退ずさ)” の例文
炉ばたにいて火を燃しつけていたお内儀かみさんは棒立ちになり、急にあおざめた。彼女はふるえながらあと退ずさりに奥にかくれた。かわって出て来たのが亭主であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
一分もつたかと思ふと、また女の影が映つて、それが小さくなつたと見ると、ガタリと窓が鳴つた。と、男は強い彈機ばねに彈かれた樣に、五六歩窓際を飛び退ずさつた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
カテリーナの父親が打ち込むと見るや、ダニーロは身をかはし、ダニーロが攻勢に出るや、形相すさまじい舅は後退ずさりをして、再び互格に返る。双方とも苛立つて来る。
青眼先生は思わずタジタジとあと退ずさりをしました。そうして二ツの死骸をじっと見入りました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ふらふらとあと退ずさりに退すさるのを夢中で引捉ひっとらえようとしました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その連中はぢりぢりとあと退ずさりして出て行きました。
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
周囲まわりの兵士は思わずやり手許てもとに控えて、タジタジとあと退ずさりをしました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
起き上りながらあと退ずさりをした。娘が小格子から顔を出した。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)