“燻”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
くす22.2%
いぶ21.0%
くすぶ19.3%
くゆ14.3%
く8.1%
ふか2.4%
くゆら2.4%
た1.5%
くん1.5%
ふす1.1%
ふ0.7%
い0.7%
いぶし0.6%
いぶり0.6%
くすべ0.4%
くすぼ0.4%
くべ0.4%
けむ0.4%
ふすぶ0.4%
けぶ0.2%
あ0.2%
あぶ0.2%
えぶ0.2%
かが0.2%
かゞ0.2%
くすぶっ0.2%
くずぶ0.2%
こ0.2%
すす0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
燻(くす)ぶった、黒い暗い室の奥の方に、爐に赤く火の燃えるのが見える。私はこの爐の辺で一生を送る人、送った人の身の上を思った。
帰途 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
「灰が湿(しめ)っているのか知らん」と女が蚊遣筒を引き寄せて蓋(ふた)をとると、赤い絹糸で括(くく)りつけた蚊遣灰が燻(いぶ)りながらふらふらと揺れる。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
家の中には生木の薪を焚く煙が、物の置所も分明(さだか)ならぬ程に燻(くすぶ)つて、それが、日一日破風(はふ)と誘ひ合つては、腐れた屋根に這つてゐる。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
伊勢屋新兵衛は吐き出すように言い終って、線香をもう一と掴み燻(くゆ)らし、さて平次の方を振り返ってピョコリとお辞儀をするのです。
ト火入(ひい)れに燻(く)べた、一把(は)三錢(せん)がお定(さだま)りの、あの、萌黄色(もえぎいろ)の蚊遣香(かやりかう)の細(ほそ)い煙(けむり)は、脈々(みやく/\)として、そして、空(そら)行(ゆ)く雲(くも)とは反對(はんたい)の方(はう)へ靡(なび)く。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見れば郡視学は巻煙草を燻(ふか)し乍ら、独りで新聞を読み耽(ふけ)つて居る。『失礼しました。』と声を掛けて、其側(そのわき)へ自分の椅子を擦寄せた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
伊勢屋新兵衞は吐き出すやうに言ひ終つて、線香をもう一と掴み燻(くゆら)し、さて平次の方を振り返つてピヨコリお辭儀をするのです。
仰ぐと、高楼の一層、月あかるき処、香(こう)を燻(た)き、琴を調べ、従容(しょうよう)として、独り笑(え)めるかのような人影がある。まさに孔明その人にちがいない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて江戸の街(まち)も花に埋もれやうといふ三月の中旬、廣重の鞠子(まりこ)の繪を見るやうに、空までが桃色に燻(くん)じたある日のことでした。
スウェーデンでは五月節日(メイデイ)に妖巫黒兎をして近隣の牛乳を搾り取らしむると信じ、牛を牛小舎に閉じ籠め硫黄で燻(ふす)べてこれを禦(ふせ)ぐ。
彼は机の前に腰をかけて、懐中(ポケット)からパイプを取り出し机上にあったマリーランド煙草の箱の封を切ってそれを詰めて燻(ふ)かしながら、何やら手紙を書き初めた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
木の根の燻(い)ぶる炉(ろ)ばたで、罐詰の空罐に植えた福寿草を、節くれだった黒い手でいじっているのなどは、いい調和です。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
昨日は曇天が燻(いぶし)銀の色調であつた。神戸から大阪までの平原の間に、枯草と青草との心臟を冷すやうに氣持のいい色の調和を見た。(四月二日、大阪圖書館にて。)
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
漬(つ)けた玉菜(たまな)や、ランプの燻(いぶり)や、南京蟲(なんきんむし)や、アンモニヤの臭(にほひ)が混(こん)じて、入(はひ)つた初(はじ)めの一分時(ぷんじ)は、動物園(どうぶつゑん)にでも行(い)つたかのやうな感覺(かんかく)を惹起(ひきおこ)すので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ときどきは鬱々(うつうつ)として生命を封付けられる恨(うら)みがましい生ものの気配(けは)いが、この半分古菰(ふるこも)を冠った池の方に立ち燻(くすべ)るように感じたこともあるが
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
思いあきらめて望みを捨て、もはや相談にも及ばずとて独りわが家に燻(くすぼ)り居るか、それともまた此方より行くを待って居るか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
焼香の時、重子が香(こう)をつまんで香炉(こうろ)の裏(うち)へ燻(くべ)るのを間違えて、灰を一撮(ひとつか)み取って、抹香(まっこう)の中へ打ち込んだ折には、おかしくなって吹き出したくらいである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兼(かね)さん等(ら)自分(じぶん)で這入(へえ)んのに燻(けむ)つたけりや、おん出(だ)してからへえつたら善(よ)かんべなあ、それに怎的(どう)したもんだ一同(みんな)居(ゐ)て
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『本草啓蒙』に「兎の性狡(こう)にして棲所の穴その道一ならず、猟人一道を燻(ふすぶ)れば他道に遁(のが)れ去る、故に『戦国策』に〈狡兎三窟ありわずかにその死を免れ得るのみ〉という」
「燻(けぶ)つてえのそつちへおん出(だ)さなくつちや仕(し)やうねえや」風呂(ふろ)から出(で)た儘(まゝ)拭(ぬぐ)ひもせぬ足(あし)に下駄(げた)を穿(は)いて裸(はだか)の臀(しり)を他人(たにん)に向(む)けて立(た)つた一人(にん)が後(うしろ)を顧(かへり)みていつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
無尽蔵にいる兎や狐を狩り取ることもいと容易(や)すければ、その肉を燻(あ)ぶることも焼くことも大して手間は取らなかったが、私の目指す森林の奥まで持ち運ぶ方法に苦しんだ。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼等は肉の煮たのや、燻(あぶ)つたのや、鷄の肉や、色々の種類の魚や、オムレツや、焙菓子(クレエプ)やを食卓へ持ち出した。
じっとしていると燻(えぶ)されてしまう。仕方がないから、片足下げる。手もこれに応じて握り更(か)えなくっちゃならない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今宵ランプはポトホト燻(かが)り
曇つた秋 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
今宵ランプはポトホト燻(かゞ)り
曇つた秋 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
おまけに濡れたのを差込むものだから燻(くすぶっ)て目も開けてゐられなかつた、今日は良く乾いてゐますか、濡れた薪木と乾いた薪木の区別ぐらゐは御存知でせうね、と頭上から叱言を浴せますが
露の答 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
傳「随分此の人の部屋で燻(くずぶ)った事もあるのでねえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
じりじりと電熱線は身ぶるいをはじめ、燻(こ)げくさい熱が久振りに人間の膚(はだ)を慕(した)って、匐(は)いよってきた。
黒々と燻(すす)けた、古い、大きな姿体の機関車があります。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)