鴉と正覚坊からすとしょうがくぼう
正覺坊 いつもより少し時間は遲かつたが、晩酌前の散歩をして來ようと庭つゞきの濱の松原へ出かけて行つた。其處には松原を縱に貫いて通じてゐる靜かな小徑があり、朝夕私の散歩徑となつてゐる。一二町も歩いたところで、濱から上つてその小徑を切る小徑があ …