“燻”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
いぶ21.9%
くす21.7%
くすぶ19.0%
くゆ14.2%
8.1%
くゆら2.4%
ふか1.8%
1.6%
くん1.4%
ふす1.2%
(他:33)6.7%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
“燻”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語9.1%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行3.8%
文学 > 日本文学 > 詩歌2.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
いぶかしげな乱れた思案が、ぼやけた部屋の明るみをいぶるやうに湧き漂ひ、うなだれた呂木の心を無限の遠さへ連れていつた。
Pierre Philosophale (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「あの時、この耳掻きを死骸の口の中に入れたんだ。帰る時そっと抜いてみると、この通りいぶしたように真っ黒になっている」
そこここに高くそびゆる宏大な建築物たてものは、壮麗で、斬新で、くすんだ従来の形式を圧倒して立つように見えた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
むしろ一時代前の東山趣味ともいえる、くすんだ墨と、粗描の線と、多くの余白との中に甚だしく余韻よいんを尊んでいた。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は古びたオーバーを着込んで、「寒い、寒い」とふるえながら、生木のくすぶ火鉢ひばち獅噛しがみついていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
さあらぬように話しかけられたことは、表面おちつきかけたものをき立てて、またぶすぶすとくすぶらしたに等しかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
許宣も本堂の前で香をくゆらし、紙馬しば紙銭しせんを焼き、赤い蝋燭に灯をともしなどして、両親の冥福を祈った。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
食事のあとでハバナをくゆらしながら安楽椅子あんらくいすに腰を下ろしたわたしは、金門公園の不思議な青年の話をした。
謎の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
喜太夫は、かやの葉を、縁でべ初める。その煙が逃げてゆくひさしに、薙刀なぎなたのような宵月がしていた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、金蓮を引きずッて来て、祭壇の前の菅莚すがむしろの前にぬかずかせ、自身は手を伸ばして、香炉こうろに香をべた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初期にはどうであったか知らぬが、少なくとも今日の西洋人はただ口中をくゆらすばかりで、鼻の穴からもめったに煙を出さない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伊勢屋新兵衞は吐き出すやうに言ひ終つて、線香をもう一と掴みくゆらし、さて平次の方を振り返つてピヨコリお辭儀をするのです。
都会の方から来た頃から見ると、髪なども長く延ばし、憂鬱な眼付をして、好きな煙草をふかし燻し学士の話に耳を傾けた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と呼び留められて、釜形帽と鳥打帽と一緒に、石垣にりながら煙草をふかし始めた。女二人は話し話し働いた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、縄目は見る目に忍びないから、きぬを掛けたこのまま、留南奇とめきく、絵で見た伏籠ふせごを念じながら、もろ手を、ずかと袖裏へ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柔らかなその御動作に従って立つ香はことさら用意してきしめておいでになった匂宮らしかった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
愛稱ガラツ八の八五郎が、お先煙草を五匁ほどくんじて、鐵瓶てつびんを一パイからつぽにして、さてこんな事を言ひ出すのです。
やがて江戸のまちも花に埋もれやうといふ三月の中旬、廣重の鞠子まりこの繪を見るやうに、空までが桃色にくんじたある日のことでした。
スウェーデンでは五月節日メイデイに妖巫黒兎をして近隣の牛乳を搾り取らしむると信じ、牛を牛小舎に閉じ籠め硫黄でふすべてこれをふせぐ。
ベーカーの説に、かかるへた紅海にも産し、ある海藻とともに諸香に合せ婦女の身をふすぶると、猫に天蓼またたびほど男子を惹きくる由。
木の根のぶるばたで、罐詰の空罐に植えた福寿草を、節くれだった黒い手でいじっているのなどは
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ある日私はいつものように自分の小屋の石のストーブで兎の肉をぶしていた。それがすっかり出来上がった時果実このみの絞り汁に充分浸して小屋から外へ出て行った。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼は机の前に腰をかけて、懐中ポケットからパイプを取り出し机上にあったマリーランド煙草の箱の封を切ってそれを詰めてかしながら、何やら手紙を書き初めた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
爺さんは、むっつりと、苦虫を噛みつぶしたような面構えで、炉傍ろばたに煙草をかしていた。弟の庄吾は、婆さんの手伝いで、尻端折しりはしょりになって雑巾ぞうきんけだった。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
その一つ此窓の大岩柱は直ぐ目の前にがっしりと根を張って、曇りを帯びた朧の雪がいぶしし銀の金具の様に根元を飾っている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
昨日は曇天がいぶし銀の色調であつた。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
文三がすみませぬの水を斟尽くみつくしてそそぎかけたので次第々々に下火になって、プスプスいぶりになって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けた玉菜たまなや、ランプのいぶりや、南京蟲なんきんむしや、アンモニヤのにほひこんじて、はひつたはじめの一分時ぷんじは、動物園どうぶつゑんにでもつたかのやうな感覺かんかく惹起ひきおこすので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おい、おれは幽霊じゃないぞ、俺はやはり人間だぞ! そんなにくすべるない! 」
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
ときどきは鬱々うつうつとして生命を封付けられるうらみがましい生ものの気配けはいが、この半分古菰ふるこもを冠った池の方に立ちくすべるように感じたこともあるが、復一はそれを自分の神経衰弱から来る妄念もうねんのせいにしていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何として如是かうは遅きや、思ひ断めて望を捨て、既早相談にも及ばずとて独り我家にくすぼり居るか、それともまた此方より行くを待つて居る、若しも此方の行くを待つて居るといふことならば余り増長した了見なれど
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何としてこうは遅きや、思いあきらめて望みを捨て、もはや相談にも及ばずとて独りわが家にくすぼり居るか、それともまた此方より行くを待って居るか、もしも此方の行くを待って居るということならばあまり増長した了見なれど
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かれやうや火鉢ひばち麁朶そだくべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
焼香の時、重子がこうをつまんで香炉こうろうちくべるのを間違えて、灰を一撮ひとつかみ取って、抹香まっこうの中へ打ち込んだ折には、おかしくなって吹き出したくらいである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山岸は力のつよい小波のように動きはじめた雰囲気を強いて無視し、わざとらしくけむたそうに眉根をしかめて丸っこい手ですったマッチから煙草に火をつけている。
乳房 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
どうしたもんだんべ、かねさん自分じぶん這入へえんのにけむつたけりや、おんしてからへえつたらかんべなあ、それに怎的どうしたもんだ一同みんな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『本草啓蒙』に「兎の性こうにして棲所の穴その道一ならず、猟人一道をふすぶれば他道にのがれ去る、故に『戦国策』に〈狡兎三窟ありわずかにその死を免れ得るのみ〉という」。
さて定基夫婦の間のふすぶりかえり、ひぞり合い、けむを出し火を出し合うようになっている傍に、従兄弟同士の匡衡夫婦の間は、詩思歌情、ハハハ、オホホで朝夕ちょうせきむつび合っているとすれば
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
無尽蔵にいる兎や狐を狩り取ることもいと容易すければ、その肉をぶることも焼くことも大して手間は取らなかったが、私の目指す森林の奥まで持ち運ぶ方法に苦しんだ。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
じっとしているとえぶされてしまう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今宵ランプはポトホトかがり、
曇つた秋 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
今宵ランプはポトホトかゞ
曇つた秋 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
すると夫人は男に向つて、昨日は大きな丸太を割りもせず、おまけに濡れたのを差込むものだからくすぶって目も開けてゐられなかつた、今日は良く乾いてゐますか、濡れた薪木と乾いた薪木の区別ぐらゐは御存知でせうね、と頭上から叱言を浴せますが、男は平然たるもので返答もなくキツヽキの作業をつゞけてをります。
露の答 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
傳「随分此の人の部屋でくずぶった事もあるのでねえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
りやけぶつてえ」とまたしづんだまゝごし/\とあかおとしてたが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けぶつてえのつたらひど晴々せい/\してへえつてるやうぢやなくなつた。莫迦ばかつちやつたえ」かね博勞ばくらうはがぶりと風呂ふろおとをさせてたちながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
電気炉のスィッチは入った。じりじりと電熱線は身ぶるいをはじめ、げくさい熱が久振りに人間のはだしたって、いよってきた。
——話、と言うのは数年前にさかのぼりますが、私の勤めていたH駅のあの扇形をした機関庫に……あれは普通にラウンド・ハウスと言われていますが……其処そこに、大勢の掛員達から「葬式とむらい機関車」と呼ばれている、黒々とすすけた、古い、大きな姿体の機関車があります。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)