幸田露伴
1867.08.20 〜 1947.07.30
“幸田露伴”に特徴的な語句
却
然様
斯様
打
流石
汝
嘗
既
不在
且
礪
先刻
猶
真実
忽
復
吾
異
嬲
何様
中
其儘
何時
真実
拠
吾
愈々
清潔
先方
其
其様
遂
卑劣
却
退
吾
諭
外見
誰
要
居
彼
今日
情
素
食
汝
承
疑
無益
著者としての作品一覧
淡島寒月氏(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
寒月氏は今年七十歳を以て二月廿三日に永逝した。本間久雄氏から、予の知るところの寒月氏を傳へて呉れと依頼を受けたので、ほんとにたゞ予の知れる限りの寒月氏——予の知らぬ他の方面の寒月氏 …
読書目安時間:約7分
寒月氏は今年七十歳を以て二月廿三日に永逝した。本間久雄氏から、予の知るところの寒月氏を傳へて呉れと依頼を受けたので、ほんとにたゞ予の知れる限りの寒月氏——予の知らぬ他の方面の寒月氏 …
淡島寒月のこと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
吾が友といつては少し不遜に當るかも知れないが、先づ友達といふことにして、淡島寒月といふ人は實に稀有な人であつた。やゝもすれば畸人の稱を與へたがる者もあるが、畸人でも何でもない、むし …
読書目安時間:約4分
吾が友といつては少し不遜に當るかも知れないが、先づ友達といふことにして、淡島寒月といふ人は實に稀有な人であつた。やゝもすれば畸人の稱を與へたがる者もあるが、畸人でも何でもない、むし …
囲碁雑考(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
棊は支那に起る。博物志に、尭囲棊を造り、丹朱これを善くすといひ、晋中興書に、陶侃荊州の任に在る時、佐史の博奕の戯具を見て之を江に投じて曰く、囲棊は尭舜以て愚子に教へ、博は殷紂の造る …
読書目安時間:約13分
棊は支那に起る。博物志に、尭囲棊を造り、丹朱これを善くすといひ、晋中興書に、陶侃荊州の任に在る時、佐史の博奕の戯具を見て之を江に投じて曰く、囲棊は尭舜以て愚子に教へ、博は殷紂の造る …
印度の古話(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
いづれの邦にも古話といふものありて、なかなかに近き頃の小説家などの作り設くとも及びがたきおもしろみあるものなり。されど小国民を読むほどの少年諸子には、桃太郎猿蟹合戦の類も珍らしから …
読書目安時間:約10分
いづれの邦にも古話といふものありて、なかなかに近き頃の小説家などの作り設くとも及びがたきおもしろみあるものなり。されど小国民を読むほどの少年諸子には、桃太郎猿蟹合戦の類も珍らしから …
運命(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間15分
世おのずから数というもの有りや。有りといえば有るが如く、無しと為せば無きにも似たり。洪水天に滔るも、禹の功これを治め、大旱地を焦せども、湯の徳これを済えば、数有るが如くにして、而も …
読書目安時間:約2時間15分
世おのずから数というもの有りや。有りといえば有るが如く、無しと為せば無きにも似たり。洪水天に滔るも、禹の功これを治め、大旱地を焦せども、湯の徳これを済えば、数有るが如くにして、而も …
運命は切り開くもの(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
此処に赤坊が生れたと仮定します。其の赤坊が華族の家の何不足無いところに生れたとします。然する時は此の赤坊は自然に比較的幸福であります。又食ふや食はずの貧乏の家で、父たる者は何処かへ …
読書目安時間:約10分
此処に赤坊が生れたと仮定します。其の赤坊が華族の家の何不足無いところに生れたとします。然する時は此の赤坊は自然に比較的幸福であります。又食ふや食はずの貧乏の家で、父たる者は何処かへ …
学生時代(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
わたくしの学生時代の談話をしろと仰ゃっても別にこれと云って申上げるようなことは何もございません。特にわたくしは所謂学生生活を仕た歳月が甚だ少くて、むしろ学生生活を為ずに過して仕舞っ …
読書目安時間:約6分
わたくしの学生時代の談話をしろと仰ゃっても別にこれと云って申上げるようなことは何もございません。特にわたくしは所謂学生生活を仕た歳月が甚だ少くて、むしろ学生生活を為ずに過して仕舞っ …
鵞鳥(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
ガラーリ 格子の開く音がした。茶の間に居た細君は、誰かしらんと思ったらしく、つと立上って物の隙からちょっと窺ったが、それがいつも今頃帰るはずの夫だったと解ると、すぐとそのままに出て …
読書目安時間:約23分
ガラーリ 格子の開く音がした。茶の間に居た細君は、誰かしらんと思ったらしく、つと立上って物の隙からちょっと窺ったが、それがいつも今頃帰るはずの夫だったと解ると、すぐとそのままに出て …
蒲生氏郷(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間12分
大きい者や強い者ばかりが必ずしも人の注意に値する訳では無い。小さい弱い平々凡々の者も中々の仕事をする。蚊の嘴といえば云うにも足らぬものだが、淀川両岸に多いアノフェレスという蚊の嘴は …
読書目安時間:約2時間12分
大きい者や強い者ばかりが必ずしも人の注意に値する訳では無い。小さい弱い平々凡々の者も中々の仕事をする。蚊の嘴といえば云うにも足らぬものだが、淀川両岸に多いアノフェレスという蚊の嘴は …
雁坂越(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
その一 ここは甲州の笛吹川の上流、東山梨の釜和原という村で、戸数もいくらも無い淋しいところである。背後は一帯の山つづきで、ちょうどその峰通りは西山梨との郡堺になっているほどであるか …
読書目安時間:約29分
その一 ここは甲州の笛吹川の上流、東山梨の釜和原という村で、戸数もいくらも無い淋しいところである。背後は一帯の山つづきで、ちょうどその峰通りは西山梨との郡堺になっているほどであるか …
観画談(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
ずっと前の事であるが、或人から気味合の妙な談を聞いたことがある。そしてその話を今だに忘れていないが、人名や地名は今は既に林間の焚火の煙のように、何処か知らぬところに逸し去っている。 …
読書目安時間:約33分
ずっと前の事であるが、或人から気味合の妙な談を聞いたことがある。そしてその話を今だに忘れていないが、人名や地名は今は既に林間の焚火の煙のように、何処か知らぬところに逸し去っている。 …
観画談(新字旧仮名)
読書目安時間:約32分
ずつと前の事であるが、或人から気味合の妙な談を聞いたことがある。そして其話を今だに忘れてゐないが、人名や地名は今は既に林間の焚火の煙のやうに、何処か知らぬところに逸し去つてゐる。 …
読書目安時間:約32分
ずつと前の事であるが、或人から気味合の妙な談を聞いたことがある。そして其話を今だに忘れてゐないが、人名や地名は今は既に林間の焚火の煙のやうに、何処か知らぬところに逸し去つてゐる。 …
菊 食物としての(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
菊の季節になつた。其のすが/\しい花の香や、しをらしい花の姿、枝ぶり、葉の色、いづれか人の心持ちを美しい世界に誘はぬものはない。然し取訳菊つくりの菊には俗趣の厭ふべき匂が有ることも …
読書目安時間:約4分
菊の季節になつた。其のすが/\しい花の香や、しをらしい花の姿、枝ぶり、葉の色、いづれか人の心持ちを美しい世界に誘はぬものはない。然し取訳菊つくりの菊には俗趣の厭ふべき匂が有ることも …
鼠頭魚釣り(新字旧仮名)
読書目安時間:約20分
鼠頭魚は即ちきすなり。其頭の形いとよく鼠のあたまに肖たるを以て、支那にて鼠頭魚とは称ふるならん。俗に鱚の字を以てきすと訓ず。鱚の字は字典などにも見えず、其拠るところを知らず。蓋し鮎 …
読書目安時間:約20分
鼠頭魚は即ちきすなり。其頭の形いとよく鼠のあたまに肖たるを以て、支那にて鼠頭魚とは称ふるならん。俗に鱚の字を以てきすと訓ず。鱚の字は字典などにも見えず、其拠るところを知らず。蓋し鮎 …
侠客の種類(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
侠客と一口に言つても徳川時代の初期に起つた侠客と其の以後に出た侠客とは、名は同じ侠客でも余程様子が違つて居るやうである。初期のは市人の中の気慨のある者か或は武士の仕官の途に断念した …
読書目安時間:約11分
侠客と一口に言つても徳川時代の初期に起つた侠客と其の以後に出た侠客とは、名は同じ侠客でも余程様子が違つて居るやうである。初期のは市人の中の気慨のある者か或は武士の仕官の途に断念した …
雲のいろ/\(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
夏より秋にかけての夜、美しさいふばかり無き雲を見ることあり。都会の人多くは心づかぬなるべし。舟に乗りて灘を行く折、天暗く水黒くして月星の光り洩れず、舷を打つ浪のみ青白く騒立ちて心細 …
読書目安時間:約12分
夏より秋にかけての夜、美しさいふばかり無き雲を見ることあり。都会の人多くは心づかぬなるべし。舟に乗りて灘を行く折、天暗く水黒くして月星の光り洩れず、舷を打つ浪のみ青白く騒立ちて心細 …
華厳滝(旧字旧仮名)
読書目安時間:約31分
昭和二年七月の九日、午後一時過ぐるころ安成子の來車を受け、かねての約に從つて同乘して上野停車場へと向つた。日本八景の一と定められた華嚴の瀑布及びその附近景勝遊覽のためであつた。 二 …
読書目安時間:約31分
昭和二年七月の九日、午後一時過ぐるころ安成子の來車を受け、かねての約に從つて同乘して上野停車場へと向つた。日本八景の一と定められた華嚴の瀑布及びその附近景勝遊覽のためであつた。 二 …
言語体の文章と浮雲(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
二葉亭主人の逝去は、文壇に取っての恨事で、如何にも残念に存じます。私は長谷川君とは対面するような何等の機会をも有さなかったので、親しく語を交えた事はありませんが、同君の製作をとおし …
読書目安時間:約3分
二葉亭主人の逝去は、文壇に取っての恨事で、如何にも残念に存じます。私は長谷川君とは対面するような何等の機会をも有さなかったので、親しく語を交えた事はありませんが、同君の製作をとおし …
幻談(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
こう暑くなっては皆さん方があるいは高い山に行かれたり、あるいは涼しい海辺に行かれたりしまして、そうしてこの悩ましい日を充実した生活の一部分として送ろうとなさるのも御尤もです。が、も …
読書目安時間:約35分
こう暑くなっては皆さん方があるいは高い山に行かれたり、あるいは涼しい海辺に行かれたりしまして、そうしてこの悩ましい日を充実した生活の一部分として送ろうとなさるのも御尤もです。が、も …
五重塔(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間49分
其一 木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳作りの長火鉢に対ひて話し敵もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日掃ひしか剃つたる痕の青〻と …
読書目安時間:約1時間49分
其一 木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳作りの長火鉢に対ひて話し敵もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日掃ひしか剃つたる痕の青〻と …
五重塔(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間53分
木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用いたる岩畳作りの長火鉢に対いて話し敵もなくただ一人、少しは淋しそうに坐り居る三十前後の女、男のように立派な眉をいつ掃いしか剃ったる痕の青々と、見 …
読書目安時間:約1時間53分
木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用いたる岩畳作りの長火鉢に対いて話し敵もなくただ一人、少しは淋しそうに坐り居る三十前後の女、男のように立派な眉をいつ掃いしか剃ったる痕の青々と、見 …
骨董(新字旧仮名)
読書目安時間:約38分
骨董といふのは元来支那の田舎言葉で、字はたゞ其音を表はしてゐるのみであるから、骨の字にも董の字にもかゝはつた義が有るのでは無い。そこで、汨董と書かれることもあり、又古董と書かれるこ …
読書目安時間:約38分
骨董といふのは元来支那の田舎言葉で、字はたゞ其音を表はしてゐるのみであるから、骨の字にも董の字にもかゝはつた義が有るのでは無い。そこで、汨董と書かれることもあり、又古董と書かれるこ …
骨董(新字新仮名)
読書目安時間:約38分
骨董というのは元来支那の田舎言葉で、字はただその音を表わしているのみであるから、骨の字にも董の字にもかかわった義があるのではない。そこで、汨董と書かれることもあり、また古董と書かれ …
読書目安時間:約38分
骨董というのは元来支那の田舎言葉で、字はただその音を表わしているのみであるから、骨の字にも董の字にもかかわった義があるのではない。そこで、汨董と書かれることもあり、また古董と書かれ …
些細なやうで重大な事(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
人間には色々の仕草があるがつゞめて言へば、事に処すると、物に接するとの二ツになる、事に処すると云ふは、其処に生じて来た或る事情に対して、如何云ふ様に自分の態度を執るか、了見を定める …
読書目安時間:約6分
人間には色々の仕草があるがつゞめて言へば、事に処すると、物に接するとの二ツになる、事に処すると云ふは、其処に生じて来た或る事情に対して、如何云ふ様に自分の態度を執るか、了見を定める …
少年時代(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
私は慶応三年七月、父は二十七歳、母は二十五歳の時に神田の新屋敷というところに生まれたそうです。其頃は家もまだ盛んに暮して居た時分で、畳数の七十余畳もあったそうです。併し世の中が変ろ …
読書目安時間:約15分
私は慶応三年七月、父は二十七歳、母は二十五歳の時に神田の新屋敷というところに生まれたそうです。其頃は家もまだ盛んに暮して居た時分で、畳数の七十余畳もあったそうです。併し世の中が変ろ …
菖蒲湯(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
五月といつても陽暦と陰暦とでは一月ほど差がある。しかし五月といへば、たとへそれが今のは昔のの四月に当るにしても、木の芽は張りきれ、土の膏はうるほひ溢れ、天の色はあたゝかみと輝きとを …
読書目安時間:約1分
五月といつても陽暦と陰暦とでは一月ほど差がある。しかし五月といへば、たとへそれが今のは昔のの四月に当るにしても、木の芽は張りきれ、土の膏はうるほひ溢れ、天の色はあたゝかみと輝きとを …
震は亨る(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
震は亨る。何をか悪まむやである。彖伝には、震来つて※〻たりとは、恐るれば福を致すなりとある。恐るれば福を致し、或は侮り、或は亢れば災を致すのは、何事に於ても必ず然様有る可き道理であ …
読書目安時間:約5分
震は亨る。何をか悪まむやである。彖伝には、震来つて※〻たりとは、恐るれば福を致すなりとある。恐るれば福を致し、或は侮り、或は亢れば災を致すのは、何事に於ても必ず然様有る可き道理であ …
平将門(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間18分
千鍾の酒も少く、一句の言も多いといふことがある。受授が情を異にし啐啄が機に違へば、何も彼もおもしろく無くつて、其れも是もまづいことになる。だから大抵の事は黙つてゐるに越したことは無 …
読書目安時間:約1時間18分
千鍾の酒も少く、一句の言も多いといふことがある。受授が情を異にし啐啄が機に違へば、何も彼もおもしろく無くつて、其れも是もまづいことになる。だから大抵の事は黙つてゐるに越したことは無 …
太郎坊(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
見るさえまばゆかった雲の峰は風に吹き崩されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の傾くに連れてさすがに凌ぎよくなる。やがて五日頃の月は葉桜の繁みから薄く光って見える、そ …
読書目安時間:約16分
見るさえまばゆかった雲の峰は風に吹き崩されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の傾くに連れてさすがに凌ぎよくなる。やがて五日頃の月は葉桜の繁みから薄く光って見える、そ …
知々夫紀行(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
八月六日、知々夫の郡へと心ざして立出ず。年月隅田の川のほとりに住めるものから、いつぞはこの川の出ずるところをも究め、武蔵禰乃乎美禰と古の人の詠みけんあたりの山々をも見んなど思いしこ …
読書目安時間:約32分
八月六日、知々夫の郡へと心ざして立出ず。年月隅田の川のほとりに住めるものから、いつぞはこの川の出ずるところをも究め、武蔵禰乃乎美禰と古の人の詠みけんあたりの山々をも見んなど思いしこ …
道教に就いて(旧字旧仮名)
読書目安時間:約55分
道教は支那に於て儒教と佛教と共に鼎立の勢を爲してゐる一大教系であり、其分派も少からず、又其教義も少しづゝの異を有して居り、草率に其の如何なるものであるかを説き、且つ之を評論すること …
読書目安時間:約55分
道教は支那に於て儒教と佛教と共に鼎立の勢を爲してゐる一大教系であり、其分派も少からず、又其教義も少しづゝの異を有して居り、草率に其の如何なるものであるかを説き、且つ之を評論すること …
東西伊呂波短歌評釈(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
東京と西京とは、飲食住居より言語風俗に至るまで、今猶頗る相異なるものあり。それも、やがては同じきに帰す可けれど、こゝしばらくは互に移らざらむ歟。そは兎まれ角まれ、小児の年の初に用ゐ …
読書目安時間:約10分
東京と西京とは、飲食住居より言語風俗に至るまで、今猶頗る相異なるものあり。それも、やがては同じきに帰す可けれど、こゝしばらくは互に移らざらむ歟。そは兎まれ角まれ、小児の年の初に用ゐ …
突貫紀行(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
身には疾あり、胸には愁あり、悪因縁は逐えども去らず、未来に楽しき到着点の認めらるるなく、目前に痛き刺激物あり、慾あれども銭なく、望みあれども縁遠し、よし突貫してこの逆境を出でむと決 …
読書目安時間:約16分
身には疾あり、胸には愁あり、悪因縁は逐えども去らず、未来に楽しき到着点の認めらるるなく、目前に痛き刺激物あり、慾あれども銭なく、望みあれども縁遠し、よし突貫してこの逆境を出でむと決 …
努力論(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5時間30分
努力は一である。併し之を察すれば、おのづからにして二種あるを觀る。一は直接の努力で、他の一は間接の努力である。間接の努力は準備の努力で、基礎となり源泉となるものである。直接の努力は …
読書目安時間:約5時間30分
努力は一である。併し之を察すれば、おのづからにして二種あるを觀る。一は直接の努力で、他の一は間接の努力である。間接の努力は準備の努力で、基礎となり源泉となるものである。直接の努力は …
ねじくり博士(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
当世の大博士にねじくり先生というがあり。中々の豪傑、古今東西の書を読みつくして大悟したる大哲学者と皆人恐れ入りて閉口せり。一日某新聞社員と名刺に肩書のある男尋ね来り、室に入りて挨拶 …
読書目安時間:約14分
当世の大博士にねじくり先生というがあり。中々の豪傑、古今東西の書を読みつくして大悟したる大哲学者と皆人恐れ入りて閉口せり。一日某新聞社員と名刺に肩書のある男尋ね来り、室に入りて挨拶 …
野道(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
流鶯啼破す一簾の春。書斎に籠っていても春は分明に人の心の扉を排いて入込むほどになった。 郵便脚夫にも燕や蝶に春の来ると同じく春は来たのであろう。郵便という声も陽気に軽やかに、幾個か …
読書目安時間:約10分
流鶯啼破す一簾の春。書斎に籠っていても春は分明に人の心の扉を排いて入込むほどになった。 郵便脚夫にも燕や蝶に春の来ると同じく春は来たのであろう。郵便という声も陽気に軽やかに、幾個か …
馬琴の小説とその当時の実社会(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
皆さん。浅学不才な私如き者が、皆さんから一場の講演をせよとの御求めを受けましたのは、実に私の光栄とするところでござります。しかし私は至って無器用な者でありまして、有益でもあり、かつ …
読書目安時間:約16分
皆さん。浅学不才な私如き者が、皆さんから一場の講演をせよとの御求めを受けましたのは、実に私の光栄とするところでござります。しかし私は至って無器用な者でありまして、有益でもあり、かつ …
花のいろ/\(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
梅 梅は野にありても山にありても、小川のほとりにありても荒磯の隈にありても、たゞおのれの花の美しく香の清きのみならず、あたりのさまをさへ床しきかたに見さするものなり。崩れたる土塀、 …
読書目安時間:約27分
梅 梅は野にありても山にありても、小川のほとりにありても荒磯の隈にありても、たゞおのれの花の美しく香の清きのみならず、あたりのさまをさへ床しきかたに見さするものなり。崩れたる土塀、 …
貧富幸不幸(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
もしそれ真の意味に於て言を為せば、貧と富とは幸福と不幸福とに対して相即くところは無い。貧でも幸福であり得、また不幸福であり得、富でも不幸福で有り得、また幸福で有り得るからで有る。し …
読書目安時間:約12分
もしそれ真の意味に於て言を為せば、貧と富とは幸福と不幸福とに対して相即くところは無い。貧でも幸福であり得、また不幸福であり得、富でも不幸福で有り得、また幸福で有り得るからで有る。し …
貧乏(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
「アア詰らねえ、こう何もかもぐりはまになった日にゃあ、おれほどのものでもどうもならねえッ。いめえましい、酒でも喫ってやれか。オイ、おとま、一升ばかり取って来な。コウㇳ、もう煮奴も悪 …
読書目安時間:約17分
「アア詰らねえ、こう何もかもぐりはまになった日にゃあ、おれほどのものでもどうもならねえッ。いめえましい、酒でも喫ってやれか。オイ、おとま、一升ばかり取って来な。コウㇳ、もう煮奴も悪 …
風流仏(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間5分
三尊四天王十二童子十六羅漢さては五百羅漢、までを胸中に蔵めて鉈小刀に彫り浮かべる腕前に、運慶も知らぬ人は讃歎すれども鳥仏師知る身の心耻かしく、其道に志す事深きにつけておのが業の足ら …
読書目安時間:約1時間5分
三尊四天王十二童子十六羅漢さては五百羅漢、までを胸中に蔵めて鉈小刀に彫り浮かべる腕前に、運慶も知らぬ人は讃歎すれども鳥仏師知る身の心耻かしく、其道に志す事深きにつけておのが業の足ら …
二日物語(新字旧仮名)
読書目安時間:約38分
此一日 其一 観見世間是滅法、欲求無尽涅槃処、怨親已作平等心、世間不行慾等事、随依山林及樹下、或復塚間露地居、捨於一切諸有為、諦観真如乞食活、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。実に往時は …
読書目安時間:約38分
此一日 其一 観見世間是滅法、欲求無尽涅槃処、怨親已作平等心、世間不行慾等事、随依山林及樹下、或復塚間露地居、捨於一切諸有為、諦観真如乞食活、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。実に往時は …
墨子(旧字旧仮名)
読書目安時間:約41分
墨子は周秦の間に於て孔子老子の學派に對峙した鬱然たる一大學派の創始者である。 墨子の學の大に一時に勢力のあつたことは孔子系の孟子荀子等が之を駁撃してゐるのでも明白で、輕視して置けぬ …
読書目安時間:約41分
墨子は周秦の間に於て孔子老子の學派に對峙した鬱然たる一大學派の創始者である。 墨子の學の大に一時に勢力のあつたことは孔子系の孟子荀子等が之を駁撃してゐるのでも明白で、輕視して置けぬ …
穂高岳(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
山岳の秀美や荘厳を受取って吾が心霊の怡悦と満足とを覚える場合はおのずから二つある。一つは自分が歩きながらに絶えず変化して吾が眼前に展開し行く奇岩や峭壁や、高い嶺の雲や近い渓の水や、 …
読書目安時間:約3分
山岳の秀美や荘厳を受取って吾が心霊の怡悦と満足とを覚える場合はおのずから二つある。一つは自分が歩きながらに絶えず変化して吾が眼前に展開し行く奇岩や峭壁や、高い嶺の雲や近い渓の水や、 …
魔法修行者(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
魔法。 魔法とは、まあ何という笑わしい言葉であろう。 しかし如何なる国の何時の代にも、魔法というようなことは人の心の中に存在した。そしてあるいは今でも存在しているかも知れない。 埃 …
読書目安時間:約33分
魔法。 魔法とは、まあ何という笑わしい言葉であろう。 しかし如何なる国の何時の代にも、魔法というようなことは人の心の中に存在した。そしてあるいは今でも存在しているかも知れない。 埃 …
水(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
一切の味は水を藉らざれば其の味を発する能はず。人若し口の渇くこと甚しくして舌の燥くこと急なれば、熊の掌も魚の腴も、それ何かあらん。味は唾液の之を解き之を親ましむるによつて人の感ずる …
読書目安時間:約4分
一切の味は水を藉らざれば其の味を発する能はず。人若し口の渇くこと甚しくして舌の燥くこと急なれば、熊の掌も魚の腴も、それ何かあらん。味は唾液の之を解き之を親ましむるによつて人の感ずる …
水の東京(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
上野の春の花の賑ひ、王子の秋の紅葉の盛り、陸の東京のおもしろさは説く人多き習ひなれば、今さらおのれは言はでもあらなん。たゞ水の東京に至つては、知るもの言はず、言ふもの知らず、江戸の …
読書目安時間:約27分
上野の春の花の賑ひ、王子の秋の紅葉の盛り、陸の東京のおもしろさは説く人多き習ひなれば、今さらおのれは言はでもあらなん。たゞ水の東京に至つては、知るもの言はず、言ふもの知らず、江戸の …
名工出世譚(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
時は明治四年、処は日本の中央、出船入船賑やかな大阪は高津のほとりに、釜貞と云へば土地で唯一軒の鉄瓶の仕上師として知られた家であつた。主人は京都の浄雪の門から出た昔気質の職人肌、頑固 …
読書目安時間:約7分
時は明治四年、処は日本の中央、出船入船賑やかな大阪は高津のほとりに、釜貞と云へば土地で唯一軒の鉄瓶の仕上師として知られた家であつた。主人は京都の浄雪の門から出た昔気質の職人肌、頑固 …
雪たたき(新字新仮名)
読書目安時間:約57分
鳥が其巣を焚かれ、獣が其窟をくつがえされた時は何様なる。 悲しい声も能くは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥は篠むらや草むらに首を突込み、ただ暁の天を切ない心に待焦るるであ …
読書目安時間:約57分
鳥が其巣を焚かれ、獣が其窟をくつがえされた時は何様なる。 悲しい声も能くは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥は篠むらや草むらに首を突込み、ただ暁の天を切ない心に待焦るるであ …
夜の隅田川(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
夜の隅田川の事を話せと云ったって、別に珍らしいことはない、唯闇黒というばかりだ。しかし千住から吾妻橋、厩橋、両国から大橋、永代と下って行くと仮定すると、随分夜中に川へ出て漁猟をして …
読書目安時間:約5分
夜の隅田川の事を話せと云ったって、別に珍らしいことはない、唯闇黒というばかりだ。しかし千住から吾妻橋、厩橋、両国から大橋、永代と下って行くと仮定すると、随分夜中に川へ出て漁猟をして …
旅行の今昔(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
旅行に就いて何か経験上の談話をしろと仰ゃるのですか。 どう致しまして。碌に旅行という程の旅行を仕た事も無いのですもの、御談し仕度くっても是といって御談し申上げるような事も有りません …
読書目安時間:約5分
旅行に就いて何か経験上の談話をしろと仰ゃるのですか。 どう致しまして。碌に旅行という程の旅行を仕た事も無いのですもの、御談し仕度くっても是といって御談し申上げるような事も有りません …
連環記(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間39分
慶滋保胤は賀茂忠行の第二子として生れた。兄の保憲は累代の家の業を嗣いで、陰陽博士、天文博士となり、賀茂氏の宗として、其系図に輝いている。保胤はこれに譲ったというのでもあるまいが、自 …
読書目安時間:約1時間39分
慶滋保胤は賀茂忠行の第二子として生れた。兄の保憲は累代の家の業を嗣いで、陰陽博士、天文博士となり、賀茂氏の宗として、其系図に輝いている。保胤はこれに譲ったというのでもあるまいが、自 …
蘆声(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
今を距ること三十余年も前の事であった。 今において回顧すれば、その頃の自分は十二分の幸福というほどではなくとも、少くも安康の生活に浸って、朝夕を心にかかる雲もなくすがすがしく送って …
読書目安時間:約21分
今を距ること三十余年も前の事であった。 今において回顧すれば、その頃の自分は十二分の幸福というほどではなくとも、少くも安康の生活に浸って、朝夕を心にかかる雲もなくすがすがしく送って …
“幸田露伴”について
幸田 露伴(こうだ ろはん、1867年8月22日(慶応3年7月23日) - 1947年(昭和22年)7月30日)は、日本の小説家、考証家。本名は成行(しげゆき)。別号に蝸牛庵(かぎゅうあん)、笹のつゆ、雷音洞主、脱天子など多数。江戸(現東京都)下谷生れ。帝国学士院会員。帝国芸術院会員。第1回文化勲章受章。娘の幸田文も随筆家・小説家。高木卓の伯父。
『風流仏』で評価され『五重塔』『運命』などの文語体作品で文壇での地位を確立。尾崎紅葉とともに紅露時代と呼ばれる時代を築いた。擬古典主義の代表的作家で、また漢文学、日本古典や諸宗教にも通じ、多くの随筆や史伝のほか『芭蕉七部集評釈』などの古典研究などを残した。旧来「露伴、漱石、鷗外」と並び称され、日本の近代文学を代表する作家の一人である。
(出典:Wikipedia)
『風流仏』で評価され『五重塔』『運命』などの文語体作品で文壇での地位を確立。尾崎紅葉とともに紅露時代と呼ばれる時代を築いた。擬古典主義の代表的作家で、また漢文学、日本古典や諸宗教にも通じ、多くの随筆や史伝のほか『芭蕉七部集評釈』などの古典研究などを残した。旧来「露伴、漱石、鷗外」と並び称され、日本の近代文学を代表する作家の一人である。
(出典:Wikipedia)
“幸田露伴”と年代が近い著者
きょうが誕生日(11月6日)
鮎川義介(1880年)
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)