新吉原なか)” の例文
おなかは隣り町の「越徳えちとく」という呉服屋の女中で、知りあったときは二十一になっていた。初めて口をきいたのは春の早朝のことで、佐八は新吉原なかからの帰りだった。
「この夏、新吉原なかの女郎の心中はよく売れたそうじゃありませんか、二人とも死んだことになってるが、女郎のほうはまだぴんぴんしているし、あの瓦版のおかげで、たいそうはやってるそうですからね」
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)