与謝野晶子
1878.12.07 〜 1942.05.29
“与謝野晶子”に特徴的な語句
射
為
踊
光
後
紅
居
真直
挿頭
行
其
下
玉鬘
二人
直
良人
母様
幸
中
詣
倚
小
黄金
硝子
薫
煙草
処
逢
蚊帳
筈
一人
額
縮緬
屈
此
全
一
樹
尖
互
商人
円
軽
何処
集
微笑
群
跳
繍
彼
著者としての作品一覧
晶子詩篇全集(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間42分
美濃部民子夫人に献ず 美濃部民子様 わたくしは今年の秋の初に、少しの暇を得ましたので、明治卅三年から最近までに作りました自分の詩の草稿を整理し、其中から四百廿壱篇を撰んで此の一冊に …
読書目安時間:約2時間42分
美濃部民子夫人に献ず 美濃部民子様 わたくしは今年の秋の初に、少しの暇を得ましたので、明治卅三年から最近までに作りました自分の詩の草稿を整理し、其中から四百廿壱篇を撰んで此の一冊に …
晶子詩篇全集拾遺(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間38分
別れてながき君とわれ 今宵あひみし嬉しさを 汲てもつきぬうま酒に 薄くれなゐの染いでし 君が片頬にびんの毛の 春風ゆるくそよぐかな。」 たのしからずやこの夕 はるはゆふべの薄雲に …
読書目安時間:約1時間38分
別れてながき君とわれ 今宵あひみし嬉しさを 汲てもつきぬうま酒に 薄くれなゐの染いでし 君が片頬にびんの毛の 春風ゆるくそよぐかな。」 たのしからずやこの夕 はるはゆふべの薄雲に …
遺書(新字旧仮名)
読書目安時間:約32分
私にあなたがしてお置きになる遺言と云ふものも、私のします其(そ)れも、権威のあるものでないことは一緒だらうと思ひます。ですからこれは覚書です。子供の面倒を見て下さる方(かた)にと思 …
読書目安時間:約32分
私にあなたがしてお置きになる遺言と云ふものも、私のします其(そ)れも、権威のあるものでないことは一緒だらうと思ひます。ですからこれは覚書です。子供の面倒を見て下さる方(かた)にと思 …
産屋物語(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
雛の節句の晩に男の子を挙げてまだ産屋に籠っている私は医師から筆執る事も物を読む事も許されておりません。ところで平生忙しく暮しておりますので、こう静かに臥っておりますと何だか独りで旅 …
読書目安時間:約12分
雛の節句の晩に男の子を挙げてまだ産屋に籠っている私は医師から筆執る事も物を読む事も許されておりません。ところで平生忙しく暮しておりますので、こう静かに臥っておりますと何だか独りで旅 …
女が来て(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
良人は昨日来た某警察署の高等視察のした話をSさんにして居ました。私は手に卓上と云ふ茶色の表紙をした雑誌を持ちながら、初めて聞く話でしたから良人の言葉に耳を傾けて居ました。 『あの時 …
読書目安時間:約13分
良人は昨日来た某警察署の高等視察のした話をSさんにして居ました。私は手に卓上と云ふ茶色の表紙をした雑誌を持ちながら、初めて聞く話でしたから良人の言葉に耳を傾けて居ました。 『あの時 …
「女らしさ」とは何か(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
日本人は早く仏教に由って「無常迅速の世の中」と教えられ、儒教に由って「日に新たにしてまた日に新たなり」ということを学びながら、それを小乗的悲観の意味にばかり解釈して来たために、「万 …
読書目安時間:約15分
日本人は早く仏教に由って「無常迅速の世の中」と教えられ、儒教に由って「日に新たにしてまた日に新たなり」ということを学びながら、それを小乗的悲観の意味にばかり解釈して来たために、「万 …
階級闘争の彼方へ(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
人類が連帯責任の中に協力して文化主義の生活を建設し、その生活の福祉に均霑することが、人生の最高唯一の理想であると私は信じています。文化生活が或程度の成熟期に入れば、そこには個人の能 …
読書目安時間:約11分
人類が連帯責任の中に協力して文化主義の生活を建設し、その生活の福祉に均霑することが、人生の最高唯一の理想であると私は信じています。文化生活が或程度の成熟期に入れば、そこには個人の能 …
帰つてから(新字旧仮名)
読書目安時間:約40分
浜松とか静岡とか、此方へ来ては山北とか、国府津とか、停車する度に呼ばれるのを聞いても、疲労し切つた身体を持つた鏡子の鈍い神経には格別の感じも与へなかつたのであつたが、平沼と聞いた時 …
読書目安時間:約40分
浜松とか静岡とか、此方へ来ては山北とか、国府津とか、停車する度に呼ばれるのを聞いても、疲労し切つた身体を持つた鏡子の鈍い神経には格別の感じも与へなかつたのであつたが、平沼と聞いた時 …
既成宗教の外(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
人間の思慮の及ぶ所には限度がある。天文学者が「宇宙」と云っている所は無限大の実在の一微塵に過ぎない。今のような構造をした頭脳を持っている限り、永久に「不可知の世界」が儼として人間の …
読書目安時間:約4分
人間の思慮の及ぶ所には限度がある。天文学者が「宇宙」と云っている所は無限大の実在の一微塵に過ぎない。今のような構造をした頭脳を持っている限り、永久に「不可知の世界」が儼として人間の …
教育の民主主義化を要求す(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
現在の文部大臣中橋氏はこれまでの伴食大臣とちがって、教育界の現状を憂慮する誠実と、それを改造する意志とを多分に持っておられるように見え、そのうえ、改造を断行する実力をも兼備されてい …
読書目安時間:約9分
現在の文部大臣中橋氏はこれまでの伴食大臣とちがって、教育界の現状を憂慮する誠実と、それを改造する意志とを多分に持っておられるように見え、そのうえ、改造を断行する実力をも兼備されてい …
鏡心灯語 抄(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
* 私は平生他人の議論を読むことの好きな代りに自ら議論することを好まない。議論にはかなり固定した習性がある。即ち議論には論理を一般人の目に見えるように操縦せねばならぬ。また議論の質 …
読書目安時間:約22分
* 私は平生他人の議論を読むことの好きな代りに自ら議論することを好まない。議論にはかなり固定した習性がある。即ち議論には論理を一般人の目に見えるように操縦せねばならぬ。また議論の質 …
激動の中を行く(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
人生は静態のものでなくて動態のものであり、それの固定を病的状態とし、それの流動を正統状態として、常に動揺変化の中にあるものであるということは説明の必要もないことですが、戦後の世界は …
読書目安時間:約19分
人生は静態のものでなくて動態のものであり、それの固定を病的状態とし、それの流動を正統状態として、常に動揺変化の中にあるものであるということは説明の必要もないことですが、戦後の世界は …
恋衣(新字旧仮名)
読書目安時間:約25分
詩人薄田泣菫の君に捧げまつる 絵画 詩 白百合 みをつくし 曙染 君死に給ふこと勿れ 恋ふるとて いかが語らむ 皷いだけば しら玉の 冥府のくら戸は 白百合 山川登美子 髪ながき少 …
読書目安時間:約25分
詩人薄田泣菫の君に捧げまつる 絵画 詩 白百合 みをつくし 曙染 君死に給ふこと勿れ 恋ふるとて いかが語らむ 皷いだけば しら玉の 冥府のくら戸は 白百合 山川登美子 髪ながき少 …
紅梅(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私の庭に早咲の紅梅が一本ある。東と南の光を受けて、北を建物にふさがれてゐるためか、十二月の半からぼつぼつ蕾を破つてゐる。色は桃のやうに濃くも無く、白い磁器の上に臙脂を薄く融かしたや …
読書目安時間:約2分
私の庭に早咲の紅梅が一本ある。東と南の光を受けて、北を建物にふさがれてゐるためか、十二月の半からぼつぼつ蕾を破つてゐる。色は桃のやうに濃くも無く、白い磁器の上に臙脂を薄く融かしたや …
午後(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
二人は先刻クリシイの通で中食して帰つて来てからまだ一言も言葉を交さない。女は暖炉の上の棚の心覚えのある雑誌の下から郵船会社の発船日表を出した。さうして長椅子にべたりと腰を下して、手 …
読書目安時間:約13分
二人は先刻クリシイの通で中食して帰つて来てからまだ一言も言葉を交さない。女は暖炉の上の棚の心覚えのある雑誌の下から郵船会社の発船日表を出した。さうして長椅子にべたりと腰を下して、手 …
御門主(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
先刻まで改札の柵の傍に置いてあつた写真器は裏側の出札口の前に移されて、フロツクコートの男が相変らず黒い切を被いだり、レンズを覗いたりして居る。その傍に中年老年の僧侶が法衣の上から種 …
読書目安時間:約6分
先刻まで改札の柵の傍に置いてあつた写真器は裏側の出札口の前に移されて、フロツクコートの男が相変らず黒い切を被いだり、レンズを覗いたりして居る。その傍に中年老年の僧侶が法衣の上から種 …
産褥の記(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
わたしは未だ病院の分娩室に横になつて居る。室内では夕方になると瓦斯暖炉が焚かれるが、好い陽気が毎日つづくので日のある間は暖い。其れに此室は南を受けて縁に硝子戸が這入つてゐるから、障 …
読書目安時間:約12分
わたしは未だ病院の分娩室に横になつて居る。室内では夕方になると瓦斯暖炉が焚かれるが、好い陽気が毎日つづくので日のある間は暖い。其れに此室は南を受けて縁に硝子戸が這入つてゐるから、障 …
三面一体の生活へ(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
私たちは個人として、国民として、世界人としてという三つの面を持ちながら、それが一体であるという生活を意識的に実現したい。誰も無意識的には、また偶然的にはこの三面一体の生活の中に出つ …
読書目安時間:約20分
私たちは個人として、国民として、世界人としてという三つの面を持ちながら、それが一体であるという生活を意識的に実現したい。誰も無意識的には、また偶然的にはこの三面一体の生活の中に出つ …
私娼の撲滅について(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
一木博士を主務大臣とする内務省が突如として私娼絶滅の実行に取掛ったことは最近の奇異な現象である。私はこれについていろいろのことを考えて見た。 娼婦とは奴隷の一種である。経済上の独立 …
読書目安時間:約12分
一木博士を主務大臣とする内務省が突如として私娼絶滅の実行に取掛ったことは最近の奇異な現象である。私はこれについていろいろのことを考えて見た。 娼婦とは奴隷の一種である。経済上の独立 …
姑と嫁について(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
或会社の技師をしている工学士某氏の妻が自分に対する苛酷を極めた処置に堪えかねて姑を刺したという故殺未遂犯が近頃公判に附せられたので、その事件の真相が諸新聞に現れた。嫁が姑を刃傷した …
読書目安時間:約14分
或会社の技師をしている工学士某氏の妻が自分に対する苛酷を極めた処置に堪えかねて姑を刺したという故殺未遂犯が近頃公判に附せられたので、その事件の真相が諸新聞に現れた。嫁が姑を刃傷した …
姑と嫁に就て(再び)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
本誌の此號に「與謝野晶子氏に呈す」と云ふ一文が載つて居ります。それは前號の本誌で私が某工學士と云つた中根氏が私に寄せられた私信ですが、私の所感の中にある事實の相違を訂正するのに最も …
読書目安時間:約9分
本誌の此號に「與謝野晶子氏に呈す」と云ふ一文が載つて居ります。それは前號の本誌で私が某工學士と云つた中根氏が私に寄せられた私信ですが、私の所感の中にある事實の相違を訂正するのに最も …
食糧騒動について(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
このたびの三府一道三十余県という広汎な範囲にわたって爆発した民衆の食糧騒動は天明や天保年間の飢饉時代に起ったそれよりは劇烈を極めて、大正の歴史に意外の汚点を留めるに到りました。私は …
読書目安時間:約10分
このたびの三府一道三十余県という広汎な範囲にわたって爆発した民衆の食糧騒動は天明や天保年間の飢饉時代に起ったそれよりは劇烈を極めて、大正の歴史に意外の汚点を留めるに到りました。私は …
女子の独立自営(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
人の性情にも体質にも万人共通の点即ち類性と、個人独得の点即ち個性とがあります。前代の社会心理の公準は類性のみを見て人の全部だと誤解した嫌がありました。似た所ばかりを集めて一つの型を …
読書目安時間:約11分
人の性情にも体質にも万人共通の点即ち類性と、個人独得の点即ち個性とがあります。前代の社会心理の公準は類性のみを見て人の全部だと誤解した嫌がありました。似た所ばかりを集めて一つの型を …
『新新訳源氏物語』あとがき(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
燦然と千古に光る東洋文学の巨篇源氏物語の価値は今さら説く必要もない。 私は今を去る二十八年の昔、金尾文淵堂主の依頼によって、源氏物語を略述した。新訳源氏物語がそれである。森林太郎、 …
読書目安時間:約5分
燦然と千古に光る東洋文学の巨篇源氏物語の価値は今さら説く必要もない。 私は今を去る二十八年の昔、金尾文淵堂主の依頼によって、源氏物語を略述した。新訳源氏物語がそれである。森林太郎、 …
新婦人協会の請願運動(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
去年の十一月に大阪朝日新聞社が主催となって関西婦人連合大会を大阪に開いたことは、多数の保守的な婦人団体を現代的に覚醒させるために、確かに一つの好い刺激になったと思います。我国の婦人 …
読書目安時間:約14分
去年の十一月に大阪朝日新聞社が主催となって関西婦人連合大会を大阪に開いたことは、多数の保守的な婦人団体を現代的に覚醒させるために、確かに一つの好い刺激になったと思います。我国の婦人 …
住吉祭(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
海辺の方ではもう地車の太鼓が鳴つて居る。横町を通る人の足音が常の十倍程もする。子供の声、甲高な女の声などがそれに交つて、朝湯に入つて居る私を早く早くと急き立てるやうに聞えた。此処に …
読書目安時間:約4分
海辺の方ではもう地車の太鼓が鳴つて居る。横町を通る人の足音が常の十倍程もする。子供の声、甲高な女の声などがそれに交つて、朝湯に入つて居る私を早く早くと急き立てるやうに聞えた。此処に …
選挙に対する婦人の希望(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
私は少しばかり政治について所感を述べようと思います。私たち婦人は憲法の上でこそ男子と同等の権利を持った個人ですが、専ら男子に由って作られた法律の上では憲法と矛盾して、不合理にも、単 …
読書目安時間:約15分
私は少しばかり政治について所感を述べようと思います。私たち婦人は憲法の上でこそ男子と同等の権利を持った個人ですが、専ら男子に由って作られた法律の上では憲法と矛盾して、不合理にも、単 …
そぞろごと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
○ 山の動く日來る。 かく云へども人われを信ぜじ。 山は姑く眠りしのみ。 その昔に於て 山は皆火に燃えて動きしものを。 されど、そは信ぜずともよし。 人よ、ああ、唯これを信ぜよ。 …
読書目安時間:約3分
○ 山の動く日來る。 かく云へども人われを信ぜじ。 山は姑く眠りしのみ。 その昔に於て 山は皆火に燃えて動きしものを。 されど、そは信ぜずともよし。 人よ、ああ、唯これを信ぜよ。 …
台風(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
八月十三日。 昨夜は夜通し蒸暑くて寝苦しかつた。夕刊の新聞に台風が東京をも襲ふ筈だと書いてあつたが、夜の十時頃から果してそれらしい風が吹き出した。併し雨はまだ小降であつた。蚊遣線香 …
読書目安時間:約5分
八月十三日。 昨夜は夜通し蒸暑くて寝苦しかつた。夕刊の新聞に台風が東京をも襲ふ筈だと書いてあつたが、夜の十時頃から果してそれらしい風が吹き出した。併し雨はまだ小降であつた。蚊遣線香 …
高きへ憧れる心(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
人間は大抵平地に住んでいる。それで天とか山とかを仰いで高い所へあこがれる心を、悠久な大昔の野蛮人が既に持っている。高い所に在るものは太陽でも、雲でも、月や星でもすべて美くしいものに …
読書目安時間:約4分
人間は大抵平地に住んでいる。それで天とか山とかを仰いで高い所へあこがれる心を、悠久な大昔の野蛮人が既に持っている。高い所に在るものは太陽でも、雲でも、月や星でもすべて美くしいものに …
註釈与謝野寛全集(新字旧仮名)
読書目安時間:約38分
全集は上下二巻になつて居る。下巻の方に初期の作が収められて居るのであるから、歴史的に云へば註釈も下巻から初めねばならぬものかも知れぬが、故人の意を尊重して私はやはり初めに編まれたも …
読書目安時間:約38分
全集は上下二巻になつて居る。下巻の方に初期の作が収められて居るのであるから、歴史的に云へば註釈も下巻から初めねばならぬものかも知れぬが、故人の意を尊重して私はやはり初めに編まれたも …
月二夜(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
新涼の季節に入つて良い月夜がつづく。月暦の上でこそ閏のために中秋は来月に延びてゐるが、実際の気候から云へば例年のやうに今が中秋の月夜の後である。月は昔から東洋人により多く喜ばれる。 …
読書目安時間:約5分
新涼の季節に入つて良い月夜がつづく。月暦の上でこそ閏のために中秋は来月に延びてゐるが、実際の気候から云へば例年のやうに今が中秋の月夜の後である。月は昔から東洋人により多く喜ばれる。 …
月夜(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
お幸の家は石津村で一番の旧家でそして昔は大地主であつた為めに、明治の維新後に百姓が名字を拵へる時にも、沢山の田と云ふ意味で太田と附けたと云はれて居ました。それだのに祖父の時に自身が …
読書目安時間:約11分
お幸の家は石津村で一番の旧家でそして昔は大地主であつた為めに、明治の維新後に百姓が名字を拵へる時にも、沢山の田と云ふ意味で太田と附けたと云はれて居ました。それだのに祖父の時に自身が …
貞操は道徳以上に尊貴である(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
私は貞操を最も尊重し、貞操を最も確實堅固な基礎の上に据ゑたいために此一文を書きます。 今年は貞操と云ふことが問題になつて、女子の貞操ばかりでなく、男子の貞操と云ふやうなことまでが論 …
読書目安時間:約11分
私は貞操を最も尊重し、貞操を最も確實堅固な基礎の上に据ゑたいために此一文を書きます。 今年は貞操と云ふことが問題になつて、女子の貞操ばかりでなく、男子の貞操と云ふやうなことまでが論 …
隣の家(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
私達が去年から借りて住んで居る家の左隣は我国の二大富豪の一として知られた某家の一族の邸である。私の家との間に高さ一丈余りの厚い煉瓦塀が立つて、其上に忍び返しが置かれて居る。その塀に …
読書目安時間:約4分
私達が去年から借りて住んで居る家の左隣は我国の二大富豪の一として知られた某家の一族の邸である。私の家との間に高さ一丈余りの厚い煉瓦塀が立つて、其上に忍び返しが置かれて居る。その塀に …
戸の外まで(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
自室から出ましてね、廊下の向うの隅に腰を掛けて車丁に、 『わたしは巴里へ行くのよ。』 と云ひました。 『ええ、奥様。』 と笑ひながら頤の先に髯のある車丁は笑つてましたよ。一昨日まで …
読書目安時間:約9分
自室から出ましてね、廊下の向うの隅に腰を掛けて車丁に、 『わたしは巴里へ行くのよ。』 と云ひました。 『ええ、奥様。』 と笑ひながら頤の先に髯のある車丁は笑つてましたよ。一昨日まで …
何故の出兵か(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
日本人の上に今や一つの大問題が起っております。近頃の新聞を読む人の誰も気が附く通り、それは西伯利亜へ日本の大兵を出すか出さないかという問題です。 これに対して我々婦人はどういう意見 …
読書目安時間:約5分
日本人の上に今や一つの大問題が起っております。近頃の新聞を読む人の誰も気が附く通り、それは西伯利亜へ日本の大兵を出すか出さないかという問題です。 これに対して我々婦人はどういう意見 …
日記のうち(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
十一月十三日 きゆうきゆうと云ふ音が彼方でも此方でもして、何処の寝台ももう畳まれて居るらしいので、わたしも起きないでは悪いやうな気がして蒲団の上に坐つた。けれどまだ実際窓の外は薄暗 …
読書目安時間:約9分
十一月十三日 きゆうきゆうと云ふ音が彼方でも此方でもして、何処の寝台ももう畳まれて居るらしいので、わたしも起きないでは悪いやうな気がして蒲団の上に坐つた。けれどまだ実際窓の外は薄暗 …
初島紀行(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
正月六日朝早く千人風呂に入つて、その硝子窓から伊豆の沖の美くしい日の出を見ました。今日の快晴は疑ふべくも無い。海は襦子の感觸を以て銀の色を擴げ、中にところどころ天鵞絨の柔かみを以て …
読書目安時間:約7分
正月六日朝早く千人風呂に入つて、その硝子窓から伊豆の沖の美くしい日の出を見ました。今日の快晴は疑ふべくも無い。海は襦子の感觸を以て銀の色を擴げ、中にところどころ天鵞絨の柔かみを以て …
巴里より(新字旧仮名)
読書目安時間:約5時間48分
予等は日夜欧羅巴に憬れて居る。殊に巴里が忘れられない。滞留期が短くて、すべて表面計りを一瞥して来たに過ぎない予等ですら斯うであるから、久しく欧洲の内景に親んだ人人は幾倍か此感が深い …
読書目安時間:約5時間48分
予等は日夜欧羅巴に憬れて居る。殊に巴里が忘れられない。滞留期が短くて、すべて表面計りを一瞥して来たに過ぎない予等ですら斯うであるから、久しく欧洲の内景に親んだ人人は幾倍か此感が深い …
巴里にて(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
巴里の良人の許へ着いて、何と云ふ事なしに一ヶ月程を送つて仕舞つた。東京に居た自分、殊に出立前三月程の間の忙しかつた自分に比べると、今の自分は餘りに暇があるので夢の樣な氣がする。自分 …
読書目安時間:約6分
巴里の良人の許へ着いて、何と云ふ事なしに一ヶ月程を送つて仕舞つた。東京に居た自分、殊に出立前三月程の間の忙しかつた自分に比べると、今の自分は餘りに暇があるので夢の樣な氣がする。自分 …
巴里の独立祭(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
七月十三日の晩、自分は獨立祭の宵祭の街の賑はひを見て歸つて、子供の時、お祭の前の夜の嬉しかつたのと殆ど同じほどの思ひで、明日着て出る服や帽を長椅子の上に揃へて寢た。夜中に二三度雨が …
読書目安時間:約7分
七月十三日の晩、自分は獨立祭の宵祭の街の賑はひを見て歸つて、子供の時、お祭の前の夜の嬉しかつたのと殆ど同じほどの思ひで、明日着て出る服や帽を長椅子の上に揃へて寢た。夜中に二三度雨が …
巴里の旅窓より(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
汽車で露西亞や獨逸を過ぎて巴里へ來ると、先づ目に着くのは佛蘭西の男も女もきやしやな體をして其姿の意氣な事である。勿論一人一人を仔細に觀るなら各〻の身分や趣味が異ふ儘に優劣はあらうが …
読書目安時間:約10分
汽車で露西亞や獨逸を過ぎて巴里へ來ると、先づ目に着くのは佛蘭西の男も女もきやしやな體をして其姿の意氣な事である。勿論一人一人を仔細に觀るなら各〻の身分や趣味が異ふ儘に優劣はあらうが …
巴里まで(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
浦潮斯徳を出た水曜日の列車は一つの貨車と食堂と三つの客車とで成立つて居た。私の乘つたのは最後の車で、二人詰の端の室であるから幅は五尺足らずであつた。乘合の客はない。硝子窓が二つ附い …
読書目安時間:約12分
浦潮斯徳を出た水曜日の列車は一つの貨車と食堂と三つの客車とで成立つて居た。私の乘つたのは最後の車で、二人詰の端の室であるから幅は五尺足らずであつた。乘合の客はない。硝子窓が二つ附い …
非人道的な講和条件(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
政治家や実業家は便宜主義を重んじる習慣の中に生きています。便宜主義は一時的のものです。それが必ずしも正義と一致して永久の価値を持っているとは限りません。否、むしろ正義に背いている場 …
読書目安時間:約5分
政治家や実業家は便宜主義を重んじる習慣の中に生きています。便宜主義は一時的のものです。それが必ずしも正義と一致して永久の価値を持っているとは限りません。否、むしろ正義に背いている場 …
ひらきぶみ(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
みだれ髪 君 事なく着きし電報はすぐ打たせ候ひしかど、この文は二日おくれ候。光おばあ様を見覚えをり候はずなく、あたり皆顔知らぬ人々のみなれば、私の膝はなれず、ともすればおとうさんお …
読書目安時間:約10分
みだれ髪 君 事なく着きし電報はすぐ打たせ候ひしかど、この文は二日おくれ候。光おばあ様を見覚えをり候はずなく、あたり皆顔知らぬ人々のみなれば、私の膝はなれず、ともすればおとうさんお …
平塚さんと私の論争(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
私は女子の生活が精神的にも経済的にも独立することの理想に対して、若い婦人の中の識者から反対説が出ようとは想像しませんでした。それは、この理想の実現が人生に真の幸福を築き初める第一の …
読書目安時間:約16分
私は女子の生活が精神的にも経済的にも独立することの理想に対して、若い婦人の中の識者から反対説が出ようとは想像しませんでした。それは、この理想の実現が人生に真の幸福を築き初める第一の …
平塚・山川・山田三女史に答う(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
女史の経済的独立と母性保護問題とについて、平塚雷鳥さんと私との間に端なくも意見の相異を見たのに対して、平塚さんからは、再び辛辣な反駁を寄せられ、山川菊栄さんと山田わか子さんのお二人 …
読書目安時間:約25分
女史の経済的独立と母性保護問題とについて、平塚雷鳥さんと私との間に端なくも意見の相異を見たのに対して、平塚さんからは、再び辛辣な反駁を寄せられ、山川菊栄さんと山田わか子さんのお二人 …
婦人改造と高等教育(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
我国の婦人界は人の視聴を引く鮮かな現象に乏しいので毎年同じほどの平調な経過を取って行くように思われますけれど、七、八年前の婦人界を顧みて比較するとその変化の非常なのに驚かれます。例 …
読書目安時間:約16分
我国の婦人界は人の視聴を引く鮮かな現象に乏しいので毎年同じほどの平調な経過を取って行くように思われますけれど、七、八年前の婦人界を顧みて比較するとその変化の非常なのに驚かれます。例 …
婦人改造の基礎的考察(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
改造ということは最も古くして併せて最も新らしい意味を持っています。人生は歴史以前の悠遠な時代に一たび文化生活の端を開いてこのかた、全く改造に改造を重ねて進転する過程です。男子は巧み …
読書目安時間:約20分
改造ということは最も古くして併せて最も新らしい意味を持っています。人生は歴史以前の悠遠な時代に一たび文化生活の端を開いてこのかた、全く改造に改造を重ねて進転する過程です。男子は巧み …
婦人指導者への抗議(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
私たち日本婦人は一九一九年において破天荒な刺戟を受けました。それは私たちが世界に触れると共に未来に触れたことです。久しく家庭と因習との窮屈な中に機械的の存在者であった私たちが、一躍 …
読書目安時間:約14分
私たち日本婦人は一九一九年において破天荒な刺戟を受けました。それは私たちが世界に触れると共に未来に触れたことです。久しく家庭と因習との窮屈な中に機械的の存在者であった私たちが、一躍 …
婦人と思想(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
行うということ働くということは器械的である。従属的である。それ自身に価値を有っていない事である。神経の下等中枢で用の足る事である。わたしは人において最も貴いものは想うこと考えること …
読書目安時間:約11分
行うということ働くということは器械的である。従属的である。それ自身に価値を有っていない事である。神経の下等中枢で用の足る事である。わたしは人において最も貴いものは想うこと考えること …
婦人も参政権を要求す(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
二月に入って俄かに普通選挙の運動が各地に起り出しました。かつて明治四十一年に政友会の提出した普通選挙法案が一旦衆議院を通過しながら、元老や貴族院の保守的勢力の圧迫に依って頓挫してし …
読書目安時間:約12分
二月に入って俄かに普通選挙の運動が各地に起り出しました。かつて明治四十一年に政友会の提出した普通選挙法案が一旦衆議院を通過しながら、元老や貴族院の保守的勢力の圧迫に依って頓挫してし …
文化学院の設立について(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
私は近く今年の四月から、女子教育に対して、友人と共にみずから一つの実行に当ろうと決心しました。これは申すまでもなく、私にとって余りに突発的なことであり、また余りに大胆なことでもあり …
読書目安時間:約10分
私は近く今年の四月から、女子教育に対して、友人と共にみずから一つの実行に当ろうと決心しました。これは申すまでもなく、私にとって余りに突発的なことであり、また余りに大胆なことでもあり …
母性偏重を排す(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
トルストイ翁に従えば、女は自身の上に必然に置かれている使命、即ち労働に適した子供を出来るだけ沢山生んでこれを哺育しかつ教育することの天賦の使命に自己を捧げねばならぬと教えられ、また …
読書目安時間:約17分
トルストイ翁に従えば、女は自身の上に必然に置かれている使命、即ち労働に適した子供を出来るだけ沢山生んでこれを哺育しかつ教育することの天賦の使命に自己を捧げねばならぬと教えられ、また …
舞姫(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
西の京三本樹のお愛様に このひと巻をまゐらせ候 あき うたたねの夢路に人の逢ひにこし蓮歩のあとを思ふ雨かな 美くしき女ぬすまむ変化もの来よとばかりにさうぞきにけり 家七室霧にみなか …
読書目安時間:約17分
西の京三本樹のお愛様に このひと巻をまゐらせ候 あき うたたねの夢路に人の逢ひにこし蓮歩のあとを思ふ雨かな 美くしき女ぬすまむ変化もの来よとばかりにさうぞきにけり 家七室霧にみなか …
満蒙遊記:附 満蒙の歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約3時間21分
日本人が先史時代から永久の未来に亘り、いろいろの意味で交渉の最も深い隣国の現状について、余りにも迂濶であるのは愧かしい事である。明治以来の応急の必要が、海外の知識と云へば、欧米の其 …
読書目安時間:約3時間21分
日本人が先史時代から永久の未来に亘り、いろいろの意味で交渉の最も深い隣国の現状について、余りにも迂濶であるのは愧かしい事である。明治以来の応急の必要が、海外の知識と云へば、欧米の其 …
みだれ髪(新字旧仮名)
読書目安時間:約23分
この書の体裁は悉く藤島武二先生の意匠に成れり表紙画みだれ髪の輪郭は恋愛の矢のハートを射たるにて矢の根より吹き出でたる花は詩を意味せるなり 夜の帳にささめき尽きし星の今を下界の人の鬢 …
読書目安時間:約23分
この書の体裁は悉く藤島武二先生の意匠に成れり表紙画みだれ髪の輪郭は恋愛の矢のハートを射たるにて矢の根より吹き出でたる花は詩を意味せるなり 夜の帳にささめき尽きし星の今を下界の人の鬢 …
六日間:(日記)(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
三月七日 机の前に坐ると藍色の机掛の上に一面に髪の毛の這つて居るのが日影でまざまざと見えた。私はあさましくなつて、何時の間にか私の髪がこんなに抜け零れて、さうして払つてもどうしても …
読書目安時間:約10分
三月七日 机の前に坐ると藍色の机掛の上に一面に髪の毛の這つて居るのが日影でまざまざと見えた。私はあさましくなつて、何時の間にか私の髪がこんなに抜け零れて、さうして払つてもどうしても …
夢の影響(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
小野小町に夢の歌の多いのを見て、小町は特に夢を愛したのだと云ふ説があります。私は特に夢を尊重もしませんが、夢見が好いと其日一日の氣分が何となく嬉しく愉快で、心に張りがあり、仕事をす …
読書目安時間:約4分
小野小町に夢の歌の多いのを見て、小町は特に夢を愛したのだと云ふ説があります。私は特に夢を尊重もしませんが、夢見が好いと其日一日の氣分が何となく嬉しく愉快で、心に張りがあり、仕事をす …
離婚について(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
陸軍軍医正の藤井氏と東京音楽学校助教授の環女史との離婚が、新聞紙の上で趣味の相違から生じた離婚だとか、陸軍と芸術との衝突だとか大袈裟に報道せられ、これについて諸先生方の御批評なども …
読書目安時間:約15分
陸軍軍医正の藤井氏と東京音楽学校助教授の環女史との離婚が、新聞紙の上で趣味の相違から生じた離婚だとか、陸軍と芸術との衝突だとか大袈裟に報道せられ、これについて諸先生方の御批評なども …
私の生ひ立ち(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間19分
私の生ひ立ち一 学校へ行く私が、黒繻子(くろじゆす)の襟(えり)の懸つた、茶色地に白の筋違(すぢか)ひ雨(あめ)と紅(べに)の蔦の模様のある絹縮(きぬちゞみ)の袢纏(はんてん)を着 …
読書目安時間:約1時間19分
私の生ひ立ち一 学校へ行く私が、黒繻子(くろじゆす)の襟(えり)の懸つた、茶色地に白の筋違(すぢか)ひ雨(あめ)と紅(べに)の蔦の模様のある絹縮(きぬちゞみ)の袢纏(はんてん)を着 …
私の貞操観(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
従来は貞操という事を感情ばかりで取扱っていた。「女子がなぜに貞操を尊重するか。」こういう疑問を起さねばならぬほど、昔の女は自己の全生活について細緻な反省を下すことを欠いていた。女と …
読書目安時間:約22分
従来は貞操という事を感情ばかりで取扱っていた。「女子がなぜに貞操を尊重するか。」こういう疑問を起さねばならぬほど、昔の女は自己の全生活について細緻な反省を下すことを欠いていた。女と …
翻訳者としての作品一覧
源氏物語:01 桐壺(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
紫のかがやく花と日の光思ひあはざる ことわりもなし(晶子) どの天皇様の御代であったか、女御とか更衣とかいわれる後宮がおおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが深い御愛寵を得ている …
読書目安時間:約32分
紫のかがやく花と日の光思ひあはざる ことわりもなし(晶子) どの天皇様の御代であったか、女御とか更衣とかいわれる後宮がおおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが深い御愛寵を得ている …
源氏物語:02 帚木(新字新仮名)
読書目安時間:約54分
中川の皐月の水に人似たりかたればむ せびよればわななく(晶子) 光源氏、すばらしい名で、青春を盛り上げてできたような人が思われる。自然奔放な好色生活が想像される。しかし実際はそれよ …
読書目安時間:約54分
中川の皐月の水に人似たりかたればむ せびよればわななく(晶子) 光源氏、すばらしい名で、青春を盛り上げてできたような人が思われる。自然奔放な好色生活が想像される。しかし実際はそれよ …
源氏物語:03 空蝉(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
うつせみのわがうすごろも風流男に馴 れてぬるやとあぢきなきころ(晶子) 眠れない源氏は、 「私はこんなにまで人から冷淡にされたことはこれまでないのだから、今晩はじめて人生は悲しいも …
読書目安時間:約13分
うつせみのわがうすごろも風流男に馴 れてぬるやとあぢきなきころ(晶子) 眠れない源氏は、 「私はこんなにまで人から冷淡にされたことはこれまでないのだから、今晩はじめて人生は悲しいも …
源氏物語:04 夕顔(新字新仮名)
読書目安時間:約59分
うき夜半の悪夢と共になつかしきゆめ もあとなく消えにけるかな(晶子) 源氏が六条に恋人を持っていたころ、御所からそこへ通う途中で、だいぶ重い病気をし尼になった大弐の乳母を訪ねようと …
読書目安時間:約59分
うき夜半の悪夢と共になつかしきゆめ もあとなく消えにけるかな(晶子) 源氏が六条に恋人を持っていたころ、御所からそこへ通う途中で、だいぶ重い病気をし尼になった大弐の乳母を訪ねようと …
源氏物語:05 若紫(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間1分
春の野のうらわか草に親しみていとお ほどかに恋もなりぬる(晶子) 源氏は瘧病にかかっていた。いろいろとまじないもし、僧の加持も受けていたが効験がなくて、この病の特徴で発作的にたびた …
読書目安時間:約1時間1分
春の野のうらわか草に親しみていとお ほどかに恋もなりぬる(晶子) 源氏は瘧病にかかっていた。いろいろとまじないもし、僧の加持も受けていたが効験がなくて、この病の特徴で発作的にたびた …
源氏物語:06 末摘花(新字新仮名)
読書目安時間:約39分
皮ごろも上に着たれば我妹子は聞くこ とのみな身に沁まぬらし(晶子) 源氏の君の夕顔を失った悲しみは、月がたち年が変わっても忘れることができなかった。左大臣家にいる夫人も、六条の貴女 …
読書目安時間:約39分
皮ごろも上に着たれば我妹子は聞くこ とのみな身に沁まぬらし(晶子) 源氏の君の夕顔を失った悲しみは、月がたち年が変わっても忘れることができなかった。左大臣家にいる夫人も、六条の貴女 …
源氏物語:07 紅葉賀(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心 は下に鳴れども(晶子) 朱雀院の行幸は十月の十幾日ということになっていた。その日の歌舞の演奏はことに選りすぐって行なわれるという評判であったから …
読書目安時間:約33分
青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心 は下に鳴れども(晶子) 朱雀院の行幸は十月の十幾日ということになっていた。その日の歌舞の演奏はことに選りすぐって行なわれるという評判であったから …
源氏物語:08 花宴(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
春の夜のもやにそひたる月ならん手枕 かしぬ我が仮ぶしに(晶子) 二月の二十幾日に紫宸殿の桜の宴があった。玉座の左右に中宮と皇太子の御見物の室が設けられた。弘徽殿の女御は藤壺の宮が中 …
読書目安時間:約13分
春の夜のもやにそひたる月ならん手枕 かしぬ我が仮ぶしに(晶子) 二月の二十幾日に紫宸殿の桜の宴があった。玉座の左右に中宮と皇太子の御見物の室が設けられた。弘徽殿の女御は藤壺の宮が中 …
源氏物語:09 葵(新字新仮名)
読書目安時間:約57分
恨めしと人を目におくこともこそ身の おとろへにほかならぬかな(晶子) 天子が新しくお立ちになり、時代の空気が変わってから、源氏は何にも興味が持てなくなっていた。官位の昇進した窮屈さ …
読書目安時間:約57分
恨めしと人を目におくこともこそ身の おとろへにほかならぬかな(晶子) 天子が新しくお立ちになり、時代の空気が変わってから、源氏は何にも興味が持てなくなっていた。官位の昇進した窮屈さ …
源氏物語:10 榊(新字新仮名)
読書目安時間:約59分
五十鈴川神のさかひへのがれきぬおも ひあがりしひとの身のはて(晶子) 斎宮の伊勢へ下向される日が近づけば近づくほど御息所は心細くなるのであった。左大臣家の源氏の夫人がなくなったあと …
読書目安時間:約59分
五十鈴川神のさかひへのがれきぬおも ひあがりしひとの身のはて(晶子) 斎宮の伊勢へ下向される日が近づけば近づくほど御息所は心細くなるのであった。左大臣家の源氏の夫人がなくなったあと …
源氏物語:11 花散里(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
橘も恋のうれひも散りかへば香をなつ かしみほととぎす鳴く(晶子) みずから求めてしている恋愛の苦は昔もこのごろも変わらない源氏であるが、ほかから受ける忍びがたい圧迫が近ごろになって …
読書目安時間:約5分
橘も恋のうれひも散りかへば香をなつ かしみほととぎす鳴く(晶子) みずから求めてしている恋愛の苦は昔もこのごろも変わらない源氏であるが、ほかから受ける忍びがたい圧迫が近ごろになって …
源氏物語:12 須磨(新字新仮名)
読書目安時間:約51分
人恋ふる涙をわすれ大海へ引かれ行く べき身かと思ひぬ(晶子) 当帝の外戚の大臣一派が極端な圧迫をして源氏に不愉快な目を見せることが多くなって行く。つとめて冷静にはしていても、このま …
読書目安時間:約51分
人恋ふる涙をわすれ大海へ引かれ行く べき身かと思ひぬ(晶子) 当帝の外戚の大臣一派が極端な圧迫をして源氏に不愉快な目を見せることが多くなって行く。つとめて冷静にはしていても、このま …
源氏物語:13 明石(新字新仮名)
読書目安時間:約48分
わりなくもわかれがたしとしら玉の涙 をながす琴のいとかな(晶子) まだ雨風はやまないし、雷鳴が始終することも同じで幾日かたった。今は極度に侘しい須磨の人たちであった。今日までのこと …
読書目安時間:約48分
わりなくもわかれがたしとしら玉の涙 をながす琴のいとかな(晶子) まだ雨風はやまないし、雷鳴が始終することも同じで幾日かたった。今は極度に侘しい須磨の人たちであった。今日までのこと …
源氏物語:14 澪標(新字新仮名)
読書目安時間:約39分
みをつくし逢はんと祈るみてぐらもわ れのみ神にたてまつるらん(晶子) 須磨の夜の源氏の夢にまざまざとお姿をお現わしになって以来、父帝のことで痛心していた源氏は、帰京ができた今日にな …
読書目安時間:約39分
みをつくし逢はんと祈るみてぐらもわ れのみ神にたてまつるらん(晶子) 須磨の夜の源氏の夢にまざまざとお姿をお現わしになって以来、父帝のことで痛心していた源氏は、帰京ができた今日にな …
源氏物語:15 蓬生(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
道もなき蓬をわけて君ぞこし誰にもま さる身のここちする(晶子) 源氏が須磨、明石に漂泊っていたころは、京のほうにも悲しく思い暮らす人の多数にあった中でも、しかとした立場を持っている …
読書目安時間:約26分
道もなき蓬をわけて君ぞこし誰にもま さる身のここちする(晶子) 源氏が須磨、明石に漂泊っていたころは、京のほうにも悲しく思い暮らす人の多数にあった中でも、しかとした立場を持っている …
源氏物語:16 関屋(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
逢坂は関の清水も恋人のあつき涙もな がるるところ(晶子) 以前の伊予介は院がお崩れになった翌年常陸介になって任地へ下ったので、昔の帚木もつれて行った。源氏が須磨へ引きこもった噂も、 …
読書目安時間:約6分
逢坂は関の清水も恋人のあつき涙もな がるるところ(晶子) 以前の伊予介は院がお崩れになった翌年常陸介になって任地へ下ったので、昔の帚木もつれて行った。源氏が須磨へ引きこもった噂も、 …
源氏物語:17 絵合(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
あひがたきいつきのみことおもひてき さらに遥かになりゆくものを(晶子) 前斎宮の入内を女院は熱心に促しておいでになった。こまごまとした入用の品々もあろうがすべてを引き受けてする人物 …
読書目安時間:約20分
あひがたきいつきのみことおもひてき さらに遥かになりゆくものを(晶子) 前斎宮の入内を女院は熱心に促しておいでになった。こまごまとした入用の品々もあろうがすべてを引き受けてする人物 …
源氏物語:18 松風(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
あぢきなき松の風かな泣けばなき小琴 をとればおなじ音を弾く(晶子) 東の院が美々しく落成したので、花散里といわれていた夫人を源氏は移らせた。西の対から渡殿へかけてをその居所に取って …
読書目安時間:約25分
あぢきなき松の風かな泣けばなき小琴 をとればおなじ音を弾く(晶子) 東の院が美々しく落成したので、花散里といわれていた夫人を源氏は移らせた。西の対から渡殿へかけてをその居所に取って …
源氏物語:19 薄雲(新字新仮名)
読書目安時間:約37分
さくら散る春の夕のうすぐもの涙とな りて落つる心地に(晶子) 冬になって来て川沿いの家にいる人は心細い思いをすることが多く、気の落ち着くこともない日の続くのを、源氏も見かねて、 「 …
読書目安時間:約37分
さくら散る春の夕のうすぐもの涙とな りて落つる心地に(晶子) 冬になって来て川沿いの家にいる人は心細い思いをすることが多く、気の落ち着くこともない日の続くのを、源氏も見かねて、 「 …
源氏物語:20 朝顔(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
みづからはあるかなきかのあさがほと 言ひなす人の忘られぬかな(晶子) 斎院は父宮の喪のために職をお辞しになった。源氏は例のように古い恋も忘れることのできぬ癖で、始終手紙を送っている …
読書目安時間:約25分
みづからはあるかなきかのあさがほと 言ひなす人の忘られぬかな(晶子) 斎院は父宮の喪のために職をお辞しになった。源氏は例のように古い恋も忘れることのできぬ癖で、始終手紙を送っている …
源氏物語:21 乙女(新字新仮名)
読書目安時間:約59分
雁なくやつらをはなれてただ一つ初恋 をする少年のごと(晶子) 春になって女院の御一周年が過ぎ、官人が喪服を脱いだのに続いて四月の更衣期になったから、はなやかな空気の満ち渡った初夏で …
読書目安時間:約59分
雁なくやつらをはなれてただ一つ初恋 をする少年のごと(晶子) 春になって女院の御一周年が過ぎ、官人が喪服を脱いだのに続いて四月の更衣期になったから、はなやかな空気の満ち渡った初夏で …
源氏物語:22 玉鬘(新字新仮名)
読書目安時間:約50分
火のくににおひいでたれば言ふことの 皆恥づかしく頬の染まるかな(晶子) 年月はどんなにたっても、源氏は死んだ夕顔のことを少しも忘れずにいた。個性の違った恋人を幾人も得た人生の行路に …
読書目安時間:約50分
火のくににおひいでたれば言ふことの 皆恥づかしく頬の染まるかな(晶子) 年月はどんなにたっても、源氏は死んだ夕顔のことを少しも忘れずにいた。個性の違った恋人を幾人も得た人生の行路に …
源氏物語:23 初音(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
若やかにうぐひすぞ啼く初春の衣くば られし一人のやうに(晶子) 新春第一日の空の完全にうららかな光のもとには、どんな家の庭にも雪間の草が緑のけはいを示すし、春らしい霞の中では、芽を …
読書目安時間:約16分
若やかにうぐひすぞ啼く初春の衣くば られし一人のやうに(晶子) 新春第一日の空の完全にうららかな光のもとには、どんな家の庭にも雪間の草が緑のけはいを示すし、春らしい霞の中では、芽を …
源氏物語:24 胡蝶(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
盛りなる御代の后に金の蝶しろがねの 鳥花たてまつる(晶子) 三月の二十日過ぎ、六条院の春の御殿の庭は平生にもまして多くの花が咲き、多くさえずる小鳥が来て、春はここにばかり好意を見せ …
読書目安時間:約24分
盛りなる御代の后に金の蝶しろがねの 鳥花たてまつる(晶子) 三月の二十日過ぎ、六条院の春の御殿の庭は平生にもまして多くの花が咲き、多くさえずる小鳥が来て、春はここにばかり好意を見せ …
源氏物語:25 蛍(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
身にしみて物を思へと夏の夜の蛍ほの かに青引きてとぶ(晶子) 源氏の現在の地位はきわめて重いがもう廷臣としての繁忙もここまでは押し寄せて来ず、のどかな余裕のある生活ができるのであっ …
読書目安時間:約21分
身にしみて物を思へと夏の夜の蛍ほの かに青引きてとぶ(晶子) 源氏の現在の地位はきわめて重いがもう廷臣としての繁忙もここまでは押し寄せて来ず、のどかな余裕のある生活ができるのであっ …
源氏物語:26 常夏(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
露置きてくれなゐいとど深けれどおも ひ悩めるなでしこの花(晶子) 炎暑の日に源氏は東の釣殿へ出て涼んでいた。子息の中将が侍しているほかに、親しい殿上役人も数人席にいた。桂川の鮎、加 …
読書目安時間:約25分
露置きてくれなゐいとど深けれどおも ひ悩めるなでしこの花(晶子) 炎暑の日に源氏は東の釣殿へ出て涼んでいた。子息の中将が侍しているほかに、親しい殿上役人も数人席にいた。桂川の鮎、加 …
源氏物語:27 篝火(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
大きなるまゆみのもとに美しくかがり 火もえて涼風ぞ吹く(晶子) このごろ、世間では内大臣の新令嬢という言葉を何かのことにつけては言うのを源氏の大臣は聞いて、 「ともかくも深窓に置か …
読書目安時間:約4分
大きなるまゆみのもとに美しくかがり 火もえて涼風ぞ吹く(晶子) このごろ、世間では内大臣の新令嬢という言葉を何かのことにつけては言うのを源氏の大臣は聞いて、 「ともかくも深窓に置か …
源氏物語:28 野分(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
けざやかにめでたき人ぞ在ましたる野 分が開くる絵巻のおくに(晶子) 中宮のお住居の庭へ植えられた秋草は、今年はことさら種類が多くて、その中へ風流な黒木、赤木のませ垣が所々に結われ、 …
読書目安時間:約21分
けざやかにめでたき人ぞ在ましたる野 分が開くる絵巻のおくに(晶子) 中宮のお住居の庭へ植えられた秋草は、今年はことさら種類が多くて、その中へ風流な黒木、赤木のませ垣が所々に結われ、 …
源氏物語:29 行幸(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
雪ちるや日よりかしこくめでたさも上 なき君の玉のおん輿(晶子) 源氏は玉鬘に対してあらゆる好意を尽くしているのであるが、人知れぬ恋を持つ点で、南の女王の想像したとおりの不幸な結末を …
読書目安時間:約30分
雪ちるや日よりかしこくめでたさも上 なき君の玉のおん輿(晶子) 源氏は玉鬘に対してあらゆる好意を尽くしているのであるが、人知れぬ恋を持つ点で、南の女王の想像したとおりの不幸な結末を …
源氏物語:30 藤袴(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
むらさきのふぢばかまをば見よといふ 二人泣きたきここち覚えて(晶子) 尚侍になって御所へお勤めするようにと、源氏はもとより実父の内大臣のほうからも勧めてくることで玉鬘は煩悶をしてい …
読書目安時間:約17分
むらさきのふぢばかまをば見よといふ 二人泣きたきここち覚えて(晶子) 尚侍になって御所へお勤めするようにと、源氏はもとより実父の内大臣のほうからも勧めてくることで玉鬘は煩悶をしてい …
源氏物語:31 真木柱(新字新仮名)
読書目安時間:約45分
こひしさも悲しきことも知らぬなり真 木の柱にならまほしけれ(晶子) 「帝のお耳にはいって、御不快に思召すようなことがあってもおそれおおい。当分世間へ知らせないようにしたい」 と源氏 …
読書目安時間:約45分
こひしさも悲しきことも知らぬなり真 木の柱にならまほしけれ(晶子) 「帝のお耳にはいって、御不快に思召すようなことがあってもおそれおおい。当分世間へ知らせないようにしたい」 と源氏 …
源氏物語:32 梅が枝(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
天地に春新しく来たりけり光源氏の みむすめのため(晶子) 源氏が十一歳の姫君の裳着の式をあげるために設けていたことは並み並みの仕度でなかった。東宮も同じ二月に御元服があることになっ …
読書目安時間:約22分
天地に春新しく来たりけり光源氏の みむすめのため(晶子) 源氏が十一歳の姫君の裳着の式をあげるために設けていたことは並み並みの仕度でなかった。東宮も同じ二月に御元服があることになっ …
源氏物語:33 藤のうら葉(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
ふぢばなのもとの根ざしは知らねども 枝をかはせる白と紫(晶子) 六条院の姫君が太子の宮へはいる仕度でだれも繁忙をきわめている時にも、兄の宰相中将は物思いにとらわれていて、ぼんやりと …
読書目安時間:約29分
ふぢばなのもとの根ざしは知らねども 枝をかはせる白と紫(晶子) 六条院の姫君が太子の宮へはいる仕度でだれも繁忙をきわめている時にも、兄の宰相中将は物思いにとらわれていて、ぼんやりと …
源氏物語:34 若菜(上)(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間59分
たちまちに知らぬ花さくおぼつかな天 よりこしをうたがはねども(晶子) あの六条院の行幸のあった直後から朱雀院の帝は御病気になっておいでになった。平生から御病身な方ではあったが、今度 …
読書目安時間:約1時間59分
たちまちに知らぬ花さくおぼつかな天 よりこしをうたがはねども(晶子) あの六条院の行幸のあった直後から朱雀院の帝は御病気になっておいでになった。平生から御病身な方ではあったが、今度 …
源氏物語:35 若菜(下)(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間56分
二ごころたれ先づもちてさびしくも悲 しき世をば作り初めけん(晶子) 小侍従が書いて来たことは道理に違いないがまた露骨なひどい言葉だとも衛門督には思われた。しかももう浅薄な女房などの …
読書目安時間:約1時間56分
二ごころたれ先づもちてさびしくも悲 しき世をば作り初めけん(晶子) 小侍従が書いて来たことは道理に違いないがまた露骨なひどい言葉だとも衛門督には思われた。しかももう浅薄な女房などの …
源氏物語:36 柏木(新字新仮名)
読書目安時間:約49分
死ぬる日を罪むくいなど言ふきはの涙 に似ざる火のしづくおつ(晶子) 右衛門督の病気は快方に向くことなしに春が来た。父の大臣と母夫人の悲しむのを見ては、死を願うことは重罪にあたること …
読書目安時間:約49分
死ぬる日を罪むくいなど言ふきはの涙 に似ざる火のしづくおつ(晶子) 右衛門督の病気は快方に向くことなしに春が来た。父の大臣と母夫人の悲しむのを見ては、死を願うことは重罪にあたること …
源氏物語:37 横笛(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
亡き人の手なれの笛に寄りもこし夢の ゆくへの寒き夜半かな(晶子) 権大納言の死を惜しむ者が多く、月日がたっても依然として恋しく思う人ばかりであった。六条院のお心もまたそうであった。 …
読書目安時間:約23分
亡き人の手なれの笛に寄りもこし夢の ゆくへの寒き夜半かな(晶子) 権大納言の死を惜しむ者が多く、月日がたっても依然として恋しく思う人ばかりであった。六条院のお心もまたそうであった。 …
源氏物語:38 鈴虫(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
すずむしは釈迦牟尼仏のおん弟子の君 のためにと秋を浄むる(晶子) 夏の蓮の花の盛りに、でき上がった入道の姫宮の御持仏の供養が催されることになった。御念誦堂のいっさいの装飾と備え付け …
読書目安時間:約16分
すずむしは釈迦牟尼仏のおん弟子の君 のためにと秋を浄むる(晶子) 夏の蓮の花の盛りに、でき上がった入道の姫宮の御持仏の供養が催されることになった。御念誦堂のいっさいの装飾と備え付け …
源氏物語:39 夕霧一(新字新仮名)
読書目安時間:約51分
つま戸より清き男の出づるころ後夜の 律師のまう上るころ(晶子) 一人の夫人の忠実な良人という評判があって、品行方正を標榜していた源左大将であったが、今は女二の宮に心を惹かれる人にな …
読書目安時間:約51分
つま戸より清き男の出づるころ後夜の 律師のまう上るころ(晶子) 一人の夫人の忠実な良人という評判があって、品行方正を標榜していた源左大将であったが、今は女二の宮に心を惹かれる人にな …
源氏物語:40 夕霧二(新字新仮名)
読書目安時間:約41分
帰りこし都の家に音無しの滝はおちね ど涙流るる(晶子) 恋しさのおさえられない大将はまたも小野の山荘に宮をお訪ねしようとした。四十九日の忌も過ごしてから静かに事の運ぶようにするのが …
読書目安時間:約41分
帰りこし都の家に音無しの滝はおちね ど涙流るる(晶子) 恋しさのおさえられない大将はまたも小野の山荘に宮をお訪ねしようとした。四十九日の忌も過ごしてから静かに事の運ぶようにするのが …
源氏物語:41 御法(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
なほ春のましろき花と見ゆれどもとも に死ぬまで悲しかりけり(晶子) 紫夫人はあの大病以後病身になって、どこということもなく始終煩っていた。たいした悪い容体になるのではなかったが、す …
読書目安時間:約22分
なほ春のましろき花と見ゆれどもとも に死ぬまで悲しかりけり(晶子) 紫夫人はあの大病以後病身になって、どこということもなく始終煩っていた。たいした悪い容体になるのではなかったが、す …
源氏物語:42 まぼろし(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
大空の日の光さへつくる世のやうやく 近きここちこそすれ(晶子) 春の光を御覧になっても、六条院の暗いお気持ちが改まるものでもないのに、表へは新年の賀を申し入れる人たちが続いて参入す …
読書目安時間:約25分
大空の日の光さへつくる世のやうやく 近きここちこそすれ(晶子) 春の光を御覧になっても、六条院の暗いお気持ちが改まるものでもないのに、表へは新年の賀を申し入れる人たちが続いて参入す …
源氏物語:44 匂宮(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
春の日の光の名残花ぞのに匂ひ薫ると 思ほゆるかな(晶子) 光君がおかくれになったあとに、そのすぐれた美貌を継ぐと見える人は多くの遺族の中にも求めることが困難であった。院の陛下はおそ …
読書目安時間:約15分
春の日の光の名残花ぞのに匂ひ薫ると 思ほゆるかな(晶子) 光君がおかくれになったあとに、そのすぐれた美貌を継ぐと見える人は多くの遺族の中にも求めることが困難であった。院の陛下はおそ …
源氏物語:45 紅梅(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
うぐひすも問はば問へかし紅梅の花の あるじはのどやかに待つ(晶子) 今按察使大納言といわれている人は、故人になった太政大臣の次男であった。亡き柏木の衛門督のすぐの弟である。子供のこ …
読書目安時間:約16分
うぐひすも問はば問へかし紅梅の花の あるじはのどやかに待つ(晶子) 今按察使大納言といわれている人は、故人になった太政大臣の次男であった。亡き柏木の衛門督のすぐの弟である。子供のこ …
源氏物語:46 竹河(新字新仮名)
読書目安時間:約50分
姫たちは常少女にて春ごとに花あらそひ をくり返せかし(晶子) ここに書くのは源氏の君一族とも離れた、最近に亡くなった関白太政大臣の家の話である。つまらぬ女房の生き残ったのが語って聞 …
読書目安時間:約50分
姫たちは常少女にて春ごとに花あらそひ をくり返せかし(晶子) ここに書くのは源氏の君一族とも離れた、最近に亡くなった関白太政大臣の家の話である。つまらぬ女房の生き残ったのが語って聞 …
源氏物語:47 橋姫(新字新仮名)
読書目安時間:約45分
しめやかにこころの濡れぬ川霧の立ち まふ家はあはれなるかな(晶子) そのころ世間から存在を無視されておいでになる古い親王がおいでになった。母方なども高い貴族で、帝の御継嗣におなりに …
読書目安時間:約45分
しめやかにこころの濡れぬ川霧の立ち まふ家はあはれなるかな(晶子) そのころ世間から存在を無視されておいでになる古い親王がおいでになった。母方なども高い貴族で、帝の御継嗣におなりに …
源氏物語:48 椎が本(新字新仮名)
読書目安時間:約47分
朝の月涙のごとくましろけれ御寺の鐘 の水渡る時(晶子) 二月の二十日過ぎに兵部卿の宮は大和の初瀬寺へ参詣をあそばされることになった。古い御宿願には相違ないが、中に宇治という土地があ …
読書目安時間:約47分
朝の月涙のごとくましろけれ御寺の鐘 の水渡る時(晶子) 二月の二十日過ぎに兵部卿の宮は大和の初瀬寺へ参詣をあそばされることになった。古い御宿願には相違ないが、中に宇治という土地があ …
源氏物語:49 総角(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間56分
心をば火の思ひもて焼かましと願ひき 身をば煙にぞする(晶子) 長い年月馴れた河風の音も、今年の秋は耳騒がしく、悲しみを加重するものとばかり宇治の姫君たちは聞きながら、父宮の御一周忌 …
読書目安時間:約1時間56分
心をば火の思ひもて焼かましと願ひき 身をば煙にぞする(晶子) 長い年月馴れた河風の音も、今年の秋は耳騒がしく、悲しみを加重するものとばかり宇治の姫君たちは聞きながら、父宮の御一周忌 …
源氏物語:50 早蕨(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
早蕨の歌を法師す君に似ずよき言葉を ば知らぬめでたさ(晶子) 「日の光林藪しわかねばいそのかみ古りにし里も花は咲きけり」と言われる春であったから、山荘のほとりのにおいやかになった光 …
読書目安時間:約22分
早蕨の歌を法師す君に似ずよき言葉を ば知らぬめでたさ(晶子) 「日の光林藪しわかねばいそのかみ古りにし里も花は咲きけり」と言われる春であったから、山荘のほとりのにおいやかになった光 …
源氏物語:51 宿り木(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間53分
あふけなく大御むすめをいにしへの人 に似よとも思ひけるかな(晶子) そのころ後宮で藤壺と言われていたのは亡き左大臣の女の女御であった。帝がまだ東宮でいらせられた時に、最も初めに上が …
読書目安時間:約1時間53分
あふけなく大御むすめをいにしへの人 に似よとも思ひけるかな(晶子) そのころ後宮で藤壺と言われていたのは亡き左大臣の女の女御であった。帝がまだ東宮でいらせられた時に、最も初めに上が …
源氏物語:52 東屋(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間22分
ありし世の霧来て袖を濡らしけりわり なけれども宇治近づけば(晶子) 源右大将は常陸守の養女に興味は覚えながらも、しいて筑波の葉山繁山を分け入るのは軽々しいことと人の批議するのが思わ …
読書目安時間:約1時間22分
ありし世の霧来て袖を濡らしけりわり なけれども宇治近づけば(晶子) 源右大将は常陸守の養女に興味は覚えながらも、しいて筑波の葉山繁山を分け入るのは軽々しいことと人の批議するのが思わ …
源氏物語:53 浮舟(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間33分
何よりも危ふきものとかねて見し小舟の 中にみづからを置く(晶子) 兵部卿の宮は美しい人をほのかに御覧になったあの秋の夕べのことをどうしてもお忘れになることができなかった。たいした貴 …
読書目安時間:約1時間33分
何よりも危ふきものとかねて見し小舟の 中にみづからを置く(晶子) 兵部卿の宮は美しい人をほのかに御覧になったあの秋の夕べのことをどうしてもお忘れになることができなかった。たいした貴 …
源氏物語:54 蜻蛉(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間13分
ひと時は目に見しものをかげろふのあ るかなきかを知らぬはかなき(晶子) 宇治の山荘では浮舟の姫君の姿のなくなったことに驚き、いろいろと捜し求めるのに努めたが、何のかいもなかった。小 …
読書目安時間:約1時間13分
ひと時は目に見しものをかげろふのあ るかなきかを知らぬはかなき(晶子) 宇治の山荘では浮舟の姫君の姿のなくなったことに驚き、いろいろと捜し求めるのに努めたが、何のかいもなかった。小 …
源氏物語:55 手習(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間25分
ほど近き法の御山をたのみたる女郎花 かと見ゆるなりけれ(晶子) そのころ比叡の横川に某僧都といって人格の高い僧があった。八十を越えた母と五十くらいの妹を持っていた。この親子の尼君が …
読書目安時間:約1時間25分
ほど近き法の御山をたのみたる女郎花 かと見ゆるなりけれ(晶子) そのころ比叡の横川に某僧都といって人格の高い僧があった。八十を越えた母と五十くらいの妹を持っていた。この親子の尼君が …
源氏物語:56 夢の浮橋(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
明けくれに昔こひしきこころもて生く る世もはたゆめのうきはし(晶子) 薫は山の延暦寺に着いて、常のとおりに経巻と仏像の供養を営んだ。横川の寺へは翌日行ったのであるが、僧都は大将の親 …
読書目安時間:約21分
明けくれに昔こひしきこころもて生く る世もはたゆめのうきはし(晶子) 薫は山の延暦寺に着いて、常のとおりに経巻と仏像の供養を営んだ。横川の寺へは翌日行ったのであるが、僧都は大将の親 …
“与謝野晶子”について
与謝野 晶子(よさの あきこ、正字:與謝野 晶子、1878年〈明治11年〉12月7日 - 1942年〈昭和17年〉5月29日)は、日本の歌人、作家、思想家。本名は与謝野 志やう(よさの しょう)。旧姓は鳳(ほう)。ペンネームの「晶子」の「晶」は、本名から取ったもの。夫は、同じく歌人の与謝野鉄幹。
雑誌『明星』に短歌を発表しロマン主義文学の中心的人物となった。
(出典:Wikipedia)
雑誌『明星』に短歌を発表しロマン主義文学の中心的人物となった。
(出典:Wikipedia)
“与謝野晶子”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)