牧野富太郎（まきのとみたろう）
1862.05.22 〜 1957.01.18
著者としての作品一覧
アケビ（新字新仮名）
読書目安時間：約7分
野山へ行くとあけびというものに出会う。秋の景物の一つでそれが秋になって一番目につくのは、食われる果実がその時期に熟するからである。田舎の子供は栗の笑うこの時分によく山に行き、かつて …
カキツバタ一家言（新字新仮名）
読書目安時間：約12分
花がつみまじりにさけるかきつばたたれしめさして衣にするらん公実 狩人の衣するてふかきつばた花さくときになりぞしにけり基俊 カキツバタはだれもよく知っているアヤメ科イリス（Iris） …
風に飜へる梧桐の実（新字旧仮名）
読書目安時間：約3分
秋風起つて白雲飛ぶと云ふ時節ともなると、アヲギリ（幹、枝が緑色ながら云ふ）即ち梧桐の種子を着けた其舟状の殻片が、其母枝を離れ翩々として風に乗じ遠近の地に墜ちる、是れは何も珍らしい事 …
寒桜の話（新字新仮名）
読書目安時間：約8分
カンザクラというサクラの一種があって、学名をプルーヌス・カンザクラ（prunus Kanzakura, Makino）と称する。落葉喬木で多くの枝を分かち、繁く葉をつける。高さはお …
植物一日一題（新字新仮名）
読書目安時間：約5時間6分
植物一日一題 ジャガタライモ、すなわちジャガイモ（Solanum tuberosum L.）を馬鈴薯ではないと明瞭に理解している人は極めて小数で、大抵の人、否な一流の学者でさえも馬 …
植物記（新字新仮名）
読書目安時間：約5時間25分
これまで発行せられたいろいろの雑誌に私の書いた小品文はそう鮮くなかった。今回桜井書店主人の需めを快諾してその中の興趣ありと濫りに自分勝手に認めるもの三十七題を択んで、ここにこれをこ …
植物知識（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間27分
花は、率直にいえば生殖器である。有名な蘭学者の宇田川榕庵先生は、彼の著『植学啓源』に、「花は動物の陰処の如し、生産蕃息の資て始まる所なり」と書いておられる。すなわち花は誠に美麗で、 …
火の玉を見たこと（新字新仮名）
読書目安時間：約3分
時は、明治十五、六年頃、私はまだ二十一、二才頃のときであったろうと思っているが、その時分にときどき、高知（土佐）から七里ほどの夜道を踏んで西方の郷里、佐川町へ帰ったことがあった。 …
牧野富太郎自叙伝：01 第一部　牧野富太郎自叙伝（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間50分
土佐の国、高岡郡佐川町、この町は高知から西へ七里隔ったところにあり、その周囲は山で囲まれ、その間にずっと田が連り、春日川という川が流れている。この川の側にあるのが佐川町である。南は …
牧野富太郎自叙伝：02 第二部　混混録（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間17分
何時までも生きて仕事にいそしまんまた生まれ来ぬこの世なりせば われらの大先輩に本草学、植物学に精進せられた博物学者の錦窠翁伊藤圭介先生があった。珍しくも九十九歳の長寿を保たれしはま …
ムジナモ発見物語り（新字新仮名）
読書目安時間：約5分
じつとしていて静かに往時を追懐してみると、次から次に、あの事この事と、いろいろ過去の事件が思い出される、何を言え九十余年の長い歳月のことであれば、そうあるべきである筈なのである。 …
利尻山とその植物（新字新仮名）
読書目安時間：約22分
余が北見の国利尻島の利尻山に登ったのは、三十六年の八月である、農学士川上滝弥君が、数年前に数十日の間この山に立籠って、採集せられた結果を『植物学雑誌』に発表せられたのを、読んでから …
若き日の思い出（新字新仮名）
読書目安時間：約5分
一、雨の深山で採集 私は自分の学問に対してあまり苦労したことはなかった。今日まで何十年にわたる長い年月の間実に愉快に学問を続けてきて、ついに今日に及んだのであるが、平素その学問を特 …
私の信条（新字新仮名）
読書目安時間：約5分
何んでもこうしようと思っている考えは大小となく軽重となくいずれも信条である、ですから、人々はたくさんな信条を持っているわけだ、それゆえ信条のない人はおそらく世の中に一人もあるまい。 …