北村透谷
1868.12.29 〜 1894.05.16
“北村透谷”に特徴的な語句
其
何
然
中
之
余
自
云々
等
起
方
斥
出
愬
彼
以
音
出
盈
然
斯
自
神
間
凡
権
外
安
叨
実
已
空
我
極
俟
需
独逸
洞
他
後
是
与
宜
業
又
的
益
我邦
止
大
著者としての作品一覧
哀詞序(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
歓楽は長く留り難く、悲音は尽くる時を知らず。よろこびは春の華の如く時に順つて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべか …
読書目安時間:約4分
歓楽は長く留り難く、悲音は尽くる時を知らず。よろこびは春の華の如く時に順つて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべか …
「油地獄」を読む:(〔斎藤〕緑雨著)(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
刑鞭を揮ふ獄吏として、自著自評の抗難者として、義捐小説の冷罵者として、正直正太夫の名を聞くこと久し。是等の冷罵抗難は正太夫を重からしめしや、将た軽からしめしや、そは茲に言ふ可きとこ …
読書目安時間:約9分
刑鞭を揮ふ獄吏として、自著自評の抗難者として、義捐小説の冷罵者として、正直正太夫の名を聞くこと久し。是等の冷罵抗難は正太夫を重からしめしや、将た軽からしめしや、そは茲に言ふ可きとこ …
一種の攘夷思想(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
三千年を流るゝ長江漫※たり、其始めは神委にして、極めて自然なる悖生にゆだねたり、仲頃、唐宋の学芸を誘引し、印度の幽玄なる哲学的宗教に化育せられたりと雖、凡ての羣流、凡ての涓※を合せ …
読書目安時間:約7分
三千年を流るゝ長江漫※たり、其始めは神委にして、極めて自然なる悖生にゆだねたり、仲頃、唐宋の学芸を誘引し、印度の幽玄なる哲学的宗教に化育せられたりと雖、凡ての羣流、凡ての涓※を合せ …
一夕観(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
其一 ある宵われ牕にあたりて横はる。ところは海の郷、秋高く天朗らかにして、よろづの象、よろづの物、凛乎として我に迫る。恰も我が真率ならざるを笑ふに似たり。恰も我が局促たるを嘲るに似 …
読書目安時間:約3分
其一 ある宵われ牕にあたりて横はる。ところは海の郷、秋高く天朗らかにして、よろづの象、よろづの物、凛乎として我に迫る。恰も我が真率ならざるを笑ふに似たり。恰も我が局促たるを嘲るに似 …
「歌念仏」を読みて(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
巣林子の世話戯曲十中の八九は主人公を遊廓内に取れり、其清潔なる境地より取り来りたる者は甚だ少数なる中に「お夏清十郎歌念仏」は傑作として知られたり。余は「歌念仏」を愛読するの余、其女 …
読書目安時間:約9分
巣林子の世話戯曲十中の八九は主人公を遊廓内に取れり、其清潔なる境地より取り来りたる者は甚だ少数なる中に「お夏清十郎歌念仏」は傑作として知られたり。余は「歌念仏」を愛読するの余、其女 …
厭世詩家と女性(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
恋愛は人世の秘鑰なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽き去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ、尤も多く人世の秘奥を究むるといふ詩人なる怪物の尤も多く恋愛に罪業 …
読書目安時間:約13分
恋愛は人世の秘鑰なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽き去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ、尤も多く人世の秘奥を究むるといふ詩人なる怪物の尤も多く恋愛に罪業 …
処女の純潔を論ず:(富山洞伏姫の一例の観察)(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
天地愛好すべき者多し、而して尤も愛好すべきは処女の純潔なるかな。もし黄金、瑠璃、真珠を尊としとせば、処女の純潔は人界に於ける黄金、瑠璃、真珠なり。もし人生を汚濁穢染の土とせば、処女 …
読書目安時間:約11分
天地愛好すべき者多し、而して尤も愛好すべきは処女の純潔なるかな。もし黄金、瑠璃、真珠を尊としとせば、処女の純潔は人界に於ける黄金、瑠璃、真珠なり。もし人生を汚濁穢染の土とせば、処女 …
各人心宮内の秘宮(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
各人は自ら己れの生涯を説明せんとて、行為言動を示すものなり、而して今日に至るまで真に自己を説明し得たるもの、果して幾個かある。或は自己を隠慝し、或は自己を吹聴し、又た自らを誇示する …
読書目安時間:約14分
各人は自ら己れの生涯を説明せんとて、行為言動を示すものなり、而して今日に至るまで真に自己を説明し得たるもの、果して幾個かある。或は自己を隠慝し、或は自己を吹聴し、又た自らを誇示する …
客居偶録(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
其一旅心 暫らく都門熱閙の地を離れて、身を閑寂たる漁村に投ず。これ風流韻事の旅にあらず。自から素性を養ひて、心神の快を取らんとてなり。わが生、素と虚弱、加ふるに少歳、生を軽うして身 …
読書目安時間:約6分
其一旅心 暫らく都門熱閙の地を離れて、身を閑寂たる漁村に投ず。これ風流韻事の旅にあらず。自から素性を養ひて、心神の快を取らんとてなり。わが生、素と虚弱、加ふるに少歳、生を軽うして身 …
「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
まづ祝すべきは市谷の詩人が俗嘲を顧みずして、この新らしき題目を歌ひたることなり。 残花道人嘗つて桂川を渡る、期は夜なり、風は少しく雨を交ゆ、「昨日も今日も五月雨に、ふりくらしたる頃 …
読書目安時間:約6分
まづ祝すべきは市谷の詩人が俗嘲を顧みずして、この新らしき題目を歌ひたることなり。 残花道人嘗つて桂川を渡る、期は夜なり、風は少しく雨を交ゆ、「昨日も今日も五月雨に、ふりくらしたる頃 …
頑執妄排の弊(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
宇宙を観察するの途二あり、一は宇宙を「死躰」として観るにあり、他は宇宙を「生躰」として観るにあり、人生を観察するの途二あり、一は人生を今世に限られたるものとして観るにあり、他は人生 …
読書目安時間:約6分
宇宙を観察するの途二あり、一は宇宙を「死躰」として観るにあり、他は宇宙を「生躰」として観るにあり、人生を観察するの途二あり、一は人生を今世に限られたるものとして観るにあり、他は人生 …
鬼心非鬼心:(実聞)(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
悲しき事の、さても世には多きものかな、われは今読者と共に、しばらく空想と虚栄の幻影を離れて、まことにありし一悲劇を語るを聞かむ。 語るものはわがこの夏霎時の仮の宿とたのみし家の隣に …
読書目安時間:約7分
悲しき事の、さても世には多きものかな、われは今読者と共に、しばらく空想と虚栄の幻影を離れて、まことにありし一悲劇を語るを聞かむ。 語るものはわがこの夏霎時の仮の宿とたのみし家の隣に …
北村透谷詩集(旧字旧仮名)
読書目安時間:約16分
嗚呼かく弱き人ごゝろ、 嗚呼かく強き戀の情、 もらすなよあだうつくしの花、 消ゆる汝共に散るものを、 うつくしとても幾日經ぬべき、 盛りと見しははやすたり 第一門出 北風に窓閉され …
読書目安時間:約16分
嗚呼かく弱き人ごゝろ、 嗚呼かく強き戀の情、 もらすなよあだうつくしの花、 消ゆる汝共に散るものを、 うつくしとても幾日經ぬべき、 盛りと見しははやすたり 第一門出 北風に窓閉され …
「伽羅枕」及び「新葉末集」(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
一は実を主とし、一は想を旨とする紅葉と露伴。一は客観的実相を尚び、一は主観的心想を重んずる当代の両名家。紅葉は「伽羅枕」を、露伴は「辻浄瑠璃」を、時を同うして作り出たり。此二書に就 …
読書目安時間:約10分
一は実を主とし、一は想を旨とする紅葉と露伴。一は客観的実相を尚び、一は主観的心想を重んずる当代の両名家。紅葉は「伽羅枕」を、露伴は「辻浄瑠璃」を、時を同うして作り出たり。此二書に就 …
劇詩の前途如何(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
文界の筮卜者は幾度となく劇詩熱の流行を預言せり、然るに今年までは当れるにもあらず、当らぬにもあらず、これといふ傑作も出ざれば、劇詩の流行とも言ふべき程の事もあらず。小説界には最早二 …
読書目安時間:約10分
文界の筮卜者は幾度となく劇詩熱の流行を預言せり、然るに今年までは当れるにもあらず、当らぬにもあらず、これといふ傑作も出ざれば、劇詩の流行とも言ふべき程の事もあらず。小説界には最早二 …
国民と思想(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
(1)思想上の三勢力 一国民の心性上の活動を支配する者三あり、曰く過去の勢力、曰く創造的勢力、曰く交通の勢力。 今日の我国民が思想上に於ける地位を詳らかにせんとせば、少なくとも右の …
読書目安時間:約14分
(1)思想上の三勢力 一国民の心性上の活動を支配する者三あり、曰く過去の勢力、曰く創造的勢力、曰く交通の勢力。 今日の我国民が思想上に於ける地位を詳らかにせんとせば、少なくとも右の …
最後の勝利者は誰ぞ(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
人生は戦争の歴史なり。刀鎗銃剣は戦争にあらず。人生即ち是れ戦争。世を殺せし者必らずしも虚栄に傲る勝利者のみにはあらじ、力ある者は力なき者を殺し、権ある者は権なき者を殺し、智ある者は …
読書目安時間:約5分
人生は戦争の歴史なり。刀鎗銃剣は戦争にあらず。人生即ち是れ戦争。世を殺せし者必らずしも虚栄に傲る勝利者のみにはあらじ、力ある者は力なき者を殺し、権ある者は権なき者を殺し、智ある者は …
山庵雑記(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
其一 夢見まほしやと思ふ時、あやにくに夢の無き事あり、夢なかれと思ふ時、うとましき夢のもつれ入ることあり。寤むる時、亦た斯の如し、意はざらんと思ふに意ひ、意はんと思ふに意はず。左り …
読書目安時間:約4分
其一 夢見まほしやと思ふ時、あやにくに夢の無き事あり、夢なかれと思ふ時、うとましき夢のもつれ入ることあり。寤むる時、亦た斯の如し、意はざらんと思ふに意ひ、意はんと思ふに意はず。左り …
思想の聖殿(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
思想の領地は栄光ある天門より暗濛たる深谷に広がれり。羽衣を着けたる仙女も此領地の中に舞ひ、悪火を吐く毒鬼も此の裡に棲めり。思想の境地は実に天の与へたる自由意志の鬭塲なり。美は醜と闘 …
読書目安時間:約3分
思想の領地は栄光ある天門より暗濛たる深谷に広がれり。羽衣を着けたる仙女も此領地の中に舞ひ、悪火を吐く毒鬼も此の裡に棲めり。思想の境地は実に天の与へたる自由意志の鬭塲なり。美は醜と闘 …
実行的道徳(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
人は地に生れたるものにして、天を家とするものならず、人生は社会周辺の事実に囲まれてあるものなれば、性行を経綸すべき倫理なるもの一日も無かるべからざるなり。社会は時辰機の如し、一部分 …
読書目安時間:約3分
人は地に生れたるものにして、天を家とするものならず、人生は社会周辺の事実に囲まれてあるものなれば、性行を経綸すべき倫理なるもの一日も無かるべからざるなり。社会は時辰機の如し、一部分 …
秋窓雑記(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
第一 かなしきものは秋なれど、また心地好きものも秋なるべし。春は俗を狂せしむるに宜れど、秋の士を高うするに如かず。花の人を酔はしむると月の人を清ましむるとは、自から味を異にするもの …
読書目安時間:約5分
第一 かなしきものは秋なれど、また心地好きものも秋なるべし。春は俗を狂せしむるに宜れど、秋の士を高うするに如かず。花の人を酔はしむると月の人を清ましむるとは、自から味を異にするもの …
主のつとめ(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
「汝ら只ヱホバをかしこみ心をつくして誠にこれにつかへよ」 (撒母耳前書第十二章二十四節)(七月分日課) この月の日課なる馬太伝の中には神の王国に就きて重要なる教へ多くあり。主のつと …
読書目安時間:約4分
「汝ら只ヱホバをかしこみ心をつくして誠にこれにつかへよ」 (撒母耳前書第十二章二十四節)(七月分日課) この月の日課なる馬太伝の中には神の王国に就きて重要なる教へ多くあり。主のつと …
情熱(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
ミルトンは情熱を以て大詩人の一要素としたり。深幽と清楚とを備へたるは少なからず、然れどもまことの情熱を具有するは大詩人にあらずんば期すべからず。サタイアをもユーモアをも適宜に備ふる …
読書目安時間:約7分
ミルトンは情熱を以て大詩人の一要素としたり。深幽と清楚とを備へたるは少なからず、然れどもまことの情熱を具有するは大詩人にあらずんば期すべからず。サタイアをもユーモアをも適宜に備ふる …
心機妙変を論ず(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
哲学必ずしも人生の秘奥を貫徹せず、何ぞ況んや善悪正邪の俗論をや。秘奥の潜むところ、幽邃なる道眼の観識を待ちて無言の冥契を以て、或は看破し得るところもあるべし、然れども我は信ぜず、何 …
読書目安時間:約11分
哲学必ずしも人生の秘奥を貫徹せず、何ぞ況んや善悪正邪の俗論をや。秘奥の潜むところ、幽邃なる道眼の観識を待ちて無言の冥契を以て、或は看破し得るところもあるべし、然れども我は信ぜず、何 …
人生に相渉るとは何の謂ぞ(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
繊巧細弱なる文学は端なく江湖の嫌厭を招きて、異しきまでに反動の勢力を現はし来りぬ。愛山生が徳川時代の文豪の遺風を襲ひて、「史論」と名くる鉄槌を揮ふことになりたるも、其の一現象と見る …
読書目安時間:約16分
繊巧細弱なる文学は端なく江湖の嫌厭を招きて、異しきまでに反動の勢力を現はし来りぬ。愛山生が徳川時代の文豪の遺風を襲ひて、「史論」と名くる鉄槌を揮ふことになりたるも、其の一現象と見る …
人生の意義(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
人間の外に人間を研究すべき者なし、ライフある者の外にライフを研究すべき者なし。近頃ライフの一字、文学社会に多く用ひらるゝに至れるを見て、ひそかに之を祝せんとするの外、豈敢て此大問題 …
読書目安時間:約7分
人間の外に人間を研究すべき者なし、ライフある者の外にライフを研究すべき者なし。近頃ライフの一字、文学社会に多く用ひらるゝに至れるを見て、ひそかに之を祝せんとするの外、豈敢て此大問題 …
粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
心して我文学史を読む者、必らず徳川氏文学中に粋なる者の勢力おろそかならざりしを見む。巣林子以前に多く此語を見ず、其尤も盛なるは八文字屋以後にありと云ふべし。彼の所謂洒落本こんにやく …
読書目安時間:約8分
心して我文学史を読む者、必らず徳川氏文学中に粋なる者の勢力おろそかならざりしを見む。巣林子以前に多く此語を見ず、其尤も盛なるは八文字屋以後にありと云ふべし。彼の所謂洒落本こんにやく …
賤事業弁(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
事業を賤しむといふ事は「文学界」が受けたる攻撃の一なり。而して此攻撃たるや、恐らく余が「人生相渉論」を誤読したるより起りたる者なるべしと思へば、爰に一言するの止むべからざるを信ずる …
読書目安時間:約4分
事業を賤しむといふ事は「文学界」が受けたる攻撃の一なり。而して此攻撃たるや、恐らく余が「人生相渉論」を誤読したるより起りたる者なるべしと思へば、爰に一言するの止むべからざるを信ずる …
想断々(2)(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
兵甲と国家 兵甲を以て国威を張るは変なり。兵甲は寧ろ国家を弱め、人心を危うするに足るも、以て大に国力を養ひ、列国に覇たらしむる者にあらず。国の本真は気にあり。気若し備はらば業挙らむ …
読書目安時間:約2分
兵甲と国家 兵甲を以て国威を張るは変なり。兵甲は寧ろ国家を弱め、人心を危うするに足るも、以て大に国力を養ひ、列国に覇たらしむる者にあらず。国の本真は気にあり。気若し備はらば業挙らむ …
想断々(1)(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
労苦界と戦争 ヱデンの園にアダム、神の禁を破りし時、ヱホバは彼に告げて言ひけるは「汝は一生の間、労苦して其食を得ん」と。蓋し労苦の世界は即ち戦争の世界なり。労苦よりして凡悩も利慾も …
読書目安時間:約2分
労苦界と戦争 ヱデンの園にアダム、神の禁を破りし時、ヱホバは彼に告げて言ひけるは「汝は一生の間、労苦して其食を得ん」と。蓋し労苦の世界は即ち戦争の世界なり。労苦よりして凡悩も利慾も …
楚囚之詩(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
余は遂に一詩を作り上げました。大胆にも是《こ》れを書肆《しよし》の手に渡して知己及び文学に志ある江湖《こうこ》の諸兄に頒《わか》たんとまでは決心しましたが、実の処躊躇《ちゆうちよ》 …
読書目安時間:約16分
余は遂に一詩を作り上げました。大胆にも是《こ》れを書肆《しよし》の手に渡して知己及び文学に志ある江湖《こうこ》の諸兄に頒《わか》たんとまでは決心しましたが、実の処躊躇《ちゆうちよ》 …
他界に対する観念(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
悲劇必らずしも悲を以て旨とせず、厭世必らずしも厭を以て趣とせず、別に一種の抜く可からざる他界に対する自然の観念の存するものあり、この観念は以て悲劇を人心の情世界に愬へしめ、厭世を高 …
読書目安時間:約12分
悲劇必らずしも悲を以て旨とせず、厭世必らずしも厭を以て趣とせず、別に一種の抜く可からざる他界に対する自然の観念の存するものあり、この観念は以て悲劇を人心の情世界に愬へしめ、厭世を高 …
兆民居士安くにかある(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
多くの仏学者中に於てルーソー、ボルテールの深刻なる思想を咀嚼し、之を我が邦人に伝へたるもの兆民居士を以て最とす。「民約篇」の飜訳は彼の手に因りて完成せられ、而して仏国の狂暴にして欝 …
読書目安時間:約2分
多くの仏学者中に於てルーソー、ボルテールの深刻なる思想を咀嚼し、之を我が邦人に伝へたるもの兆民居士を以て最とす。「民約篇」の飜訳は彼の手に因りて完成せられ、而して仏国の狂暴にして欝 …
罪と罰(内田不知庵訳)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
沈痛、悲慘、幽悽なる心理的小説「罪と罰」は彼の奇怪なる一大巨人(露西亞)の暗黒なる社界の側面を暴露して餘すところなしと言ふべし。トルストイ、ツルゲネーフ等の名は吾人久しく之を聞けど …
読書目安時間:約5分
沈痛、悲慘、幽悽なる心理的小説「罪と罰」は彼の奇怪なる一大巨人(露西亞)の暗黒なる社界の側面を暴露して餘すところなしと言ふべし。トルストイ、ツルゲネーフ等の名は吾人久しく之を聞けど …
「罪と罰」の殺人罪(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
不知庵主人の譯に成りし罪と罰に對する批評仲々に盛なりとは聞けるが、病氣其他の事ありて余が今日までに見たるは僅に四五種のみ、而して其中にも學海先生が國民の友に掲げられし評文は特に見目 …
読書目安時間:約6分
不知庵主人の譯に成りし罪と罰に對する批評仲々に盛なりとは聞けるが、病氣其他の事ありて余が今日までに見たるは僅に四五種のみ、而して其中にも學海先生が國民の友に掲げられし評文は特に見目 …
徳川氏時代の平民的理想(新字旧仮名)
読書目安時間:約24分
(第一) 焉馬、三馬、源内、一九等の著書を読む時に、われは必らず彼等の中に潜める一種の平民的虚無思想の絃に触るゝ思あり。就中一九の著書「膝栗毛」に対してしかく感ずるなり。戯文戯墨の …
読書目安時間:約24分
(第一) 焉馬、三馬、源内、一九等の著書を読む時に、われは必らず彼等の中に潜める一種の平民的虚無思想の絃に触るゝ思あり。就中一九の著書「膝栗毛」に対してしかく感ずるなり。戯文戯墨の …
トルストイ伯(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
「聖くまことなる心、無極の意と相繋がる意、世の雑染を離れて神に達するの眼、是等の三要素を兼有する詩人文客の詞句を聴くは楽しむ可きかな。」 とは英人某がトルストイ伯を崇めたる賛辞なり …
読書目安時間:約7分
「聖くまことなる心、無極の意と相繋がる意、世の雑染を離れて神に達するの眼、是等の三要素を兼有する詩人文客の詞句を聴くは楽しむ可きかな。」 とは英人某がトルストイ伯を崇めたる賛辞なり …
内部生命論(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
人間は到底枯燥したるものにあらず。宇宙は到底無味の者にあらず。一輪の花も詳に之を察すれば、万古の思あるべし。造化は常久不変なれども、之に対する人間の心は千々に異なるなり。 造化は不 …
読書目安時間:約14分
人間は到底枯燥したるものにあらず。宇宙は到底無味の者にあらず。一輪の花も詳に之を察すれば、万古の思あるべし。造化は常久不変なれども、之に対する人間の心は千々に異なるなり。 造化は不 …
熱意(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
真贄の隣に熱意なる者あり。人性の中に若し「熱意」なる原素を取去らば、詩人といふ職業は今日の栄誉を荷ふこと能はざるべし。すべての情感の底に「熱意」あり。すべての事業の底に熱意あり。凡 …
読書目安時間:約5分
真贄の隣に熱意なる者あり。人性の中に若し「熱意」なる原素を取去らば、詩人といふ職業は今日の栄誉を荷ふこと能はざるべし。すべての情感の底に「熱意」あり。すべての事業の底に熱意あり。凡 …
万物の声と詩人(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
万物自から声あり。万物自から声あれば自から又た楽調あり。蚯蚓は動物の中に於て醜にして且つ拙なるものなり。然れども夜深々窓に当りて断続の音を聆く時は、人をして造化の生物を理する妙機の …
読書目安時間:約8分
万物自から声あり。万物自から声あれば自から又た楽調あり。蚯蚓は動物の中に於て醜にして且つ拙なるものなり。然れども夜深々窓に当りて断続の音を聆く時は、人をして造化の生物を理する妙機の …
富嶽の詩神を思ふ(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
空を望んで駿駆する日陽、虚に循つて警立する候節、天地の運流、いつを以て極みとはするならん。 朝に平氏あり、夕に源氏あり、飄忽として去り、飄忽として来る、一潮山を噬んで一世紀没し、一 …
読書目安時間:約5分
空を望んで駿駆する日陽、虚に循つて警立する候節、天地の運流、いつを以て極みとはするならん。 朝に平氏あり、夕に源氏あり、飄忽として去り、飄忽として来る、一潮山を噬んで一世紀没し、一 …
復讐・戦争・自殺(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
復讐 人間の心界に、頭は神にして脚は鬼なる怪物棲めり。之を名けて復讐と云ふ。渠は人間の温血を吸ひて人間の中に生活する無形動物にして、古へより渠が為に身を誤りたるもの、渠によりて志を …
読書目安時間:約6分
復讐 人間の心界に、頭は神にして脚は鬼なる怪物棲めり。之を名けて復讐と云ふ。渠は人間の温血を吸ひて人間の中に生活する無形動物にして、古へより渠が為に身を誤りたるもの、渠によりて志を …
文学史の第一着は出たり(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
關根正直氏の手に成りたる「小説史稿」は兔に角日本文學史の第一着手なり。吾人は氏の「史稿」に於いて甚だ失望する所なきにあらず、然れども是は敢へて氏に責む可き所ならず、却て氏に許す可き …
読書目安時間:約2分
關根正直氏の手に成りたる「小説史稿」は兔に角日本文學史の第一着手なり。吾人は氏の「史稿」に於いて甚だ失望する所なきにあらず、然れども是は敢へて氏に責む可き所ならず、却て氏に許す可き …
「平和」発行之辞(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
過ぬる明治二十二年の秋、少数の有志相会して平和会なる者を組織せり。爾来同志を糾合し、相共に此問題を研究し来りしが、時機稍到来し、茲に一小雑誌を刊行して我が同胞に見ゆるの栄を得たるを …
読書目安時間:約3分
過ぬる明治二十二年の秋、少数の有志相会して平和会なる者を組織せり。爾来同志を糾合し、相共に此問題を研究し来りしが、時機稍到来し、茲に一小雑誌を刊行して我が同胞に見ゆるの栄を得たるを …
松島に於て芭蕉翁を読む(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
余が松島に入りたるは、四月十日の夜なりき。「奥の細道」に記する所を見れば松尾桃青翁が松島に入りたる、明治と元禄との差別こそあれ、同じく四月十日の午の刻近くなりしとなり。余が此の北奥 …
読書目安時間:約7分
余が松島に入りたるは、四月十日の夜なりき。「奥の細道」に記する所を見れば松尾桃青翁が松島に入りたる、明治と元禄との差別こそあれ、同じく四月十日の午の刻近くなりしとなり。余が此の北奥 …
漫言一則(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
われかつて徒然草を読みける時、撰みて持つべき友の中に病ひある人を数へたり。いかにも奥ゆかしき悟りきつたる言葉と思ひて友にも語りける事ありけり。然るに頃者米国の宣教師某を訪ひたる時、 …
読書目安時間:約1分
われかつて徒然草を読みける時、撰みて持つべき友の中に病ひある人を数へたり。いかにも奥ゆかしき悟りきつたる言葉と思ひて友にも語りける事ありけり。然るに頃者米国の宣教師某を訪ひたる時、 …
漫罵(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
一夕友と与に歩して銀街を過ぎ、木挽町に入らんとす、第二橋辺に至れば都城の繁熱漸く薄らぎ、家々の燭影水に落ちて、はじめて詩興生ず。われ橋上に立つて友を顧りみ、同に岸上の建家を品す。或 …
読書目安時間:約4分
一夕友と与に歩して銀街を過ぎ、木挽町に入らんとす、第二橋辺に至れば都城の繁熱漸く薄らぎ、家々の燭影水に落ちて、はじめて詩興生ず。われ橋上に立つて友を顧りみ、同に岸上の建家を品す。或 …
三日幻境(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
人生何すれぞ常に忙促たる、半生の過夢算ふるに遑なし。悲しいかな、我も亦た浮萍を追ひ迷雲を尋ねて、この夕徒らに往事を追懐するの身となれり。 常に惟ふ、志を行はんとするものは必らずしも …
読書目安時間:約15分
人生何すれぞ常に忙促たる、半生の過夢算ふるに遑なし。悲しいかな、我も亦た浮萍を追ひ迷雲を尋ねて、この夕徒らに往事を追懐するの身となれり。 常に惟ふ、志を行はんとするものは必らずしも …
明治文学管見:(日本文学史骨)(新字旧仮名)
読書目安時間:約38分
一、快楽と実用 明治文学も既に二十六年の壮年となれり、此歳月の間に如何なる進歩ありしか、如何なる退歩ありしか、如何なる原素と如何なる精神が此文学の中に蟠りて、而して如何なる現象を外 …
読書目安時間:約38分
一、快楽と実用 明治文学も既に二十六年の壮年となれり、此歳月の間に如何なる進歩ありしか、如何なる退歩ありしか、如何なる原素と如何なる精神が此文学の中に蟠りて、而して如何なる現象を外 …
我牢獄(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
もし我にいかなる罪あるかを問はゞ、我は答ふる事を得ざるなり、然れども我は牢獄の中にあり。もし我を拘縛する者の誰なるを問はゞ、我は是を知らずと答ふるの外なかるべし。我は天性怯懦にして …
読書目安時間:約10分
もし我にいかなる罪あるかを問はゞ、我は答ふる事を得ざるなり、然れども我は牢獄の中にあり。もし我を拘縛する者の誰なるを問はゞ、我は是を知らずと答ふるの外なかるべし。我は天性怯懦にして …
“北村透谷”について
北村 透谷(きたむら とうこく、1868年12月29日〈明治元年11月16日〉- 1894年〈明治27年〉5月16日)は、日本の評論家・詩人。本名は北村 門太郎(きたむら もんたろう)。明治期に近代的な文芸評論をおこない、島崎藤村らに大きな影響を与えた。
相模国小田原(現・神奈川県小田原市)に生まれた。幼少時代、両親から離れて厳格な祖父と愛情薄い継祖母に育てられ、のちに神経質な母親の束縛を受けたことが性情の形成に大きな影響を与えたといわれる。
(出典:Wikipedia)
相模国小田原(現・神奈川県小田原市)に生まれた。幼少時代、両親から離れて厳格な祖父と愛情薄い継祖母に育てられ、のちに神経質な母親の束縛を受けたことが性情の形成に大きな影響を与えたといわれる。
(出典:Wikipedia)
“北村透谷”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)