“燻”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
くす22.1%
いぶ21.1%
くすぶ19.2%
くゆ14.1%
7.9%
くゆら2.3%
ふか2.3%
くん1.6%
1.6%
ふす1.2%
(他:34)6.6%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
焼野が原は、一層かっきりと、その半ば炭化しかけた材木だの、建前だのがくすぶって、まだ臭いと余燼よじんをくすぶらしているのがよくわかる。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
巫女 それをその方の声じゃと思うとくすべにくい、皆狐の声じゃと思わないかん。そのお方を苦しめている狐を、苦しめると思うてやらないきません。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ロスアンゼルスへの外港、サンピイドロの海は、巨艦きょかんサラトガ、ミシシッピイ等の船腹を銀色に光らせ、いぶし銀のようにくすんでいました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
おつぎはかるたしなめるやうにいつて二つの手桶てをけをそつといて、いぶつてたきゞしてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「灰が湿しめっているのか知らん」と女が蚊遣筒を引き寄せてふたをとると、赤い絹糸でくくりつけた蚊遣灰がいぶりながらふらふらと揺れる。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時主人の平左衞門は四十前後、色の淺黒い、いぶしたやうな澁い感じで、態度の落着いて居るのは、その信心のせゐだと言はれて居りました。
停車場を出て橋を一つ渡ると、直ぐそこに町端まちはならしい休茶屋や、運送屋の軒に続いてくすぶりきった旅籠屋はたごやが、二三軒目についた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
背後の村には燃えさしの家が、ぷすぷすくすぶり、人を焼く、あの火葬場のような悪臭が、部隊を追っかけるようにどこまでも流れ拡がってついてきた。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
家の中には生木の薪を焚く煙が、物の置所も分明さだかならぬ程にくすぶつて、それが、日一日破風はふと誘ひ合つては、腐れた屋根に這つてゐる。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
金煙管きんぎせるたばこひと杳眇ほのぼのくゆるを手にせるまま、満枝ははかなさの遣方無やるかたなげにしをれゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此室こゝ葉卷シユーガーでもくゆらさうとおもつて洋服やうふく衣袋ポツケツトさぐりてたが一ぽん
信一郎の心が、不快な動揺に悩まされているのをよそに、秋山氏は、今火をけた金口の煙草たばこくゆらしながら、落着いた調子で云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「親分、今ひときますから、体を暖かくしておやすみなさいまし」と空地の一端で、ドカドカと焚火たきびの焔を揚げ初めました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火のない部屋の炉のそばで、一刀斎は笑っていた。典膳のほうを見てではない。そこに蚊やりをべているこのあるじに向ってである。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おつぎはやうやかまど落葉おちばべてちやわかした、みんなたゞぽつさりとしてちやすゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
初冬の日向ひなたを追ひ乍ら、退屈しのぎの粉煙草をくゆらして居る錢形平次の鼻の先に、ガラツ八の八五郎は、神妙らしく膝つ小僧を揃へるのでした。
伊勢屋新兵衞は吐き出すやうに言ひ終つて、線香をもう一と掴みくゆらし、さて平次の方を振り返つてピヨコリお辭儀をするのです。
初期にはどうであったか知らぬが、少なくとも今日の西洋人はただ口中をくゆらすばかりで、鼻の穴からもめったに煙を出さない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平次は相変らず赤蜻蛉あかとんぼの乱れ飛ぶのを眺めながら、鉄拐仙人てっかいせんにんのように粉煙草の煙を不精らしくふかすのでした。
煙草好きな彼は更に新しい紙巻を取出して、それをふかして見せて、自分は今それほど忙しくないという意味を示したが、原の方ではそうもらなかった。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『やるべし、やるべし。』と冷笑の語気を帯びて言つたのは、文平であつた。文平は準教員の背後うしろに立つて、巻煙草をふかし乍ら聞いて居たのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やがて江戸のまちも花に埋もれやうといふ三月の中旬、廣重の鞠子まりこの繪を見るやうに、空までが桃色にくんじたある日のことでした。
愛稱ガラツ八の八五郎が、お先煙草を五匁ほどくんじて、鐵瓶てつびんを一パイからつぽにして、さてこんな事を言ひ出すのです。
道人どうじんは薄赤い絹を解いて、香炉こうろの煙に一枚ずつ、中の穴銭あなせんくんじたのち、今度はとこに懸けたじくの前へ、丁寧に円い頭を下げた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、縄目は見る目に忍びないから、きぬを掛けたこのまま、留南奇とめきく、絵で見た伏籠ふせごを念じながら、もろ手を、ずかと袖裏へ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仰ぐと、高楼の一層、月あかるき処、こうき、琴を調べ、従容しょうようとして、独りめるかのような人影がある。まさに孔明その人にちがいない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柔らかなその御動作に従って立つ香はことさら用意してきしめておいでになった匂宮らしかった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
スウェーデンでは五月節日メイデイに妖巫黒兎をして近隣の牛乳を搾り取らしむると信じ、牛を牛小舎に閉じ籠め硫黄でふすべてこれをふせぐ。
ベーカーの説に、かかるへた紅海にも産し、ある海藻とともに諸香に合せ婦女の身をふすぶると、猫に天蓼またたびほど男子を惹きくる由。
投込なげこむと同時どうじ緻密こまかなるざるおほひ、うへにはひし大石たいせきき、枯草こさうふすべて
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ある日私はいつものように自分の小屋の石のストーブで兎の肉をぶしていた。それがすっかり出来上がった時果実このみの絞り汁に充分浸して小屋から外へ出て行った。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
粗朶そだがぶしぶしとぶるその向座むこうざには、妻が襤褸ぼろにつつまれて、髪をぼうぼうと乱したまま、愚かな眼と口とを節孔ふしあなのように開け放してぼんやり坐っていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
木の根のぶるばたで、罐詰の空罐に植えた福寿草を、節くれだった黒い手でいじっているのなどは
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
彼は机の前に腰をかけて、懐中ポケットからパイプを取り出し机上にあったマリーランド煙草の箱の封を切ってそれを詰めてかしながら、何やら手紙を書き初めた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
爺さんは、むっつりと、苦虫を噛みつぶしたような面構えで、炉傍ろばたに煙草をかしていた。弟の庄吾は、婆さんの手伝いで、尻端折しりはしょりになって雑巾ぞうきんけだった。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
爺さんは煙草をかしながら、非常に機嫌がよかった。菊枝は下をうつむいて、足指で、板の間に何か書いていた。春吉は、菊枝の立っている方へ眼をやりながら、微かに口元を痙攣けいれんさせた。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
その一つ此窓の大岩柱は直ぐ目の前にがっしりと根を張って、曇りを帯びた朧の雪がいぶしし銀の金具の様に根元を飾っている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
昨日は曇天がいぶし銀の色調であつた。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
しろがねのいぶしして。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
文三がすみませぬの水を斟尽くみつくしてそそぎかけたので次第々々に下火になって、プスプスいぶりになって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けた玉菜たまなや、ランプのいぶりや、南京蟲なんきんむしや、アンモニヤのにほひこんじて、はひつたはじめの一分時ぷんじは、動物園どうぶつゑんにでもつたかのやうな感覺かんかく惹起ひきおこすので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けた玉菜たまなや、ランプのいぶりや、南京虫なんきんむしや、アンモニヤのにおいこんじて、はいったはじめの一分時ぷんじは、動物園どうぶつえんにでもったかのような感覚かんかく惹起ひきおこすので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おい、おれは幽霊じゃないぞ、俺はやはり人間だぞ! そんなにくすべるない! 」
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
ときどきは鬱々うつうつとして生命を封付けられるうらみがましい生ものの気配けはいが、この半分古菰ふるこもを冠った池の方に立ちくすべるように感じたこともあるが、復一はそれを自分の神経衰弱から来る妄念もうねんのせいにしていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何として如是かうは遅きや、思ひ断めて望を捨て、既早相談にも及ばずとて独り我家にくすぼり居るか、それともまた此方より行くを待つて居る、若しも此方の行くを待つて居るといふことならば余り増長した了見なれど
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何としてこうは遅きや、思いあきらめて望みを捨て、もはや相談にも及ばずとて独りわが家にくすぼり居るか、それともまた此方より行くを待って居るか、もしも此方の行くを待って居るということならばあまり増長した了見なれど
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
焼香の時、重子がこうをつまんで香炉こうろうちくべるのを間違えて、灰を一撮ひとつかみ取って、抹香まっこうの中へ打ち込んだ折には、おかしくなって吹き出したくらいである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれやうや火鉢ひばち麁朶そだくべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
山岸は力のつよい小波のように動きはじめた雰囲気を強いて無視し、わざとらしくけむたそうに眉根をしかめて丸っこい手ですったマッチから煙草に火をつけている。
乳房 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
どうしたもんだんべ、かねさん自分じぶん這入へえんのにけむつたけりや、おんしてからへえつたらかんべなあ、それに怎的どうしたもんだ一同みんな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『本草啓蒙』に「兎の性こうにして棲所の穴その道一ならず、猟人一道をふすぶれば他道にのがれ去る、故に『戦国策』に〈狡兎三窟ありわずかにその死を免れ得るのみ〉という」。
さて定基夫婦の間のふすぶりかえり、ひぞり合い、けむを出し火を出し合うようになっている傍に、従兄弟同士の匡衡夫婦の間は、詩思歌情、ハハハ、オホホで朝夕ちょうせきむつび合っているとすれば
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
無尽蔵にいる兎や狐を狩り取ることもいと容易すければ、その肉をぶることも焼くことも大して手間は取らなかったが、私の目指す森林の奥まで持ち運ぶ方法に苦しんだ。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼等は肉の煮たのや、あぶつたのや、鷄の肉や、色々の種類の魚や、オムレツや、焙菓子クレエプやを食卓へ持ち出した。
じっとしているとえぶされてしまう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今宵ランプはポトホトかがり、
曇つた秋 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
今宵ランプはポトホトかゞ
曇つた秋 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
すると夫人は男に向つて、昨日は大きな丸太を割りもせず、おまけに濡れたのを差込むものだからくすぶって目も開けてゐられなかつた、今日は良く乾いてゐますか、濡れた薪木と乾いた薪木の区別ぐらゐは御存知でせうね、と頭上から叱言を浴せますが、男は平然たるもので返答もなくキツヽキの作業をつゞけてをります。
露の答 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
傳「随分此の人の部屋でくずぶった事もあるのでねえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
りやけぶつてえ」とまたしづんだまゝごし/\とあかおとしてたが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けぶつてえのつたらひど晴々せい/\してへえつてるやうぢやなくなつた。莫迦ばかつちやつたえ」かね博勞ばくらうはがぶりと風呂ふろおとをさせてたちながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
電気炉のスィッチは入った。じりじりと電熱線は身ぶるいをはじめ、げくさい熱が久振りに人間のはだしたって、いよってきた。
——話、と言うのは数年前にさかのぼりますが、私の勤めていたH駅のあの扇形をした機関庫に……あれは普通にラウンド・ハウスと言われていますが……其処そこに、大勢の掛員達から「葬式とむらい機関車」と呼ばれている、黒々とすすけた、古い、大きな姿体の機関車があります。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)