、書家の書がそれである。ゆえに遠い昔はいざ知らず、 …
読書目安時間:約2分
世間、書を説く者は多いが、それは必ず技巧的にのみ観察したものであり、かつ、外見にのみ凝視することに殆ど決定的に偏している。すなわち、書家の書がそれである。ゆえに遠い昔はいざ知らず、 …
書道と茶道(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
今日は茶の方の話を少し申し上げたいと思うのですが……、なぜ茶の話を申しますかといえば、それはいうまでもなく茶人の書がうまいからだということに帰するのであります。みなさんご承知の通り …
読書目安時間:約17分
今日は茶の方の話を少し申し上げたいと思うのですが……、なぜ茶の話を申しますかといえば、それはいうまでもなく茶人の書がうまいからだということに帰するのであります。みなさんご承知の通り …
書道を誤らせる書道奨励会(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
書道展覧会など殆ど全部がといって差支えない今の書家風の書、すなわち手先の器用で作り上げる「書」形態は、筆調は体裁上、一寸見に本当の能書と変るところなきものかに見える。が……実は能書 …
読書目安時間:約4分
書道展覧会など殆ど全部がといって差支えない今の書家風の書、すなわち手先の器用で作り上げる「書」形態は、筆調は体裁上、一寸見に本当の能書と変るところなきものかに見える。が……実は能書 …
序に代えて(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
私たちが料理をとやかく言ったり、美味い不味いを口にしますと、ぜいたくを言っているように聞えて困るのですが、私が言うのはそうじゃないのです。 料理の考え方ひとつで、仕方ひとつで、物を …
読書目安時間:約2分
私たちが料理をとやかく言ったり、美味い不味いを口にしますと、ぜいたくを言っているように聞えて困るのですが、私が言うのはそうじゃないのです。 料理の考え方ひとつで、仕方ひとつで、物を …
知らずや肝の美味(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
魚類の肝にはなかなか美味いのがある。鳥の肝にもあるにはあるが、さかなの肝の美味さには遠く及ばない。獣の肝には、これは美味いと感じたことがない。さかなの肝で特に美味いのは、たい、はも …
読書目安時間:約3分
魚類の肝にはなかなか美味いのがある。鳥の肝にもあるにはあるが、さかなの肝の美味さには遠く及ばない。獣の肝には、これは美味いと感じたことがない。さかなの肝で特に美味いのは、たい、はも …
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
私は日頃の心がけとして、後悔になるようなことは決してせんつもりでいるが、事実は、どうしてどうして大いに後悔することが次から次へ湧いて出て当惑することが少なくない。 例えば先年前山久 …
読書目安時間:約26分
私は日頃の心がけとして、後悔になるようなことは決してせんつもりでいるが、事実は、どうしてどうして大いに後悔することが次から次へ湧いて出て当惑することが少なくない。 例えば先年前山久 …
尋常一様(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
ある日、友人の紹介で人が来た。客は、わたしをつかまえてさっそく質問を発した。 「先生、料理の根本義についておきかせください」 そこで、わたしは言下に答えた。 「食うために作ることだ …
読書目安時間:約4分
ある日、友人の紹介で人が来た。客は、わたしをつかまえてさっそく質問を発した。 「先生、料理の根本義についておきかせください」 そこで、わたしは言下に答えた。 「食うために作ることだ …
すき焼きと鴨料理――洋食雑感――(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
かねて日本を出発する前から、フランスの鴨料理について、やかましく聞かされていた。 それというのも、一方的な西欧礼賛が多く、ほんとうのところは分ったものではないと、私はひそかに考えて …
読書目安時間:約6分
かねて日本を出発する前から、フランスの鴨料理について、やかましく聞かされていた。 それというのも、一方的な西欧礼賛が多く、ほんとうのところは分ったものではないと、私はひそかに考えて …
青年よ師を無数に択べ(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
美術面に於て、現存者から師を仰ぐことはなかなかむつかしい。先輩はあつても其の人が、何等かに偏し、且つ其道の一つに囚はれてゐるからである。之等の一人二人を師と仰ぎ只管教へを乞ふとせば …
読書目安時間:約2分
美術面に於て、現存者から師を仰ぐことはなかなかむつかしい。先輩はあつても其の人が、何等かに偏し、且つ其道の一つに囚はれてゐるからである。之等の一人二人を師と仰ぎ只管教へを乞ふとせば …
世界の「料理王逝く」ということから(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
「世界の食通から『料理の王』と賛美されたフランス随一の板前オウグュスト・エスコフィエ老がこのほど亡くなった。 翁は外国にあって——わけても英・独・米等の地に永く留まって、フランス料 …
読書目安時間:約6分
「世界の食通から『料理の王』と賛美されたフランス随一の板前オウグュスト・エスコフィエ老がこのほど亡くなった。 翁は外国にあって——わけても英・独・米等の地に永く留まって、フランス料 …
瀬戸黒の話(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
瀬戸黒だね、俺が茶碗を作るとしたら。その標準となるものは、最近見たものの中ではまずこれが良い。根強い強さに恐ろしい美しさを持っている。この強さを持つ、この美しさをもつ工人が数知れず …
読書目安時間:約2分
瀬戸黒だね、俺が茶碗を作るとしたら。その標準となるものは、最近見たものの中ではまずこれが良い。根強い強さに恐ろしい美しさを持っている。この強さを持つ、この美しさをもつ工人が数知れず …
瀬戸・美濃瀬戸発掘雑感(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
倉橋さんから先日彩壺会の講演の依頼を受けました。所が私は倉橋さんみたいにうまくお話が出来ません。そこで講演は幾度かお断わりしましたが、私がかつて発見いたしました美濃の発掘品を並べて …
読書目安時間:約4分
倉橋さんから先日彩壺会の講演の依頼を受けました。所が私は倉橋さんみたいにうまくお話が出来ません。そこで講演は幾度かお断わりしましたが、私がかつて発見いたしました美濃の発掘品を並べて …
雑煮(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
季節にちなんで、お雑煮の話をしたいと思う。 いったいお雑煮は、子供の時分から食べ慣れた故郷の地方色あるやり方が、いちばん趣味的で意義がある。 主婦の心がけ次第で、第一日は地方色豊か …
読書目安時間:約3分
季節にちなんで、お雑煮の話をしたいと思う。 いったいお雑煮は、子供の時分から食べ慣れた故郷の地方色あるやり方が、いちばん趣味的で意義がある。 主婦の心がけ次第で、第一日は地方色豊か …
高橋箒庵氏の書道観(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
私はかつて『星岡』誌上に高橋箒庵氏の千慮の一失ともいうべき、音羽護国寺境内における名燈籠写し物に属する碑文を見て、その撰もその書も実は高橋義雄氏のものに非ざるを不可として、どうして …
読書目安時間:約7分
私はかつて『星岡』誌上に高橋箒庵氏の千慮の一失ともいうべき、音羽護国寺境内における名燈籠写し物に属する碑文を見て、その撰もその書も実は高橋義雄氏のものに非ざるを不可として、どうして …
沢庵(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
たくあんの話をしてみよう。 今日食べたたくあんは、加賀の山代でできたものである。わたしの知っているかぎりでは、山代産のたくあんが一等よいものだと思う。これは、だいこんが寒国でできた …
読書目安時間:約2分
たくあんの話をしてみよう。 今日食べたたくあんは、加賀の山代でできたものである。わたしの知っているかぎりでは、山代産のたくあんが一等よいものだと思う。これは、だいこんが寒国でできた …
筍の美味さは第一席(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
筍の缶詰ものは、一流日本料理の料理になる資格はないが、二流以下の料理用としては、年中、日本料理にも中国料理にも重宝されているくらいだから、美食原品として一等席へ坐してもよいものであ …
読書目安時間:約3分
筍の缶詰ものは、一流日本料理の料理になる資格はないが、二流以下の料理用としては、年中、日本料理にも中国料理にも重宝されているくらいだから、美食原品として一等席へ坐してもよいものであ …
だしの取り方(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
かつおぶしはどういうふうに選択し、どういうふうにして削るか。まず、かつおぶしの良否の簡単な選択法をご披露しよう。よいかつおぶしは、かつおぶしとかつおぶしとを叩き合わすと、カンカンと …
読書目安時間:約5分
かつおぶしはどういうふうに選択し、どういうふうにして削るか。まず、かつおぶしの良否の簡単な選択法をご披露しよう。よいかつおぶしは、かつおぶしとかつおぶしとを叩き合わすと、カンカンと …
田螺(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
このごろ田の中で、からからからからと歯切れよく鳴く声が、ときに盛んに、ときに烈しく聞える。ある者はたにしだと言って、たにしの声を知ることに鼻うごめかし通がる。なに、あれは蛙だと、う …
読書目安時間:約3分
このごろ田の中で、からからからからと歯切れよく鳴く声が、ときに盛んに、ときに烈しく聞える。ある者はたにしだと言って、たにしの声を知ることに鼻うごめかし通がる。なに、あれは蛙だと、う …
魂を刳る美(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
陶器だけで美はわからぬ。あらゆるものの美を知って、それを通して陶器の美もわかる。そして本当にわかるということは、本当にそのものに惚れることである。 本当に惚れることが出来るか、これ …
読書目安時間:約2分
陶器だけで美はわからぬ。あらゆるものの美を知って、それを通して陶器の美もわかる。そして本当にわかるということは、本当にそのものに惚れることである。 本当に惚れることが出来るか、これ …
探訪深泥池の蓴菜(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
京都上鴨の深泥池のじゅんさいは、日本で一番いいという話は、かって本誌にも話したことがあった。今度自分は、京都に旅行したついでに、その深泥池に行って来た。 京都に行って様子を聞いてみ …
読書目安時間:約3分
京都上鴨の深泥池のじゅんさいは、日本で一番いいという話は、かって本誌にも話したことがあった。今度自分は、京都に旅行したついでに、その深泥池に行って来た。 京都に行って様子を聞いてみ …
茶美生活(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
新年早々から、縁起でもない、茶遊び攻撃などして、と集中砲火の返報が来そうであるが、茶の道を愛すればこその信念の一途から、とうとう止むに止まれず、あえてバク談投下を試みた次第。この点 …
読書目安時間:約10分
新年早々から、縁起でもない、茶遊び攻撃などして、と集中砲火の返報が来そうであるが、茶の道を愛すればこその信念の一途から、とうとう止むに止まれず、あえてバク談投下を試みた次第。この点 …
茶碗蒸し(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
茶碗蒸しのことは、みなさんよくご存じのことでしょう。ところが、これにもいろいろとコツがある。東京のは概して卵が多く、かたまりが強すぎて面白くない。一体に茶碗蒸しの卵のかたまったのは …
読書目安時間:約2分
茶碗蒸しのことは、みなさんよくご存じのことでしょう。ところが、これにもいろいろとコツがある。東京のは概して卵が多く、かたまりが強すぎて面白くない。一体に茶碗蒸しの卵のかたまったのは …
てんぷらの茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
てんぷらの茶漬けは油っ濃いもので、油っ濃いものの好きな方に好かれるのは無論である。 揚げたてのてんぷらを茶漬けにするのはもとより差支えないが、本来、てんぷらの茶漬けは古いてんぷらの …
読書目安時間:約1分
てんぷらの茶漬けは油っ濃いもので、油っ濃いものの好きな方に好かれるのは無論である。 揚げたてのてんぷらを茶漬けにするのはもとより差支えないが、本来、てんぷらの茶漬けは古いてんぷらの …
デンマークのビール(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
小島政二郎君 ロンドンに向かう途中、カナダのグース・ベイ飛行場にて、天候回復を待つこと十二時間。 われわれ乗客のために、朝食に出たべーコンはうまかった。アメリカ、イギリス、フランス …
読書目安時間:約3分
小島政二郎君 ロンドンに向かう途中、カナダのグース・ベイ飛行場にて、天候回復を待つこと十二時間。 われわれ乗客のために、朝食に出たべーコンはうまかった。アメリカ、イギリス、フランス …
陶器鑑賞について(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
大正八、九年ごろという古い話になりますが、こういう話がありました。当時の入沢医学博士から私が直接に聞いたことでありますが、博士がある時、図らずも大河内正敏理博と東海道西下の汽車に同 …
読書目安時間:約10分
大正八、九年ごろという古い話になりますが、こういう話がありました。当時の入沢医学博士から私が直接に聞いたことでありますが、博士がある時、図らずも大河内正敏理博と東海道西下の汽車に同 …
陶器個展に観る各作家の味(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
本秋も都合よく、河井寛次郎氏の年中行事である東京高島屋に於ける製作展を観ることが出来た。氏の仕事も近来次第に磨きがかかり、段々とこなれて、その美しさは楽々と増して行くのが目立ち、小 …
読書目安時間:約5分
本秋も都合よく、河井寛次郎氏の年中行事である東京高島屋に於ける製作展を観ることが出来た。氏の仕事も近来次第に磨きがかかり、段々とこなれて、その美しさは楽々と増して行くのが目立ち、小 …
東京で自慢の鮑(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
これから秋までつづく夏季の美肴中、とりわけ重きをなしているものに、あわびが挙げられる。料理の仕方は古来様々あるが、通常は生のままで食う水貝、蒸して食う塩蒸しが万人によろこばれ、江戸 …
読書目安時間:約3分
これから秋までつづく夏季の美肴中、とりわけ重きをなしているものに、あわびが挙げられる。料理の仕方は古来様々あるが、通常は生のままで食う水貝、蒸して食う塩蒸しが万人によろこばれ、江戸 …
陶芸家を志す者のために:――芸術における人と作品の関係について――(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
私に陶器に関する講演をせよとのご依頼を受けましたが、何をどう申し上げてよいか困っております。 この学校ではどんなご希望をもっておられるか、何を期待しておられるか、日本と米国の習俗が …
読書目安時間:約10分
私に陶器に関する講演をせよとのご依頼を受けましたが、何をどう申し上げてよいか困っております。 この学校ではどんなご希望をもっておられるか、何を期待しておられるか、日本と米国の習俗が …
陶磁印六顆を紹介する(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
磁印、陶印取り混ぜ六顆をご紹介する。 中国の青磁と染付、朝鮮の高麗青磁、日本の古瀬戸、この中、中国と朝鮮はすでにお馴染みかも知れないが、古瀬戸の陶印に至っては珍とする人があろう。 …
読書目安時間:約4分
磁印、陶印取り混ぜ六顆をご紹介する。 中国の青磁と染付、朝鮮の高麗青磁、日本の古瀬戸、この中、中国と朝鮮はすでにお馴染みかも知れないが、古瀬戸の陶印に至っては珍とする人があろう。 …
なぜ作陶を志したか(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
なぜあなたは陶器を作るようになったか、とよく人から訊ねられるが、自分は言下に、それは自分の有する食道楽からそもそもが起こっていると答える。自分は幼年の頃から食味に趣味を持ち、年と共 …
読書目安時間:約5分
なぜあなたは陶器を作るようになったか、とよく人から訊ねられるが、自分は言下に、それは自分の有する食道楽からそもそもが起こっていると答える。自分は幼年の頃から食味に趣味を持ち、年と共 …
納豆の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである。食通間といえども、これを知る人は意外に少ない。と言って、私の発明したものではないが、世上これを知ら …
読書目安時間:約3分
納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである。食通間といえども、これを知る人は意外に少ない。と言って、私の発明したものではないが、世上これを知ら …
鍋料理の話(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
冬、家庭で最も歓迎される料理は、なべ料理であろう。煮たて、焼きたてが食べられるからである。 なべ料理では、決して煮ざましを食べるということはない。クツクツと出来たての料理を食べるこ …
読書目安時間:約7分
冬、家庭で最も歓迎される料理は、なべ料理であろう。煮たて、焼きたてが食べられるからである。 なべ料理では、決して煮ざましを食べるということはない。クツクツと出来たての料理を食べるこ …
伝不習乎(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
昔の料理は至極簡単なものであった。今日の料理は至極複雑である。しかし、どっちが本当に美味を持っていたかというと、昔の簡単な料理に軍配が挙がる。少なくとも今日の料理が次第にインチキ料 …
読書目安時間:約10分
昔の料理は至極簡単なものであった。今日の料理は至極複雑である。しかし、どっちが本当に美味を持っていたかというと、昔の簡単な料理に軍配が挙がる。少なくとも今日の料理が次第にインチキ料 …
南浦紹明墨蹟(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
南浦紹明(大応国師)は、宋の虚堂の法嗣で大燈国師のお師匠さん、建長寺の蘭渓道隆の門に参じたことがあり、宋から帰って後に筑前の崇福寺におること三十年、関西を風靡した。延慶元年臘月、七 …
読書目安時間:約1分
南浦紹明(大応国師)は、宋の虚堂の法嗣で大燈国師のお師匠さん、建長寺の蘭渓道隆の門に参じたことがあり、宋から帰って後に筑前の崇福寺におること三十年、関西を風靡した。延慶元年臘月、七 …
握り寿司の名人(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
東京における戦後の寿司屋の繁昌は大したもので、今ではひと頃の十倍もあるだろう。肴と飯が安直にいっしょに食べられるところが時代の人気に投じたものだろう。しかし、さて食える寿司となると …
読書目安時間:約19分
東京における戦後の寿司屋の繁昌は大したもので、今ではひと頃の十倍もあるだろう。肴と飯が安直にいっしょに食べられるところが時代の人気に投じたものだろう。しかし、さて食える寿司となると …
日本芥子(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
西洋料理、中国料理に添えてあるあのからしを見るたびに、どうも気になってしようがない。日本料理に付けられた場合などはなおさらである。 元来、西洋からしというもの、肝心の辛さが一向辛く …
読書目安時間:約2分
西洋料理、中国料理に添えてあるあのからしを見るたびに、どうも気になってしようがない。日本料理に付けられた場合などはなおさらである。 元来、西洋からしというもの、肝心の辛さが一向辛く …
日本のやきもの(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
多くの文明諸国におけると同じ様に、日本でも、やきもの、つまり陶磁器が日常生活の什器として使用され始めた時期は、遠く紀元前数世紀に遡ることが出来る。けれども、陶磁器が諸々の趣味生活の …
読書目安時間:約7分
多くの文明諸国におけると同じ様に、日本でも、やきもの、つまり陶磁器が日常生活の什器として使用され始めた時期は、遠く紀元前数世紀に遡ることが出来る。けれども、陶磁器が諸々の趣味生活の …
日本料理の基礎観念(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
私どもが旅行をしますと、汽車の弁当を食ったり、旅館の料理を食ったりしなければなりませんが、それらはいかにも不味くてまったく閉口します。そういう日本料理というものはまるでなっていませ …
読書目安時間:約15分
私どもが旅行をしますと、汽車の弁当を食ったり、旅館の料理を食ったりしなければなりませんが、それらはいかにも不味くてまったく閉口します。そういう日本料理というものはまるでなっていませ …
日本料理の要点:――新雇いの料理人を前にして――(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
星岡茶寮において、料理人の補充を京都の地に求めたのは、単に茶寮の幹部がみな京都人であるからばかりでなく、日本料理というものが、京都を源流にして発達しているからであって、京都という土 …
読書目安時間:約16分
星岡茶寮において、料理人の補充を京都の地に求めたのは、単に茶寮の幹部がみな京都人であるからばかりでなく、日本料理というものが、京都を源流にして発達しているからであって、京都という土 …
人間が家畜食(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
山の中に三十年の朝夕起臥、ほとんど社交のない生活を営みながら、わたしは時に快速船のように何事も進ませずにはいられないくせをもっている。自慢ではないが、それっというすべてが超スピード …
読書目安時間:約3分
山の中に三十年の朝夕起臥、ほとんど社交のない生活を営みながら、わたしは時に快速船のように何事も進ませずにはいられないくせをもっている。自慢ではないが、それっというすべてが超スピード …
能書を語る(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
今日は「料理と陶器」の話を致すということでありましたが、そういうことになりますと、ここに三百点ぐらいの陶器を並べなければなりません。それに私はこの四、五日大変混雑をいたしておりまし …
読書目安時間:約10分
今日は「料理と陶器」の話を致すということでありましたが、そういうことになりますと、ここに三百点ぐらいの陶器を並べなければなりません。それに私はこの四、五日大変混雑をいたしておりまし …
海苔の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
のりの茶漬けは至極簡単だが、やっている人は少ない。缶詰や壜詰になっているのりの佃煮には、いい香りのものは見られない。一年も二年も経って日増せになったのりとか、青のりのまじった生のり …
読書目安時間:約4分
のりの茶漬けは至極簡単だが、やっている人は少ない。缶詰や壜詰になっているのりの佃煮には、いい香りのものは見られない。一年も二年も経って日増せになったのりとか、青のりのまじった生のり …
白菜のスープ煮(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
白菜の煮方などは、一般にあまり吟味したやり方が行われていないと思うので、とりあえずここで扱うことにした。 白菜というものは、元来中国青島の産であるが、昔から朝鮮にも多く栽培されてい …
読書目安時間:約2分
白菜の煮方などは、一般にあまり吟味したやり方が行われていないと思うので、とりあえずここで扱うことにした。 白菜というものは、元来中国青島の産であるが、昔から朝鮮にも多く栽培されてい …
鱧・穴子・鰻の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
鱧 茶漬けの中でも、もっとも美味いもののひとつに、はもの茶漬けがある。これは刺身でやるたい茶漬けと拮抗する美味さだ。洋食の流行する以前の京、大阪の子どもに、「どんなご馳走が好きか」 …
読書目安時間:約4分
鱧 茶漬けの中でも、もっとも美味いもののひとつに、はもの茶漬けがある。これは刺身でやるたい茶漬けと拮抗する美味さだ。洋食の流行する以前の京、大阪の子どもに、「どんなご馳走が好きか」 …
ハワイの食用蛙(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
小島政二郎君 僕の作品展示会の模様は、後便で記事の出ている新聞といっしょに送りますから、それをご一覧ください。 ここではアメリカで食べたお料理のことをざっと書いてご覧に供しましょう …
読書目安時間:約3分
小島政二郎君 僕の作品展示会の模様は、後便で記事の出ている新聞といっしょに送りますから、それをご一覧ください。 ここではアメリカで食べたお料理のことをざっと書いてご覧に供しましょう …
蝦蟇を食べた話(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
山椒魚は手に入れるのが困難だが、反対にいくらでも手に入るもので、しかも、滅多に人の食わないもの、それでいて、相当の珍味を有するものと言えば、日本の蝦蟇だろう。 ひと頃、食用蛙という …
読書目安時間:約7分
山椒魚は手に入れるのが困難だが、反対にいくらでも手に入るもので、しかも、滅多に人の食わないもの、それでいて、相当の珍味を有するものと言えば、日本の蝦蟇だろう。 ひと頃、食用蛙という …
美術芸術としての生命の書道(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
書のこと、すなわち字のうまいまずいを最も明白に率直に説明しようとするときは、大体次のような甲乙二つの色別が出来るかと思う。甲はいわゆる書家の書というものであって、現在でいえば、よく …
読書目安時間:約8分
書のこと、すなわち字のうまいまずいを最も明白に率直に説明しようとするときは、大体次のような甲乙二つの色別が出来るかと思う。甲はいわゆる書家の書というものであって、現在でいえば、よく …
美食多産期の腹構え(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
心のおもむくままに、いつも美味いものを食って、心の底から楽しんでみたい。朝も昼も晩も。犬や猫のように、宛てがい扶持の食事に、その日その日をつづけることは、肉体は生きられるとしても、 …
読書目安時間:約4分
心のおもむくままに、いつも美味いものを食って、心の底から楽しんでみたい。朝も昼も晩も。犬や猫のように、宛てがい扶持の食事に、その日その日をつづけることは、肉体は生きられるとしても、 …
美食と人生(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
今さら事新しく問題にするのも、チトおかしいようだが、料理も考え方によっては、こんなことが言えるかも知れない。 「お惣菜料理」とは手の込む工夫を一切排除して、その上、なるべく安易に入 …
読書目安時間:約4分
今さら事新しく問題にするのも、チトおかしいようだが、料理も考え方によっては、こんなことが言えるかも知れない。 「お惣菜料理」とは手の込む工夫を一切排除して、その上、なるべく安易に入 …
美食七十年の体験(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
美味談も考えてみるとなかなか容易ではない。前に木下の『美味求真』、大谷光瑞の『食』、村井弦斎の『食道楽』、波多野承五郎の『食味の真髄を探る』、大河内正敏の『味覚』など、それぞれ一家 …
読書目安時間:約4分
美味談も考えてみるとなかなか容易ではない。前に木下の『美味求真』、大谷光瑞の『食』、村井弦斎の『食道楽』、波多野承五郎の『食味の真髄を探る』、大河内正敏の『味覚』など、それぞれ一家 …
備前焼(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
陶器は絵の描かれたものが大部分である。ところが、少数ではあるが、絵の描いてない陶器が日本には縄文、弥生や、陶器とは言えないが埴輪がある。これらに類似して、なんら絵をほどこさず、しか …
読書目安時間:約1分
陶器は絵の描かれたものが大部分である。ところが、少数ではあるが、絵の描いてない陶器が日本には縄文、弥生や、陶器とは言えないが埴輪がある。これらに類似して、なんら絵をほどこさず、しか …
一癖あるどじょう(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
どじょうなべ。美味くて、安くて、栄養価があって、親しみがあり、家庭でも容易にでき、万事文句なしのもの。ただし、貴族的ではない。これがどこへ行っても歓迎を受けているのは、もっともな話 …
読書目安時間:約3分
どじょうなべ。美味くて、安くて、栄養価があって、親しみがあり、家庭でも容易にでき、万事文句なしのもの。ただし、貴族的ではない。これがどこへ行っても歓迎を受けているのは、もっともな話 …
人と書相(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
書相は、よくその人の価値を表現する。端的にいって、いかにしたら書相によって人の価値を見分けるか? 人品良き者は品良き書を、下品なる者は下等なる書を、強き個性を有する者は、強靭なる書 …
読書目安時間:約3分
書相は、よくその人の価値を表現する。端的にいって、いかにしたら書相によって人の価値を見分けるか? 人品良き者は品良き書を、下品なる者は下等なる書を、強き個性を有する者は、強靭なる書 …
美味放談(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
上京の頃 僕が初めて東京に出て来た年少時に、京橋のビアホールになにか祝いごとがあってね。ビールが半額なんだ。飲んでやろうと思って行ったが、まず洋食を食おうと思ってね。ところがその時 …
読書目安時間:約16分
上京の頃 僕が初めて東京に出て来た年少時に、京橋のビアホールになにか祝いごとがあってね。ビールが半額なんだ。飲んでやろうと思って行ったが、まず洋食を食おうと思ってね。ところがその時 …
美味論語:――まずいものはなんとしてもうまくならぬ――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
「まずいものを、なんとかしてうまく食う方法を教えてくれ」という注文がときどぎ来るが、まずいものをうまくする……そんな秘法は絶対にない。魔術もなかろう。まずい米は所詮まずい。肉も魚類 …
読書目安時間:約3分
「まずいものを、なんとかしてうまく食う方法を教えてくれ」という注文がときどぎ来るが、まずいものをうまくする……そんな秘法は絶対にない。魔術もなかろう。まずい米は所詮まずい。肉も魚類 …
河豚食わぬ非常識(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
ふぐを恐ろしがって食わぬ者は、「ふぐは食いたし命は惜しし」の古諺に引っかかって味覚上とんだ損失をしている。その論拠の価値をきわめもせずに、うかうか古諺に釣り込まれ惜しくも無知的判断 …
読書目安時間:約5分
ふぐを恐ろしがって食わぬ者は、「ふぐは食いたし命は惜しし」の古諺に引っかかって味覚上とんだ損失をしている。その論拠の価値をきわめもせずに、うかうか古諺に釣り込まれ惜しくも無知的判断 …
河豚のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
ふぐのうまさというものは実に断然たるものだ、と私は言い切る。これを他に比せんとしても、これに優る何物をも発見し得ないからだ。 ふぐのうまさというものは、明石鯛がうまいの、ビフテキが …
読書目安時間:約6分
ふぐのうまさというものは実に断然たるものだ、と私は言い切る。これを他に比せんとしても、これに優る何物をも発見し得ないからだ。 ふぐのうまさというものは、明石鯛がうまいの、ビフテキが …
河豚は毒魚か(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
ふぐの美味さというものは実に断然たるものだ——と、私はいい切る。これを他に比せんとしても、これに優る何物をも発見し得ないからだ。 ふぐの美味さというものは、明石だいが美味いの、ビフ …
読書目安時間:約7分
ふぐの美味さというものは実に断然たるものだ——と、私はいい切る。これを他に比せんとしても、これに優る何物をも発見し得ないからだ。 ふぐの美味さというものは、明石だいが美味いの、ビフ …
筆にも口にもつくす(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
ある日、ある女人と、こんな話をした。 「先生、料理をするときの心がけについて話していただけませんでしょうか」 「なるほど、君はなかなかいいことを聞くね。方法を聞かずに、心がけを聞く …
読書目安時間:約5分
ある日、ある女人と、こんな話をした。 「先生、料理をするときの心がけについて話していただけませんでしょうか」 「なるほど、君はなかなかいいことを聞くね。方法を聞かずに、心がけを聞く …
フランス料理について(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
フランス料理の声価は、世界第一のごとく誇大に評判され、半世紀以上に渉って、われわれ日本人を信じさせてきた。フランスに派遣された役人たちによってである。考えてみると、だいたいみながみ …
読書目安時間:約5分
フランス料理の声価は、世界第一のごとく誇大に評判され、半世紀以上に渉って、われわれ日本人を信じさせてきた。フランスに派遣された役人たちによってである。考えてみると、だいたいみながみ …
不老長寿の秘訣(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
美味談も考えてみるとなかなか容易ではない。前に木下の『美味求真』、大谷光瑞の『食』、村井弦斎の『食道楽』、波多野承五郎の『食味の真髄を探る』、大河内正敏の『味覚』など、それぞれ一家 …
読書目安時間:約4分
美味談も考えてみるとなかなか容易ではない。前に木下の『美味求真』、大谷光瑞の『食』、村井弦斎の『食道楽』、波多野承五郎の『食味の真髄を探る』、大河内正敏の『味覚』など、それぞれ一家 …
墨蹟より見たる明治大正の文士(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
銀座松屋に十月中、明治大正の文士の墨蹟及び遺品の展観が催された。小生は「人」の価値を見るに常に墨蹟によって判断する事を得意とする。人の評判や世間の噂では間違いが多いことがあるので、 …
読書目安時間:約8分
銀座松屋に十月中、明治大正の文士の墨蹟及び遺品の展観が催された。小生は「人」の価値を見るに常に墨蹟によって判断する事を得意とする。人の評判や世間の噂では間違いが多いことがあるので、 …
掘出しは病気の元(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
古美術界では、とかく掘出しが流行する。なんとか安く買って高く売りつけ、あわよくば千金、万金を一挙にせしめようという悪い傾向がある。 掘出しというそのことに熱中してはいけない。ものそ …
読書目安時間:約2分
古美術界では、とかく掘出しが流行する。なんとか安く買って高く売りつけ、あわよくば千金、万金を一挙にせしめようという悪い傾向がある。 掘出しというそのことに熱中してはいけない。ものそ …
鮪の茶漬け(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
たい茶漬けは世間に流布され、その看板をかけている料理屋さえ出来てきた。関西ではもちろんのこと、東京でも近来よく見かけるようになった。また、家庭にも侵入して、実際に試みられるようにさ …
読書目安時間:約5分
たい茶漬けは世間に流布され、その看板をかけている料理屋さえ出来てきた。関西ではもちろんのこと、東京でも近来よく見かけるようになった。また、家庭にも侵入して、実際に試みられるようにさ …
鮪を食う話(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
東京ほどまぐろを食うところはあるまい。夏場、東京魚河岸で扱うまぐろは一日約一千尾という。秋よりこれからの冬に約三百尾を売りさばくというのであるから、東京のまぐろ好きが想像されようと …
読書目安時間:約9分
東京ほどまぐろを食うところはあるまい。夏場、東京魚河岸で扱うまぐろは一日約一千尾という。秋よりこれからの冬に約三百尾を売りさばくというのであるから、東京のまぐろ好きが想像されようと …
味覚の美と芸術の美(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
すべての物は天が造る。天日の下新しきものなしとはその意に外ならぬ。人はただ自然をいかに取り入れるか、天の成せるものを、人の世にいかにして活かすか、ただそれだけだ。しかも、それがなか …
読書目安時間:約11分
すべての物は天が造る。天日の下新しきものなしとはその意に外ならぬ。人はただ自然をいかに取り入れるか、天の成せるものを、人の世にいかにして活かすか、ただそれだけだ。しかも、それがなか …
味覚馬鹿(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
美味い不味いは栄養価を立証する。 * 天然の味に優る美味なし。 * 現今の料理は美趣味が欠如している。 * 料理つくるも年齢、食う好みも年齢。 * 料理をつくる者は、つとめて価値あ …
読書目安時間:約18分
美味い不味いは栄養価を立証する。 * 天然の味に優る美味なし。 * 現今の料理は美趣味が欠如している。 * 料理つくるも年齢、食う好みも年齢。 * 料理をつくる者は、つとめて価値あ …
道は次第に狭し(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
先日、ある雑誌記者来訪、「ものを美味く食うにはどうすればいいか」とたずねた。 世の中には、ずいぶん無造作に愚問を発する輩があるものだ。思うにこういうふうなものの聞き方をする連中は、 …
読書目安時間:約11分
先日、ある雑誌記者来訪、「ものを美味く食うにはどうすればいいか」とたずねた。 世の中には、ずいぶん無造作に愚問を発する輩があるものだ。思うにこういうふうなものの聞き方をする連中は、 …
魅力と親しみと美に優れた良寛の書(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
良寛様のようなずばぬけた書を、我々如きが濫りに批評するなどは、僭越に過ぎるかも知れぬが、常々良寛様に親しみと尊敬とを持っている一人として、感ずるところを、一応述べさせて貰うことにす …
読書目安時間:約8分
良寛様のようなずばぬけた書を、我々如きが濫りに批評するなどは、僭越に過ぎるかも知れぬが、常々良寛様に親しみと尊敬とを持っている一人として、感ずるところを、一応述べさせて貰うことにす …
「明の古染付」観(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
染付は今から五百年ばかり前の支那明代に完成したものである。それ迄にはこんなスキツとした美しい焼物は実に見たくも見られなかつたと言ふべきだ。これには恐らく間違ひはないといつてよい。 …
読書目安時間:約10分
染付は今から五百年ばかり前の支那明代に完成したものである。それ迄にはこんなスキツとした美しい焼物は実に見たくも見られなかつたと言ふべきだ。これには恐らく間違ひはないといつてよい。 …
持ち味を生かす(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
生かすことは殺さないことである。生かされているか殺されているかを見分ける力が料理人の力であらねばならぬ。神様が人間に下し給うたとみるべき人間食物の個々の持ち味は、残念でも年を経るに …
読書目安時間:約3分
生かすことは殺さないことである。生かされているか殺されているかを見分ける力が料理人の力であらねばならぬ。神様が人間に下し給うたとみるべき人間食物の個々の持ち味は、残念でも年を経るに …
牧渓の書の妙諦(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
これは有名な大徳寺蔵の牧渓「竜虎」の双幅に見られるその題語款識である(但し「蜀僧法常識製」の分は「観音」の三幅対のもの)。 牧渓という人は、いわゆる大器大用の作家であった。決して小 …
読書目安時間:約3分
これは有名な大徳寺蔵の牧渓「竜虎」の双幅に見られるその題語款識である(但し「蜀僧法常識製」の分は「観音」の三幅対のもの)。 牧渓という人は、いわゆる大器大用の作家であった。決して小 …
柳宗悦氏の筆蹟を通じその人を見る:――名論の逆を行く氏の書――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
柳さんの書かれた手紙の字、すなわち、その書というものは、遺憾ながら私の見たところによると、いわゆる氏の理想とされる民芸の感覚からは遠く離れたものである——と断ぜざるを得ない。 民芸 …
読書目安時間:約3分
柳さんの書かれた手紙の字、すなわち、その書というものは、遺憾ながら私の見たところによると、いわゆる氏の理想とされる民芸の感覚からは遠く離れたものである——と断ぜざるを得ない。 民芸 …
湯豆腐のやり方(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
一番最初鍋の中に切れ目のある昆布を敷き、鍋の深さの半分目以上水を入れる。三寸の鍋なら上一寸を余して水を入れ、およそ一寸角くらいに切った豆腐をこわさないようにそっと入れる。杉箸ではさ …
読書目安時間:約2分
一番最初鍋の中に切れ目のある昆布を敷き、鍋の深さの半分目以上水を入れる。三寸の鍋なら上一寸を余して水を入れ、およそ一寸角くらいに切った豆腐をこわさないようにそっと入れる。杉箸ではさ …
よい書とうまい書(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
古来世間でいう「うまい書」というものには、例えば夏の夕、裸であぐらをかいて、夕顔棚の下で涼しい顔をしているようなのがある。 それではまた、先輩諸君を前にして失礼でございますが、また …
読書目安時間:約16分
古来世間でいう「うまい書」というものには、例えば夏の夕、裸であぐらをかいて、夕顔棚の下で涼しい顔をしているようなのがある。 それではまた、先輩諸君を前にして失礼でございますが、また …
余が近業として陶磁器製作を試みる所以(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
古来貴重視せらるる陶磁器は東洋に於て特に発達を遂げ西邦に及ぼす所ありたるは言ふまでも無い。而して早く支那に於て発明する処ありたるも論無き処であるが、清朝に下つては其作品に芸術的生命 …
読書目安時間:約3分
古来貴重視せらるる陶磁器は東洋に於て特に発達を遂げ西邦に及ぼす所ありたるは言ふまでも無い。而して早く支那に於て発明する処ありたるも論無き処であるが、清朝に下つては其作品に芸術的生命 …
夜寒に火を囲んで懐しい雑炊(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
元来、美味な料理ができないという理由は、料理する人が鋭敏な味覚の舌をもたないことと、今一つは風情というものの力が、どんなにうまく料理を工夫させるかを知らないからに基因する。この風情 …
読書目安時間:約7分
元来、美味な料理ができないという理由は、料理する人が鋭敏な味覚の舌をもたないことと、今一つは風情というものの力が、どんなにうまく料理を工夫させるかを知らないからに基因する。この風情 …
洛北深泥池の蓴菜(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
じゅんさいというものは、古池に生ずる一種の藻草の新芽である。その新芽がちょうど蓮の巻葉のように細く巻かれた、ようよう長さ五分くらいのものを賞玩するのである。その針のように細く巻かれ …
読書目安時間:約3分
じゅんさいというものは、古池に生ずる一種の藻草の新芽である。その新芽がちょうど蓮の巻葉のように細く巻かれた、ようよう長さ五分くらいのものを賞玩するのである。その針のように細く巻かれ …
良寛様の書(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
良寛様のような、近世では他にその比を見られないまでの、ずば抜けた書、それをわれわれごときがとやかくといい気になって批評することは、どういうものかと危惧を禁じ得ないものがないのでもな …
読書目安時間:約14分
良寛様のような、近世では他にその比を見られないまでの、ずば抜けた書、それをわれわれごときがとやかくといい気になって批評することは、どういうものかと危惧を禁じ得ないものがないのでもな …
良寛の書(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
良寛の書には、不肖ながら私も心の底から惚れこんで、一通り見られるだけのものは、百点位見た積りである。 その経験でいうと、良寛様とて未熟時代があって、若かりし頃の書(屏風に書かれてい …
読書目安時間:約3分
良寛の書には、不肖ながら私も心の底から惚れこんで、一通り見られるだけのものは、百点位見た積りである。 その経験でいうと、良寛様とて未熟時代があって、若かりし頃の書(屏風に書かれてい …
料理一夕話(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
料理の話?君、料理の話をしたってムダだよ。たとえば、かつおぶしでだしを取るとか、昆布でだしを取るとか言っても、かつおぶしにも昆布にも種類があり、良否があり、取り方にも口で言えないコ …
読書目安時間:約18分
料理の話?君、料理の話をしたってムダだよ。たとえば、かつおぶしでだしを取るとか、昆布でだしを取るとか言っても、かつおぶしにも昆布にも種類があり、良否があり、取り方にも口で言えないコ …
料理芝居(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
良寛は「好まぬものが三つある」とて、歌詠みの歌と書家の書と料理屋の料理とを挙げている。まったくその通りであって、その通りその通りと、なんべんでも声を大にしたい。料理人の料理や、書家 …
読書目安時間:約4分
良寛は「好まぬものが三つある」とて、歌詠みの歌と書家の書と料理屋の料理とを挙げている。まったくその通りであって、その通りその通りと、なんべんでも声を大にしたい。料理人の料理や、書家 …
料理する心(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
料理と食器の話などいう、こんな平凡な事柄は、今さら私がおしゃべりしませんでも、みなさんは毎日のことでありますから、疾うにこれに関心をお持ちになり、研究もお出来になっておりますことと …
読書目安時間:約8分
料理と食器の話などいう、こんな平凡な事柄は、今さら私がおしゃべりしませんでも、みなさんは毎日のことでありますから、疾うにこれに関心をお持ちになり、研究もお出来になっておりますことと …
料理と器物(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
日本料理に使っている上手物の陶器の食器は、多く中国で出来たものである。殊にわが懐石料理に尊重する器具の例を挙げるならば、染付の各種、青磁万体、呉須赤絵、金襴手類などは、残らず中国の …
読書目安時間:約3分
日本料理に使っている上手物の陶器の食器は、多く中国で出来たものである。殊にわが懐石料理に尊重する器具の例を挙げるならば、染付の各種、青磁万体、呉須赤絵、金襴手類などは、残らず中国の …
料理と食器(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
近来、食べ物のことがいろいろの方面から注意され、食べ物に関する論議がさかんになってきた。殊に栄養学というような方面から、食べ物の配合や量のことをやかましくいうことが流行った。けれど …
読書目安時間:約4分
近来、食べ物のことがいろいろの方面から注意され、食べ物に関する論議がさかんになってきた。殊に栄養学というような方面から、食べ物の配合や量のことをやかましくいうことが流行った。けれど …
料理人を募る(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
「料理人を募る」星岡茶寮で新聞広告を出すと、たちまちあのチッポケな十行くらいの雇傭広告一回に対して、百人余りもぞろぞろ申込者があった。不景気で失業している人の多いのにもよろうが、料 …
読書目安時間:約2分
「料理人を募る」星岡茶寮で新聞広告を出すと、たちまちあのチッポケな十行くらいの雇傭広告一回に対して、百人余りもぞろぞろ申込者があった。不景気で失業している人の多いのにもよろうが、料 …
料理の第一歩(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
一人の男がいた。女房が去った後は独りで暮らしていた。その男はこんなことを考えた。 「まず土地を見つけることだ。よく肥えた土地を。そしてそこへ野菜を植えるのだ。毎日野菜が食べられるぞ …
読書目安時間:約4分
一人の男がいた。女房が去った後は独りで暮らしていた。その男はこんなことを考えた。 「まず土地を見つけることだ。よく肥えた土地を。そしてそこへ野菜を植えるのだ。毎日野菜が食べられるぞ …
料理の秘訣(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
美味い料理を拵える秘訣—— 美味いものを食う秘訣—— この秘訣を知ることが一番大事なことだ。その秘訣というのは、言ってしまえば手品の種といっしょで、別段なんでもないことだ。つまり、 …
読書目安時間:約6分
美味い料理を拵える秘訣—— 美味いものを食う秘訣—— この秘訣を知ることが一番大事なことだ。その秘訣というのは、言ってしまえば手品の種といっしょで、別段なんでもないことだ。つまり、 …
料理の妙味(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
美味い料理をしようと思ったら、その根本は食品材料を生かせばよい、それだけのことである。材料を生かすということは、死んださかなを再び水に泳がすというふうな、そんな無理なことを言うので …
読書目安時間:約4分
美味い料理をしようと思ったら、その根本は食品材料を生かせばよい、それだけのことである。材料を生かすということは、死んださかなを再び水に泳がすというふうな、そんな無理なことを言うので …
料理は道理を料るもの(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
日本料理の革新を叫んで星岡を始めたころ、私が板場へ降りて仕事をしだすと、料理材料のゴミが三分の一しか出ないと、ある料理人から言われた。料理材料の不用分を私が処理すると、捨てるところ …
読書目安時間:約3分
日本料理の革新を叫んで星岡を始めたころ、私が板場へ降りて仕事をしだすと、料理材料のゴミが三分の一しか出ないと、ある料理人から言われた。料理材料の不用分を私が処理すると、捨てるところ …
料理メモ(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
鮎 *食べ頃はあゆのとれ出した若あゆから七月初旬まで。さばのように大きく成長したのはまずい。卵子を持つまでが一等美味。 *あゆの産地ではめいめいお国自慢をしているが、結局はだいたい …
読書目安時間:約7分
鮎 *食べ頃はあゆのとれ出した若あゆから七月初旬まで。さばのように大きく成長したのはまずい。卵子を持つまでが一等美味。 *あゆの産地ではめいめいお国自慢をしているが、結局はだいたい …
料理も創作である(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
料理屋の料理にせよ、あるいは家庭の料理にせよ、それがうまくできるもできないも、要するに料理をする人の舌次第なのである。 あそこの料理屋の料理よりも、ここのうちの奥さんのお手料理の方 …
読書目安時間:約3分
料理屋の料理にせよ、あるいは家庭の料理にせよ、それがうまくできるもできないも、要するに料理をする人の舌次第なのである。 あそこの料理屋の料理よりも、ここのうちの奥さんのお手料理の方 …
魯山人家蔵百選 序(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私が鎌倉の山崎に窯を築き、製陶の事に懸命に係り出してからといふものは、勢の赴くところとでも云はうか、参考品としての古陶磁の蒐集が余儀なく一箇の大事になつた。 これは私が製陶上の狙ひ …
読書目安時間:約2分
私が鎌倉の山崎に窯を築き、製陶の事に懸命に係り出してからといふものは、勢の赴くところとでも云はうか、参考品としての古陶磁の蒐集が余儀なく一箇の大事になつた。 これは私が製陶上の狙ひ …
魯山人作陶百影 序(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私が陶器を自分で作る気になり、窯を自分の家に築き始めたのは昭和二年四月であり、窯が出来て第一回の製作を了り、初窯を試みたのはその年の十月の七日であるから、まだ至つて日の浅いことであ …
読書目安時間:約3分
私が陶器を自分で作る気になり、窯を自分の家に築き始めたのは昭和二年四月であり、窯が出来て第一回の製作を了り、初窯を試みたのはその年の十月の七日であるから、まだ至つて日の浅いことであ …
若鮎について(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
あゆの小さなものは、どうかするとうまくないというひともあるが、わたしは一概にそうは思わない。 小田原の手前に酒匂川という川がある。まだ禁漁中にあの近辺のひとが酒匂川のあゆをよく盗み …
読書目安時間:約2分
あゆの小さなものは、どうかするとうまくないというひともあるが、わたしは一概にそうは思わない。 小田原の手前に酒匂川という川がある。まだ禁漁中にあの近辺のひとが酒匂川のあゆをよく盗み …
若鮎の気品を食う(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
ぜいたくにと、ひと口に言っても、上には上、下には下の段々がある。若鮎を賞味できる人というのは上の上に属する。丹波の秀山、和知川などの若鮎と来てはたまらない。 第一姿のよさに魅せられ …
読書目安時間:約3分
ぜいたくにと、ひと口に言っても、上には上、下には下の段々がある。若鮎を賞味できる人というのは上の上に属する。丹波の秀山、和知川などの若鮎と来てはたまらない。 第一姿のよさに魅せられ …
若鮎の塩焼き(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
新緑の味覚は、若あゆの塩焼きからといってもよい。関西方面ではともかく、東京で活あゆの料理が自由に食べられるようになったのは、そう古いことではない。 しかも、ほんとうに天然の若あゆを …
読書目安時間:約2分
新緑の味覚は、若あゆの塩焼きからといってもよい。関西方面ではともかく、東京で活あゆの料理が自由に食べられるようになったのは、そう古いことではない。 しかも、ほんとうに天然の若あゆを …
若狭春鯖のなれずし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
さばずしはなんと言っても古来京都が本場である。それというのも、日本一の称をもってなる若狭小浜の春秋のさばを主材としてつくられているからである。さばは若狭が第一、次に関西ものにかぎる …
読書目安時間:約3分
さばずしはなんと言っても古来京都が本場である。それというのも、日本一の称をもってなる若狭小浜の春秋のさばを主材としてつくられているからである。さばは若狭が第一、次に関西ものにかぎる …
私の作陶体験は先人をかく観る(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
長次郎(安土、桃山時代)……日本陶芸史上唯一の芸術家。 本阿弥光悦(安土、桃山から江戸初期)……多趣味多能にして広範囲の美術鑑賞眼をもつ道楽者。 長次郎三代のんこう(江戸初期)…… …
読書目安時間:約30分
長次郎(安土、桃山時代)……日本陶芸史上唯一の芸術家。 本阿弥光悦(安土、桃山から江戸初期)……多趣味多能にして広範囲の美術鑑賞眼をもつ道楽者。 長次郎三代のんこう(江戸初期)…… …
私の陶器製作について(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
あるやんごとなき御方の御下問に奉答した私の言葉の要約を摘記する。 ——あなたのなさってる陶器研究というのは釉薬の研究がむずかしいのですか。 ——それも一つでございますが、一番私の重 …
読書目安時間:約7分
あるやんごとなき御方の御下問に奉答した私の言葉の要約を摘記する。 ——あなたのなさってる陶器研究というのは釉薬の研究がむずかしいのですか。 ——それも一つでございますが、一番私の重 …
私の料理ばなし(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
わたしはイタイケな時分から、食べ物にはなかなかやかましく、養父母にうるさがられたものである。子供のくせに食品にいやに眼が利き、味の良否も他に勝っていたようである。 飯も九歳の春から …
読書目安時間:約1分
わたしはイタイケな時分から、食べ物にはなかなかやかましく、養父母にうるさがられたものである。子供のくせに食品にいやに眼が利き、味の良否も他に勝っていたようである。 飯も九歳の春から …
“北大路魯山人”について
北大路 魯山人(きたおおじ ろさんじん)、1883年〈明治16年〉3月23日 - 1959年〈昭和34年〉12月21日)は、日本の芸術家。本名は北大路 房次郎(きたおおじ ふさじろう)。
晩年まで、篆刻家、画家、
陶芸家、書道家、漆芸家、料理家・美食家などの様々な顔を持っていた。
(出典:Wikipedia)
晩年まで、篆刻家、画家、
陶芸家、書道家、漆芸家、料理家・美食家などの様々な顔を持っていた。
(出典:Wikipedia)
“北大路魯山人”と年代が近い著者
今月で没後X十年
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ジェーン・テーラー(没後200年)
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原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)