佐左木俊郎
1900.04.14 〜 1933.03.13
“佐左木俊郎”に特徴的な語句
汝
爺
父
屈
酷
来
爛
瀬
他人
俺
生命
帰
遣
項垂
涙含
喚
四辺
親父
瞼
瞠
戦
騙
軋
狼狽
牽
呆気
遮
死骸
哀
婆
伴
背後
最早
這入
伜
凝
繋
陽
貰
昂奮
老耄
家
爺様
癒
咽喉
判然
睜
微笑
訊
燻
著者としての作品一覧
秋草の顆(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
寡黙と消極的な態度とは私達一族の者の共通性格と言ってもいいのだ。私は郷家に帰省して、二三日の滞在中、殆んど父母と言葉を交わさずに帰って来ることが少なくなかった。父もまた、田舎からわ …
読書目安時間:約8分
寡黙と消極的な態度とは私達一族の者の共通性格と言ってもいいのだ。私は郷家に帰省して、二三日の滞在中、殆んど父母と言葉を交わさずに帰って来ることが少なくなかった。父もまた、田舎からわ …
荒雄川のほとり(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
私の郷里は(宮城県玉造郡一栗村上野目天王寺)——奥羽山脈と北上山脈との余波に追い狭められた谷間の村落である。谷間の幅は僅かに二十町ばかり。悉く水田地帯で、陸羽国境の山巒地方から山襞 …
読書目安時間:約2分
私の郷里は(宮城県玉造郡一栗村上野目天王寺)——奥羽山脈と北上山脈との余波に追い狭められた谷間の村落である。谷間の幅は僅かに二十町ばかり。悉く水田地帯で、陸羽国境の山巒地方から山襞 …
或る嬰児殺しの動機(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
都会は四つの段階をもって発達し膨張するのを常とする。海港の街は、まずその触手を海岸へ、海岸の空地へと伸ばしていく。田舎の小さな町でさえ、そこに一本の河川が流れていると、河岸へ河岸へ …
読書目安時間:約24分
都会は四つの段階をもって発達し膨張するのを常とする。海港の街は、まずその触手を海岸へ、海岸の空地へと伸ばしていく。田舎の小さな町でさえ、そこに一本の河川が流れていると、河岸へ河岸へ …
或る部落の五つの話(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
一禿頭の消防小頭 或る秋の日曜日だった。小学校の運動場に消防演習があった。演習というよりは教練だった。警察署長が三つの消防組を統べて各々の組長が号令をするのだった。号令につれて消防 …
読書目安時間:約12分
一禿頭の消防小頭 或る秋の日曜日だった。小学校の運動場に消防演習があった。演習というよりは教練だった。警察署長が三つの消防組を統べて各々の組長が号令をするのだった。号令につれて消防 …
芋(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
福治爺は、山芋を掘ることより外に、何も能が無かった。彼は毎日、汚れた浅黄の手拭で頬冠りをして、使い古した、柄に草木の緑色が乾着いている、刃先の白い坏を担いで、鉈豆煙管で刻煙草を燻し …
読書目安時間:約6分
福治爺は、山芋を掘ることより外に、何も能が無かった。彼は毎日、汚れた浅黄の手拭で頬冠りをして、使い古した、柄に草木の緑色が乾着いている、刃先の白い坏を担いで、鉈豆煙管で刻煙草を燻し …
馬(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
伝平は子供の頃から馬が好きだった。 「お父う!俺家でも馬一匹飼わねえが?どんなのでもいいがら。」 伝平はそう口癖のように言うのだった。 「馬か?濠洲産の駒馬でもなあ。早ぐ汝が稼ぐよ …
読書目安時間:約15分
伝平は子供の頃から馬が好きだった。 「お父う!俺家でも馬一匹飼わねえが?どんなのでもいいがら。」 伝平はそう口癖のように言うのだった。 「馬か?濠洲産の駒馬でもなあ。早ぐ汝が稼ぐよ …
街底の熔鉱炉(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
房枝の興奮は彼女の顔を蒼白にしていた。こんなことは彼女にとって本当に初めてであった。その出張先が自分の家と同じ露地の中だなんて。彼女は近所の侮蔑的な眼が恐ろしかった。しかもそれが同 …
読書目安時間:約14分
房枝の興奮は彼女の顔を蒼白にしていた。こんなことは彼女にとって本当に初めてであった。その出張先が自分の家と同じ露地の中だなんて。彼女は近所の侮蔑的な眼が恐ろしかった。しかもそれが同 …
街頭の偽映鏡(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
偽映鏡が舗道に向かって、街頭の風景をおそろしく誇張していた。 青白い顔の若い男が三、四人の者に、青い作業服の腕を掴まれて立っていた。その傍で、商人風の背の小さな男が鼻血を拭ってもら …
読書目安時間:約27分
偽映鏡が舗道に向かって、街頭の風景をおそろしく誇張していた。 青白い顔の若い男が三、四人の者に、青い作業服の腕を掴まれて立っていた。その傍で、商人風の背の小さな男が鼻血を拭ってもら …
駈落(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
朝日は既に東の山を離れ、胡粉の色に木立を掃いた靄も、次第に淡く、小川の上を掠めたものなどは、もう疾くに消えかけていた。 菊枝は、廐に投げ込む雑草を、いつもの倍も背負って帰って来た。 …
読書目安時間:約13分
朝日は既に東の山を離れ、胡粉の色に木立を掃いた靄も、次第に淡く、小川の上を掠めたものなどは、もう疾くに消えかけていた。 菊枝は、廐に投げ込む雑草を、いつもの倍も背負って帰って来た。 …
仮装観桜会(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
靄!靄!靄! 靄の日が続いた。胡粉色の靄で宇宙が塗り潰された。そして、その冷たい靄ははるかの遠方から押し寄せてくる暖かいものを、そこで食い止めていた。食い止めて吸収していた。 靄の …
読書目安時間:約25分
靄!靄!靄! 靄の日が続いた。胡粉色の靄で宇宙が塗り潰された。そして、その冷たい靄ははるかの遠方から押し寄せてくる暖かいものを、そこで食い止めていた。食い止めて吸収していた。 靄の …
簡略自伝(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
明治三十三年(1900)宮城県岩出山町在の中農の家に生まる。当時既にこの層の没落は、全農民階級中最も甚しく、私の家もまたその例にもれず只管に没落への途を急いでいたのであった。それを …
読書目安時間:約3分
明治三十三年(1900)宮城県岩出山町在の中農の家に生まる。当時既にこの層の没落は、全農民階級中最も甚しく、私の家もまたその例にもれず只管に没落への途を急いでいたのであった。それを …
機関車(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
その線は、山脈に突き当たって、そこで終わっていた。そしてそのまま山脈の貫通を急がなかった。 山脈の裾は温泉宿の小さい町が白い煙を籠めていた。停車場は町端れの野原にあった。機関庫はそ …
読書目安時間:約12分
その線は、山脈に突き当たって、そこで終わっていた。そしてそのまま山脈の貫通を急がなかった。 山脈の裾は温泉宿の小さい町が白い煙を籠めていた。停車場は町端れの野原にあった。機関庫はそ …
季節の植物帳(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
序言 植物のもつ美のうちで、最も鋭く私達の感覚に触れるものは、その植物の形態や色彩による視覚的美であろう。それから嗅覚的美、味覚的美といった順序ではないかと思う。併し、私達の心の中 …
読書目安時間:約10分
序言 植物のもつ美のうちで、最も鋭く私達の感覚に触れるものは、その植物の形態や色彩による視覚的美であろう。それから嗅覚的美、味覚的美といった順序ではないかと思う。併し、私達の心の中 …
喫煙癖(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
札幌の場末の街、豊平を出た無蓋二輪の馬車が、北を指して走っている砂利道を、月寒の部落に向けてがたごとと動いて行った。 馬車の上には二人の乗客が対い合って乗っていた。二人とも、いずれ …
読書目安時間:約5分
札幌の場末の街、豊平を出た無蓋二輪の馬車が、北を指して走っている砂利道を、月寒の部落に向けてがたごとと動いて行った。 馬車の上には二人の乗客が対い合って乗っていた。二人とも、いずれ …
汽笛(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
改札孫の柴田貞吉は一昼夜の勤務から解かれて交代の者に鋏を渡した。朝の八時だった。彼は線路伝いに信号所の横を自宅へ急いだ。 「おーい!馬鹿に急いで帰るなあ」 信号所の中から声をかけた …
読書目安時間:約9分
改札孫の柴田貞吉は一昼夜の勤務から解かれて交代の者に鋏を渡した。朝の八時だった。彼は線路伝いに信号所の横を自宅へ急いだ。 「おーい!馬鹿に急いで帰るなあ」 信号所の中から声をかけた …
郷愁(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
私はよく、ホームシックに襲われる少年であった。 八百屋の店頭に、水色のキャベツが積まれ、赤いトマトオが並べられ、雪のように白い夏大根が飾られる頃になると、私のホームシックは尚一入烈 …
読書目安時間:約3分
私はよく、ホームシックに襲われる少年であった。 八百屋の店頭に、水色のキャベツが積まれ、赤いトマトオが並べられ、雪のように白い夏大根が飾られる頃になると、私のホームシックは尚一入烈 …
狂馬(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
炭坑の坑は二つに区別されている。竪坑。斜坑。——地上から地下へ垂直に、井戸のように通うているのが竪坑で、斜坑は、地上から地下へ、勾配になって這入って行くのだから樹木に掩われた薄暗い …
読書目安時間:約6分
炭坑の坑は二つに区別されている。竪坑。斜坑。——地上から地下へ垂直に、井戸のように通うているのが竪坑で、斜坑は、地上から地下へ、勾配になって這入って行くのだから樹木に掩われた薄暗い …
恐怖城(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間36分
第一章森谷牧場の無蓋二輪の箱馬車は放牧場のコンクリートの門を出ると、高原地帯の新道路を一直線に走っていった。馬車には森谷家の令嬢の紀久子と、その婚約者の松田敬二郎とが乗っていた。松 …
読書目安時間:約2時間36分
第一章森谷牧場の無蓋二輪の箱馬車は放牧場のコンクリートの門を出ると、高原地帯の新道路を一直線に走っていった。馬車には森谷家の令嬢の紀久子と、その婚約者の松田敬二郎とが乗っていた。松 …
首を失った蜻蛉(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
薊の花や白い山百合の花の咲いている叢の中の、心持ちくだりになっている細道を、煙草を吸いながら下りて行くと、水面が鏡の面のように静かな古池があって、岸からは雑草が掩いかかり、中には睡 …
読書目安時間:約10分
薊の花や白い山百合の花の咲いている叢の中の、心持ちくだりになっている細道を、煙草を吸いながら下りて行くと、水面が鏡の面のように静かな古池があって、岸からは雑草が掩いかかり、中には睡 …
熊の出る開墾地(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
無蓋の二輪馬車は、初老の紳士と若い女とを乗せて、高原地帯の開墾場から奥暗い原始林の中へ消えて行った。開墾地一帯の地主、狼のような痩躯の藤沢が、開墾場一番の器量よしである千代枝を伴れ …
読書目安時間:約31分
無蓋の二輪馬車は、初老の紳士と若い女とを乗せて、高原地帯の開墾場から奥暗い原始林の中へ消えて行った。開墾地一帯の地主、狼のような痩躯の藤沢が、開墾場一番の器量よしである千代枝を伴れ …
栗の花の咲くころ(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
暗欝な空が低く垂れていて家の中はどことなく薄暗かった。父親の嘉三郎は鏡と剃刀とをもって縁側へ出て行った。併し、縁側にも、暗い空の影が動いていて、植え込みの緑が板敷の上一面に溶けてい …
読書目安時間:約13分
暗欝な空が低く垂れていて家の中はどことなく薄暗かった。父親の嘉三郎は鏡と剃刀とをもって縁側へ出て行った。併し、縁側にも、暗い空の影が動いていて、植え込みの緑が板敷の上一面に溶けてい …
黒い地帯(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
煉瓦工場からは再び黒煙が流れ出した。煤煙は昼も夜も絶え間なく部落の空を掩包んだ。そして部落中は松埃で真黒に塗潰された。わけても柳、鼠梨、欅などの樹膚は、何れとも見分けがたくなって行 …
読書目安時間:約27分
煉瓦工場からは再び黒煙が流れ出した。煤煙は昼も夜も絶え間なく部落の空を掩包んだ。そして部落中は松埃で真黒に塗潰された。わけても柳、鼠梨、欅などの樹膚は、何れとも見分けがたくなって行 …
山茶花(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
平三爺は、病気で腰が痛むと言って、顔を顰めたり、自分で調合した薬を嚥んだりしていたのであったが、それでも、山の畠に、陸稲の落ち穂を拾いに行くのだと言って、嫁のおもんが制めたにもかか …
読書目安時間:約11分
平三爺は、病気で腰が痛むと言って、顔を顰めたり、自分で調合した薬を嚥んだりしていたのであったが、それでも、山の畠に、陸稲の落ち穂を拾いに行くのだと言って、嫁のおもんが制めたにもかか …
錯覚の拷問室(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
集落から六、七町(一町は約一〇九メートル)ほどの丘の中腹に小学校があった。校舎は正方形の敷地の両側を占めていた。北から南に、長い木造の平屋建てだった。 第七学級の教室はその最北端に …
読書目安時間:約29分
集落から六、七町(一町は約一〇九メートル)ほどの丘の中腹に小学校があった。校舎は正方形の敷地の両側を占めていた。北から南に、長い木造の平屋建てだった。 第七学級の教室はその最北端に …
殺人迷路:09 (連作探偵小説第九回)(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
洋装の女 どこで何をしていたのか、新聞記者の村井は、星田代二が検事の第一回訊問を受けた日、彼が警視庁へかえされたのと入れちがいに、検事局の構内に姿を現わした。しかも、彼は、今日がは …
読書目安時間:約8分
洋装の女 どこで何をしていたのか、新聞記者の村井は、星田代二が検事の第一回訊問を受けた日、彼が警視庁へかえされたのと入れちがいに、検事局の構内に姿を現わした。しかも、彼は、今日がは …
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)(新字新仮名)
読書目安時間:約43分
街頭はもう白熱していた。併し白い太陽は尚もじりじりとあらゆるものを照りつけ続けていた。そして路面からの反射光線は室内にまで火矢のように躍り込んでいた。捜査本部では、当事者達が一台の …
読書目安時間:約43分
街頭はもう白熱していた。併し白い太陽は尚もじりじりとあらゆるものを照りつけ続けていた。そして路面からの反射光線は室内にまで火矢のように躍り込んでいた。捜査本部では、当事者達が一台の …
接吻を盗む女の話(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
一街裏の露地で 社は五時に退けることになっていた。 併し、鈴木三枝子は大抵の日を六時か六時半まで社に残るのだった。別に仕事はしなくてもタイム・レコードで居残り割増金をくれることにな …
読書目安時間:約9分
一街裏の露地で 社は五時に退けることになっていた。 併し、鈴木三枝子は大抵の日を六時か六時半まで社に残るのだった。別に仕事はしなくてもタイム・レコードで居残り割増金をくれることにな …
手品(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
口上 雪深い東北の山襞の中の村落にも、正月は福寿草のように、何かしら明るい影を持って終始する。貧しい生活ながら、季節の行事としての、古風な慣習を伝えて、そこに僅かに明るい光の射すの …
読書目安時間:約8分
口上 雪深い東北の山襞の中の村落にも、正月は福寿草のように、何かしら明るい影を持って終始する。貧しい生活ながら、季節の行事としての、古風な慣習を伝えて、そこに僅かに明るい光の射すの …
都会地図の膨脹(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
序景 窓は広い麦畠の、濃緑の波に向けて開け放されていた。擽るような五月の軟風が咽せかえるばかりの草いきれを孕んで来て、かるく、白木綿の窓帷を動かしていた。 南面の窓に並んで、鉄筋混 …
読書目安時間:約21分
序景 窓は広い麦畠の、濃緑の波に向けて開け放されていた。擽るような五月の軟風が咽せかえるばかりの草いきれを孕んで来て、かるく、白木綿の窓帷を動かしていた。 南面の窓に並んで、鉄筋混 …
再度生老人(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
私が十一の頃、私の家の近所の寺に、焼和尚という渾名のお坊さんが住んでいた。私はこれから、この話を、その焼和尚のことから始めようと思う。…… 焼和尚は坊さんのくせに、大変女が好きだっ …
読書目安時間:約14分
私が十一の頃、私の家の近所の寺に、焼和尚という渾名のお坊さんが住んでいた。私はこれから、この話を、その焼和尚のことから始めようと思う。…… 焼和尚は坊さんのくせに、大変女が好きだっ …
秘密の風景画(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
伸子は何か物の堕ちる音で眼をさました。陽が窓いっぱいを赤くしてガアンと当たっていた。いつもの習慣で、彼女はすぐ隣のベッドに眼を引き寄せられた。ベッドは空いていた。姉の美佐子は昨晩も …
読書目安時間:約9分
伸子は何か物の堕ちる音で眼をさました。陽が窓いっぱいを赤くしてガアンと当たっていた。いつもの習慣で、彼女はすぐ隣のベッドに眼を引き寄せられた。ベッドは空いていた。姉の美佐子は昨晩も …
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
私は常に東北地方を愛している者であります。私は(日本中でどこが一番好きか?)という質問に対して、いつも(東北地方)と答えるのに躊躇したことはありません。これは話者の私が東北人である …
読書目安時間:約13分
私は常に東北地方を愛している者であります。私は(日本中でどこが一番好きか?)という質問に対して、いつも(東北地方)と答えるのに躊躇したことはありません。これは話者の私が東北人である …
骨を削りつつ歩む:――文壇苦行記――(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
惑いし途 私が作家として立とうと決心したのは、廿一の秋で、今から五年前の事である。そうと意志のきまるまでは、随分種々と他動的に迷わされていたが、私を決心に導いてくれたものは私の病気 …
読書目安時間:約11分
惑いし途 私が作家として立とうと決心したのは、廿一の秋で、今から五年前の事である。そうと意志のきまるまでは、随分種々と他動的に迷わされていたが、私を決心に導いてくれたものは私の病気 …
蜜柑(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
お婆さんはもう我慢がしきれなくなって来た。けれども彼女は、しばらくの間を薄い襤褸布団の中で、ただ、もじもじしていた。 厚い板戸を隔てた台所の囲炉裏端では、誰か客があるらしく、しきり …
読書目安時間:約14分
お婆さんはもう我慢がしきれなくなって来た。けれども彼女は、しばらくの間を薄い襤褸布団の中で、ただ、もじもじしていた。 厚い板戸を隔てた台所の囲炉裏端では、誰か客があるらしく、しきり …
緑の芽(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
弾力に富んだ春の活動は、いたるところに始まっていた。 太陽は燦爛と、野良の人々を、草木を、鳥獣を、すべてのものを祝福しているように、毎日やわらかに照り輝いた。農夫は、朝早くから飛び …
読書目安時間:約10分
弾力に富んだ春の活動は、いたるところに始まっていた。 太陽は燦爛と、野良の人々を、草木を、鳥獣を、すべてのものを祝福しているように、毎日やわらかに照り輝いた。農夫は、朝早くから飛び …
土竜(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
灌木と雑草に荒れた叢は、雑木林から雑木林へと、長い長い丘腹を、波をうって走っていた。 茨の生える新畑は、谷から頂へ向けて、ところ斑に黝んでいた。 梅三爺の、一坪四銭五厘で拓く開墾区 …
読書目安時間:約21分
灌木と雑草に荒れた叢は、雑木林から雑木林へと、長い長い丘腹を、波をうって走っていた。 茨の生える新畑は、谷から頂へ向けて、ところ斑に黝んでいた。 梅三爺の、一坪四銭五厘で拓く開墾区 …
指(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
彼女は銀座裏で一匹のすっぽんを買った。彼女のそれを大型の鰐皮製のオペラ・バッグに落とし込んで、銀座のペーヴメントに出た。 宵の銀座は賑っていた。彼女は人の肩を押し分けるようにしなが …
読書目安時間:約5分
彼女は銀座裏で一匹のすっぽんを買った。彼女のそれを大型の鰐皮製のオペラ・バッグに落とし込んで、銀座のペーヴメントに出た。 宵の銀座は賑っていた。彼女は人の肩を押し分けるようにしなが …
指と指環(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
銀座裏のカッフェ・クジャクの内部はまだ客脚が少なく、閑散を極めていた。 彼は、焦茶色の外套の襟で頤を隠して、鳶色のソフトを眼深に引き下げていた。そして、室の中を一渡り見渡してから、 …
読書目安時間:約12分
銀座裏のカッフェ・クジャクの内部はまだ客脚が少なく、閑散を極めていた。 彼は、焦茶色の外套の襟で頤を隠して、鳶色のソフトを眼深に引き下げていた。そして、室の中を一渡り見渡してから、 …
猟奇の街(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
東京は靄の濃い晩秋だった。街は靄から明けて靄の中に暮れていった。——冷えびえと蠢いているこの羅の陰には何事かがある?本当に、何事かが起こっているに相違ない?——彼は東京の靄が濃くな …
読書目安時間:約29分
東京は靄の濃い晩秋だった。街は靄から明けて靄の中に暮れていった。——冷えびえと蠢いているこの羅の陰には何事かがある?本当に、何事かが起こっているに相違ない?——彼は東京の靄が濃くな …
“佐左木俊郎”について
佐左木 俊郎(ささき としろう、1900年(明治33年)4月14日 - 1933年(昭和8年)3月13日)は、日本の小説家。農民(百姓)の辛さ、愚かさ、悲しさ、したたかさ、美しさを、じっと見据えつづけた作家である。宮城県の農家出身。鉄道員、小学校の代用教員などののち新潮社に入り、『文学時代』などを編集。加藤武雄に兄事し、新興芸術派に属して猟奇小説、探偵小説などを書き、農民文芸会に属し活動したが早世した。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“佐左木俊郎”と年代が近い著者
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
箕作秋坪(生誕200年)