谷崎潤一郎
1886.07.24 〜 1965.07.30
“谷崎潤一郎”に特徴的な語句
構
鶏
筍
雪姉
櫛田
憚
羞渋
中姉
切掛
仰
娘
尚更
診
馴染
稽古
暫
何処
噂
誰
交
棚
御寮人
蒔岡
尤
所
溜
亦
階下
浴衣
抱
尚
真似
俄
或
而
貰
綺麗
嫌
等
恰
夙川
釣
娘
教
悧巧
執拗
掴
惹
密
角
著者としての作品一覧
蘆刈(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間17分
君なくてあしかりけりと思ふにも いとゞ難波のうらはすみうき まだおかもとに住んでいたじぶんのあるとしの九月のことであった。あまり天気のいい日だったので、ゆうこく、といっても三時すこ …
読書目安時間:約1時間17分
君なくてあしかりけりと思ふにも いとゞ難波のうらはすみうき まだおかもとに住んでいたじぶんのあるとしの九月のことであった。あまり天気のいい日だったので、ゆうこく、といっても三時すこ …
泉先生と私(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
私事にわたることを云ふのは寔に恐縮であるが、泉先生は文壇に於ける大先輩であるのみならず、此の春私の娘が結婚するときに媒酌の労を取つて下すつたので、さう云ふ私交上でも一方ならぬ御厄介 …
読書目安時間:約4分
私事にわたることを云ふのは寔に恐縮であるが、泉先生は文壇に於ける大先輩であるのみならず、此の春私の娘が結婚するときに媒酌の労を取つて下すつたので、さう云ふ私交上でも一方ならぬ御厄介 …
陰翳礼讃(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間2分
○ 今日、普請道楽の人が純日本風の家屋を建てて住まおうとすると、電気や瓦斯や水道等の取附け方に苦心を払い、何とかしてそれらの施設が日本座敷と調和するように工夫を凝らす風があるのは、 …
読書目安時間:約1時間2分
○ 今日、普請道楽の人が純日本風の家屋を建てて住まおうとすると、電気や瓦斯や水道等の取附け方に苦心を払い、何とかしてそれらの施設が日本座敷と調和するように工夫を凝らす風があるのは、 …
鍵(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間18分
一月一日。………僕ハ今年カラ、今日マデ日記ニ記スコトヲ躊躇シテイタヨウナ事柄ヲモアエテ書キ留メルヿニシタ。僕ハ自分ノ性生活ニ関スルヿ、自分ト妻トノ関係ニツイテハ、アマリ詳細ナヿハ書 …
読書目安時間:約3時間18分
一月一日。………僕ハ今年カラ、今日マデ日記ニ記スコトヲ躊躇シテイタヨウナ事柄ヲモアエテ書キ留メルヿニシタ。僕ハ自分ノ性生活ニ関スルヿ、自分ト妻トノ関係ニツイテハ、アマリ詳細ナヿハ書 …
覚海上人天狗になる事(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
○ 南勝房法語にいう、「南ガ云ハク十界ニ於テ執心ナキガ故ニ九界ノ間ニアソビアルクホドニ念々ノ改変ニ依テ依身ヲ受クル也、サヤウニナリヌレバ十界住不住自在也、………密号名字ヲ知レバ鬼畜 …
読書目安時間:約7分
○ 南勝房法語にいう、「南ガ云ハク十界ニ於テ執心ナキガ故ニ九界ノ間ニアソビアルクホドニ念々ノ改変ニ依テ依身ヲ受クル也、サヤウニナリヌレバ十界住不住自在也、………密号名字ヲ知レバ鬼畜 …
紀伊国狐憑漆掻語(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
漆掻きと云ったって都会の人は御存知ないかも知れませんが、山の中へ這入って行って漆の樹からうるしの汁をしぼるんです。いいえ、なかなか、百姓の片手間ではありません。ちゃんとそれを専門に …
読書目安時間:約19分
漆掻きと云ったって都会の人は御存知ないかも知れませんが、山の中へ這入って行って漆の樹からうるしの汁をしぼるんです。いいえ、なかなか、百姓の片手間ではありません。ちゃんとそれを専門に …
聞書抄:第二盲目物語(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間34分
改定史籍集覧第十三冊別記類の中に載っている豊内記と云う書は、一名を秀頼事記と云い、大坂の滅亡を見届けた高木仁右衛門入道宗夢の物語を、桑原求徳が書き集めたものであると云うが、同書上巻 …
読書目安時間:約2時間34分
改定史籍集覧第十三冊別記類の中に載っている豊内記と云う書は、一名を秀頼事記と云い、大坂の滅亡を見届けた高木仁右衛門入道宗夢の物語を、桑原求徳が書き集めたものであると云うが、同書上巻 …
戯曲体小説 真夏の夜の恋(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
人物 山内滋山内博士の子息 松本文造薬局の書生 黛夢子歌劇女優 黛薫夢子の妹歌劇女優 滋の父医学博士浅草厩橋山内病院の院長 滋の母 其の他浅草公園の俳優不良少年少女等数人及び病院の …
読書目安時間:約13分
人物 山内滋山内博士の子息 松本文造薬局の書生 黛夢子歌劇女優 黛薫夢子の妹歌劇女優 滋の父医学博士浅草厩橋山内病院の院長 滋の母 其の他浅草公園の俳優不良少年少女等数人及び病院の …
客ぎらい(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
○ たしか寺田寅彦氏の随筆に、猫のしっぽのことを書いたものがあって、猫にあゝ云うしっぽがあるのは何の用をなすのか分らない、全くあれは無用の長物のように見える、人間の体にあんな邪魔物 …
読書目安時間:約15分
○ たしか寺田寅彦氏の随筆に、猫のしっぽのことを書いたものがあって、猫にあゝ云うしっぽがあるのは何の用をなすのか分らない、全くあれは無用の長物のように見える、人間の体にあんな邪魔物 …
恐怖(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
私があの病気に取り憑かれたのは、何でも六月の初め、木屋町に宿泊して、毎日のように飲酒と夜更かしとを続けて居た前後であった。———尤も其の以前、東京に居る頃も一度ならず襲われた覚えは …
読書目安時間:約13分
私があの病気に取り憑かれたのは、何でも六月の初め、木屋町に宿泊して、毎日のように飲酒と夜更かしとを続けて居た前後であった。———尤も其の以前、東京に居る頃も一度ならず襲われた覚えは …
小僧の夢(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間1分
………己は名前を庄太郎と云って、今年十六歳になる商店の小僧だ。己の勤めて居る商店は、銀座三丁目の大通りにある、池田屋と云う洋酒店だが、京橋近辺に住んで居る人は大概知って居るだろう。 …
読書目安時間:約1時間1分
………己は名前を庄太郎と云って、今年十六歳になる商店の小僧だ。己の勤めて居る商店は、銀座三丁目の大通りにある、池田屋と云う洋酒店だが、京橋近辺に住んで居る人は大概知って居るだろう。 …
金色の死(新字新仮名)
読書目安時間:約46分
岡村君は私の少年時代からの友人でした。丁度私が七つになった年の四月の上旬、新川の家から程遠からぬ小学校へ通い始めた時分に、岡村君も附き添いの女中に連られて来て居ました。彼と私とは教 …
読書目安時間:約46分
岡村君は私の少年時代からの友人でした。丁度私が七つになった年の四月の上旬、新川の家から程遠からぬ小学校へ通い始めた時分に、岡村君も附き添いの女中に連られて来て居ました。彼と私とは教 …
細雪:01 上巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間4分
「こいさん、頼むわ。———」 鏡の中で、廊下からうしろへ這入って来た妙子を見ると、自分で襟を塗りかけていた刷毛を渡して、其方は見ずに、眼の前に映っている長襦袢姿の、抜き衣紋の顔を他 …
読書目安時間:約5時間4分
「こいさん、頼むわ。———」 鏡の中で、廊下からうしろへ這入って来た妙子を見ると、自分で襟を塗りかけていた刷毛を渡して、其方は見ずに、眼の前に映っている長襦袢姿の、抜き衣紋の顔を他 …
細雪:02 中巻(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間32分
幸子は去年黄疸を患ってから、ときどき白眼の色を気にして鏡を覗き込む癖がついたが、あれから一年目で、今年も庭の平戸の花が盛りの時期を通り越して、よごれて来る季節になっていた。或る日彼 …
読書目安時間:約6時間32分
幸子は去年黄疸を患ってから、ときどき白眼の色を気にして鏡を覗き込む癖がついたが、あれから一年目で、今年も庭の平戸の花が盛りの時期を通り越して、よごれて来る季節になっていた。或る日彼 …
細雪:03 下巻(新字新仮名)
読書目安時間:約7時間36分
雪子は二月の紀元節の日に関西へ来てから、三、四、五と、今度は殆ど四箇月も滞留するようなことになって、当人もいつ帰ろうと云う気もなくなったらしく、何となく蘆屋に根が生えてしまった形で …
読書目安時間:約7時間36分
雪子は二月の紀元節の日に関西へ来てから、三、四、五と、今度は殆ど四箇月も滞留するようなことになって、当人もいつ帰ろうと云う気もなくなったらしく、何となく蘆屋に根が生えてしまった形で …
「細雪」回顧(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
私が「細雪」の稿を起したのは太平洋戦争が勃発した翌年、即ち昭和十七年のことである。 これがはじめて中央公論に出たのは昭和十八年の新年号であつたが、それから四月号に載り、次いで七月号 …
読書目安時間:約8分
私が「細雪」の稿を起したのは太平洋戦争が勃発した翌年、即ち昭和十七年のことである。 これがはじめて中央公論に出たのは昭和十八年の新年号であつたが、それから四月号に載り、次いで七月号 …
三人法師(新字新仮名)
読書目安時間:約37分
世に「三人法師」と云う物語がある。いつの時代の誰の作かは明かでない。萬治二年の版があるそうだが、作者はこれを国史叢書の中に収めてある活字版で読んだ。さしたる名文と云うのではなく、た …
読書目安時間:約37分
世に「三人法師」と云う物語がある。いつの時代の誰の作かは明かでない。萬治二年の版があるそうだが、作者はこれを国史叢書の中に収めてある活字版で読んだ。さしたる名文と云うのではなく、た …
The Affair of Two Watches(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
何でも十二月の末の、とある夕暮の事だった。 晴れるとも曇るとも思案の付かない空が下界を蔽い、本郷一帯の高台を吹き廻る風はヒューヒュー鳴って、大学前の大通りを通る程の物が、カサカサと …
読書目安時間:約27分
何でも十二月の末の、とある夕暮の事だった。 晴れるとも曇るとも思案の付かない空が下界を蔽い、本郷一帯の高台を吹き廻る風はヒューヒュー鳴って、大学前の大通りを通る程の物が、カサカサと …
刺青(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。殿様や若旦那の長閑な顔が曇らぬように、御殿女中や華魁の笑いの種が盡きぬようにと、饒 …
読書目安時間:約12分
其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。殿様や若旦那の長閑な顔が曇らぬように、御殿女中や華魁の笑いの種が盡きぬようにと、饒 …
春琴抄(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間33分
○ 春琴、ほんとうの名は鵙屋琴、大阪道修町の薬種商の生れで歿年は明治十九年十月十四日、墓は市内下寺町の浄土宗の某寺にある。せんだって通りかかりにお墓参りをする気になり立ち寄って案内 …
読書目安時間:約1時間33分
○ 春琴、ほんとうの名は鵙屋琴、大阪道修町の薬種商の生れで歿年は明治十九年十月十四日、墓は市内下寺町の浄土宗の某寺にある。せんだって通りかかりにお墓参りをする気になり立ち寄って案内 …
純粋に「日本的」な「鏡花世界」(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
正直に云つて、晩年の鏡花先生は時代に取り残されたと云ふ感がないではなかつた。先生の如く過去に極めて輝かしい業績を成し遂げた人は、いかなる場合にも心の何処かに晏如たるものがあるから、 …
読書目安時間:約3分
正直に云つて、晩年の鏡花先生は時代に取り残されたと云ふ感がないではなかつた。先生の如く過去に極めて輝かしい業績を成し遂げた人は、いかなる場合にも心の何処かに晏如たるものがあるから、 …
少将滋幹の母(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間48分
此の物語はあの名高い色好みの平中のことから始まる。 源氏物語末摘花の巻の終りの方に、「いといとほしと思して、寄りて御硯の瓶の水に陸奥紙をぬらしてのごひ給へば、平中がやうに色どり添へ …
読書目安時間:約2時間48分
此の物語はあの名高い色好みの平中のことから始まる。 源氏物語末摘花の巻の終りの方に、「いといとほしと思して、寄りて御硯の瓶の水に陸奥紙をぬらしてのごひ給へば、平中がやうに色どり添へ …
少年(新字新仮名)
読書目安時間:約48分
もう彼れ此れ二十年ばかりも前になろう。漸く私が十ぐらいで、蠣殻町二丁目の家から水天宮裏の有馬学校へ通って居た時分———人形町通りの空が霞んで、軒並の商家の紺暖簾にぽか/\と日があた …
読書目安時間:約48分
もう彼れ此れ二十年ばかりも前になろう。漸く私が十ぐらいで、蠣殻町二丁目の家から水天宮裏の有馬学校へ通って居た時分———人形町通りの空が霞んで、軒並の商家の紺暖簾にぽか/\と日があた …
青春物語:01 緒言(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
○「青春物語」は昨秋以来約半歳に亙り、最初の一回を「青春物語」第二回以後を「若き日のことども」と題して中央公論へ連載した作者の青春回想記である。作者は事実の正確を期すると共に、往々 …
読書目安時間:約2分
○「青春物語」は昨秋以来約半歳に亙り、最初の一回を「青春物語」第二回以後を「若き日のことども」と題して中央公論へ連載した作者の青春回想記である。作者は事実の正確を期すると共に、往々 …
青春物語:02 青春物語(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間27分
十年たてば一と昔と云ふが、私が初めて文壇へ出てからもう彼れ此れ二十三四年になる。私も此れでまだ懐旧談などをする歳ではないんだが、近頃の「スバル」を読むと、我が中学の同窓である吉井勇 …
読書目安時間:約2時間27分
十年たてば一と昔と云ふが、私が初めて文壇へ出てからもう彼れ此れ二十三四年になる。私も此れでまだ懐旧談などをする歳ではないんだが、近頃の「スバル」を読むと、我が中学の同窓である吉井勇 …
大切な雰囲気:01 序(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
人と人とが長い人生の行路に於いて偶然に行き遭い、相接触し、互いに感化を及ぼし、やがて再び別れ別れになって行く因縁を思うと、奇妙な感じがしないでもない。 私は関東の震災のために関西へ …
読書目安時間:約2分
人と人とが長い人生の行路に於いて偶然に行き遭い、相接触し、互いに感化を及ぼし、やがて再び別れ別れになって行く因縁を思うと、奇妙な感じがしないでもない。 私は関東の震災のために関西へ …
蓼喰う虫(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間43分
美佐子は今朝からときどき夫に「どうなさる?やっぱりいらっしゃる?」ときいてみるのだが、夫は例の孰方つかずなあいまいな返辞をするばかりだし、彼女自身もそれならどうと云う心持もきまらな …
読書目安時間:約3時間43分
美佐子は今朝からときどき夫に「どうなさる?やっぱりいらっしゃる?」ときいてみるのだが、夫は例の孰方つかずなあいまいな返辞をするばかりだし、彼女自身もそれならどうと云う心持もきまらな …
小さな王国(新字新仮名)
読書目安時間:約48分
貝島昌吉がG県のM市の小学校へ転任したのは、今から二年ばかり前、ちょうど彼が三十六歳の時である。彼は純粋の江戸っ児で、生れは浅草の聖天町であるが、舊幕時代の漢学者であった父の遺伝を …
読書目安時間:約48分
貝島昌吉がG県のM市の小学校へ転任したのは、今から二年ばかり前、ちょうど彼が三十六歳の時である。彼は純粋の江戸っ児で、生れは浅草の聖天町であるが、舊幕時代の漢学者であった父の遺伝を …
痴人の愛(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間3分
私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、有りのままの事実を書いて見ようと思います。それは私自身に取って忘れがた …
読書目安時間:約6時間3分
私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、有りのままの事実を書いて見ようと思います。それは私自身に取って忘れがた …
途上(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
東京T・M株式会社員法学士湯河勝太郎が、十二月も押し詰まった或る日の夕暮の五時頃に、金杉橋の電車通りを新橋の方へぶらぶら散歩している時であった。 「もし、もし、失礼ですがあなたは湯 …
読書目安時間:約33分
東京T・M株式会社員法学士湯河勝太郎が、十二月も押し詰まった或る日の夕暮の五時頃に、金杉橋の電車通りを新橋の方へぶらぶら散歩している時であった。 「もし、もし、失礼ですがあなたは湯 …
Dream Tales(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
○ 東京座の一と幕見が非常な大入で、場内へギツシリ詰まつた黒山のやうな見物人の波をウムと力んで背中で堰き止めながら、前列に居る私は、一生懸命鉄棒に掴まつて居た。鉄棒はざらざらに錆び …
読書目安時間:約3分
○ 東京座の一と幕見が非常な大入で、場内へギツシリ詰まつた黒山のやうな見物人の波をウムと力んで背中で堰き止めながら、前列に居る私は、一生懸命鉄棒に掴まつて居た。鉄棒はざらざらに錆び …
二月堂の夕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
奈良の二月堂のお堂の下で、大勢の見物人が垣を作つて一人の婆さんの踊りを踊るのを眺めてゐる。婆さんは五十四五ぐらゐで、メリンス友禪の色のさめた長襦袢一つに、紺のコール天の足袋はだしに …
読書目安時間:約6分
奈良の二月堂のお堂の下で、大勢の見物人が垣を作つて一人の婆さんの踊りを踊るのを眺めてゐる。婆さんは五十四五ぐらゐで、メリンス友禪の色のさめた長襦袢一つに、紺のコール天の足袋はだしに …
日本に於けるクリップン事件(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
クラフト・エビングによって「マゾヒスト」と名づけられた一種の変態性慾者は、いうまでもなく異性に虐待されることに快感を覚える人々である。従ってそういう男は、——仮りにそれが男であると …
読書目安時間:約21分
クラフト・エビングによって「マゾヒスト」と名づけられた一種の変態性慾者は、いうまでもなく異性に虐待されることに快感を覚える人々である。従ってそういう男は、——仮りにそれが男であると …
猫と庄造と二人のをんな(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間18分
福子さんどうぞゆるして下さい此の手紙雪ちやんの名借りましたけどほんたうは雪ちやんではありません、さう云ふたら無論貴女は私が誰だかお分りになつたでせうね、いえ/\貴女は此の手紙の封切 …
読書目安時間:約2時間18分
福子さんどうぞゆるして下さい此の手紙雪ちやんの名借りましたけどほんたうは雪ちやんではありません、さう云ふたら無論貴女は私が誰だかお分りになつたでせうね、いえ/\貴女は此の手紙の封切 …
猫と庄造と二人のおんな(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間18分
福子さんどうぞゆるして下さいこの手紙雪ちゃんの名借りましたけどほんとうは雪ちゃんではありません、そう云うたら無論貴女は私が誰だかお分りになったでしょうね、いえいえ貴女はこの手紙の封 …
読書目安時間:約2時間18分
福子さんどうぞゆるして下さいこの手紙雪ちゃんの名借りましたけどほんとうは雪ちゃんではありません、そう云うたら無論貴女は私が誰だかお分りになったでしょうね、いえいえ貴女はこの手紙の封 …
猫と庄造と二人のをんな(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間18分
福子さんどうぞゆるして下さい此の手紙雪ちやんの名借りましたけどほんたうは雪ちやんではありません、さう云ふたら無論貴女は私が誰だかお分りになつたでせうね、いえ/\貴女は此の手紙の封切 …
読書目安時間:約2時間18分
福子さんどうぞゆるして下さい此の手紙雪ちやんの名借りましたけどほんたうは雪ちやんではありません、さう云ふたら無論貴女は私が誰だかお分りになつたでせうね、いえ/\貴女は此の手紙の封切 …
母を恋うる記(新字新仮名)
読書目安時間:約38分
いにしへに恋ふる鳥かもゆづる葉の 三井の上よりなき渡り行く ———万葉集——— ………空はどんよりと曇って居るけれど、月は深い雲の奥に呑まれて居るけれど、それでも何処からか光が洩れ …
読書目安時間:約38分
いにしへに恋ふる鳥かもゆづる葉の 三井の上よりなき渡り行く ———万葉集——— ………空はどんよりと曇って居るけれど、月は深い雲の奥に呑まれて居るけれど、それでも何処からか光が洩れ …
阪神見聞録(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
○ 大阪の人は電車の中で、平氣で子供に小便をさせる人種である、——と、かう云つたらば東京人は驚くだらうが、此れは嘘でも何でもない。事實私はさう云ふ光景を二度も見てゐる。尤も市内電車 …
読書目安時間:約7分
○ 大阪の人は電車の中で、平氣で子供に小便をさせる人種である、——と、かう云つたらば東京人は驚くだらうが、此れは嘘でも何でもない。事實私はさう云ふ光景を二度も見てゐる。尤も市内電車 …
秘密(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
その頃私は或る気紛れな考から、今迄自分の身のまわりを裹んで居た賑やかな雰囲気を遠ざかって、いろいろの関係で交際を続けて居た男や女の圏内から、ひそかに逃れ出ようと思い、方々と適当な隠 …
読書目安時間:約30分
その頃私は或る気紛れな考から、今迄自分の身のまわりを裹んで居た賑やかな雰囲気を遠ざかって、いろいろの関係で交際を続けて居た男や女の圏内から、ひそかに逃れ出ようと思い、方々と適当な隠 …
瘋癲老人日記(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間18分
十六日。………夜新宿ノ第一劇場夜ノ部ヲ見ニ行ク。出シ物ハ「恩讐の彼方へ」「彦市ばなし」「助六曲輪菊」デアルガ他ノモノハ見ズ、助六ダケガ目的デアル。勘弥ノ助六デハ物足リナイガ、訥升ガ …
読書目安時間:約3時間18分
十六日。………夜新宿ノ第一劇場夜ノ部ヲ見ニ行ク。出シ物ハ「恩讐の彼方へ」「彦市ばなし」「助六曲輪菊」デアルガ他ノモノハ見ズ、助六ダケガ目的デアル。勘弥ノ助六デハ物足リナイガ、訥升ガ …
武州公秘話:01 武州公秘話(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間35分
伝曰。上杉謙信。居常愛少童。又曰。福島正則。夙有断袖之癖。老而倍〻太甚。終至失家亡身矣。雖然是豈一謙信一正則而已乎。世所謂英雄俊傑者之於性生活也。逸事異聞之可伝可録者頻多。曰男色曰 …
読書目安時間:約3時間35分
伝曰。上杉謙信。居常愛少童。又曰。福島正則。夙有断袖之癖。老而倍〻太甚。終至失家亡身矣。雖然是豈一謙信一正則而已乎。世所謂英雄俊傑者之於性生活也。逸事異聞之可伝可録者頻多。曰男色曰 …
二人の稚児(新字新仮名)
読書目安時間:約36分
二人の稚児は二つ違いの十三に十五であった。年上の方は千手丸、年下の方は瑠璃光丸と呼ばれて居た。二人は同じように、まだ頑是ない時分から女人禁制の比叡の山に預けられて、貴い上人の膝下で …
読書目安時間:約36分
二人の稚児は二つ違いの十三に十五であった。年上の方は千手丸、年下の方は瑠璃光丸と呼ばれて居た。二人は同じように、まだ頑是ない時分から女人禁制の比叡の山に預けられて、貴い上人の膝下で …
文壇昔ばなし(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
○ 昔、徳田秋声老人が私にいったことがあった、「紅葉山人が生きていたら、君はさぞ紅葉さんに可愛がられたことだろうな」と。紅葉山人の亡くなったのは明治三十六年で、私の数え年十八歳の時 …
読書目安時間:約20分
○ 昔、徳田秋声老人が私にいったことがあった、「紅葉山人が生きていたら、君はさぞ紅葉さんに可愛がられたことだろうな」と。紅葉山人の亡くなったのは明治三十六年で、私の数え年十八歳の時 …
文房具漫談(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
* 私は久しい以前から万年筆を使つたことがなく、日本紙と西洋紙と、二た通り原稿用紙を作つておいて、日本紙の時は毛筆、西洋紙の時は鉛筆を使ふやうにしてゐる。これは趣味と云ふこともある …
読書目安時間:約8分
* 私は久しい以前から万年筆を使つたことがなく、日本紙と西洋紙と、二た通り原稿用紙を作つておいて、日本紙の時は毛筆、西洋紙の時は鉛筆を使ふやうにしてゐる。これは趣味と云ふこともある …
幇間(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
明治三十七年の春から、三十八年の秋へかけて、世界中を騒がせた日露戦争が漸くポウツマス条約に終りを告げ、国力発展の名の下に、いろいろの企業が続々と勃興して、新華族も出来れば成り金も出 …
読書目安時間:約24分
明治三十七年の春から、三十八年の秋へかけて、世界中を騒がせた日露戦争が漸くポウツマス条約に終りを告げ、国力発展の名の下に、いろいろの企業が続々と勃興して、新華族も出来れば成り金も出 …
卍(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間27分
先生、わたし今日はすっかり聞いてもらうつもりで伺いましたのんですけど、折角お仕事中のとこかまいませんですやろか?それはそれは詳しいに申し上げますと実に長いのんで、ほんまにわたし、せ …
読書目安時間:約4時間27分
先生、わたし今日はすっかり聞いてもらうつもりで伺いましたのんですけど、折角お仕事中のとこかまいませんですやろか?それはそれは詳しいに申し上げますと実に長いのんで、ほんまにわたし、せ …
盲目物語(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間29分
わたくし生国は近江のくに長浜在でござりまして、たんじょうは天文にじゅう一ねん、みずのえねのとしでござりますから、当年は幾つになりまするやら。左様、左様、六十五さい、いえ、六さい、に …
読書目安時間:約2時間29分
わたくし生国は近江のくに長浜在でござりまして、たんじょうは天文にじゅう一ねん、みずのえねのとしでござりますから、当年は幾つになりまするやら。左様、左様、六十五さい、いえ、六さい、に …
吉野葛(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間14分
私が大和の吉野の奥に遊んだのは、既に二十年ほどまえ、明治の末か大正の初め頃のことであるが、今とは違って交通の不便なあの時代に、あんな山奥、———近頃の言葉で云えば「大和アルプス」の …
読書目安時間:約1時間14分
私が大和の吉野の奥に遊んだのは、既に二十年ほどまえ、明治の末か大正の初め頃のことであるが、今とは違って交通の不便なあの時代に、あんな山奥、———近頃の言葉で云えば「大和アルプス」の …
蘿洞先生(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
A雑誌の訪問記者は、蘿洞先生に面会するのは今日が始めてなのである。それで内々好奇心を抱いて、もうさっきから一時間以上も待っているのだが、なか/\先生は姿を見せない。取次に出た書生の …
読書目安時間:約16分
A雑誌の訪問記者は、蘿洞先生に面会するのは今日が始めてなのである。それで内々好奇心を抱いて、もうさっきから一時間以上も待っているのだが、なか/\先生は姿を見せない。取次に出た書生の …
私(新字旧仮名)
読書目安時間:約25分
もう何年か前、私が一高の寄宿寮に居た当時の話。 或る晩のことである。その時分はいつも同室生が寝室に額を鳩めては、夜おそくまで蝋勉と称して蝋燭をつけて勉強する(その実駄弁を弄する)の …
読書目安時間:約25分
もう何年か前、私が一高の寄宿寮に居た当時の話。 或る晩のことである。その時分はいつも同室生が寝室に額を鳩めては、夜おそくまで蝋勉と称して蝋燭をつけて勉強する(その実駄弁を弄する)の …
翻訳者としての作品一覧
アッシャア家の覆滅(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
その年の秋の、重々しい雲が空に低く垂れ懸った、ものうい、暗い、ひそりとした日のことである。私は終日、たった独り馬に跨って怪しく荒れ果てた田舎路を通って行った。そうして日脚が傾いた時 …
読書目安時間:約8分
その年の秋の、重々しい雲が空に低く垂れ懸った、ものうい、暗い、ひそりとした日のことである。私は終日、たった独り馬に跨って怪しく荒れ果てた田舎路を通って行った。そうして日脚が傾いた時 …
“谷崎潤一郎”について
谷崎 潤一郎(たにざき じゅんいちろう、1886年〈明治19年〉7月24日 - 1965年〈昭和40年〉7月30日)は、日本の小説家。明治末期から昭和中期まで、戦中・戦後の一時期を除き終生旺盛な執筆活動を続け、国内外でその作品の芸術性が高い評価を得た。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“谷崎潤一郎”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)