“薫”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
かおり22.3%
かお20.4%
くん13.0%
かを9.0%
かおる7.1%
かをり5.9%
くゆ4.3%
3.4%
かんば2.2%
くゆり1.5%
(他:35)10.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
を隔てた座敷に、あでやかな影が気勢けはいに映って、香水のかおりは、つとはしりもとにも薫った。が、寂寞ひっそりしていた。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かざしの白き、手絡てがらなる、帯の錦、そであや薔薇しょうび伽羅きゃらかおりくんずるなかに
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……底に温味あたたかみを持ったヒヤリとするのが、酒のく胸へ、今にもいいかおりさっまつわるかと思うと、そうでないので。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
続いてしらん、ぎしぎし、たちあおい、かわほね、のいばら、つきみそう、てっせん、かなめ、せきちくなどが咲き、裏の畑の桐の花は高くかおった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
輿に付いて来た家来たちも口をそろえていうのである。まかせるしかない。兼好は背をかがめて輿へ入った。ぷうんと蘭麝らんじゃかおりがする。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さし上げている白いひじに、あかりの影と黒髪がさやさやとうごいて、二月きさらぎの晩のゆるい風には、どこか梅のかおりがしていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かざしの白き、手絡てがらなる、帯の錦、そであや薔薇しょうび伽羅きゃらかおりくんずるなかに
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
多くの同朋衆は、手分けして、各詰所の小部屋で、一筅いっせんをそそぎ、茶をけんじ、香をくんじて、ねぎらいをたすけていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄寒い二月の夜、月が町家ちょうかの屋根の上から出かかって、四方あたり金粉きんぷんいたような光がくんじます。
家内かないともだちがあるのに——けないとぷんとしないが、香水かうすゐかをりゆかしきびんならぬ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さるほどに桃李たうりなつみどりにして竹柏ちくはくふゆあをく、きりかんばしくかぜかをる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東作は煙草盆を引寄せて一服吸付け、長閑のどかな煙を長々と吐きました。プーンと高貴な、國府こくぶかをり——。
かおるからの手紙だけはあちらからもまじめに親切なことを多く書かれてくるのであったから、こちらからも冷淡なふうは見せず常に返事が出された。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
などと言うころ、客は今下車するのであるらしく、前駆の人払いの声がやかましく立てられていたが、急にはかおるの姿がここへ現われては来なかった。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
だいたいのことだけは兵部卿の宮が手落ちなくお計りになったのであるが、こまごまとした入り用の物、費用などは皆かおるが贈ったのであった。
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
山百合のマルタゴン、なん百となく頭をげて、強いかをりを放つ怪物くわいぶつ淺藍色うすあゐいろ多頭たとう大蛇おろち
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
珍奇な香水を盛つてある、細工の手の籠んだ小瓶は、皆自然に栓が抜けて、希臘グレシア美人の霊魂を弔ふ為めに、世に稀なかをりを立てた。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
こまやかに生茂おひしげれる庭の木々の軽々ほのかなる燥気いきれと、近きあたりに有りと有る花のかをりとを打雑うちまぜたる夏の初の大気は
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一同宗門仏に加持致し、或は異香をくゆらし、或は神水を振りそそぎなど致し候所、篠の乱心はおのづから静まり、里も程無く蘇生致し候由
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今日しも盆の十三日なれば精霊棚しょうりょうだな支度したくなどを致してしまい、縁側へちょっと敷物を敷き、蚊遣かやりくゆらして、新三郎は白地の浴衣ゆかたを着
線香のにおいは藤尾の部屋から、思い出したように吹いてくる。燃え切った灰は、棒のままで、はたりはたりと香炉の中に倒れつつある。銀屏ぎんびょうは知らぬくゆる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうして室内しつないなにかうゆらすやうにとニキタにめいじて立去たちさつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうして室内しつないなにこうゆらすようにとニキタにめいじて立去たちさった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
月のたはむれゆるころ、 氷は冴えてをちこちに、 さゞめきしげくなりにけり。
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
陳宮は、さあどうでしょう? と首をかしげて、すぐ賛成しなかった。呂布の人気は、各地において、あまりかんばしくないことを知ったからである。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういわれていい筈なのに、かえって、半兵衛の名は、美濃一国に、人々から尊敬のまとになっているのみか、敵国の尾張までかんばしく聞えている。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狂喜の人々の上に、かんばしい酒の香がながれ、踊り出す者を見ると、笛は笛を吹き、太鼓は太鼓をたたき——その者達もまた吹きながら叩きながら踊り出した。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
既にしきゐを出でしとき、媼走り入りて、くゆりに半ば黒みたる聖母の像を、扉より剥ぎ取りて贈りぬ。
かのしき越歴機えれきの夢は天鵝絨びろうどくゆりにまじり、
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もの甘きはな桅子くちなしくゆりしてふりもそそげば、
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たゞ母の衣には、何と云うものか特別に甘い匂のする香がきしめてあったので、じっと無言で抱きしめられている間が好い気持であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そう云ってそれを置いて行ったが、衣筥の中から出たものは、立派なてんかわごろもで、昔の人のきしめた香の匂が
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と源氏が言ったので、不思議がって探り寄って来る時に、き込めた源氏の衣服の香が顔に吹き寄ってきた。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
香料かうれうたへなるかほりり/\生温なまぬくい風につれてはなを打つ、兒童こども極樂ごくらくへでもつた氣になつて
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
結構けつこうかほりのするあツたかはななかへ、やはらかにつゝまれて、あしこし
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わし背中せなか呼吸いきかよつて、微妙びめうかほりはなびらにあたゝかつゝまれたら
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御髮みぐしはいとこちたうもあらぬほどにうちやられたる、枕よりおちたるきはの、つやつやと」した宇治の姫君が愛人のかをるの君たちにみとられながら
黒髪山 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
そこで綱宗の吉原へ通つた時、何屋の誰のもとへ通つたかと云ふと、それは京町の山本屋と云ふ家のかをると云ふ女であつたらしい。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
力づよい後見を得たいばかりに、光源氏に嫁いだが、柏木と密通懐妊してかをるを生んだことはすでに語つた。
たらの木の心から製したもそろの酒は、その傍の酒瓮みわの中で、かんばしい香気を立ててまだ波々とゆらいでいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
昏々こんこん、一夜は過ぎている。翌日の夕方だったに違いない。気づいてみると、は丁重に寝かされていた。肌着衣服、すべて真新らしい。口中には神気かんばしい薬の香がしきりにする。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がそれから三日目、江戸の初夏が次第にかんばしくなつた頃、お北は顏色變へて飛込んで來ました。
光広が、こう訊ね出した時は、その光広も他の人々も、なにやらにおわしいものが、この温かい部屋いっぱいに立籠めているのを感じ出していたのである。それもたしかに、この木の燃える匂いらしかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど、こうの水はいつのまにか鉛色に見え、そよ風は雨気をささやきはじめて、藤の花の紫は、まさに死なんとする楊貴妃ようきひの袂のように、にわかむせぶようなにおいを散らしておののいている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおウい。凍えてしまう。開けてくれい。——やいっ、開けないか。知らん振りをしていてもだめだぞ。弥太郎の鼻だ。前を通ったらぷーんとにおって来たではないか。この雪道、どうして素通りできる。……意地悪をするなよ。こらっ。こらッ」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○鰻の骨はスープにしてタレを製するもよし。焼きて鶏に与うるも功あり。夏日はこれをいぶして蚊を追うにもよし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
床は呪水に濡らされ、身は護摩ごまの煙にいぶさるゝは、これがために非ずや。
その一本の線香の細さ、立ち昇る煙のたよたよしさ、——少女は勿論もちろん目を閉ぢたなり、線香のかほりをいでゐるのである。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まろらにかほそよかぜの
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あをによし寧楽ならみやこはなにほふがごとくいまさかりなり 〔巻三・三二八〕 小野老
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
小野老朝臣おぬのおゆあそんが「あをによし寧楽ならの都は咲く花のにほふがごとく今盛なり」と詠じたように、天平のみ代はたしかに稀有けうの黄金時代であったろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「咲く花のにほふがごとく今盛なり」と歌われたみ代に、何故このみ仏は受難の相貌を呈しているのであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
駿河臺するがだい紅梅町こうばいちやうにそのほる明治めいぢ功臣こうしん
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そういう中で、わたしの好きなかおりぐさだけは残った。
秋草 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
畑の中央部につた可愛らしい小さな家も無論取こぼたれた。それを取囲んでゐたかぐはしいにほひを放つ多くの草花は無造作に引抜かれて、母家おもやの庭の隅つこへ移し植ゑられた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
唯後に残つたは、向うの岸の砂にさいた、したたかな柳の太杖で、これには枯れ枯れな幹のまはりに、不思議やうるはしいくれなゐの薔薇の花が、かぐはしく咲き誇つて居つたと申す。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
われ、その一部始終を心のうちに繰返しつつ、異国より移し植えたる、名も知らぬ草木くさきかぐわしき花を分けて、ほの暗き小路を歩み居しが、ふとまなこを挙げて、行手を見れば、われを去る事十歩ならざるに、伴天連ばてれんめきたる人影ひとかげあり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『あなたのところかほるさんや千枝子さんはどうしていらつしつて。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
懐中の名香みょうごう、そのとき殿中にこうじ渡る。献上の品は何々ぞ。七十五里を一目に見る遠目金とおめがね芥子粒けしつぶを卵のごとくに見る近目金、猛虎の皮五十枚、五町四方見当なき鉄砲、伽羅きゃらきん、八畳釣りの蚊帳かや、四十二粒の紫金しこんいたコンタツ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
今昔物語には、此の大臣もまた「形美麗に有様いみじきこと限りなし」「大臣のおん形ごゑ気はひたきものよりはじめて世に似ずいみじきを云々」と記しているので、われ/\は富貴と権勢と美貌と若さとに恵まれた驕慢きょうまんな貴公子を、直ちに眼前に描くことが出来る。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこはかとなく心に染むそらだきもの。
秋の七草に添へて (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)