高村光雲
1852.03.08 〜 1934.10.10
“高村光雲”に特徴的な語句
種
奪
異
両人
気息
住居
極
後
籠
潜
種々
覗
葭簀張
目論見
好
其所
塩梅
生計
間
道理
中
為
下谷
主
扶
大河
肚
冠
平生
異
木彫
製
儲
生命
道程
金銭
身体
何処
這入
伴
明日
甚
生
方
能
出
退
此所
好
家
著者としての作品一覧
佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
私の友達に高橋定次郎氏という人がありました。この人は前にも話しました通り、高橋鳳雲の息子さんで、その頃は鉄筆で筒を刻って職業としていました。上野広小路の山崎(油屋)の横を湯島の男坂 …
読書目安時間:約16分
私の友達に高橋定次郎氏という人がありました。この人は前にも話しました通り、高橋鳳雲の息子さんで、その頃は鉄筆で筒を刻って職業としていました。上野広小路の山崎(油屋)の横を湯島の男坂 …
幕末維新懐古談:01 私の父祖のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
まず、いろいろの話をする前に、前提として私の父祖のこと、つまり、私の家のことを概略話します。 私の父は中島兼松といいました。その三代前は因州侯の藩中で中島重左エ門と名乗った男。悴に …
読書目安時間:約6分
まず、いろいろの話をする前に、前提として私の父祖のこと、つまり、私の家のことを概略話します。 私の父は中島兼松といいました。その三代前は因州侯の藩中で中島重左エ門と名乗った男。悴に …
幕末維新懐古談:02 私の子供の時のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
これから私のことになる—— 私は、現今の下谷の北清島町に生まれました。嘉永五年二月十八日が誕生日です。 その頃は、随分辺鄙なむさくるしい土地であった。江戸下谷源空寺門前といった所で …
読書目安時間:約5分
これから私のことになる—— 私は、現今の下谷の北清島町に生まれました。嘉永五年二月十八日が誕生日です。 その頃は、随分辺鄙なむさくるしい土地であった。江戸下谷源空寺門前といった所で …
幕末維新懐古談:03 安床の「安さん」の事(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
町内に安床という床屋がありました。 それが私どもの行きつけの家であるから、私はお湯に這入って髪を結ってもらおうと、其所へ行った。 「おう、光坊か、お前、つい、この間頭を結ったんじゃ …
読書目安時間:約4分
町内に安床という床屋がありました。 それが私どもの行きつけの家であるから、私はお湯に這入って髪を結ってもらおうと、其所へ行った。 「おう、光坊か、お前、つい、この間頭を結ったんじゃ …
幕末維新懐古談:04 私の父の訓誡(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
さて、いよいよ話が決まりましたその夜、父は私に向い、今日までは親の側にいて我儘は出来ても、明日からは他人の中に出ては、そんな事は出来ぬ。それから、お師匠様初め目上の人に対し、少しで …
読書目安時間:約1分
さて、いよいよ話が決まりましたその夜、父は私に向い、今日までは親の側にいて我儘は出来ても、明日からは他人の中に出ては、そんな事は出来ぬ。それから、お師匠様初め目上の人に対し、少しで …
幕末維新懐古談:05 その頃の床屋と湯屋のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
床屋の話が出たついで故、ちょっと話しましょう。当時の髪結床は、今のように小ざっぱりしたものではなく、特にこういう源空寺門前といったような場末では、そりゃ、じじむさいものでした。 源 …
読書目安時間:約2分
床屋の話が出たついで故、ちょっと話しましょう。当時の髪結床は、今のように小ざっぱりしたものではなく、特にこういう源空寺門前といったような場末では、そりゃ、じじむさいものでした。 源 …
幕末維新懐古談:06 高村東雲の生い立ち(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
そこで、これから師東雲先生の生い立ちを話します。 東雲師は元奥村藤次郎といった人で、前述の通り下谷北清島長(源空寺門前)の生まれである。その師匠が当時江戸で一、二を争うところの仏師 …
読書目安時間:約6分
そこで、これから師東雲先生の生い立ちを話します。 東雲師は元奥村藤次郎といった人で、前述の通り下谷北清島長(源空寺門前)の生まれである。その師匠が当時江戸で一、二を争うところの仏師 …
幕末維新懐古談:07 彫刻修業のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
早速彫らされることになる—— この話はしにくい。が、まず大体を話すとすると、最初は「割り物」というものを稽古する。これはいろいろの紋様を平面の板に彫るので工字紋、麻の葉、七宝、雷紋 …
読書目安時間:約6分
早速彫らされることになる—— この話はしにくい。が、まず大体を話すとすると、最初は「割り物」というものを稽古する。これはいろいろの紋様を平面の板に彫るので工字紋、麻の葉、七宝、雷紋 …
幕末維新懐古談:08「木寄せ」その他のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
木寄せのことを、ざっと話して置きましょう。 仏師に附属した種々の職業が分業的になってある中に、木寄師もその一つであります。これは材料を彫刻家へ渡す前に、その寸法を彫刻家の注文通り断 …
読書目安時間:約3分
木寄せのことを、ざっと話して置きましょう。 仏師に附属した種々の職業が分業的になってある中に、木寄師もその一つであります。これは材料を彫刻家へ渡す前に、その寸法を彫刻家の注文通り断 …
幕末維新懐古談:09 甲子年の大黒のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
話が少し元へ返って、私の十二の時が文久三年、十三が確か元治元年の甲子年であった。この甲子年はめったには来ません。六十一年目に一度という……それでその時の甲子年には、大黒の信者はもと …
読書目安時間:約1分
話が少し元へ返って、私の十二の時が文久三年、十三が確か元治元年の甲子年であった。この甲子年はめったには来ません。六十一年目に一度という……それでその時の甲子年には、大黒の信者はもと …
幕末維新懐古談:10 仏師の店のはなし(職人気質)(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
師匠東雲師の家が諏訪町へ引っ越して、三、四年も経つ中に、珍しかった硝子戸のようなものも、一般ではないが流行って来る。師匠の家でもそれが出来たりしました。障子の時は障子へ「大仏師高村 …
読書目安時間:約4分
師匠東雲師の家が諏訪町へ引っ越して、三、四年も経つ中に、珍しかった硝子戸のようなものも、一般ではないが流行って来る。師匠の家でもそれが出来たりしました。障子の時は障子へ「大仏師高村 …
幕末維新懐古談:11 大火以前の雷門附近(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
私の十四歳の暮、すなわち慶応元年丑年の十二月十四日の夜の四ツ時(午後十時)浅草三軒町から出火して浅草一円を烏有に帰してしまいました。浅草始まっての大火で雷門もこの時に焼けてしまった …
読書目安時間:約3分
私の十四歳の暮、すなわち慶応元年丑年の十二月十四日の夜の四ツ時(午後十時)浅草三軒町から出火して浅草一円を烏有に帰してしまいました。浅草始まっての大火で雷門もこの時に焼けてしまった …
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
雷門に接近した並木には、門に向って左側に「山屋」という有名な酒屋があった(麦酒、保命酒のような諸国の銘酒なども売っていた)。その隣りが遠山という薬種屋、その手前(南方へ)に二八そば …
読書目安時間:約10分
雷門に接近した並木には、門に向って左側に「山屋」という有名な酒屋があった(麦酒、保命酒のような諸国の銘酒なども売っていた)。その隣りが遠山という薬種屋、その手前(南方へ)に二八そば …
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
これから火事の話をします。 前に幾度かいった通り、慶応元年丑年十二月十四日の夜の四ツ時(私の十四の時)火事は浅草三軒町から出ました。 前述詳しく雷門を中心とした浅草一円の地理を話し …
読書目安時間:約6分
これから火事の話をします。 前に幾度かいった通り、慶応元年丑年十二月十四日の夜の四ツ時(私の十四の時)火事は浅草三軒町から出ました。 前述詳しく雷門を中心とした浅草一円の地理を話し …
幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
私は十四の子供で、さして役には立たぬ。大人でもこの猛火の中では働きようもない。私の師匠の東雲と、兄弟子の政吉と、私の父の兼松(父は師匠の家と私とを心配して真先に手伝いに来ていました …
読書目安時間:約8分
私は十四の子供で、さして役には立たぬ。大人でもこの猛火の中では働きようもない。私の師匠の東雲と、兄弟子の政吉と、私の父の兼松(父は師匠の家と私とを心配して真先に手伝いに来ていました …
幕末維新懐古談:15 焼け跡の身惨なはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
帰ったのは九ツ過ぎ(十二時過ぎ)でした。さすがの火事もその頃は下火となって、やがて鎮火しました。 火事の危険であった話や、父に扶けられた話や、久方ぶり、母との対面や何やかやで、雑炊 …
読書目安時間:約3分
帰ったのは九ツ過ぎ(十二時過ぎ)でした。さすがの火事もその頃は下火となって、やがて鎮火しました。 火事の危険であった話や、父に扶けられた話や、久方ぶり、母との対面や何やかやで、雑炊 …
幕末維新懐古談:16 その頃の消防夫のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
江戸のいわゆる、八百八街には、火消しが、いろは四十八組ありました。 浅草は場末なれど、彼の新門辰五郎の持ち場とて、十番のを組といえば名が売れていました。もっとも、辰五郎は四十八組の …
読書目安時間:約5分
江戸のいわゆる、八百八街には、火消しが、いろは四十八組ありました。 浅草は場末なれど、彼の新門辰五郎の持ち場とて、十番のを組といえば名が売れていました。もっとも、辰五郎は四十八組の …
幕末維新懐古談:17 猫と鼠のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
少し変った思い出ばなしをします。鼠の話を先にしましょう。 私が十五、六歳の時です。師匠の手元にいて、かれこれ二、三年も稽古をしたお蔭で、どうやら物の形が出来るようになって来ました。 …
読書目安時間:約9分
少し変った思い出ばなしをします。鼠の話を先にしましょう。 私が十五、六歳の時です。師匠の手元にいて、かれこれ二、三年も稽古をしたお蔭で、どうやら物の形が出来るようになって来ました。 …
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
今の猫と鼠の話のあった前後の頃おい(確か十五の年)は徳川氏の世の末で、時勢の変動激しく、何かと騒擾が引き続く。 それにつけて、四時の天候なども甚だ不順であって、凶作が続き、雨量多く …
読書目安時間:約6分
今の猫と鼠の話のあった前後の頃おい(確か十五の年)は徳川氏の世の末で、時勢の変動激しく、何かと騒擾が引き続く。 それにつけて、四時の天候なども甚だ不順であって、凶作が続き、雨量多く …
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
慶応四年辰年の五月十五日——私の十七の時、上野の戦争がありました。 今日から考えて見ると、徳川様のあの大身代が揺ぎ出して、とうとう傾いてしまった時であった。その時、何もかも一緒にい …
読書目安時間:約10分
慶応四年辰年の五月十五日——私の十七の時、上野の戦争がありました。 今日から考えて見ると、徳川様のあの大身代が揺ぎ出して、とうとう傾いてしまった時であった。その時、何もかも一緒にい …
幕末維新懐古談:20 遊芸には縁のなかったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
上野の戦争が終んで後私が十八、九のことであったか。徳川家に属した方の武家などは急に生活の道を失い、ちりぢりばらばらになって、いろいろな身惨な話などを聞きました。でも、町家の方はそう …
読書目安時間:約6分
上野の戦争が終んで後私が十八、九のことであったか。徳川家に属した方の武家などは急に生活の道を失い、ちりぢりばらばらになって、いろいろな身惨な話などを聞きました。でも、町家の方はそう …
幕末維新懐古談:21 年季あけ前後のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
さて、今日から考えて見ても、当時私の身に取って、いろいろな意味において幸福であったと思うことは、師匠東雲師が、まことに良い華客場を持っていられたということであります。 たとえば、こ …
読書目安時間:約6分
さて、今日から考えて見ても、当時私の身に取って、いろいろな意味において幸福であったと思うことは、師匠東雲師が、まことに良い華客場を持っていられたということであります。 たとえば、こ …
幕末維新懐古談:22 徴兵適齢のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
とかくする中、ここに降って湧いたような事件が起りました。 明治六年に寅歳の男が徴兵に取られた。それはそれ切りのことと思って念頭にもなかった。その当時の社会一般に人民が政治ということ …
読書目安時間:約5分
とかくする中、ここに降って湧いたような事件が起りました。 明治六年に寅歳の男が徴兵に取られた。それはそれ切りのことと思って念頭にもなかった。その当時の社会一般に人民が政治ということ …
幕末維新懐古談:23 家内を貰った頃のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
私の年季が明けると同時に、師匠東雲師はまず私の配偶者のことについて心配をしておられました。もっとも年の明ける前から心掛けておったようです。これは親たちも感じていたことでありましょう …
読書目安時間:約10分
私の年季が明けると同時に、師匠東雲師はまず私の配偶者のことについて心配をしておられました。もっとも年の明ける前から心掛けておったようです。これは親たちも感じていたことでありましょう …
幕末維新懐古談:24 堀田原へ引っ越した頃のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
私は結婚後暫く親の家へ帰っていた。ちょうどそれを境にして彼の金谷おきせさんは穀屋の店を畳んで堀田原の家に世帯を引き取りました。 この家は私が戸主で、養母が住んでいるけれども、それは …
読書目安時間:約3分
私は結婚後暫く親の家へ帰っていた。ちょうどそれを境にして彼の金谷おきせさんは穀屋の店を畳んで堀田原の家に世帯を引き取りました。 この家は私が戸主で、養母が住んでいるけれども、それは …
幕末維新懐古談:25 初めて博覧会の開かれた当時のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
堀田原から従前通り私は相更らず師匠の家へ通っている。すると、明治十年の四月に、我邦で初めての内国勧業博覧会が開催されることになるという。ところが、その博覧会というものが、まだ一般そ …
読書目安時間:約7分
堀田原から従前通り私は相更らず師匠の家へ通っている。すると、明治十年の四月に、我邦で初めての内国勧業博覧会が開催されることになるという。ところが、その博覧会というものが、まだ一般そ …
幕末維新懐古談:26 店初まっての大作をしたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
かれこれしている中に私は病気になった。 医師に掛かると、傷寒の軽いのだということだったが、今日でいえば腸チブスであった。お医師は漢法で柳橋の古川という上手な人でした。前後二月半ほど …
読書目安時間:約9分
かれこれしている中に私は病気になった。 医師に掛かると、傷寒の軽いのだということだったが、今日でいえば腸チブスであった。お医師は漢法で柳橋の古川という上手な人でした。前後二月半ほど …
幕末維新懐古談:27 引き続き作に苦心したこと(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
されば追っかけて、また一つ外国人からの注文がありました。 今度は、ドイツ公使館へ来た或る外国人からの注文で、同じく洋燈台であったが、趣は以前と違っておった。これは前述のアーレンス商 …
読書目安時間:約2分
されば追っかけて、また一つ外国人からの注文がありました。 今度は、ドイツ公使館へ来た或る外国人からの注文で、同じく洋燈台であったが、趣は以前と違っておった。これは前述のアーレンス商 …
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
それからまたこういう特別な注文のほかに、他の仕事もぽつぽつあります。それらを繰り返して仏の方をも相更らずやっている。明治十一年も終り、十二年となり、これといって取り立ててはなしもな …
読書目安時間:約9分
それからまたこういう特別な注文のほかに、他の仕事もぽつぽつあります。それらを繰り返して仏の方をも相更らずやっている。明治十一年も終り、十二年となり、これといって取り立ててはなしもな …
幕末維新懐古談:29 東雲師没後の事など(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
さて、差し当っての責任として、私が主として師匠東雲師の葬送のことを取り計らわねばならぬ次第となったのであります。というのは、師匠の息子は、丑歳の時に出来た子供であって、それが当年十 …
読書目安時間:約2分
さて、差し当っての責任として、私が主として師匠東雲師の葬送のことを取り計らわねばならぬ次第となったのであります。というのは、師匠の息子は、丑歳の時に出来た子供であって、それが当年十 …
幕末維新懐古談:30 身を引いた時のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
さて、これから後の始末をつける段となるのでありますが、急に師匠に逝かれては、どうして好いか方角も付きません。しかし相更らず仕事だけはやらねばならぬから、まずこの方のことを引き締めて …
読書目安時間:約6分
さて、これから後の始末をつける段となるのでありますが、急に師匠に逝かれては、どうして好いか方角も付きません。しかし相更らず仕事だけはやらねばならぬから、まずこの方のことを引き締めて …
幕末維新懐古談:31 神仏混淆廃止改革されたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
明治八年は私が二十三で年季が明けて、その明年私の二十四の時、その頃神仏混淆であった従来からの習慣が区別されることになった。 これまではいわゆる両部混同で何の神社でも御神体は幣帛を前 …
読書目安時間:約4分
明治八年は私が二十三で年季が明けて、その明年私の二十四の時、その頃神仏混淆であった従来からの習慣が区別されることになった。 これまではいわゆる両部混同で何の神社でも御神体は幣帛を前 …
幕末維新懐古談:32 本所五ツ目の羅漢寺のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
この時代のことで、おもしろい話がある。これは神仏混淆の例証ではありませんが、やはり神仏区別のお布令からして仏様側が手酷しくやられた余波から起った事柄であります。 本所の五ツ目に天恩 …
読書目安時間:約4分
この時代のことで、おもしろい話がある。これは神仏混淆の例証ではありませんが、やはり神仏区別のお布令からして仏様側が手酷しくやられた余波から起った事柄であります。 本所の五ツ目に天恩 …
幕末維新懐古談:33 蠑螺堂百観音の成り行き(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
蠑螺堂は壊し屋が買いましたが、百観音は下金屋が買いました。下金屋というのは道具屋ではない。古金買いです。古金買いの中でも、鍋、釜、薬缶などの古金を買うものと、金銀、地金を買うものと …
読書目安時間:約8分
蠑螺堂は壊し屋が買いましたが、百観音は下金屋が買いました。下金屋というのは道具屋ではない。古金買いです。古金買いの中でも、鍋、釜、薬缶などの古金を買うものと、金銀、地金を買うものと …
幕末維新懐古談:34 私の守り本尊のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
さて、五体の観音は師匠の所有に帰し「まあ、よかった」と師匠とともに私は一安心しました。しかし、私にはここで一つの希望が起りました。私は、数日の後、師匠に向い、その望みを申し出でまし …
読書目安時間:約4分
さて、五体の観音は師匠の所有に帰し「まあ、よかった」と師匠とともに私は一安心しました。しかし、私にはここで一つの希望が起りました。私は、数日の後、師匠に向い、その望みを申し出でまし …
幕末維新懐古談:35 実物写生ということのはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
明治八、九年頃は私も既に師匠の手を離れて仏師として一人前とはなっておりましたが、さて、一人前とは申しながら、まだ立派に世に立つに到ったとはいえない。師匠の家は出たけれども、自分の家 …
読書目安時間:約5分
明治八、九年頃は私も既に師匠の手を離れて仏師として一人前とはなっておりましたが、さて、一人前とは申しながら、まだ立派に世に立つに到ったとはいえない。師匠の家は出たけれども、自分の家 …
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
ちょうど、その時分、虎の門際の辰ノ口に工部省で建てた工部学校というものが出来ました。噂に聞くと、此校では西洋人を教師に傭って、絵や彫刻を修業しているのだということ、絵は油絵であり、 …
読書目安時間:約4分
ちょうど、その時分、虎の門際の辰ノ口に工部省で建てた工部学校というものが出来ました。噂に聞くと、此校では西洋人を教師に傭って、絵や彫刻を修業しているのだということ、絵は油絵であり、 …
幕末維新懐古談:37 鋳物の仕事をしたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
とかくしている中、また一つ私の生活に変化が来ました。 それは牛込神楽坂の手前に軽子坂という坂があるが、その坂上に鋳物師で大島高次郎という人があって、明治十四年の博覧会に出品する作品 …
読書目安時間:約5分
とかくしている中、また一つ私の生活に変化が来ました。 それは牛込神楽坂の手前に軽子坂という坂があるが、その坂上に鋳物師で大島高次郎という人があって、明治十四年の博覧会に出品する作品 …
幕末維新懐古談:38 象牙彫り全盛時代のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
その時分の私の住居は、下谷西町三番地(旧立花家の屋敷跡の一部)にありました。大溝渠を前にした一室を仕事場にして、其所で二年ぶりに手入れをした道具を備え、いよいよ本職の木彫りをもって …
読書目安時間:約4分
その時分の私の住居は、下谷西町三番地(旧立花家の屋敷跡の一部)にありました。大溝渠を前にした一室を仕事場にして、其所で二年ぶりに手入れをした道具を備え、いよいよ本職の木彫りをもって …
幕末維新懐古談:39 牙彫りを排し木彫りに固執したはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
「いやしくも仏師たるものが、自作を持って道具屋の店に売りに行く位なら、焼き芋でも焼いていろ、団子でもこねていろ」 これは高橋鳳雲が時々私の師匠東雲にいって聞かせた言葉だそうでありま …
読書目安時間:約6分
「いやしくも仏師たるものが、自作を持って道具屋の店に売りに行く位なら、焼き芋でも焼いていろ、団子でもこねていろ」 これは高橋鳳雲が時々私の師匠東雲にいって聞かせた言葉だそうでありま …
幕末維新懐古談:40 貿易品の型彫りをしたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
それから、また暫くの後、或る日私が仕事場で仕事をしていると、一人の百姓のような風体をした老人が格子戸を開けて訪ねて来ました。 その人は、チョン髷を結って、太い鼻緒の下駄を穿き、見る …
読書目安時間:約4分
それから、また暫くの後、或る日私が仕事場で仕事をしていると、一人の百姓のような風体をした老人が格子戸を開けて訪ねて来ました。 その人は、チョン髷を結って、太い鼻緒の下駄を穿き、見る …
幕末維新懐古談:41 蘆の葉のおもちゃのはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
暫く話を途切らしたんで、少し調子がおかしい……何処まで話したっけ……さよう……この前の話の処でまず一段落附いたことになっていた。これからは、ずっと、私の仕事が社会的に働きかけて行こ …
読書目安時間:約6分
暫く話を途切らしたんで、少し調子がおかしい……何処まで話したっけ……さよう……この前の話の処でまず一段落附いたことになっていた。これからは、ずっと、私の仕事が社会的に働きかけて行こ …
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
こういうことが続いていたが、或る年、大分大仕掛けに、父は熊手を拵え出しました。 鳥の市でなくてならないあの熊手は誰でも知っている通りのもの。真ん中に俵が三俵。千両函、大福帳、蕪、隠 …
読書目安時間:約9分
こういうことが続いていたが、或る年、大分大仕掛けに、父は熊手を拵え出しました。 鳥の市でなくてならないあの熊手は誰でも知っている通りのもの。真ん中に俵が三俵。千両函、大福帳、蕪、隠 …
幕末維新懐古談:43 歳の市のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
それから、もう一つ、歳の市をやったことがあります。 歳の市の売り物は正月用意のものです。父の売ったものはこれは老人自身のひと趣向なので巾八寸位の蒲鉾板位のものに青竹を左右に立て、松 …
読書目安時間:約3分
それから、もう一つ、歳の市をやったことがあります。 歳の市の売り物は正月用意のものです。父の売ったものはこれは老人自身のひと趣向なので巾八寸位の蒲鉾板位のものに青竹を左右に立て、松 …
幕末維新懐古談:44 東雲師の家の跡のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
ついでながら師匠東雲師の家の跡のことをいって置きましょう。 師が没せられて後私ら兄弟子三枝松政吉氏が後のことを私に代ってやったことは、先日話しました。東雲の二代目になる息子は、雷門 …
読書目安時間:約2分
ついでながら師匠東雲師の家の跡のことをいって置きましょう。 師が没せられて後私ら兄弟子三枝松政吉氏が後のことを私に代ってやったことは、先日話しました。東雲の二代目になる息子は、雷門 …
幕末維新懐古談:45 竜池会の起ったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
さて、今日までの話は、私の蔭の仕事ばかりで何らこの社会とは交渉のないものであったが、これからはようやく私の生活が世間的に芽を出し掛けたことになります。すなわち自分の仕事として、その …
読書目安時間:約7分
さて、今日までの話は、私の蔭の仕事ばかりで何らこの社会とは交渉のないものであったが、これからはようやく私の生活が世間的に芽を出し掛けたことになります。すなわち自分の仕事として、その …
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
さて、話は自然私がどうして石川光明氏と交を結ぶことになったかということに落ちて来ます。それを話します。 明治十五年、私は西町三番地の家で毎日仕事をしておりました。仕事場は往来を前に …
読書目安時間:約11分
さて、話は自然私がどうして石川光明氏と交を結ぶことになったかということに落ちて来ます。それを話します。 明治十五年、私は西町三番地の家で毎日仕事をしておりました。仕事場は往来を前に …
幕末維新懐古談:47 彫工会の成り立ちについて(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
この頃になって一時に種々の事が一緒に起って来るので、どの話をしてよろしいか自分ながら選択に苦しみますが、先に日本美術協会の話をしたから、引き続き、ついでに東京彫工会のことについて話 …
読書目安時間:約13分
この頃になって一時に種々の事が一緒に起って来るので、どの話をしてよろしいか自分ながら選択に苦しみますが、先に日本美術協会の話をしたから、引き続き、ついでに東京彫工会のことについて話 …
幕末維新懐古談:48 会の名のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
そこで、この会名の相談になったのでありますが、牙彫家の集団の会であるから、牙彫の「牙」という文字を入れるか、入れないかという間題になった。 無論牙彫の人たちばかりのこと故、「牙」を …
読書目安時間:約3分
そこで、この会名の相談になったのでありますが、牙彫家の集団の会であるから、牙彫の「牙」という文字を入れるか、入れないかという間題になった。 無論牙彫の人たちばかりのこと故、「牙」を …
幕末維新懐古談:49 発会当時およびその後のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
当日は会の発表祝賀会を兼ねて製作展覧を催したのでありました。 展覧の方は今日のように硝子箱に製品を陳列するなどの準備などは無論なく、無雑作なやり方ではあったが、牙彫の製品はかなり出 …
読書目安時間:約4分
当日は会の発表祝賀会を兼ねて製作展覧を催したのでありました。 展覧の方は今日のように硝子箱に製品を陳列するなどの準備などは無論なく、無雑作なやり方ではあったが、牙彫の製品はかなり出 …
幕末維新懐古談:50 大病をした時のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
ちょうどこの彫工会発会当時前後は私は西町にいました。 その節、彼の三河屋の老人と心やすくなって三河屋の仕事をしたことは前に話しましたが、その関係上、少しでも三河屋の方に近くなる方が …
読書目安時間:約7分
ちょうどこの彫工会発会当時前後は私は西町にいました。 その節、彼の三河屋の老人と心やすくなって三河屋の仕事をしたことは前に話しましたが、その関係上、少しでも三河屋の方に近くなる方が …
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
話がずっと後戻りしますが、今日は少し別のはなしをしようかと思いますが、どうですか。 ……では、そのはなしをすることにしましょう。 実は、先日来、大隈未亡人綾子刀自が御重体であると新 …
読書目安時間:約19分
話がずっと後戻りしますが、今日は少し別のはなしをしようかと思いますが、どうですか。 ……では、そのはなしをすることにしましょう。 実は、先日来、大隈未亡人綾子刀自が御重体であると新 …
幕末維新懐古談:52 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
御徒町に転宅しまして病気も概かた癒りました。 その時が明治二十年の秋……まだ本当に元の身体には復しませんが仕事には差し閊えのないほどになった。 すると、その年の十二月、皇居御造営事 …
読書目安時間:約5分
御徒町に転宅しまして病気も概かた癒りました。 その時が明治二十年の秋……まだ本当に元の身体には復しませんが仕事には差し閊えのないほどになった。 すると、その年の十二月、皇居御造営事 …
幕末維新懐古談:53 葉茶屋の狆のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
さて、鏡縁御欄間の仕事が終りますと、今度は以前より、もっと大役を仰せ附かりました。 これは貴婦人の間の装飾となるのだそうで御座いますが、貴婦人の間のどういう所へ附いたものかその御場 …
読書目安時間:約7分
さて、鏡縁御欄間の仕事が終りますと、今度は以前より、もっと大役を仰せ附かりました。 これは貴婦人の間の装飾となるのだそうで御座いますが、貴婦人の間のどういう所へ附いたものかその御場 …
幕末維新懐古談:54 好き狆のモデルを得たはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
合田氏のはなしを聞けば、なるほど耳寄りな話である。 合田氏は、私の今使っているモデルの狆を口ではそれと悪くはいわないが、この狆よりも数等上手の狆がいることを話された。それはツイ先月 …
読書目安時間:約7分
合田氏のはなしを聞けば、なるほど耳寄りな話である。 合田氏は、私の今使っているモデルの狆を口ではそれと悪くはいわないが、この狆よりも数等上手の狆がいることを話された。それはツイ先月 …
幕末維新懐古談:55 四頭の狆を製作したはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
いよいよ狆の製作が出来ました。 先のと、それから「種」のモデルの方が三つです。一つは起って前肢を挙げている(これは葉茶屋の方のです)。一つは寝転んでいる。一つは駆けて来て鞠に戯れて …
読書目安時間:約11分
いよいよ狆の製作が出来ました。 先のと、それから「種」のモデルの方が三つです。一つは起って前肢を挙げている(これは葉茶屋の方のです)。一つは寝転んでいる。一つは駆けて来て鞠に戯れて …
幕末維新懐古談:56 鶏の製作を引き受けたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
狆の製作が終ってから暫くしてふと鶏を彫ることになりました。 その頃京橋南鍋町に若井兼三郎俗に近兼という道具商があった。この人は同業仲間でも好い顔で、高等品を取り扱い、道具商とはいい …
読書目安時間:約6分
狆の製作が終ってから暫くしてふと鶏を彫ることになりました。 その頃京橋南鍋町に若井兼三郎俗に近兼という道具商があった。この人は同業仲間でも好い顔で、高等品を取り扱い、道具商とはいい …
幕末維新懐古談:57 矮鶏のモデルを探したはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
以前狆のモデルで苦労した経験がありますから、今度はチャボのモデルは好い上にも好いのを選みたいというのが私の最初の考えであった。 しかし、矮鶏は狆と違ってその穿鑿も楽であろうと思った …
読書目安時間:約5分
以前狆のモデルで苦労した経験がありますから、今度はチャボのモデルは好い上にも好いのを選みたいというのが私の最初の考えであった。 しかし、矮鶏は狆と違ってその穿鑿も楽であろうと思った …
幕末維新懐古談:58 矮鶏の製作に取り掛かったこと(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
かれこれ批評を聞いたり、姿形を研究したりしている間に、一月余りも経ってしまいましたので、いよいよ取り掛かることにしました。 材は桜です。その時分はまだ桜の材で上等のものが沢山あった …
読書目安時間:約4分
かれこれ批評を聞いたり、姿形を研究したりしている間に、一月余りも経ってしまいましたので、いよいよ取り掛かることにしました。 材は桜です。その時分はまだ桜の材で上等のものが沢山あった …
幕末維新懐古談:59 矮鶏の作が計らず展覧会に出品されたいきさつ(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
それから、三月一杯掛かって、四月早々仕上げを終る……その前後にまた一つお話しをして置くことが出て来る…… 美術協会の展覧会は、毎年四月に開かれることになっている。ちょうど私の製作を …
読書目安時間:約6分
それから、三月一杯掛かって、四月早々仕上げを終る……その前後にまた一つお話しをして置くことが出て来る…… 美術協会の展覧会は、毎年四月に開かれることになっている。ちょうど私の製作を …
幕末維新懐古談:60 聖上行幸当日のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
さて、当日になりました。 午前中に準備に取り掛かる。 濤川惣助氏の無線七宝の花瓶というのは、高サ二尺、胴の差し渡し一尺位で金属の肌の上に卵色の無線の七宝が施されたもので、形は壺形を …
読書目安時間:約3分
さて、当日になりました。 午前中に準備に取り掛かる。 濤川惣助氏の無線七宝の花瓶というのは、高サ二尺、胴の差し渡し一尺位で金属の肌の上に卵色の無線の七宝が施されたもので、形は壺形を …
幕末維新懐古談:61 叡覧後の矮鶏のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
さて、展覧会もやがて閉会に近づいた頃、旅先から若井兼三郎氏が帰って来た。 いうまでもなく矮鶏の一件のことは直ぐ同氏の耳に入った。早速、同氏は会場へやって来られた。私はどうも直ぐに若 …
読書目安時間:約3分
さて、展覧会もやがて閉会に近づいた頃、旅先から若井兼三郎氏が帰って来た。 いうまでもなく矮鶏の一件のことは直ぐ同氏の耳に入った。早速、同氏は会場へやって来られた。私はどうも直ぐに若 …
幕末維新懐古談:62 佐竹の原繁昌のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
下谷西町で相変らずコツコツと自分の仕事を専念にやっている中に、妙なことで計らず少し突飛な思い附きで余計な仕事を遊び半分にしたことがあります。これも私の思い出の一つとして記憶にあるこ …
読書目安時間:約3分
下谷西町で相変らずコツコツと自分の仕事を専念にやっている中に、妙なことで計らず少し突飛な思い附きで余計な仕事を遊び半分にしたことがあります。これも私の思い出の一つとして記憶にあるこ …
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
私の友達に高橋定次郎氏という人がありました。この人は前にも話しました通り高橋鳳雲の息子さんで、その頃は鉄筆で筒を刻って職業としていました。上野広小路の山崎(油屋)の横を湯島の男坂の …
読書目安時間:約16分
私の友達に高橋定次郎氏という人がありました。この人は前にも話しました通り高橋鳳雲の息子さんで、その頃は鉄筆で筒を刻って職業としていました。上野広小路の山崎(油屋)の横を湯島の男坂の …
幕末維新懐古談:64 大仏の末路のあわれなはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
佐竹の原に途方もない大きな大仏が出来て、切舞台で閻魔の踊りがあるという評判で、見物人が来て見ると、果して雲を突くような大仏が立っている。客はまず好奇心を唆られてぞろぞろ這入る。—— …
読書目安時間:約6分
佐竹の原に途方もない大きな大仏が出来て、切舞台で閻魔の踊りがあるという評判で、見物人が来て見ると、果して雲を突くような大仏が立っている。客はまず好奇心を唆られてぞろぞろ這入る。—— …
幕末維新懐古談:65 学校へ奉職した前後のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
これから話の順序が学校へ奉職った時分のことにちょうどなって参ります。今日はそのはなしを致しましょう。……ところが随分迂闊なことでありますが、私は自分の拝命する学校を知らなかったとい …
読書目安時間:約13分
これから話の順序が学校へ奉職った時分のことにちょうどなって参ります。今日はそのはなしを致しましょう。……ところが随分迂闊なことでありますが、私は自分の拝命する学校を知らなかったとい …
幕末維新懐古談:66 奈良見物に行ったことのはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
三月十二日にお雇いを拝命すると、間もなく、岡倉幹事は私に奈良見物をして来てくれということでした。岡倉氏という人はいろいろ深く考えていた人であって、私がまだ今日まで奈良を見たことがな …
読書目安時間:約4分
三月十二日にお雇いを拝命すると、間もなく、岡倉幹事は私に奈良見物をして来てくれということでした。岡倉氏という人はいろいろ深く考えていた人であって、私がまだ今日まで奈良を見たことがな …
幕末維新懐古談:67 帝室技芸員の事(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
美術学校の教授を拝命したのが三月十二日、奈良京都への出張が同月十九日、拝命早々七日ばかりで旅に出まして、旅から帰ると学校の人となり、私の今日までの私生涯がここで一転化することになっ …
読書目安時間:約8分
美術学校の教授を拝命したのが三月十二日、奈良京都への出張が同月十九日、拝命早々七日ばかりで旅に出まして、旅から帰ると学校の人となり、私の今日までの私生涯がここで一転化することになっ …
幕末維新懐古談:68 楠公銅像の事(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
宮城前なる馬場先門の楠公銅像についてお話しましょう。 この銅像のことについては世間でまちまちの噂があります。 この楠公像は高村光雲が作ったのだといい、また岡崎雪声氏が作ったのだとも …
読書目安時間:約7分
宮城前なる馬場先門の楠公銅像についてお話しましょう。 この銅像のことについては世間でまちまちの噂があります。 この楠公像は高村光雲が作ったのだといい、また岡崎雪声氏が作ったのだとも …
幕末維新懐古談:69 馬専門の彫刻家のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
そこで、彫刻製作となるのですが、岡倉校長は、主任は高村光雲に命ずるということであり、それから山田鬼斎先生を担任とすることになった。すると、ここで一つ主任としての私に問題が起って来た …
読書目安時間:約10分
そこで、彫刻製作となるのですが、岡倉校長は、主任は高村光雲に命ずるということであり、それから山田鬼斎先生を担任とすることになった。すると、ここで一つ主任としての私に問題が起って来た …
幕末維新懐古談:70 木彫の楠公を天覧に供えたはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
原型の楠公像はすべて檜材を用い、原型全部出来ましたので、明治二十六年三月十六日に学校庭内に組み立て、時の文部大臣並びに学校に関係ある諸氏の一覧に供したのであるが、住友家から学校へ製 …
読書目安時間:約6分
原型の楠公像はすべて檜材を用い、原型全部出来ましたので、明治二十六年三月十六日に学校庭内に組み立て、時の文部大臣並びに学校に関係ある諸氏の一覧に供したのであるが、住友家から学校へ製 …
幕末維新懐古談:71 その他のことなど(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
さて、楠公像は、この原型を同じ美術学校の鋳金科教授岡崎雪声氏が鋳造致して住友家へ引き渡したことでありました。木型はその後大阪の博覧場というのに飾ってありましたが、今日は何処にあるこ …
読書目安時間:約2分
さて、楠公像は、この原型を同じ美術学校の鋳金科教授岡崎雪声氏が鋳造致して住友家へ引き渡したことでありました。木型はその後大阪の博覧場というのに飾ってありましたが、今日は何処にあるこ …
幕末維新懐古談:72 総領の娘を亡くした頃のはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
学校奉職時代の前に少し遡り、話し残したことを補充して置きたいと思います。 学校へ入りましたのは仲御徒町一丁目に住まっていた時のことで、毎日通勤するようになってから、住居はなるべく学 …
読書目安時間:約7分
学校奉職時代の前に少し遡り、話し残したことを補充して置きたいと思います。 学校へ入りましたのは仲御徒町一丁目に住まっていた時のことで、毎日通勤するようになってから、住居はなるべく学 …
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
総領娘を亡くしたことはいかにも残念であったが、くよくよしている場合でもなく、一方には学校という勤めがあるので取りまぎれていました。 すこし話が前後へ転じますが、その年の春、農商務省 …
読書目安時間:約15分
総領娘を亡くしたことはいかにも残念であったが、くよくよしている場合でもなく、一方には学校という勤めがあるので取りまぎれていました。 すこし話が前後へ転じますが、その年の春、農商務省 …
幕末維新懐古談:74 初めて家持ちとなったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
ここでまた話が八重になりますが、……その頃馬喰町の小町水の本舗の主人に平尾賛平氏という人がありました。 今日の平尾家はその頃よりも一層盛大で、今の当主は二代であるが、先代の賛平氏時 …
読書目安時間:約9分
ここでまた話が八重になりますが、……その頃馬喰町の小町水の本舗の主人に平尾賛平氏という人がありました。 今日の平尾家はその頃よりも一層盛大で、今の当主は二代であるが、先代の賛平氏時 …
幕末維新懐古談:75 不動の像が縁になったはなし(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
そこでまた話がいろいろ転々しますが、平尾賛平氏が、どうしてこうも私のために厚い同情を注いで下すったかということについては、今までお話をしたばかりでは少し腑に落ちかねましょうが、これ …
読書目安時間:約7分
そこでまた話がいろいろ転々しますが、平尾賛平氏が、どうしてこうも私のために厚い同情を注いで下すったかということについては、今までお話をしたばかりでは少し腑に落ちかねましょうが、これ …
幕末維新懐古談:76 門人を置いたことについて(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
今日までの話にはまだ門人の事について話が及んでおりませんから、今日はそれを話しましょう。実は、私が弟子を置いたということは偶然のことではないのです。これには少し理由のあることで…… …
読書目安時間:約4分
今日までの話にはまだ門人の事について話が及んでおりませんから、今日はそれを話しましょう。実は、私が弟子を置いたということは偶然のことではないのです。これには少し理由のあることで…… …
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
その当時、私の友達で京橋桶町に萩原吉兵衛という人がありました。家職は道具商ですが、その頃は横浜貿易の盛んになった時ですから、「焼しめ」という浜行きの一種の焼き物をこしらえて商売とし …
読書目安時間:約7分
その当時、私の友達で京橋桶町に萩原吉兵衛という人がありました。家職は道具商ですが、その頃は横浜貿易の盛んになった時ですから、「焼しめ」という浜行きの一種の焼き物をこしらえて商売とし …
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
さて、谷中(茶屋町)時代になって俄に弟子が殖えました。 これは私がもはや浪人しておらんからで、東京美術学校へ奉職して、どうやら米櫃には心配がなくなったからであります。そこで私はこの …
読書目安時間:約17分
さて、谷中(茶屋町)時代になって俄に弟子が殖えました。 これは私がもはや浪人しておらんからで、東京美術学校へ奉職して、どうやら米櫃には心配がなくなったからであります。そこで私はこの …
幕末維新懐古談:79 その後の弟子の事(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
ここで、少し断わって置かねばならぬことは、こういう門弟たちのことは別段興味のある話しというではなく、また事実としても、いわば私事になって、特に何かの参考となることでもありませんから …
読書目安時間:約15分
ここで、少し断わって置かねばならぬことは、こういう門弟たちのことは別段興味のある話しというではなく、また事実としても、いわば私事になって、特に何かの参考となることでもありませんから …
“高村光雲”について
高村 光雲(たかむら こううん、1852年3月8日(嘉永5年2月18日) - 1934年(昭和9年)10月10日)は、日本の仏師、彫刻家。位階は従三位。幼名は光蔵。詩人・彫刻家の高村光太郎は長男、鋳金家の高村豊周は三男。写真家の高村規(ただし)は孫(豊周の息子)。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“高村光雲”と年代が近い著者
1849年生まれ|エレン・ケイ
1850年生まれ|ギ・ド・モーパッサン
1851年生まれ|荻野吟子
1852年生まれ|小野梓
1853年生まれ|フィンセント・ファン・ゴッホ
1854年生まれ|オスカー・ワイルド
1855年生まれ|穂積陳重
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)