“情”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
なさけ46.4%
じょう16.0%
なさ10.8%
じやう6.5%
こころ5.8%
つれ4.9%
すげ3.6%
こゝろ2.1%
なつか0.6%
ぜう0.5%
(他:17)2.8%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「やれやれ、何てことだろう。」と母が叫んだ。「このうちにゃ何てなさけないことになったものだろう! それにお父さんは御病気だしねえ!」
二の烏 恋も風、無情も風、なさけつゆ生命いのちも露、別るゝもすすき、招くも薄、泣くも虫、歌ふも虫、跡は野原だ、勝手に成れ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「屑屋? 誰が、こうなさけねえ、人間さがりたくねえもんだ。こんななりはしてるがね、私あこれでも床屋ですぜ、屑屋はひどい、」といった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思い内に有れば色外にあらわれて、ジロリ、とたがいに横眼で見合いながら、ニヤリと笑うじょうと云うものは、なんとも申されません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たとい教えのある人でも、どうせ死ななくてはならぬものなら、あの苦しみを長くさせておかずに、早く死なせてやりたいというじょうは必ず起こる。
高瀬舟縁起 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
慎まなければならんのだが、其の慎みが出来んという程惚れたせつなるじょうを話すのだが、己は何も御新造ごしんぞのある身の上でないから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
桑名でああいう援護えんごをうけて、またまた、この御岳みたけでも、同じ五三のきりまくのかげに、武士ぶしなさけをうけようとは。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんという、なさけのふかうただろう。天国てんごくにも、これよりとうとうたいたことはない。」と、おもいました。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ、こうしてあるいていて、ありがたくも、うれしくも、またかなしくもしみじみとかんずるのは、ひとなさけであるとおもいました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しなんだといふことを意識いしきしたとき勘次かんじもおつぎもみんなこらへたじやうが一激發げきはつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
をとこ自分じぶんのかたる浄瑠璃じやうるりに、さもじやうがうつったやうな身振みぶりをして人形にんぎやうをつかつてゐました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あは手向てむけはなに千ねんのちぎり萬年まんねんじやうをつくして、れにみさをはひとりずみ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この時ふなばたに立ちてこの歌をうたうわがこころを君知りたもうや、げにりくを卑しみ海をおそれぬものならではいかでこのこころを知らんや
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
特に彼が典型と認める中古の物語は、「の人の情とははるかにまさりて」、「こよなくあはれ深き」、「みやびやかなるこころ」のかぎりを写している
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
やがて胸はその花のごとく燃ゆるをおぼえ、こころはかの帆影の星のごとくただよふをわかざらむとす、そは佐用姫さよひめの古事を憶ひいづればなり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そんな熾烈しれつな望みはおろか会わない間の辛さ、世路せろにまよう身のかなしさ、武蔵のつれないこと——なに一つとしていえないのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相手があくまでもつれないほど、師直の恋はいよいよ募って、色黒く骨たくましい坂東武者もこの頃は恋い死なぬばかりに思いわずろうている。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
同じ世に在りながら、斯かるあでやかなる上﨟の樣を變へ、思ひじにするまでにつれなかりし男こそ、世に罪深つみふかき人なれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
こうしたなまぬるい恋ばなしを好まない頼長も、この美麗な才女に対してあまりにすげない返事も出来ないので、いい加減に取り合わせて言った。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここらに住むものは彰義隊の同情者で、上野から落ちて来たといえば、相当の世話をしてくれると思っていたのに、彼はすげなく断るのである。
夢のお七 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
伊「いゝとこがありますぜ、東京こちらから遠くはありませんがね、わしが行って頼んだらすげなくも断るまいと思うんで、あれなら大丈夫だろう」
常におもふ、志を行はんとするものは必らずしも終生を労役するに及ばず。詩壇の正直男(ゴールドスミス)このこゝろを賦して言へることあり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ういふ言葉の中には、真に自身の老大を悲むといふこゝろが表れて、創意のあるものをむやうな悪い癖は少許すこしも見えなかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
養はれたる恩義の桎梏かせこゝろげて自ら苦み、猶其上に道理無き呵責かしやくを受くる憫然あはれさを君は何とか見そなはす
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
過ぎ去つた事などを想ふのは元気のなきことゝ云はれもしやうが、一年の間に遠くに離れ合つて仕舞つた友達のことを思ひ出さずには居られない、何と云つても友達程なつかしいものはない、我儘な、殊に我儘な自分の喜びや悲しみをほんとうに聞いて呉れるのは友達より他にない
〔編輯余話〕 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
……披々披々ひらひらひらひら、……「オヤ、いつの間にか春が訪れたのか。」と、私は思つて、明るい灯火に照し出された銀座通りの柳の葉を、あふるゝばかりのなつかしみの心で窺ひながら、……それもつい一日前の灯ともし頃であつた、——私は、活溌に歩いて居りました。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
たゞ暗誦的にいろんな唄を覚えるといふことよりも、その詩の作者の名前や伝記に就いての多少の知識を得た後に、その人の詩に接して見るとそれに一層暖みのある興味となつかしみを感ずることが出来ましたから、艶子はせめて詩人の名前だけでも沢山覚えたいと、よくレオナさんに云ひました。
駒鳥の胸 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
化物ばけもの想像さうざうすることにあらずしてぜうである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
記憶きおく辿たどれば、久保田さんのはわたしも二三一緒に行つた事のある、あさ草の十二かいしよの球突塲つきば背景はいけいにしたもので、そこに久保田さん獨特どくとく義理ぎりぜう世界せかいを扱つてあつたやうにおもふ。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
またたとへば、父母ふぼはととさま、ははさまんですこしもつかへなきのみならず、かへつ恩愛おんあいぜうこもるのに、なにくるしんでかパパさま、ママさまと、歐米おうべい模倣もはうさせてゐるものが往々わう/\ある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
二人の顔にはうれいのいろがハッキリと現われているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
美「あら何うもいろが出る、いやな油だ事よ」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「つい自分ばかりしゃべっていましたが、いまこそです。さあ久濶きゅうかつおもいをお遂げなされませ」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別れたる、離れたる親子、兄弟、夫婦、朋友、恋人の仲間あいだの、逢いたきおもいとは全然まるちがっている、「縁あらばこの世で今一度会いたい」との願いの深い哀しみは常に大友の心に潜んでいたのである。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おもひは長く髪は短し、わが想ひに比ぶれば、この黒髪のなんぞ短き、である。
従軍五十日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
何を憚りてか自らこゝろを抑へおもひを屈めん、妄執と笑はば笑へ、妄執を生命としてわれは活き、煩悩と云はば云へ、煩悩を筋骨として朕は立つ、おろかや汝、四弘誓願しぐせいぐわんは菩薩の妄執、五時説教は仏陀の煩悩、法蔵が妄執四十八願
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
少焉しばし泣きたりし女の声はやうやく鎮りて、又湿しめがちにも語りめしが、一たびじようの為に激せし声音は、おのづから始よりは高く響けり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その犯後はんごいかなる思想しそういだくやらんとこゝろもちひて推測おしはか精微せいびじよううつして己が才力を著はさんとするのみと。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
おのれ、利を見て愛無かりし匹婦ひつぷ、憎しとも憎しと思はざるにあらぬ荒尾も、当面に彼の悔悟の切なるを見ては、さすがにじようは動くなりき。宮は際無はてしなく顔を得挙えあげずゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
愍然想リンギヨギヤつてくれせや」と磯藻の様になづさひ寄る濃いナサケに、欠伸を忘れる暇もあつた。
雪の島:熊本利平氏に寄す (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
其の鮎の獲れる場処と言ふのは、国頭クニガミ海道の難処、源河の里の水辺である。里の処女の姿や、ナサケを謡ふ事が命の琉球の民謡には、村の若者のとりとめぬやるせなさの沁み出たものが多い。
若水の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
俺なども、その片隅に席を与えられた一分子かと思えば、空恐ろしいまでの幸福と尊厳を自覚させられて、あらゆる憂苦もさらりと忘れ去り、ひたすら造物者への感謝のこころ、崇敬のおもいに、身をふるわすばかりだ。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
なみだとどめあへぬはおろかじゃう自然しぜんなれども、理性りせいまなこからは笑草わらひぐさでござるぞよ。
乳母うばめに、じゃうえてゐたら、わかあたゝかいがあったら、テニスのたまのやうに、わし吩咐いひつくるやいな戀人こひゞととこんでき、また戀人こひゞと返辭へんじともわし手元てもと飛返とびかへってつらうもの。
是よりいたして雨の降るも風の夜も、首尾を合図におわかの計らい、通える数も積りつゝ、今はたがいに棄てかねて、其のなかうるしにかわの如くなり。
ねたやうな、けんどんなやうな、おもしろくないことばをおかけであるのを、いつでもなさけないとおもひ/\してたのをかんがして
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
といわれたということが、新聞にも出ていたが、その水晶の数珠は、かつて、武子さんが、御生母へあげたものだということから、その数珠には、母子だけしか知らない温かいものこもっているかもしれないと、思うことだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
取って五十、江戸一番のわけ知りで、遊びも派手なら商売も派手、芸人や腕のある職人を可愛がって、四方八方から受けのいい万兵衛が、場所もあろうに、自分の家の風呂場で、顔を洗ったばかりのところを、剃刀かみそりで右の頸筋くびすじを深々と切られ、凄まじい血の中に崩折れて死んでいたのです。
詩人若し談理の弊に陥れば、其詩は即ち索然として活気を失はざるを得ず、何となれば是れ既にハートの声に非ずしてマインドの声なれば也。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)