富永太郎
1901.05.04 〜 1925.11.12
著者としての作品一覧
AU RIMBAUD(その他)
読書目安時間:約1分
Kiosque au Rimbaud “Marila” à la main, Le ciel est beau, Eh ! tout le sang est Pain. Ne vo …
読書目安時間:約1分
Kiosque au Rimbaud “Marila” à la main, Le ciel est beau, Eh ! tout le sang est Pain. Ne vo …
COLLOQUE MOQUEUR:Depuis que Maria ma quitte pour aller dans une autre etoile ―― Mallarme(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
立ち去つた私のマリアの記念にと 友と二人アプサントを飲んだ帰るさ 星空の下をよろめいて、 互の肩につかまりあつた。 ——もうあの女に会へないと決まつたときは 泣いたせゐで、俺は結膜 …
読書目安時間:約1分
立ち去つた私のマリアの記念にと 友と二人アプサントを飲んだ帰るさ 星空の下をよろめいて、 互の肩につかまりあつた。 ——もうあの女に会へないと決まつたときは 泣いたせゐで、俺は結膜 …
秋の悲歎(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。戦慄は去つた。道路のあらゆる直線が甦る。あれらのこんもりとした貪婪な樹々さへも闇を招いてはゐない。 私はたゞ微かに煙を挙げる私のパイプによつてのみ生 …
読書目安時間:約2分
私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。戦慄は去つた。道路のあらゆる直線が甦る。あれらのこんもりとした貪婪な樹々さへも闇を招いてはゐない。 私はたゞ微かに煙を挙げる私のパイプによつてのみ生 …
遺産分配書(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
わが女王へ。決して穢れなかつた私の魂よりも、更に清浄な私の両眼の真珠を。おんみの不思議な夜宴の觴に投げ入れられようために。 善意ある港の朝の微風へ。昨夜の酒に濡れた柔かい私の髪を。 …
読書目安時間:約2分
わが女王へ。決して穢れなかつた私の魂よりも、更に清浄な私の両眼の真珠を。おんみの不思議な夜宴の觴に投げ入れられようために。 善意ある港の朝の微風へ。昨夜の酒に濡れた柔かい私の髪を。 …
美しき敵(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私はその頃不眠症に悩んで居た。 かなり多くの人々が私の病気を知つてしまつて、それに対する忠告を与へてくれる人も少くなかつた。 気軽な或る大学生は言つた。「運動が足りないんだね。君み …
読書目安時間:約3分
私はその頃不眠症に悩んで居た。 かなり多くの人々が私の病気を知つてしまつて、それに対する忠告を与へてくれる人も少くなかつた。 気軽な或る大学生は言つた。「運動が足りないんだね。君み …
横臥合掌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
病みさらぼへたこの肉身を 湿りたるわくら葉に横たへよう わがまはりにはすくすくと 節の間長き竹が生え 冬の夜の黒い疾い風ゆゑに 茎は戛々の音を立てる 節の間長き竹の茎は 我が頭上に …
読書目安時間:約1分
病みさらぼへたこの肉身を 湿りたるわくら葉に横たへよう わがまはりにはすくすくと 節の間長き竹が生え 冬の夜の黒い疾い風ゆゑに 茎は戛々の音を立てる 節の間長き竹の茎は 我が頭上に …
画家の午後(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
雪解けの午後は淋し 砂利を噛む荷車の 轍の音遠くきこえ 疲れ心地にふくみたる パイプの煙をのゝく 室ぬちは冬の日うすれ 描きさしのセント・セバスチアンは 低くためいきす。 電燈のと …
読書目安時間:約1分
雪解けの午後は淋し 砂利を噛む荷車の 轍の音遠くきこえ 疲れ心地にふくみたる パイプの煙をのゝく 室ぬちは冬の日うすれ 描きさしのセント・セバスチアンは 低くためいきす。 電燈のと …
影絵(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
半缺けの日本の月の下を、 一寸法師の夫婦が急ぐ。 二人ながらに思ひつめたる前かゞみ、 さても毒々しい二つの鼻のシルヱツト。 生白い河岸をまだらに染め抜いた、 柳並木の影を踏んで、 …
読書目安時間:約1分
半缺けの日本の月の下を、 一寸法師の夫婦が急ぐ。 二人ながらに思ひつめたる前かゞみ、 さても毒々しい二つの鼻のシルヱツト。 生白い河岸をまだらに染め抜いた、 柳並木の影を踏んで、 …
警戒:C・Mに(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
酔ひ痴れて、母君の知り給はぬ女の胸にあるとき、「ここにわが働かざりし双手あり」の句を君の耳もとにさゝやき、卒然と君の眼の中に、母君の白き髪と額の皺とを呼び入れるものは何であるか。心 …
読書目安時間:約1分
酔ひ痴れて、母君の知り給はぬ女の胸にあるとき、「ここにわが働かざりし双手あり」の句を君の耳もとにさゝやき、卒然と君の眼の中に、母君の白き髪と額の皺とを呼び入れるものは何であるか。心 …
原始林の縁辺に於ける探険者:une ode(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
Ⅰ 陽の眼を知らぬ原始林の 幾日幾夜の旅の間 わたくし熟練な未知境の探険者は たゞふかぶかと頭上に生ひ伏した闊葉の 思ひつめた吐息を聴いたのみだ。 たゞ蹠に踏む湿潤な苔類の ひたむ …
読書目安時間:約2分
Ⅰ 陽の眼を知らぬ原始林の 幾日幾夜の旅の間 わたくし熟練な未知境の探険者は たゞふかぶかと頭上に生ひ伏した闊葉の 思ひつめた吐息を聴いたのみだ。 たゞ蹠に踏む湿潤な苔類の ひたむ …
頌歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
鋼の波に アベラール沈み 鉛の艫に エロイーズ浮む 骸炭は澪に乗り 直立する彼岸花を捧げて走り 『死』は半ば脣を開いて水を恋ひ また燠を霊床とする すべては緑礬のみづ底に息をつく …
読書目安時間:約1分
鋼の波に アベラール沈み 鉛の艫に エロイーズ浮む 骸炭は澪に乗り 直立する彼岸花を捧げて走り 『死』は半ば脣を開いて水を恋ひ また燠を霊床とする すべては緑礬のみづ底に息をつく …
焦燥(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
母親は煎薬を煎じに行つた 枯れた葦の葉が短かいので。 ひかりが掛布の皺を打つたとき 寝台はあまりに金の唸きであつた 寝台は いきれたつ犬の巣箱の罪をのり超え 大空の堅い眼の下に 幅 …
読書目安時間:約1分
母親は煎薬を煎じに行つた 枯れた葦の葉が短かいので。 ひかりが掛布の皺を打つたとき 寝台はあまりに金の唸きであつた 寝台は いきれたつ犬の巣箱の罪をのり超え 大空の堅い眼の下に 幅 …
深夜の道士(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
人語なく、月なき今宵 色ねびし窓帷の吐息する 此の古城なる図書室の中央の 遠き異国の材もて組める 残忍の相ある堅き牀机に ありし日よりの凝固せる大気の重圧に 生得の歪悉皆消散せる …
読書目安時間:約1分
人語なく、月なき今宵 色ねびし窓帷の吐息する 此の古城なる図書室の中央の 遠き異国の材もて組める 残忍の相ある堅き牀机に ありし日よりの凝固せる大気の重圧に 生得の歪悉皆消散せる …
大脳は厨房である(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
眼球は日光を厭ふ故に 瞼の鎧戸をひたとおろし 頭蓋の中へ引き退く。 大脳の小区画を填めるものは 困憊したさまざまの食品である。 青かびに被はれたパンの缺け、 切り口の饐えたソオセエ …
読書目安時間:約1分
眼球は日光を厭ふ故に 瞼の鎧戸をひたとおろし 頭蓋の中へ引き退く。 大脳の小区画を填めるものは 困憊したさまざまの食品である。 青かびに被はれたパンの缺け、 切り口の饐えたソオセエ …
煙草の歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
阪を上りつめてみたら、 盆のやうな月と並んで、 黒い松の木の影一本…… 私は、子供らが手をつないで歌ふ 「籠の鳥」の歌を歌はうと思つた。 が、忘れてゐたので、 煙草の煙を月の面に吐 …
読書目安時間:約1分
阪を上りつめてみたら、 盆のやうな月と並んで、 黒い松の木の影一本…… 私は、子供らが手をつないで歌ふ 「籠の鳥」の歌を歌はうと思つた。 が、忘れてゐたので、 煙草の煙を月の面に吐 …
断片(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私には群集が絶対に必要であつた。徐々に来る私の肉体の破壊を賭けても、必要以上の群集を喚び起すことが必要であつた。さういふ日々の禁厭が私の上に立てる音は不吉であつた。 私は幾日も悲し …
読書目安時間:約3分
私には群集が絶対に必要であつた。徐々に来る私の肉体の破壊を賭けても、必要以上の群集を喚び起すことが必要であつた。さういふ日々の禁厭が私の上に立てる音は不吉であつた。 私は幾日も悲し …
忠告(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
思想の重圧のために眠りがたい躰には、起つてロココ風の肘掛椅子に腰を下ろすことが必要である。そして膝を組んで、壁の薄浮彫の淡いニユアンスを眺めながら、細巻のシガレツトを一本ふかすうち …
読書目安時間:約2分
思想の重圧のために眠りがたい躰には、起つてロココ風の肘掛椅子に腰を下ろすことが必要である。そして膝を組んで、壁の薄浮彫の淡いニユアンスを眺めながら、細巻のシガレツトを一本ふかすうち …
鳥獣剥製所:一報告書(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
私はその建物を、圧しつけるやうな午後の雪空の下にしか見たことがない。また、私がそれに近づくのは、あらゆる追憶が、それの齎す嫌悪を以て、私の肉体を飽和してしまつたときに限つてゐた。私 …
読書目安時間:約7分
私はその建物を、圧しつけるやうな午後の雪空の下にしか見たことがない。また、私がそれに近づくのは、あらゆる追憶が、それの齎す嫌悪を以て、私の肉体を飽和してしまつたときに限つてゐた。私 …
手(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
おまへの手はもの悲しい 酒びたしのテーブルの上に。 おまへの手は息づいてゐる、 たつた一つ、私の前に。 おまへの手を風がわたる、 枝の青蟲を吹くやうに。 私は疲れた、靴は破れた。 …
読書目安時間:約1分
おまへの手はもの悲しい 酒びたしのテーブルの上に。 おまへの手は息づいてゐる、 たつた一つ、私の前に。 おまへの手を風がわたる、 枝の青蟲を吹くやうに。 私は疲れた、靴は破れた。 …
癲狂院外景(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
夕暮の癲狂院は寂寞として 苔ばんだ石塀を囲らしてゐます。 中には誰も生きてはゐないのかもしれません。 看護人の白服が一つ 暗い玄関に吸ひ込まれました。 むかふの丘の櫟林の上に 赤い …
読書目安時間:約1分
夕暮の癲狂院は寂寞として 苔ばんだ石塀を囲らしてゐます。 中には誰も生きてはゐないのかもしれません。 看護人の白服が一つ 暗い玄関に吸ひ込まれました。 むかふの丘の櫟林の上に 赤い …
熱情的なフーガ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
七月の日光の 多彩なるアラベスク。 七月の日光の 覆された坩堝。 白昼の星より 女人の肉は墜つ。 このロコヽ宮殿の 脚を断て。 赭き肉は 宙宇に倒なり。 大理石の噴泉の 脣を噛め。 …
読書目安時間:約1分
七月の日光の 多彩なるアラベスク。 七月の日光の 覆された坩堝。 白昼の星より 女人の肉は墜つ。 このロコヽ宮殿の 脚を断て。 赭き肉は 宙宇に倒なり。 大理石の噴泉の 脣を噛め。 …
橋の上の自画像(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
今宵私のパイプは橋の上で 狂暴に煙を上昇させる。 今宵あれらの水びたしの荷足は すべて昇天しなければならぬ、 頬被りした船頭たちを載せて。 電車らは花車の亡霊のやうに 音もなく夜の …
読書目安時間:約1分
今宵私のパイプは橋の上で 狂暴に煙を上昇させる。 今宵あれらの水びたしの荷足は すべて昇天しなければならぬ、 頬被りした船頭たちを載せて。 電車らは花車の亡霊のやうに 音もなく夜の …
恥の歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
Honte ! honte ! 眼玉の蜻蛉 わが身を攫へ わが身を啖へ Honte ! honte ! 燃えたつ焜爐 わが身を焦がせ わが身を鎔かせ Honte ! hont …
読書目安時間:約1分
Honte ! honte ! 眼玉の蜻蛉 わが身を攫へ わが身を啖へ Honte ! honte ! 燃えたつ焜爐 わが身を焦がせ わが身を鎔かせ Honte ! hont …
PANTOMIME(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
うす暗い椽側の端で、 琥珀色した女の瞳が 光つた——夫に叛いた。 もうむかふへ向いた、 庭の樹立と遊んでゐる—— あの狡猾なまなざしは。 とり残された共犯者が 清潔な触手で追ひかけ …
読書目安時間:約1分
うす暗い椽側の端で、 琥珀色した女の瞳が 光つた——夫に叛いた。 もうむかふへ向いた、 庭の樹立と遊んでゐる—— あの狡猾なまなざしは。 とり残された共犯者が 清潔な触手で追ひかけ …
俯瞰景(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
溝ぷちの水たまりをへらへらと泳ぐ高貴な魂がある。かれの上、梅雨晴れの輝かしい街衢の高みを過ぎ行くものは、脂粉の顔、誇りかな香りを放つ髪、新鮮な麦藁帽子、気軽に光るネクタイピン……こ …
読書目安時間:約1分
溝ぷちの水たまりをへらへらと泳ぐ高貴な魂がある。かれの上、梅雨晴れの輝かしい街衢の高みを過ぎ行くものは、脂粉の顔、誇りかな香りを放つ髪、新鮮な麦藁帽子、気軽に光るネクタイピン……こ …
無題(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ありがたい静かなこの夕べ、 何とて我が心は波うつ。 いざ今宵一夜は われととり出でたこの心の臓を 窓ぎはの白き皿に載せ、 心静かに眺めあかさう。 月も間もなく出るだらう。 …
読書目安時間:約1分
ありがたい静かなこの夕べ、 何とて我が心は波うつ。 いざ今宵一夜は われととり出でたこの心の臓を 窓ぎはの白き皿に載せ、 心静かに眺めあかさう。 月も間もなく出るだらう。 …
無題(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
月青く人影なきこの深夜 家々の閨をかいま見つゝ 白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり 愚かなる状して黒々と立てる屋根の下に 臥所ありて人はいぎたなく眠れり 家々はかく遠く連なりたれど 眠 …
読書目安時間:約1分
月青く人影なきこの深夜 家々の閨をかいま見つゝ 白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり 愚かなる状して黒々と立てる屋根の下に 臥所ありて人はいぎたなく眠れり 家々はかく遠く連なりたれど 眠 …
無題(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
たゞひとり黎明の森を行く。 風は心虚しく幹のあはひを翔り、 木々はみなその白き葉裏を反す。 樹の間がくれに、足速に 白き馬を牽きゆくは誰ぞ。 道の辺の歯朶の群をのゝけり。 かゝると …
読書目安時間:約1分
たゞひとり黎明の森を行く。 風は心虚しく幹のあはひを翔り、 木々はみなその白き葉裏を反す。 樹の間がくれに、足速に 白き馬を牽きゆくは誰ぞ。 道の辺の歯朶の群をのゝけり。 かゝると …
無題(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
幾日幾夜の熱病の後なる 濠端のあさあけを讃ふ。 琥珀の雲溶けて蒼空に流れ、 覚めやらで水を眺むる柳の一列あり。 もやひたるボートの赤き三角旗は 密閉せる閨房の扉をあけはなち、 暁の …
読書目安時間:約1分
幾日幾夜の熱病の後なる 濠端のあさあけを讃ふ。 琥珀の雲溶けて蒼空に流れ、 覚めやらで水を眺むる柳の一列あり。 もやひたるボートの赤き三角旗は 密閉せる閨房の扉をあけはなち、 暁の …
無題 京都:富倉次郎に(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
おまへの歯はよく切れるさうな 山々の皮膚があんなに赤く 夕陽で爛らされた鐃鉢を 焦々して摺り合せてゐる おまへはもう暗い部屋へ帰つておくれ おまへの顎が、薄明を食べてゐる橋の下で …
読書目安時間:約1分
おまへの歯はよく切れるさうな 山々の皮膚があんなに赤く 夕陽で爛らされた鐃鉢を 焦々して摺り合せてゐる おまへはもう暗い部屋へ帰つておくれ おまへの顎が、薄明を食べてゐる橋の下で …
ゆふべみた夢(Etude)(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
花の散つてゐる街中の桜並木を通つてゐた。灯ともし頃であつた。妙な佗しさに追ひ立てられるやうな気持で、足早に歩いてゐたやうだつた。 道の左手に明るいカフエが口を開いてゐた。入口に立つ …
読書目安時間:約2分
花の散つてゐる街中の桜並木を通つてゐた。灯ともし頃であつた。妙な佗しさに追ひ立てられるやうな気持で、足早に歩いてゐたやうだつた。 道の左手に明るいカフエが口を開いてゐた。入口に立つ …
夜の讃歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
地は定形なく曠空くして黒暗淵の面にあり 神の霊水の面を覆ひたりき ——創世記 黒暗の潮今満ちて 晦冥の夜ともなれば 仮構の万象そが閡性を失し 解体の喜びに酔ひ痴れて 心をのゝき 渾 …
読書目安時間:約1分
地は定形なく曠空くして黒暗淵の面にあり 神の霊水の面を覆ひたりき ——創世記 黒暗の潮今満ちて 晦冥の夜ともなれば 仮構の万象そが閡性を失し 解体の喜びに酔ひ痴れて 心をのゝき 渾 …
ランボオへ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
キオスクにランボオ 手にはマニラ 空は美しい えゝ血はみなパンだ 詩人が御不在になると 千家族が一家で軋めく またおいでになると 掟に適つたことしかしない 神様があいつを光らして、 …
読書目安時間:約1分
キオスクにランボオ 手にはマニラ 空は美しい えゝ血はみなパンだ 詩人が御不在になると 千家族が一家で軋めく またおいでになると 掟に適つたことしかしない 神様があいつを光らして、 …
翻訳者としての作品一覧
或るまどんなに:西班牙風の奉納物(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
わたくしのつかへまつる聖母さま、おんみの為に、わたくしの悲しみの奥深く、地下の神壇を建立したい心願にござります。 わたくしの心のいと黒い片隅に、俗世の願ひ、また嘲けりの眼の及ばぬあ …
読書目安時間:約3分
わたくしのつかへまつる聖母さま、おんみの為に、わたくしの悲しみの奥深く、地下の神壇を建立したい心願にござります。 わたくしの心のいと黒い片隅に、俗世の願ひ、また嘲けりの眼の及ばぬあ …
ANY WHERE OUT OF THE WORLD(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
人生は一つの病院である。そこに居る患者はみんな寝台を換へようと夢中になつてゐる。或るものはどうせ苦しむにしても、せめて煖爐の側でと思つてゐる。また或るものは窓際へ行けばきつとよくな …
読書目安時間:約2分
人生は一つの病院である。そこに居る患者はみんな寝台を換へようと夢中になつてゐる。或るものはどうせ苦しむにしても、せめて煖爐の側でと思つてゐる。また或るものは窓際へ行けばきつとよくな …
饑餓の饗宴(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
俺の饑よ、アヌ、アヌ、 驢馬に乗つて逃げろ。 俺に食気があるとしたら、 食ひたいものは、土と石。 ヂヌ、ヂヌ、ヂヌ、ヂヌ、空気を食はう、 岩を、火を、鉄を。 俺の饑よ、廻れ、去れ。 …
読書目安時間:約1分
俺の饑よ、アヌ、アヌ、 驢馬に乗つて逃げろ。 俺に食気があるとしたら、 食ひたいものは、土と石。 ヂヌ、ヂヌ、ヂヌ、ヂヌ、空気を食はう、 岩を、火を、鉄を。 俺の饑よ、廻れ、去れ。 …
計画(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
彼は淋しい大きな公園を散歩しながら独言つた、「あの女が襞の一杯ついてゐる贅を尽した宮廷服を着て、美しい黄昏の中を、広い芝生と泉水に向つた宮殿の大理石の石段を降りて来たらどんなに美し …
読書目安時間:約3分
彼は淋しい大きな公園を散歩しながら独言つた、「あの女が襞の一杯ついてゐる贅を尽した宮廷服を着て、美しい黄昏の中を、広い芝生と泉水に向つた宮殿の大理石の石段を降りて来たらどんなに美し …
芸術家の告白祈祷(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
秋の日の暮方は何と身に沁み入ることだ。苦しいまでに身に沁みる。何故と言つて、朧ろげではあるが強さには事欠かぬ、えも言はれぬ或る感覚があるものだから。また、「無窮」の刃くらゐ鋭い刃は …
読書目安時間:約2分
秋の日の暮方は何と身に沁み入ることだ。苦しいまでに身に沁みる。何故と言つて、朧ろげではあるが強さには事欠かぬ、えも言はれぬ或る感覚があるものだから。また、「無窮」の刃くらゐ鋭い刃は …
午前一時に(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
やつと独りになれた!聞えるものはのろくさい疲れきつた辻馬車の響ばかり。暫くは静寂が得られるのだ、安息とは行かないまでも。暴虐をほしいまゝにした人間の顔もたうたう消え失せた、俺を悩ま …
読書目安時間:約3分
やつと独りになれた!聞えるものはのろくさい疲れきつた辻馬車の響ばかり。暫くは静寂が得られるのだ、安息とは行かないまでも。暴虐をほしいまゝにした人間の顔もたうたう消え失せた、俺を悩ま …
射的場と墓地(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
墓地見晴し御休処——「妙な看板だな」——と我が散策者は独言つた——「それにしても、あれを見ると実際喉が渇く様に出来てゐる!きつとこゝの主人は、オラースや、エピキユールの弟子の詩人た …
読書目安時間:約2分
墓地見晴し御休処——「妙な看板だな」——と我が散策者は独言つた——「それにしても、あれを見ると実際喉が渇く様に出来てゐる!きつとこゝの主人は、オラースや、エピキユールの弟子の詩人た …
人工天国:J.G.F.に(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
親しい女よ、 良識はわれらに告げて居る、地上のものは殆んど存在してはゐない、真の現実はたゞ夢の中にあるのみだと。自然の幸福を消化するためには、人工の幸福に於けるが如く、まづそれを嚥 …
読書目安時間:約3分
親しい女よ、 良識はわれらに告げて居る、地上のものは殆んど存在してはゐない、真の現実はたゞ夢の中にあるのみだと。自然の幸福を消化するためには、人工の幸福に於けるが如く、まづそれを嚥 …
道化とヸナス(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
何といふすばらしい日だ!広大な公園は、愛神の支配の下にある若者のやうに、太陽のぎら/\した眼の下に悶絶してゐる。 なべての物にあまねき此の有頂天を示す物音とてはない。河の水さへ眠つ …
読書目安時間:約2分
何といふすばらしい日だ!広大な公園は、愛神の支配の下にある若者のやうに、太陽のぎら/\した眼の下に悶絶してゐる。 なべての物にあまねき此の有頂天を示す物音とてはない。河の水さへ眠つ …
窓(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
開いた窓の外からのぞき込む人は決して閉ざされた窓を眺める人ほど多くのものを見るものではない。蝋燭の火に照らされた窓にもまして深い、神秘的な、豊かな、陰鬱な、人の眼を奪ふやうなものが …
読書目安時間:約2分
開いた窓の外からのぞき込む人は決して閉ざされた窓を眺める人ほど多くのものを見るものではない。蝋燭の火に照らされた窓にもまして深い、神秘的な、豊かな、陰鬱な、人の眼を奪ふやうなものが …
港(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
港は人生の闘に疲れた魂には快い住家である。空の広大無辺、雲の動揺する建築、海の変りやすい色彩、燈台の煌き、これらのものは眼をば決して疲らせることなくして、楽しませるに恰好な不可思議 …
読書目安時間:約1分
港は人生の闘に疲れた魂には快い住家である。空の広大無辺、雲の動揺する建築、海の変りやすい色彩、燈台の煌き、これらのものは眼をば決して疲らせることなくして、楽しませるに恰好な不可思議 …
酔へ!(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
常に酔つてゐなければならない。ほかのことはどうでもよい——ただそれだけが問題なのだ。君の肩をくじき、君の体を地に圧し曲げる恐ろしい「時」の重荷を感じたくないなら、君は絶え間なく酔つ …
読書目安時間:約1分
常に酔つてゐなければならない。ほかのことはどうでもよい——ただそれだけが問題なのだ。君の肩をくじき、君の体を地に圧し曲げる恐ろしい「時」の重荷を感じたくないなら、君は絶え間なく酔つ …
“富永太郎”について
富永 太郎(とみなが たろう、1901年〈明治34年〉5月4日 - 1925年〈大正14年〉11月12日)は、日本の詩人、画家、翻訳家。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“富永太郎”と年代が近い著者
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)