“なか”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ナカ
語句割合
39.8%
13.1%
8.2%
7.4%
5.9%
内部4.1%
3.6%
2.2%
2.1%
吉原1.5%
那珂0.9%
0.8%
0.7%
家内0.7%
室内0.6%
0.6%
交情0.6%
0.6%
0.6%
中央0.6%
0.4%
0.4%
屋内0.3%
廓内0.2%
仲町0.2%
情交0.2%
内容0.2%
那賀0.2%
中間0.2%
北廓0.2%
0.1%
中心0.1%
0.1%
監獄0.1%
中部0.1%
0.1%
内側0.1%
場内0.1%
0.1%
新吉原0.1%
0.1%
背中0.1%
邸内0.1%
関係0.1%
奈加0.0%
仲裁0.0%
獄中0.0%
〻中0.0%
中旬0.0%
中期0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
内核0.0%
内陣0.0%
区内0.0%
名香0.0%
0.0%
境内0.0%
0.0%
室中0.0%
家中0.0%
帳内0.0%
0.0%
0.0%
戸内0.0%
昼中0.0%
0.0%
書中0.0%
0.0%
0.0%
稼業0.0%
空気0.0%
胎内0.0%
0.0%
車内0.0%
部屋0.0%
門内0.0%
間柄0.0%
院内0.0%
0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ゆきなか紅鯛べにだひ綺麗きれいなり。のお買初かひぞめの、ゆき眞夜中まよなか、うつくしきに、新版しんぱん繪草紙ゑざうしはゝつてもらひしうれしさ、わすがたし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しからず、親に苦労を掛ける。……そのくせ、他愛たわいのないもので、陽気がよくて、おなかがくちいと、うとうととなって居睡いねむりをする。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまりなかばねたみ心から、若者の一挙一動を、ラッパを吹きながら正面を切った、その眼界の及ぶ限り、わば見張っていたのである。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
父親ちちおや相当そうとうたか地位ちい大宮人おおみやびとで、狭間信之はざまのぶゆき母親ははおやはたしか光代みつよ、そして雛子ひなこ夫婦ふうふなか一粒種ひとつぶだねのいとしだったのでした。
われを君があだおぼし給ふなかれ、われは君のいづこにいますかをわきまへず、また見ず、また知らず、たゞこの涙にるゝおもてを君の方に向けたり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
硝子の窓から内部なかのぞいてみると、底にはふくよかな脱脂綿だっしめんしとねがあって、その上に茶っぽい硝子くずのようなものが散らばっている。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
成程左様さう言はれて見ると、少許すこしも人をおそれない。白昼ひるまですら出てあすんで居る。はゝゝゝゝ、寺のなか光景けしきは違つたものだと思つたよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
次第に黒くなりまさるうるしの如き公園の樹立こだちなかに言ふべからざる森厳しんげんの趣を呈し候、いまにも雨降り候やうなれば、人さきに立帰り申候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
室から室を忍び歩く足の感じと時折照す懐中電燈の光だけで、スパイダーはうちの中の様子をあらまし頭のなかにたたみ込んだ。
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吉原なかで鳴らした藝者の小稻、去年の秋宗次郎に捨てられ、氣が狂つて自分の子を殺して、自分も身を投げて死んだことは御聞きでせう
海に河童のいる話は、この明石のカワカムロと、もう一つ常陸の那珂なかの港の海で河童をとった話が『善庵随筆』に書いてある。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わたしは平生文学を志すものに向って西洋紙と万年筆とを用うることなかれと説くのは、廃物利用の法を知らしむる老婆心に他ならぬのである。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それくらいなこと誰でも分りきっていることのようで、実はなかなか琵琶の横木ほども、おなかに据えていられないのが人間でございますまいか。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
警官達は一斉に背戸口から家内なかへ這入ろうとした。すると、却って背戸口を、家内の方から押し開けて、背戸畑へ出た男がある。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、いった闇太郎、室内なかにはいって火鉢を掻きたてて、付木に火をうつすと、すぐに行灯あんどんがともされた。ぱあっと上りはなの一間があかるくなる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
懸賞百兩ときいて其日から河にどぶん/\とび込む者が日に幾十人なんじふにんさながらの水泳場すゐえいぢやう現出げんしゆつしたが何人だれも百兩にありくものはなかつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こう云うたかて、多一さんと貴女あんたとは、前世から約束したほど、深い交情なかでおいでる様子。今更ではあるまいけれど、私とは不思議な御縁やな。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遣ってくれと言うから、なかいて来たのに不思議はありますまいとすましたもんです。議論をしたっておッつかない。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不等辺三角形をしたその国のなかほどのところを、青ペンキ色に塗られたダニューブの河が流れている。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
目をつぶって腕組みした白髪童顔の玄鶯院を中央なかに、十五、六の人影が、有明ありあけ行燈の灯をはさんで静まり返っていた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
グアルテロッティもイムポルトゥーニも既に榮えき、もし彼等に新なる隣人となりびとなかりせば、ボルゴは今愈〻よ靜なりしならむ 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
なかんでもえ、最早もう乃父おれも問わんから、サア奥へ帰るがえ、』とやさしく言ったその言葉は少ないが、慈愛にみちて居たのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
家のめえには、この長屋に用もありそうのねえ、りっぱな駕籠が、止まっているし、屋内なかにはまた、抹香まっこうくせえお談議が始まっていらア。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「中屋貫三郎の請出した誰袖たがそで華魁なんかは豪勢ですぜ、千兩箱を杉なりに積んで請け出し、廓内なかから馬喰町四丁目まで、八文字を踏んで乘込んだ」
「少し凉し過ぎるが、良い日和ぢやありませんか。これから直ぐ正燈寺へのして、刷毛序はけついで仲町なかを覗きたいくらゐのもので」
もと居たまちの方では、誰も知らないもののない壮太郎との情交なかが、鉱山やまの人達の口から、薄々旦那の耳へも伝わってから、金の受渡しが一層やかましくなって
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
江戸川乱歩えどがわらんぽさんの有名な小説に『陰獣いんじゅう』というのがありますが、あの内容なか紳商しんしょう小山田夫人おやまだふじん静子しずこが、平田ひらた一郎という男から脅迫状きょうはくじょうを毎日のように受けとる件があります。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
柿本人麿が石見いわみの国から妻に別れて上京する時詠んだものである。当時人麿は石見の国府(今の那賀なか下府上府しもこうかみこう)にいたもののようである。妻はその近くのつぬさと(今の都濃津つのつ附近)にいた。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひとりいふ、クリストの受難の時は、月退しざりて中間なかへだてしため、日の光地に達せざりきと 九七—九九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
北と言えばさしずめ北廓なかだが、手前と銭は敵同士、やっぱり山谷の伯父貴の家でお膳の向うで長談義にしびれを切らしたとしか思えねえじゃねえか、え、こう、勘。
もしおなかの子供に傷でもついたら、どうなさいます? 姙娠中は転んでも危険だというじゃありませんか。
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
闇太郎と菊之丞——名乗り合ったことはないが、以心伝心、雪之丞を中心なかにしてもうとうに、其の底まで読み合っている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
今迄いままで宗助そうすけこゝろえいじた御米およねは、いろおと撩亂れうらんするなかつてさへ、きはめていてゐた。さうしてそのきの大部分だいぶぶん矢鱈やたらうごかさないはたらきからたとしかおもはれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
監獄なかにいるお前に「お守り」を送ることをするようなお前の母は、冬がくると(この寒い冬なのに)家中のものに、二枚の蒲団を一枚にさせ、厚い蒲団を薄い蒲団にさせた。
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
零落れいらくし果てた青年が、冬空に、浴衣ゆかたを引ッ張って、親、兄弟の家に、そっと裏口から、合力を受けようと忍び寄って、中部なかの歓語にはいりかねていたその折、合壁がっぺきから、泥棒よばわりを
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ソノはぎハナハダ白カリシカバたちまチニ染著せんぢやくノ心ヲ生ジテ即時ニ堕落シケリ、ソレヨリやうやク煙火ノ物ヲ食シテ鹿域ろくゐきなか立却たちかへレリ
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
厳重にざされた戸口の扉が、その時忽然こつぜん内側なかから開き、長い廊下が現われた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
歩いて行く両側は賭場ばかりで、場内なかからは景気のよい人声などが聞こえて来た。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
巧雲は茶碗を受けて天目台に乗せ、わんふちを白絹で拭いた。そして、如海にょかいへささげ出すと、如海の指と女の白い指とが、碗をなかだちにして触れあった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この夏、新吉原なかの女郎の心中はよく売れたそうじゃありませんか、二人とも死んだことになってるが、女郎のほうはまだぴんぴんしているし、あの瓦版のおかげで、たいそうはやってるそうですからね」
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たつ一は、よろこんで、徳蔵とくぞうさんの背中なかにつかまって、荷掛にかけにこしをかけ、あしをぶらんとげました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
? 何いってやんでえ、俺はな、いま邸内なかへへえって用人にも殿様にも会って来たんだ。これが饗庭の屋敷でねえなんて、ぼやぼやするねえ。手前はなんだな、夢でも見ていやがるんだろう。つら
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
朝から晩まで戸外そとに居るが、その後妻のお兼とお柳との関係なかが兎角面白くないので、同じ家に居ながらも、信之親子と祖父母や其子等(信之には兄弟なのだが)とは、宛然さながら他人の様に疎々うとうとしい。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「——お奈加なか、お奈加。なにをまた日吉とわめき合うているのだっ。見ッともない。自分の子といさかって、泣いているたわけがあるか」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、誰かと思ったら、中村のお奈加なかさんの息子だね。お前さんも、そんなに自分の子みたいに怒鳴ってみたって、仕方がないじゃありませんか。——可哀そうに」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山界やまざかいの争い事から其の浪人者が仲裁なかに入り、掛合かけあいに来ましたのをはずかしめて帰した事があります、其の争いに先方さき山主やまぬしが負けたので、礼も貰えぬ所から、それを遺恨に思いまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大藏は織江を存じておりますから喧嘩の仲裁なかへ入りました事でございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この一月程、一回の音信もせず、面会にも差入にも行かなかった松枝に対して「獄中なか」では可なり焦燥を感じているらしかった。
鋳物工場 (新字新仮名) / 戸田豊子(著)
今の松枝がどういう気持で仕事をしているかということを「獄中なか」へ言ってやらなくてはならない、そういう手紙が多分握り潰されるだろうことがわかっているにしても。
鋳物工場 (新字新仮名) / 戸田豊子(著)
石鹸しやぼん氣取きどりたるもふめり、おぬひは桂次けいじ未來みらいつまにとおくりもの〻中なか薄藤色うすふぢいろ繻袢じゆばんゑりしろぬきの牡丹花ぼたんくわかたあるをやりけるに、これをながめしとき桂次けいじかほ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山林の夏出しに馬をやはり持って行っていたもの……それ等が九月中旬なか過ぎると、みんな帰ってきた。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
室町の世の初期はじめごろには、御所の直轄ちょっかつで、紺灰座奉行こんぱいざぶぎょうをやっておりましたが、中期なか頃から民営になりまして、紺灰座問屋というのが、この京都に三軒とか許されていたものだそうです。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
詮ずるに自他の悲しみを此胸一つに收め置いて、なからん後の世まで知る人もなき身の果敢はかなさ、今更いまさら是非もなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
休道詩人無艶分 なか詩人しじん艶分えんぶんしと
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
お庄はそのなかへ割り込んで行くことも出来なかったが、そのままそこを出る気にもなれなかった。幾度も声をかけようとしたが、咽喉のどかわきついているようで、声も出なかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「いや、この大陸のずうっと内核なかへゆきたいんだ。コンゴのイツーリからずうっと北へ——僕は、未踏地帯テラ・インコグニタにゆく」
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
茶話記者がある時大和の久米寺くめでらまゐつたことがあつた。本堂の蔀格子しとみがうしにつかまつて内陣なかを覗き込むでゐると、後ろから
要害といえばこれだけで区内なかに三つの曲輪くるわがあって、東曲輪、西曲輪、中曲輪と称されていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
音讀して美しい字面をめて日光山となつたのは、たとへば赤倉温泉のなかたけ名香なかたけの字で填められ、名香みやうかうを音讀して妙高山となり、今日こんにちでは妙高山で通るやうになつたと同じである。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
はたうつや鳥さへなか山蔭やまかげ
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
赤城神社あかぎさま境内なかに阪東三江八ってお踊の師匠さんがあってね、赤城さまへ遊びにゆくと、三江八さんのところの格子こうしにつかまってのぞいてばかりいたのさ。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かう降りつづいては、汽船のなかでも垂れこめて——
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
室中なかで議論をしていましたか?」
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老臣おとなは、しぶりながらも、家中なかへはいって行った。闇太郎は、あたりを眺めまわすように
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
帳内なかで灯っている燈の光で、橙黄色だいだいいろに見える紙帳が、武士の姿を朦朧もうろうと、その紙面おもてへ映し、暗い部屋の中に懸かっている。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
前様めえさまの顔を一日見ねえば、なから百日も見ねえようでがんすよ……見ねえようでがんすよはおかしいナ……それに親父おやじが婿を取れと云いやんすから、厭でなりやしねえよ、明日あす日待ひまちだから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
是よりいたして雨の降るも風の夜も、首尾を合図におわかの計らい、通える数も積りつゝ、今はたがいに棄てかねて、其のなかうるしにかわの如くなり。
まつたく貧乏なんですよ。市外の会社に勤めて居る弟——折折をりをり昼中なかに尋ねて来て、正午ひるの食卓に就くことがあるでせう——あの弟が姉思ひで、月給のうちからみついで居るんですよ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あるの、あのなかにも。あいだは、昼行燈ひるあんどんでも、昼間の月でも、かまやせん。たとえば、この蓼にしても馬さえ喰わぬが、土壌どじょうの恩と、陽の恩には、ちゃんと報じておる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その場を体よく、夫の視線避けけるも、書中なかの子細のあやぶまるるを、先づ秘かにと思へるなるべし。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
孝陵の山川さんせんは、其のふるきに因りて改むるなかれ、天下の臣民は、哭臨こくりんする三日にして、皆服をき、嫁娶かしゅを妨ぐるなかれ。諸王は国中になげきて、京師に至るなかれ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
聞んと長八のうちゆき最早もはや長八殿は歸られしやと云に女房にようばううめなになかもとをして居たりしが振返ふりかへりオヤ何誰どなたかと存じたら長兵衞さん先々まづ/\此方こちら御上おあがくだされよとて此程中のれい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この稼業なかで惚れた腫れたで一緒になったものは兎角お互に我儘が出て、末始終を添い遂げられるものでないからね、お前もよくそこのところを考えて海上さんに身請され、気楽に暮すが当世だろうぜ
芸妓は世間を広く知っていなければいけない。そして華やかな空気なかにいなければならない。地味な世界はほかに沢山ある。遊ばせるという要は窮屈ではいけない。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わたくしのお胎内なかの子供も良人が遠洋航海から歸つて來るまでには産まれる筈です。わたくし敏ちやんの暗い運命を思ふ時慄然として我が子を産みたくありません。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
それから半年ほどたつたとき、ちの一万二千三百七十五がうの△△債劵さいけん仲買なかがひ人をて、ある田なかの大地主ぢぬしわたつてゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「よく面倒を見て下さいよ。」と、車掌が車内なかへ私を抱き載せる時に、ベシーは、彼に叫んだ。
「じゃあ、部屋なかへ入りなさい!」そう言うなり家政婦は、くるりと向うむきになって彼に背中を見せたが、その背中には何かの粉が一杯ついていて、少し下の方に大きなほころびが出来ていた。
なん落語はなし種子たねにでもなるであらうとぞんじまして、門内なか這入はいつて見ましたが、一かう汁粉店しるこやらしい結構かゝりがない、玄関正面げんくわんしやうめんには鞘形さやがたふすまたててありまして、欄間らんまにはやり薙刀なぎなたるゐかゝつ
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうして、いつとなく思い出さえも薄らいでしまって、今ではフローラも、慈悲太郎の唇を、おのが間にはさむような間柄なかになった。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
只一つの心当りにしている客機かくざん(宿屋)をやっと見つけ出すとその院内なかへずっと進んだ、すると院内にごろごろしていた犢牛こうしのような野良犬が一番に吠えながら私をとりまく
怪談 (新字新仮名) / 平山蘆江(著)
熟睡うまい』をなか
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)