中里介山
1885.04.04 〜 1944.04.28
“中里介山”に特徴的な語句
面
鐚
体
冬籠
流言蜚語
愈々
甚
金椎
俺
睨
易
利
為
来
炬燵
凧
身体
外
鍬
抛
如何
盲目
鐙小屋
軋
青嵐居士
鷲
角屋
裲襠
固
止
和歌
銀杏
搾
普
呆
内儀
喋
噂
己
鯱
東雲
強
覘
面
被
駕籠
口惜
忽
蒲団
咎
著者としての作品一覧
生前身後の事(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間21分
小生も本年数え年五十になった、少年時代には四十五十といえばもうとてもおじいさんのように思われたが、自分が経来って見るとその時分の子供心と大した変らない、ちっとも年をとった気にはなれ …
読書目安時間:約1時間21分
小生も本年数え年五十になった、少年時代には四十五十といえばもうとてもおじいさんのように思われたが、自分が経来って見るとその時分の子供心と大した変らない、ちっとも年をとった気にはなれ …
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間5分
この小説「大菩薩峠」全篇の主意とする処は、人間界の諸相を曲尽して、大乗遊戯の境に参入するカルマ曼陀羅の面影を大凡下の筆にうつし見んとするにあり。この着想前古に無きものなれば、その画 …
読書目安時間:約2時間5分
この小説「大菩薩峠」全篇の主意とする処は、人間界の諸相を曲尽して、大乗遊戯の境に参入するカルマ曼陀羅の面影を大凡下の筆にうつし見んとするにあり。この着想前古に無きものなれば、その画 …
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間16分
「浜、雪は積ったか」 炬燵に仮睡していた机竜之助は、ふと眼をあいてだるそうな声。 「はい、さっきから少しもやまず、ごらんなされ、五寸も積りました」 「うむ……だいぶ大きなのが降り出 …
読書目安時間:約1時間16分
「浜、雪は積ったか」 炬燵に仮睡していた机竜之助は、ふと眼をあいてだるそうな声。 「はい、さっきから少しもやまず、ごらんなされ、五寸も積りました」 「うむ……だいぶ大きなのが降り出 …
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間44分
昨日も、今日も、竜之助は大津の宿屋を動かない。 京都までは僅か三里、ゆっくりとここで疲れを休まして行くつもりか。 今日も、日が暮れた。床の間を枕にして竜之助は横になって、そこに投げ …
読書目安時間:約1時間44分
昨日も、今日も、竜之助は大津の宿屋を動かない。 京都までは僅か三里、ゆっくりとここで疲れを休まして行くつもりか。 今日も、日が暮れた。床の間を枕にして竜之助は横になって、そこに投げ …
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間41分
大和の国、三輪の町の大鳥居の向って右の方の、日の光を嫌って蔭をのみ選って歩いた一人の女が、それから一町ほど行って「薬屋」という看板をかけた大きな宿屋の路地口を、物に追われたように駈 …
読書目安時間:約1時間41分
大和の国、三輪の町の大鳥居の向って右の方の、日の光を嫌って蔭をのみ選って歩いた一人の女が、それから一町ほど行って「薬屋」という看板をかけた大きな宿屋の路地口を、物に追われたように駈 …
大菩薩峠:05 龍神の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間16分
天誅組がいよいよ勃発したのは、その年の八月のことでありました。十七日には大和五条の代官鈴木源内を斬って血祭りにし、その二十八日は、いよいよ総勢五百余人で同国高取の城を攻めた日。その …
読書目安時間:約1時間16分
天誅組がいよいよ勃発したのは、その年の八月のことでありました。十七日には大和五条の代官鈴木源内を斬って血祭りにし、その二十八日は、いよいよ総勢五百余人で同国高取の城を攻めた日。その …
大菩薩峠:06 間の山の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間11分
内宮と外宮の間にあるから間の山というのであって、その山を切り拓いて道を作ったのは天正年間のことだそうであります。なお委しくいえば、伊勢音頭で名高い古市の尾上坂と宇治の浦田坂の間、俗 …
読書目安時間:約2時間11分
内宮と外宮の間にあるから間の山というのであって、その山を切り拓いて道を作ったのは天正年間のことだそうであります。なお委しくいえば、伊勢音頭で名高い古市の尾上坂と宇治の浦田坂の間、俗 …
大菩薩峠:07 東海道の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間41分
これらの連中がみんな東を指して去ってから後、十日ほどして、一人の虚無僧が大湊を朝の早立ちにして、やがて東を指して歩いて行きます。これは机竜之助でありました。 竜之助の父弾正は尺八を …
読書目安時間:約1時間41分
これらの連中がみんな東を指して去ってから後、十日ほどして、一人の虚無僧が大湊を朝の早立ちにして、やがて東を指して歩いて行きます。これは机竜之助でありました。 竜之助の父弾正は尺八を …
大菩薩峠:08 白根山の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間29分
机竜之助は昨夜、お絹の口から島田虎之助の最期を聞いた時に、 「ああ、惜しいことをした」 という一語を、思わず口の端から洩らしました。 そうしてその晩、お絹は夜具を被って寝てしまった …
読書目安時間:約1時間29分
机竜之助は昨夜、お絹の口から島田虎之助の最期を聞いた時に、 「ああ、惜しいことをした」 という一語を、思わず口の端から洩らしました。 そうしてその晩、お絹は夜具を被って寝てしまった …
大菩薩峠:09 女子と小人の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間44分
伊勢から帰った後の道庵先生は別に変ったこともなく、道庵流に暮らしておりました。 医術にかけてはそれを施すことも親切であるが、それを研究することも根がよく、ひまがあれば古今の医書を繙 …
読書目安時間:約1時間44分
伊勢から帰った後の道庵先生は別に変ったこともなく、道庵流に暮らしておりました。 医術にかけてはそれを施すことも親切であるが、それを研究することも根がよく、ひまがあれば古今の医書を繙 …
大菩薩峠:10 市中騒動の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間3分
白根入りをした宇津木兵馬は例の奈良田の湯本まで来て、そこへ泊ってその翌日、奈良王の宮の址と言われる辻で物凄い物を見ました。兵馬が歩みを留めたところに、人間の生首が二つ、竹の台に載せ …
読書目安時間:約2時間3分
白根入りをした宇津木兵馬は例の奈良田の湯本まで来て、そこへ泊ってその翌日、奈良王の宮の址と言われる辻で物凄い物を見ました。兵馬が歩みを留めたところに、人間の生首が二つ、竹の台に載せ …
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間52分
甲府の神尾主膳の邸へ来客があって或る夜の話、 「神尾殿、江戸からお客が見えるそうだがまだ到着しませぬか」 「女連のことだから、まだ四五日はかかるだろう」 「なにしろ有名な難路でござ …
読書目安時間:約1時間52分
甲府の神尾主膳の邸へ来客があって或る夜の話、 「神尾殿、江戸からお客が見えるそうだがまだ到着しませぬか」 「女連のことだから、まだ四五日はかかるだろう」 「なにしろ有名な難路でござ …
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間35分
これよりさき、竜王の鼻から宇津木兵馬に助けられたお君は、兵馬恋しさの思いで物につかれたように、病み上りの身さえ忘れて、兵馬の後を追うて行きました。 よし、その言い置いた通り白根の山 …
読書目安時間:約1時間35分
これよりさき、竜王の鼻から宇津木兵馬に助けられたお君は、兵馬恋しさの思いで物につかれたように、病み上りの身さえ忘れて、兵馬の後を追うて行きました。 よし、その言い置いた通り白根の山 …
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間55分
お君は、やがて駒井能登守の居間へ通されました。 能登守の居間というのは、そこへ案内されたお君が異様に感じたばかりでなく、誰でもこの居間へ来たものは、異様の念に打たれないわけにはゆか …
読書目安時間:約2時間55分
お君は、やがて駒井能登守の居間へ通されました。 能登守の居間というのは、そこへ案内されたお君が異様に感じたばかりでなく、誰でもこの居間へ来たものは、異様の念に打たれないわけにはゆか …
大菩薩峠:14 お銀様の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間10分
夜が明けると共に靄も霽れてしまいました。天気も申し分のないよい天気であります。幸内は能登守の屋敷から有野村の伊太夫の家へ迎えられることになりました。 有野村へ迎えられて幸内が、その …
読書目安時間:約3時間10分
夜が明けると共に靄も霽れてしまいました。天気も申し分のないよい天気であります。幸内は能登守の屋敷から有野村の伊太夫の家へ迎えられることになりました。 有野村へ迎えられて幸内が、その …
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間50分
お銀様は今、竜之助のために甲陽軍鑑の一冊を読みはじめました。 「某は高坂弾正と申して、信玄公被管の内にて一の臆病者也、仔細は下々にて童子どものざれごとに、保科弾正鑓弾正、高坂弾正逃 …
読書目安時間:約2時間50分
お銀様は今、竜之助のために甲陽軍鑑の一冊を読みはじめました。 「某は高坂弾正と申して、信玄公被管の内にて一の臆病者也、仔細は下々にて童子どものざれごとに、保科弾正鑓弾正、高坂弾正逃 …
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間38分
下谷の長者町の道庵先生がこの頃、何か気に入らないことがあってプンプン怒っています。 その気に入らないことを、よく尋ねてみるとなるほどと思われることもあります。それは道庵先生のすぐ隣 …
読書目安時間:約2時間38分
下谷の長者町の道庵先生がこの頃、何か気に入らないことがあってプンプン怒っています。 その気に入らないことを、よく尋ねてみるとなるほどと思われることもあります。それは道庵先生のすぐ隣 …
大菩薩峠:17 黒業白業の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間5分
八幡村の小泉の家に隠れていた机竜之助は、ひとりで仰向けに寝ころんで雨の音を聞いていました。雨の音を聞きながらお銀様の帰るのを待っていました。お銀様は昨日、そっと忍んで勝沼の親戚まで …
読書目安時間:約3時間5分
八幡村の小泉の家に隠れていた机竜之助は、ひとりで仰向けに寝ころんで雨の音を聞いていました。雨の音を聞きながらお銀様の帰るのを待っていました。お銀様は昨日、そっと忍んで勝沼の親戚まで …
大菩薩峠:18 安房の国の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間8分
この巻は安房の国から始めます。御承知の通り、この国はあまり大きな国ではありません。 信濃、越後等の八百方里内外の面積を有する、それと並び立つ時には、僅かに三十五方里を有するに過ぎな …
読書目安時間:約3時間8分
この巻は安房の国から始めます。御承知の通り、この国はあまり大きな国ではありません。 信濃、越後等の八百方里内外の面積を有する、それと並び立つ時には、僅かに三十五方里を有するに過ぎな …
大菩薩峠:19 小名路の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間22分
その晩のこと、宇治山田の米友が夢を見ました。 米友が夢を見るということは、極めて珍らしいことであります。米友は聖人とは言いにくいけれども、未だ曾て夢らしい夢を見たことのない男です。 …
読書目安時間:約3時間22分
その晩のこと、宇治山田の米友が夢を見ました。 米友が夢を見るということは、極めて珍らしいことであります。米友は聖人とは言いにくいけれども、未だ曾て夢らしい夢を見たことのない男です。 …
大菩薩峠:20 禹門三級の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間51分
宇治山田の米友は、あれから毎日のように夢を見ます。その夢は、いつもはんで捺したように不動明王の夢であります。夢や新聞は、毎日変ったものを見せられるところにねうちがあるのだが、米友の …
読書目安時間:約2時間51分
宇治山田の米友は、あれから毎日のように夢を見ます。その夢は、いつもはんで捺したように不動明王の夢であります。夢や新聞は、毎日変ったものを見せられるところにねうちがあるのだが、米友の …
大菩薩峠:21 無明の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間6分
温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟、夢でありました。 その翌日の晩、蛇滝の参籠堂に、再びはかない夢を結びかけていた時に、今宵は昨夜とちがってしとしとと雨です。 机竜之助は、軒 …
読書目安時間:約5時間6分
温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟、夢でありました。 その翌日の晩、蛇滝の参籠堂に、再びはかない夢を結びかけていた時に、今宵は昨夜とちがってしとしとと雨です。 机竜之助は、軒 …
大菩薩峠:22 白骨の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間19分
この際、両国橋の橋向うに、穏かならぬ一道の雲行きが湧き上った——といえば、スワヤと市中警衛の酒井左衛門の手も、新徴組のくずれも、新たに募られた歩兵隊も、筒先を揃えて、その火元を洗い …
読書目安時間:約4時間19分
この際、両国橋の橋向うに、穏かならぬ一道の雲行きが湧き上った——といえば、スワヤと市中警衛の酒井左衛門の手も、新徴組のくずれも、新たに募られた歩兵隊も、筒先を揃えて、その火元を洗い …
大菩薩峠:23 他生の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間54分
清澄の茂太郎は、ハイランドの月見寺の三重の塔の九輪の上で、しきりに大空をながめているのは、この子は、月の出づるに先立って、高いところへのぼりたがる癖がある。人に問われると、それは、 …
読書目安時間:約4時間54分
清澄の茂太郎は、ハイランドの月見寺の三重の塔の九輪の上で、しきりに大空をながめているのは、この子は、月の出づるに先立って、高いところへのぼりたがる癖がある。人に問われると、それは、 …
大菩薩峠:24 流転の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間21分
宇治山田の米友は、碓氷峠の頂、熊野権現の御前の風車に凭れて、遥かに東国の方を眺めている。 今、米友が凭れている風車、それを米友は風車とは気がつかないで、単に凭れ頃な石塔のたぐいだと …
読書目安時間:約5時間21分
宇治山田の米友は、碓氷峠の頂、熊野権現の御前の風車に凭れて、遥かに東国の方を眺めている。 今、米友が凭れている風車、それを米友は風車とは気がつかないで、単に凭れ頃な石塔のたぐいだと …
大菩薩峠:25 みちりやの巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間53分
武州沢井の机竜之助の道場に、おばけが出るという噂は、かなり遠いところまで響いておりました。 ここは塩山を去ること三里、大菩薩峠のふもとなる裂石の雲峰寺でもその噂であります。 その言 …
読書目安時間:約3時間53分
武州沢井の机竜之助の道場に、おばけが出るという噂は、かなり遠いところまで響いておりました。 ここは塩山を去ること三里、大菩薩峠のふもとなる裂石の雲峰寺でもその噂であります。 その言 …
大菩薩峠:26 めいろの巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間42分
信濃の国、白骨の温泉——これをハッコツと読ませたのは、いつの頃、誰にはじまったものか知らん。 先年、大菩薩峠の著者が、白骨温泉に遊んだ時、机竜之助のような業縁もなく、お雪ちゃんのよ …
読書目安時間:約5時間42分
信濃の国、白骨の温泉——これをハッコツと読ませたのは、いつの頃、誰にはじまったものか知らん。 先年、大菩薩峠の著者が、白骨温泉に遊んだ時、机竜之助のような業縁もなく、お雪ちゃんのよ …
大菩薩峠:27 鈴慕の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間24分
天井の高い、ガランとした田舎家の、大きな炉の傍に、寂然として座を占めているのが弁信法師であります。 時は夜であります。 弁信の坐っている後ろには、六枚屏風の煤けたのがあって、その左 …
読書目安時間:約2時間24分
天井の高い、ガランとした田舎家の、大きな炉の傍に、寂然として座を占めているのが弁信法師であります。 時は夜であります。 弁信の坐っている後ろには、六枚屏風の煤けたのがあって、その左 …
大菩薩峠:28 Oceanの巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間57分
今日から「Ocean の巻」と改めることに致しました。Ocean は申すまでもなく「大洋」のことであります。わざと英語を用いたのは気取ったのではありません。「大洋」とするよりも「海 …
読書目安時間:約1時間57分
今日から「Ocean の巻」と改めることに致しました。Ocean は申すまでもなく「大洋」のことであります。わざと英語を用いたのは気取ったのではありません。「大洋」とするよりも「海 …
大菩薩峠:29 年魚市の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約8時間2分
年魚市は今の「愛知」の古名なり、本篇は頼朝、信長、秀吉を起せし尾張国より筆を起せしを以てこの名あり。今日の黄昏、宇治山田の米友が、一本の木柱をかついで田疇の間をうろついているのを見 …
読書目安時間:約8時間2分
年魚市は今の「愛知」の古名なり、本篇は頼朝、信長、秀吉を起せし尾張国より筆を起せしを以てこの名あり。今日の黄昏、宇治山田の米友が、一本の木柱をかついで田疇の間をうろついているのを見 …
大菩薩峠:30 畜生谷の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間30分
今、お雪は、自分の身を、藍色をした夕暮の空の下、涯しを知らぬ大きな湖の傍で見出しました。 はて、このところは——と、右を見たり、左を見たりしたが、ちょっとの思案にはのぼって来ない光 …
読書目安時間:約2時間30分
今、お雪は、自分の身を、藍色をした夕暮の空の下、涯しを知らぬ大きな湖の傍で見出しました。 はて、このところは——と、右を見たり、左を見たりしたが、ちょっとの思案にはのぼって来ない光 …
大菩薩峠:31 勿来の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間58分
駒井甚三郎は清澄の茂太郎の天才を、科学的に導いてやろうとの意図は持っていませんけれど、その教育法は、おのずからそうなって行くのです。 駒井は研究の傍ら、茂太郎を引きつけて置いて、こ …
読書目安時間:約4時間58分
駒井甚三郎は清澄の茂太郎の天才を、科学的に導いてやろうとの意図は持っていませんけれど、その教育法は、おのずからそうなって行くのです。 駒井は研究の傍ら、茂太郎を引きつけて置いて、こ …
大菩薩峠:32 弁信の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間44分
「おや、まあ、お前は弁信さんじゃありませんか……」 と、草鞋を取る前に、まず呆気にとられたのは久助です。 「はい、弁信でございますよ。久助さん、お変りもありませんでしたか、お雪ちゃ …
読書目安時間:約6時間44分
「おや、まあ、お前は弁信さんじゃありませんか……」 と、草鞋を取る前に、まず呆気にとられたのは久助です。 「はい、弁信でございますよ。久助さん、お変りもありませんでしたか、お雪ちゃ …
大菩薩峠:33 不破の関の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間51分
経済学と科学が、少しく働いて多く得ることを教えると、人間の慾望はそれに拍車を加えて、ついには最も少しく働くか、或いは全く働かないで、最も多くをせしめるように増長して行こうとするのに …
読書目安時間:約6時間51分
経済学と科学が、少しく働いて多く得ることを教えると、人間の慾望はそれに拍車を加えて、ついには最も少しく働くか、或いは全く働かないで、最も多くをせしめるように増長して行こうとするのに …
大菩薩峠:34 白雲の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間31分
秋風ぞ吹く白河の関の一夜、駒井甚三郎に宛てて手紙を書いた田山白雲は、その翌日、更に北へ向っての旅に出で立ちました。 僅かに勿来の関で、遠くも来つるものかなと、感傷を逞しうした白雲が …
読書目安時間:約3時間31分
秋風ぞ吹く白河の関の一夜、駒井甚三郎に宛てて手紙を書いた田山白雲は、その翌日、更に北へ向っての旅に出で立ちました。 僅かに勿来の関で、遠くも来つるものかなと、感傷を逞しうした白雲が …
大菩薩峠:35 胆吹の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間15分
宇治山田の米友は、山形雄偉なる胆吹山を後ろにして、しきりに木の株根を掘っています。 その地点を見れば、まさしく胆吹山の南麓であって、その周囲を見れば荒野原、その一部分の雑木が斫り倒 …
読書目安時間:約3時間15分
宇治山田の米友は、山形雄偉なる胆吹山を後ろにして、しきりに木の株根を掘っています。 その地点を見れば、まさしく胆吹山の南麓であって、その周囲を見れば荒野原、その一部分の雑木が斫り倒 …
大菩薩峠:36 新月の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間50分
とめどもなく走る馬のあとを追うて、宇治山田の米友は、野と、山と、村と、森と、田の中を、かなり向う見ずに走りました。 しかし、相手は何をいうにも馬のことです。さしもの米友も、追いあぐ …
読書目安時間:約6時間50分
とめどもなく走る馬のあとを追うて、宇治山田の米友は、野と、山と、村と、森と、田の中を、かなり向う見ずに走りました。 しかし、相手は何をいうにも馬のことです。さしもの米友も、追いあぐ …
大菩薩峠:37 恐山の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約8時間29分
田山白雲は北上川の渡頭に立って、渡し舟の出るのを待兼ねている。 舟の出発を待侘びるものは田山白雲一人ではなく、士農工商が一人二人と渡頭へ集まってひっかかる。こちらの岸もそうだから、 …
読書目安時間:約8時間29分
田山白雲は北上川の渡頭に立って、渡し舟の出るのを待兼ねている。 舟の出発を待侘びるものは田山白雲一人ではなく、士農工商が一人二人と渡頭へ集まってひっかかる。こちらの岸もそうだから、 …
大菩薩峠:38 農奴の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間40分
近江の国、草津の宿の矢倉の辻の前に、一ツの「晒し者」がある。 そこに一個の弾丸黒子が置かれている。往来の人は、その晒し者の奇怪なグロテスクを一目見ると共に、その直ぐ上に立てられた捨 …
読書目安時間:約5時間40分
近江の国、草津の宿の矢倉の辻の前に、一ツの「晒し者」がある。 そこに一個の弾丸黒子が置かれている。往来の人は、その晒し者の奇怪なグロテスクを一目見ると共に、その直ぐ上に立てられた捨 …
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間31分
同じその宵のこと、大津の浜から八十石の丸船をよそおいして、こっそりと湖中へ向って船出をした甲板の上に、毛氈を敷いて酒肴を置き、上座に構えているその人は、有野村の藤原の伊太夫で、その …
読書目安時間:約5時間31分
同じその宵のこと、大津の浜から八十石の丸船をよそおいして、こっそりと湖中へ向って船出をした甲板の上に、毛氈を敷いて酒肴を置き、上座に構えているその人は、有野村の藤原の伊太夫で、その …
大菩薩峠:40 山科の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間13分
過ぐる夜のこと、机竜之助が、透き通るような姿をして現われて来た逢坂の関の清水の蝉丸神社の鳥居から、今晩、またしても夢のように現われて来た物影があります。先晩は一人でしたが、今夜は、 …
読書目安時間:約6時間13分
過ぐる夜のこと、机竜之助が、透き通るような姿をして現われて来た逢坂の関の清水の蝉丸神社の鳥居から、今晩、またしても夢のように現われて来た物影があります。先晩は一人でしたが、今夜は、 …
大菩薩峠:41 椰子林の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間58分
今日の小春日和、山科の光仙林から、逆三位一体が宇治醍醐の方に向って、わたましがありました。逆三位一体とは何ぞ。 信仰と、正義と、懐疑とが、袖をつらねて行くことであります。本来は、ま …
読書目安時間:約5時間58分
今日の小春日和、山科の光仙林から、逆三位一体が宇治醍醐の方に向って、わたましがありました。逆三位一体とは何ぞ。 信仰と、正義と、懐疑とが、袖をつらねて行くことであります。本来は、ま …
「峠」という字(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
「峠」という字は日本の国字である。日本にも神代から独得の日本文字があったということだが、それは史的確証が無い、人文史上日本の文字は、支那から伝えられたものであって、普通それを漢字と …
読書目安時間:約3分
「峠」という字は日本の国字である。日本にも神代から独得の日本文字があったということだが、それは史的確証が無い、人文史上日本の文字は、支那から伝えられたものであって、普通それを漢字と …
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間43分
第一冊の序文 人間世界第一の長篇小説「大菩薩峠」の著者は今回また新たなる長篇小説「百姓弥之助の話」を人間世界に出す。 「百姓弥之助」は日本帝国の忠実なる一平民に過ぎない、全く忠実な …
読書目安時間:約1時間43分
第一冊の序文 人間世界第一の長篇小説「大菩薩峠」の著者は今回また新たなる長篇小説「百姓弥之助の話」を人間世界に出す。 「百姓弥之助」は日本帝国の忠実なる一平民に過ぎない、全く忠実な …
武州喜多院(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
これも五月のはじめ、郊外の新緑にひたろうと、ブラリ寓を出でて、西武線の下井草までバス、あれから今日の半日を伸せるだけのして見ようと駅で掲示を見る、この線の終点は川越駅になっている、 …
読書目安時間:約8分
これも五月のはじめ、郊外の新緑にひたろうと、ブラリ寓を出でて、西武線の下井草までバス、あれから今日の半日を伸せるだけのして見ようと駅で掲示を見る、この線の終点は川越駅になっている、 …
法然行伝(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間12分
法然上人は美作の国、久米の南条稲岡庄の人である。父は久米の押領使、漆の時国、母は秦氏である。子の無いことを歎いて夫婦が心を一つにして仏神に祈りをした。母の秦氏が夢に剃刀を呑むと見て …
読書目安時間:約2時間12分
法然上人は美作の国、久米の南条稲岡庄の人である。父は久米の押領使、漆の時国、母は秦氏である。子の無いことを歎いて夫婦が心を一つにして仏神に祈りをした。母の秦氏が夢に剃刀を呑むと見て …
山道(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
大正十何年の五月、甲斐の国の塩山の駅から大菩薩峠に向って馬を進めて行く一人の旅人がありました。 中折の帽子をかぶって、脊広の洋服に糸楯、草鞋脚半といういでたちで頬かむりした馬子に馬 …
読書目安時間:約15分
大正十何年の五月、甲斐の国の塩山の駅から大菩薩峠に向って馬を進めて行く一人の旅人がありました。 中折の帽子をかぶって、脊広の洋服に糸楯、草鞋脚半といういでたちで頬かむりした馬子に馬 …
余は大衆作家にあらず(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
芸術とは何ぞや 大衆という文字はいつ頃はじまった、いつ頃誰によって称え出されたものか知れないが、少くもここ十年以前には大衆文学なんぞというが如き文字は文学史にも新聞紙上にも見えなか …
読書目安時間:約5分
芸術とは何ぞや 大衆という文字はいつ頃はじまった、いつ頃誰によって称え出されたものか知れないが、少くもここ十年以前には大衆文学なんぞというが如き文字は文学史にも新聞紙上にも見えなか …
“中里介山”について
中里 介山(なかざと かいざん、男性、1885年(明治18年)4月4日 - 1944年(昭和19年)4月28日)は、日本の小説家。本名:中里 弥之助。
甥に、ロシア・ソビエト文学者の中里迪弥(なかざとみちや)。
(出典:Wikipedia)
甥に、ロシア・ソビエト文学者の中里迪弥(なかざとみちや)。
(出典:Wikipedia)
“中里介山”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)