こう)” の例文
お金のおふくろのおこうというのが今度の事件について先ずお調べを受けました。神明の境内で起った事件ですから、寺社奉行の係です。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ある、いつもこうちゃんがくる時分じぶんなのに、どうしたのか、こなかったから、きよちゃんはこちらから、こうちゃんのうちむかえにゆきました。
いちょうの葉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
山口屋——本問屋——のお駒ちゃんは八百屋お七——お駒ちゃんの妹のこうちゃんは実にぱっちりした、若衆だちの顔つきだった。
「お酒って、……いいんですか」妻のおこうは針を持ったまま良人を見た、「——お医者に止められてるっていうのに、なにか煎じ薬でも」
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今のあまったれたような声がまた聞えて、それが私のいる食卓テーブルの前へ来た。女給のおこうちゃんが客を送り出して帰って来たところであった。
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
こうちゃんとこのようにですか、だってあれは株ですものう、水車がそういつだってできるもんならたれだってやりますわ。』
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
霊岸島川口町れいがんじまかわぐちちょう橋本はしもとこうろうと申して、おやしきへお出入を致して、昔からお大名の旗下はたもとの御用をしたもので、只今でも御用を達す処もござりますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
逝ける女史を不幸とすべきか、生ける妾をこうというべきか、この報を聞きたる時、妾は実に無限の感に打たれにき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
頻繁に行方不明になることに思い当りました——芝伊皿子しばいさらごの荒物屋の娘おなつ下谷竹町したやたけちょうの酒屋の妹おえん、麻布笄町あざぶこうがいちょう御家人ごけにんの娘おこう——、数えてみると
いきおいいよ/\せまる。群臣あるいは帝に勧むるにせつこうするを以てするあり、あるい湖湘こしょうに幸するにかずとするあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二十二でせがれの千きちみ、二十六でおせんをんだその翌年よくねん蔵前くらまえ質見世しちみせ伊勢新いせしん番頭ばんとうつとめていた亭主ていしゅ仲吉なかきちが、急病きゅうびょうくなった、こうから不幸ふこうへの逆落さかおとしに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
こう」だから、私の弟の輝夫が「神戸又新、神戸又新」といってどなっていたからである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何故なぜならば、僕が同伴して来た三人の将校達は、多分たぶん仏蘭西語フランスごと思われる外国語で話をしつづけました。こう不幸ふこうか、仏蘭西語は僕には何のことやら薩張さっぱり意味が判りません。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
客は註文のフライが来ると、正宗まさむねびんを取り上げた。そうして猪口ちょくへつごうとした。その時誰か横合いから、「こうさん」とはっきり呼んだものがあった。客は明らかにびっくりした。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
外の客より貰ひ溜めたるものにても、ハンケチ巻紙、その他何にても、男の用に立ちさうなものは、母様にも隠して、こうよりと記し、そとその人の机の辺りに置くを何よりの楽しみに。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ハイ、わたくし共も、そうではないかと思いまして、さい前本人のこうちゃんに尋ねて見ましたのですが、僕がそんな呼出しなぞかける訳がない。その時間にはN市へ行っていたのだから。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
光蔵みつぞうという語音が呼びにくいのでみつこうに通わせて幸吉と呼ばれていました。
だが、こうか不幸か、なにしろ、を見るなかれの場所ばしょであり、三日である。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻のおこうは煙に巻かれてばかりはいなかった。
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
こうちゃんと、きよちゃんは、二つちがいでしたが、毎日まいにちなかよく学校がっこうへゆきました。いつもこうちゃんがむかえにきたのです。
いちょうの葉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先生の中二階からはその屋根が少しばかりしか見えないが音はよく聞こえる水車すいしゃ、そこにこうちゃんという息子むすこがある、これも先生の厄介になッた一人で
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
女「はい、御緩ごゆるりとお休みなさいまし……おや、貴方あんたは橋本のこうさんじゃアございませんか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……みよしのおこうさんを自分のものにしようというのなら小判の五十枚もそこへ並べてごらん。まだくちばしの黄色いおまえさんたちの相手になるおねえさんじゃないよ、顔を洗って出なおしておいで。
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いつもなら、かえりにもわせてこうちゃんといっしょにおうちかえったのですけど、そのばかりはさびしく一人ひとりかえらなければなりませんでした。
いちょうの葉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところで武の妹はおこうと申しまして若い者のうちで大評判な可愛い娘でございまして年はそのころ十七でした。私も始終顔を見知っていましたが言葉をわしたことはなかったのです。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こう不幸ふこうか、なわをかけたえだれて、かれ地上ちじょうあたまつとそのままとおくなってしまいました。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)