“こう”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:コウ
語句割合
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9.0%
7.1%
6.9%
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斯様0.9%
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国府0.5%
稿0.5%
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古宇0.2%
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此樣0.2%
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如斯0.1%
小売0.1%
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彼様0.1%
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此様0.1%
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甲者0.1%
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箇様0.1%
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練香0.1%
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香料0.1%
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(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
床柱とこばしらけたる払子ほっすの先にはき残るこうの煙りがみ込んで、軸は若冲じゃくちゅう蘆雁ろがんと見える。かりの数は七十三羽、あしもとより数えがたい。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その退屈がだんだんにこうじて来た第三日のゆう方に、倉沢は袴羽織という扮装いでたちでわたしの座敷へ顔を出した。かれは気の毒そうに言った。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こうじ果てた結果、あなたのことを思い出して、今日こんにち参上したわけで、どうか一つ折り入っての御願いですが、彫刻を教えて下さい。
わたしの光は、古いプラタナスの葉が、ちょうどカメのこうのようにりあがって、しげっている生垣いけがきの中に、さしこもうとしていました。
つぎ御小姓組おこしやうぐみなる勤仕きんしこうあらは有章公いうしやうこうの御代に御徒頭おかちがしらとなり其後伊勢山田奉行ぶぎやう仰付られ初て芙蓉ふよう御役人のれつに入りけるなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いずれも勇気凛々りんりん、今日を限りにこの痛快無比の旅行と別るるのがのこり多いようにも思われ、またこのこうおわったという得意の念もあった。
○さて太宰府に謫居てききよし給ふ事三年みとせにして延喜三年正月の頃より 御心れいならず、二月廿五日太宰府にこうじ玉へり、御年五十九。
おのれも好むようになりそれがこうじた結果であり音曲をもって彼女の愛を得る手段に供しようなどの心すらもなかったことは
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども、このカラスのことをちゃんと名まえどおりに、ガルムというものはひとりもなく、みんなノロこうノロ公と呼んでいました。
武蔵は、三名のなかへ割って入ると、こうの者を、大刀で一さつの下に断ち伏せ、左側の男を、左手で抜いた脇差で、横にいだ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが研究所での実験の一頓挫いちとんざと同時に来た。まだ若く研究にこうの経ない行一は、その性質にも似ず、首尾不首尾の波に支配されるのだ。
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
もう小判が日本中にはなくなってしまった——あるにしても三井やこういけや大大名の金蔵の奥ふかく死蔵されてしまった今日となって
明治の五十銭銀貨 (新字新仮名) / 服部之総(著)
あたりをさぐって、そとにでれば、夜は四こうやみながら、空には、女菩薩にょぼさつたちの御瞳みひとみにもる、うるわしい春の星が、またたいている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などの当主から、斯波しばこう、石堂、畠山、高力こうりき、関口、木田、入野、西条など十数家の同族におよび、やがて宴となり、宴も終ると
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「入湯のこうで、定めし、見違えるほど御壮健になったことと存じます。何と申しても人間は健康第一、これでなくてはいけません」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある、いつもこうちゃんがくる時分じぶんなのに、どうしたのか、こなかったから、きよちゃんはこちらから、こうちゃんのうちむかえにゆきました。
いちょうの葉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けつしておろかなる船長せんちやうふがごとき、怨靈おんれうとかうみ怪物ばけものとかいふやう得可うべからざるものひかりではなく、りよくこう兩燈りようとうたしかふね舷燈げんとう
その中でも比叡尾ひえび山の「霧の海」を見るために山上の寺で夜を明かしたことや、こうの川を舟で下ったことなどありありと印象に残っている。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
一方は湖だし、いまさらひきかえすことも残念ざんねんだ。ゆくにしたがっていよいよ丘陵きゅうりょうが多くなった。一とうこう、骨の折れることおびただしい。どうやら地面の光景は一変した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
蜀山人しょくさんじんの狂歌におけるや全く古今にかんたり。しかしてその始めて狂歌を吟ぜしはおもふに明和めいわ三、四年のこう年二十歳のころなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そもそもこう文字もんじ如何いかん」とか、「孝道の歴史」だとか、あるいは「各国の孝道の比較論」だとか、何だとかいうて難しいことを沢山並べて
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は物好ものずきにもみずから進んでこのうしぐらい奇人に握手を求めた結果として、もう少しでとんだ迷惑をこうむるところであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
行路変化多し回顧すれば六十何年、人生既往を想えばこうとして夢のごとしとは毎度聞く所であるが、私の夢は至極しごく変化の多いにぎやかな夢でした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この日を山のこうというので、ちょっと見ると農事に関係がないように取れるが、これに参与する者は主として農民であった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
売らぬと云うがわは、人数にんずで関係地主の総数そうすう五十三人中の三十名、坪数で二十万坪の十二万坪を占めて居る。彼等の云い分はざッと斯様こうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
花心くわしんだいにして七菊花の形をなし、臙脂の色濃く紫にまがふ。一花いつくわ落つれば、一花開き、五月を過ぎて六月霖雨りんうこうに入り花始めて尽く。
来青花 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
主人とお嬢さんとの膝に掛けるきれが、こうとりの形に畳んである、その嘴のところに、薄赤の莟を一つづつ挾んだ。
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
案内者はこう云って、仲に立った者が此レールを請負うけおって、一間ばかりの橋一つにも五十円の、枕木一本が幾円のと、不当なもうけをした事を話す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
黄蓋の乗った旗艦には、特に「こう」の字を印した大旗をひるがえし、その余の大船小艇にも、すべて青龍の牙旗がきを立てさせていた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康は二女の徳姫を、氏直へる約束にも承諾した。和と婚と分領ぶんりょうと、三こう一約のもとに、相互、十二月中に軍を退くことになっていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燕府えんふの将校官属を相せしめたもうに、珙一々指点して曰く、ぼうこうたるべし、某はこうたるべし、某は将軍たるべし、某は貴官たるべしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
第十二 学者雪ニヨリテ理学ノ諸支ヲ悟り詞人画工ニ至ルマデ詩賦しふこうヲ添ヘ山川ノ美景ヲセシム
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
『血どめだの、陣中こうだの、種々いろいろ薬種くすりを持っちゃあ、方々の御陣所の御用を聞いてまわるのさ。生命がけの商売だよ』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然らずして、いたづらに聞見をむさぼるのみならば、則ち或はがうちやうじ非をかざらんことを恐る。謂はゆるこうに兵をし、たうりやうするなり、おもんぱかる可し。
当時とうじ幕府の進歩派小栗上野介おぐりこうずけのすけはいのごときは仏蘭西フランスに結びその力をりて以て幕府統一のまつりごとをなさんとほっし、薩長さっちょうは英国にりてこれにこうたがい掎角きかくいきおいをなせり。
兼康の嫡子小太郎宗康も平家の味方であったが、父が義仲より暇をもらって帰ると聞き、以前から心を寄せる家来ども百騎余りを連れて父を出迎え、播磨の国府こうで行き会った。
蓮様れんさまの寮で柳生源三郎が剣豪峰丹波みねたんば一党にとりかこまれ、くらやみの中にいのちと頼む白刃はくじん真綿まわたでからめられた「源三郎の危機きき」から稿こうをつづけるべきですが
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其の仲の兄もまた亡せたれば、孤身るところなく、つい皇覚寺こうかくじに入りて僧とり、を得んがため合淝ごうひに至り、こうじょえいの諸州に托鉢たくはつ修行し、三歳の間は草鞋そうあい竹笠ちくりゅう
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こう君! われわれは著手ちゃくしゅしよう。しかし彼は結局 Noノー と言った。これは洋語だからお前達には分らない。そうでなければもっと早く成功したんだぞ。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
津軽海峡はや秋ちかし雲のこうとして渡る小禽の群あり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、いざ酒屋の払いをと、旅包みを解くと、宋江のそれにも武松の頭陀ずだにも、思いきや大枚銀五十両ずつ入っていた。こう兄弟の心入れなのはいうまでもない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自身は中軍にあって、旗列を八こうに布き、李典の軍勢は、これを後陣において
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然らざればすなわけんたのみてこうを争い、然らざれば則ち衆を擁して入朝し、はなはだしければ則ちかんりて而してたんに、之を防ぐも及ぶ無からん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小「いえ/\狼藉者が参って兎やこう申せば、この引金をガチリと押せば玉がパチンと出て、貴方の鳩尾辺みぞおちあたりあたるように……」
それもみやこなどでは見た事もあるまい。白地鳥と云う物は、背の青い、腹の白い、形はこうにそっくりの鳥じゃ。この島の土人はあの肉を食うと、湿気しっきを払うとかとなえている。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「はゝゝゝはゝ、いや、こうまたものもきたのうなると、手がつけられぬから恐るゝことなし。はゝはゝこら、うぢやい。」と、ひよいとおどつた。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そう、そう、そう来るだろうと思ったんだ。が、こうなれば刺違えても今更糸こうに譲って、指をくわえて、引込ひっこみはしない。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年二十。こう既ニ亡シ。マサニ遺命ヲ奉ジテ遊学セントスルヤ、コレヲ戒メテ曰クワガ門なかゴロ𡉏やぶル。なんじまさニ勉学シテ再興スベシ。然ラザレバワレ汝ヲ子視セジト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこで興がいよいよこうじて、尽くるということを知りません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いはばわたしにとつてはじつこうてき手だつたのだが、先生今や東北青ぜう下につて久しくあひ見ゆるない。時々おもひ出すと、わたしには脾にくたんへないものがあるのである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「あの金は、荐橋双茶坊こう秀王墻しゅうおうしょう対面に住んでおります、はくと云う女からもらいました」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新世帯の床の間に行脚あんぎゃ蓑笠みのかさに添へて安置したるは汝が一世のこうなるべし。
土達磨を毀つ辞 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
何の祝宴か磯辺の水楼に紅燈山形につるして絃歌湧き、沖に上ぐる花火夕闇の空に声なし。洲崎の灯影長うして江水漣漪れんい清く、電燈こうとして列車長きプラットフォームに入れば吐き出す人波。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
常に飄然ひようぜんとして、絶えて貴族的容儀を修めざれど、おのづからなる七万石の品格は、面白おもてしろ眉秀まゆひいでて、鼻高く、眼爽まなこさはやかに、かたちきよらあがれるは、こうとして玉樹ぎよくじゆの風前に臨めるともふべくや
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ひところ、よく世間で「八こう一宇」「世界一家」(世界じゅうの人たちが一家族のごとく相り相たすけてゆくこと)
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
よと故に八代將軍吉宗よしむね公は徳川氏中こうの君とたゝへ奉つる程の賢明けんめいましませば其下皆其にんかなはざるなく今般の巡見使松平縫殿頭ぬひのかみ殿も藤八お節が訴訟うつたへを一もくして其事いつはりならざるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ああ、なんとでもおっしゃい。あたくしには、ちゃんと自信満々たる研究企画があるんですわ。まことにお気の毒さま、タングステンこうあたまのトビ、トビタロ君」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
陥人かんじんこう、今よりち満ち、迷魂の陣、れより打開す。双明そうめいともしび焼毀しょうきし、九幽の獄に押赴おうふす。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雅定は俊頼に向っていった、「木工むくこうの殿はあの声をお聞きですか」。すると俊頼はすぐ、「思いもかけぬ春鳴けばといった趣でございますな」と答えた。これは『後拾遺集』春下に
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
「本当にねえ、こうおじさんのお蔭で旨く行きましたよ」
(新字新仮名) / 魯迅(著)
林児はめいらずに武の悪口をついた。武の叔父のこうは寛厚の長者であった。おいがあまり怒ってわざわいを招くのを恐れたので、つきだしてこらしてもらった方が好いだろうといって勧めた。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「でもこうちゃんとは褒め方が違いますわ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はたしてしからば、ロアイヤルこうや、むかしベスンバぞくのゐた部落ぶらくみぎ現象げんしようおこすにもつと適當てきとう場所ばしよであつて、此等これら地方ちほう大地震だいぢしんによつてふたゝ同樣どうよう現象げんしようおこすこともあるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
『続日本紀』の霊亀れいき元年に、南島から日本の使臣に引率せられて、来朝したという信覚しんかく・球美らの国人が、各方物ほうもつこうしてくらいを賜わったという記事は、はやくから双方に知られていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
半年ごとに、その期間の出勤日数百二十日以上のものは、一位のつむぎ三十疋、綿三十屯、布百端、すき百六十こうより従八位の絁一疋、綿一屯、布三端、鍫十口まで、官位に応じて禄をうける。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
伊豆半島西海岸、古宇こう村、宿屋大谷屋の二階のことである。九月一日、正午。
樹木とその葉:34 地震日記 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
その弟の主水重昌もんどしげまさは、慶長十九年大阪冬の陣の和がこうぜられた時に、判元見届はんもとみとどけの重任をかたじけなくしたのを始めとして、寛永十四年島原の乱に際しては西国さいごくの軍に将として、将軍家御名代ごみょうだいの旗を
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「独龍こうの本城に、くさりでつながれてますので、さて、われらにはどうすることもできません」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「凡百ノ技、こうニ始マリ、拙ニ終ル、ニ出デテ不思ふしニ入ル、故ニ巧思極マル時ハすなはチ神妙ナリ。神妙ナル時ハ則チ自然ナリ。自然ナルモノハ巧思ヲ以テ得ベカラズ、歳月ヲ以テ到ルベカラズ……」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その翌年某月石埭翁もまた世を去った。こううくること八十歳という。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私の膝の上に残った葡萄の大房は、風で鼻尖や頬をあかくした吉良や義光ちゃんや八重子達にたちまついばまれてしまいましたが、何か消えぬものがこうのように私の胸に残されました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まつたくはわたし御飽おあきなされたので此樣こうもしたらてゆくか、彼樣あゝもしたら離縁りゑんをとすかといぢめていぢめていぢくので御座ござりましよ、御父樣おとつさん御母樣おつかさんわたし性分せうぶん御存ごぞん
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ここで玉屋総一郎の屍体の頸部けいぶに附いていた奇妙なる金具のギザギザこうの痕をなぜ思い出さなかったのだろう。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
魁岸かいがん勇偉、膂力りょりょく絶倫、満身の花文かぶん、人を驚かして自ら異にす。太祖に従って、出入離れず。かつて太祖にしたがって出でし時、巨舟きょしゅうすなこうして動かず。成すなわち便舟を負いて行きしことあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この便法を証得しょうとくし得ざる時、英霊の俊児しゅんじ、またついに鬼窟裏きくつり堕在だざいして彼のいわゆる芸妓紳士通人と得失をこうするのを演じてはばからず。国家のため悲しむべき事である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかれども十月十六日に至り、鞠問きくもん全くおわり、奉行は彼を流罪に当るものとなし、案を具えてこれを老中に致す。大老井伊直弼、「流」字をこうして「死」字とす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
三吾太祖の意を知るや、何ぞげん無からん、すなわいわく、し燕王を立てたまわば秦王しんおう晋王しんおうを何の地に置き給わんと。秦王そう、晋王こうは、皆燕王の兄たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
の太祖の言は、まさに是れ太祖が胸中の秘を発せるにて、はやくよりこの意ありたればこそ、それより二年ほどにして、洪武三年に、そうこうていしゅくていしんたんの九子を封じて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かれ後にはな佐久夜さくや毘賣、まゐ出て白さく、「はらみて、今こうむ時になりぬ。こは天つ神の御子、ひそかに産みまつるべきにあらず。かれまをす」
「およそあだし國の人は、こうむ時になりては、もとつ國の形になりて生むなり。かれ、妾も今もとの身になりて産まむとす。願はくは妾をな見たまひそ」
蘭軒は二児榛軒こう、柏軒ちようを除く外、こと/″\あざなを以て称してゐる。その人物の明白なるものは森立之りつし、字は立夫りつふ、岡西徳瑛とくえい、字は君瑤くんえうの二人に過ぎない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
又門人の記する所に、「植厚朴、参川口善光寺、途看于花戸、其翌日持来植之」とも云つてある。しかしわたくしの考ふる所を以てすれば、蘭軒は子に名づくるにこうを以てしちようを以てした。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたくしは此より此詩暦をしをりとし路傍こうとして、ゆくての道をたどらうとおもふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三の瀬村のこうに十囲許ゐきよの樟木あり。中空朽くうきうの処六七畳席をくべし。九州地方大樟たいしやう尤多しといへどもかくのごときは未見いまだみず。江戸を発して已来道中第一の大木なり。三里薗木そのき駅(一に彼杵そのきと書)なり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
中国でこうというも且は男相の象字といえば(『和漢三才図会』十二)、やはりかかる本義と見ゆ。
李時珍曰く〈その類数種あり、小にして尾短きはこうなり、猴に似て髯多きはきょなり、猴に似て大なるはかくなり。大にして尾長く赤目なるはぐうなり。小にして尾長く仰鼻なるはゆうなり。
こうと道衍とはもとよりたがいに知己たり。道衍又かつて道士席応真せきおうしんを師として陰陽術数いんようじゅっすうの学を受く。って道家のを知り、仙趣の微に通ず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
道衍のこうを燕王に薦むるに当りてや、燕王ず使者をしてこうとも酒肆しゅしに飲ましめ、王みずから衛士の儀表堂々たるもの九人にまじわり、おのれまた衛士の服を服し、弓矢きゅうしりて肆中しちゅうに飲む。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
池田分家で此年六月十一日に瑞長妻東氏金あづまうぢきんが歿した。此瑞長はその天渓なるか三こうなるかを詳にしない。しばらく録して後考に資する。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
池田氏では此年四月さくに分家京水の継嗣天渓瑞長てんけいずゐちやうが歿した。法諡はふし養源軒天渓瑞長居士である。其後をいだものは恐くは三こう二世瑞長であらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こう怨毒えんどくいずれに向かってか吐き尽くすべきみちを得ずば、自己——千々岩安彦が五尺のまず破れおわらんずる心地ここちせるなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
子供、子供と今が今まで高をくくりし武男に十二分に裏をかかれて、一こう憤怨ふんえんほのおのごとく燃え起こりたる千々岩は、切れよとくちびるをかみぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
この句の詩情しているものは、やはり前の「ねぎこうて」と同じである。即ち冬の寒い日に、葱などの流れている裏町の小川を表象して、そこに人生の沁々しみじみとした侘びを感じているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ねぎこうて枯木の中を帰りけり
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
浪や、かあさんはとおーいとこに行くからね、おとなしくして、おとうさまを大事にして、こうちゃんを
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
こうちゃん——さよなら——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その一つは野村のむらの手紙で、もう一つは帯封にこう高評こうひょうの判がある『城』の今月号だった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鎖縶さしつされて逍遙城しょうようじょうれらるゝや、一日いちじつ帝の之を熟視するにあう。高煦急に立って帝の不意にで、一足いっそくのばして帝をこうし地にばいせしむ。帝おおいに怒って力士に命じ、大銅缸だいどうこうもって之をおおわしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「聴きしに優ると来たか、お前の学もいよいよこうを積んで、近頃は俺にもわからねえことがあるよ」
曾てイスラエルの王アハブが隣の民の葡萄園を貪り、こうイゼベル夫の為にはかつて其民を殺して葡萄園を奪ひ、其むくいとしてイゼベルは後王宮の窓より投落なげおとされ、犬其肉をくらひしと伝へらるゝ所。
俊亮はそう言ってこう笑した。俊亮の笑声につれて、みんなも笑った。しかし、その笑声には、変に固いところがあり、何かにつきあたったように、ぴたりととまった。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その後自分もそのこうを実見して、とても屍体二個を並べえぬものだとその場で評したことであった。
今に見ろ、彼奴等あいつらを根絶やしにして呼吸いきめてるからなんてワイ/\いったのは毎度の事であるが、れとても此方こっち如斯こうと云う成算せいさんも何もない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
まきすみや、石炭せきたん生産地せいさんちから直接ちょくせつ輸入ゆにゅうして、そのおろしや、小売こうりをしているので、あるときは、えき到着とうちゃくした荷物にもつろしを監督かんとくしたり、またリヤカーにんで、小売こうさきはこぶこともあれば
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
宋の乾道けんどう七年、縉雲しんうん陳由義ちんゆうぎが父をたずねるためにみんよりこうへ行った。その途中、ちょう州を過ぎた時に、土人からこんな話を聞かされた。
のみのような男、しらみのような女が、何様どう致した、彼様こうつかまつった、というが如き筋道の詮議立やなんぞに日を暮したとて、もっとも千万なことで、其人に取ってはそれだけの価のあること
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
言ひかへれば前印象派乃至ないしこう印象派の芸術には僕等と共鳴する世界の多いにかゝはらず、なほ越えがたい距離のあるのを覚えて、ロダンの彫刻にしても、セザンヌ、ゴツホ、マチス諸家の絵にしても
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その下部に横出せる枝にはとげあり。刺はすなわち小枝の短縮せるものにして多少逆向し人衣をこうして甚だ煩わし。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
と、言いながら、かっ! 叩くようにつかを握ったかと思うと、有村の手に、こうとした剣が抜き払われた。と——。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう理宗りそう皇帝のとき、浙江せっこううしおがあふれてこう州の都をおかし、水はひさしく退かないので、朝野の人びとも不安を感じた。
重く軽く、電光の如く、電波もたまらず身に応へる味といふものは、言外の言、幽なる、こうたる、感覚を絶した官能の冷たい花火である。
魚美人 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
奇異あやしく、怖しく思ふ程に、内野にありける十歳許なる死人を、此れ川原に持行ててよと責めければ、男終日長谷より歩みこうじて、力なく堪へ難くて、我れ長谷に三年月参りして
放免考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
無論腕木うでぎの支柱があり、黒鉄の上下こうが横斜めに構えてはいた。その把手ハンドルを菜っ葉服の一人が両手でしっかと引き降しにおさえた刹那せつなである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
政宗方の史伝に何も此様こういう計画をしたという事が遺って居るのでは無いが、前後の事情を考えると、邪推かは知らぬが斯様こう思える節が有るのである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
五百の兄広瀬栄次郎がすでに町人をめて金座きんざの役人となり、そののち久しくかね吹替ふきかえがないのを見て、また業をあらためようとした時も、抽斎はこのこうを引いてさとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『本草啓蒙』に「兎の性こうにして棲所の穴その道一ならず、猟人一道をふすぶれば他道にのがれ去る、故に『戦国策』に〈狡兎三窟ありわずかにその死を免れ得るのみ〉という」
「こわいものだ!」と甲者こうは身をらしてかしらりぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「英国のこうチャーン」
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
呉起ごき賢人也けんじんなりしかうしてこうくにせうにして、また彊秦きやうしん(九八)さかひじやうす。
尚不思議奇々妙々なのは、植物の芋のつるでもムカゴの蔓でも皆螺旋すると同じく、こう物の蔓もその実は螺旋的になッてるのだが、但し噴火山作用でメチャメチャになッて分らないのサ。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一手は大河内の自天王の御所ごしょを襲い、一手はこうたにの将軍の宮の御所に押し寄せた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ついに収めて育った、楚人乳をこう虎を於菟という、因って子文の幼名を闘穀於菟とうこうおとすなわち闘氏の子で虎の乳で育った者といったと見ゆ。
何故なぜ「どうしたものだろう」かとその理由ことわけたずねて見ると、概略あらましはまず箇様こうで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
館ノ主人こうすすム。ソノ味京製ニ減ゼズ。五こう大ニ雨フル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この歌は行宮へ送られる途中磐代(今の紀伊日高郡南部町岩代)海岸を通過せられた時の歌である。皇子は十一日に行宮から護送され、藤白坂でこうに処せられた。御年十九。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
平野の打続く衛の風景とはおよことかわった・山勝ちのこうの都に、侘しい三年の月日を送った後、太子は遥かに父衛侯のを聞いた。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
部屋の中には、何処となく、練香こうの匂いが漂って、手まわりの用をたす、十三、四の子役が、雪之丞が坐ったとき、燭台の、芯をなおした。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
高煦多力たりきなりければ、こうの重き三百きんなりしも、うなじこうを負いてつ。帝炭を缸上に積むこと山の如くならしめて之をもやす。高煦生きながらに焦熱地獄にし、高煦の諸子皆死を賜う。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
孔明は、髪をさばき、剣を取り、いわゆるこうを踏みくといういのりの座に坐ったままうしろ向きになっていた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それこうとく角なきにく真似し歯もなき蝮子が咬まんとするは角あり牙ある親の性を伝えたに相違ないが、くだんのコープの説に拠ると、いずれも最初に衝こう咬もうという一念から牛羊の始祖は角
雖然たといこう調ととのうるの用をなすことを要するも
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いかにその食は一こう一菜に限り、その服は綿衣に限るもその結果はただ生活の不愉快を感ずるのみ。その倹約我においてなんの利益かある。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
世にいうぎょしょうこうぼくの四隠のうち、彼のはそのいずれでもない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
故竹添進一郎氏の『左氏会箋』一四に引かれた銭錡の説に今の牛宿の星群は子宮にあって丑宮にあらず、周の時元枵げんきょうという星が虚宿二星の一たり、枵はこうで鼠は物をへらむなしくする
あのこうばしい匂い、浸み入る味、陶然とした酔。酒にこれを望みながら僕は滅多にそれに恵まれなくなった。そしてこの頃では飲むそのことがうるさくなって来た。酒。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
悪戯いたずらこうじて、この節では、唐黍とうもろこしの毛の尻尾しっぽを下げたり、あけびを口にくわえたり、茄子提灯なすびぢょうちん闇路やみじ辿たどって、日が暮れるまでうろつきますわの。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
懐中の名香みょうごう、そのとき殿中にこうじ渡る。献上の品は何々ぞ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
こう成って巾笥きんしに蔵すること年ありて後、永楽十年十一月、自序を附して公刊す。今これを読むに、大抵たいてい禅子の常談にして、別に他の奇無し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こうきゅういずれも竜蛇の属の名の字をミヅチとんだから、ミヅチは水蛇みずへび野蛟のづち野蛇のへびの霊異なるをあがめたものと思う。
このためには、現在魯侯よりも勢力をつ季・叔・孟・三かんの力をがねばならぬ。三氏の私城にして百雉ひゃくち(厚さ三じょう、高さ一丈)をえるものにこうせいの三地がある。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかるに燕王の北平ほくへいを発するに当り、道衍これをこうに送り、ひざまずいてひそかもうしていわく、臣願わくは託する所有らんと。王何ぞと問う。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
実業熱がこうじて待合入りを初めてから俄かにめかし出したが、或る時羽織を新調したから見てくれと斜子ななこの紋付を出して見せた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
国には盗人ぬすびと家に鼠と、人間ひとに憎まれいやしめらるる、鼠なれどもかくまでに、恩には感じ義にはいさめり。これを彼の猫の三年こうても、三日にして主を忘るてふ、烏円如きに比べては、雪と炭との差別けじめあり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
深紅の壁掛けが裾をふるわせ、香炉から立ち昇る香料こうの煙りが右に左に揺れ動く。鼻を刺す鋭い匂い! すなわち、香料の匂いであったが、部屋一杯に充ち満ちている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
陽暦の八月頃は蕎麦そばの花盛りで非常に綺麗きれいです。私はその時分に仏間ぶつまに閉じ籠って夕景までお経を読んで少し疲れて来たかと思いますとさっと吹き来る風の香が非常にこうばしい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
成程お勢はまだ若い、血気もいまだ定らない、志操もあるいは根強く有るまい。が、栴檀せんだん二葉ふたばからこうばしく、じゃは一寸にして人を呑む気が有る。文三の眼より見る時はお勢は所謂女豪じょごう萌芽めばえだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)