野口雨情（のぐちうじょう）
1882.05.29 〜 1945.01.27
著者としての作品一覧
青い眼の人形（新字新仮名）
読書目安時間：約17分
童謡は童心性を基調として、真、善、美の上に立つてゐる芸術であります。 童謡の本質は知識の芸術ではありません、童謡が直に児童と握手の出来るのも知識の芸術でないからであります。 童謡が …
朝おき雀（新字旧仮名）
読書目安時間：約18分
オシヨウガツキタヨ コンドハイクツ コンドハ六ツ キヨネンハ五ツ 七ツニナレバ ガツカウヘイクヨ ランドセルシヨツテ ゴホンヲイレテ アミアゲハイテ ボウシヲカブリ オテテヲフツテ …
石川啄木と小奴（新字旧仮名）
読書目安時間：約10分
石川啄木が歿つてからいまだ二十年かそこらにしかならないのに、石川の伝記が往々誤り伝へられてゐるのは石川のためにも喜ばしいことではない、況んや石川が存生中の知人は今なほ沢山あるにも拘 …
雨情民謡百篇（新字旧仮名）
読書目安時間：約17分
民謡は民族が有する唯一の郷土詩である。郷土詩を無視して民謡の存在はない。民謡は草土の詩人によつてうたはれる、純情芸術である。 本書は「かれくさ」（明治三十八年発行）以後の小著中より …
大利根八十里を溯る（新字旧仮名）
読書目安時間：約8分
停車場前から市街の外側をめぐる、新にひらかれた八間道路は前橋市の一偉観である。鈴懸けの街路樹が深緑の葉を夕風にそよがせて、見るからに涼しげであつた。夜は鈴蘭の花にかたどつた鈴蘭燈籠 …
小川芋銭先生と私（新字旧仮名）
読書目安時間：約9分
小川芋銭先生は、もとは牛里と云ふ雅号で、子規居士時代から俳句を詠んで居られた。牛里とは常陸牛久沼の里の地名から付けた雅号であらうと思はれる。私が、芋銭先生を知つたのは画家としてより …
おさんだいしよさま（新字旧仮名）
読書目安時間：約14分
おさんだいしよさまは、常陸地方の方言、 三台星のことなり。 おさんだいしよさま 屋根の上 麦搗きや臼の蔭で 杵枕——（農民歌） 農村の夜更けなどしのばれて、われには なつかしき星な …
枯草（新字旧仮名）
読書目安時間：約7分
花も実もなき枯草の一篇わが親愛なる諸兄に捧ぐ 草に咲くさへ 毒の花 罪の花みな 紅からむ 羽うるはしき 例の童が 罪の矢ならば 美しかろ 唇にふれなば 倒るべき 毒の花なら 甘から …
黄金の甕（新字旧仮名）
読書目安時間：約3分
このお譚は、わたしが少年の頃に、安寧寺と云ふお寺の和尚さんから聞いたお譚です。和尚さんは、いいか、この譚のもとは、この村に、幾百年だか判らないほど古くから言ひ伝へてあつた譚ぢや、忘 …
極楽とんぼ（新字旧仮名）
読書目安時間：約14分
うるほひのない生活は死灰である。人生は死灰ではなかつた。 民謡は、ただちに民衆と握手し、民族生活の情緒をつたふ唯一の郷土詩であり、土の自然詩である。 民衆の握手もなく、人生にもたら …
子供に化けた狐（新字旧仮名）
読書目安時間：約4分
子供に化けて、大人をだます悪い狐がをりました。 三五郎と云ふ百姓が、馬を曳いて帰つて来ますと、道の端に七八つ位の一人の子供が泣いてゐました。 三五郎は、狐が化けてゐるのだと気づきま …
沙上の夢（新字旧仮名）
読書目安時間：約12分
なつかしいのは、故郷の土である。「沙上の夢」は、土の詩であり、私の故郷の詩である。 この集中に収めた作品の多くは、散逸してたづねようのなかつたのを保存して置いてくれた友人藤田健治氏 …
札幌時代の石川啄木（新字旧仮名）
読書目安時間：約8分
石川啄木の代表作は和歌にある。或る人の言はるるには、啄木の作品のどれを見ても深みが乏しい、もつともつと深みがなくては不可、要するに歳が若かつた為めだらう、今二三十年も生存してゐたら …
十五夜お月さん（旧字旧仮名）
読書目安時間：約13分
お背戸の親なし はね釣瓶 海山千里に 風が吹く 蜀黍畑も 日が暮れた 鶏さがしに 往かないか。 螢の提灯光つてる ぴかんぴかん光つてる 早くみんなで追つかけよう 螢の提灯考へた ぴ …
少女と海鬼灯（新字旧仮名）
読書目安時間：約2分
ある日、みつ子さんがお座敷のお縁側で、お友達の千代子さんと遊んでゐますと、涙ぐんだ小さな声で唄が聞えて来ました。 わたしのお家は 海なのよ わたしの姉さん 母さんは 御無事でお家に …
女王（新字旧仮名）
読書目安時間：約5分
何時、誰が創つたのか、村にはずつと古くから次々に伝へられてゐる歌詞がありました。村の母親達はそれをねんねこ歌のやうにして小さな子供たちに歌つてきかせてゐるのでした。 トムちやんのお …
つね子さんと兎（新字旧仮名）
読書目安時間：約2分
ある日、つね子さんが、いつものやうにお庭へ出て、 兎来い兎来い 赤い草履買つてやろ 兎来い兎来い 赤い簪買つてやろ 兎来い兎来い ぴよんこぴよんこはねて来い と、『兎来いの唄』をう …
都会と田園（新字旧仮名）
読書目安時間：約17分
空の上に、雲雀は唄を唄つてゐる 渦を巻いてゐる太陽の 光波にまかれて 唄つてゐる—— 雨降りお月さん 暈下され 傘さしたい 死んだ母さん、後母さん 時雨の降るのに 下駄下され 跣足 …
仲のわるい姉妹（新字旧仮名）
読書目安時間：約4分
ある村に、お杉とお紺と云ふ仲の悪い二人の姉妹がありました。お母さんは、二人の仲がよくなるやうにと、いつも、心配をしてをりました。 ある晩方、つひ見たことのない、七八つ位のお芥子坊主 …
虹の橋（新字旧仮名）
読書目安時間：約11分
ある山国に、美しい湖がありました。 この湖には、昔から、いろいろな不思議なことがありました。青々と澄んだ水が急に濁つたり、風もないのに浪が立つたり、空が曇つて星のない晩でも、湖の中 …
のきばすずめ（新字旧仮名）
読書目安時間：約3分
金雀枝の 花咲く頃は ほととぎすが啼くほととぎすが啼く 故郷の森の中にも もう金雀枝の花咲く頃か ほととぎすが啼くほととぎすが啼く 青いすすきに 螢の虫は 夜の細道夜の細道通て来る …
野口雨情民謡叢書　第一篇（新字旧仮名）
読書目安時間：約11分
おまへは田舎の 乙女さま お馬で朝草 刈りにゆく 山ほととぎすが 山で啼きや お馬もお耳を たてて聞く 山ほととぎすは 渡り鳥 あの山渡つて どこへゆく 草を刈ろとて 鎌研ぎしてり …
別後（新字旧仮名）
読書目安時間：約11分
逢ひはしませぬ 見もしませぬに わしのこの村を 馬に乗つて通つた 馬も嘶く わたしも泣いた 逢はれないのに 逢ふ気で来てる。 五条館の 女郎は 山に雉子啼く 日であつた 被衣かづい …
蛍の灯台（新字旧仮名）
読書目安時間：約18分
童謡は、童心から生れる言葉の音楽であります。童心から生れる言葉の音楽が、芸術的価値があつたならば、童謡と言ふことが出来ます。 又、童謡は、童心から発した自然詩であると言ふことも出来 …
未刊童謡（新字旧仮名）
読書目安時間：約1時間29分
雁が来た、雁が来た、田甫の上に雁が来た 澄み渡つた夕暮れの 空に、鳴き鳴き、雁が来た 親の雁は 下を見い見い飛んでゆく 子の雁も 下を見い見い飛んでゆく 親の雁は 先へ先へと飛んで …