“退”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
29.9%
22.4%
さが9.4%
9.4%
しりぞ9.1%
すさ5.5%
4.0%
しさ2.6%
しざ0.9%
しり0.6%
0.6%
まか0.6%
0.5%
ずさ0.4%
たい0.3%
しぞ0.3%
0.2%
しりぞい0.2%
のけ0.2%
もど0.2%
0.2%
のき0.1%
しや0.1%
すざ0.1%
すべ0.1%
ずら0.1%
0.1%
のい0.1%
のぞ0.1%
ひい0.1%
ひけ0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
マカ0.1%
0.1%
おち0.1%
0.1%
じさ0.1%
じろ0.1%
0.1%
どく0.1%
どど0.1%
のが0.1%
のひ0.1%
ひか0.1%
ひき0.1%
0.1%
まが0.1%
0.1%
0.1%
シリゾ0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
今一人の柄本家の被官ひかん天草平九郎というものは、主の退くちを守って、半弓をもって目にかかる敵を射ていたが、その場で討死した。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「そんなばかげたことが、世の中にあってたまるものか、お前はおれ、武士がひとたび云いだしたからには、あと退くことはならん」
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
密使の僧は、こっそり退さがって行った。——その日、べつの殿中には、信長が、着京の挨拶のため伺候して、義昭の出座を待っていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白雪 ええ、うるさいな、お前たち。義理も仁義も心得て、長生ながいきしたくば勝手におし。……生命いのちのために恋は棄てない。お退き、お退き。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さて、屋根やねうへ千人せんにんいへのまはりの土手どてうへ千人せんにんといふふう手分てわけして、てんからりて人々ひと/″\退しりぞけるはずであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
捧げて來た茶を、平次の前に進めて、少し退すさつてお辭儀をした折屈みは、すつかり御殿風が身について、この娘の非凡さを思はせます。
『——伝右どの、お気持は有難くいただいた。然し、公儀の断罪を待つ私共……身に余りまする。何卒なにとぞ、お火鉢はお退げ置き下さい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金眸は痛さに身をもがきつつ、鷲郎が横腹を引𤔩ひきつかめば、「呀嗟あなや」と叫んで身を翻へし、少し退しさつて洞口のかたへ、行くを続いておっかくれば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
村田が立って行くと、お清は四、五歩退しざって、戸の外に出て来た村田の横をつとすりぬけ、室の中にはいり込んで、がたりと扉を閉めた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しばらく黙然もくねんとして三千代の顔を見てゐるうちに、女のほゝからいろが次第に退しりぞいてつて、普通よりはに付く程蒼白あをしろくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その時、全身白毛を冠った年寄りらしい狼が天に向かって吠えたかと思うとそれを合図に狼の群は一度に背後うしろへ飛び退さった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて退まかり立ちて、ここの御社のはしの下の狛犬も狼の形をなせるを見、酒倉の小さからぬを見などして例のところに帰り、朝食あさげをすます。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その隙である、例の給仕ボーイは影のように身を退らすとまるでつるを放れた矢のようないきおいで地下室の方へ逃げだした。と見た博士が
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
炉ばたにいて火を燃しつけていたお内儀かみさんは棒立ちになり、急にあおざめた。彼女はふるえながらあと退ずさりに奥にかくれた。かわって出て来たのが亭主であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
とおもふはなどいふ調子ちようしは、いかにもくらしかねてゐる退たいくつなひとのあくびでもしたいような氣持きもちがてゐるとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ここにその國主こにきし一二かしこみてまをしてまをさく、「今よ後、天皇おほきみの命のまにまに、御馬甘みまかひとして、年のに船めて船腹さず、柂檝さをかぢ乾さず、天地のむた、退しぞきなく仕へまつらむ」
ここに大后、その玉釧を見知りたまひて、御酒の栢を賜はずて、すなはち引き退けて、その夫大楯の連を召し出でて、詔りたまはく
是れは神の前に耻づべきことです、万国は互にきそうて滅亡に急ぎつゝあるです、私共は彼等を呼び留めますまい、むし退しりぞいて新しき王国のいしずゑを据ゑませう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それから里朝りちょうの曲弾も首尾よく相済んだ跡は、お定まりの大小芸妓の受持となって、杯酒しおわかすと昔は大束に言って退のけたが、まこと逆上返のぼせあがる賑いで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
吐く羊膓やうちやうたる阪路さかみち進むが如くまた退もどるが如し馬をしばしと止めて元し方を顧みれば淺間の山はすでに下に見られて其身は白雲の上にあり昨日きのふ此山を見て一睨みして置きしが今日は昨日宿りし處を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
當麻語部タギマノカタリベの嫗なども、都の上﨟ジヤウラウの、もの疑ひせぬ清い心に、知る限りの事を語りかけようとした。だが、忽違つた氏の語部なるが故に、追ひ退けられたのであつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
女兒むすめやさしき介抱にこゝろゆるみし武左衞門まくらつきてすや/\と眠りし容子にお光は長息といき夜具打掛てそつ退のきかたへに在し硯箱を出して墨を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ちつとおめえ退しやつてくんねえか」といひながら人々ひと/″\あひだ足探あしさぐりにあるいて巫女くちよせばあさんのまへいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
甚兵衛の太刀先を相手が避けて、飛び退すざったはずみに、二人の位置が東西になったと思うと、敵の十字架に、折柄入りかかる夕日がきらめいた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
為さんは小机の前にいざり寄って、線香を立て、りんを鳴らして殊勝らしげに拝んだが、座を退すべると、「お寂しゅうがしょうね?」と同じことを言う。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
友「もうねえ、余所よそのねえ、知らない船宿から乗って上ろうとして船を退ずらかしたものだから川の中へおっこって、ビショ濡れでようやく此の桟橋から上りました」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鴉のこゑ遠退きゆけば雀のこゑ連れつつ明る雨霧の中 (二一三頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
資本もとでに初めし醫者家業いしやかげふ傷寒論しやうかんろんよめねどもなりとて衣服いふくおどかし馬鹿にて付る藥までした三寸の匙加減さじかげんでやつて退のいたる御醫者樣もう成ては長棒ながぼうかごよりいのち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴女はあらゆる望みを胸中より退のぞいて、終生の願いを安心立命しなければいけない。それこそ貴女が天から受けた本質なのだから
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ところ今歳ことしの五月です、僕は何時いつもよりか二時間も早く事務所を退ひいて家へ帰りますと、そのは曇って居たので家の中は薄暗いうちにも母のへやことに暗いのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
其の内にお退ひけの時計が鳴りますと、直ぐ印形の紐を引きますから、捺しかけてもあとは次のお月番へ廻さなければなりませぬ。それが為に命の助かったためしもございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
失敬しつけいな!』と、一言ひとことさけぶなりドクトルはまどはう退け。『全體ぜんたい貴方々あなたがた這麼失敬こんなしつけいことつてゐて、自分じぶんではかんのですか。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
為ニ、御辺ガ主家ニ得タル罪ト同坐シテ、我モ一旦、敢テ不忠ノ名ヲカウムリ、此一城ヲ御辺ニ預ケ、敗者ノハヂヲ忍ンデ伊勢ニ退ク。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅の侍はこれを聞くと、パッと二、三歩飛び退ざって、刀のつかへ手を掛けた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これらののっ退きならぬ生き証人を見せて、伯爵に穏やかな国外退去を勧めるべく、一行が伯爵邸を急襲したのは、それから何時間くらい過ぎた頃であろうか。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
父君に我は愛子マナゴぞ。母刀自トジに我は寵子メヅコぞ。参上マヰノボる八十氏人の 手向タムけするカシコサカに、ヌサマツり、我はぞ退マカる。遠き土佐路を
相聞の発達 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ほん気な意地でも鞘当さやあてでもないが、ほん気にも躍起やっきにもなって困る者を困らせるのが遊びである。光広もなかなかかないし、紹由も決して退かない。そして吉野を両方の義理に挟んで
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
潮の退おちた時は沼とも思はるゝ入江が高潮たかしほと月の光とでまるで樣子が變り、僕には平時いつも見慣れた泥臭い入江のやうな氣がしなかつた。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
やみの中に散らばっている死骸を一ツ一ツにあらためながら、奥の方へ来るうちに、不図青眼先生は屋敷の真中あたりで、切れるように冷たい者を探り当てて、ヒヤリとしながら手を退めました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
若旦那わかだんな勃然ぼつぜんとしておこるまいか。あと退じさりに跳返はねかへつた、中戸口なかどぐちから、眞暗まつくらつて躍込をどりこんだが、部屋へやそとふるへるくぎごとくに突立つツたつて、こぶしにぎりながら
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは殆んど投げつけるような調子であったが、良助は別に驚きもせず、身退じろぎもしなかった。彼はただじっと田原さんの側に立ちつくした。
田原氏の犯罪 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
竹「はい、私は大きに熱が退れましたかして少し落着きました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かすかつてつたのは、お産婦さんぷから引離ひきはなして、嬰兒あかんぼれて退どくらしい。……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「邪魔すんな、退け、退どどけ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
さけのすばしりは雪前ゆきまへ河原かはらなどにある事也。かれあみにせめられ人にもはれなどして、水を飛離とびはなれて河原にのぼり、あみある所をこえて水にとび入りてあみを退のがるゝ也。
して呉れろと云棄いひすて追駈おつかけく此掃部と云ふ者はもとより武邊ぶへんの達者殊に早足なれば一目散に追行おひゆく所に重四郎は一里餘りも退のひたりしがうしろより駈來かけくる人音ひとおと有り定めて子分の奴等が來る成らんと深江村ふかえむらの入口に千手院せんじゆゐんと云ふ小寺有り住持ぢうぢは六十餘歳の老僧にて佛前に於て讀經つとめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
実家うちへも帰られないので此様な汚ない空家を借りて世帯しょたいを持たして、爺むさいたッてお前さん茅葺かやぶき屋根から虫が落ちるだろうじゃアないか、本当に私を退ひかしたって亭主振って、小憎らしいのだよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
吾助は猶も追廻おひまはり進んでは退き退ひきては進み暫時しばし勝負は見ざりしに忠八は先刻せんこくよりこぶしにぎりてひかりしが今吾助が眼の前へ來りし時あしのばしかれが向ふずねすくひしかば流石さすがの吾助も不意を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「旦那」と小声に下婢の呼ぶに、大洞はばしとばかり退かり出でぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
させるがよきゆゑ箇樣々々かやう/\結納ゆひなふつくり明日遞與わたし變改へんがいなき樣致してと云れて忠兵衞こゝろ主個あるじが前を退まがると其まゝ長三郎が部屋へき先方がこと兩親りやうしんがこと萬事上首尾じやうしゆびなるよしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「何やってんだ、一体——。別に学校を退めるほどの事情もなさそうだったが、働かなきゃならんほどの」
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
次は床退りをした女、即、或年齢に達すると、女は夫を去つて、処女生活に入る信仰があつたが、さういふ様な女(三)。此床退りの女は、其以後の生活は、神に仕へるのである。
大嘗祭の本義 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
一、会館ハ辰半タツハンイリ未刻ヒツジノコク退シリゾベシ
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其にとこと音通した退く・ソコなどの聯想もあつたものらしく、地下或は海底の「死の国」と考へられて居た。「夜見の国」とも称へる。