黒島伝治
1898.12.12 〜 1943.10.17
“黒島伝治”に特徴的な語句
扉
弾丸
乍
引鉄
銭
凍
馳
傍
他
他人
疵
蔽
辷
俺
行
疲憊
纏
疼
悉
礫
嚊
跛
去
嵩
橇
喋
家
這入
怺
団栗
饉
呟
拇指
仰山
異
悄
襦袢
西伯利亜
走
丁度
親爺
素裸体
麓
眠
杜氏
札
掠奪
拵
慄
尖
著者としての作品一覧
愛読した本と作家から(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
いろ/\なものを読んで忘れ、また、読んで忘れ、しょっちゅう、それを繰りかえして、自分の身についたものは、その中の、何十分の一にしかあたらない。僕はそんな気がしている。がそれは当然ら …
読書目安時間:約3分
いろ/\なものを読んで忘れ、また、読んで忘れ、しょっちゅう、それを繰りかえして、自分の身についたものは、その中の、何十分の一にしかあたらない。僕はそんな気がしている。がそれは当然ら …
穴(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
彼の出した五円札が贋造紙幣だった。野戦郵便局でそのことが発見された。 ウスリイ鉄道沿線P—の村に於ける出来事である。 拳銃の這入っている革のサックを肩からはすかいに掛けて憲兵が、大 …
読書目安時間:約23分
彼の出した五円札が贋造紙幣だった。野戦郵便局でそのことが発見された。 ウスリイ鉄道沿線P—の村に於ける出来事である。 拳銃の這入っている革のサックを肩からはすかいに掛けて憲兵が、大 …
田舎から東京を見る(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
田舎から東京をみるという題をつけたが本当をいうと、田舎に長く住んでいると東京のことは殆ど分らない。日本から外国へ行くと却て日本の姿がよく分るとは多くの海外へ行った人々の繰返すところ …
読書目安時間:約3分
田舎から東京をみるという題をつけたが本当をいうと、田舎に長く住んでいると東京のことは殆ど分らない。日本から外国へ行くと却て日本の姿がよく分るとは多くの海外へ行った人々の繰返すところ …
渦巻ける烏の群(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
「アナタア、ザンパン、頂だい。」 子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套にくるまって、頭を襟の中に埋めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破 …
読書目安時間:約35分
「アナタア、ザンパン、頂だい。」 子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套にくるまって、頭を襟の中に埋めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破 …
海賊と遍路(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
私の郷里、小豆島にも、昔、瀬戸内海の海賊がいたらしい。山の上から、恰好な船がとおりかゝるのを見きわめて、小さい舟がする/\と島かげから辷り出て襲いかゝったものだろう。その海賊は、又 …
読書目安時間:約5分
私の郷里、小豆島にも、昔、瀬戸内海の海賊がいたらしい。山の上から、恰好な船がとおりかゝるのを見きわめて、小さい舟がする/\と島かげから辷り出て襲いかゝったものだろう。その海賊は、又 …
外米と農民(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
隣家のS女は、彼女の生れた昨年の旱魃にも深い貯水池のおかげで例年のように収穫があった村へ、お米の買出しに出かけた。行きしなに、誰れでも外米は食いたくないんだから今度買ってきたら分け …
読書目安時間:約7分
隣家のS女は、彼女の生れた昨年の旱魃にも深い貯水池のおかげで例年のように収穫があった村へ、お米の買出しに出かけた。行きしなに、誰れでも外米は食いたくないんだから今度買ってきたら分け …
鍬と鎌の五月(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
農民の五月祭を書けという話である。 ところが、僕は、まだ、それを見たことがない。昨年、山陰地方で行われたという、××君の手紙である。それが、どういう風だったか、僕はよく知らない。 …
読書目安時間:約6分
農民の五月祭を書けという話である。 ところが、僕は、まだ、それを見たことがない。昨年、山陰地方で行われたという、××君の手紙である。それが、どういう風だったか、僕はよく知らない。 …
国境(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
ブラゴウエシチェンスクと黒河を距てる黒竜江は、海ばかり眺めて、育った日本人には馬関と門司の間の海峡を見るような感じがした。二ツの市街が岸のはなで睨み合って対峙している。 河は、海峡 …
読書目安時間:約21分
ブラゴウエシチェンスクと黒河を距てる黒竜江は、海ばかり眺めて、育った日本人には馬関と門司の間の海峡を見るような感じがした。二ツの市街が岸のはなで睨み合って対峙している。 河は、海峡 …
砂糖泥棒(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
与助の妻は産褥についていた。子供は六ツになる女を頭に二人あった。今度で三人目である。彼はある日砂糖倉に這入って帆前垂にザラメをすくいこんでいた、ところがそこを主人が見つけた。 主人 …
読書目安時間:約9分
与助の妻は産褥についていた。子供は六ツになる女を頭に二人あった。今度で三人目である。彼はある日砂糖倉に這入って帆前垂にザラメをすくいこんでいた、ところがそこを主人が見つけた。 主人 …
自画像(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
なか/\取ッつきの悪い男である。ムッツリしとって、物事に冷淡で、陰鬱で、不愉快な奴だ。熱情なんど、どこに持って居るか、そんなけぶらいも見えん。そのくせ、勝手な時には、なか/\の感情 …
読書目安時間:約5分
なか/\取ッつきの悪い男である。ムッツリしとって、物事に冷淡で、陰鬱で、不愉快な奴だ。熱情なんど、どこに持って居るか、そんなけぶらいも見えん。そのくせ、勝手な時には、なか/\の感情 …
四季とその折々(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
小豆島にいて、たまに高松へ行くと気分の転換があって、胸がすツとする。それほど変化のない日々がこの田舎ではくりかえされている。しかし汽車に乗って丸亀や坂出の方へ行き一日歩きくたぶれて …
読書目安時間:約2分
小豆島にいて、たまに高松へ行くと気分の転換があって、胸がすツとする。それほど変化のない日々がこの田舎ではくりかえされている。しかし汽車に乗って丸亀や坂出の方へ行き一日歩きくたぶれて …
自伝(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
明治三十一年十二月十二日、香川県小豆郡苗羽村に生れた。父を兼吉、母をキクという。今なお健在している。家は、半農半漁で生活をたてゝいた。祖父は、江戸通いの船乗りであった。幼時、主とし …
読書目安時間:約3分
明治三十一年十二月十二日、香川県小豆郡苗羽村に生れた。父を兼吉、母をキクという。今なお健在している。家は、半農半漁で生活をたてゝいた。祖父は、江戸通いの船乗りであった。幼時、主とし …
小豆島(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
用事があって、急に小豆島へ帰った。 小豆島と云えば、寒霞渓のあるところだ。秋になると都会の各地から遊覧客がやって来る。僕が帰った時もまだやって来ていた。 百姓は、稲を刈り、麦を蒔き …
読書目安時間:約4分
用事があって、急に小豆島へ帰った。 小豆島と云えば、寒霞渓のあるところだ。秋になると都会の各地から遊覧客がやって来る。僕が帰った時もまだやって来ていた。 百姓は、稲を刈り、麦を蒔き …
選挙漫談(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
投票を売る 投票値段は、一票につき、最低五十銭から、一円、二円、三円と、上って、まず、五円から、十円どまり位いだ。百姓が選挙場まで行くのに、場所によっては、二里も三里も歩いて行かな …
読書目安時間:約6分
投票を売る 投票値段は、一票につき、最低五十銭から、一円、二円、三円と、上って、まず、五円から、十円どまり位いだ。百姓が選挙場まで行くのに、場所によっては、二里も三里も歩いて行かな …
前哨(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
毛の黒い豚の群が、ゴミの溜った沼地を剛い鼻の先で掘りかえしていた。 浜田たちの中隊は、洮昂鉄道の沿線から、約一里半距った支那部落に屯していた。十一月の初めである。奉天を出発した時は …
読書目安時間:約18分
毛の黒い豚の群が、ゴミの溜った沼地を剛い鼻の先で掘りかえしていた。 浜田たちの中隊は、洮昂鉄道の沿線から、約一里半距った支那部落に屯していた。十一月の初めである。奉天を出発した時は …
戦争について(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
ここでは、遠くから戦争を見た場合、或は戦争を上から見下した場合は別とする。 銃をとって、戦闘に参加した一兵卒の立場から戦争のことを書いてみたい。 初めて敵と向いあって、射撃を開始し …
読書目安時間:約3分
ここでは、遠くから戦争を見た場合、或は戦争を上から見下した場合は別とする。 銃をとって、戦闘に参加した一兵卒の立場から戦争のことを書いてみたい。 初めて敵と向いあって、射撃を開始し …
橇(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
鼻が凍てつくような寒い風が吹きぬけて行った。 村は、すっかり雪に蔽われていた。街路樹も、丘も、家も。そこは、白く、まぶしく光る雪ばかりであった。 丘の中ほどのある農家の前に、一台の …
読書目安時間:約24分
鼻が凍てつくような寒い風が吹きぬけて行った。 村は、すっかり雪に蔽われていた。街路樹も、丘も、家も。そこは、白く、まぶしく光る雪ばかりであった。 丘の中ほどのある農家の前に、一台の …
短命長命(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
ある薄ら曇りの日、ぶらぶら隣村へ歩いた。その村に生田春月の詩碑がある。途中でふとその詩碑のところへ行ってみる気になって海岸の道路を左へそれ、細道を曲り村の墓地のある丘へあがって行っ …
読書目安時間:約5分
ある薄ら曇りの日、ぶらぶら隣村へ歩いた。その村に生田春月の詩碑がある。途中でふとその詩碑のところへ行ってみる気になって海岸の道路を左へそれ、細道を曲り村の墓地のある丘へあがって行っ …
チチハルまで(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
十一月に入ると、北満は、大地が凍結を始める。 占領した支那家屋が臨時の営舎だった。毛皮の防寒胴着をきてもまだ、刺すような寒気が肌を襲う。 一等兵、和田の属する中隊は、二週間前、四平 …
読書目安時間:約3分
十一月に入ると、北満は、大地が凍結を始める。 占領した支那家屋が臨時の営舎だった。毛皮の防寒胴着をきてもまだ、刺すような寒気が肌を襲う。 一等兵、和田の属する中隊は、二週間前、四平 …
電報(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
源作の息子が市の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまった。源作は、村の貧しい、等級割一戸前も持っていない自作農だった。地主や、醤油屋の坊っちゃん達なら、東京の …
読書目安時間:約13分
源作の息子が市の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまった。源作は、村の貧しい、等級割一戸前も持っていない自作農だった。地主や、醤油屋の坊っちゃん達なら、東京の …
豚群(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
牝豚は、紅く爛れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、麦藁を短く切った敷藁の上に行って横たわった。腹はぶってりふ …
読書目安時間:約15分
牝豚は、紅く爛れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、麦藁を短く切った敷藁の上に行って横たわった。腹はぶってりふ …
二銭銅貨(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
独楽が流行っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がないので一生 …
読書目安時間:約7分
独楽が流行っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がないので一生 …
入営する青年たちは何をなすべきか(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
全国の都市や農村から、約二十万の勤労青年たちが徴兵に取られて、兵営の門をくゞる日だ。 都市の青年たちは、これまでの職場を捨てなければならない。農村の青年たちは、鍬や鎌を捨て、窮乏と …
読書目安時間:約8分
全国の都市や農村から、約二十万の勤労青年たちが徴兵に取られて、兵営の門をくゞる日だ。 都市の青年たちは、これまでの職場を捨てなければならない。農村の青年たちは、鍬や鎌を捨て、窮乏と …
入営前後(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
丁度九年になる。九年前の今晩のことだ。その時から、私はいくらか近眼だった。徴兵検査を受ける際、私は眼鏡をかけて行った。それが却って悪るかった。私は、徴兵医官に睨まれてしまった。 そ …
読書目安時間:約5分
丁度九年になる。九年前の今晩のことだ。その時から、私はいくらか近眼だった。徴兵検査を受ける際、私は眼鏡をかけて行った。それが却って悪るかった。私は、徴兵医官に睨まれてしまった。 そ …
窃む女(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
子供が一人ぐらいの時はまだいゝが、二人三人となると、育てるのがなかなか容易でない。子供のほしがるものは親として出来るだけ与えたい。お菓子、おもちゃ、帽子、三輪車——この頃は田舎でも …
読書目安時間:約18分
子供が一人ぐらいの時はまだいゝが、二人三人となると、育てるのがなかなか容易でない。子供のほしがるものは親として出来るだけ与えたい。お菓子、おもちゃ、帽子、三輪車——この頃は田舎でも …
農民文学の問題(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
農民文学に対する、プロレタリア文学運動の陣営内における関心は、最近、次第にたかまってきている。日本プロレタリア作家同盟では、農民文学に対する特殊な研究会が持たれた。ハリコフでの国際 …
読書目安時間:約8分
農民文学に対する、プロレタリア文学運動の陣営内における関心は、最近、次第にたかまってきている。日本プロレタリア作家同盟では、農民文学に対する特殊な研究会が持たれた。ハリコフでの国際 …
パルチザン・ウォルコフ(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
牛乳色の靄が山の麓へ流れ集りだした。 小屋から出た鵝が、があがあ鳴きながら、河ふちへ這って行く。牛の群は吼えずに、荒々しく丘の道を下った。汚れたプラトオクに頭をくるんだ女が鞭を振り …
読書目安時間:約31分
牛乳色の靄が山の麓へ流れ集りだした。 小屋から出た鵝が、があがあ鳴きながら、河ふちへ這って行く。牛の群は吼えずに、荒々しく丘の道を下った。汚れたプラトオクに頭をくるんだ女が鞭を振り …
反戦文学論(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
一、反戦文学の階級性戦争には、いろ/\な種類がある。侵略的征服的戦争がある。防禦戦がある。又、民族解放戦争、革命も、そこにはある。 戦争反対の文学は、かなり昔から存在して居るが、ブ …
読書目安時間:約28分
一、反戦文学の階級性戦争には、いろ/\な種類がある。侵略的征服的戦争がある。防禦戦がある。又、民族解放戦争、革命も、そこにはある。 戦争反対の文学は、かなり昔から存在して居るが、ブ …
氷河(新字新仮名)
読書目安時間:約42分
市街の南端の崖の下に、黒龍江が遥かに凍結していた。 馬に曳かれた橇が、遠くから河の上を軽く辷って来る。 兵営から病院へ、凍った丘の道を栗本は辷らないように用心しい/\登ってきた。負 …
読書目安時間:約42分
市街の南端の崖の下に、黒龍江が遥かに凍結していた。 馬に曳かれた橇が、遠くから河の上を軽く辷って来る。 兵営から病院へ、凍った丘の道を栗本は辷らないように用心しい/\登ってきた。負 …
武装せる市街(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間53分
五六台の一輪車が追手に帆をあげた。 そして、貧民窟を横ぎった。塵埃の色をした苦力が一台に一人ずつそれを押していた。たった一本しかない一輪車の車軸は、巨大な麻袋の重みを一身に引き受け …
読書目安時間:約3時間53分
五六台の一輪車が追手に帆をあげた。 そして、貧民窟を横ぎった。塵埃の色をした苦力が一台に一人ずつそれを押していた。たった一本しかない一輪車の車軸は、巨大な麻袋の重みを一身に引き受け …
浮動する地価(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
ぽか/\暖かくなりかけた五月の山は、無気味で油断がならない。蛇が日向ぼっこをしたり、蜥蜴やヤモリがふいにとび出して来る。 僕は、動物のうちで爬虫類が一番きらいだ。 人間が蛇を嫌うの …
読書目安時間:約29分
ぽか/\暖かくなりかけた五月の山は、無気味で油断がならない。蛇が日向ぼっこをしたり、蜥蜴やヤモリがふいにとび出して来る。 僕は、動物のうちで爬虫類が一番きらいだ。 人間が蛇を嫌うの …
防備隊(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
九月二十五日——撫順 今度の事変で、君は、俺の一家がどうなったか、早速手紙を呉れた。今日、拝見した。——心配はご無用だ。別条ない。 俺は、防備隊に引っぱり出された。俺だけじゃない。 …
読書目安時間:約3分
九月二十五日——撫順 今度の事変で、君は、俺の一家がどうなったか、早速手紙を呉れた。今日、拝見した。——心配はご無用だ。別条ない。 俺は、防備隊に引っぱり出された。俺だけじゃない。 …
まかないの棒(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
京一が醤油醸造場へ働きにやられたのは、十六の暮れだった。 節季の金を作るために、父母は毎朝暗いうちから山の樹を伐りに出かけていた。 醸造場では、従兄の仁助が杜氏だった。小さい弟の子 …
読書目安時間:約10分
京一が醤油醸造場へ働きにやられたのは、十六の暮れだった。 節季の金を作るために、父母は毎朝暗いうちから山の樹を伐りに出かけていた。 醸造場では、従兄の仁助が杜氏だった。小さい弟の子 …
明治の戦争文学(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
明治維新の変革以後、日本資本主義は、その軍事的であることを、最も大きな特色の一つとしながら発展した。 それは、維新後の当初に於ては、おくれて発達した資本主義国として、既に帝国主義的 …
読書目安時間:約24分
明治維新の変革以後、日本資本主義は、その軍事的であることを、最も大きな特色の一つとしながら発展した。 それは、維新後の当初に於ては、おくれて発達した資本主義国として、既に帝国主義的 …
名勝地帯(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
そこは、南に富士山を背負い、北に湖水をひかえた名勝地帯だった。海抜、二千六百尺。湖の中に島があった。 見物客が、ドライブしてやって来る。何とか男爵別荘、何々の宮家別邸、缶詰に石ころ …
読書目安時間:約3分
そこは、南に富士山を背負い、北に湖水をひかえた名勝地帯だった。海抜、二千六百尺。湖の中に島があった。 見物客が、ドライブしてやって来る。何とか男爵別荘、何々の宮家別邸、缶詰に石ころ …
土鼠と落盤(新字新仮名)
読書目安時間:約36分
くすれたような鉱山の長屋が、C川の両側に、細長く、幾すじも這っている。 製煉所の銅煙は、禿げ山の山腹の太短かい二本の煙突から低く街に這いおりて、靄のように長屋を襲った。いがらっぽい …
読書目安時間:約36分
くすれたような鉱山の長屋が、C川の両側に、細長く、幾すじも這っている。 製煉所の銅煙は、禿げ山の山腹の太短かい二本の煙突から低く街に這いおりて、靄のように長屋を襲った。いがらっぽい …
「紋」(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
古い木綿布で眼隠しをした猫を手籠から出すとばあさんは、 「紋よ、われゃ、どこぞで飯を貰うて食うて行け」と子供に云いきかせるように云った。 猫は、後へじり/\這いながら悲しそうにない …
読書目安時間:約10分
古い木綿布で眼隠しをした猫を手籠から出すとばあさんは、 「紋よ、われゃ、どこぞで飯を貰うて食うて行け」と子供に云いきかせるように云った。 猫は、後へじり/\這いながら悲しそうにない …
雪のシベリア(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
内地へ帰還する同年兵達を見送って、停車場から帰って来ると、二人は兵舎の寝台に横たわって、久しくものを言わずに溜息をついていた。これからなお一年間辛抱しなければ内地へ帰れないのだ。 …
読書目安時間:約19分
内地へ帰還する同年兵達を見送って、停車場から帰って来ると、二人は兵舎の寝台に横たわって、久しくものを言わずに溜息をついていた。これからなお一年間辛抱しなければ内地へ帰れないのだ。 …
老夫婦(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
為吉とおしかとが待ちに待っていた四カ年がたった。それで、一人息子の清三は高等商業を卒業する筈だった。両人は息子の学資に、僅かばかりの財産をいれあげ、苦労のあるだけを尽していた。とこ …
読書目安時間:約27分
為吉とおしかとが待ちに待っていた四カ年がたった。それで、一人息子の清三は高等商業を卒業する筈だった。両人は息子の学資に、僅かばかりの財産をいれあげ、苦労のあるだけを尽していた。とこ …
“黒島伝治”について
黒島 伝治(くろしま でんじ(旧字:黑島傳治)、1898年12月12日 - 1943年10月17日)は、日本の小説家である。香川県小豆島生まれ。シベリア出兵従軍経験から『渦巻ける烏の群』などの反戦小説を書いて文壇に登場。その後リアリズムの手法で貧農を描いた農民文学でも好評を博した。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“黒島伝治”と年代が近い著者
きょうが誕生日(12月14日)
成沢玲川(1877年)
今月で生誕X十年
ラデャード・キプリング(生誕160年)
ライネル・マリア・リルケ(生誕150年)
野口米次郎(生誕150年)
瀬沼夏葉(生誕150年)
相馬泰三(生誕140年)
山中峯太郎(生誕140年)
観世左近 二十四世(生誕130年)
平山千代子(生誕100年)
今月で没後X十年
アウグスト・プラーテン(没後190年)
フィオナ・マクラウド(没後120年)
徳永保之助(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)
寺田寅彦(没後90年)
生田葵山(没後80年)
百田宗治(没後70年)
安井曽太郎(没後70年)
米川正夫(没後60年)
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)