“退”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
30.4%
22.9%
さが9.6%
しりぞ9.2%
8.5%
すさ5.6%
4.0%
しさ2.4%
しざ1.0%
0.8%
(他:81)5.6%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
“退”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語33.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)5.0%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆2.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
320x100
薄赤くなった継子は急にいもとの方へかかって行った。百合子は頓興とんきょうな声を出してすぐそこを退いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その立廻りですもの。あかりが危いからわき退いて、私はそのたびに洋燈ランプおさえ圧えしたんですがね。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それで、纏のばれんは焼けても、消し口を取ると見込みをつけた以上、一寸も其所をば退かぬといって大層見得なものであった。
「卑怯といったな、恥を知れといったな。武蔵はまだ、降伏したとはいっていないぞ、退いたのは、逃げたのではない。兵法だ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大炊介は、文殻ふみがらを返していただくと、ふかくそれを懐中ふところに秘して、また倉皇そうこう退さがって行った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同が思わずワアと声を揚げてあと退さがったすきに吾輩は、そこに積上げて在るトランクを小楯に取って身構えた。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
余は再び唯々として、木瓜の中に退しりぞいて、帽子をかぶり、絵の道具をまとめて、那美さんといっしょにあるき出す。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「昔武王は、ちゅうを討って、初めに歌い、後に舞ったという。武王の兵は、仁義の兵でなかったか。ばか者っ、退しりぞけ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
退きやあがれ、この忌々しいきちがひどもめ!」と、村長は体を振りほどきざま、若者たちに足蹴を喰らはせながら怒鳴つた。
商会の後ろにはこのために往来止めを喰った数十台の高級自動車が、口頭と警笛をもって、「退け、退け」としきりに催促する。
と寄ると、英吉は一足引く。微笑ほほえみながらり寄るたびに、たじたじと退すさって、やがて次の間へ、もそりと出る。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蔵人は咄嗟とっさかわして、横なぐれに退すさったが、脚を揃えて、背中を持上げるとはたとばばつっかけた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主客の間には、幾たびか茶がつぎ代えられ、そのたび大助の嫁らしい女性が見えて、何くれとはなく気をくばって退がってゆく。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光秀は駒を退げた。代って、一族の明智光忠が、四方田しほうでん政孝や妻木主計かずえの宿将を左右に引いて前へすすみ、
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ムク犬は後ろへ退しさってその槍の鉾先ほこさきを避けました。勢い込んだ神尾主膳は、のがさじとそれを突っかけます。
しかし、彼の力は足らず、集会室ホールの明かり窓によろめき退しさって来て、そこに彼はあえぎ疲れてりかかってしまった。
ひとりいふ、クリストの受難の時は、月退しざりて中間なかへだてしため、日の光地に達せざりきと 九七―九九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
村田が立って行くと、お清は四、五歩退しざって、戸の外に出て来た村田の横をつとすりぬけ、室の中にはいり込んで、がたりと扉を閉めた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いらざるおせッかいといわぬばかりに、愍笑びんしょうをくれたので、新田の老臣は、顔あからめて、あの時は退ッこみおった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時、全身白毛を冠った年寄りらしい狼が天に向かって吠えたかと思うとそれを合図に狼の群は一度に背後うしろへ飛び退さった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕もその席に侍りて、先のほどまで酒みしが、独り早く退まかいでつ、その帰途かえるさにかかる状態ありさま
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
西八條殿にしはちでうでんゆらぐ計りの喝采を跡にして、維盛・重景の退まかり出でし後に一個の少女をとめこそ顯はれたれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
みずから進んで母に旅費を用立ようだった女婿むすめむこは、一歩退しりぞかなければならなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
学問は社会へ出るための方便と心得ていたから、社会を一歩退しりぞかなくっては達する事のできない、学者という地位には、余り多くの興味をっていなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
カテリーナの父親が打ち込むと見るや、ダニーロは身をかはし、ダニーロが攻勢に出るや、形相すさまじい舅は後退ずさりをして、再び互格に返る。
と高らかに笑い出しました。その気味悪さ。恐ろしさ。周囲まわりの兵士は思わずやり手許てもとに控えて、タジタジとあと退ずさりをしました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
と伯爵の眼がキラリと嬢の上に光った、と見た途端、さっきからソロリソロリと身体を退らしていた右手が、柱の呼鈴に触れた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
お八重は背後うしろへ体を退らせたが、しかしその瞬間去年の秋の、観楓の酒宴での出来事を、幻のように思い出した。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
上昇し早やはねかろしあをあをと退しぞき流るる筑紫国原
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
引き引きにひず退しぞき、
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とおもふはなどいふ調子ちようしは、いかにもくらしかねてゐる退たいくつなひとのあくびでもしたいような氣持きもちがてゐるとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
けれどもこの作者さくしや中心ちゆうしんとしてんでゐるのは、そんなところでなく、何事なにごともないごく退たいくつな生活せいかつをしてゐるひと
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
再挙三拳ついにらざれば退しりぞいて江戸城を守り、たとい一日にても家の運命を長くしてなお万一を僥倖ぎょうこう
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
むし退しりぞいて新しき王国のいしずゑを据ゑませう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ここに大后、その玉釧を見知りたまひて、御酒の栢を賜はずて、すなはち引き退けて、その夫大楯の連を召し出でて、詔りたまはく
一三 雲が離れるように退いていても。「大和べに風吹きあげて雲ばなれ退き居りともよ吾を忘らすな」(丹後國風土記、浦島の物語の神女)
だが、タチマチ違つた氏の語部なるが故に、追ひ退けられたのであつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
だが、忽違つた氏の語部なるが故に、追ひ退けられたのであつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
「ちつとおめえ退しやつてくんねえか」といひながら人々ひと/″\あひだ足探あしさぐりにあるいて巫女くちよせばあさんのまへいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
圓「これ青や、どうしたゞ、これあと退しやるか足でもどうか成ってるか、痛む気遣きづけえはねえが、多助の母様かゝさまやかましい人だから早く往ってやれ、青どうした、われ塩梅あんべいでも悪いか」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
甚兵衛の太刀先を相手が避けて、飛び退すざったはずみに、二人の位置が東西になったと思うと、敵の十字架に、折柄入りかかる夕日がきらめいた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
心臓に照準をつけたまま、次第次第に身を退すざらせてくる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
為さんは小机の前にいざり寄って、線香を立て、りんを鳴らして殊勝らしげに拝んだが、座を退すべると、「お寂しゅうがしょうね?」と同じことを言う。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
『奧さん、うぞお願ひ致します。』と、あとをお光にまかして座敷を退すべり出た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それから里朝りちょうの曲弾も首尾よく相済んだ跡は、お定まりの大小芸妓の受持となって、杯酒しおわかすと昔は大束に言って退のけたが、まこと逆上返のぼせあがる賑いで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
其者こそ文字は右の手で書くか左の手で書くかもしらぬ馬鹿ものと云わねばなりますまい、夫ほどの馬鹿ものが世に有ましょうか、老人の左の手へ血を附けて置けば誰も老人が自分で書いたとは思いません、曲者の目的は外れます、藻西太郎へ疑いを掛けようとしてかえって彼の疑いを掃い退のける様な者です
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ところ今歳ことしの五月です、僕は何時いつもよりか二時間も早く事務所を退ひいて家へ帰りますと、そのは曇って居たので家の中は薄暗いうちにも母のへやことに暗いのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
無言で一日暮すこともあり、自分の性質の特色ともいうべき温和な人なつこいところはほとんど消えせ、自分の性質の裏ともいうべき妙にひねくれた片意地のところばかり潮の退ひいあとの岩のように、ごつごつと現われ残ったので、妻が内心驚ろいているのも決して不思議ではない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
失敬しつけいな!』と、一言ひとことさけぶなりドクトルはまどはう退け。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
失敬しっけいな!』と、一言ひとことさけぶなりドクトルはまどほう退け。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
為ニ、御辺ガ主家ニ得タル罪ト同坐シテ、我モ一旦、敢テ不忠ノ名ヲカウムリ、此一城ヲ御辺ニ預ケ、敗者ノハヂヲ忍ンデ伊勢ニ退ク。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だがさうした概念を述べた替りに、情熱はさつと退いて行つてしまつて居る。
橘曙覧評伝 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ほん気な意地でも鞘当さやあてでもないが、ほん気にも躍起やっきにもなって困る者を困らせるのが遊びである。光広もなかなかかないし、紹由も決して退かない。そして吉野を両方の義理に挟んで、
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
潮の退おちた時は沼とも思はるゝ入江が高潮たかしほと月の光とでまるで樣子が變り、僕には平時いつも見慣れた泥臭い入江のやうな氣がしなかつた。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そうしてもしや一ツでもいいから助かりそうな死骸は無いかと、やみの中に散らばっている死骸を一ツ一ツにあらためながら、奥の方へ来るうちに、不図青眼先生は屋敷の真中あたりで、切れるように冷たい者を探り当てて、ヒヤリとしながら手を退めました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
旅の侍はこれを聞くと、パッと二、三歩飛び退ざって、刀のつかへ手を掛けた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右門は思わず飛び退さった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)