分明ふんみょう)” の例文
代助は、百合の花を眺めながら、部屋をおおう強いの中に、残りなく自己を放擲ほうてきした。彼はこの嗅覚きゅうかくの刺激のうちに、三千代の過去を分明ふんみょうに認めた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『もっとも、分明ふんみょうしたことではありません。私自身も本問題は考えれば考えるほど、いよいよ合点が行かなくなってしまいます。ただここに一道の光明は‥‥』
決して無茶苦茶に馬琴が捏造したものでもよそから借りて来たものでも無いという事は分明ふんみょうであります。
眼より直ちに種板たねいたとも云うき余の心に写りたる所は分明ふんみょうなるのみかは爾後じご幾年を経たる今日こんにちまで少しも消えず、余は今もお其時の如くおぼれば少しの相違も無くそのへやを描き得ん
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)