高村光太郎
1883.03.13 〜 1956.04.02
“高村光太郎”に特徴的な語句
廃頽
孔
所謂
斯
破綻
却
曾
真摯
浴衣
惑溺
喧嘩
石膏
漸
気魄
悉
籠
忽
有
尤
檜
已
胃潰瘍
颯爽
緻密
祟
驀進
被
麝香
琅玕洞
溌剌
湛
斯
斯
措
拠
徒
咽喉
叮嚀
著者としての作品一覧
永遠の感覚(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
芸術上でわれわれが常に思考する永遠という観念は何であろう。永遠性とか、悠久性とかいうのは一体何の事であろう。 仮に類似の言葉を求めてみると、永遠、永久、悠久、永続、無限、無終、不断 …
読書目安時間:約5分
芸術上でわれわれが常に思考する永遠という観念は何であろう。永遠性とか、悠久性とかいうのは一体何の事であろう。 仮に類似の言葉を求めてみると、永遠、永久、悠久、永続、無限、無終、不断 …
開墾(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
私自身のやつてゐるのは開墾などと口幅つたいことは言はれないほどあはれなものである。小屋のまはりに猫の額ほどの地面を掘り起して去年はジヤガイモを植ゑた。今年は又その倍ぐらゐの地面を起 …
読書目安時間:約5分
私自身のやつてゐるのは開墾などと口幅つたいことは言はれないほどあはれなものである。小屋のまはりに猫の額ほどの地面を掘り起して去年はジヤガイモを植ゑた。今年は又その倍ぐらゐの地面を起 …
回想録(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間12分
私の父は八十三で亡くなった。昭和九年だったから、私の何歳の時になるか、私は歳というものを殆と気にとめていない。実は結婚する時自分の妻の年も知らなかった。妻も私が何歳であるか訊きもし …
読書目安時間:約1時間12分
私の父は八十三で亡くなった。昭和九年だったから、私の何歳の時になるか、私は歳というものを殆と気にとめていない。実は結婚する時自分の妻の年も知らなかった。妻も私が何歳であるか訊きもし …
顔(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
顔は誰でもごまかせない。顔ほど正直な看板はない。顔をまる出しにして往来を歩いている事であるから、人は一切のごまかしを観念してしまうより外ない。いくら化けたつもりでも化ければ化けるほ …
読書目安時間:約2分
顔は誰でもごまかせない。顔ほど正直な看板はない。顔をまる出しにして往来を歩いている事であるから、人は一切のごまかしを観念してしまうより外ない。いくら化けたつもりでも化ければ化けるほ …
珈琲店より(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
例の MONTMARTRE の珈琲店で酒をのんで居る。此頃、僕の顔に非常な悲しみが潜んでゐるといつた君に、僕の一つの経験を話したくなつた。まあ読んでくれたまへ。 OPÉRA のはね …
読書目安時間:約7分
例の MONTMARTRE の珈琲店で酒をのんで居る。此頃、僕の顔に非常な悲しみが潜んでゐるといつた君に、僕の一つの経験を話したくなつた。まあ読んでくれたまへ。 OPÉRA のはね …
木彫ウソを作った時(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
私は自分で生きものを飼う事が苦手のため、平常は犬一匹、小鳥一羽も飼っていないが、もともと鳥獣虫魚何にてもあれ、その美しさに心を打たれるので、街を歩いていると我知らず小鳥屋の前に足を …
読書目安時間:約5分
私は自分で生きものを飼う事が苦手のため、平常は犬一匹、小鳥一羽も飼っていないが、もともと鳥獣虫魚何にてもあれ、その美しさに心を打たれるので、街を歩いていると我知らず小鳥屋の前に足を …
九代目団十郎の首(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
九代目市川団十郎は明治三十六年九月、六十六歳で死んだ。丁度幕末からかけて明治興隆期の文明開化時代を通過し、国運第二の発展期たる日露戦争直前に生を終ったわけである。彼は俳優という職業 …
読書目安時間:約5分
九代目市川団十郎は明治三十六年九月、六十六歳で死んだ。丁度幕末からかけて明治興隆期の文明開化時代を通過し、国運第二の発展期たる日露戦争直前に生を終ったわけである。彼は俳優という職業 …
気仙沼(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
女川から気仙沼へ行く気で午後三時の船に乗る。軍港の候補地だといふ女川湾の平和な、澄んだ海を飛びかふ海猫の群団が、網をふせた漁場のまはりにたかり、あの甘つたれた猫そつくりの声で鳴きか …
読書目安時間:約3分
女川から気仙沼へ行く気で午後三時の船に乗る。軍港の候補地だといふ女川湾の平和な、澄んだ海を飛びかふ海猫の群団が、網をふせた漁場のまはりにたかり、あの甘つたれた猫そつくりの声で鳴きか …
黄山谷について(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
平凡社の今度の「書道全集」は製版がたいへんいいので見ていてたのしい。それに中国のも日本のも典拠の正しい、すぐれた原本がうまく選ばれているようで、われわれ門外漢も安心して鑑賞できるの …
読書目安時間:約4分
平凡社の今度の「書道全集」は製版がたいへんいいので見ていてたのしい。それに中国のも日本のも典拠の正しい、すぐれた原本がうまく選ばれているようで、われわれ門外漢も安心して鑑賞できるの …
小刀の味(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
飛行家が飛行機を愛し、機械工が機械を愛撫するように、技術家は何によらず自分の使用する道具を酷愛するようになる。われわれ彫刻家が木彫の道具、殊に小刀を大切にし、まるで生き物のように此 …
読書目安時間:約3分
飛行家が飛行機を愛し、機械工が機械を愛撫するように、技術家は何によらず自分の使用する道具を酷愛するようになる。われわれ彫刻家が木彫の道具、殊に小刀を大切にし、まるで生き物のように此 …
古代エジプトの作品(旧字新仮名)
読書目安時間:約4分
エジプト彫刻最高期の作であるこの像はさすがに堂々たる大彫刻の美をもつている。後期王朝時代のもののように巨大ではないが、彫刻からうける感銘はかえつてそれよりも大きい。ギイザにある大ス …
読書目安時間:約4分
エジプト彫刻最高期の作であるこの像はさすがに堂々たる大彫刻の美をもつている。後期王朝時代のもののように巨大ではないが、彫刻からうける感銘はかえつてそれよりも大きい。ギイザにある大ス …
自作肖像漫談(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
今度は漫談になるであろう。この前肖像彫刻の事を書いたが、私自身肖像彫刻を作るのが好きなので、肖像というと大てい喜んで引きうける。これまでかなりいろいろの人のものを作った。 昔、紐育 …
読書目安時間:約9分
今度は漫談になるであろう。この前肖像彫刻の事を書いたが、私自身肖像彫刻を作るのが好きなので、肖像というと大てい喜んで引きうける。これまでかなりいろいろの人のものを作った。 昔、紐育 …
詩について語らず:――編集子への手紙――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
詩の講座のために詩について書いてくれというかねての依頼でしたが、今詩について一行も書けないような心的状態にあるので書かずに居たところ、編集子の一人が膝づめ談判に来られていささか閉口 …
読書目安時間:約3分
詩の講座のために詩について書いてくれというかねての依頼でしたが、今詩について一行も書けないような心的状態にあるので書かずに居たところ、編集子の一人が膝づめ談判に来られていささか閉口 …
自分と詩との関係(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
私は何を措いても彫刻家である。彫刻は私の血の中にある。私の彫刻がたとい善くても悪くても、私の宿命的な彫刻家である事には変りがない。 ところでその彫刻家が詩を書く。それにどういう意味 …
読書目安時間:約4分
私は何を措いても彫刻家である。彫刻は私の血の中にある。私の彫刻がたとい善くても悪くても、私の宿命的な彫刻家である事には変りがない。 ところでその彫刻家が詩を書く。それにどういう意味 …
触覚の世界(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
私は彫刻家である。 多分そのせいであろうが、私にとって此世界は触覚である。触覚はいちばん幼稚な感覚だと言われているが、しかも其れだからいちばん根源的なものであると言える。彫刻はいち …
読書目安時間:約9分
私は彫刻家である。 多分そのせいであろうが、私にとって此世界は触覚である。触覚はいちばん幼稚な感覚だと言われているが、しかも其れだからいちばん根源的なものであると言える。彫刻はいち …
書について(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
この頃は書道がひどく流行して来て、世の中に悪筆が横行している。なまじっか習った能筆風な無性格の書や、擬態の書や、逆にわざわざ稚拙をたくんだ、ずるいとぼけた書などが随分目につく。絶え …
読書目安時間:約6分
この頃は書道がひどく流行して来て、世の中に悪筆が横行している。なまじっか習った能筆風な無性格の書や、擬態の書や、逆にわざわざ稚拙をたくんだ、ずるいとぼけた書などが随分目につく。絶え …
書の深淵(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
書をみるのはたのしい。畫は見飽きることもあるが、書はいくら見てゐてもあきない。又いくどくり返してみてもそのたびに新らしく感ずる。 出土品の骨や角に彫つた原始形態のものもおもしろく、 …
読書目安時間:約3分
書をみるのはたのしい。畫は見飽きることもあるが、書はいくら見てゐてもあきない。又いくどくり返してみてもそのたびに新らしく感ずる。 出土品の骨や角に彫つた原始形態のものもおもしろく、 …
書をみるたのしさ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
書を見てゐるのは無條件にたのしい。畫を見るのもたのしいが、書の方が飽きないやうな氣がする。書の寫眞帖を見てゐると時間をつぶして困るが、又あけて見たくなる。疲れた時など心が休まるし、 …
読書目安時間:約1分
書を見てゐるのは無條件にたのしい。畫を見るのもたのしいが、書の方が飽きないやうな氣がする。書の寫眞帖を見てゐると時間をつぶして困るが、又あけて見たくなる。疲れた時など心が休まるし、 …
正と譎と(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
竹田流に言へば、ピカソは譎にして正ならざるもの、ドランは正にして譎ならざるものだ。譎とはたばかる事ではない。意匠に急なる事だ。正とは表現そのものに急なることだ。大雅の畫が表現の畫で …
読書目安時間:約2分
竹田流に言へば、ピカソは譎にして正ならざるもの、ドランは正にして譎ならざるものだ。譎とはたばかる事ではない。意匠に急なる事だ。正とは表現そのものに急なることだ。大雅の畫が表現の畫で …
蝉の美と造型(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
私はよく蝉の木彫をつくる。鳥獣虫魚何でも興味の無いものはないが、造型的意味から見て彫刻に適するものと適さないものとがある。私は虫類に友人が甚だ多く、バッタ、コオロギ、トンボ、カマキ …
読書目安時間:約7分
私はよく蝉の木彫をつくる。鳥獣虫魚何でも興味の無いものはないが、造型的意味から見て彫刻に適するものと適さないものとがある。私は虫類に友人が甚だ多く、バッタ、コオロギ、トンボ、カマキ …
装幀について(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
装幀美の極致は比例にあるといふのが私の持論である。尤も此は装幀に限らない。一般人事の究極は、すべて無駄なものを脱ぎすて枝葉のばかばかしさを洗ひ落し、結局比例の一点に進んではじめて此 …
読書目安時間:約3分
装幀美の極致は比例にあるといふのが私の持論である。尤も此は装幀に限らない。一般人事の究極は、すべて無駄なものを脱ぎすて枝葉のばかばかしさを洗ひ落し、結局比例の一点に進んではじめて此 …
啄木と賢治(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
○岩手県というところは一般の人が考えている以上にすばらしい地方だということが、来て住んでみるとだんだんよく分ってきました。此の地方の人の性格は多く誠実で、何だか大きな山のような感じ …
読書目安時間:約3分
○岩手県というところは一般の人が考えている以上にすばらしい地方だということが、来て住んでみるとだんだんよく分ってきました。此の地方の人の性格は多く誠実で、何だか大きな山のような感じ …
智恵子抄(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間5分
いやなんです あなたのいつてしまふのが—— 花よりさきに実のなるやうな 種子よりさきに芽の出るやうな 夏から春のすぐ来るやうな そんな理窟に合はない不自然を どうかしないでゐて下さ …
読書目安時間:約1時間5分
いやなんです あなたのいつてしまふのが—— 花よりさきに実のなるやうな 種子よりさきに芽の出るやうな 夏から春のすぐ来るやうな そんな理窟に合はない不自然を どうかしないでゐて下さ …
智恵子の紙絵(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
精神病者に簡単な手工をすすめるのはいいときいてゐたので、智恵子が病院に入院して、半年もたち、昂奮がやや鎮静した頃、私は智恵子の平常好きだつた千代紙を持つていつた。智恵子は大へんよろ …
読書目安時間:約3分
精神病者に簡単な手工をすすめるのはいいときいてゐたので、智恵子が病院に入院して、半年もたち、昂奮がやや鎮静した頃、私は智恵子の平常好きだつた千代紙を持つていつた。智恵子は大へんよろ …
智恵子の半生(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
妻智恵子が南品川ゼームス坂病院の十五号室で精神分裂症患者として粟粒性肺結核で死んでから旬日で満二年になる。私はこの世で智恵子にめぐりあったため、彼女の純愛によって清浄にされ、以前の …
読書目安時間:約26分
妻智恵子が南品川ゼームス坂病院の十五号室で精神分裂症患者として粟粒性肺結核で死んでから旬日で満二年になる。私はこの世で智恵子にめぐりあったため、彼女の純愛によって清浄にされ、以前の …
唐招提寺木彫如来形像(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
唐招提寺には鑑眞和上に隨從して來た諸律僧の中の優れた彫刻家が、唐風の樣式をそのまま作り出した佛像が多いので、一種別樣の作風が見られて興味がある。そして此の律宗獨特の作風がすぐあとに …
読書目安時間:約1分
唐招提寺には鑑眞和上に隨從して來た諸律僧の中の優れた彫刻家が、唐風の樣式をそのまま作り出した佛像が多いので、一種別樣の作風が見られて興味がある。そして此の律宗獨特の作風がすぐあとに …
道程(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
どこかに通じてる大道を僕は歩いてゐるのぢやない 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出來る 道は僕のふみしだいて來た足あとだ だから 道の最端にいつでも僕は立つてゐる 何といふ曲りくね …
読書目安時間:約4分
どこかに通じてる大道を僕は歩いてゐるのぢやない 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出來る 道は僕のふみしだいて來た足あとだ だから 道の最端にいつでも僕は立つてゐる 何といふ曲りくね …
土門拳写真集「風貌」推薦文(旧字新仮名)
読書目安時間:約1分
土門拳はぶきみである。土門拳のレンズは人や物を底まであばく。レンズの非情性と、土門拳そのものの激情性とが、實によく同盟して被寫體を襲撃する。この無機性の眼と有機性の眼との結合の強さ …
読書目安時間:約1分
土門拳はぶきみである。土門拳のレンズは人や物を底まであばく。レンズの非情性と、土門拳そのものの激情性とが、實によく同盟して被寫體を襲撃する。この無機性の眼と有機性の眼との結合の強さ …
十和田湖の裸像に与ふ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
銅とスズとの合金が立つてゐる。 どんな造型が行はれようと 無機質の圖形にはちがひがない。 はらわたや粘液や脂や汗や生きものの きたならしさはここにない。 すさまじい十和田湖の圓錐空 …
読書目安時間:約1分
銅とスズとの合金が立つてゐる。 どんな造型が行はれようと 無機質の圖形にはちがひがない。 はらわたや粘液や脂や汗や生きものの きたならしさはここにない。 すさまじい十和田湖の圓錐空 …
能の彫刻美(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
能はいはゆる綜合芸術の一つであるから、あらゆる芸術の分子がその舞台の上で融合し展開せられる。その融合の微妙さとその展開の為方の緊密にしてしかも回転自在な構成の美しさとに観る者は打た …
読書目安時間:約8分
能はいはゆる綜合芸術の一つであるから、あらゆる芸術の分子がその舞台の上で融合し展開せられる。その融合の微妙さとその展開の為方の緊密にしてしかも回転自在な構成の美しさとに観る者は打た …
美:〔いつたん此世に〕 (旧字新仮名)
読書目安時間:約1分
いつたん此世にあらわれた以上、美は決してほろびない。 眞理はつねに更生せられて、一つの眞理から次の眞理へとうつりかわり、前の眞理はほろびる。それが眞理の本然である。 美は次々とうつ …
読書目安時間:約1分
いつたん此世にあらわれた以上、美は決してほろびない。 眞理はつねに更生せられて、一つの眞理から次の眞理へとうつりかわり、前の眞理はほろびる。それが眞理の本然である。 美は次々とうつ …
美:〔私は美術のことに〕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
私は美術のことに從つてゐる者なので、この世の美について常に心を用ゐざるを得ない。そして世人の普通考へてゐるやうな眼や感情に、ただ奇麗に見える事物を直ちに美なりとする考へ方を、もう一 …
読書目安時間:約1分
私は美術のことに從つてゐる者なので、この世の美について常に心を用ゐざるを得ない。そして世人の普通考へてゐるやうな眼や感情に、ただ奇麗に見える事物を直ちに美なりとする考へ方を、もう一 …
ヒウザン会とパンの会(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
私が永年の欧洲留学を終えて帰朝したのは、たしか一九一〇年であった。 当時、わが洋画界は白馬会の全盛時代であって、白馬会に非ざるものは人に非ずの概があった。しかし、旧套墨守のそうした …
読書目安時間:約9分
私が永年の欧洲留学を終えて帰朝したのは、たしか一九一〇年であった。 当時、わが洋画界は白馬会の全盛時代であって、白馬会に非ざるものは人に非ずの概があった。しかし、旧套墨守のそうした …
美術学校時代(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
僕は江戸時代からの伝統で総領は親父の職業を継ぐというのは昔から極っていたので、子供の時から何を職業とするかということについて迷ったことはなかった。美術学校にも自然に入ってしまった。 …
読書目安時間:約15分
僕は江戸時代からの伝統で総領は親父の職業を継ぐというのは昔から極っていたので、子供の時から何を職業とするかということについて迷ったことはなかった。美術学校にも自然に入ってしまった。 …
人の首(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
私は電車に乗ると異状な興奮を感ずる。人の首がずらりと前に並んで居るからである。人間移動展覧会と戯に此を称えてよく此事を友達に話す。近代が人に与えてくれた特別な機会である。此所に並ん …
読書目安時間:約6分
私は電車に乗ると異状な興奮を感ずる。人の首がずらりと前に並んで居るからである。人間移動展覧会と戯に此を称えてよく此事を友達に話す。近代が人に与えてくれた特別な機会である。此所に並ん …
美の影響力(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
非目前的なのが美の持つ影響力の特質である。人は毎日の生活に惱む。毎日の生活とは即ち目前處理の生活である。人はその累積の中に埋もれてその生活そのものに内在する非目前的の一面を忘却する …
読書目安時間:約3分
非目前的なのが美の持つ影響力の特質である。人は毎日の生活に惱む。毎日の生活とは即ち目前處理の生活である。人はその累積の中に埋もれてその生活そのものに内在する非目前的の一面を忘却する …
美の日本的源泉(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
民族の持つ美の源泉は実に深く、遠い。その涌き出ずる水源は踏破しがたく、その地中の噴き出口は人の測定をゆるさない。厳として存在し、こんこんとして溢れて止まぬ其の民族を貫く民族特有の美 …
読書目安時間:約26分
民族の持つ美の源泉は実に深く、遠い。その涌き出ずる水源は踏破しがたく、その地中の噴き出口は人の測定をゆるさない。厳として存在し、こんこんとして溢れて止まぬ其の民族を貫く民族特有の美 …
ぼろぼろな駝鳥(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
何が面白くて駝鳥を飼うのだ。 動物園の四坪半のぬかるみの中では、 脚が大股過ぎるぢゃないか。 頚があんまり長過ぎるぢゃないか。 雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。 …
読書目安時間:約1分
何が面白くて駝鳥を飼うのだ。 動物園の四坪半のぬかるみの中では、 脚が大股過ぎるぢゃないか。 頚があんまり長過ぎるぢゃないか。 雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。 …
本邦肖像彫刻技法の推移(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
わが国古来の彫刻といえば殆ど皆仏像である。記紀上代の神々の豊富な物語はまるで彫刻の対象とならなかった。藤原期に及んで神像というものが相当に作られたが遂に大勢を成すに至らなかった。( …
読書目安時間:約11分
わが国古来の彫刻といえば殆ど皆仏像である。記紀上代の神々の豊富な物語はまるで彫刻の対象とならなかった。藤原期に及んで神像というものが相当に作られたが遂に大勢を成すに至らなかった。( …
ミケランジェロの彫刻写真に題す(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
ミケランジェロこそ造型の権化である。 造型の中の造型たる彫刻は従ってミケランジェロの生来を語るものであり、ミケランジェロの他の営為——土木、建築、絵画、詩歌の類はすべて彼の彫刻家的 …
読書目安時間:約3分
ミケランジェロこそ造型の権化である。 造型の中の造型たる彫刻は従ってミケランジェロの生来を語るものであり、ミケランジェロの他の営為——土木、建築、絵画、詩歌の類はすべて彼の彫刻家的 …
緑色の太陽(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
人は案外下らぬところで行き悩むものである。 いわゆる日本画家は日本画という名にあてられて行き悩んでいる。いわゆる西洋画家は油絵具を背負いこんで行き悩んでいる。飛車よりも歩を可愛がる …
読書目安時間:約11分
人は案外下らぬところで行き悩むものである。 いわゆる日本画家は日本画という名にあてられて行き悩んでいる。いわゆる西洋画家は油絵具を背負いこんで行き悩んでいる。飛車よりも歩を可愛がる …
山の秋(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
山の秋は旧盆のころからはじまる。 カッコーやホトトギスは七月中旬になるともう鳴かなくなり、何となく夏らしい勢が山野に見えなくなってしまい、たんぼの稲穂がそろそろ七月末にはきざしてく …
読書目安時間:約15分
山の秋は旧盆のころからはじまる。 カッコーやホトトギスは七月中旬になるともう鳴かなくなり、何となく夏らしい勢が山野に見えなくなってしまい、たんぼの稲穂がそろそろ七月末にはきざしてく …
山の春(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
ほんとうは、三月にはまだ山の春は来ない。三月春分の日というのに、山の小屋のまわりには雪がいっぱいある。雪がほんとに消えるのは五月の中ほどである。つまり、それまで山々にかぶさっていた …
読書目安時間:約8分
ほんとうは、三月にはまだ山の春は来ない。三月春分の日というのに、山の小屋のまわりには雪がいっぱいある。雪がほんとに消えるのは五月の中ほどである。つまり、それまで山々にかぶさっていた …
山の雪(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
わたしは雪が大好きで、雪がふってくるとおもてにとび出し、あたまから雪を白くかぶるのがおもしろくてたまらない。 わたしは日本の北の方、岩手県の山の中にすんでいるので、十一月ごろからそ …
読書目安時間:約9分
わたしは雪が大好きで、雪がふってくるとおもてにとび出し、あたまから雪を白くかぶるのがおもしろくてたまらない。 わたしは日本の北の方、岩手県の山の中にすんでいるので、十一月ごろからそ …
(私はさきごろ)(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
私はさきごろミケランジェロの事を調べたり、書いたりして数旬を過ごしたが、まったくその中に没頭していたため、この岩手の山の中にいながらまるで日本に居るような気がせず、朝夕を夢うつつの …
読書目安時間:約4分
私はさきごろミケランジェロの事を調べたり、書いたりして数旬を過ごしたが、まったくその中に没頭していたため、この岩手の山の中にいながらまるで日本に居るような気がせず、朝夕を夢うつつの …
翻訳者としての作品一覧
ゴオガンに宛てたフアン ゴツホの手紙(一八八八年)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
ゴオガン兄 お手紙ありがたう。殊に二十日には來るといふ兄の約束に感謝する。たしかに、兄の言ふ理由(ゴオガンの痢病)は、愉快な汽車旅行をさせないに違ひない。厭な思をせずに旅行の出來る …
読書目安時間:約2分
ゴオガン兄 お手紙ありがたう。殊に二十日には來るといふ兄の約束に感謝する。たしかに、兄の言ふ理由(ゴオガンの痢病)は、愉快な汽車旅行をさせないに違ひない。厭な思をせずに旅行の出來る …
“高村光太郎”について
高村 光太郎(たかむら こうたろう、1883年〈明治16年〉3月13日 - 1956年〈昭和31年〉4月2日)は、日本の詩人・歌人・彫刻家・画家。本名は高村 光太郎(たかむら みつたろう)。父は彫刻家の高村光雲。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“高村光太郎”と年代が近い著者
きょうが誕生日(12月14日)
成沢玲川(1877年)
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)