若山牧水
1885.08.24 〜 1928.09.17
“若山牧水”に特徴的な語句
為事
宿
先刻
終
楢
兩人
杜鵑
凭
襞
言
柘榴
欄干
虎杖
山毛欅
天地
億劫
儘
笊
落葉松
褪
難有
瞑
屹度
風情
浪逆
逸
四邊
愛鷹
峽間
不圖
流石
所謂
其儘
周章
離室
恰好
爲事
日向
窺
湯槽
湖
石楠木
生簀
聾
旅籠屋
故
拵
惹
勿體
橡
著者としての作品一覧
秋草と虫の音(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
秋草の花のうち、最も早く咲くは何であらう。萩、桔梗、などであらうか。 桔梗も花壇や仏壇で見ては、厭味になりがちである。野原のあを/\とした雑草のなかに、思ひがけない一輪二輪を見出で …
読書目安時間:約6分
秋草の花のうち、最も早く咲くは何であらう。萩、桔梗、などであらうか。 桔梗も花壇や仏壇で見ては、厭味になりがちである。野原のあを/\とした雑草のなかに、思ひがけない一輪二輪を見出で …
鮎釣に過した夏休み(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
わたしは、日向(ひうが)うまれである。むづかしくいふと宮崎縣東臼杵郡東郷村大字坪谷村小字石原一番戸に生れた。明治十八年八月廿四日のことであつたさうだ。村は尾鈴山の北麓に當る。そこの …
読書目安時間:約4分
わたしは、日向(ひうが)うまれである。むづかしくいふと宮崎縣東臼杵郡東郷村大字坪谷村小字石原一番戸に生れた。明治十八年八月廿四日のことであつたさうだ。村は尾鈴山の北麓に當る。そこの …
家のめぐり(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
先づ野蒜を取つてたべた。これは此處に越して來た時から見つけておいたもので、丁度季節なので三月の初め掘つて見た。少し過ぎる位ゐ肥えてゐた。元來此處の地所は昨年の春までは桃畑であつた。 …
読書目安時間:約4分
先づ野蒜を取つてたべた。これは此處に越して來た時から見つけておいたもので、丁度季節なので三月の初め掘つて見た。少し過ぎる位ゐ肥えてゐた。元來此處の地所は昨年の春までは桃畑であつた。 …
一家(旧字旧仮名)
読書目安時間:約16分
友人と共に夕食後の散歩から歸つて來たのは丁度七時前であつた。夏の初めにありがちのいやに蒸し暑い風の無い重々しい氣の耐へがたいまで身に迫つて來る日で、室に入つて洋燈を點けるのも懶いの …
読書目安時間:約16分
友人と共に夕食後の散歩から歸つて來たのは丁度七時前であつた。夏の初めにありがちのいやに蒸し暑い風の無い重々しい氣の耐へがたいまで身に迫つて來る日で、室に入つて洋燈を點けるのも懶いの …
鴉と正覚坊(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
正覺坊 いつもより少し時間は遲かつたが、晩酌前の散歩をして來ようと庭つゞきの濱の松原へ出かけて行つた。其處には松原を縱に貫いて通じてゐる靜かな小徑があり、朝夕私の散歩徑となつてゐる …
読書目安時間:約8分
正覺坊 いつもより少し時間は遲かつたが、晩酌前の散歩をして來ようと庭つゞきの濱の松原へ出かけて行つた。其處には松原を縱に貫いて通じてゐる靜かな小徑があり、朝夕私の散歩徑となつてゐる …
熊野奈智山(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
眼の覺めたままぼんやりと船室の天井を眺めてゐると、船は大分搖れてゐる。徐ろに傾いては、また徐ろに立ち直る。耳を澄ましても濤も風も聞えない。すぐ隣に寢てゐる母子づれの女客が、疲れはて …
読書目安時間:約24分
眼の覺めたままぼんやりと船室の天井を眺めてゐると、船は大分搖れてゐる。徐ろに傾いては、また徐ろに立ち直る。耳を澄ましても濤も風も聞えない。すぐ隣に寢てゐる母子づれの女客が、疲れはて …
木枯紀行(新字旧仮名)
読書目安時間:約28分
——ひと年にひとたび逢はむ斯く言ひて 別れきさなり今ぞ逢ひぬる—— 十月二十八日。 御殿場より馬車、乗客はわたし一人、非常に寒かつた。馬車の中ばかりでなく、枯れかけたあたりの野も林 …
読書目安時間:約28分
——ひと年にひとたび逢はむ斯く言ひて 別れきさなり今ぞ逢ひぬる—— 十月二十八日。 御殿場より馬車、乗客はわたし一人、非常に寒かつた。馬車の中ばかりでなく、枯れかけたあたりの野も林 …
金比羅参り(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
少年世界愛讀者諸君。これはわたしの小さかつた時の思ひ出話で、小説ではありませぬ。地名人名等、すべて本名を用ゐてあります。 わたしの十二歳の春、丁度高等の二年から三年に移らうとしてゐ …
読書目安時間:約10分
少年世界愛讀者諸君。これはわたしの小さかつた時の思ひ出話で、小説ではありませぬ。地名人名等、すべて本名を用ゐてあります。 わたしの十二歳の春、丁度高等の二年から三年に移らうとしてゐ …
酒と歌(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
今まで自分のして來たことで多少とも眼だつものは矢張り歌を作つて來た事だけの樣である。いま一つ、出鱈目に酒を飮んで來た事。 歌を作つて來たとはいふものゝ、いつか知ら作つて來たとでもい …
読書目安時間:約2分
今まで自分のして來たことで多少とも眼だつものは矢張り歌を作つて來た事だけの樣である。いま一つ、出鱈目に酒を飮んで來た事。 歌を作つて來たとはいふものゝ、いつか知ら作つて來たとでもい …
姉妹(旧字旧仮名)
読書目安時間:約22分
山には別しても秋の來るのが早い。もう八月の暮がたからは、夏の名殘の露草に混つて薄だとか女郎花だとかいふ草花が白々した露の中に匂ひそめた。大氣は澄んで、蒼い空を限つて立ち並んで居る峯 …
読書目安時間:約22分
山には別しても秋の來るのが早い。もう八月の暮がたからは、夏の名殘の露草に混つて薄だとか女郎花だとかいふ草花が白々した露の中に匂ひそめた。大氣は澄んで、蒼い空を限つて立ち並んで居る峯 …
樹木とその葉:01 序文に代へてうたへる歌十首(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
著者 書くとなく書きてたまりし文章を一册にする時し到りぬ おほくこれたのまれて書きし文章にほのかに己が心動きをる 眞心のこもらぬにあらず金に代ふる見えぬにあらずわが文章に 幼く且つ …
読書目安時間:約1分
著者 書くとなく書きてたまりし文章を一册にする時し到りぬ おほくこれたのまれて書きし文章にほのかに己が心動きをる 眞心のこもらぬにあらず金に代ふる見えぬにあらずわが文章に 幼く且つ …
樹木とその葉:02 草鞋の話旅の話(旧字旧仮名)
読書目安時間:約17分
私は草鞋を愛する、あの、枯れた藁で、柔かにまた巧みに、作られた草鞋を。 あの草鞋を程よく兩足に穿きしめて大地の上に立つと、急に五軆の締まるのを感ずる。身軆の重みをしつかりと地の上に …
読書目安時間:約17分
私は草鞋を愛する、あの、枯れた藁で、柔かにまた巧みに、作られた草鞋を。 あの草鞋を程よく兩足に穿きしめて大地の上に立つと、急に五軆の締まるのを感ずる。身軆の重みをしつかりと地の上に …
樹木とその葉:03 島三題(旧字旧仮名)
読書目安時間:約32分
その一 伊豫の今治から尾の道がよひの小さな汽船に乘つて、一時間ほども來たかとおもふ頃、船は岩城島といふ小さな島に寄つた。港ともいふべき船着場も島相應の小さなものであつたが、それでも …
読書目安時間:約32分
その一 伊豫の今治から尾の道がよひの小さな汽船に乘つて、一時間ほども來たかとおもふ頃、船は岩城島といふ小さな島に寄つた。港ともいふべき船着場も島相應の小さなものであつたが、それでも …
樹木とその葉:04 木槿の花(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
この沼津に移つて來て、いつの間にか足掛五年の月日がたつてゐる。姉娘の方が始終病氣がちであつたのが移轉する氣になつた直接原因の一つ、一つは自分自身東京の繁雜な生活に耐へられなくなつて …
読書目安時間:約12分
この沼津に移つて來て、いつの間にか足掛五年の月日がたつてゐる。姉娘の方が始終病氣がちであつたのが移轉する氣になつた直接原因の一つ、一つは自分自身東京の繁雜な生活に耐へられなくなつて …
樹木とその葉:05 夏を愛する言葉(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
夏と旅とがよく結び付けられて稱へらるゝ樣になつたが、私は夏の旅は嫌ひである。山の上とか高原とか湖邊海岸といふ所にずつと住み着いて暑い間を送るのならばいゝが、普通の旅行では、あの混雜 …
読書目安時間:約7分
夏と旅とがよく結び付けられて稱へらるゝ樣になつたが、私は夏の旅は嫌ひである。山の上とか高原とか湖邊海岸といふ所にずつと住み着いて暑い間を送るのならばいゝが、普通の旅行では、あの混雜 …
樹木とその葉:06 四辺の山より富士を仰ぐ記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約13分
駿河なる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹の山 東海道線御殿場驛から五六里に亙る裾野を走り下つて三島驛に出る。そして海に近い平地を沼津から原驛へと走る間、汽車の右手の空におほ …
読書目安時間:約13分
駿河なる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹の山 東海道線御殿場驛から五六里に亙る裾野を走り下つて三島驛に出る。そして海に近い平地を沼津から原驛へと走る間、汽車の右手の空におほ …
樹木とその葉:07 野蒜の花(旧字旧仮名)
読書目安時間:約20分
その一 酒の話。 昨今私は毎晩三合づつの晩酌をとつてゐるが、どうかするとそれで足りぬ時がある。さればとて獨りで五合をすごすとなると翌朝まで持ち越す。 此頃だん/\獨酌を喜ぶ樣になつ …
読書目安時間:約20分
その一 酒の話。 昨今私は毎晩三合づつの晩酌をとつてゐるが、どうかするとそれで足りぬ時がある。さればとて獨りで五合をすごすとなると翌朝まで持ち越す。 此頃だん/\獨酌を喜ぶ樣になつ …
樹木とその葉:08 若葉の頃と旅(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
櫻の花がかすかなひかりを含んで散りそめる。風が輝く。その頃から私のこゝろは何となくおちつきを失つてゆく。毎年の癖で、その頃になると必ずの樣に旅に出たくなるのだ。また、大抵の年は何處 …
読書目安時間:約10分
櫻の花がかすかなひかりを含んで散りそめる。風が輝く。その頃から私のこゝろは何となくおちつきを失つてゆく。毎年の癖で、その頃になると必ずの樣に旅に出たくなるのだ。また、大抵の年は何處 …
樹木とその葉:09 枯野の旅(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
○ 乾きたる 落葉のなかに栗の實を 濕りたる 朽葉がしたに橡の實を とりどりに 拾ふともなく拾ひもちて 今日の山路を越えて來ぬ 長かりしけふの山路 樂しかりしけふの山路 殘りたる紅 …
読書目安時間:約2分
○ 乾きたる 落葉のなかに栗の實を 濕りたる 朽葉がしたに橡の實を とりどりに 拾ふともなく拾ひもちて 今日の山路を越えて來ぬ 長かりしけふの山路 樂しかりしけふの山路 殘りたる紅 …
樹木とその葉:10 冷たさよわが身を包め(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
冷たさよ わが身をつゝめ わが書齋の窓より見ゆる 遠き岡、岡のうへの木立 一帶に黝み靜もり 岡を掩ひ木立を照し わが窓さきにそゝぐ 夏の日の光に冷たさあれ わが凭る椅子 腕を投げし …
読書目安時間:約1分
冷たさよ わが身をつゝめ わが書齋の窓より見ゆる 遠き岡、岡のうへの木立 一帶に黝み靜もり 岡を掩ひ木立を照し わが窓さきにそゝぐ 夏の日の光に冷たさあれ わが凭る椅子 腕を投げし …
樹木とその葉:11 夏の寂寥(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
わが家の、 北に面した庭に、 南天、柘榴、檜葉、松、楓の木が 小さな木立をなしてゐる。 南天の蔭には、 洗面所の水が流るゝため、 虎耳草、秋海棠、齒朶など、 水氣を好む植物が 一か …
読書目安時間:約3分
わが家の、 北に面した庭に、 南天、柘榴、檜葉、松、楓の木が 小さな木立をなしてゐる。 南天の蔭には、 洗面所の水が流るゝため、 虎耳草、秋海棠、齒朶など、 水氣を好む植物が 一か …
樹木とその葉:12 夏のよろこび(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
底深い群青色の、表ほのかに燻りて弓形に張り渡したる眞晝の空、其處には力の滿ち極まつた靜寂の光輝があり、悲哀がある。 朝燒雲、空のはたてに低く細くたなびきて、かすけき色に染まりたる、 …
読書目安時間:約1分
底深い群青色の、表ほのかに燻りて弓形に張り渡したる眞晝の空、其處には力の滿ち極まつた靜寂の光輝があり、悲哀がある。 朝燒雲、空のはたてに低く細くたなびきて、かすけき色に染まりたる、 …
樹木とその葉:13 釣(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
ソレ、君と通つて 此處なら屹度釣れると云つた あの淀み 富士からと天城からとの 二つの川の出合つた 大きな淀みに たうとう出かけて行つて釣つて見ました かなり重い錘でしたが 沈むの …
読書目安時間:約2分
ソレ、君と通つて 此處なら屹度釣れると云つた あの淀み 富士からと天城からとの 二つの川の出合つた 大きな淀みに たうとう出かけて行つて釣つて見ました かなり重い錘でしたが 沈むの …
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
光を含んだ綿雲が、軒端に見える空いつぱいに輝いて、庭木といふ庭木は葉先ひとつ動かさず、それぞれに雲の光を宿して濡れた樣に靜まつてゐる。蝉の聲はその中のあらゆる幹から枝から起つてゐる …
読書目安時間:約4分
光を含んだ綿雲が、軒端に見える空いつぱいに輝いて、庭木といふ庭木は葉先ひとつ動かさず、それぞれに雲の光を宿して濡れた樣に靜まつてゐる。蝉の聲はその中のあらゆる幹から枝から起つてゐる …
樹木とその葉:15 空想と願望(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
噴火口のあとともいふべき、山のいただきの、さまで大きからぬ湖。 あたり圍む鬱蒼たる森。 森と湖との間ほぼ一町あまり、ゆるやかなる傾斜となり、青篠密生す。 青篠の盡くるところ、幅三四 …
読書目安時間:約2分
噴火口のあとともいふべき、山のいただきの、さまで大きからぬ湖。 あたり圍む鬱蒼たる森。 森と湖との間ほぼ一町あまり、ゆるやかなる傾斜となり、青篠密生す。 青篠の盡くるところ、幅三四 …
樹木とその葉:16 酒の讃と苦笑(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
それほどにうまきかとひとの問ひたらば何と答へむこの酒の味 眞實、菓子好の人が菓子を、渇いた人が水を、口にした時ほどのうまさをば酒は持つてゐないかも知れない。一度口にふくんで咽喉を通 …
読書目安時間:約4分
それほどにうまきかとひとの問ひたらば何と答へむこの酒の味 眞實、菓子好の人が菓子を、渇いた人が水を、口にした時ほどのうまさをば酒は持つてゐないかも知れない。一度口にふくんで咽喉を通 …
樹木とその葉:17 歌と宗教(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私は宗教といふものを持たない。また、それを知らない。知るべき機會にまだ遭遇しないでゐるのである。 既成宗教に對する概念も極めて漠たるもので、寧ろ古いお寺とかお宮とか佛像とか、または …
読書目安時間:約3分
私は宗教といふものを持たない。また、それを知らない。知るべき機會にまだ遭遇しないでゐるのである。 既成宗教に對する概念も極めて漠たるもので、寧ろ古いお寺とかお宮とか佛像とか、または …
樹木とその葉:18 自己を感ずる時(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
生の歡びを感ずる時は、つまり自己を感ずる時だとおもふ。自己にぴつたりと逢着するか、或はしみじみと自己を噛み味つてゐる時かだらうとおもふ。 さういふ意味に於て私にとつては矢張り歌の出 …
読書目安時間:約1分
生の歡びを感ずる時は、つまり自己を感ずる時だとおもふ。自己にぴつたりと逢着するか、或はしみじみと自己を噛み味つてゐる時かだらうとおもふ。 さういふ意味に於て私にとつては矢張り歌の出 …
樹木とその葉:19 なまけ者と雨(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
降るか照るか、私は曇日を最も嫌ふ。どんよりと曇つて居られると、頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない樣な欝陶しさを感じがちだ。無論爲事は手につかず、さればと云つてな …
読書目安時間:約4分
降るか照るか、私は曇日を最も嫌ふ。どんよりと曇つて居られると、頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない樣な欝陶しさを感じがちだ。無論爲事は手につかず、さればと云つてな …
樹木とその葉:20 貧乏首尾無し(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
貧しとし時にはなげく時としてその貧しさを忘れてもをる ゆく水のとまらぬこころ持つといへどをりをり濁る貧しさゆゑに 小生の貧困時代は首尾を持つてゐない。だからいつからいつまでとそれを …
読書目安時間:約7分
貧しとし時にはなげく時としてその貧しさを忘れてもをる ゆく水のとまらぬこころ持つといへどをりをり濁る貧しさゆゑに 小生の貧困時代は首尾を持つてゐない。だからいつからいつまでとそれを …
樹木とその葉:21 若葉の山に啼く鳥(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
今月號の或雜誌に佛法僧鳥のことが書いてあつた。棲むところはきまつてゐて夏のあひだだけ啼く鳥なのかと思つてゐたら、遠く南洋の方から渡つて來て秋になればまた海を渡つて歸つて行く鳥である …
読書目安時間:約5分
今月號の或雜誌に佛法僧鳥のことが書いてあつた。棲むところはきまつてゐて夏のあひだだけ啼く鳥なのかと思つてゐたら、遠く南洋の方から渡つて來て秋になればまた海を渡つて歸つて行く鳥である …
樹木とその葉:22 秋風の音(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
いちはやく秋風の音をやどすぞと長き葉めでて蜀黍は植う 私は蜀黍の葉が好きである。その實を取るのが望みならば餘り肥料をやらぬ方がよい。然し、見ごとな葉を見やうとならばなるたけ多く施し …
読書目安時間:約4分
いちはやく秋風の音をやどすぞと長き葉めでて蜀黍は植う 私は蜀黍の葉が好きである。その實を取るのが望みならば餘り肥料をやらぬ方がよい。然し、見ごとな葉を見やうとならばなるたけ多く施し …
樹木とその葉:23 梅の花桜の花(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
きさらぎは梅咲くころは年ごとにわれのこころのさびしかる月 梅の花が白くつめたく一輪二輪と枯れた樣な枝のさきに見えそむる。吹きこめた北の風西の風がかすかな東風にかはらうとする。その頃 …
読書目安時間:約2分
きさらぎは梅咲くころは年ごとにわれのこころのさびしかる月 梅の花が白くつめたく一輪二輪と枯れた樣な枝のさきに見えそむる。吹きこめた北の風西の風がかすかな東風にかはらうとする。その頃 …
樹木とその葉:24 温泉宿の庭(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
旅と云つても、ほんの一夜泊の話なのですが——。 私のいま住んでゐます沼津から程近く、六七ヶ所の温泉があります。 なかの吉奈温泉から、病氣でいま此處に來てゐる、おひまならお遊びにおい …
読書目安時間:約3分
旅と云つても、ほんの一夜泊の話なのですが——。 私のいま住んでゐます沼津から程近く、六七ヶ所の温泉があります。 なかの吉奈温泉から、病氣でいま此處に來てゐる、おひまならお遊びにおい …
樹木とその葉:25 或る日の昼餐(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
或る日の午前十一時頃、書き惱んでゐる急ぎの原稿とその催促の電報と小さな時計とを机の上に並べながら、私は甚だ重苦しい心持になつてゐた。 机に兩肱をついて窓のそとを見てゐると頻りに櫻が …
読書目安時間:約6分
或る日の午前十一時頃、書き惱んでゐる急ぎの原稿とその催促の電報と小さな時計とを机の上に並べながら、私は甚だ重苦しい心持になつてゐた。 机に兩肱をついて窓のそとを見てゐると頻りに櫻が …
樹木とその葉:26 桃の実(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
武藏から上野へかけて平原を横切つて汽車が碓氷にかゝらうとする、その左手の車窓に沿うて仰がるゝ妙義山の大岩壁は確かに信越線中での一異景である。丁度そのあたり、横川驛で機關車は電氣に代 …
読書目安時間:約6分
武藏から上野へかけて平原を横切つて汽車が碓氷にかゝらうとする、その左手の車窓に沿うて仰がるゝ妙義山の大岩壁は確かに信越線中での一異景である。丁度そのあたり、横川驛で機關車は電氣に代 …
樹木とその葉:27 春の二三日(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
くもり日は頭重かるわが癖のけふも出で來て歩む松原 三月××日 千本松原を詠んだなかの一首に斯んな歌があつたが、けふもまたその頭の重い曇り日であつた。朝からどんよりと曇つてゐた。 非 …
読書目安時間:約12分
くもり日は頭重かるわが癖のけふも出で來て歩む松原 三月××日 千本松原を詠んだなかの一首に斯んな歌があつたが、けふもまたその頭の重い曇り日であつた。朝からどんよりと曇つてゐた。 非 …
樹木とその葉:28 青年僧と叡山の老爺(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
一週間か十日ほどの豫定で出かけた旅行から丁度十七日目に歸つて來た。さうして直ぐ毎月自分の出してゐる歌の雜誌の編輯、他の二三雜誌の新年號への原稿書き、溜りに溜つてゐる數種新聞投書歌の …
読書目安時間:約12分
一週間か十日ほどの豫定で出かけた旅行から丁度十七日目に歸つて來た。さうして直ぐ毎月自分の出してゐる歌の雜誌の編輯、他の二三雜誌の新年號への原稿書き、溜りに溜つてゐる數種新聞投書歌の …
樹木とその葉:29 東京の郊外を想ふ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
日向の山奧から出て來て先づ私の下宿したのは麹町の三番町であつた。其處の下宿屋から早稻田の學校まで、誰かに最初教へて貰つた一すぢ道を眞直ぐに往復するほか、一寸した𢌞り道をもようせずに …
読書目安時間:約6分
日向の山奧から出て來て先づ私の下宿したのは麹町の三番町であつた。其處の下宿屋から早稻田の學校まで、誰かに最初教へて貰つた一すぢ道を眞直ぐに往復するほか、一寸した𢌞り道をもようせずに …
樹木とその葉:30 駿河湾一帯の風光(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
駿河灣一帶の風光といふとどうしても富士山がその焦點になる。久能山より仰ぐ富士、三保の松原龍華寺の富士、薩埵峠の富士、田子の浦の富士、千本松原の富士、牛臥から靜浦江の浦にかけての富士 …
読書目安時間:約12分
駿河灣一帶の風光といふとどうしても富士山がその焦點になる。久能山より仰ぐ富士、三保の松原龍華寺の富士、薩埵峠の富士、田子の浦の富士、千本松原の富士、牛臥から靜浦江の浦にかけての富士 …
樹木とその葉:31 故郷の正月(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
私は日向國耳川(川口は神武天皇御東征の砌其處から初めて船を出されたといふ美々津港になつてゐます)の上流にあたる長細い峽谷の村に生れました。村の人は多く材木とか椎茸とか木炭とかいふ山 …
読書目安時間:約4分
私は日向國耳川(川口は神武天皇御東征の砌其處から初めて船を出されたといふ美々津港になつてゐます)の上流にあたる長細い峽谷の村に生れました。村の人は多く材木とか椎茸とか木炭とかいふ山 …
樹木とその葉:32 伊豆西海岸の湯(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
東京にてM——兄。 伊豆の東海岸には御承知の通り澤山温泉があるけれど、西海岸には二個所しかありません。一つはずつと下田寄りの賀茂温泉、一つはいま私の來てゐる土肥温泉です。此處には沼 …
読書目安時間:約9分
東京にてM——兄。 伊豆の東海岸には御承知の通り澤山温泉があるけれど、西海岸には二個所しかありません。一つはずつと下田寄りの賀茂温泉、一つはいま私の來てゐる土肥温泉です。此處には沼 …
樹木とその葉:33 海辺八月(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
昨年の八月いつぱいを伊豆西海岸、古宇といふ小さな漁村で過しました。これはその思ひ出話。 八月いつぱい、子供を主として何處かの海岸で暮したい、さういふ相談を妻としてから七月の初め私は …
読書目安時間:約9分
昨年の八月いつぱいを伊豆西海岸、古宇といふ小さな漁村で過しました。これはその思ひ出話。 八月いつぱい、子供を主として何處かの海岸で暮したい、さういふ相談を妻としてから七月の初め私は …
樹木とその葉:34 地震日記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
伊豆半島西海岸、古宇村、宿屋大谷屋の二階のことである。九月一日、正午。 その日の晝食はいつもより少し早かつた。數日前支那旅行の歸りがけにわざ/\其處まで訪ねて來て呉れた地崎喜太郎君 …
読書目安時間:約24分
伊豆半島西海岸、古宇村、宿屋大谷屋の二階のことである。九月一日、正午。 その日の晝食はいつもより少し早かつた。數日前支那旅行の歸りがけにわざ/\其處まで訪ねて來て呉れた地崎喜太郎君 …
樹木とその葉:35 火山をめぐる温泉(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
信州白骨温泉は乘鞍嶽北側の中腹、海拔五千尺ほどの處に在る。温泉宿が四軒、蕎麥屋が二軒、荒物屋が一軒、合せて七軒だけでその山上の一部落をなしてをるのである。郵便物はその麓に當る島々村 …
読書目安時間:約7分
信州白骨温泉は乘鞍嶽北側の中腹、海拔五千尺ほどの處に在る。温泉宿が四軒、蕎麥屋が二軒、荒物屋が一軒、合せて七軒だけでその山上の一部落をなしてをるのである。郵便物はその麓に當る島々村 …
樹木とその葉:36 自然の息自然の声(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
私はよく山歩きをする。 それも秋から冬に移るころの、ちやうど紅葉が過ぎて漸くあたりがあらはにならうとする落葉のころの山が好きだ。草鞋ばきの足もとからは、橡は橡、山毛欅は山毛欅、それ …
読書目安時間:約12分
私はよく山歩きをする。 それも秋から冬に移るころの、ちやうど紅葉が過ぎて漸くあたりがあらはにならうとする落葉のころの山が好きだ。草鞋ばきの足もとからは、橡は橡、山毛欅は山毛欅、それ …
樹木とその葉:37 跋(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
大正十年の春から同十三年の秋までに書いた隨筆を輯めてこの一册を編んだ。並べた順序は不同である。 何々の題目に就き、何日までに、何枚位ゐ書いてほしいといふ註文を受けて書いたものばかり …
読書目安時間:約1分
大正十年の春から同十三年の秋までに書いた隨筆を輯めてこの一册を編んだ。並べた順序は不同である。 何々の題目に就き、何日までに、何枚位ゐ書いてほしいといふ註文を受けて書いたものばかり …
水郷めぐり(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
約束した樣なせぬ樣な六月廿五日に、細野君が誘ひにやつて來た。同君は千葉縣の人、いつか一緒に香取鹿島から霞ヶ浦あたりの水郷を廻らうといふ事になつてゐたのである。その日私は自分の出して …
読書目安時間:約6分
約束した樣なせぬ樣な六月廿五日に、細野君が誘ひにやつて來た。同君は千葉縣の人、いつか一緒に香取鹿島から霞ヶ浦あたりの水郷を廻らうといふ事になつてゐたのである。その日私は自分の出して …
青年僧と叡山の老爺(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
一週間か十日ほどの予定で出かけた旅行から丁度十七日目に帰って来た。そうして直ぐ毎月自分の出している歌の雑誌の編輯、他の二三雑誌の新年号への原稿書き、溜りに溜っている数種新聞投書歌の …
読書目安時間:約12分
一週間か十日ほどの予定で出かけた旅行から丁度十七日目に帰って来た。そうして直ぐ毎月自分の出している歌の雑誌の編輯、他の二三雑誌の新年号への原稿書き、溜りに溜っている数種新聞投書歌の …
渓をおもふ(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
疲れはてしこころのそこに時ありてさやかにうかぶ渓のおもかげ いづくとはさやかにわかねわがこころさびしきときし渓川の見ゆ 独りゐてみまほしきものは山かげの巌が根ゆける細渓の水 巌が根 …
読書目安時間:約7分
疲れはてしこころのそこに時ありてさやかにうかぶ渓のおもかげ いづくとはさやかにわかねわがこころさびしきときし渓川の見ゆ 独りゐてみまほしきものは山かげの巌が根ゆける細渓の水 巌が根 …
たべものの木(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
私は寢上戸(ねじやうご)とかいふ方で、酒に醉ふと直ぐ眠つてしまふ。いまの晩酌が大抵五時半か六時から始つて七時半か八時に及ぶ。飮むだけ飮んでしまへばものゝ三十分と起きてはゐられないで …
読書目安時間:約9分
私は寢上戸(ねじやうご)とかいふ方で、酒に醉ふと直ぐ眠つてしまふ。いまの晩酌が大抵五時半か六時から始つて七時半か八時に及ぶ。飮むだけ飮んでしまへばものゝ三十分と起きてはゐられないで …
小さな鶯(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
ちひさな鶯 雪のつもつた 枝から枝へ ちひさな鶯 あをい羽根して ぴよんぴよん渡る 小枝さらさら 雪はちらちら ちらちら動いて 羽根はあを あアをい鶯なぜ鳴かぬ うぐひすよ うぐひ …
読書目安時間:約5分
ちひさな鶯 雪のつもつた 枝から枝へ ちひさな鶯 あをい羽根して ぴよんぴよん渡る 小枝さらさら 雪はちらちら ちらちら動いて 羽根はあを あアをい鶯なぜ鳴かぬ うぐひすよ うぐひ …
なまけ者と雨(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
降るか照るか、私は曇日を最も嫌ふ。どんよりと曇つて居られると、頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない様な欝陶しさを感じがちだ。無論為事は手につかず、さればと云つてな …
読書目安時間:約4分
降るか照るか、私は曇日を最も嫌ふ。どんよりと曇つて居られると、頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない様な欝陶しさを感じがちだ。無論為事は手につかず、さればと云つてな …
庭さきの森の春(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
濱へ出る漁師たちの徑に沿うたわたしの庭の垣根は、もと此處が桃畑であつた當時に用ゐられてゐた儘(まま)のを使つてゐる。杭も朽ち横に渡した竹も大方は朽ちはてゝゐるのであるが、其處に生え …
読書目安時間:約5分
濱へ出る漁師たちの徑に沿うたわたしの庭の垣根は、もと此處が桃畑であつた當時に用ゐられてゐた儘(まま)のを使つてゐる。杭も朽ち横に渡した竹も大方は朽ちはてゝゐるのであるが、其處に生え …
沼津千本松原(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
私が沼津に越して来ていつか七年経つた。或はこのまゝ此処に居据わることになるかも知れない。沼津に何の取柄があるではないが、唯だ一つ私の自慢するものがある。千本松原である。 千本松原位 …
読書目安時間:約8分
私が沼津に越して来ていつか七年経つた。或はこのまゝ此処に居据わることになるかも知れない。沼津に何の取柄があるではないが、唯だ一つ私の自慢するものがある。千本松原である。 千本松原位 …
梅雨紀行(旧字旧仮名)
読書目安時間:約21分
發動機船は棧橋を離れやうとし、若い船員は纜を解いてゐた。惶てゝ切符を買つて棧橋へ駈け出すところを私は呼びとめられた。いま休んでゐた待合室内の茶店の婆さんが、膳の端に私の置いて來た銀 …
読書目安時間:約21分
發動機船は棧橋を離れやうとし、若い船員は纜を解いてゐた。惶てゝ切符を買つて棧橋へ駈け出すところを私は呼びとめられた。いま休んでゐた待合室内の茶店の婆さんが、膳の端に私の置いて來た銀 …
花二三(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
梅のかをりを言ふ人が多いが、私は寧ろ沈丁花(ぢんちやうげ)を擧げる。梅のいゝのは一輪二輪づつ枯れた樣な枝の先に見えそめた時がいゝので、眞盛りから褪(あ)せそめたころにかけては誠に興 …
読書目安時間:約4分
梅のかをりを言ふ人が多いが、私は寧ろ沈丁花(ぢんちやうげ)を擧げる。梅のいゝのは一輪二輪づつ枯れた樣な枝の先に見えそめた時がいゝので、眞盛りから褪(あ)せそめたころにかけては誠に興 …
比叡山(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
山上の宿院に着いた時はもう黄昏近かつた。御堂の方へ參詣してからとも思うたが、何しろ私は疲れてゐた。「天台宗講中宿泊所」「一般參詣者宿泊所」といふ風の大きな木の札の懸つてゐるその冠木 …
読書目安時間:約12分
山上の宿院に着いた時はもう黄昏近かつた。御堂の方へ參詣してからとも思うたが、何しろ私は疲れてゐた。「天台宗講中宿泊所」「一般參詣者宿泊所」といふ風の大きな木の札の懸つてゐるその冠木 …
藤の花(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私は五六歳のころから齒を病んだ。そして十歳の春、私の村にない高等小學校に入るために、村から十里離れた或る城下町の父の知人の家に預けられ、其處でも一二年續いて齒痛のために苦しめられた …
読書目安時間:約2分
私は五六歳のころから齒を病んだ。そして十歳の春、私の村にない高等小學校に入るために、村から十里離れた或る城下町の父の知人の家に預けられ、其處でも一二年續いて齒痛のために苦しめられた …
古い村(旧字旧仮名)
読書目安時間:約15分
自分の故郷は日向國の山奧である。恐しく山岳の重疊した峽間に、紐のやうな細い溪が深く流れて、溪に沿うてほんの僅かばかりの平地がある。その平地の其處此處に二軒三軒とあはれな人家が散在し …
読書目安時間:約15分
自分の故郷は日向國の山奧である。恐しく山岳の重疊した峽間に、紐のやうな細い溪が深く流れて、溪に沿うてほんの僅かばかりの平地がある。その平地の其處此處に二軒三軒とあはれな人家が散在し …
鳳来寺紀行(旧字旧仮名)
読書目安時間:約19分
沼津から富士の五湖を𢌞つて富士川を渡り身延に登り、その奧の院七面山から山づたひに駿河路に越え、梅ヶ島といふ人の知らない山奧の温泉に浸つて見るも面白からうし、其處から再び東海道線に出 …
読書目安時間:約19分
沼津から富士の五湖を𢌞つて富士川を渡り身延に登り、その奧の院七面山から山づたひに駿河路に越え、梅ヶ島といふ人の知らない山奧の温泉に浸つて見るも面白からうし、其處から再び東海道線に出 …
岬の端(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
細かな地図を見ればよく解るであらう。房州半島と三浦半島とが鋭く突き出して奥深い東京湾の入り口を極めて狭く括つてゐる。その三浦半島の岬端から三四里手前に湾入した海浜に私はいま移り住ん …
読書目安時間:約10分
細かな地図を見ればよく解るであらう。房州半島と三浦半島とが鋭く突き出して奥深い東京湾の入り口を極めて狭く括つてゐる。その三浦半島の岬端から三四里手前に湾入した海浜に私はいま移り住ん …
みなかみ紀行(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間6分
十月十四日午前六時沼津發、東京通過、其處よりM—、K—、の兩青年を伴ひ、夜八時信州北佐久郡御代田驛に汽車を降りた。同郡郡役所所在地岩村田町に在る佐久新聞社主催短歌會に出席せんためで …
読書目安時間:約1時間6分
十月十四日午前六時沼津發、東京通過、其處よりM—、K—、の兩青年を伴ひ、夜八時信州北佐久郡御代田驛に汽車を降りた。同郡郡役所所在地岩村田町に在る佐久新聞社主催短歌會に出席せんためで …
みなかみ紀行(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間19分
幼い紀行文をまた一冊に纏めて出版することになった。実はこれは昨年の九月早々市上に出る事になっていて既に製本済になり製本屋に積上げられてあったところを例の九月一日の震火に焼かれてしま …
読書目安時間:約3時間19分
幼い紀行文をまた一冊に纏めて出版することになった。実はこれは昨年の九月早々市上に出る事になっていて既に製本済になり製本屋に積上げられてあったところを例の九月一日の震火に焼かれてしま …
村住居の秋(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
この沼津の地に移住を企てゝ初めて私がこの家を見に来た時、その時は村の旧家でいま村医などを勤めてゐる或る老人と、その息子さんと、この家の差配をしてゐる年寄の百姓との四人連で、その老医 …
読書目安時間:約7分
この沼津の地に移住を企てゝ初めて私がこの家を見に来た時、その時は村の旧家でいま村医などを勤めてゐる或る老人と、その息子さんと、この家の差配をしてゐる年寄の百姓との四人連で、その老医 …
山寺(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
夕闇の部屋の中へ流れ込むのさへはつきりと見えてゐた霧はいつとなく消えて行つて、たうとう雨は本降りとなつた。あまりの音のすさまじさに縁側に出て見ると、庭さきから直ぐ立ち竝んだ深い杉の …
読書目安時間:約11分
夕闇の部屋の中へ流れ込むのさへはつきりと見えてゐた霧はいつとなく消えて行つて、たうとう雨は本降りとなつた。あまりの音のすさまじさに縁側に出て見ると、庭さきから直ぐ立ち竝んだ深い杉の …
湯槽の朝(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
三月廿八日、午前五時ころ、伊豆湯ケ島温泉湯本館の湯槽(ゆぶね)にわたしはひとりして浸つてゐた。 温まるにつれて、昨夜少し過した酒の醉がまたほのかに身體に出て來るのを覺えた。わたしは …
読書目安時間:約3分
三月廿八日、午前五時ころ、伊豆湯ケ島温泉湯本館の湯槽(ゆぶね)にわたしはひとりして浸つてゐた。 温まるにつれて、昨夜少し過した酒の醉がまたほのかに身體に出て來るのを覺えた。わたしは …
“若山牧水”について
若山 牧水(わかやま ぼくすい、1885年(明治18年)8月24日 - 1928年(昭和3年)9月17日)は、戦前日本の歌人。本名・繁(しげる)。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“若山牧水”と年代が近い著者
きょうが誕生日(1月28日)
中山省三郎(1904年)
きょうが命日(1月28日)
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)