“分明”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ぶんみょう22.5%
ぶんめい16.9%
はつきり15.7%
はっきり11.2%
ぶんみやう6.7%
わか6.7%
あきらか4.5%
ふんみょう4.5%
わかり3.4%
さだか2.2%
さやか1.1%
はっき1.1%
ふんみやう1.1%
ふんみよう1.1%
ぶんみやん1.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
第一に突っ込んだ指をもって鼻の頭をキューとでたからたてに一本白い筋が通って、鼻のありかがいささか分明ぶんみょうになって来た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あいしてだいじにするのか、運動の習慣しゅうかんでだいじにするのか、いささか分明ぶんめいくのだが、とにかく牛をだいじにすることはひととおりでない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
今迄越えて来た山と山との間の路が地図でも見るやうに分明はつきり指点せらるゝと共に、この小嶺せうれいふさがれて見得なかつた前面の風景も
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
私は知らないことを、分明はっきりと言うだけの勇気は持っていない。またその代りに、独断で彼女を悪い女としてしまうことも忍び得ない。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そして静かに諦聴たいちやうすると分明ぶんみやうに其の一ツのザアッといふ音にいろ/\の其等の音が確実に存して居ることを認めて、アヽ然様だつたかナ、なんぞと思ふ中に
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それは、自分の顏であるから、見違へるわけはないが、體つきと、着物と、髮の具合をとりかへたらばちよいと自分でも分明わからなからうと思ふのさへある。
私の顔 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
見おろす町にからころと駒下駄の音さして行かふ人のかげ分明あきらかなり、結城さんと呼ぶに、何だとて傍へゆけば、まあ此處へお座りなさいと手を取りて、あの水菓子屋で桃を買ふ子がござんしよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
代助は、百合の花を眺めながら、部屋をおおう強いの中に、残りなく自己を放擲ほうてきした。彼はこの嗅覚きゅうかくの刺激のうちに、三千代の過去を分明ふんみょうに認めた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
庸三は腹んいになって煙草たばこをふかしていたが、彼女の計算の不正確と、清川の認識不足とのれ違いも分明わかりすぎる感じだった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
家の中には生木の薪を焚く煙が、物の置所も分明さだかならぬ程にくすぶつて、それが、日一日破風はふと誘ひ合つては、腐れた屋根に這つてゐる。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨日きのふこそ誰乎彼たそがれ黯黮くらがりにて、分明さやか面貌かほかたちを弁ぜざりしが、今の一目は、みづからも奇なりと思ふばかりくしくも、彼の不用意のうちに速写機の如き力を以てして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
分明はっきり返事をして、小気味よく小用をたしていた——尤もむずかしい仕事ではない、家のなかの雑用だが——彼は見かけだけは稜々りょうりょうたる男ぶりだった。
エニンを出でゝ三十分ならず、行手の山の上分明ふんみやうに白きむらを見る。あれは何と云ふ邑ぞ。あれこそナザレに候、と案内者が答ふる言葉の下より吾心わがむねは雀の如く躍りぬ。あゝあれがナザレか。
代助は、百合ゆりはなながめながら、部屋をおゝふ強いなかに、のこりなく自己を放擲ほうてきした。彼はこの嗅覚の刺激のうちに、三千代みちよの過去を分明ふんみように認めた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
硝子戸から客間をのぞいて見ると、雨漏あまもりの痕と鼠の食つた穴とが、白い紙張りの天井てんじよう斑々はんぱんとまだ残つてゐる。が、十畳の座敷には、赤い五羽鶴ごはづるたんが敷いてあるから、畳の古びだけは分明ぶんみやんではない。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)