海野十三
1897.12.26 〜 1949.05.17
“海野十三”に特徴的な語句
人造人間
拳銃
博士
押釦
香港
隧道
銃丸
駭
焼跡
儂
洋杖
扉
卓子
黄金
現場不在証明
醤買石
四囲
竜
噂
逮捕
博士
静粛
蟒
光景
鹿島灘
騒
束
双生児
尻
屑
絨氈
六
色眼鏡
弗
其
甲板
化
愕
呀
先刻
惨劇
敷
呻
弾丸
舳
咥
奇妙
甲虫
扉
天幕
著者としての作品一覧
あの世から便りをする話:――座談会から――(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
僕の友達で人格も高く、学問の上からも尊敬され、友人からも非常に尊敬されていた男があったんです。それが不幸にして最愛の細君を失いました。 或る日、その友達が私の所へ来て、「『心霊研究 …
読書目安時間:約9分
僕の友達で人格も高く、学問の上からも尊敬され、友人からも非常に尊敬されていた男があったんです。それが不幸にして最愛の細君を失いました。 或る日、その友達が私の所へ来て、「『心霊研究 …
ある宇宙塵の秘密(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
その夜、テレビジョン研究室の鍵をかけて外に出たのが、もう十二時近かった。裏門にいたる砂利道の上を、ザクザクと寒そうな音をたてて歩きながら、私はおもわず胴震いをした。 (今夜は一つ早 …
読書目安時間:約11分
その夜、テレビジョン研究室の鍵をかけて外に出たのが、もう十二時近かった。裏門にいたる砂利道の上を、ザクザクと寒そうな音をたてて歩きながら、私はおもわず胴震いをした。 (今夜は一つ早 …
暗号数字(新字新仮名)
読書目安時間:約38分
帆村探偵現る ちかごろ例の青年探偵帆村荘六の活躍をあまり耳にしないので、先生一体どうしたのかと不審に思っていたところ、某方面からの依頼で、面倒な事件に忙しい身の上だったと知れた。最 …
読書目安時間:約38分
帆村探偵現る ちかごろ例の青年探偵帆村荘六の活躍をあまり耳にしないので、先生一体どうしたのかと不審に思っていたところ、某方面からの依頼で、面倒な事件に忙しい身の上だったと知れた。最 …
暗号の役割:烏啼天駆シリーズ・4(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
奇賊烏啼天駆と探偵袋猫々の睨み合いも久しいものである。 この勝負は一向かたづかないままに、秋を送り、この冬を迎えた。 ところがここに袋探偵は、一つの手柄をたてた。いや幸運を掴んだと …
読書目安時間:約22分
奇賊烏啼天駆と探偵袋猫々の睨み合いも久しいものである。 この勝負は一向かたづかないままに、秋を送り、この冬を迎えた。 ところがここに袋探偵は、一つの手柄をたてた。いや幸運を掴んだと …
暗号音盤事件(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
国際都市 私たちは、暫くの間リスボンに滞在することになった。 私の連れというのは、例の有名な勇猛密偵の白木豹二のことだ。 リスボンは、ポルトガルの首都だ。そのころリスボンは、欧州に …
読書目安時間:約24分
国際都市 私たちは、暫くの間リスボンに滞在することになった。 私の連れというのは、例の有名な勇猛密偵の白木豹二のことだ。 リスボンは、ポルトガルの首都だ。そのころリスボンは、欧州に …
生きている腸(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
医学生吹矢隆二は、その日も朝から、腸のことばかり考えていた。 午後三時の時計がうつと、彼は外出した。 彼の住んでいる家というのは高架線のアーチの下を、家らしい恰好にしただけの、すこ …
読書目安時間:約22分
医学生吹矢隆二は、その日も朝から、腸のことばかり考えていた。 午後三時の時計がうつと、彼は外出した。 彼の住んでいる家というのは高架線のアーチの下を、家らしい恰好にしただけの、すこ …
浮かぶ飛行島(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間10分
川上機関大尉の酒壜 わが練習艦隊須磨、明石の二艦は、欧州訪問の旅をおえて、いまやその帰航の途にあった。 印度を出て、馬来半島とスマトラ島の間のマラッカ海峡を東へ出ると、そこは馬来半 …
読書目安時間:約4時間10分
川上機関大尉の酒壜 わが練習艦隊須磨、明石の二艦は、欧州訪問の旅をおえて、いまやその帰航の途にあった。 印度を出て、馬来半島とスマトラ島の間のマラッカ海峡を東へ出ると、そこは馬来半 …
宇宙女囚第一号(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
イー・ペー・エル研究所に絵里子をたずねた僕は、ついに彼女に会うことができず、そのかわり普段はろくに口をきいたこともない研究所長マカオ博士に手をとられんばかりにして、その室に招じられ …
読書目安時間:約15分
イー・ペー・エル研究所に絵里子をたずねた僕は、ついに彼女に会うことができず、そのかわり普段はろくに口をきいたこともない研究所長マカオ博士に手をとられんばかりにして、その室に招じられ …
宇宙戦隊(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間36分
作者より読者の皆さんへ この小説に出てくる物語は、今からだいぶん先のことだと思ってください。つまり未来小説であります。今から何年後のことであるか、それは皆さんの御想像にまかせます。 …
読書目安時間:約2時間36分
作者より読者の皆さんへ この小説に出てくる物語は、今からだいぶん先のことだと思ってください。つまり未来小説であります。今から何年後のことであるか、それは皆さんの御想像にまかせます。 …
宇宙尖兵(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間13分
作者より読者へ うれしい皇軍の赫々たる大戦果により、なんだかちかごろこの地球というものが急に狭くなって、鼻が悶えるようでいけない。これは作者だけの感じではあるまい。そこで、もっと広 …
読書目安時間:約1時間13分
作者より読者へ うれしい皇軍の赫々たる大戦果により、なんだかちかごろこの地球というものが急に狭くなって、鼻が悶えるようでいけない。これは作者だけの感じではあるまい。そこで、もっと広 …
宇宙の迷子(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間26分
ゆかいな時代 このゆかいな探険は、千九百七十何年だかにはじめられた。いいですか。 探険家はだれかというと、川上一郎君、すなわちポコちゃんと、山ノ井万造君、すなわち千ちゃんと、この二 …
読書目安時間:約1時間26分
ゆかいな時代 このゆかいな探険は、千九百七十何年だかにはじめられた。いいですか。 探険家はだれかというと、川上一郎君、すなわちポコちゃんと、山ノ井万造君、すなわち千ちゃんと、この二 …
海野十三氏の弁:探偵作家お道楽帳・その五(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
「お道樂」の話ですか、それは困りましたね、私は酒もやらないしこの二三年からだの調子をわるくしてゐるので、たまに三軒茶屋あたりを散歩してくる位のところですから、人樣のやうな派手な「お …
読書目安時間:約3分
「お道樂」の話ですか、それは困りましたね、私は酒もやらないしこの二三年からだの調子をわるくしてゐるので、たまに三軒茶屋あたりを散歩してくる位のところですから、人樣のやうな派手な「お …
海野十三敗戦日記(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間46分
はしがき 二週間ほど前より、帝都もかねて覚悟していたとおり「空襲される都」とはなった。 米機B29の編隊は、三日にあげず何十機も頭上にきて、爆弾と焼夷弾の雨をふらせ、あるいは悠々と …
読書目安時間:約2時間46分
はしがき 二週間ほど前より、帝都もかねて覚悟していたとおり「空襲される都」とはなった。 米機B29の編隊は、三日にあげず何十機も頭上にきて、爆弾と焼夷弾の雨をふらせ、あるいは悠々と …
英本土上陸戦の前夜(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間13分
英蘭西岸の名港リバプールの北郊に、ブルートという町がある。 このブルートには、監獄があった。 或朝、この監獄の表門が、ぎしぎしと左右に開かれ、中から頭に包帯した一人の東洋人らしい男 …
読書目安時間:約1時間13分
英蘭西岸の名港リバプールの北郊に、ブルートという町がある。 このブルートには、監獄があった。 或朝、この監獄の表門が、ぎしぎしと左右に開かれ、中から頭に包帯した一人の東洋人らしい男 …
江戸推理川柳抄(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
推理川柳とは、私が仮りにつけた名称であって、推理を含んだ川柳という意味である。 雷も雀がなけばしまいなり この句の味い方を、推理川柳の立場からしてみると、「雷があばれているうちに、 …
読書目安時間:約4分
推理川柳とは、私が仮りにつけた名称であって、推理を含んだ川柳という意味である。 雷も雀がなけばしまいなり この句の味い方を、推理川柳の立場からしてみると、「雷があばれているうちに、 …
恐しき通夜(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
「一体どうしたというんだろう。大変に遅いじゃないか」 眉を顰めて、吐きだすように云ったのは、赭ら顔の、でっぷり肥った川波船二大尉だった。窓の外は真暗で、陰鬱な冷気がヒシヒシと、薄い …
読書目安時間:約31分
「一体どうしたというんだろう。大変に遅いじゃないか」 眉を顰めて、吐きだすように云ったのは、赭ら顔の、でっぷり肥った川波船二大尉だった。窓の外は真暗で、陰鬱な冷気がヒシヒシと、薄い …
骸骨館(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
少年たちは、遊び方に困っていたし、また遊ぶ場所もなかった。 家と道のほかは、どこも青々とした家庭菜園であった。道さえも、その両側がかなり幅をとって菜園になっており、その道を子供が歩 …
読書目安時間:約15分
少年たちは、遊び方に困っていたし、また遊ぶ場所もなかった。 家と道のほかは、どこも青々とした家庭菜園であった。道さえも、その両側がかなり幅をとって菜園になっており、その道を子供が歩 …
怪星ガン(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間49分
臨時放送だ! 「テレ・ラジオの臨時ニュース放送ですよ、おじさん」 矢木三根夫は、伯父の書斎の扉をたたいて、伯父の注意をうながした。 いましがた三根夫少年は、ひとりで事務室にいた。そ …
読書目安時間:約3時間49分
臨時放送だ! 「テレ・ラジオの臨時ニュース放送ですよ、おじさん」 矢木三根夫は、伯父の書斎の扉をたたいて、伯父の注意をうながした。 いましがた三根夫少年は、ひとりで事務室にいた。そ …
階段(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
出来ることなら、綺麗に抹殺してしまいたい僕の人生だ。それを決行させては呉れない「彼奴」を呪う。「彼奴」は何処から飛んできて僕にたかったものなんだか、又はもともと僕の身体のうちに隠れ …
読書目安時間:約32分
出来ることなら、綺麗に抹殺してしまいたい僕の人生だ。それを決行させては呉れない「彼奴」を呪う。「彼奴」は何処から飛んできて僕にたかったものなんだか、又はもともと僕の身体のうちに隠れ …
海底大陸(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間60分
三千夫少年の乗り組んだ海の女王といわれる巨船クイーン・メリー号は、いま大西洋のまっただなかを航行中だった。 ニューヨークを出たのが七月一日だったから、きょうは三日目の七月三日にあた …
読書目安時間:約2時間60分
三千夫少年の乗り組んだ海の女王といわれる巨船クイーン・メリー号は、いま大西洋のまっただなかを航行中だった。 ニューヨークを出たのが七月一日だったから、きょうは三日目の七月三日にあた …
海底都市(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間50分
妙な手紙 僕は、まるで催眠術にかかりでもしたような状態で、廃墟の丘をのぼっていった。 あたりはすっかり黄昏れて広重の版画の紺青にも似た空に、星が一つ出ていた。 丘の上にのぼり切ると …
読書目安時間:約2時間50分
妙な手紙 僕は、まるで催眠術にかかりでもしたような状態で、廃墟の丘をのぼっていった。 あたりはすっかり黄昏れて広重の版画の紺青にも似た空に、星が一つ出ていた。 丘の上にのぼり切ると …
怪塔王(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間35分
怪老人怪塔王という不思議な顔をした人が、いつごろから居たのか、それは誰も知りません。 一彦とミチ子の兄妹が、その怪塔王をはじめてみたのは、ついこの夏のはじめでありました。 そこは千 …
読書目安時間:約5時間35分
怪老人怪塔王という不思議な顔をした人が、いつごろから居たのか、それは誰も知りません。 一彦とミチ子の兄妹が、その怪塔王をはじめてみたのは、ついこの夏のはじめでありました。 そこは千 …
科学が臍を曲げた話(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
みなさん、科学だって、時には気むずかしいことがありますよ。そんなときには、臍を曲げちまいますよ、臍をネ。 童話みたいですが、昔、オーストリヤの王様が、世界最大のダイヤモンドを所有し …
読書目安時間:約9分
みなさん、科学だって、時には気むずかしいことがありますよ。そんなときには、臍を曲げちまいますよ、臍をネ。 童話みたいですが、昔、オーストリヤの王様が、世界最大のダイヤモンドを所有し …
科学時潮(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
地下鉄道の開通 上野、浅草間の地下鉄道が出来た。入って見ると随分明るくて温い。電車の車体は黄色に塗られ、架空線はないから随ってポールやパンタグラフは無い。皆レールのところから電気を …
読書目安時間:約5分
地下鉄道の開通 上野、浅草間の地下鉄道が出来た。入って見ると随分明るくて温い。電車の車体は黄色に塗られ、架空線はないから随ってポールやパンタグラフは無い。皆レールのところから電気を …
科学者と夜店商人(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
こう暑くなっては、科学者もしぶしぶと実験室から匍い出さずにはいられない。気温が華氏八十度を越えると脳細胞中の電子の運動がすこし変態性を帯びて来るそうだ。そんなときにうっかり忘我的研 …
読書目安時間:約8分
こう暑くなっては、科学者もしぶしぶと実験室から匍い出さずにはいられない。気温が華氏八十度を越えると脳細胞中の電子の運動がすこし変態性を帯びて来るそうだ。そんなときにうっかり忘我的研 …
柿色の紙風船(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
「おや、ここに寝ていた患者さんは?」 と林檎のように血色のいい看護婦が叫んだ。彼女の突っ立っている前には、一つの空ッぽの寝台があった。 「ねえ、あんた。知らない?」 彼女は、手近に …
読書目安時間:約29分
「おや、ここに寝ていた患者さんは?」 と林檎のように血色のいい看護婦が叫んだ。彼女の突っ立っている前には、一つの空ッぽの寝台があった。 「ねえ、あんた。知らない?」 彼女は、手近に …
鍵から抜け出した女(新字新仮名)
読書目安時間:約43分
黄風島にて 今夜こそ、かねて計画していたとおり、僕はこの恐ろしい精神病院を脱走しようと決心した。—— そもそも僕は、どうしてこの島の精神病院などに入れられるようなことになったのか、 …
読書目安時間:約43分
黄風島にて 今夜こそ、かねて計画していたとおり、僕はこの恐ろしい精神病院を脱走しようと決心した。—— そもそも僕は、どうしてこの島の精神病院などに入れられるようなことになったのか、 …
火星探険(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間37分
すばらしい計画 夏休みになる日を、指折りかぞえて待っている山木健と河合二郎だった。 夏休みが来ると二人はコロラド大峡谷一周の自動車旅行に出る計画だった。もちろん自動車は二人がかわる …
読書目安時間:約2時間37分
すばらしい計画 夏休みになる日を、指折りかぞえて待っている山木健と河合二郎だった。 夏休みが来ると二人はコロラド大峡谷一周の自動車旅行に出る計画だった。もちろん自動車は二人がかわる …
火星兵団(新字新仮名)
読書目安時間:約10時間21分
もはや「火星兵団」の噂をお聞きになったであろうか! ふむ、けさ地下鉄電車の中で、乗客が話をしているのを、横からちょっと小耳にはさんだとおっしゃるのか。 ——いや全く、こいつは冗談じ …
読書目安時間:約10時間21分
もはや「火星兵団」の噂をお聞きになったであろうか! ふむ、けさ地下鉄電車の中で、乗客が話をしているのを、横からちょっと小耳にはさんだとおっしゃるのか。 ——いや全く、こいつは冗談じ …
『火星兵団』の作者の言葉(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
この書『火星兵団』は、私がこれまでに書いた一等長い小説であります。 少国民新聞(今は名前もなつかしい当時の「小学生新聞」)に、前後四百六十回にわたって連載されたもので、作者としても …
読書目安時間:約8分
この書『火星兵団』は、私がこれまでに書いた一等長い小説であります。 少国民新聞(今は名前もなつかしい当時の「小学生新聞」)に、前後四百六十回にわたって連載されたもので、作者としても …
火葬国風景(新字新仮名)
読書目安時間:約37分
甲野八十助 「はアて、——」 と探偵小説家の甲野八十助は、夜店の人混みの中で、不審のかぶりを振った。 実は、この甲野八十助は探偵小説家に籍を置いてはいるものの、一向に栄えない万年新 …
読書目安時間:約37分
甲野八十助 「はアて、——」 と探偵小説家の甲野八十助は、夜店の人混みの中で、不審のかぶりを振った。 実は、この甲野八十助は探偵小説家に籍を置いてはいるものの、一向に栄えない万年新 …
鞄らしくない鞄(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間14分
事件引継簿 或る冬の朝のことであった。 重い鉄材とセメントのブロックである警視庁の建物は、昨夜来の寒波のためにすっかり冷え切っていて、早登庁の課員の靴の裏にうってつけてある鋲が床に …
読書目安時間:約1時間14分
事件引継簿 或る冬の朝のことであった。 重い鉄材とセメントのブロックである警視庁の建物は、昨夜来の寒波のためにすっかり冷え切っていて、早登庁の課員の靴の裏にうってつけてある鋲が床に …
雷(新字新仮名)
読書目安時間:約40分
山岳重畳という文字どおりに、山また山の甲斐の国を、甲州街道にとって東へ東へと出てゆくと、やがて上野原、与瀬あたりから海抜の高度が落ちてきて、遂に東京府に入って浅川あたりで山が切れ、 …
読書目安時間:約40分
山岳重畳という文字どおりに、山また山の甲斐の国を、甲州街道にとって東へ東へと出てゆくと、やがて上野原、与瀬あたりから海抜の高度が落ちてきて、遂に東京府に入って浅川あたりで山が切れ、 …
火薬船(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間5分
怪貨物船あらわる! 北緯二十度、東経百十五度。 ——というと、そこはちょうど香港を真南に三百五十キロばかりくだった海面であるが、警備中のわが駆逐艦松風は、一せきのあやしい中国船が前 …
読書目安時間:約2時間5分
怪貨物船あらわる! 北緯二十度、東経百十五度。 ——というと、そこはちょうど香港を真南に三百五十キロばかりくだった海面であるが、警備中のわが駆逐艦松風は、一せきのあやしい中国船が前 …
棺桶の花嫁(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間27分
春だった。 花は爛漫と、梢に咲き乱れていた。 時が歩みを忘れてしまったような、遅い午後—— 講堂の硝子窓のなかに、少女のまるい下げ髪頭が、ときどきあっちへ動き、こっちへ動きするのが …
読書目安時間:約1時間27分
春だった。 花は爛漫と、梢に咲き乱れていた。 時が歩みを忘れてしまったような、遅い午後—— 講堂の硝子窓のなかに、少女のまるい下げ髪頭が、ときどきあっちへ動き、こっちへ動きするのが …
間諜座事件(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
これは或るスパイ事件だ。 ところで、これから述べてゆく其の物語の中には、日本人の名前ばかりが、ズラズラと出てくるのだが、読者諸君は、それ等を悉く真の日本人だと早合点されてはいけない …
読書目安時間:約19分
これは或るスパイ事件だ。 ところで、これから述べてゆく其の物語の中には、日本人の名前ばかりが、ズラズラと出てくるのだが、読者諸君は、それ等を悉く真の日本人だと早合点されてはいけない …
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
一代の奇賊烏啼天駆と、頑張り探偵袋猫々との対峙も全く久しいものだ。 だが奇賊烏啼天駆にいわせると、袋猫々なる迷探偵などは歯牙にもかけていないそうで、袋めは奇賊烏啼を捕えて絞首台へ送 …
読書目安時間:約15分
一代の奇賊烏啼天駆と、頑張り探偵袋猫々との対峙も全く久しいものだ。 だが奇賊烏啼天駆にいわせると、袋猫々なる迷探偵などは歯牙にもかけていないそうで、袋めは奇賊烏啼を捕えて絞首台へ送 …
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
義弟の出獄 烏啼天駆といえば、近頃有名になった奇賊であるが、いつも彼を刑務所へ送り込もうと全身汗をかいて奔走している名探偵の袋猫々との何時果てるともなき一騎討ちは、今もなお酣であっ …
読書目安時間:約19分
義弟の出獄 烏啼天駆といえば、近頃有名になった奇賊であるが、いつも彼を刑務所へ送り込もうと全身汗をかいて奔走している名探偵の袋猫々との何時果てるともなき一騎討ちは、今もなお酣であっ …
キド効果(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
「うふふん。——」 と咳払いをなされた木戸博士は、ご自分の計算机からお立ちになり、ズカズカと助手の丘数夫の席までお出でになった。 「こういう事になったよ。——」 と仰有ると、丘助手 …
読書目安時間:約25分
「うふふん。——」 と咳払いをなされた木戸博士は、ご自分の計算机からお立ちになり、ズカズカと助手の丘数夫の席までお出でになった。 「こういう事になったよ。——」 と仰有ると、丘助手 …
鬼仏洞事件(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
見取図 鬼仏洞の秘密を探れ! 特務機関から命ぜられた大陸に於けるこの最後の仕事、一つに女流探偵の風間三千子の名誉がかけられていた。 鬼仏洞は、ここから、揚子江を七十キロほど遡った、 …
読書目安時間:約30分
見取図 鬼仏洞の秘密を探れ! 特務機関から命ぜられた大陸に於けるこの最後の仕事、一つに女流探偵の風間三千子の名誉がかけられていた。 鬼仏洞は、ここから、揚子江を七十キロほど遡った、 …
疑問の金塊(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
尾行者 タバコ屋の前まで来ると、私は色硝子の輝く小窓から、チェリーを買った。 一本を口に銜えて、燐寸の火を近づけながら窓硝子の上に注目すると、向いの洋菓子店の明るい飾窓がうつってい …
読書目安時間:約32分
尾行者 タバコ屋の前まで来ると、私は色硝子の輝く小窓から、チェリーを買った。 一本を口に銜えて、燐寸の火を近づけながら窓硝子の上に注目すると、向いの洋菓子店の明るい飾窓がうつってい …
恐怖について(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
恐怖なんて、無くもがなである。 ——と片づけてしまふ人は、話にならない。恐怖は人間の神經を刺戟することが大きい。ひどい場合は、その場に立ち竦んで心臟痲痺を起したり、或ひは一瞬にして …
読書目安時間:約6分
恐怖なんて、無くもがなである。 ——と片づけてしまふ人は、話にならない。恐怖は人間の神經を刺戟することが大きい。ひどい場合は、その場に立ち竦んで心臟痲痺を起したり、或ひは一瞬にして …
恐怖の口笛(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間3分
逢う魔が時刻 秋も十一月に入って、お天気はようやく崩れはじめた。今日も入日は姿を見せず、灰色の雲の垂れ幕の向う側をしのびやかに落ちてゆくのであった。時折サラサラと吹いてくる風の音に …
読書目安時間:約2時間3分
逢う魔が時刻 秋も十一月に入って、お天気はようやく崩れはじめた。今日も入日は姿を見せず、灰色の雲の垂れ幕の向う側をしのびやかに落ちてゆくのであった。時折サラサラと吹いてくる風の音に …
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
チャーチルが、その特使の出発に際して念を押していった。 「ええかね。なるたけ凄いやつを買取るんじゃ。世界一のやつでなけりゃいかんぞ」 そしてそっぽを向いて(これからは、何でも世界一 …
読書目安時間:約21分
チャーチルが、その特使の出発に際して念を押していった。 「ええかね。なるたけ凄いやつを買取るんじゃ。世界一のやつでなけりゃいかんぞ」 そしてそっぽを向いて(これからは、何でも世界一 …
恐竜艇の冒険(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
二少年 みなさん、ジミー君とサム君とを、ご紹介いたします。 この二少年が、夏休みに、熱帯多島海へあそびに行って、そこでやってのけたすばらしい冒険は、きっとみなさんの気にいることでし …
読書目安時間:約22分
二少年 みなさん、ジミー君とサム君とを、ご紹介いたします。 この二少年が、夏休みに、熱帯多島海へあそびに行って、そこでやってのけたすばらしい冒険は、きっとみなさんの気にいることでし …
恐竜島(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間20分
ふしぎな運命 人間は、それぞれに宿命というものをせおっている。つまり、生まれてから死ぬまでのあいだに、その人間はどれどれの事件にぶつかるか、それがちゃんと、はじめからきまっているの …
読書目安時間:約3時間20分
ふしぎな運命 人間は、それぞれに宿命というものをせおっている。つまり、生まれてから死ぬまでのあいだに、その人間はどれどれの事件にぶつかるか、それがちゃんと、はじめからきまっているの …
金属人間(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間39分
こんな文章 およそ世の中には、人にまだ知られていない、ふしぎなことがずいぶんたくさんあるのだ。 いや、ほんとうは、今の人々に話をして、ふしぎがられる話の方が、ふしぎがられない話より …
読書目安時間:約2時間39分
こんな文章 およそ世の中には、人にまだ知られていない、ふしぎなことがずいぶんたくさんあるのだ。 いや、ほんとうは、今の人々に話をして、ふしぎがられる話の方が、ふしぎがられない話より …
空気男(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
青い器械 「これでいい。もう今日から、わが家の門を堂々とくぐれるんだ」 清家博士は、大きな鞄を重そうにさげ、いつもとは違い意気揚々と玄関へ入ってきた。 「誰?御用聞きなら裏口へお廻 …
読書目安時間:約10分
青い器械 「これでいい。もう今日から、わが家の門を堂々とくぐれるんだ」 清家博士は、大きな鞄を重そうにさげ、いつもとは違い意気揚々と玄関へ入ってきた。 「誰?御用聞きなら裏口へお廻 …
空襲下の日本(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
——昭和×年三月、帝都郊外の若きサラリーマンの家庭—— 「まあ、今日はお帰りが遅かったのネ」 「うんフラフラになる程疲労れちまったよ」 「やはり会社の御用でしたの」 「そうなんだ。 …
読書目安時間:約29分
——昭和×年三月、帝都郊外の若きサラリーマンの家庭—— 「まあ、今日はお帰りが遅かったのネ」 「うんフラフラになる程疲労れちまったよ」 「やはり会社の御用でしたの」 「そうなんだ。 …
空襲警報(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間33分
日本海の夕日 大きな夕日は、きょうも日本海の西の空に落ちかかった。うねりの出て来た海上は、どこもここもキラキラと金色に輝いていた。 「美しいなあ!」 旗男少年は、得意の立泳をつづけ …
読書目安時間:約1時間33分
日本海の夕日 大きな夕日は、きょうも日本海の西の空に落ちかかった。うねりの出て来た海上は、どこもここもキラキラと金色に輝いていた。 「美しいなあ!」 旗男少年は、得意の立泳をつづけ …
空襲葬送曲(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間12分
父の誕生日に瓦斯マスクの贈物 「やあ、くたびれた、くたびれた」家中に響きわたるような大声をあげて、大旦那の長造が帰って来た。 「おかえりなさいまし」お内儀のお妻は、夫の手から、印鑑 …
読書目安時間:約3時間12分
父の誕生日に瓦斯マスクの贈物 「やあ、くたびれた、くたびれた」家中に響きわたるような大声をあげて、大旦那の長造が帰って来た。 「おかえりなさいまし」お内儀のお妻は、夫の手から、印鑑 …
空中漂流一週間(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
「火の玉」少尉 「うーん、またやって来たか」 と、田毎大尉は、啣えていた紙巻煙草をぽんと灰皿の中になげこむと、当惑顔で名刺の表をみつめた。前には当番兵が、渋面をつくって、起立してい …
読書目安時間:約35分
「火の玉」少尉 「うーん、またやって来たか」 と、田毎大尉は、啣えていた紙巻煙草をぽんと灰皿の中になげこむと、当惑顔で名刺の表をみつめた。前には当番兵が、渋面をつくって、起立してい …
空中墳墓(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
ぽっかり、眼が醒めた。 ガチャリ、ガチャリ、ゴーウウウ。 四十階急行のエレベーターが昇って来たのだった。 「誰か来たナ」 まだ半ば夢心地の中に、そう感じた。職業意識のあさましさよ、 …
読書目安時間:約29分
ぽっかり、眼が醒めた。 ガチャリ、ガチャリ、ゴーウウウ。 四十階急行のエレベーターが昇って来たのだった。 「誰か来たナ」 まだ半ば夢心地の中に、そう感じた。職業意識のあさましさよ、 …
崩れる鬼影(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間9分
月光下の箱根山 それは大変月のいい夜のことでした。 七月の声は聞いても、此所は山深い箱根のことです。夜に入ると鎗の穂先のように冷い風が、どこからともなく流れてきます。 「兄さん。今 …
読書目安時間:約1時間9分
月光下の箱根山 それは大変月のいい夜のことでした。 七月の声は聞いても、此所は山深い箱根のことです。夜に入ると鎗の穂先のように冷い風が、どこからともなく流れてきます。 「兄さん。今 …
くろがね天狗(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
師走三日 岡引虎松は、師走の三日をことのほか忌み嫌った。 師走の三日といえば、一年のうちに、僅か一日しかない日であるのに、虎松にとってはこれほど苦痛な日は、ほかに無かったのであった …
読書目安時間:約18分
師走三日 岡引虎松は、師走の三日をことのほか忌み嫌った。 師走の三日といえば、一年のうちに、僅か一日しかない日であるのに、虎松にとってはこれほど苦痛な日は、ほかに無かったのであった …
軍用鮫(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
北緯百十三度一分、東経二十三度六分の地点において、楊博士はしずかに釣糸を垂れていた。 そこは嶮岨な屏風岩の上であった。 前には、エメラルドを溶かしこんだようなひろびろとした赤湾が、 …
読書目安時間:約16分
北緯百十三度一分、東経二十三度六分の地点において、楊博士はしずかに釣糸を垂れていた。 そこは嶮岨な屏風岩の上であった。 前には、エメラルドを溶かしこんだようなひろびろとした赤湾が、 …
軍用鼠(新字新仮名)
読書目安時間:約38分
探偵小説家の梅野十伍は、机の上に原稿用紙を展べて、意気甚だ銷沈していた。 棚の時計を見ると、指針は二時十五分を指していた。それは午後の二時ではなくて、午前の二時であった。カーテンを …
読書目安時間:約38分
探偵小説家の梅野十伍は、机の上に原稿用紙を展べて、意気甚だ銷沈していた。 棚の時計を見ると、指針は二時十五分を指していた。それは午後の二時ではなくて、午前の二時であった。カーテンを …
幸運の黒子(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
「どうして、おれはこう不運なんだろう」 病院の門を出ると、怺えこらえた鬱憤をアスファルトの路面に叩きつけた月田半平だった。 院長は、なーに大丈夫ですよ、こんな病気なら注射の五十本も …
読書目安時間:約6分
「どうして、おれはこう不運なんだろう」 病院の門を出ると、怺えこらえた鬱憤をアスファルトの路面に叩きつけた月田半平だった。 院長は、なーに大丈夫ですよ、こんな病気なら注射の五十本も …
洪水大陸を呑む(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
ふしぎな器械 「ぼく、生きているのがいやになった」 三四郎が、おじさんのところへ来て、こんなことをいいだした。 「生きているのがいやになったって。これはおどろいたね。子供のくせに、 …
読書目安時間:約13分
ふしぎな器械 「ぼく、生きているのがいやになった」 三四郎が、おじさんのところへ来て、こんなことをいいだした。 「生きているのがいやになったって。これはおどろいたね。子供のくせに、 …
ゴールデン・バット事件(新字新仮名)
読書目安時間:約47分
あの夜更、どうしてあの寂しい裏街を歩いていたのかと訊かれると、私はすこし顔が赭くなるのだ。 兎に角、あれは省線の駅の近所まで出て、円タクを拾うつもりで歩いていたのだった。連れが一人 …
読書目安時間:約47分
あの夜更、どうしてあの寂しい裏街を歩いていたのかと訊かれると、私はすこし顔が赭くなるのだ。 兎に角、あれは省線の駅の近所まで出て、円タクを拾うつもりで歩いていたのだった。連れが一人 …
国際殺人団の崩壊(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
作者は、此の一篇を公にするのに、幾分の躊躇を感じないわけには行かないのだ。それというのも、実は此の一篇の本筋は作者が空想の上から捏ねあげたものではなく、作者の親しい亡友Mが、其の死 …
読書目安時間:約32分
作者は、此の一篇を公にするのに、幾分の躊躇を感じないわけには行かないのだ。それというのも、実は此の一篇の本筋は作者が空想の上から捏ねあげたものではなく、作者の親しい亡友Mが、其の死 …
壊れたバリコン(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
なにか読者諸君が吃驚するような新しいラジオの話をしろと仰有るのですか?そいつは弱ったな、此の頃はトント素晴らしい受信機の発明もないのでネ。そうそう近着の外国雑誌にストロボダインとい …
読書目安時間:約23分
なにか読者諸君が吃驚するような新しいラジオの話をしろと仰有るのですか?そいつは弱ったな、此の頃はトント素晴らしい受信機の発明もないのでネ。そうそう近着の外国雑誌にストロボダインとい …
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
なにがさて、例の金博士の存在は、現代に於ける最大奇蹟だ。 博士に頼みこむと、どんなむつかしそうに見える科学でも技術でも、解決しないものは一つもない。雲を呼んでくれと博士にいえば、博 …
読書目安時間:約22分
なにがさて、例の金博士の存在は、現代に於ける最大奇蹟だ。 博士に頼みこむと、どんなむつかしそうに見える科学でも技術でも、解決しないものは一つもない。雲を呼んでくれと博士にいえば、博 …
最小人間の怪:――人類のあとを継ぐもの――(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
この秘話をしてくれたN博士も、先々月この世を去った。今は、博士の許可を得ることなしに、ちょっぴり書き綴るわけだが、N博士の霊魂なるものがあらば、にがい顔をするかもしれない。 以下は …
読書目安時間:約4分
この秘話をしてくれたN博士も、先々月この世を去った。今は、博士の許可を得ることなしに、ちょっぴり書き綴るわけだが、N博士の霊魂なるものがあらば、にがい顔をするかもしれない。 以下は …
殺人の涯(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
「とうとう女房を殺してしまった」 私は尚も液体を掻き廻しながら、独り言を云った。 大きな金属製の桶に、その白い液体が入っていた。桶の下は電熱で温められている。ちょっとでも、手を憩め …
読書目安時間:約6分
「とうとう女房を殺してしまった」 私は尚も液体を掻き廻しながら、独り言を云った。 大きな金属製の桶に、その白い液体が入っていた。桶の下は電熱で温められている。ちょっとでも、手を憩め …
三角形の恐怖(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
それじゃ今日は例の話をいよいよすることにしますかな。罪ほろぼしにもなりますからね。そうです。罪ほろぼしです。私の若い時のね。いや艶っぽいことなんか身に覚えはありませんから、アテられ …
読書目安時間:約24分
それじゃ今日は例の話をいよいよすることにしますかな。罪ほろぼしにもなりますからね。そうです。罪ほろぼしです。私の若い時のね。いや艶っぽいことなんか身に覚えはありませんから、アテられ …
三重宙返りの記(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
僕は、このところ二三ヶ月、からだの工合がよくない。それでこの日、文壇航空会にも、残念ながら特殊飛行は断念して、辞退を申出ておいたのであった。殊に、その前々日は終日家にいて床について …
読書目安時間:約5分
僕は、このところ二三ヶ月、からだの工合がよくない。それでこの日、文壇航空会にも、残念ながら特殊飛行は断念して、辞退を申出ておいたのであった。殊に、その前々日は終日家にいて床について …
三十年後の世界(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間18分
万年雪とける 昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。 ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。 涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさ …
読書目安時間:約2時間18分
万年雪とける 昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。 ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。 涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさ …
三十年後の東京(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
万年雪とける 昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。 ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。 涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさ …
読書目安時間:約28分
万年雪とける 昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。 ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。 涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさ …
三人の双生児(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間28分
あの一見奇妙に見える新聞広告を出したのは、なにを隠そう、この妾なのである。 「尋ネ人……サワ蟹ノ棲メル川沿イニ庭アリテ紫ノ立葵咲ク。其ノ寮ノ太キ格子ヲ距テテ訪ネ来ル手ハ、黄八丈ノ着 …
読書目安時間:約1時間28分
あの一見奇妙に見える新聞広告を出したのは、なにを隠そう、この妾なのである。 「尋ネ人……サワ蟹ノ棲メル川沿イニ庭アリテ紫ノ立葵咲ク。其ノ寮ノ太キ格子ヲ距テテ訪ネ来ル手ハ、黄八丈ノ着 …
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
なにを感づいたものか、世界の宝といわれる、例の科学発明王金博士が、このほど上海の新聞に、とんでもない人騒がせの広告を出したものである。 その広告文をここへ抄録してみよう。 全世界人 …
読書目安時間:約20分
なにを感づいたものか、世界の宝といわれる、例の科学発明王金博士が、このほど上海の新聞に、とんでもない人騒がせの広告を出したものである。 その広告文をここへ抄録してみよう。 全世界人 …
地獄街道(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
銀座の舗道から、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに吃驚するほどの見窄らしい門があった。 「おお、此処だ——」 と辻永がステッキを揚げて、後から跟いてくる私に注意を …
読書目安時間:約22分
銀座の舗道から、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに吃驚するほどの見窄らしい門があった。 「おお、此処だ——」 と辻永がステッキを揚げて、後から跟いてくる私に注意を …
地獄の使者(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間33分
その朝、帆村荘六が食事をすませて、廊下づたいに同じ棟にある探偵事務所の居間へ足を踏み入れたとき、彼を待っていたように、机上の電話のベルが鳴った。 彼は左手の指にはさんでいた紙巻煙草 …
読書目安時間:約2時間33分
その朝、帆村荘六が食事をすませて、廊下づたいに同じ棟にある探偵事務所の居間へ足を踏み入れたとき、彼を待っていたように、机上の電話のベルが鳴った。 彼は左手の指にはさんでいた紙巻煙草 …
十年後のラジオ界(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
「ときにAさん。」 「なんだいBさん。」 「十年経ったら、ラジオ界はどうなる?」 「しれたことサ。ラジオ界なんてえものは、無くなるにきまってる。」 「へえ、なくなるかい。——今は随 …
読書目安時間:約4分
「ときにAさん。」 「なんだいBさん。」 「十年経ったら、ラジオ界はどうなる?」 「しれたことサ。ラジオ界なんてえものは、無くなるにきまってる。」 「へえ、なくなるかい。——今は随 …
十八時の音楽浴(新字新仮名)
読書目安時間:約60分
太陽の下では、地球が黄昏れていた。 その黄昏れゆく地帯の直下にある彼の国では、ちょうど十八時のタイム・シグナルがおごそかに百万人の住民の心臓をゆすぶりはじめた。 「ほう、十八時だ」 …
読書目安時間:約60分
太陽の下では、地球が黄昏れていた。 その黄昏れゆく地帯の直下にある彼の国では、ちょうど十八時のタイム・シグナルがおごそかに百万人の住民の心臓をゆすぶりはじめた。 「ほう、十八時だ」 …
『十八時の音楽浴』の作者の言葉(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
この書は、僕の科学小説集の第三冊目にあたる。 この前、同じ版元から『地球盗難』を刊行したが、これは意外に好評であった。この『地球盗難』はその後、三夜連続のラジオドラマとして放送され …
読書目安時間:約7分
この書は、僕の科学小説集の第三冊目にあたる。 この前、同じ版元から『地球盗難』を刊行したが、これは意外に好評であった。この『地球盗難』はその後、三夜連続のラジオドラマとして放送され …
省線電車の射撃手(新字新仮名)
読書目安時間:約46分
帝都二百万の市民の心臓を、一瞬にして掴んでしまったという評判のある、この「射撃手」事件が、突如として新聞の三面記事の王座にのぼった其の日のこと、東京××新聞の若手記者風間八十児君が …
読書目安時間:約46分
帝都二百万の市民の心臓を、一瞬にして掴んでしまったという評判のある、この「射撃手」事件が、突如として新聞の三面記事の王座にのぼった其の日のこと、東京××新聞の若手記者風間八十児君が …
少年探偵長(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間42分
怪事件の第一ページ まさか、その日、この大事件の第一ページであるとは春木少年は知らなかった。あとからいろいろ思い出してみると、その日は、運命の大きな力が、春木清をぐんぐんそこへひっ …
読書目安時間:約3時間42分
怪事件の第一ページ まさか、その日、この大事件の第一ページであるとは春木少年は知らなかった。あとからいろいろ思い出してみると、その日は、運命の大きな力が、春木清をぐんぐんそこへひっ …
白蛇の死(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
浅草寺の十二時の鐘の音を聞いたのはもう半時前の事、春の夜は闌けて甘く悩しく睡っていた。ただ一つ濃い闇を四角に仕切ってポカッと起きているのは、厚い煉瓦塀をくりぬいた変電所の窓で、内部 …
読書目安時間:約24分
浅草寺の十二時の鐘の音を聞いたのはもう半時前の事、春の夜は闌けて甘く悩しく睡っていた。ただ一つ濃い闇を四角に仕切ってポカッと起きているのは、厚い煉瓦塀をくりぬいた変電所の窓で、内部 …
新学期行進曲(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
第一景勉強組合 △騒然たる中学校の教室の音響——「やい亀井」「なんだ松岡」「随分黒いぞ」「黒くておかしいかい。やい白ん坊」「なんだ黒ん坊」などの早い会話のやりとりを遠く聞かせる。そ …
読書目安時間:約20分
第一景勉強組合 △騒然たる中学校の教室の音響——「やい亀井」「なんだ松岡」「随分黒いぞ」「黒くておかしいかい。やい白ん坊」「なんだ黒ん坊」などの早い会話のやりとりを遠く聞かせる。そ …
心臓盗難:烏啼天駆シリーズ・2(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
深夜の事件 黒眼鏡に、ひどい猫背の男が、虎猫色の長いオーバーを地上にひきずるようにして、深夜の町を歩いていた。 めずらしく暖い夜で、町並は霧にかくれていた。もはや深更のこととて行人 …
読書目安時間:約22分
深夜の事件 黒眼鏡に、ひどい猫背の男が、虎猫色の長いオーバーを地上にひきずるようにして、深夜の町を歩いていた。 めずらしく暖い夜で、町並は霧にかくれていた。もはや深更のこととて行人 …
人造人間エフ氏(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間49分
人造人間の家 このものがたりは、ソ連の有名な港町ウラジオ市にはじまる。そのウラジオの街を、山の方にのぼってゆくと、誰でもすぐ目につくだろうが、白い大きな壁と、そのうえに青くさびた丸 …
読書目安時間:約1時間49分
人造人間の家 このものがたりは、ソ連の有名な港町ウラジオ市にはじまる。そのウラジオの街を、山の方にのぼってゆくと、誰でもすぐ目につくだろうが、白い大きな壁と、そのうえに青くさびた丸 …
人造人間事件(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
理学士帆村荘六は、築地の夜を散歩するのがことに好きだった。 その夜も、彼はただ一人で、冷い秋雨にそぼ濡れながら、明石町の河岸から新富町の濠端へ向けてブラブラ歩いていた。暗い雨空を見 …
読書目安時間:約30分
理学士帆村荘六は、築地の夜を散歩するのがことに好きだった。 その夜も、彼はただ一人で、冷い秋雨にそぼ濡れながら、明石町の河岸から新富町の濠端へ向けてブラブラ歩いていた。暗い雨空を見 …
人造人間戦車の機密:――金博士シリーズ・2――(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
魔都上海に、夏が来た。 だが、金博士は、汗もかかないで、しきりに大きな手押式の起電機を廻している。室内の寒暖計は、今ちょうど十三度を指している。ばかに涼しい室である。それも道理、金 …
読書目安時間:約20分
魔都上海に、夏が来た。 だが、金博士は、汗もかかないで、しきりに大きな手押式の起電機を廻している。室内の寒暖計は、今ちょうど十三度を指している。ばかに涼しい室である。それも道理、金 …
人造人間の秘密(新字新仮名)
読書目安時間:約38分
ドイツ軍襲来 「おい、起きろ。ドイツ軍だ!」 隣室のハンスのこえである。部屋の扉は、いまにも叩き割られそうである。 私は、自分でも、なんだかわけのわからない奇声を発して、とび起きた …
読書目安時間:約38分
ドイツ軍襲来 「おい、起きろ。ドイツ軍だ!」 隣室のハンスのこえである。部屋の扉は、いまにも叩き割られそうである。 私は、自分でも、なんだかわけのわからない奇声を発して、とび起きた …
人造物語(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
人造人間——1931年型である。 ** 人造人間とはどんなものか。 人造人間とは、人間が作った人形で、そいつは、機械仕掛けで、人間の命令どおり、忠実に根気よく働く奴だ。 ** さて …
読書目安時間:約18分
人造人間——1931年型である。 ** 人造人間とはどんなものか。 人造人間とは、人間が作った人形で、そいつは、機械仕掛けで、人間の命令どおり、忠実に根気よく働く奴だ。 ** さて …
人体解剖を看るの記(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
僕は最近、はからずも屍体解剖を看るの機会を持った。僕の友人に、慶応の生理学の先生である林髞博士というのがあるが、この林博士は前から僕に屍体解剖を見物するように薦めてくれたのであった …
読書目安時間:約17分
僕は最近、はからずも屍体解剖を看るの機会を持った。僕の友人に、慶応の生理学の先生である林髞博士というのがあるが、この林博士は前から僕に屍体解剖を見物するように薦めてくれたのであった …
振動魔(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
僕はこれから先ず、友人柿丘秋郎が企てた世にも奇怪きわまる実験について述べようと思う。 柿丘秋郎と云ったのでは、読者は一向興味を覚えないだろうと思うが、これは無論、僕が仮りにつけた変 …
読書目安時間:約35分
僕はこれから先ず、友人柿丘秋郎が企てた世にも奇怪きわまる実験について述べようと思う。 柿丘秋郎と云ったのでは、読者は一向興味を覚えないだろうと思うが、これは無論、僕が仮りにつけた変 …
深夜の市長(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間41分
ナニシロコレハ一篇ノ小説デアル。作中、T市長ダノ銀座ダノトイウ名詞ガ出テクルガ、コレハ決シテ何処カノ帝都ニアッタ実話ナドヲもでるニシタモノデハゴザイマセン。 「深夜の市長」に始めて …
読書目安時間:約3時間41分
ナニシロコレハ一篇ノ小説デアル。作中、T市長ダノ銀座ダノトイウ名詞ガ出テクルガ、コレハ決シテ何処カノ帝都ニアッタ実話ナドヲもでるニシタモノデハゴザイマセン。 「深夜の市長」に始めて …
心霊研究会の怪(旧字旧仮名)
読書目安時間:約16分
その頃の研究 昭和五年から十年頃まで、わが國で、心靈研究がかなり盛んだつたことがある。 外國では、その當時も心靈研究が盛んであり、有名なシャーロック・ホームズ探偵の物語をたくさん書 …
読書目安時間:約16分
その頃の研究 昭和五年から十年頃まで、わが國で、心靈研究がかなり盛んだつたことがある。 外國では、その當時も心靈研究が盛んであり、有名なシャーロック・ホームズ探偵の物語をたくさん書 …
すり替え怪画:烏啼天駆シリーズ・5(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
ルパン式盗難 その朝、志々戸伯爵は、自分の書斎に足を踏み入れるや、たちまち大驚愕に襲われた。 それは書斎の壁にかけてあったセザンヌ筆の「カルタを取る人」の画に異常を発見したためであ …
読書目安時間:約26分
ルパン式盗難 その朝、志々戸伯爵は、自分の書斎に足を踏み入れるや、たちまち大驚愕に襲われた。 それは書斎の壁にかけてあったセザンヌ筆の「カルタを取る人」の画に異常を発見したためであ …
西湖の屍人(新字新仮名)
読書目安時間:約40分
銀座裏の酒場、サロン船を出たときには、二人とも、ひどく酩酊していた。 私は私で、黄色い疎らな街燈に照らしだされた馴染の裏街が、まるで水の中に漬っているような気がしたし、帆村のやつは …
読書目安時間:約40分
銀座裏の酒場、サロン船を出たときには、二人とも、ひどく酩酊していた。 私は私で、黄色い疎らな街燈に照らしだされた馴染の裏街が、まるで水の中に漬っているような気がしたし、帆村のやつは …
成層圏飛行と私のメモ(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
成層圏飛行について、なにか書けという注文である。 素人の私に、なにが書けるわけのものでない。が、素人をむき出しにして、専門家のいわないことをのべてみるのも、一興であろうと思い、ペン …
読書目安時間:約5分
成層圏飛行について、なにか書けという注文である。 素人の私に、なにが書けるわけのものでない。が、素人をむき出しにして、専門家のいわないことをのべてみるのも、一興であろうと思い、ペン …
赤外線男(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間17分
この奇怪極まる探偵事件に、主人公を勤める「赤外線男」なるものは、一体全体何者であるか?それはまたどうした風変りの人間なのであるか?恐らくこの世に於て、いまだ曾て認識されたことのなか …
読書目安時間:約1時間17分
この奇怪極まる探偵事件に、主人公を勤める「赤外線男」なるものは、一体全体何者であるか?それはまたどうした風変りの人間なのであるか?恐らくこの世に於て、いまだ曾て認識されたことのなか …
赤耀館事件の真相(新字新仮名)
読書目安時間:約60分
「赤耀館事件」と言えば、昨年起った泰山鳴動して鼠一匹といった風の、一見詰らない事件であった。赤耀館に関係ある人々の急死が何か犯罪の糸にあやつられているのではないかと言うので、其筋で …
読書目安時間:約60分
「赤耀館事件」と言えば、昨年起った泰山鳴動して鼠一匹といった風の、一見詰らない事件であった。赤耀館に関係ある人々の急死が何か犯罪の糸にあやつられているのではないかと言うので、其筋で …
雪魔(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
東京の学校が休みになったので、彦太少年は三月ぶりに木谷村へ帰って来た。村はすっかり雪の中にうずまっていた。この冬は雪がたいへん多くて、もう四回も雪下ろしをしたそうである。駅をおりる …
読書目安時間:約27分
東京の学校が休みになったので、彦太少年は三月ぶりに木谷村へ帰って来た。村はすっかり雪の中にうずまっていた。この冬は雪がたいへん多くて、もう四回も雪下ろしをしたそうである。駅をおりる …
一九五〇年の殺人(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
「旦那人殺しでがすよ」 「ナニ人殺しだって?何処だッ、誰が殺されたのだッ、原稿の頁が無いのだ、早く云え」 「そッそんなに急いでも駄目です。場所は向うの橋の下ですよ。手足がバラバラに …
読書目安時間:約5分
「旦那人殺しでがすよ」 「ナニ人殺しだって?何処だッ、誰が殺されたのだッ、原稿の頁が無いのだ、早く云え」 「そッそんなに急いでも駄目です。場所は向うの橋の下ですよ。手足がバラバラに …
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
大上海の地下を二百メートル下った地底に、宇宙線をさけて生活している例の変り者の大科学者金博士のことは、かねて読者もお聞き及びであろう。 かの博士が、今日までに発明した超新兵器のかず …
読書目安時間:約22分
大上海の地下を二百メートル下った地底に、宇宙線をさけて生活している例の変り者の大科学者金博士のことは、かねて読者もお聞き及びであろう。 かの博士が、今日までに発明した超新兵器のかず …
千年後の世界(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
冷凍死 若き野心にみちた科学者フルハタは、棺の中に目ざめてから、もう七日になる。 「どうしたのかなあ。もう棺の蓋を、こつこつと叩く者があってもいいはずだ」 彼は、ひたすら棺の外から …
読書目安時間:約16分
冷凍死 若き野心にみちた科学者フルハタは、棺の中に目ざめてから、もう七日になる。 「どうしたのかなあ。もう棺の蓋を、こつこつと叩く者があってもいいはずだ」 彼は、ひたすら棺の外から …
大宇宙遠征隊(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間49分
黒いインキをとかしたようなまっくらがりの宇宙を、今おびただしい噴行艇の群が、とんでいる。 「噴行艇だ!」 噴行艇といっても、なんのことか、わからない人もあるであろう。噴行艇は、ロケ …
読書目安時間:約1時間49分
黒いインキをとかしたようなまっくらがりの宇宙を、今おびただしい噴行艇の群が、とんでいる。 「噴行艇だ!」 噴行艇といっても、なんのことか、わからない人もあるであろう。噴行艇は、ロケ …
大空魔艦(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間3分
模型飛行機 丁坊という名でよばれている東京ホテルの給仕君ほど、飛行機の好きな少年は珍らしいであろう。 丁坊は、たくさんの模型飛行機をもっている。みんなで五六十台もあろうか。これはみ …
読書目安時間:約1時間3分
模型飛行機 丁坊という名でよばれている東京ホテルの給仕君ほど、飛行機の好きな少年は珍らしいであろう。 丁坊は、たくさんの模型飛行機をもっている。みんなで五六十台もあろうか。これはみ …
第五氷河期(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
氷河狂の老博士 「氷河狂」といえば、誰も知らない者はない北見徹太郎博士は、ついに警視庁へ出頭を命ぜられた。 老博士は、銀髪銀髯の中から、血色のいい頬を耀かせ、調室の壊れかかった椅子 …
読書目安時間:約29分
氷河狂の老博士 「氷河狂」といえば、誰も知らない者はない北見徹太郎博士は、ついに警視庁へ出頭を命ぜられた。 老博士は、銀髪銀髯の中から、血色のいい頬を耀かせ、調室の壊れかかった椅子 …
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
ずいぶんいい気持で、兵器発明王の金博士は、豆戦車の中に睡った。 睡眠剤の覚め際は、縁側から足をすとんと踏み外すが如く、極めてすとん的なるものであって、金博士は鼾を途中でぴたりと停め …
読書目安時間:約21分
ずいぶんいい気持で、兵器発明王の金博士は、豆戦車の中に睡った。 睡眠剤の覚め際は、縁側から足をすとんと踏み外すが如く、極めてすとん的なるものであって、金博士は鼾を途中でぴたりと停め …
大脳手術(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
美しき脛 いちばん明るい窓の下で、毛脛を撫でているところへ、例によって案内も乞わず、友人の鳴海三郎がぬっと入ってきた。 「よう」と、鳴海はいつもと同じおきまりの挨拶声を出したあとで …
読書目安時間:約31分
美しき脛 いちばん明るい窓の下で、毛脛を撫でているところへ、例によって案内も乞わず、友人の鳴海三郎がぬっと入ってきた。 「よう」と、鳴海はいつもと同じおきまりの挨拶声を出したあとで …
太平洋魔城(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間8分
怪しい空缶 どういうものか、ちかごろしきりと太平洋上がさわがしい。あとからあとへと、いくつもの遭難事件が起るのであった。 このことについて、誰よりもふかい注意をはらっているのは、わ …
読書目安時間:約3時間8分
怪しい空缶 どういうものか、ちかごろしきりと太平洋上がさわがしい。あとからあとへと、いくつもの遭難事件が起るのであった。 このことについて、誰よりもふかい注意をはらっているのは、わ …
太平洋雷撃戦隊(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
軍港を出た五潜水艦 謎の航路はどこまで 「波のうねりが、だいぶ高くなって来ましたですな」 先任将校は欄干につかまったまま、暗夜の海上をすかしてみました。 「うん。風が呻りだしたね」 …
読書目安時間:約24分
軍港を出た五潜水艦 謎の航路はどこまで 「波のうねりが、だいぶ高くなって来ましたですな」 先任将校は欄干につかまったまま、暗夜の海上をすかしてみました。 「うん。風が呻りだしたね」 …
第四次元の男(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
これからわたくしの述べようとする身の上話を、ばかばかしいと思う人は、即座に、後を読むのをやめてもらいたい。そして、この本の頁を、ぱらぱらとめくって、他の先生の傑作小説を読むのがいい …
読書目安時間:約19分
これからわたくしの述べようとする身の上話を、ばかばかしいと思う人は、即座に、後を読むのをやめてもらいたい。そして、この本の頁を、ぱらぱらとめくって、他の先生の傑作小説を読むのがいい …
断層顔(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
事件依頼人 昭和五十二年の冬十二月十二日は、雪と共に夜が明けた。 老探偵帆村荘六は、いつものように地上室の寝床の上に目をさました。 美人の人造人間のカユミ助手が定刻を告げて起こしに …
読書目安時間:約33分
事件依頼人 昭和五十二年の冬十二月十二日は、雪と共に夜が明けた。 老探偵帆村荘六は、いつものように地上室の寝床の上に目をさました。 美人の人造人間のカユミ助手が定刻を告げて起こしに …
探偵会話 下駄を探せ:――芝公園 女の殺人事件――(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
「——観音さまの?」 「——ええ、芝公園増上寺の境内に若い女の絞殺体が二つ、放り捨てられていたというんです。ちょっと新聞の記事を読んでみましょうか—— 『十七日(昭和二十一年八月) …
読書目安時間:約5分
「——観音さまの?」 「——ええ、芝公園増上寺の境内に若い女の絞殺体が二つ、放り捨てられていたというんです。ちょっと新聞の記事を読んでみましょうか—— 『十七日(昭和二十一年八月) …
探偵小説と犯罪事件(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
探偵小説と犯罪事件との関連性についてはいつの世にも論じられるものであるが、最近の世相はまた事新しくこのトピックを取上げる機会を孕んでいるようだ。そこで稍先廻りをしてここに簡単なメモ …
読書目安時間:約4分
探偵小説と犯罪事件との関連性についてはいつの世にも論じられるものであるが、最近の世相はまた事新しくこのトピックを取上げる機会を孕んでいるようだ。そこで稍先廻りをしてここに簡単なメモ …
地球盗難(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間49分
「ほんとうかなア、——」 と、河村武夫はつい口に出してしまった。 「えッ、ほんとうて、何のことなの」 武夫と一緒に歩いていたお美代は、怪訝な顔をして武夫の方にすり寄った。 「イヤ何 …
読書目安時間:約2時間49分
「ほんとうかなア、——」 と、河村武夫はつい口に出してしまった。 「えッ、ほんとうて、何のことなの」 武夫と一緒に歩いていたお美代は、怪訝な顔をして武夫の方にすり寄った。 「イヤ何 …
『地球盗難』の作者の言葉(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
本書は、僕がこれまでに作った科学小説らしいものを殆んど全部集めたものだ。科学小説らしい——といって、これを科学小説と云い切らぬわけは二つある。一つは僕が探偵小説として発表したものが …
読書目安時間:約11分
本書は、僕がこれまでに作った科学小説らしいものを殆んど全部集めたものだ。科学小説らしい——といって、これを科学小説と云い切らぬわけは二つある。一つは僕が探偵小説として発表したものが …
地球発狂事件(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間54分
この突拍子もない名称をかぶせられた「地球発狂事件」は、実はその前にもう一つの名称で呼ばれていた。それは「巨船ゼムリヤ号発狂事件」というのであった。これは前代未聞のこの怪事件を最初に …
読書目安時間:約2時間54分
この突拍子もない名称をかぶせられた「地球発狂事件」は、実はその前にもう一つの名称で呼ばれていた。それは「巨船ゼムリヤ号発狂事件」というのであった。これは前代未聞のこの怪事件を最初に …
地球要塞(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間25分
怪放送——お化け地球事件とは? 西暦一九七〇年の夏—— 折から私は、助手のオルガ姫をつれて、絶海の孤島クロクロ島にいた。 クロクロ島——というのは、いくら地図をさがしても、決して見 …
読書目安時間:約2時間25分
怪放送——お化け地球事件とは? 西暦一九七〇年の夏—— 折から私は、助手のオルガ姫をつれて、絶海の孤島クロクロ島にいた。 クロクロ島——というのは、いくら地図をさがしても、決して見 …
地球を狙う者(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
「火星に近づく」と報ぜられるとき、南洋の一孤島で惨殺された火星研究の老博士、その手になるメモには果して何が秘められていたか?これは世界最大の恐るべき戦慄だ! 「おいボーイ君。この汽 …
読書目安時間:約30分
「火星に近づく」と報ぜられるとき、南洋の一孤島で惨殺された火星研究の老博士、その手になるメモには果して何が秘められていたか?これは世界最大の恐るべき戦慄だ! 「おいボーイ君。この汽 …
地軸作戦:――金博士シリーズ・9――(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
某大国宰相の特使だと称する人物が、このたび金博士の許にやってきた。 金博士は、当時香港の別荘に起き伏ししているのである。 別荘と申しても、これは熱海の海岸などによくある竹の垣を結い …
読書目安時間:約19分
某大国宰相の特使だと称する人物が、このたび金博士の許にやってきた。 金博士は、当時香港の別荘に起き伏ししているのである。 別荘と申しても、これは熱海の海岸などによくある竹の垣を結い …
地中魔(新字新仮名)
読書目安時間:約50分
少年探偵三浦三吉 永く降りつづいた雨がやっとやんで、半月ぶりにカラリと空が晴れわたった。晴れると同時に、陽の光はジリジリと暑さをもって来た。 ここは東京丸の内にある有名な私立探偵帆 …
読書目安時間:約50分
少年探偵三浦三吉 永く降りつづいた雨がやっとやんで、半月ぶりにカラリと空が晴れわたった。晴れると同時に、陽の光はジリジリと暑さをもって来た。 ここは東京丸の内にある有名な私立探偵帆 …
地底戦車の怪人(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間52分
この物語は、西暦一千九百五十年に、はじまる。 すると、昭和の年号でいって、昭和二十五年にあたるわけである。 今年は、昭和十五年だから今から、丁度十年後のことだ、と思っていただきたい …
読書目安時間:約1時間52分
この物語は、西暦一千九百五十年に、はじまる。 すると、昭和の年号でいって、昭和二十五年にあたるわけである。 今年は、昭和十五年だから今から、丁度十年後のことだ、と思っていただきたい …
千早館の迷路(新字新仮名)
読書目安時間:約50分
やがて四月の声を聞こうというのに、寒さはきびしかった。夜が更けるにつれて胴慄いが出て来たので、帆村荘六は客の話をしばらく中絶して貰って、裏庭までそだを取りに行った。 やがて彼は一抱 …
読書目安時間:約50分
やがて四月の声を聞こうというのに、寒さはきびしかった。夜が更けるにつれて胴慄いが出て来たので、帆村荘六は客の話をしばらく中絶して貰って、裏庭までそだを取りに行った。 やがて彼は一抱 …
超人間X号(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間59分
ねずみ色の雲が、ついに動きだした。 すごいうなり声をあげて、つめたい風が、吹きつけてきた。 ぐんぐんひろがる雲。 万年雪をいただいた連山の峰をめがけて、どどどッとおしよせてくる。 …
読書目安時間:約2時間59分
ねずみ色の雲が、ついに動きだした。 すごいうなり声をあげて、つめたい風が、吹きつけてきた。 ぐんぐんひろがる雲。 万年雪をいただいた連山の峰をめがけて、どどどッとおしよせてくる。 …
諜報中継局(新字新仮名)
読書目安時間:約40分
問題の「諜報中継局Z85号」が、いかなる国家に属しているのか、それは今のところ詳かでない。 しかしこの諜報中継局が、アメリカの政治首都ワシントンと経済首都ニューヨークを含む地域内に …
読書目安時間:約40分
問題の「諜報中継局Z85号」が、いかなる国家に属しているのか、それは今のところ詳かでない。 しかしこの諜報中継局が、アメリカの政治首都ワシントンと経済首都ニューヨークを含む地域内に …
沈没男(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
(×月×日、スカパフロー発) 余は本日正午、無事ロイヤル・オーク号に乗艦せるをもって、御安心あれ。 余は、どうせ乗艦するなら、いきのいい海戦を見物したいものと思い、英国海軍省に対し …
読書目安時間:約9分
(×月×日、スカパフロー発) 余は本日正午、無事ロイヤル・オーク号に乗艦せるをもって、御安心あれ。 余は、どうせ乗艦するなら、いきのいい海戦を見物したいものと思い、英国海軍省に対し …
月世界探険記(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
新宇宙艇 月世界探険の新宇宙艇は、いまやすべての出発準備がととのった。 東京の郊外の砧といえば畑と野原ばかりのさびしいところである。そこに三年前から密かにバラック工場がたてられ、そ …
読書目安時間:約29分
新宇宙艇 月世界探険の新宇宙艇は、いまやすべての出発準備がととのった。 東京の郊外の砧といえば畑と野原ばかりのさびしいところである。そこに三年前から密かにバラック工場がたてられ、そ …
寺田先生と僕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
題名ほどの深い關係もないのであるが、科學ペンからの求めで、已むを得ずペンを執る。 僕が寺田先生を始めて知つたのは、多くの人がさうであるやうに、第一には「吾輩ハ猫デアル」の水島寒月に …
読書目安時間:約6分
題名ほどの深い關係もないのであるが、科學ペンからの求めで、已むを得ずペンを執る。 僕が寺田先生を始めて知つたのは、多くの人がさうであるやうに、第一には「吾輩ハ猫デアル」の水島寒月に …
電気看板の神経(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
冒頭に一応断っておくがね、この話では、登場人物が次から次へとジャンジャン死ぬることになっている——というよりも「殺戮される」ことになっているといった方がいいかも知れない。そういう点 …
読書目安時間:約29分
冒頭に一応断っておくがね、この話では、登場人物が次から次へとジャンジャン死ぬることになっている——というよりも「殺戮される」ことになっているといった方がいいかも知れない。そういう点 …
電気鳩(新字新仮名)
読書目安時間:約52分
あやしい鳩 高一とミドリのきょうだいは、伝書鳩をかっていました。 もともとこれは、お父さまがかっていらっしゃる鳩なのですが、お父さまがある大切なご用で、とおいところへお出かけになっ …
読書目安時間:約52分
あやしい鳩 高一とミドリのきょうだいは、伝書鳩をかっていました。 もともとこれは、お父さまがかっていらっしゃる鳩なのですが、お父さまがある大切なご用で、とおいところへお出かけになっ …
電気風呂の怪死事件(新字新仮名)
読書目安時間:約34分
井神陽吉は風呂が好きだった。 殊に、余り客の立て混んでいない昼湯の、あの長閑な雰囲気は、彼の様に所在のない人間が、贅沢な眠から醒めたのちの体の惰気を、そのまま運んでゆくのに最も適し …
読書目安時間:約34分
井神陽吉は風呂が好きだった。 殊に、余り客の立て混んでいない昼湯の、あの長閑な雰囲気は、彼の様に所在のない人間が、贅沢な眠から醒めたのちの体の惰気を、そのまま運んでゆくのに最も適し …
東京要塞(新字新仮名)
読書目安時間:約37分
非常警戒 凍りつくような空っ風が、鋪道の上をひゅーんというような唸り声をあげて滑ってゆく。もう夜はいたく更けていた。遠くに中華そばやの流してゆく笛の音が聞える。 丁度そのころ、築地 …
読書目安時間:約37分
非常警戒 凍りつくような空っ風が、鋪道の上をひゅーんというような唸り声をあげて滑ってゆく。もう夜はいたく更けていた。遠くに中華そばやの流してゆく笛の音が聞える。 丁度そのころ、築地 …
透明猫(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
崖下の道 いつも通りなれた崖下を歩いていた青二だった。 崖の上にはいい住宅がならんでいた。赤い屋根の洋館もすくなくない。 崖下の道の、崖と反対の方は、雑草のはえしげった低い堤が下の …
読書目安時間:約21分
崖下の道 いつも通りなれた崖下を歩いていた青二だった。 崖の上にはいい住宅がならんでいた。赤い屋根の洋館もすくなくない。 崖下の道の、崖と反対の方は、雑草のはえしげった低い堤が下の …
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
蒸し暑い或る夜のこと、発明王金博士は、袖のながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓をのぞきこんでいた。 南京路の雑沓は、今が真盛りであった。 金博士の視線は、さっきから、飾窓 …
読書目安時間:約20分
蒸し暑い或る夜のこと、発明王金博士は、袖のながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓をのぞきこんでいた。 南京路の雑沓は、今が真盛りであった。 金博士の視線は、さっきから、飾窓 …
独本土上陸作戦:――金博士シリーズ・3――(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
およそ新兵器の発明にかけては、今日世界に及ぶものなしと称せられる金博士が、とつぜん謎の失踪をとげた。 おどろいたのは、ここ上海市の地下二百メートルにある博士の実験室に日参していた世 …
読書目安時間:約20分
およそ新兵器の発明にかけては、今日世界に及ぶものなしと称せられる金博士が、とつぜん謎の失踪をとげた。 おどろいたのは、ここ上海市の地下二百メートルにある博士の実験室に日参していた世 …
時計屋敷の秘密(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間14分
気味のわるい名物 「時計屋敷はおっかねえところだから、お前たちいっちゃなんねえぞ」 「お父うのいうとおりだ。時計屋敷へはいったがさいご、生きて二度とは出てこられねえぞ。おっかねえ化 …
読書目安時間:約1時間14分
気味のわるい名物 「時計屋敷はおっかねえところだから、お前たちいっちゃなんねえぞ」 「お父うのいうとおりだ。時計屋敷へはいったがさいご、生きて二度とは出てこられねえぞ。おっかねえ化 …
特許多腕人間方式(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
×月×日雨。 午前十時、田村町特許事務所に出勤。 雫の垂れた洋傘をひっさげて、部屋の扉を押して入ったとたんに、応接椅子の上に、腰を下ろしていた見慣れぬ仁が、ただならぬ眼光で、余の方 …
読書目安時間:約26分
×月×日雨。 午前十時、田村町特許事務所に出勤。 雫の垂れた洋傘をひっさげて、部屋の扉を押して入ったとたんに、応接椅子の上に、腰を下ろしていた見慣れぬ仁が、ただならぬ眼光で、余の方 …
仲々死なぬ彼奴(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
大熊老人にとって、凡そ不思議な存在は、少年喜助であった。 喜助君なら、今でも一緒に抱いて寝てやってもよいと思っているのであった。今年廿二歳になって、たいへん大人びてきた喜助君の方で …
読書目安時間:約19分
大熊老人にとって、凡そ不思議な存在は、少年喜助であった。 喜助君なら、今でも一緒に抱いて寝てやってもよいと思っているのであった。今年廿二歳になって、たいへん大人びてきた喜助君の方で …
二、〇〇〇年戦争(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間10分
発端 そのころ、広い太青洋を挟んで、二つの国が向きあっていた。 太青洋の西岸には、アカグマ国のイネ州が東北から西南にかけて、千百キロに余る長い海岸線を持ち、またその太青洋の東岸には …
読書目安時間:約1時間10分
発端 そのころ、広い太青洋を挟んで、二つの国が向きあっていた。 太青洋の西岸には、アカグマ国のイネ州が東北から西南にかけて、千百キロに余る長い海岸線を持ち、またその太青洋の東岸には …
人間灰(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
赤沢博士の経営する空気工場は海抜一千三百メートルの高原にある右足湖畔に建っていた。この空気工場では、三年ほどの間に雇人がつぎつぎに六人も、奇怪なる失踪をした。そして今に至るも、誰一 …
読書目安時間:約33分
赤沢博士の経営する空気工場は海抜一千三百メートルの高原にある右足湖畔に建っていた。この空気工場では、三年ほどの間に雇人がつぎつぎに六人も、奇怪なる失踪をした。そして今に至るも、誰一 …
ネオン横丁殺人事件(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
近頃での一番さむい夜だった。 暦のうちでは、まだ秋のなかに数えられる日だったけれど、太陽の黒点のせいでもあろうか、寒暖計の水銀柱はグンと下の方へ縮んでしまい、その夜更け、戸外に或い …
読書目安時間:約27分
近頃での一番さむい夜だった。 暦のうちでは、まだ秋のなかに数えられる日だったけれど、太陽の黒点のせいでもあろうか、寒暖計の水銀柱はグンと下の方へ縮んでしまい、その夜更け、戸外に或い …
脳の中の麗人(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
奇異の患者 「ねえ、博士。宮川さんは、いよいよ明日、退院させるのでございますか」 「そうだ、明日退院だ。それがどうかしたというのかね、婦長」 「あんな状態で、退院させてもいいもので …
読書目安時間:約28分
奇異の患者 「ねえ、博士。宮川さんは、いよいよ明日、退院させるのでございますか」 「そうだ、明日退院だ。それがどうかしたというのかね、婦長」 「あんな状態で、退院させてもいいもので …
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
今私は、一人の客人を伴って、この上海で有名な風変りな学者、金博士の許へ、案内していくところである。 博士の住居が、どこにあるか、知っている人は、ほんの僅かである。人はよく、博士が南 …
読書目安時間:約19分
今私は、一人の客人を伴って、この上海で有名な風変りな学者、金博士の許へ、案内していくところである。 博士の住居が、どこにあるか、知っている人は、ほんの僅かである。人はよく、博士が南 …
蠅(新字新仮名)
読書目安時間:約40分
小春日和の睡さったらない。白い壁をめぐらした四角い部屋の中に机を持ちこんで、ボンヤリと肘をついている。もう二時間あまりもこうやっている。身体がジクジクと発酵してきそうだ。 白い天井 …
読書目安時間:約40分
小春日和の睡さったらない。白い壁をめぐらした四角い部屋の中に机を持ちこんで、ボンヤリと肘をついている。もう二時間あまりもこうやっている。身体がジクジクと発酵してきそうだ。 白い天井 …
蠅男(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間58分
発端 問題の「蠅男」と呼ばれる不可思議なる人物は、案外その以前から、われわれとおなじ空気を吸っていたのだ。 只われわれは、よもやそういう奇怪きわまる生物が、身辺近くに棲息していよう …
読書目安時間:約3時間58分
発端 問題の「蠅男」と呼ばれる不可思議なる人物は、案外その以前から、われわれとおなじ空気を吸っていたのだ。 只われわれは、よもやそういう奇怪きわまる生物が、身辺近くに棲息していよう …
獏鸚(新字新仮名)
読書目安時間:約34分
一度トーキーの撮影を見たいものだと、例の私立探偵帆村荘六が口癖のように云っていたものだから、その日——というと五月一日だったが——私は早く彼を誘いだしに小石川のアパートへ行った。 …
読書目安時間:約34分
一度トーキーの撮影を見たいものだと、例の私立探偵帆村荘六が口癖のように云っていたものだから、その日——というと五月一日だったが——私は早く彼を誘いだしに小石川のアパートへ行った。 …
白銅貨の効用(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
シノプシス 政府が鋳造せる白銅貨の効用について徹底的に論じた一文である。これを以て白銅貨の文化的価値を明かにしたものという可く、随って考現学の資料ともなるものである。 序論 ここに …
読書目安時間:約4分
シノプシス 政府が鋳造せる白銅貨の効用について徹底的に論じた一文である。これを以て白銅貨の文化的価値を明かにしたものという可く、随って考現学の資料ともなるものである。 序論 ここに …
爆薬の花籠(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間26分
祖国近し 房枝は、三等船室の丸窓に、顔をおしあてて、左へ左へと走りさる大波のうねりを、ぼんやりと、ながめていた。 波の背に、さっきまでは、入日の残光がきらきらとうつくしくかがやいて …
読書目安時間:約3時間26分
祖国近し 房枝は、三等船室の丸窓に、顔をおしあてて、左へ左へと走りさる大波のうねりを、ぼんやりと、ながめていた。 波の背に、さっきまでは、入日の残光がきらきらとうつくしくかがやいて …
爬虫館事件(新字新仮名)
読書目安時間:約39分
前夜の調べ物の疲れで、もう少し寝ていたいところを起された私立探偵局の帆村荘六だった。 「お越し下すったのは、どんな方かね」 「ご婦人です」助手の須永が朗らかさを強いて隠すような調子 …
読書目安時間:約39分
前夜の調べ物の疲れで、もう少し寝ていたいところを起された私立探偵局の帆村荘六だった。 「お越し下すったのは、どんな方かね」 「ご婦人です」助手の須永が朗らかさを強いて隠すような調子 …
発明小僧(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
自動車用ペンキ爆弾 これは特種の赤ペンキをタップリ含んでいるピンポン球ぐらいの小球にして、叩きつけると、すぐ、壊れるものなり。携帯に便にして、ポケットに四つや五つ忍ばせても大丈夫な …
読書目安時間:約20分
自動車用ペンキ爆弾 これは特種の赤ペンキをタップリ含んでいるピンポン球ぐらいの小球にして、叩きつけると、すぐ、壊れるものなり。携帯に便にして、ポケットに四つや五つ忍ばせても大丈夫な …
一坪館(新字新仮名)
読書目安時間:約57分
銀座の焼跡 すばらしき一坪館! 一坪館て何だろうか。 何がそんなにすばらしいのか。 早くそれを御話ししたいのであるが、待って下さいよ、よく考えて見るとやっぱり一坪館のお誕生のところ …
読書目安時間:約57分
銀座の焼跡 すばらしき一坪館! 一坪館て何だろうか。 何がそんなにすばらしいのか。 早くそれを御話ししたいのであるが、待って下さいよ、よく考えて見るとやっぱり一坪館のお誕生のところ …
氷河期の怪人(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
ヒマラヤ越え このふしぎな物語は旅客機ヤヨイ号が、ヒマラヤ山脈中に不時着した(?)事件から、はしなくも、くりひろげられる。 このヤヨイ号には、ある特別な用事をおびて、ヨーロッパへわ …
読書目安時間:約15分
ヒマラヤ越え このふしぎな物語は旅客機ヤヨイ号が、ヒマラヤ山脈中に不時着した(?)事件から、はしなくも、くりひろげられる。 このヤヨイ号には、ある特別な用事をおびて、ヨーロッパへわ …
ヒルミ夫人の冷蔵鞄(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
或る靄のふかい朝—— 僕はカメラを頸にかけて、幅のひろい高橋のたもとに立っていた。 朝靄のなかに、見上げるような高橋が、女の胸のようなゆるやかな曲線を描いて、眼界を区切っていた。組 …
読書目安時間:約29分
或る靄のふかい朝—— 僕はカメラを頸にかけて、幅のひろい高橋のたもとに立っていた。 朝靄のなかに、見上げるような高橋が、女の胸のようなゆるやかな曲線を描いて、眼界を区切っていた。組 …
ふしぎ国探検(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間60分
やけ野原を、東助とヒトミが、汗をたらしながら、さまよっていた。夏のおわりに近い日の午後のことで、台風ぎみの曇り空に、雲の行き足がだんだん早くなっていく。 東助少年は手に捕虫網をもち …
読書目安時間:約1時間60分
やけ野原を、東助とヒトミが、汗をたらしながら、さまよっていた。夏のおわりに近い日の午後のことで、台風ぎみの曇り空に、雲の行き足がだんだん早くなっていく。 東助少年は手に捕虫網をもち …
不思議なる空間断層(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
友人の友枝八郎は、ちょっと風変りな人物である。どんなに彼が風変りであるか、それを知るには、彼が私によく聞かせる夢の話を御紹介するのが捷径であろう。 かれ友枝は、好んで夢の話をした。 …
読書目安時間:約30分
友人の友枝八郎は、ちょっと風変りな人物である。どんなに彼が風変りであるか、それを知るには、彼が私によく聞かせる夢の話を御紹介するのが捷径であろう。 かれ友枝は、好んで夢の話をした。 …
俘囚(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
「ねエ、すこし外へ出てみない!」 「うん。——」 あたしたちは、すこし飲みすぎたようだ。ステップが踉々と崩れて、ちっとも鮮かに極らない。松永の肩に首を載せている——というよりも、彼 …
読書目安時間:約31分
「ねエ、すこし外へ出てみない!」 「うん。——」 あたしたちは、すこし飲みすぎたようだ。ステップが踉々と崩れて、ちっとも鮮かに極らない。松永の肩に首を載せている——というよりも、彼 …
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
さても日本対米英開戦以来、わが金博士は従来にもまして、浮世をうるさがっている様子であった。 「ねえ、そうでしょう。白状なさい」 と、その客は金博士の寝衣の裾をおさえて話しかけるので …
読書目安時間:約24分
さても日本対米英開戦以来、わが金博士は従来にもまして、浮世をうるさがっている様子であった。 「ねえ、そうでしょう。白状なさい」 と、その客は金博士の寝衣の裾をおさえて話しかけるので …
放送された遺言(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
「われらの棲んでいる球形の世界が破壊するのはいつのことなのであろうか?天文学者の説くところによれば、これはわれらの世界が他の遊星と衝突し、われもかれもが煙のごとくに飛散して消滅する …
読書目安時間:約18分
「われらの棲んでいる球形の世界が破壊するのはいつのことなのであろうか?天文学者の説くところによれば、これはわれらの世界が他の遊星と衝突し、われもかれもが煙のごとくに飛散して消滅する …
麻雀インチキ物語(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
インチキとは、不正手段である。だから君子のなすべきものではない。 近来、日本のゲーム界に君臨している麻雀にも、いろいろとインチキが可能である。日本麻雀聯盟でも、無論、インチキを排斥 …
読書目安時間:約9分
インチキとは、不正手段である。だから君子のなすべきものではない。 近来、日本のゲーム界に君臨している麻雀にも、いろいろとインチキが可能である。日本麻雀聯盟でも、無論、インチキを排斥 …
麻雀殺人事件(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
それは、目下売出しの青年探偵、帆村荘六にとって、諦めようとしても、どうにも諦められない彼一生の大醜態だった。 帆村探偵ともあろうものが、ヒョイと立って手を伸ばせば届くような間近かに …
読書目安時間:約33分
それは、目下売出しの青年探偵、帆村荘六にとって、諦めようとしても、どうにも諦められない彼一生の大醜態だった。 帆村探偵ともあろうものが、ヒョイと立って手を伸ばせば届くような間近かに …
街の探偵(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
キップの装置 『さっきから気をつけていると、コトンコトンと、微かなリズミカルな音がしているね』 と、彼は指を天井の方に立てて云うのであった。 『ああ、僕にも聞えるよ。鼠が居るのじゃ …
読書目安時間:約9分
キップの装置 『さっきから気をつけていると、コトンコトンと、微かなリズミカルな音がしているね』 と、彼は指を天井の方に立てて云うのであった。 『ああ、僕にも聞えるよ。鼠が居るのじゃ …
豆潜水艇の行方(新字新仮名)
読書目安時間:約41分
世界一の潜水艇 みなさんは、潜水艇というものを知っていますね。 潜水艇は、海中ふかくもぐることの出来る船です。わが海軍がもっているのは、潜水艦といいますが、これは世界一のりっぱなも …
読書目安時間:約41分
世界一の潜水艇 みなさんは、潜水艇というものを知っていますね。 潜水艇は、海中ふかくもぐることの出来る船です。わが海軍がもっているのは、潜水艦といいますが、これは世界一のりっぱなも …
○○獣(新字新仮名)
読書目安時間:約43分
深夜の大東京! まん中から半分ほど欠けた月が、深夜の大空にかかっていた。 いま大東京の建物はその青白い光に照されて、墓場のように睡っている。地球がだんだん冷えかかってきたようで、心 …
読書目安時間:約43分
深夜の大東京! まん中から半分ほど欠けた月が、深夜の大空にかかっていた。 いま大東京の建物はその青白い光に照されて、墓場のように睡っている。地球がだんだん冷えかかってきたようで、心 …
見えざる敵(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
上海四馬路の夜霧は濃い。 黄いろい街灯の下をゴソゴソ匍うように歩いている二人連の人影があった。 「——うむ、首領この家ですぜ。丁度七つ目の地下窓にあたりまさあ」 と、斜めに深い頬傷 …
読書目安時間:約16分
上海四馬路の夜霧は濃い。 黄いろい街灯の下をゴソゴソ匍うように歩いている二人連の人影があった。 「——うむ、首領この家ですぜ。丁度七つ目の地下窓にあたりまさあ」 と、斜めに深い頬傷 …
密林荘事件(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
密林荘で、熊井青年が自殺したという事件が、例の有名な旗田警部のところへ廻されて来た。 この事件は、その熊井青年が青酸加里を飲んで死んだという点では明瞭であるが、その青酸加里を用意し …
読書目安時間:約5分
密林荘で、熊井青年が自殺したという事件が、例の有名な旗田警部のところへ廻されて来た。 この事件は、その熊井青年が青酸加里を飲んで死んだという点では明瞭であるが、その青酸加里を用意し …
南太平洋科学風土記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約28分
第一回 はしがき 題して南太平洋科學風土記といふが、實は私が報道班員として南太平洋に勤務してゐた時に見聞したあちらの事情を、科學の目を通じて思ひ出すままにくり擴げようといふのである …
読書目安時間:約28分
第一回 はしがき 題して南太平洋科學風土記といふが、實は私が報道班員として南太平洋に勤務してゐた時に見聞したあちらの事情を、科學の目を通じて思ひ出すままにくり擴げようといふのである …
未来の地下戦車長(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間25分
かわった手習い 岡部一郎という少年があった。 彼は、今年十六歳であった。 彼の家は、あまりゆたかな生活をしていなかった。それで彼は、或電灯会社につとめて、もっぱら電灯などの故障の修 …
読書目安時間:約1時間25分
かわった手習い 岡部一郎という少年があった。 彼は、今年十六歳であった。 彼の家は、あまりゆたかな生活をしていなかった。それで彼は、或電灯会社につとめて、もっぱら電灯などの故障の修 …
虫喰ひ算大会(旧字旧仮名)
読書目安時間:約48分
自序 本書の中に、「“虫喰ひ算”大會」の會場が、第一會場から始まつて第三十會場まである。われと思はん方は御遠慮なく、第一會場から出發して、智惠だめし根だめしをなされたい。 「虫喰ひ …
読書目安時間:約48分
自序 本書の中に、「“虫喰ひ算”大會」の會場が、第一會場から始まつて第三十會場まである。われと思はん方は御遠慮なく、第一會場から出發して、智惠だめし根だめしをなされたい。 「虫喰ひ …
虫喰い算大会(新字新仮名)
読書目安時間:約48分
自序 本書の中に、「“虫喰い算”大会」の会場が、第一会場から始まって第三十会場まである。われと思わん方は御遠慮なく、第一会場から出発して、智慧だめし、根だめしをなされたい。 「虫喰 …
読書目安時間:約48分
自序 本書の中に、「“虫喰い算”大会」の会場が、第一会場から始まって第三十会場まである。われと思わん方は御遠慮なく、第一会場から出発して、智慧だめし、根だめしをなされたい。 「虫喰 …
名士訪問記:――佐野昌一氏訪問記――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
編輯部からこの妙な訪問記事をたのまれて、正直なところ大いに弱っている。人の話によると、佐野昌一氏と僕とはたいへんよく似ているそうで、途中で会っても佐野氏やら海野やらちょっと見分けが …
読書目安時間:約3分
編輯部からこの妙な訪問記事をたのまれて、正直なところ大いに弱っている。人の話によると、佐野昌一氏と僕とはたいへんよく似ているそうで、途中で会っても佐野氏やら海野やらちょっと見分けが …
もくねじ(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
倉庫 ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。 そんなことをいい出すと、ぜいたくなことをいうなと叱られそうである。しかし本当にぼくくらい不幸なものはないのである。 ぼくをちょ …
読書目安時間:約16分
倉庫 ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。 そんなことをいい出すと、ぜいたくなことをいうなと叱られそうである。しかし本当にぼくくらい不幸なものはないのである。 ぼくをちょ …
什器破壊業事件(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
女探偵の悒鬱 「離魂の妻」事件で、検事六条子爵がさしのばしたあやしき情念燃ゆる手を、ともかくもきっぱりとふりきって帰京した風間光枝だったけれど、さて元の孤独に立ちかえってみると、な …
読書目安時間:約31分
女探偵の悒鬱 「離魂の妻」事件で、検事六条子爵がさしのばしたあやしき情念燃ゆる手を、ともかくもきっぱりとふりきって帰京した風間光枝だったけれど、さて元の孤独に立ちかえってみると、な …
遊星植民説(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
「編集長、ではもう外に伺ってゆくことは御座いませんネ」 「まアそんなところだね。とにかく相手は学界でも特に有名な変り者なんだから、君の美貌と、例のサービスとを武器として、なんとか記 …
読書目安時間:約9分
「編集長、ではもう外に伺ってゆくことは御座いませんネ」 「まアそんなところだね。とにかく相手は学界でも特に有名な変り者なんだから、君の美貌と、例のサービスとを武器として、なんとか記 …
幽霊船の秘密(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間3分
南方航路 そのころ太平洋には、眼に見えない妖しい力がうごいているのが感じられた。 妖しい力? それは一体なんであろうか。 ひろびろとしたまっ青な海が、大きなうねりを見せてなんとなく …
読書目安時間:約1時間3分
南方航路 そのころ太平洋には、眼に見えない妖しい力がうごいているのが感じられた。 妖しい力? それは一体なんであろうか。 ひろびろとしたまっ青な海が、大きなうねりを見せてなんとなく …
四次元漂流(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間8分
この「四次元漂流」という妙な題名が、読者諸君を今なやましているだろうことは、作者もよく知っている。 だが作者は、この妙な題名について、今何よりも先に、それを説明することはしない。だ …
読書目安時間:約2時間8分
この「四次元漂流」という妙な題名が、読者諸君を今なやましているだろうことは、作者もよく知っている。 だが作者は、この妙な題名について、今何よりも先に、それを説明することはしない。だ …
夜泣き鉄骨(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
真夜中に、第九工場の大鉄骨が、キーッと声を立てて泣く—— という噂が、チラリと、わしの耳に、入った。 「そんな、莫迦な話が、あるもんか!」 わしは、検査ハンマーを振る手を停めて、カ …
読書目安時間:約31分
真夜中に、第九工場の大鉄骨が、キーッと声を立てて泣く—— という噂が、チラリと、わしの耳に、入った。 「そんな、莫迦な話が、あるもんか!」 わしは、検査ハンマーを振る手を停めて、カ …
予報省告示(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
人暦一万九百四十六年十三月九日 本日を以て地球は原子爆弾を惹起し、大爆発は二十三時間に亘って継続した後、地球は完全にガス状と化す。 尚、このガス状地球が、果して新星雲にまで発展し得 …
読書目安時間:約7分
人暦一万九百四十六年十三月九日 本日を以て地球は原子爆弾を惹起し、大爆発は二十三時間に亘って継続した後、地球は完全にガス状と化す。 尚、このガス状地球が、果して新星雲にまで発展し得 …
流線間諜(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間11分
R事件 いわゆるR事件と称せられて其の奇々怪々を極めた事については、空前にして絶後だろうと、後になって折紙がつけられたこの怪事件も、その大きな計画に似あわず、随分永い間、我国の誰人 …
読書目安時間:約1時間11分
R事件 いわゆるR事件と称せられて其の奇々怪々を極めた事については、空前にして絶後だろうと、後になって折紙がつけられたこの怪事件も、その大きな計画に似あわず、随分永い間、我国の誰人 …
霊魂第十号の秘密(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間27分
電波小屋「波動館」 みなさんと同じように、一畑少年も熱心な電波アマチュアだった。 少年は、来年は高校の試験を受けなくてはならないんだが、その準備はそっちのけにして、受信機などの設計 …
読書目安時間:約1時間27分
電波小屋「波動館」 みなさんと同じように、一畑少年も熱心な電波アマチュアだった。 少年は、来年は高校の試験を受けなくてはならないんだが、その準備はそっちのけにして、受信機などの設計 …
人造人間殺害事件(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
その早暁、まだ明けやらぬ上海の市街は、豆スープのように黄色く濁った濃霧の中に沈澱していた。窓という窓の厚ぼったい板戸をしっかり下した上に、隙間隙間にはガーゼを詰めては置いたのだが、 …
読書目安時間:約18分
その早暁、まだ明けやらぬ上海の市街は、豆スープのように黄色く濁った濃霧の中に沈澱していた。窓という窓の厚ぼったい板戸をしっかり下した上に、隙間隙間にはガーゼを詰めては置いたのだが、 …
翻訳者としての作品一覧
透明人間(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間32分
怪物! そうだ、怪物にちがいない。 怪物でなくて、なんだろう?科学が発達した、いまの世の中に、東洋の忍術使いじゃあるまいし、姿がみえない人間がいるなんて、これは、たしかに変だ。奇怪 …
読書目安時間:約2時間32分
怪物! そうだ、怪物にちがいない。 怪物でなくて、なんだろう?科学が発達した、いまの世の中に、東洋の忍術使いじゃあるまいし、姿がみえない人間がいるなんて、これは、たしかに変だ。奇怪 …
“海野十三”について
まれに「じゅうぞう」とも読まれる。、1897年(明治30年)12月26日 - 1949年(昭和24年)5月17日)は、日本の小説家、SF作家、推理作家、漫画家、科学解説家。「日本SFの始祖の一人」と呼ばれる。本名は。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“海野十三”と年代が近い著者
きょうが誕生日(8月16日)
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きょうが命日(8月16日)
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エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
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エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)