“薫”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かおり21.4%
かお21.4%
くん12.3%
かを8.6%
かおる6.6%
かをり6.3%
くゆ4.3%
3.1%
かんば2.0%
かん1.7%
1.4%
くゆり1.4%
かほり1.1%
かをる1.1%
かほ1.1%
にお0.9%
にほ0.6%
いぶ0.6%
くゆら0.6%
0.3%
かおりぐさ0.3%
かぐ0.3%
かぐは0.3%
かぐわ0.3%
かほる0.3%
かをら0.3%
くす0.3%
こう0.3%
たき0.3%
たきもの0.3%
だき0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
すると、軽く膝をいて、蒲団ふとんをずらして、すらりと向うへ、……ひらきの前。——此方こなたに劣らずさかずきは重ねたのに、きぬかおりひやりとした。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしは、ちゃわんのなかをのぞくと、しろいらんのはながぱっとひらいて、わすれがたいかおりがしたのです。これをた、わたしむねはとどろきました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たつと共に手を携え肩をならべ優々と雲の上にゆきあとには白薔薇ホワイトローズにおいくんじて吉兵衛きちべえを初め一村の老幼芽出度めでたしとさゞめく声は天鼓を撃つごと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
て、ぷんかをりのたか抽斗ひきだしから、高尾たかを薄雲うすぐも一粒選ひとつぶえりところして、ずらりとならべてせると、くだん少年せうねん鷹揚おうやうたが
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
室内へ案内することをいろいろに言って望まれた家の人は、断わりようがなくて南の縁に付いた座敷へ席を作ってかおるは招じられた。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かぜつめたさわやかに、町一面まちいちめんきしいた眞蒼まつさを銀杏いてふが、そよ/\とのへりをやさしくそよがせつゝ、ぷんと、あきかをりてる。……
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
花鬘けまんをそのくびにかけ、果を供え、樟脳しょうのうに点火してくゆらせ廻り、香をき飯餅を奉る、祠官神前に供えた椰子を砕き一、二片を信徒に与う。
その後姿うしろでに、ゆらすとみえた、紫煙シガアのけむの一片。それが白い。ぽんと、げすてられたその殻。地におちて、なほいぶる余燼。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
そういわれていい筈なのに、かえって、半兵衛の名は、美濃一国に、人々から尊敬のまとになっているのみか、敵国の尾張までかんばしく聞えている。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうじゃ範宴、きょうは、わしにいてこないか」陽が暖かくて、梅花うめかんばしい日であった。庭さきでもひろうように、慈円はかろく彼にすすめる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たゞ母の衣には、何と云うものか特別に甘い匂のする香がきしめてあったので、じっと無言で抱きしめられている間が好い気持であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この時の苦しさは、後の別の時に増したり。後の別の時には、媼は泣きつれど、何事をもいはざりき。既にしきゐを出でしとき、媼走り入りて、くゆりに半ば黒みたる聖母の像を、扉より剥ぎ取りて贈りぬ。
おかみさん、どうぞ、その花をお呉んなさい、その一つで三つの花、薔薇と鈴振花すゞふりばな茉莉花まつりくわの三つの香がするかほりの高い意地惡さうな花をさ。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
そこで綱宗の吉原へ通つた時、何屋の誰のもとへ通つたかと云ふと、それは京町の山本屋と云ふ家のかをると云ふ女であつたらしい。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その一本の線香の細さ、立ち昇る煙のたよたよしさ、——少女は勿論もちろん目を閉ぢたなり、線香のかほりをいでゐるのである。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
通ったらぷーんとにおって来たではないか。この雪道、どうして素通りできる。……意地悪をするなよ。こらっ。こらッ
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「咲く花のにほふがごとく今盛なり」と歌われたみ代に、何故このみ仏は受難の相貌を呈しているのであろう。何故、口辺の美しい微笑は消え去ったのか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
床は呪水に濡らされ、身は護摩ごまの煙にいぶさるゝは、これがために非ずや。我知らじとやおもふ、汝はダンテを讀みたるを。
夕御飯が済んでも、お父さんは葉巻を一本くゆらし尽すまで、何彼なにかと子供の相手になって他愛がない。子供を煩さがりながらも、斯うやっている間に頭が休まるという。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
駿河臺するがだい紅梅町こうばいちやうにそのほる明治めいぢ功臣こうしん竹村子爵たけむらししやくとの尊稱そんしよう千軍万馬せんぐんまんばのうちにふくみし、つぼみのはなひらけるにや、それ次男じなんみどりとて才識さいしきらびそなはる美少年びせうねん
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そういう中で、わたしの好きなかおりぐさだけは残った。
秋草 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
畑の中央部につた可愛らしい小さな家も無論取こぼたれた。それを取囲んでゐたかぐはしいにほひを放つ多くの草花は無造作に引抜かれて、母家おもやの庭の隅つこへ移し植ゑられた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
唯後に残つたは、向うの岸の砂にさいた、したたかな柳の太杖で、これには枯れ枯れな幹のまはりに、不思議やうるはしいくれなゐの薔薇の花が、かぐはしく咲き誇つて居つたと申す。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その一部始終を心のうちに繰返しつつ、異国より移し植えたる、名も知らぬ草木くさきかぐわしき花を分けて、ほの暗き小路を歩み居しが、ふとまなこを挙げて、行手を見れば、われを去る事十歩ならざるに
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『あなたのところかほるさんや千枝子さんはどうしていらつしつて。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
垂しより已來このかた本尊ほんそん現化げんげの秋の月はてらさずと云所も無く眷屬けんぞく結縁けちえんの春のはなかをらずと云ふ袖も方便はうべんかどには罪有る者をばつがた抑々そも/\義長の品行おこなひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しき是へ御上りあれといふゆゑ長八は御構下おかまひくださるなと其所へあが四邊あたりを見るにかべの方は破れたる二まい屏風びやうぶを立回し此方にはくづれ懸りし一ツべつゝひすみ鑄懸いかけか眞黒にくすぶりたるなべ一ツを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
懐中の名香みょうごう、そのとき殿中にこうじ渡る。献上の品は何々ぞ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
田辺が家は御明みあかし灯心とうしんたぐひを商ひぬれば、二一八所せく人の入りたちける中に、都の人の忍びのまうでと見えて、いと二一九よろしき女一人、丫鬟わらは一人、二二〇たき物もとむとてここに立ちよる。
此の大臣もまた「形美麗に有様いみじきこと限りなし」「大臣のおん形ごゑ気はひたきものよりはじめて世に似ずいみじきを云々」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこはかとなく心に染むそらだきもの。たゆたひ勝ちにあはれを語る初更のさゝやき。深くも恥らひつゝ秘むる情熱——これらの秋は日本古典の物語に感ずる風趣である。秋それ自身は無口である。
秋の七草に添へて (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)