戸の外までとのそとまで
自室から出ましてね、廊下の向うの隅に腰を掛けて車丁に、 『わたしは巴里へ行くのよ。』 と云ひました。 『ええ、奥様。』 と笑ひながら頤の先に髯のある車丁は笑つてましたよ。一昨日までの露西亜人、今朝迄の独逸人とは比べものにならないやうな優しい …