折口信夫
1887.02.11 〜 1953.09.03
“折口信夫”に特徴的な語句
御館
奴隷
漢土
激
女部屋
南家
氏人
男嶽
畏
廬
姥
石城
氏上
婢女
帷帳
横佩墻内
帥
築土垣
岩窟
績
兄公殿
習
若人
垣内
枚岡
墻内
壁代
暴
夕
貴人
資人
人
二上
乳母
長老
長老
文
大師
降
御
天
上帛
骸
天若日子
鬼神
廬堂
相
丹比
磐余
世
著者としての作品一覧
愛護若(新字旧仮名)
読書目安時間:約30分
若の字、又稚とも書く。此伝説は、五説経の一つ(この浄瑠璃を入れぬ数へ方もある)として喧伝せられてから、義太夫・脚本・読本の類に取り込まれた為に、名高くなつたものであらうが、あまりに …
読書目安時間:約30分
若の字、又稚とも書く。此伝説は、五説経の一つ(この浄瑠璃を入れぬ数へ方もある)として喧伝せられてから、義太夫・脚本・読本の類に取り込まれた為に、名高くなつたものであらうが、あまりに …
新しい国語教育の方角(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
私くらゐの若い身で、こんな事を申すのは、大層口はゞつたい様で、気恥しくもなるのですが、記者の方の設問が、私の考へ癖に這入つて来ましたので、遠慮ないところを申しあげます。 私などがま …
読書目安時間:約10分
私くらゐの若い身で、こんな事を申すのは、大層口はゞつたい様で、気恥しくもなるのですが、記者の方の設問が、私の考へ癖に這入つて来ましたので、遠慮ないところを申しあげます。 私などがま …
石の信仰とさえの神と(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
道祖神の話は、どうしても石の信仰の解決をつけておかぬと、その本当の姿はわからぬ。柳田先生の『石神問答』は、道祖神を中心にしての研究であったが、そのために、いろいろな石の神体のことを …
読書目安時間:約15分
道祖神の話は、どうしても石の信仰の解決をつけておかぬと、その本当の姿はわからぬ。柳田先生の『石神問答』は、道祖神を中心にしての研究であったが、そのために、いろいろな石の神体のことを …
市村羽左衛門論(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間5分
市村羽左衛門の芸の質についての研究が、此頃やつと初まつたやうである。何にしても、此は嬉しいことだ。歌舞妓芝居のある一つの傾向は、これで追求せられて、その意義がわかつて来るだらうと思 …
読書目安時間:約1時間5分
市村羽左衛門の芸の質についての研究が、此頃やつと初まつたやうである。何にしても、此は嬉しいことだ。歌舞妓芝居のある一つの傾向は、これで追求せられて、その意義がわかつて来るだらうと思 …
稲むらの蔭にて(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
河内瓢箪山へ辻占問ひに往く人は、堤の下や稲むらの蔭に潜んで、道行く人の言ひ棄てる言草に籠る、百千の言霊を読まうとする。人を待ち構へ、遣り過し、或は立ち聴くに恰好な、木立ちや土手の無 …
読書目安時間:約8分
河内瓢箪山へ辻占問ひに往く人は、堤の下や稲むらの蔭に潜んで、道行く人の言ひ棄てる言草に籠る、百千の言霊を読まうとする。人を待ち構へ、遣り過し、或は立ち聴くに恰好な、木立ちや土手の無 …
歌の円寂する時(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
われさへや竟に来ざらむ。とし月のいやさかりゆくおくつきどころ ことしは寂しい春であった。目のせいか、桜の花が殊に潤んで見えた。ひき続いては出遅れた若葉が長い事かじけ色をしていた。畏 …
読書目安時間:約28分
われさへや竟に来ざらむ。とし月のいやさかりゆくおくつきどころ ことしは寂しい春であった。目のせいか、桜の花が殊に潤んで見えた。ひき続いては出遅れた若葉が長い事かじけ色をしていた。畏 …
歌の話(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間10分
この度、高濱虚子さん・柳田國男先生と御一しょに、この一部の書物を作ることになりました。その高濱さんの御領分の俳句と同樣に、短歌といふものは、ほんとうに、日本國民自身が生み出したもの …
読書目安時間:約1時間10分
この度、高濱虚子さん・柳田國男先生と御一しょに、この一部の書物を作ることになりました。その高濱さんの御領分の俳句と同樣に、短歌といふものは、ほんとうに、日本國民自身が生み出したもの …
江戸歌舞妓の外輪に沿うて(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
私は、発生的の見地から日本文学展開の道筋を辿つて居る。さうしてその始まりに於いて、演劇・舞踏・音楽などと共に、宗教衝動から捲き起つて居る事を見た。音楽や舞踊は、外来の理論や、様式を …
読書目安時間:約15分
私は、発生的の見地から日本文学展開の道筋を辿つて居る。さうしてその始まりに於いて、演劇・舞踏・音楽などと共に、宗教衝動から捲き起つて居る事を見た。音楽や舞踊は、外来の理論や、様式を …
『絵はがき』評(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
堀辰雄氏の創作集が七冊本になつて、叢刊せられる。最初に出たのが、この『絵はがき』である。堀氏は、日本の新旧生活様式に対して、まるで異郷人がする様に、えきぞちつくな目を瞠つてゐる。そ …
読書目安時間:約1分
堀辰雄氏の創作集が七冊本になつて、叢刊せられる。最初に出たのが、この『絵はがき』である。堀氏は、日本の新旧生活様式に対して、まるで異郷人がする様に、えきぞちつくな目を瞠つてゐる。そ …
延若礼讃(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
うらゝかな春の入日、ちり/″\に地面も空もまつ白に、過ぎ行く花の幻影——その中に、かつきりと立つた延若の五右衛門——。私はその頭・背から輝き出る毫光を感じました。「国くづし」の立敵 …
読書目安時間:約1分
うらゝかな春の入日、ちり/″\に地面も空もまつ白に、過ぎ行く花の幻影——その中に、かつきりと立つた延若の五右衛門——。私はその頭・背から輝き出る毫光を感じました。「国くづし」の立敵 …
お岩と与茂七(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私などは、上方興行に出る「いろは仮名四谷怪談」風な演出になじんで来たのだから、多少所謂「東海道四谷怪談」では、気持ちのあはぬ所を感じる。但、いろは仮名の方の台本は見てゐないのだが、 …
読書目安時間:約2分
私などは、上方興行に出る「いろは仮名四谷怪談」風な演出になじんで来たのだから、多少所謂「東海道四谷怪談」では、気持ちのあはぬ所を感じる。但、いろは仮名の方の台本は見てゐないのだが、 …
鸚鵡小町(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
謡曲小町物の一で、卒都婆小町などゝ共に、小町の末路を伝へたものである。小野小町御所を出て、年たけて、関寺辺の柴の庵に、住んでゐた。陽成院小町の容子を聞こしめされて、新大納言行家に、 …
読書目安時間:約5分
謡曲小町物の一で、卒都婆小町などゝ共に、小町の末路を伝へたものである。小野小町御所を出て、年たけて、関寺辺の柴の庵に、住んでゐた。陽成院小町の容子を聞こしめされて、新大納言行家に、 …
翁の発生(新字旧仮名)
読書目安時間:約53分
一おきなと翁舞ひと 翁の発生から、形式方面を主として、其展開を考へて見たいと思ひます。しかし個々の芸道特有の「翁」については、今夜およりあひの知識の補ひを憑む外はないのであります。 …
読書目安時間:約53分
一おきなと翁舞ひと 翁の発生から、形式方面を主として、其展開を考へて見たいと思ひます。しかし個々の芸道特有の「翁」については、今夜およりあひの知識の補ひを憑む外はないのであります。 …
沖縄舞踊に見る三要素(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
沖縄の舞踊は、全体に、今常識的に、まひと称してゐるものと、をどりと称してゐるものとを兼ね備へてゐる。此、まひの要素は、古い、おもろあそび(巫女の鎮舞)の系統に、やまとの舞ひぶりを加 …
読書目安時間:約2分
沖縄の舞踊は、全体に、今常識的に、まひと称してゐるものと、をどりと称してゐるものとを兼ね備へてゐる。此、まひの要素は、古い、おもろあそび(巫女の鎮舞)の系統に、やまとの舞ひぶりを加 …
沖縄を憶ふ(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
秋の日は、沖縄島を憶ふ。静かに燃ゆる道の上の日光。島を廻る、果てもない青海。目の限り遥かな水平線のあたりに、必白く砕ける干瀬——珊瑚礁の波。私は、島の兄弟らが、今どんな新しい経験を …
読書目安時間:約8分
秋の日は、沖縄島を憶ふ。静かに燃ゆる道の上の日光。島を廻る、果てもない青海。目の限り遥かな水平線のあたりに、必白く砕ける干瀬——珊瑚礁の波。私は、島の兄弟らが、今どんな新しい経験を …
小栗外伝:(餓鬼阿弥蘇生譚の二)魂と姿との関係(新字旧仮名)
読書目安時間:約22分
一餓鬼身を解脱すること 餓鬼阿弥蘇生を説くには、前章「餓鬼阿弥蘇生譚」に述べたゞけでは、尚手順が濃やかでない。今一応、三つの点から見て置きたいと考へる。第一、蛇子型の民譚としての見 …
読書目安時間:約22分
一餓鬼身を解脱すること 餓鬼阿弥蘇生を説くには、前章「餓鬼阿弥蘇生譚」に述べたゞけでは、尚手順が濃やかでない。今一応、三つの点から見て置きたいと考へる。第一、蛇子型の民譚としての見 …
小栗判官論の計画:「餓鬼阿弥蘇生譚」終篇(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
神道集の諏訪本地。 信濃念仏。 安曇の蹶抜き伝説。 文字から読んだ時代。 泉小太郎——白水郎。 海中と、山中の深穴と。 おほくにぬし・すさのを・すせり媛の比良坂。 数種の比礼と、四 …
読書目安時間:約15分
神道集の諏訪本地。 信濃念仏。 安曇の蹶抜き伝説。 文字から読んだ時代。 泉小太郎——白水郎。 海中と、山中の深穴と。 おほくにぬし・すさのを・すせり媛の比良坂。 数種の比礼と、四 …
筬の音(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
わが車は、とある村に入りぬ。 軒ごとに吊りほせるかけ菜の、あるかなきかの風にゆらめきて、鶏のこゑ、長閑にきこゆ。 轍におこる塵かろく舞ひ、藪ぎはの緋桃の花、ほろり/\散る。高安の春 …
読書目安時間:約5分
わが車は、とある村に入りぬ。 軒ごとに吊りほせるかけ菜の、あるかなきかの風にゆらめきて、鶏のこゑ、長閑にきこゆ。 轍におこる塵かろく舞ひ、藪ぎはの緋桃の花、ほろり/\散る。高安の春 …
お伽草子の一考察(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
室町時代の末に出来たと思はれる職人歌合せの中、勧進聖訓職人歌合せといふのがあつて「絵解き」の姿が画かれてゐる。琵琶を片手に箱を担ひ、地獄極楽の絵を懸けて、それを地搗きの棒の様なもの …
読書目安時間:約5分
室町時代の末に出来たと思はれる職人歌合せの中、勧進聖訓職人歌合せといふのがあつて「絵解き」の姿が画かれてゐる。琵琶を片手に箱を担ひ、地獄極楽の絵を懸けて、それを地搗きの棒の様なもの …
鬼の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
一おにと神と 「おに」と言ふ語にも、昔から諸説があつて、今は外来語だとするのが最勢力があるが、おには正確に「鬼」でなければならないと言ふ用語例はないのだから、わたしは外来語ではない …
読書目安時間:約11分
一おにと神と 「おに」と言ふ語にも、昔から諸説があつて、今は外来語だとするのが最勢力があるが、おには正確に「鬼」でなければならないと言ふ用語例はないのだから、わたしは外来語ではない …
鬼を追い払う夜(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
「福は内、鬼は外」と言うことを知って居ますか。此は節分の夜、豆を撒いて唱える語なのです。此日、村や町々の家々へ、鬼が入り込もうとするものと信じて居ました。それに対して、豆を打ちつけ …
読書目安時間:約3分
「福は内、鬼は外」と言うことを知って居ますか。此は節分の夜、豆を撒いて唱える語なのです。此日、村や町々の家々へ、鬼が入り込もうとするものと信じて居ました。それに対して、豆を打ちつけ …
折口といふ名字(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
折口といふ名字は、摂津国西成郡木津村の百姓の家の通り名とも、名字ともつかずのびて来た称へである。 木津村は今、大阪市南区(現在更に浪速区)木津となつた。所謂「木津や難波の橋の下」と …
読書目安時間:約10分
折口といふ名字は、摂津国西成郡木津村の百姓の家の通り名とも、名字ともつかずのびて来た称へである。 木津村は今、大阪市南区(現在更に浪速区)木津となつた。所謂「木津や難波の橋の下」と …
街衢の戦死者:――中村魁車を誄す――(新字旧仮名)
読書目安時間:約55分
戦災死と言ふ語は、侘しい語である。積る思ひを遂げることなく過ぎ行く、といふ義が伴ふとすれば、此ほどやる瀬ないことはない。だが、国難に殉じたと言ふ、一部聯想の悲痛なものがあつて、その …
読書目安時間:約55分
戦災死と言ふ語は、侘しい語である。積る思ひを遂げることなく過ぎ行く、といふ義が伴ふとすれば、此ほどやる瀬ないことはない。だが、国難に殉じたと言ふ、一部聯想の悲痛なものがあつて、その …
餓鬼阿弥蘇生譚(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
一餓鬼 世の中は推し移つて、小栗とも、照手とも、耳にすることがなくなつた。子どもの頃は、道頓堀の芝居で、年に二三度は必見かけたのが、小栗物の絵看板であつた。ところの若い衆の祭文と言 …
読書目安時間:約14分
一餓鬼 世の中は推し移つて、小栗とも、照手とも、耳にすることがなくなつた。子どもの頃は、道頓堀の芝居で、年に二三度は必見かけたのが、小栗物の絵看板であつた。ところの若い衆の祭文と言 …
神楽記(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
神楽と言ふ名は、近代では、神事に関した音楽舞踊の類を、漠然とさす語のやうに考へてゐる。さう言ふ広い用語例に当るものとして、神遊びと言ふ語があつたのである。一体日本古代の遊びとか舞ひ …
読書目安時間:約3分
神楽と言ふ名は、近代では、神事に関した音楽舞踊の類を、漠然とさす語のやうに考へてゐる。さう言ふ広い用語例に当るものとして、神遊びと言ふ語があつたのである。一体日本古代の遊びとか舞ひ …
神楽(その一)(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
こんなに立派な本が出来たのですから、私の序文など必要がない訣です。たゞ、著者への親しみが、何か言はせずに措かないのです。 かぐらと言ふ語の解釈は、西角井さんにも出来てゐると思ひます …
読書目安時間:約8分
こんなに立派な本が出来たのですから、私の序文など必要がない訣です。たゞ、著者への親しみが、何か言はせずに措かないのです。 かぐらと言ふ語の解釈は、西角井さんにも出来てゐると思ひます …
神楽(その二)(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
日本の神道に、最重大な意味をもつてゐる呪法の鎮魂法が芸能化した第一歩が神楽だと思ひますから、どうしても、日本の芸能史に於ては此を第一に挙げるべきでせう。その点であんたが此の問題に第 …
読書目安時間:約12分
日本の神道に、最重大な意味をもつてゐる呪法の鎮魂法が芸能化した第一歩が神楽だと思ひますから、どうしても、日本の芸能史に於ては此を第一に挙げるべきでせう。その点であんたが此の問題に第 …
『かげろふの日記』解説(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
堀君一 唐松の遅き芽ぶきの上を 夏時雨はるかに過ぎて—— 黄にけぶる山の入り日 堀君二 冬いまだ寝雪いたらず しづかに澄む水音。 君ねむる。五分十分——。 ほのかなるけはひののちに …
読書目安時間:約10分
堀君一 唐松の遅き芽ぶきの上を 夏時雨はるかに過ぎて—— 黄にけぶる山の入り日 堀君二 冬いまだ寝雪いたらず しづかに澄む水音。 君ねむる。五分十分——。 ほのかなるけはひののちに …
春日若宮御祭の研究(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
春日のおん祭りに関しては、一番参考になるのは「嘉慶元年春日臨時祭記」のやうです。この本は南北合一の頃の記録であるが、元々若宮祭りの記事ではありません。所が、これが臨時祭りの記録であ …
読書目安時間:約16分
春日のおん祭りに関しては、一番参考になるのは「嘉慶元年春日臨時祭記」のやうです。この本は南北合一の頃の記録であるが、元々若宮祭りの記事ではありません。所が、これが臨時祭りの記録であ …
語部と叙事詩と(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
私は、語部の職掌及び、其伝承した叙事詩の存在した事を、十数年以来主張して来た。語部が、対話として散文的に古い説話を記憶して、話し聞かした事だけは、反対する人もなかつたが、その伝承の …
読書目安時間:約7分
私は、語部の職掌及び、其伝承した叙事詩の存在した事を、十数年以来主張して来た。語部が、対話として散文的に古い説話を記憶して、話し聞かした事だけは、反対する人もなかつたが、その伝承の …
戞々たり 車上の優人(新字旧仮名)
読書目安時間:約30分
まことに、人間の遭遇ほど、味なものはない。先代片岡仁左衛門を思ふ毎に、その感を深くする。淡々しい記憶が、年を経て愈濃やかにして快く、更に何か、清い悲しみに似たものを、まじへて来るや …
読書目安時間:約30分
まことに、人間の遭遇ほど、味なものはない。先代片岡仁左衛門を思ふ毎に、その感を深くする。淡々しい記憶が、年を経て愈濃やかにして快く、更に何か、清い悲しみに似たものを、まじへて来るや …
河童の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約31分
私はふた夏、壱岐の国へ渡つた。さうして此島が、凡北九州一円の河童伝説の吹きだまりになつてゐた事を知つた。尚考へて見ると、仄かながら水の神信仰の古い姿が、生きてこの島びとの上にはたら …
読書目安時間:約31分
私はふた夏、壱岐の国へ渡つた。さうして此島が、凡北九州一円の河童伝説の吹きだまりになつてゐた事を知つた。尚考へて見ると、仄かながら水の神信仰の古い姿が、生きてこの島びとの上にはたら …
合邦と新三(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
昼の部四時間夜興行四時間半、其に狂言が三つ宛。刈りこんでは居ても、みのある見物は出来る筈である。其に関らず進度の早い感じのしたのは、如何にも貴重な時間だつたと、あの感謝したくなる、 …
読書目安時間:約7分
昼の部四時間夜興行四時間半、其に狂言が三つ宛。刈りこんでは居ても、みのある見物は出来る筈である。其に関らず進度の早い感じのしたのは、如何にも貴重な時間だつたと、あの感謝したくなる、 …
門松のはなし(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
正月に門松を立てる訣を記憶してゐる人が、今日でもまだあるでせうか。此意義は、恐らく文献からは発見出来ますまい。文化を誇つたものほど早くに忘れてしまうた様です。僅に、圏外にとり残され …
読書目安時間:約9分
正月に門松を立てる訣を記憶してゐる人が、今日でもまだあるでせうか。此意義は、恐らく文献からは発見出来ますまい。文化を誇つたものほど早くに忘れてしまうた様です。僅に、圏外にとり残され …
歌舞妓芝居後ありや(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
音羽屋六代の主尾上菊五郎歿す。その日遥かに能登にあり。我また、 私のほとけを持ちて、盂蘭盆の哀愁、愈〻切なるものあり。 亡びなきものゝさびしさ。永久にして尚しはかなく、人は過ぎ行く …
読書目安時間:約1分
音羽屋六代の主尾上菊五郎歿す。その日遥かに能登にあり。我また、 私のほとけを持ちて、盂蘭盆の哀愁、愈〻切なるものあり。 亡びなきものゝさびしさ。永久にして尚しはかなく、人は過ぎ行く …
歌舞妓とをどり(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
東京と上方とでは舞踊家の態度が異つてゐる。東京の踊りは歌舞妓の歴史に関りを持つてゐるが、上方の舞ひは能から出てゐると言はれてるだけに、上方のは、そんなに踊りは芝居と密接な関係に捉は …
読書目安時間:約3分
東京と上方とでは舞踊家の態度が異つてゐる。東京の踊りは歌舞妓の歴史に関りを持つてゐるが、上方の舞ひは能から出てゐると言はれてるだけに、上方のは、そんなに踊りは芝居と密接な関係に捉は …
神賑ひ一般(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
静かな秋冬が来る。わが国も、幸福な月日が廻つて来て、神の心も明るくなつて来て居られることゝ思ふ。秋からさきは神事が多く、従つて神の心を賑はし申す行事が、社々で行はれる。耳を澄すと、 …
読書目安時間:約4分
静かな秋冬が来る。わが国も、幸福な月日が廻つて来て、神の心も明るくなつて来て居られることゝ思ふ。秋からさきは神事が多く、従つて神の心を賑はし申す行事が、社々で行はれる。耳を澄すと、 …
感謝すべき新東京年中行事:――第四回郷土舞踊と民謡の会・批判――(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
大体の感想は、日本青年館での合評会で申し述べたから、其機関雑誌「青年」に載る事と思ふ。其を御参照願へれば結構である。たゞ爰では、熱心な傍観者が、日本国中の手のとゞく限りの民俗芸術を …
読書目安時間:約13分
大体の感想は、日本青年館での合評会で申し述べたから、其機関雑誌「青年」に載る事と思ふ。其を御参照願へれば結構である。たゞ爰では、熱心な傍観者が、日本国中の手のとゞく限りの民俗芸術を …
菊五郎の科学性(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
ことしの盂蘭盆には、思ひがけなく、ぎり/\と言ふところで、菊五郎が新仏となつた。こんな事を考へたところで、意味のないことだけれど、舞台の鼻まで踊りこんで来て、かつきりと踏み残すと言 …
読書目安時間:約7分
ことしの盂蘭盆には、思ひがけなく、ぎり/\と言ふところで、菊五郎が新仏となつた。こんな事を考へたところで、意味のないことだけれど、舞台の鼻まで踊りこんで来て、かつきりと踏み残すと言 …
貴種誕生と産湯の信仰と(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
貴人の御出生といふ事について述べる前に、貴人の誕生、即「みあれ」といふ語の持つ意味から、先づ考へ直して見たいと思ふ。 私は、まづ今日の宮廷の行事の、固定した以前の形を考へさせて貰は …
読書目安時間:約8分
貴人の御出生といふ事について述べる前に、貴人の誕生、即「みあれ」といふ語の持つ意味から、先づ考へ直して見たいと思ふ。 私は、まづ今日の宮廷の行事の、固定した以前の形を考へさせて貰は …
義太夫と三味線(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
かう感情が荒びて来ては、たとひ今の間の折れ合ひはついても、又簡単に喧嘩別れの時が来る。文楽も揉みに揉んで、ちつとやそつとでは御破算にならぬ程、糶りつめてゐる。其に又今度の清六氏の事 …
読書目安時間:約2分
かう感情が荒びて来ては、たとひ今の間の折れ合ひはついても、又簡単に喧嘩別れの時が来る。文楽も揉みに揉んで、ちつとやそつとでは御破算にならぬ程、糶りつめてゐる。其に又今度の清六氏の事 …
狐の田舎わたらひ(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
藤の森が男で、稲荷が女であると言ふ事は、よく聞いた話である。後の社の鑰取りとも、奏者とも言ふべき狐を、命婦と言うたことも、神にあやかつての性的称呼と見るべきで、後三条の延久三年、雌 …
読書目安時間:約4分
藤の森が男で、稲荷が女であると言ふ事は、よく聞いた話である。後の社の鑰取りとも、奏者とも言ふべき狐を、命婦と言うたことも、神にあやかつての性的称呼と見るべきで、後三条の延久三年、雌 …
鏡花との一夕(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
他人にはないことか知らん。——私には、あんまり其があつて、あり過ぎて困つた癖だと、始中終それを気にして来た。聞いては見ぬが、大勢の中には、きつと同じ習慣を持つて居ながら、よく/\の …
読書目安時間:約7分
他人にはないことか知らん。——私には、あんまり其があつて、あり過ぎて困つた癖だと、始中終それを気にして来た。聞いては見ぬが、大勢の中には、きつと同じ習慣を持つて居ながら、よく/\の …
偶人信仰の民俗化並びに伝説化せる道(新字旧仮名)
読書目安時間:約34分
万葉巻十六の「乞食者詠」とある二首の長歌は、ほかひゞとの祝言が、早く演劇化した証拠の、貴重な例と見られる。二首ながら、二つの生き物の、からだの癖を述べたり、愁訴する様を歌うたりして …
読書目安時間:約34分
万葉巻十六の「乞食者詠」とある二首の長歌は、ほかひゞとの祝言が、早く演劇化した証拠の、貴重な例と見られる。二首ながら、二つの生き物の、からだの癖を述べたり、愁訴する様を歌うたりして …
草相撲の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
我々には、相撲と言へば、春場所・夏場所の感じだけしかなくなつたが、誹諧の季題では、これが秋の部に這入つて居る。宮廷の相撲の節会が、初秋の行事だつたからである。しかし、実際に諸国の村 …
読書目安時間:約4分
我々には、相撲と言へば、春場所・夏場所の感じだけしかなくなつたが、誹諧の季題では、これが秋の部に這入つて居る。宮廷の相撲の節会が、初秋の行事だつたからである。しかし、実際に諸国の村 …
草双紙と講釈の世界(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
飜案物と言へば、少し茫漠とするが「書き直し物」で通つてゐる種類の脚本がある。歌舞妓根生ひにでなく、他の読み物・語り物・謡ひ物から題材の出てゐる狂言を言ふ語なのだが、歌舞妓の性質から …
読書目安時間:約5分
飜案物と言へば、少し茫漠とするが「書き直し物」で通つてゐる種類の脚本がある。歌舞妓根生ひにでなく、他の読み物・語り物・謡ひ物から題材の出てゐる狂言を言ふ語なのだが、歌舞妓の性質から …
組踊り以前(新字旧仮名)
読書目安時間:約26分
親友としての感情が、どうかすれば、先輩といふ敬意を凌ぎがちになつてゐる程睦しい、私の友伊波さんの「組み踊り」の研究に、口状役を勤めろ、勤めようと約束してから、やがて、足かけ三年にな …
読書目安時間:約26分
親友としての感情が、どうかすれば、先輩といふ敬意を凌ぎがちになつてゐる程睦しい、私の友伊波さんの「組み踊り」の研究に、口状役を勤めろ、勤めようと約束してから、やがて、足かけ三年にな …
組踊りの話(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
組踊りは、また冠船踊りとも言うた。明治以前、今の尚侯爵の先祖が琉球国王であつた当時、その代替り毎に、支那がそれを認める冊封使といふものをよこした。その使者を乗せた、飾り立てた船をお …
読書目安時間:約6分
組踊りは、また冠船踊りとも言うた。明治以前、今の尚侯爵の先祖が琉球国王であつた当時、その代替り毎に、支那がそれを認める冊封使といふものをよこした。その使者を乗せた、飾り立てた船をお …
黒川能・観点の置き所(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
山形県には、秋田県へかけて、室町時代の芸能に関した民俗芸術が多く残つて居ります。黒川能は、その中でも著しいものゝ一つで、これと鳥海山の下のひやま舞ひとの二つは、特に皆様に見て頂きた …
読書目安時間:約4分
山形県には、秋田県へかけて、室町時代の芸能に関した民俗芸術が多く残つて居ります。黒川能は、その中でも著しいものゝ一つで、これと鳥海山の下のひやま舞ひとの二つは、特に皆様に見て頂きた …
芸能民習(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
あまり世の中が変り過ぎて、ため息一つついたことのなかつた我々も、時々ほうとすることがある。鳥が粟を拾ふやうにと言ふが、ほんたうに零細な知識を積んで来た私どもの学問も、どうかかうか、 …
読書目安時間:約11分
あまり世の中が変り過ぎて、ため息一つついたことのなかつた我々も、時々ほうとすることがある。鳥が粟を拾ふやうにと言ふが、ほんたうに零細な知識を積んで来た私どもの学問も、どうかかうか、 …
芸の壮大さ(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
日本の大貴族であつた人が、東京劇場の先代萩政岡忠義の段を見てをられた。その真うしろの席に偶然見物してゐたのが私だ。七日のことだつた。山城少掾が語り、文五郎が政岡まゝたきの人形を使つ …
読書目安時間:約3分
日本の大貴族であつた人が、東京劇場の先代萩政岡忠義の段を見てをられた。その真うしろの席に偶然見物してゐたのが私だ。七日のことだつた。山城少掾が語り、文五郎が政岡まゝたきの人形を使つ …
芸の有為転変相(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
「……花を惜しめど花よりも惜しむ子を棄て武士を捨て、住みどころさへ定めなき有為転変の世の中や……。」幼年時代から何十遍見聞きした熊谷陣屋幕切れの渡りぜりふである。竟に一度何の感傷も …
読書目安時間:約3分
「……花を惜しめど花よりも惜しむ子を棄て武士を捨て、住みどころさへ定めなき有為転変の世の中や……。」幼年時代から何十遍見聞きした熊谷陣屋幕切れの渡りぜりふである。竟に一度何の感傷も …
鶏鳴と神楽と(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
には鳥はかけろと鳴きぬなり。起きよ。おきよ。我がひと夜妻。人もこそ見れ(催馬楽) 此歌などが、わが国の恋歌に出て来る鶏の扱ひ方の、岐れ目であるらしい気がする。平安朝以後の鶏に関聯し …
読書目安時間:約9分
には鳥はかけろと鳴きぬなり。起きよ。おきよ。我がひと夜妻。人もこそ見れ(催馬楽) 此歌などが、わが国の恋歌に出て来る鶏の扱ひ方の、岐れ目であるらしい気がする。平安朝以後の鶏に関聯し …
形容詞の論:――語尾「し」の発生――(新字旧仮名)
読書目安時間:約45分
文法上に於ける文章論は、非常に輝かしい為事の様に見られてゐる。其が、美しい関聯を持つて居る点に於いて、恰、文法の哲学とでも言ふ様に、意味深く見られてゐるやうだ。私は常に思ふ。文章論 …
読書目安時間:約45分
文法上に於ける文章論は、非常に輝かしい為事の様に見られてゐる。其が、美しい関聯を持つて居る点に於いて、恰、文法の哲学とでも言ふ様に、意味深く見られてゐるやうだ。私は常に思ふ。文章論 …
言語の用語例の推移(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
言語の用語例の推移の問題は、今よりももつと盛んに研究せられてよいことゝ思ふ。凡どんな語にも、語原又は第一義にとゞまつてゐると言ふのは見られないのが、事実である。 我々の国に、語彙の …
読書目安時間:約13分
言語の用語例の推移の問題は、今よりももつと盛んに研究せられてよいことゝ思ふ。凡どんな語にも、語原又は第一義にとゞまつてゐると言ふのは見られないのが、事実である。 我々の国に、語彙の …
好悪の論(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
鴎外と逍遙と、どちらが嗜きで、どちらが嫌ひだ。かうした質問なら、わりに答へ易いのです。でも、稍老境を見かけた私どもの現在では、どちらのよい處も、嗜きになりきれない處も、見え過ぎて來 …
読書目安時間:約7分
鴎外と逍遙と、どちらが嗜きで、どちらが嫌ひだ。かうした質問なら、わりに答へ易いのです。でも、稍老境を見かけた私どもの現在では、どちらのよい處も、嗜きになりきれない處も、見え過ぎて來 …
古歌新釈(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
自分は、かね/″\従来の文章の解釈法、殊に和歌に就いて、先達諸家のやりくちに甚だ慊らぬふしが多い様に思うて居る。もと/\、解釈と訓詁とは主従の関係に立つもので、前者が全般的なるに対 …
読書目安時間:約10分
自分は、かね/″\従来の文章の解釈法、殊に和歌に就いて、先達諸家のやりくちに甚だ慊らぬふしが多い様に思うて居る。もと/\、解釈と訓詁とは主従の関係に立つもので、前者が全般的なるに対 …
国語と民俗学(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間22分
一国語と民俗学 私の題は非常に面白さうな題目ですが、私にはまだこの話を完全に申上げる事が出来ません。どうぞ、そのお積りで鷹揚に聞いて戴きたいと思ひます。守随さん、大間知さんそれに私 …
読書目安時間:約1時間22分
一国語と民俗学 私の題は非常に面白さうな題目ですが、私にはまだこの話を完全に申上げる事が出来ません。どうぞ、そのお積りで鷹揚に聞いて戴きたいと思ひます。守随さん、大間知さんそれに私 …
国文学の発生(第一稿):呪言と敍事詩と(旧字旧仮名)
読書目安時間:約15分
日本文學が、出發點からして既に、今ある儘の本質と目的とを持つて居たと考へるのは、單純な空想である。其ばかりか、極微かな文學意識が含まれて居たと見る事さへ、眞實を離れた考へと言はねば …
読書目安時間:約15分
日本文學が、出發點からして既に、今ある儘の本質と目的とを持つて居たと考へるのは、單純な空想である。其ばかりか、極微かな文學意識が含まれて居たと見る事さへ、眞實を離れた考へと言はねば …
国文学の発生(第三稿):まれびとの意義(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間15分
一客とまれびとと 客をまれびとと訓ずることは、我が國に文獻の始まつた最初からの事である。從來の語原説では「稀に來る人」の意義から、珍客の意を含んで、まれびとと言うたものとし、其音韻 …
読書目安時間:約1時間15分
一客とまれびとと 客をまれびとと訓ずることは、我が國に文獻の始まつた最初からの事である。從來の語原説では「稀に來る人」の意義から、珍客の意を含んで、まれびとと言うたものとし、其音韻 …
国文学の発生(第二稿)(新字旧仮名)
読書目安時間:約57分
呪言の展開 一神の嫁 国家意識の現れた頃は既に、日本の巫女道では大体に於て、神主は高級巫女の近親であつた。併し、其は我々の想像の領分の事で、而も、歴史に見えるより新しい時代にも、尚 …
読書目安時間:約57分
呪言の展開 一神の嫁 国家意識の現れた頃は既に、日本の巫女道では大体に於て、神主は高級巫女の近親であつた。併し、其は我々の想像の領分の事で、而も、歴史に見えるより新しい時代にも、尚 …
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間50分
たゞ今、文学の信仰起原説を最頑なに把つて居るのは、恐らくは私であらう。性の牽引や、咄嗟の感激から出発したとする学説などゝは、当分折りあへない其等の仮説の欠点を見てゐる。さうした常識 …
読書目安時間:約1時間50分
たゞ今、文学の信仰起原説を最頑なに把つて居るのは、恐らくは私であらう。性の牽引や、咄嗟の感激から出発したとする学説などゝは、当分折りあへない其等の仮説の欠点を見てゐる。さうした常識 …
古語復活論(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
記紀の死語・万葉の古語を復活させて、其に新なる生命を託しようとする、我々の努力を目して、骨董趣味・憬古癖とよりほかに考へることの出来ない人が、まだ/\随分とあるやうである。最近には …
読書目安時間:約6分
記紀の死語・万葉の古語を復活させて、其に新なる生命を託しようとする、我々の努力を目して、骨董趣味・憬古癖とよりほかに考へることの出来ない人が、まだ/\随分とあるやうである。最近には …
古代研究 追ひ書き(新字旧仮名)
読書目安時間:約35分
この書物、第一巻の校正が、やがてあがる今になつて、ぽっくりと、大阪の長兄が、亡くなつて行つた。さうして今晩は、その通夜である。私は、かん/\とあかるい、而もしめやかな座敷をはづして …
読書目安時間:約35分
この書物、第一巻の校正が、やがてあがる今になつて、ぽっくりと、大阪の長兄が、亡くなつて行つた。さうして今晩は、その通夜である。私は、かん/\とあかるい、而もしめやかな座敷をはづして …
古代人の思考の基礎(新字旧仮名)
読書目安時間:約57分
一尊貴族と神道との関係 尊貴族には、おほきみと仮名を振りたい。実は、おほきみとすると、少し問題になるので、尊貴族の文字を用ゐた。こゝでは、日本で一番高い位置の方、及び、其御一族即、 …
読書目安時間:約57分
一尊貴族と神道との関係 尊貴族には、おほきみと仮名を振りたい。実は、おほきみとすると、少し問題になるので、尊貴族の文字を用ゐた。こゝでは、日本で一番高い位置の方、及び、其御一族即、 …
古代生活に見えた恋愛(新字旧仮名)
読書目安時間:約20分
今日伺ひまして、お話を聴かして頂かうと思ひました処が、かへつて私がお話をせなければならない事になりました。恋愛の話は、只今の私には、最不似合な話であります。併し、歴史的な話でもとい …
読書目安時間:約20分
今日伺ひまして、お話を聴かして頂かうと思ひました処が、かへつて私がお話をせなければならない事になりました。恋愛の話は、只今の私には、最不似合な話であります。併し、歴史的な話でもとい …
古代生活の研究:常世の国(新字旧仮名)
読書目安時間:約31分
一生活の古典 明治中葉の「開化」の生活が後ずさりをして、今のあり様に落ちついたのには、訣がある。古典の魅力が、私どもの思想を単純化し、よなげて清新にすると同様、私どもの生活は、功利 …
読書目安時間:約31分
一生活の古典 明治中葉の「開化」の生活が後ずさりをして、今のあり様に落ちついたのには、訣がある。古典の魅力が、私どもの思想を単純化し、よなげて清新にすると同様、私どもの生活は、功利 …
古代中世言語論(新字旧仮名)
読書目安時間:約56分
我国の歴史は、やがて三千年に亘らうとして居る。其間に起つた数多くの文学が、今日の我々にも、大体は訣るといふこと、殊に奈良朝以前の文学などが訣るといふことは、どういふことであらうかと …
読書目安時間:約56分
我国の歴史は、やがて三千年に亘らうとして居る。其間に起つた数多くの文学が、今日の我々にも、大体は訣るといふこと、殊に奈良朝以前の文学などが訣るといふことは、どういふことであらうかと …
古代に於ける言語伝承の推移(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
所謂民間伝承といふ言葉を、初めて公に使はれたのは、たしか松村武雄さんであつたと思ふ。そして、それを現在、柳田国男先生はじめ、我々も使うて居るのである。こゝでは、この民間伝承のうちの …
読書目安時間:約15分
所謂民間伝承といふ言葉を、初めて公に使はれたのは、たしか松村武雄さんであつたと思ふ。そして、それを現在、柳田国男先生はじめ、我々も使うて居るのである。こゝでは、この民間伝承のうちの …
古代民謡の研究:その外輪に沿うて(新字旧仮名)
読書目安時間:約25分
おもしろき野をば勿焼きそ。旧草に新草まじり生ひば生ふるかに(万葉集巻十四) 此歌は、訣つた事にして来てゐるが、よく考へれば、訣らない。第一、どの点に、民謡としての興味を繋ぐことが出 …
読書目安時間:約25分
おもしろき野をば勿焼きそ。旧草に新草まじり生ひば生ふるかに(万葉集巻十四) 此歌は、訣つた事にして来てゐるが、よく考へれば、訣らない。第一、どの点に、民謡としての興味を繋ぐことが出 …
ごろつきの話(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
一ごろつきの意味 無頼漢などゝいへば、社会の瘤のやうなものとしか考へて居られぬ。だが、嘗て、日本では此無頼漢が、社会の大なる要素をなした時代がある。のみならず、芸術の上の運動には、 …
読書目安時間:約27分
一ごろつきの意味 無頼漢などゝいへば、社会の瘤のやうなものとしか考へて居られぬ。だが、嘗て、日本では此無頼漢が、社会の大なる要素をなした時代がある。のみならず、芸術の上の運動には、 …
最古日本の女性生活の根柢(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
一万葉びと——琉球人 古代の歴史は、事実の記憶から編み出されたものではない。神人に神憑りした神の、物語った叙事詩から生れてきたのである。いわば夢語りとも言うべき部分の多い伝えの、世 …
読書目安時間:約19分
一万葉びと——琉球人 古代の歴史は、事実の記憶から編み出されたものではない。神人に神憑りした神の、物語った叙事詩から生れてきたのである。いわば夢語りとも言うべき部分の多い伝えの、世 …
最古日本の女性生活の根柢(新字旧仮名)
読書目安時間:約19分
一万葉びと——琉球人 古代の歴史は、事実の記憶から編み出されたものではない。神人に神憑りした神の、物語つた叙事詩から生れて来たのである。謂はゞ夢語りとも言ふべき部分の多い伝への、世 …
読書目安時間:約19分
一万葉びと——琉球人 古代の歴史は、事実の記憶から編み出されたものではない。神人に神憑りした神の、物語つた叙事詩から生れて来たのである。謂はゞ夢語りとも言ふべき部分の多い伝への、世 …
最低の古典:――新かなづかひと漢字制限――(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
現代かなづかひがきまつたのはともかくめでたいことと思ふ。ただ、それについて大きな用意があるのかといふことだけをききたい。歴史かなづかひといふものは、われわれ国民、年寄りから低いとこ …
読書目安時間:約3分
現代かなづかひがきまつたのはともかくめでたいことと思ふ。ただ、それについて大きな用意があるのかといふことだけをききたい。歴史かなづかひといふものは、われわれ国民、年寄りから低いとこ …
桟敷の古い形(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
此字は、室町の頃から見え出したと思ふが、語がずつと大昔からあつたことは、記紀の註釈書の全部が、挙つて可決した処である。言ふまでもなく、八俣遠呂知対治の条に、記・紀二つながら、音仮名 …
読書目安時間:約2分
此字は、室町の頃から見え出したと思ふが、語がずつと大昔からあつたことは、記紀の註釈書の全部が、挙つて可決した処である。言ふまでもなく、八俣遠呂知対治の条に、記・紀二つながら、音仮名 …
雑感(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
久しぶりで又、「人形の家」が、町の話題に上つてゐる。松井須磨子の初演以来、今度が、幾度目になるのか、ちよつとには考へ浮ばぬ年月である。いつまでも素人抜けのせぬ様に言はれて来た新劇の …
読書目安時間:約16分
久しぶりで又、「人形の家」が、町の話題に上つてゐる。松井須磨子の初演以来、今度が、幾度目になるのか、ちよつとには考へ浮ばぬ年月である。いつまでも素人抜けのせぬ様に言はれて来た新劇の …
三郷巷談(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
一もおずしやうじん 泉北郡百舌鳥村大字百舌鳥では、色々よそ村と違つた風習を伝へてゐた。其が今では、だん/\平凡化して来た。此処にいふもおずしやうじんの如きは、殊に名高いものになつて …
読書目安時間:約14分
一もおずしやうじん 泉北郡百舌鳥村大字百舌鳥では、色々よそ村と違つた風習を伝へてゐた。其が今では、だん/\平凡化して来た。此処にいふもおずしやうじんの如きは、殊に名高いものになつて …
地唄(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
地唄とは、ろおかるの唄と言ふこと。上方の人々が、江戸の唄に対して、土地の唄と言ふ意味でさう名付けた。江戸から言へば、上方唄と言ふことになる。 上方では、長唄・清元・常磐津など、それ …
読書目安時間:約8分
地唄とは、ろおかるの唄と言ふこと。上方の人々が、江戸の唄に対して、土地の唄と言ふ意味でさう名付けた。江戸から言へば、上方唄と言ふことになる。 上方では、長唄・清元・常磐津など、それ …
詩語としての日本語(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
銘酊船 さてわれらこの日より星を注ぎて乳汁色の 海原の詩に浴しつゝ緑なす瑠璃を啖ひ行けば こゝ吃水線は恍惚として蒼ぐもり 折から水死人のたゞ一人想ひに沈み降り行く 見よその蒼色忽然 …
読書目安時間:約27分
銘酊船 さてわれらこの日より星を注ぎて乳汁色の 海原の詩に浴しつゝ緑なす瑠璃を啖ひ行けば こゝ吃水線は恍惚として蒼ぐもり 折から水死人のたゞ一人想ひに沈み降り行く 見よその蒼色忽然 …
詩語としての日本語(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
酩酊船 さてわれらこの日より星を注ぎて乳汁色の 海原の詩に浴しつゝ緑なす瑠璃を啖ひ行けば こゝ吃水線は恍惚として蒼ぐもり 折から水死人のたゞ一人想ひに沈み降り行く 見よその蒼色忽然 …
読書目安時間:約27分
酩酊船 さてわれらこの日より星を注ぎて乳汁色の 海原の詩に浴しつゝ緑なす瑠璃を啖ひ行けば こゝ吃水線は恍惚として蒼ぐもり 折から水死人のたゞ一人想ひに沈み降り行く 見よその蒼色忽然 …
獅子舞と石橋(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
能楽の獅子舞には、本式に、赤頭に獅子口の面をつけて出る石橋と、望月や内外詣のやうに、仮面の代りに扇をかづき、赤頭をつけるのとがある。現実の獅子として出て来るのが石橋で、獅子芸で世を …
読書目安時間:約4分
能楽の獅子舞には、本式に、赤頭に獅子口の面をつけて出る石橋と、望月や内外詣のやうに、仮面の代りに扇をかづき、赤頭をつけるのとがある。現実の獅子として出て来るのが石橋で、獅子芸で世を …
「しゞま」から「ことゝひ」へ(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
われ/\の国の宗教の歴史を辿つて、溯りつめた極点は、物言はぬ神の時代である。さうした神の口がほぐれかけて、こゝに信仰上の様式は整ひはじめた。歴史も、文学も、其萌しは此時以後に現れた …
読書目安時間:約11分
われ/\の国の宗教の歴史を辿つて、溯りつめた極点は、物言はぬ神の時代である。さうした神の口がほぐれかけて、こゝに信仰上の様式は整ひはじめた。歴史も、文学も、其萌しは此時以後に現れた …
死者の書(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覚めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え圧するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。 したしたした。耳に伝ふやうに来るのは、水の垂れる音 …
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覚めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え圧するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。 したしたした。耳に伝ふやうに来るのは、水の垂れる音 …
死者の書(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覚めて行った。まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでいるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。 したしたした。耳に伝うように来るのは、水の垂れる音 …
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覚めて行った。まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでいるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。 したしたした。耳に伝うように来るのは、水の垂れる音 …
死者の書(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覺めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え壓するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて來るのを、覺えたのである。 したしたした。耳に傳ふやうに來るのは、水の垂れる音 …
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覺めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え壓するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて來るのを、覺えたのである。 したしたした。耳に傳ふやうに來るのは、水の垂れる音 …
死者の書(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覺めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え壓するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて來るのを、覺えたのである。 したしたした。耳に傳ふやうに來るのは、水の垂れる音 …
読書目安時間:約2時間6分
彼の人の眠りは、徐かに覺めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え壓するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて來るのを、覺えたのである。 したしたした。耳に傳ふやうに來るのは、水の垂れる音 …
死者の書:――初稿版――(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間1分
死者の書 戊寅、天子東狃于沢中。逢寒疾。天子舎于沢中。盛姫告病。天子憐之。□沢曰寒氏。盛姫求飲。天子命人取漿而給。是曰壺※。天子西至于重壁之台。盛姫告病。□天子哀之。是曰哀次。天子 …
読書目安時間:約2時間1分
死者の書 戊寅、天子東狃于沢中。逢寒疾。天子舎于沢中。盛姫告病。天子憐之。□沢曰寒氏。盛姫求飲。天子命人取漿而給。是曰壺※。天子西至于重壁之台。盛姫告病。□天子哀之。是曰哀次。天子 …
死者の書 続編(草稿)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約22分
山々の櫻の散り盡した後に、大塔中堂の造立供養は行はれたのであつた。 それでも、春の旅と言へば、まづ櫻を思ふ習はしから、大臣は薄い望みを懸けてゐた。若し、高野や、吉野の奧の花見られる …
読書目安時間:約22分
山々の櫻の散り盡した後に、大塔中堂の造立供養は行はれたのであつた。 それでも、春の旅と言へば、まづ櫻を思ふ習はしから、大臣は薄い望みを懸けてゐた。若し、高野や、吉野の奧の花見られる …
辞書(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
日本の辞書のできてくる道筋について考えてみる。 そういうとき、すぐにわれわれは『倭名類聚鈔』を頭に浮かべる。それより前には辞書がなかったかというと、以前のものが残っていないというだ …
読書目安時間:約12分
日本の辞書のできてくる道筋について考えてみる。 そういうとき、すぐにわれわれは『倭名類聚鈔』を頭に浮かべる。それより前には辞書がなかったかというと、以前のものが残っていないというだ …
自然女人とかぶき女:――新歌右衛門に寄する希望――(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
いよ/\芝翫が歌右衛門を襲ぐさうである。考へれば、大変成長したものであるが、一往此辺で、飛躍の階梯を作るのに、双手をあげて賛成する。それは昭和の歌舞妓芝居から、最意味のある功労賞を …
読書目安時間:約6分
いよ/\芝翫が歌右衛門を襲ぐさうである。考へれば、大変成長したものであるが、一往此辺で、飛躍の階梯を作るのに、双手をあげて賛成する。それは昭和の歌舞妓芝居から、最意味のある功労賞を …
実悪役者を望む(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
大谷友右衛門は、松本幸四郎と共に、立役らしい本当の姿を持つた人だと思ひます。最大の欠点は、口元にあるらしく、そのために一寸しまらない感じを与へます。死んだ片市の敵役を見ましたが、こ …
読書目安時間:約3分
大谷友右衛門は、松本幸四郎と共に、立役らしい本当の姿を持つた人だと思ひます。最大の欠点は、口元にあるらしく、そのために一寸しまらない感じを与へます。死んだ片市の敵役を見ましたが、こ …
実川延若讃(新字旧仮名)
読書目安時間:約40分
「女殺油地獄」の芝居を、見て戻つた私である。一日、極度に照明を仄かにした小屋の中にゐて、目も心も、疲れきつてしまつた。思ひの外に、役者たちの努力が、何となく感謝してもよい心持ちを、 …
読書目安時間:約40分
「女殺油地獄」の芝居を、見て戻つた私である。一日、極度に照明を仄かにした小屋の中にゐて、目も心も、疲れきつてしまつた。思ひの外に、役者たちの努力が、何となく感謝してもよい心持ちを、 …
詩と散文との間を行く発想法(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
かう言ふ憎々しい物言ひをして、大變な勞作を積んで入らつしやる作家諸氏に失禮に當つたら、御免下さい。どうも、私どもは批評家でない。尠くとも、優れた新進作家の發見を、片手わざとする月評 …
読書目安時間:約7分
かう言ふ憎々しい物言ひをして、大變な勞作を積んで入らつしやる作家諸氏に失禮に當つたら、御免下さい。どうも、私どもは批評家でない。尠くとも、優れた新進作家の發見を、片手わざとする月評 …
信太妻の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約52分
今から二十年も前、特に青年らしい感傷に耽りがちであつた当時、私の通つて居た学校が、靖国神社の近くにあつた。それで招魂祭にはよく、時間の間を見ては、行き/\したものだ。今もあるやうに …
読書目安時間:約52分
今から二十年も前、特に青年らしい感傷に耽りがちであつた当時、私の通つて居た学校が、靖国神社の近くにあつた。それで招魂祭にはよく、時間の間を見ては、行き/\したものだ。今もあるやうに …
芝居に出た名残星月夜(新字旧仮名)
読書目安時間:約56分
あなたは確か、芝居の噂などは、あまりお嗜きでなかつた様に思ひます。併し、此だけは一つ、是非お耳に入れて置きたい、と思ふのです。そちらでも、東京の新聞は御覧になつて居ませう。坪内博士 …
読書目安時間:約56分
あなたは確か、芝居の噂などは、あまりお嗜きでなかつた様に思ひます。併し、此だけは一つ、是非お耳に入れて置きたい、と思ふのです。そちらでも、東京の新聞は御覧になつて居ませう。坪内博士 …
芝居の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
○此頃いくらか、芝居が嫌ひになれた様な気がする。性根場になつて、どうにもこらへられないで、とろ/\する事が多い。其でも尚芝居に行つて、廊下を歩く気持ちがよくて、やめられないと言ふ人 …
読書目安時間:約6分
○此頃いくらか、芝居が嫌ひになれた様な気がする。性根場になつて、どうにもこらへられないで、とろ/\する事が多い。其でも尚芝居に行つて、廊下を歩く気持ちがよくて、やめられないと言ふ人 …
芝居見の芝居知らず(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
月々、多かれ少かれ芝居は見る。子どもの時からの癖が、まるで脅迫観念になつてゐる様だ。芝居茶屋や、出方に頼んだ頃は、少々いらぬ入費もかゝつたが、扨其が改良せられた今の興行法では、一度 …
読書目安時間:約7分
月々、多かれ少かれ芝居は見る。子どもの時からの癖が、まるで脅迫観念になつてゐる様だ。芝居茶屋や、出方に頼んだ頃は、少々いらぬ入費もかゝつたが、扨其が改良せられた今の興行法では、一度 …
熟語構成法から観察した語根論の断簡(新字旧仮名)
読書目安時間:約26分
私が単語の組織を分解するのは、単語の研究が実の処、日本の詞章の本質を突きとめて行くことになると思つてゐるからである。語根の屈折に就いて考へるには、先づ熟語に就いて見るのが一つの方法 …
読書目安時間:約26分
私が単語の組織を分解するのは、単語の研究が実の処、日本の詞章の本質を突きとめて行くことになると思つてゐるからである。語根の屈折に就いて考へるには、先づ熟語に就いて見るのが一つの方法 …
呪詞及び祝詞(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
延喜式の祝詞を、世間では、非常に古いものだと考へて居る。或は、高天原から持ち来されたものゝやうにも云うてゐるが、さうでは無く、自分は悉、平安朝の息がかゝつてゐると思ふ。かう言ふのは …
読書目安時間:約12分
延喜式の祝詞を、世間では、非常に古いものだと考へて居る。或は、高天原から持ち来されたものゝやうにも云うてゐるが、さうでは無く、自分は悉、平安朝の息がかゝつてゐると思ふ。かう言ふのは …
正直正太夫に期待す(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
寛政八年五月四日、伊勢古市の油屋で、山田の医師、孫福斎と言ふ者が、九人斬りをしたと言ふ騒動があつたと伝へられる。これを近松徳叟が三日間で脚色し、同年七月二十五日、大阪の角の芝居にか …
読書目安時間:約4分
寛政八年五月四日、伊勢古市の油屋で、山田の医師、孫福斎と言ふ者が、九人斬りをしたと言ふ騒動があつたと伝へられる。これを近松徳叟が三日間で脚色し、同年七月二十五日、大阪の角の芝居にか …
小説の予言者(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
私の知つた文學者には、豫言者だちの人と、饒舌家型の人とがあつて、著しい相違を見せてゐる。勿論、太宰君は豫言者型といふよりも、豫言者と言つた方が、もつと適切なことを思はせてゐた。 宗 …
読書目安時間:約1分
私の知つた文學者には、豫言者だちの人と、饒舌家型の人とがあつて、著しい相違を見せてゐる。勿論、太宰君は豫言者型といふよりも、豫言者と言つた方が、もつと適切なことを思はせてゐた。 宗 …
唱導文学:――序説として――(新字旧仮名)
読書目安時間:約34分
唱導文学といふ語は、単なる「唱導」の「文学」と言ふ事でなく、多少熟語としての偏傾を持つて居るのである。事実において、唱導文学は、説経文学を意味しなければならぬのであるが、わが国民族 …
読書目安時間:約34分
唱導文学といふ語は、単なる「唱導」の「文学」と言ふ事でなく、多少熟語としての偏傾を持つて居るのである。事実において、唱導文学は、説経文学を意味しなければならぬのであるが、わが国民族 …
唱導文芸序説(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
唱導といふのは、元、寺家の用語である。私の此方面に関心を持ち出したのも、実はさうした側の、殊に近代に倚つての、布教者の漂遊を主題としてゐた。だが、最近さうした方法が、寺家及びその末 …
読書目安時間:約10分
唱導といふのは、元、寺家の用語である。私の此方面に関心を持ち出したのも、実はさうした側の、殊に近代に倚つての、布教者の漂遊を主題としてゐた。だが、最近さうした方法が、寺家及びその末 …
叙景詩の発生(新字旧仮名)
読書目安時間:約41分
私の此短い論文は、日本人の自然美観の発生から、ある固定を示す時期までを、とり扱ふのであるから、自然同行の諸前輩の文章の序説とも、概論ともなる順序である。其等大方の中には、全く私と考 …
読書目安時間:約41分
私の此短い論文は、日本人の自然美観の発生から、ある固定を示す時期までを、とり扱ふのであるから、自然同行の諸前輩の文章の序説とも、概論ともなる順序である。其等大方の中には、全く私と考 …
信州新野の雪祭り(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
東海道の奥から、信州伊那谷へ通じてゐる道が、大体三通りあります。其中、一筋は遠州から這入るもの、他の二筋は三河から越える道です。その真中にあたる道が、丁度花祭りの行はれる三州北設楽 …
読書目安時間:約7分
東海道の奥から、信州伊那谷へ通じてゐる道が、大体三通りあります。其中、一筋は遠州から這入るもの、他の二筋は三河から越える道です。その真中にあたる道が、丁度花祭りの行はれる三州北設楽 …
神道に現れた民族論理(新字旧仮名)
読書目安時間:約36分
今日の演題に定めた「神道に現れた民族論理」と云ふ題は、不熟でもあり、亦、抽象的で、私の言はうとする内容を尽してゐないかも知れぬが、私としては、神道の根本に於て、如何なる特異な物の考 …
読書目安時間:約36分
今日の演題に定めた「神道に現れた民族論理」と云ふ題は、不熟でもあり、亦、抽象的で、私の言はうとする内容を尽してゐないかも知れぬが、私としては、神道の根本に於て、如何なる特異な物の考 …
神道の新しい方向(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
昭和二十年の夏のことでした。 まさか、終戦のみじめな事実が、日々刻々に近寄つてゐようとは考へもつきませんでしたが、その或日、ふつと或啓示が胸に浮んで来るやうな気持ちがして、愕然と致 …
読書目安時間:約14分
昭和二十年の夏のことでした。 まさか、終戦のみじめな事実が、日々刻々に近寄つてゐようとは考へもつきませんでしたが、その或日、ふつと或啓示が胸に浮んで来るやうな気持ちがして、愕然と致 …
神道の史的価値(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
長い旅から戻つて顧ると、随分、色んな人に逢うた。殊に為事の係りあひから、神職の方々の助勢を、煩すことが多かつた。中にはまだ、昔懐しい長袖らしい気持ちを革めぬ向きもあつたが、概して、 …
読書目安時間:約8分
長い旅から戻つて顧ると、随分、色んな人に逢うた。殊に為事の係りあひから、神職の方々の助勢を、煩すことが多かつた。中にはまだ、昔懐しい長袖らしい気持ちを革めぬ向きもあつたが、概して、 …
身毒丸(新字旧仮名)
読書目安時間:約21分
身毒丸の父親は、住吉から出た田楽師であつた。けれども、今は居ない。身毒はをり/\その父親に訣れた時の容子を思ひ浮べて見る。身毒はその時九つであつた。 住吉の御田植神事の外は旅まはり …
読書目安時間:約21分
身毒丸の父親は、住吉から出た田楽師であつた。けれども、今は居ない。身毒はをり/\その父親に訣れた時の容子を思ひ浮べて見る。身毒はその時九つであつた。 住吉の御田植神事の外は旅まはり …
水中の友(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
いつまでもものを言はなくなつた友人——。 もつとも若かつたひとり——。 たゞの一度も話をしたことのない 二三行の手紙も彼に書いたことのない私—— 併し私の友情をしづかに享けとつてゐ …
読書目安時間:約8分
いつまでもものを言はなくなつた友人——。 もつとも若かつたひとり——。 たゞの一度も話をしたことのない 二三行の手紙も彼に書いたことのない私—— 併し私の友情をしづかに享けとつてゐ …
涼み芝居と怪談(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
東京の年中行事は、すべて太陽暦ですることになつてゐる。勢、盆狂言も、新の七月に興行せられる訣である。「夏祭」や「四谷怪談」など今行つてしゆんはづれの芝居ではない。だが暑さの峠を越さ …
読書目安時間:約5分
東京の年中行事は、すべて太陽暦ですることになつてゐる。勢、盆狂言も、新の七月に興行せられる訣である。「夏祭」や「四谷怪談」など今行つてしゆんはづれの芝居ではない。だが暑さの峠を越さ …
生活の古典化に努められた先生(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
芳賀先生の爲事を見るのに、最も著しい兩方面があることゝ思ひます。 連歌俳諧流の倭學をのり越えて國學が姿を顯した樣に、明治の國文學は、國學から分化して出て來ました。其中心が芳賀先生だ …
読書目安時間:約3分
芳賀先生の爲事を見るのに、最も著しい兩方面があることゝ思ひます。 連歌俳諧流の倭學をのり越えて國學が姿を顯した樣に、明治の國文學は、國學から分化して出て來ました。其中心が芳賀先生だ …
宗十郎を悼む(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
播州姫路といへば、沢村一家と因縁のありさうな土地である。そこへ興行で回つて行つて、倒れた宗十郎を思ふ。千鳥の声を幻想して、静かな眠りに落ちて行つたのだらう。 大谷派の本願寺の三代前 …
読書目安時間:約4分
播州姫路といへば、沢村一家と因縁のありさうな土地である。そこへ興行で回つて行つて、倒れた宗十郎を思ふ。千鳥の声を幻想して、静かな眠りに落ちて行つたのだらう。 大谷派の本願寺の三代前 …
相聞の発達(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
木梨軽太子の古い情史風のばらっどの外に、新しい時代に宣伝せられたと思はれる悲しい恋語りが、やはり巡遊伶人の口から世間へちらばり、其が輯録せられて万葉にある。一つは宅守相聞である。今 …
読書目安時間:約17分
木梨軽太子の古い情史風のばらっどの外に、新しい時代に宣伝せられたと思はれる悲しい恋語りが、やはり巡遊伶人の口から世間へちらばり、其が輯録せられて万葉にある。一つは宅守相聞である。今 …
「さうや さかいに」(新字旧仮名)
読書目安時間:約38分
柳田国男先生が「さうやさかいに」を論ぜられて後、相当の年月が立つた。その論が、画期的なものであつたゞけに、此に対して、何の議論も現れなかつたことは、世間が先生のこの方言論を深く、認 …
読書目安時間:約38分
柳田国男先生が「さうやさかいに」を論ぜられて後、相当の年月が立つた。その論が、画期的なものであつたゞけに、此に対して、何の議論も現れなかつたことは、世間が先生のこの方言論を深く、認 …
田遊び祭りの概念(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
一田遊び・田儛ひ・田楽 日本には、田に関する演芸が、略三種類ある。第一は、田遊びである。此行事は、余程、古くから行はれたものと思ふ。次は田儛ひで、此も、奈良朝以前既にあつた。第三は …
読書目安時間:約13分
一田遊び・田儛ひ・田楽 日本には、田に関する演芸が、略三種類ある。第一は、田遊びである。此行事は、余程、古くから行はれたものと思ふ。次は田儛ひで、此も、奈良朝以前既にあつた。第三は …
だいがくの研究(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
夏祭浪花鑑の長町裏の場で、院本には「折から聞える太鼓鉦」とあるばかりなのを、芝居では、酸鼻な舅殺しの最中に、背景の町屋の屋根の上を、幾つかの祭礼の立て物の末が列つて通る。あれが、だ …
読書目安時間:約8分
夏祭浪花鑑の長町裏の場で、院本には「折から聞える太鼓鉦」とあるばかりなのを、芝居では、酸鼻な舅殺しの最中に、背景の町屋の屋根の上を、幾つかの祭礼の立て物の末が列つて通る。あれが、だ …
大嘗祭の本義(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間21分
最初には、演題を「民俗学より見たる大嘗祭」として見たが、其では、大嘗祭が軽い意義になりはせぬか、と心配して、其で「大嘗祭の本義」とした。 題目が甚、神道家らしく、何か神道の宣伝めい …
読書目安時間:約1時間21分
最初には、演題を「民俗学より見たる大嘗祭」として見たが、其では、大嘗祭が軽い意義になりはせぬか、と心配して、其で「大嘗祭の本義」とした。 題目が甚、神道家らしく、何か神道の宣伝めい …
鷹狩りと操り芝居と(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
今度計画せられた此書物は、類変りの随筆集といふだけに、識り合ひの方がたが、どんな計画で、思ひもかけぬ事を書かうとして居られるかといふ事が、かうして居る今でもまざ/\と胸に泛んで来る …
読書目安時間:約7分
今度計画せられた此書物は、類変りの随筆集といふだけに、識り合ひの方がたが、どんな計画で、思ひもかけぬ事を書かうとして居られるかといふ事が、かうして居る今でもまざ/\と胸に泛んで来る …
高御座(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
〔一〕明神御宇日本天皇詔書……云々咸聞。 〔二〕明神御宇天皇詔旨……云々咸聞。 〔三〕明神御大八洲天皇詔旨……云々咸聞。 〔四〕天皇詔旨……云々咸聞。 〔五〕詔旨……云々咸聞。 此 …
読書目安時間:約6分
〔一〕明神御宇日本天皇詔書……云々咸聞。 〔二〕明神御宇天皇詔旨……云々咸聞。 〔三〕明神御大八洲天皇詔旨……云々咸聞。 〔四〕天皇詔旨……云々咸聞。 〔五〕詔旨……云々咸聞。 此 …
薪能と呪師走の翁(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
久しく絶えてゐた薪能が復活して、こゝに再、恒例の行事となつたのは、近年のことである。志深い大和侍の児孫と称する人があつて、南都の神事芸能を興すことを以て、偏に祖先にこたへる道と信じ …
読書目安時間:約3分
久しく絶えてゐた薪能が復活して、こゝに再、恒例の行事となつたのは、近年のことである。志深い大和侍の児孫と称する人があつて、南都の神事芸能を興すことを以て、偏に祖先にこたへる道と信じ …
橘曙覧(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
曙覧は文化九年、福井市内屈指の紙商、井手正玄の長男として生れたが、父祖の余沢に浴することをせず、豊かな家産と名跡、家業を悉く異母弟に譲つて、郷里を離れた山里や町はづれに、さゝやかな …
読書目安時間:約5分
曙覧は文化九年、福井市内屈指の紙商、井手正玄の長男として生れたが、父祖の余沢に浴することをせず、豊かな家産と名跡、家業を悉く異母弟に譲つて、郷里を離れた山里や町はづれに、さゝやかな …
橘曙覧評伝(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間8分
天皇は神にしますぞ。天皇の勅としいはゞ、畏みまつれ 天の下清くはらひて、上古の御まつりごとに復るよろこべ 橘曙覧が、越前福井三橋の志濃夫廼舎で、五十七年の生涯を終へたのは、慶応四年 …
読書目安時間:約2時間8分
天皇は神にしますぞ。天皇の勅としいはゞ、畏みまつれ 天の下清くはらひて、上古の御まつりごとに復るよろこべ 橘曙覧が、越前福井三橋の志濃夫廼舎で、五十七年の生涯を終へたのは、慶応四年 …
鵠が音:02 島の消息(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
硫黄を発掘する人々の外に、古加乙涅を栽培する数家族が、棲んでゐた。其人々を内地に移した。さうしてそこに、後から/\送つた兵隊で、島は埋まれてしまつたと言ふあり様であつた。春洋と、春 …
読書目安時間:約6分
硫黄を発掘する人々の外に、古加乙涅を栽培する数家族が、棲んでゐた。其人々を内地に移した。さうしてそこに、後から/\送つた兵隊で、島は埋まれてしまつたと言ふあり様であつた。春洋と、春 …
鵠が音:03 追ひ書き(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
釋迢空 『……今はひたすらに、皇軍の、勝ちさびとよむ日が待たれることです。たゞ頻りに心をうつのは、兵士等が健康のうへです。わづらふ者があると、責任と謂つたことをのり越えて、身にしみ …
読書目安時間:約11分
釋迢空 『……今はひたすらに、皇軍の、勝ちさびとよむ日が待たれることです。たゞ頻りに心をうつのは、兵士等が健康のうへです。わづらふ者があると、責任と謂つたことをのり越えて、身にしみ …
鶴が音:――鶴亀の芸能――(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
いかに、奏聞まをすべき事の候。毎年の嘉例の如く、鶴亀を舞はせられ、その後、月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて候。……謡曲鶴亀 所謂五風、十雨が、度に過ぎて、侘しかつた旧年の夢につい …
読書目安時間:約8分
いかに、奏聞まをすべき事の候。毎年の嘉例の如く、鶴亀を舞はせられ、その後、月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて候。……謡曲鶴亀 所謂五風、十雨が、度に過ぎて、侘しかつた旧年の夢につい …
たなばたと盆祭りと(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
この二つの接近した年中行事については、書かねばならぬ事の多すぎる感がある。又既に、先年柳田先生が「民族」の上で述べてゐられるから、私しきが今更此に対して、事新しく、附け加へるほどの …
読書目安時間:約13分
この二つの接近した年中行事については、書かねばならぬ事の多すぎる感がある。又既に、先年柳田先生が「民族」の上で述べてゐられるから、私しきが今更此に対して、事新しく、附け加へるほどの …
玉手御前の恋(新字旧仮名)
読書目安時間:約21分
……おもはゆげなる玉手御前。母様のおことばなれど、いかなる過去の因縁やら、俊徳様のおんことは、寝た間も忘れず恋ひこがれ、思ひあまつてうちつけに、言うても親子の道を立て、つれない返事 …
読書目安時間:約21分
……おもはゆげなる玉手御前。母様のおことばなれど、いかなる過去の因縁やら、俊徳様のおんことは、寝た間も忘れず恋ひこがれ、思ひあまつてうちつけに、言うても親子の道を立て、つれない返事 …
短歌の口語的発想(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
短歌に口語をとり入れることは、随分久しい問題である。さうして今に、何の解決もつかずに、残されてゐる。 一体どの時代でも、歌が型に這入つて来ると、大抵は珍しい語に逃げ道を求めた。形式 …
読書目安時間:約6分
短歌に口語をとり入れることは、随分久しい問題である。さうして今に、何の解決もつかずに、残されてゐる。 一体どの時代でも、歌が型に這入つて来ると、大抵は珍しい語に逃げ道を求めた。形式 …
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし(新字旧仮名)
読書目安時間:約58分
一短歌の創作まで 短歌の形式の固定したのは、さまで久しい「万葉集以前」ではなかつた。飛鳥末から藤原へかけての時代が、実の処此古めいた五句、出入り三十音の律語を意識にのぼせる為の陣痛 …
読書目安時間:約58分
一短歌の創作まで 短歌の形式の固定したのは、さまで久しい「万葉集以前」ではなかつた。飛鳥末から藤原へかけての時代が、実の処此古めいた五句、出入り三十音の律語を意識にのぼせる為の陣痛 …
短歌様式の発生に絡んだある疑念(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
今の世の学者が、あらゆる現象を、単純から複雑に展開してゆくものときめてかゝる考へ方は、多くの場合まちがつた結論に安住することになつてゐる。文学の場合もさうであつた。 沢村専太郎氏が …
読書目安時間:約3分
今の世の学者が、あらゆる現象を、単純から複雑に展開してゆくものときめてかゝる考へ方は、多くの場合まちがつた結論に安住することになつてゐる。文学の場合もさうであつた。 沢村専太郎氏が …
辻の立ち咄(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
夏めいて来ると、祭りに狂奔した故郷の昔が、思ひ出される。其と一続きに、きつと浮んで来るのは、浄瑠璃から出た「夏祭浪花鑑」といふ芝居である。あんな戯曲の上にも、大阪と東京との違うた、 …
読書目安時間:約3分
夏めいて来ると、祭りに狂奔した故郷の昔が、思ひ出される。其と一続きに、きつと浮んで来るのは、浄瑠璃から出た「夏祭浪花鑑」といふ芝居である。あんな戯曲の上にも、大阪と東京との違うた、 …
鶴屋団十郎(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
文楽の人形が来て、今年はとりわけ、大評判をとつた事は、私どもの肩身をひろげてくれた様な気がする。私どもより、もつと小さな時分から、もつと度々見た人で、今東京に住んでゐる方々も多い事 …
読書目安時間:約4分
文楽の人形が来て、今年はとりわけ、大評判をとつた事は、私どもの肩身をひろげてくれた様な気がする。私どもより、もつと小さな時分から、もつと度々見た人で、今東京に住んでゐる方々も多い事 …
手習鑑見物記(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
歌舞妓の春を謳歌するには、稍物寂しいが、其でも尚最後の花盛りに見呆けて愉しむことの出来る「手習鑑」昼夜通しの興行である。無理算段して百花繚乱たる様を見せようとするのは、見物の心を知 …
読書目安時間:約2分
歌舞妓の春を謳歌するには、稍物寂しいが、其でも尚最後の花盛りに見呆けて愉しむことの出来る「手習鑑」昼夜通しの興行である。無理算段して百花繚乱たる様を見せようとするのは、見物の心を知 …
手習鑑雑談(新字旧仮名)
読書目安時間:約28分
私どもの、青年時代には、歌舞妓芝居を見ると言ふ事は、恥しい事であつた。つまり、芝居は紳士の見るべきものではなかつた。だから今以て、私には、若い友人たちの様に、朗らかな気持ちで、芝居 …
読書目安時間:約28分
私どもの、青年時代には、歌舞妓芝居を見ると言ふ事は、恥しい事であつた。つまり、芝居は紳士の見るべきものではなかつた。だから今以て、私には、若い友人たちの様に、朗らかな気持ちで、芝居 …
手習鑑評判記(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
その写実主義が、意外に強靭であり、理論的に徹したところのあるものだといふことを、こんどの幸四郎の舞台に見て、しみ/″\快く感じた。日本の自然派のまだ現れなかつた明治三十年前半の写実 …
読書目安時間:約5分
その写実主義が、意外に強靭であり、理論的に徹したところのあるものだといふことを、こんどの幸四郎の舞台に見て、しみ/″\快く感じた。日本の自然派のまだ現れなかつた明治三十年前半の写実 …
同胞沖縄の芸能の為に(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
渡嘉敷守良君が戦争中を無事でゐたことは、何にしても、琉球芸能にとつて幸であつたと思ふ。戦争前に新垣松含が亡くなり、又最幸福さうに見えて、定めて円満な晩年を遂げるだらうと思つてゐた玉 …
読書目安時間:約2分
渡嘉敷守良君が戦争中を無事でゐたことは、何にしても、琉球芸能にとつて幸であつたと思ふ。戦争前に新垣松含が亡くなり、又最幸福さうに見えて、定めて円満な晩年を遂げるだらうと思つてゐた玉 …
東北民謡の旅から(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
奥州から出羽へかけての旅、時もちやうど田植ゑに近くて、馬鍬や、朳を使ふ人々が、毎日午前中に乗つてゐた汽車の窓の眺めでした。かうして民謡試聴会場に這入ると必、何か農耕と関係の深い民謡 …
読書目安時間:約11分
奥州から出羽へかけての旅、時もちやうど田植ゑに近くて、馬鍬や、朳を使ふ人々が、毎日午前中に乗つてゐた汽車の窓の眺めでした。かうして民謡試聴会場に這入ると必、何か農耕と関係の深い民謡 …
「とこよ」と「まれびと」と(新字旧仮名)
読書目安時間:約30分
稀に来る人と言ふ意義から、珍客をまれびとと言ひ、其屈折がまらひと・まらうどとなると言ふ風に考へて居るのが、従来の語原説である。近世風に見れば、適切なものと言はれる。併し古代人の持つ …
読書目安時間:約30分
稀に来る人と言ふ意義から、珍客をまれびとと言ひ、其屈折がまらひと・まらうどとなると言ふ風に考へて居るのが、従来の語原説である。近世風に見れば、適切なものと言はれる。併し古代人の持つ …
長唄のために(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私どもの様に大阪の町の中に育つた者にとつては、江戸長唄は生れだちから縁が少かつた。 上方では、旧幕時代から引き続いて、明治の中頃に到るまで、関東から来た芸謡は、すべて、長唄であらう …
読書目安時間:約2分
私どもの様に大阪の町の中に育つた者にとつては、江戸長唄は生れだちから縁が少かつた。 上方では、旧幕時代から引き続いて、明治の中頃に到るまで、関東から来た芸謡は、すべて、長唄であらう …
夏芝居(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
真夏の天地は、昼も夜も、まことに澄みきつた寂しさである。日の光りの照り極まつた真昼の街衢に、電信柱のおとす影。どうかすると、月の夜を思はせる静けさの極みである。夜は又夜で、白昼の如 …
読書目安時間:約27分
真夏の天地は、昼も夜も、まことに澄みきつた寂しさである。日の光りの照り極まつた真昼の街衢に、電信柱のおとす影。どうかすると、月の夜を思はせる静けさの極みである。夜は又夜で、白昼の如 …
「なよたけ」の解釈(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
その頃、目に故障を持つてゐた戸板君が、戦争に出ることになつた。案じてゐると、もうどつかで苦しんでるだらうと思ふ時分、ひよつくり帰つて来た。よかつたねと言つてゐると、其場ですぐ言ひ出 …
読書目安時間:約6分
その頃、目に故障を持つてゐた戸板君が、戦争に出ることになつた。案じてゐると、もうどつかで苦しんでるだらうと思ふ時分、ひよつくり帰つて来た。よかつたねと言つてゐると、其場ですぐ言ひ出 …
日琉語族論(新字旧仮名)
読書目安時間:約51分
完全な比較研究が、姑く望まれない。単に類似点を、日琉語族の間につきとめて行くと言ふ程度のものにとゞまるであらう。唯さう言ふ簡単な為事も、人文地理上の変革から、問題にせられなくなる時 …
読書目安時間:約51分
完全な比較研究が、姑く望まれない。単に類似点を、日琉語族の間につきとめて行くと言ふ程度のものにとゞまるであらう。唯さう言ふ簡単な為事も、人文地理上の変革から、問題にせられなくなる時 …
日本芸能の特殊性(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
私の演題には、二つの説明して置かなければならぬことがあります。第一は芸能と言ふこと、第二は特殊性と言ふことです。特殊性と言ふ語は、実は説明しなくともすむ事はすみますが、芸能と言ふこ …
読書目安時間:約11分
私の演題には、二つの説明して置かなければならぬことがあります。第一は芸能と言ふこと、第二は特殊性と言ふことです。特殊性と言ふ語は、実は説明しなくともすむ事はすみますが、芸能と言ふこ …
日本芸能の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
お互ひにおめでたうございます。どうぞこの上とも皆さんのお力をもちまして、この会の目的が達成せられますやうに、また努めて行きますうちに、だん/\新しいよい目的を発見して、展開して行く …
読書目安時間:約9分
お互ひにおめでたうございます。どうぞこの上とも皆さんのお力をもちまして、この会の目的が達成せられますやうに、また努めて行きますうちに、だん/\新しいよい目的を発見して、展開して行く …
日本書と日本紀と(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
一紀といふことばの意義 今後、機会のある毎に、釈いて行つて見たいと思ふ、日本書紀と言ふ書物に絡んだ、いろんな疑念の中、第一にほぐしてかゝらねばならぬのは、名義とその用法とである。 …
読書目安時間:約14分
一紀といふことばの意義 今後、機会のある毎に、釈いて行つて見たいと思ふ、日本書紀と言ふ書物に絡んだ、いろんな疑念の中、第一にほぐしてかゝらねばならぬのは、名義とその用法とである。 …
日本の女形:――三代目中村梅玉論――(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
今の梅玉が、福助から改名した披露の狂言は、その当時、親をがみに正月郷家に帰つてゐて、見ることが出来た。「石田局」を出し物とし、ほかに主立つた役では今一つ「安達原」の袖萩を勤めてゐた …
読書目安時間:約9分
今の梅玉が、福助から改名した披露の狂言は、その当時、親をがみに正月郷家に帰つてゐて、見ることが出来た。「石田局」を出し物とし、ほかに主立つた役では今一つ「安達原」の袖萩を勤めてゐた …
日本の郷土芸能の為に(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
日本は、美しく清らかな郷土芸能の国である。これは事実であつて、誇張でも虚構でもない。其を相共目前に展観して、我々の民族性に対して、自ら信頼を持つやうにしたい。さう思つて我々は、戦争 …
読書目安時間:約2分
日本は、美しく清らかな郷土芸能の国である。これは事実であつて、誇張でも虚構でもない。其を相共目前に展観して、我々の民族性に対して、自ら信頼を持つやうにしたい。さう思つて我々は、戦争 …
日本美(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
私は日本の民俗の上からお話を申し上げたいと思つてゐます。譬へば、貴女方が花をお活けになる、さうした我々に芸術的感銘をお与へにならうとする花よりも、もつとうぶな花、宗教的な花の話をし …
読書目安時間:約12分
私は日本の民俗の上からお話を申し上げたいと思つてゐます。譬へば、貴女方が花をお活けになる、さうした我々に芸術的感銘をお与へにならうとする花よりも、もつとうぶな花、宗教的な花の話をし …
日本品詞論(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
語根 日本品詞組織の考察は動詞の解体からのを便利とする。先づ其の構造の基礎的要素として語根語尾の二部を対立せしめることに付いては、誰も異存の無いはずである。ところが、此の両者の結合 …
読書目安時間:約5分
語根 日本品詞組織の考察は動詞の解体からのを便利とする。先づ其の構造の基礎的要素として語根語尾の二部を対立せしめることに付いては、誰も異存の無いはずである。ところが、此の両者の結合 …
日本文学における一つの象徴(新字旧仮名)
読書目安時間:約18分
父君早世の後、辛い境涯が続いた。物豊かに備つた御殿も、段々がらんとした古屋敷になつて行く。其だけに、教養を積むこともなく、そんな中で唯大きくなつたと言ふばかりの常陸の姫君、家柄は限 …
読書目安時間:約18分
父君早世の後、辛い境涯が続いた。物豊かに備つた御殿も、段々がらんとした古屋敷になつて行く。其だけに、教養を積むこともなく、そんな中で唯大きくなつたと言ふばかりの常陸の姫君、家柄は限 …
日本文学の発生(新字旧仮名)
読書目安時間:約35分
私は、日本文学の発生について、既に屡〻書いて居る。その都度、幾分違つた方面から、筆をおろしてゐるのだが、どうも、千篇一律になつて居さうなひけ目を感じる。此稿においては、もつと方面を …
読書目安時間:約35分
私は、日本文学の発生について、既に屡〻書いて居る。その都度、幾分違つた方面から、筆をおろしてゐるのだが、どうも、千篇一律になつて居さうなひけ目を感じる。此稿においては、もつと方面を …
日本文学の発生(新字旧仮名)
読書目安時間:約54分
何度目かの日本文学の発生を書くことになつた。此には、別に序説のやうなものがあつて、此文章と殆ど同時に発表することになつてゐるから、具体的なことを、落ちついて書き進めても、さし支へは …
読書目安時間:約54分
何度目かの日本文学の発生を書くことになつた。此には、別に序説のやうなものがあつて、此文章と殆ど同時に発表することになつてゐるから、具体的なことを、落ちついて書き進めても、さし支へは …
日本文学の発生:――その基礎論――(新字旧仮名)
読書目安時間:約53分
河内里(土中下。)右、由川為名。此里之田不敷草下苗子。所以然者、住吉大神上坐之時、食於此村。爾、従神等、人苅置草解散為坐。爾時草主大患訴於大神、判云汝田苗者、必雖不敷草、如敷草生。 …
読書目安時間:約53分
河内里(土中下。)右、由川為名。此里之田不敷草下苗子。所以然者、住吉大神上坐之時、食於此村。爾、従神等、人苅置草解散為坐。爾時草主大患訴於大神、判云汝田苗者、必雖不敷草、如敷草生。 …
日本文章の発想法の起り(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
古代の文章の特徴と云ふと、誰しも対句・畳句・枕詞・譬喩などを挙げる。私はかういふ順序で話して行きたい。 対句———畳句 ↓ 譬喩→枕詞←序歌矚目発想——待想独白——象徴 畳句は不整 …
読書目安時間:約12分
古代の文章の特徴と云ふと、誰しも対句・畳句・枕詞・譬喩などを挙げる。私はかういふ順序で話して行きたい。 対句———畳句 ↓ 譬喩→枕詞←序歌矚目発想——待想独白——象徴 畳句は不整 …
女房文学から隠者文学へ:後期王朝文学史(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間10分
一女房歌合せ 数ある歌合せのうちに、時々、左の一の座其他に、女房とばかり名告つた読人が据ゑられてゐる。禁裡・仙洞などで催されたものなら、匿名の主は、代々の尊貴にわたらせられる事は言 …
読書目安時間:約1時間10分
一女房歌合せ 数ある歌合せのうちに、時々、左の一の座其他に、女房とばかり名告つた読人が据ゑられてゐる。禁裡・仙洞などで催されたものなら、匿名の主は、代々の尊貴にわたらせられる事は言 …
人形の起源(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
人形は古くは雛と言つた。雛といふと、雛鳥とか雛型とか言つて、小さい感じが先に立つ。併し、大きい人形もあつたのである。即、巨人を偶像化した人形が過去にもあつたし、現在にもある。これは …
読書目安時間:約2分
人形は古くは雛と言つた。雛といふと、雛鳥とか雛型とか言つて、小さい感じが先に立つ。併し、大きい人形もあつたのである。即、巨人を偶像化した人形が過去にもあつたし、現在にもある。これは …
人形の話(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
歌舞伎に関係のある話は、御祭りの芝の舞台の話でしまっておき、この章では話を変えて、人形の話を簡単にしておきたいと思う。前に人形の舞台と歌舞伎芝居の舞台との関係について、ごくおおざっ …
読書目安時間:約9分
歌舞伎に関係のある話は、御祭りの芝の舞台の話でしまっておき、この章では話を変えて、人形の話を簡単にしておきたいと思う。前に人形の舞台と歌舞伎芝居の舞台との関係について、ごくおおざっ …
人間悪の創造(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
若い頃、よく衆生の恩など言ふ語を教はつたものだが、その用語例に包含させては、ちよつと冷淡過ぎる氣もする。併し誰でも讀んで居り、又その中の何分の一かゞ、ちよつとも讀まないでゐて、而も …
読書目安時間:約5分
若い頃、よく衆生の恩など言ふ語を教はつたものだが、その用語例に包含させては、ちよつと冷淡過ぎる氣もする。併し誰でも讀んで居り、又その中の何分の一かゞ、ちよつとも讀まないでゐて、而も …
嫉みの話(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
憎しみは人間の根本的な感情とされているが、時代の推移とともに変わってきている。 次に、嫉妬について少し考えてみる。嫉妬も人間の根本的な感情で、わずかな時間では変わりもせぬし、地方や …
読書目安時間:約10分
憎しみは人間の根本的な感情とされているが、時代の推移とともに変わってきている。 次に、嫉妬について少し考えてみる。嫉妬も人間の根本的な感情で、わずかな時間では変わりもせぬし、地方や …
根子の番楽・金砂の田楽(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
今度秋田県北秋田郡荒瀬村根子といふ山の中の村から、番楽といふものが来る。番楽といふのは、奥州のあちらこちらにあるので、多く此字をあてゝゐるが、この字が当るかどうか訣らぬ。何かの参考 …
読書目安時間:約17分
今度秋田県北秋田郡荒瀬村根子といふ山の中の村から、番楽といふものが来る。番楽といふのは、奥州のあちらこちらにあるので、多く此字をあてゝゐるが、この字が当るかどうか訣らぬ。何かの参考 …
能楽に於ける「わき」の意義:「翁の発生」の終篇(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
一二つの問題 日本の民俗芸術を観察するにあたつて、我々は二つの大きな問題に、注意を向けなければならぬ。平安朝の末から、鎌倉・室町時代にかけて、とび/\に、其中心がある事を考へて見る …
読書目安時間:約10分
一二つの問題 日本の民俗芸術を観察するにあたつて、我々は二つの大きな問題に、注意を向けなければならぬ。平安朝の末から、鎌倉・室町時代にかけて、とび/\に、其中心がある事を考へて見る …
能舞台の解説(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
此会の此役は久しく、先輩山崎楽堂さんが続けられてゐましたが、今度は私が代つて申すことになりました。謂はゞ翁の替りに、風流が出て来た様なものです。とは申せ、私にはお能の解説などゝ謂つ …
読書目安時間:約8分
此会の此役は久しく、先輩山崎楽堂さんが続けられてゐましたが、今度は私が代つて申すことになりました。謂はゞ翁の替りに、風流が出て来た様なものです。とは申せ、私にはお能の解説などゝ謂つ …
はちまきの話(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
現在の事物の用途が、昔から全く変らなかつた、と考へるのは、大きな間違ひである。用途が分化すれば、随つて、其意味もだん/″\変化して来る。はちまきの話は、ちようど此を説明するに、よい …
読書目安時間:約11分
現在の事物の用途が、昔から全く変らなかつた、と考へるのは、大きな間違ひである。用途が分化すれば、随つて、其意味もだん/″\変化して来る。はちまきの話は、ちようど此を説明するに、よい …
花幾年(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
東京の春があらかた過ぎてから、ことしの花はどうだったかと思い出した年があった。自分だけかと思って、恥しいことだとひとりで赭くなって、誰にも言わなかった。五月近くなってから、「ことし …
読書目安時間:約5分
東京の春があらかた過ぎてから、ことしの花はどうだったかと思い出した年があった。自分だけかと思って、恥しいことだとひとりで赭くなって、誰にも言わなかった。五月近くなってから、「ことし …
花の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約31分
茲には主として、神事に使はれた花の事を概括して、話して見たいと思ふ。 平安朝中頃の歌の主題になつて居た歌枕の中に、特に、非常な興味を持たれたものは、東国の歌枕である。 東国のものは …
読書目安時間:約31分
茲には主として、神事に使はれた花の事を概括して、話して見たいと思ふ。 平安朝中頃の歌の主題になつて居た歌枕の中に、特に、非常な興味を持たれたものは、東国の歌枕である。 東国のものは …
花の前花のあと(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
歌舞妓にからんだ問題は、これをまじめにあつかふと、人が笑ふくらゐになつてゐる。と言ふと誰でも、それは誇張だと思ふだらう。けれども、さう言ふ下から、誰でもまじめには考へてゐない。うつ …
読書目安時間:約16分
歌舞妓にからんだ問題は、これをまじめにあつかふと、人が笑ふくらゐになつてゐる。と言ふと誰でも、それは誇張だと思ふだらう。けれども、さう言ふ下から、誰でもまじめには考へてゐない。うつ …
妣が国へ・常世へ(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
われ/\の祖たちが、まだ、青雲のふる郷を夢みて居た昔から、此話ははじまる。而も、とんぼう髷を頂に据ゑた祖父・曾祖父の代まで、萌えては朽ち、絶えては孼えして、思へば、長い年月を、民族 …
読書目安時間:約16分
われ/\の祖たちが、まだ、青雲のふる郷を夢みて居た昔から、此話ははじまる。而も、とんぼう髷を頂に据ゑた祖父・曾祖父の代まで、萌えては朽ち、絶えては孼えして、思へば、長い年月を、民族 …
春永話(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
むら/\と見えてたなびく顔見世の幟のほどを過ぎて来にけり 昭和十年三月、私の作る所である。歌は誇るに値せぬが、之に関聯して私ひとり思ひ出の禁じ難いものがある。京の顔見世は、近年十二 …
読書目安時間:約7分
むら/\と見えてたなびく顔見世の幟のほどを過ぎて来にけり 昭和十年三月、私の作る所である。歌は誇るに値せぬが、之に関聯して私ひとり思ひ出の禁じ難いものがある。京の顔見世は、近年十二 …
反省の文学源氏物語(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
源氏物語は、一口に言えば、光源氏を主人公として書かれた物語である。此光ると言うのは、我々の普通に考える様な名とは、少し違った意味を持っている。女の方に例を取って見ると、源氏の生母桐 …
読書目安時間:約17分
源氏物語は、一口に言えば、光源氏を主人公として書かれた物語である。此光ると言うのは、我々の普通に考える様な名とは、少し違った意味を持っている。女の方に例を取って見ると、源氏の生母桐 …
髯籠の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約36分
十三四年前、友人等と葛城山の方への旅行した時、牛滝から犬鳴山へ尾根伝ひの路に迷うて、紀州西河原と言ふ山村に下りて了ひ、はからずも一夜の宿を取つたことがある。其翌朝早く其処を立つて、 …
読書目安時間:約36分
十三四年前、友人等と葛城山の方への旅行した時、牛滝から犬鳴山へ尾根伝ひの路に迷うて、紀州西河原と言ふ山村に下りて了ひ、はからずも一夜の宿を取つたことがある。其翌朝早く其処を立つて、 …
雛祭りとお彼岸(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
明治以後、暦法の変化によって年中行事の日取りが変ったものと、変らないものとがある。だから、三月の行事といっても旧暦によって行っている行事はもと二月であったものが三月のこととなり、旧 …
読書目安時間:約4分
明治以後、暦法の変化によって年中行事の日取りが変ったものと、変らないものとがある。だから、三月の行事といっても旧暦によって行っている行事はもと二月であったものが三月のこととなり、旧 …
雛祭りの話(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
一淡島様 黙阿弥の脚本の「松竹梅湯島掛額」は八百屋お七をしくんだものであるが、其お七の言葉に、内裏びなを羨んで、男を住吉様女を淡島様といふ条りが出てくる。お雛様を祭る婦人方にも、存 …
読書目安時間:約8分
一淡島様 黙阿弥の脚本の「松竹梅湯島掛額」は八百屋お七をしくんだものであるが、其お七の言葉に、内裏びなを羨んで、男を住吉様女を淡島様といふ条りが出てくる。お雛様を祭る婦人方にも、存 …
封印切漫評(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
紙治で唸らされた印象のまだ消えやらぬ東京人士の頭に、更にその俤を深むる為に上つて来た鴈治郎の忠兵衛。観客の予期と成駒屋の自信と、如何程まで一致したか。其は感情派の批評に任せて、自分 …
読書目安時間:約4分
紙治で唸らされた印象のまだ消えやらぬ東京人士の頭に、更にその俤を深むる為に上つて来た鴈治郎の忠兵衛。観客の予期と成駒屋の自信と、如何程まで一致したか。其は感情派の批評に任せて、自分 …
副詞表情の発生(新字旧仮名)
読書目安時間:約29分
——けなばけぬかに 道に逢ひてゑますがからに、零雪乃消者消香二恋云わぎも(万葉巻四) ……まつろはず立ち対ひしも、露霜之消者消倍久、ゆく鳥のあらそふはしに、(同巻二) 一云ふ、朝露 …
読書目安時間:約29分
——けなばけぬかに 道に逢ひてゑますがからに、零雪乃消者消香二恋云わぎも(万葉巻四) ……まつろはず立ち対ひしも、露霜之消者消倍久、ゆく鳥のあらそふはしに、(同巻二) 一云ふ、朝露 …
無頼の徒の芸術(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
我々の生活してゐる明治・大正・昭和の前、江戸時代、その前室町時代、その前鎌倉時代——その鎌倉から江戸迄の武家の時代と言ふものが、どの時代でも同じやうに思はれますが、違つてゐます。武 …
読書目安時間:約9分
我々の生活してゐる明治・大正・昭和の前、江戸時代、その前室町時代、その前鎌倉時代——その鎌倉から江戸迄の武家の時代と言ふものが、どの時代でも同じやうに思はれますが、違つてゐます。武 …
文学に於ける虚構(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
このごろ、短歌の上で虚構の問題が大分取り扱はれて來た。文學に虚構といふことは、昔から認められてゐた。日本文學では、それを繪空事・歌虚言などゝ言つて、文學には嘘の伴ふものだといふこと …
読書目安時間:約10分
このごろ、短歌の上で虚構の問題が大分取り扱はれて來た。文學に虚構といふことは、昔から認められてゐた。日本文學では、それを繪空事・歌虚言などゝ言つて、文學には嘘の伴ふものだといふこと …
文学を愛づる心(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
文學を愛でゝめで痴れて、やがて一生を終へようとして居る一人の、追憶談に過ぎぬかも知れない。 * 文學をめでゝ愛で痴れて、而も其愛好者の一生が、何の變化も受けなかつたものとすれば、そ …
読書目安時間:約6分
文學を愛でゝめで痴れて、やがて一生を終へようとして居る一人の、追憶談に過ぎぬかも知れない。 * 文學をめでゝ愛で痴れて、而も其愛好者の一生が、何の變化も受けなかつたものとすれば、そ …
文芸の力 時代の力(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
あゝ言ふ時代別けは、実はおもしろく思はぬのだが、一往は、世間に従うておいてよい。東山だの、桃山だの、と言ふ称へである。 この所謂東山時代・桃山時代、其に似た心持ちを、十分に持つた江 …
読書目安時間:約5分
あゝ言ふ時代別けは、実はおもしろく思はぬのだが、一往は、世間に従うておいてよい。東山だの、桃山だの、と言ふ称へである。 この所謂東山時代・桃山時代、其に似た心持ちを、十分に持つた江 …
文楽の光明(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
今の時期の日本人に、一番見せたく思はれるのは、文楽座の舞台が、最濃厚に持つてゐる愁ひの芸術である。極度に反省力を失つた我々は、心の底から寂しい光りに照されて来なければ、ほんたうに種 …
読書目安時間:約3分
今の時期の日本人に、一番見せたく思はれるのは、文楽座の舞台が、最濃厚に持つてゐる愁ひの芸術である。極度に反省力を失つた我々は、心の底から寂しい光りに照されて来なければ、ほんたうに種 …
幣束から旗さし物へ(新字旧仮名)
読書目安時間:約18分
千年あまりも前に、我々の祖先の口馴れた「ある」と言ふ語がある。「産る」の敬語だと其意味を釈き棄てたのは、古学者の不念であつた。私は、ある必要から、万葉集に現れたゞけの「ある」の意味 …
読書目安時間:約18分
千年あまりも前に、我々の祖先の口馴れた「ある」と言ふ語がある。「産る」の敬語だと其意味を釈き棄てたのは、古学者の不念であつた。私は、ある必要から、万葉集に現れたゞけの「ある」の意味 …
方言(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
○くびだけ今は方言と言はれぬ語であるが、くびだけは首ばかりが水面に出てゐる様子で、沈湎・惑溺の甚しい事を言ふのだ、と思うてゐた処、大阪天満女夫池に、妻を追うて入つた夫の歌と言ふのに …
読書目安時間:約14分
○くびだけ今は方言と言はれぬ語であるが、くびだけは首ばかりが水面に出てゐる様子で、沈湎・惑溺の甚しい事を言ふのだ、と思うてゐた処、大阪天満女夫池に、妻を追うて入つた夫の歌と言ふのに …
ほうとする話:祭りの発生 その一(新字旧仮名)
読書目安時間:約31分
ほうとする程長い白浜の先は、また、目も届かぬ海が揺れてゐる。其波の青色の末が、自づと伸しあがるやうになつて、あたまの上までひろがつて来てゐる空である。ふり顧ると、其が又、地平をくぎ …
読書目安時間:約31分
ほうとする程長い白浜の先は、また、目も届かぬ海が揺れてゐる。其波の青色の末が、自づと伸しあがるやうになつて、あたまの上までひろがつて来てゐる空である。ふり顧ると、其が又、地平をくぎ …
「ほ」・「うら」から「ほがひ」へ(新字旧仮名)
読書目安時間:約27分
ほぐ・ほがふなど言ふ語は、我々の国の文献時代には、既に固定して居たものであつた。だから、当時の用例を集めて、其等に通じた意味を引き出して見たところで、其は固定し変化しきつた不完全な …
読書目安時間:約27分
ほぐ・ほがふなど言ふ語は、我々の国の文献時代には、既に固定して居たものであつた。だから、当時の用例を集めて、其等に通じた意味を引き出して見たところで、其は固定し変化しきつた不完全な …
盆踊りと祭屋台と(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
一盂蘭盆と魂祭りと 盆の月夜はやがて近づく。広小路のそゞろ歩きに、草市のはかない情趣を懐しみはするけれど、秋に先だつ東京の盂蘭盆には、虫さへ鳴かない。年に一度開くと言はれた地獄の釜 …
読書目安時間:約17分
一盂蘭盆と魂祭りと 盆の月夜はやがて近づく。広小路のそゞろ歩きに、草市のはかない情趣を懐しみはするけれど、秋に先だつ東京の盂蘭盆には、虫さへ鳴かない。年に一度開くと言はれた地獄の釜 …
盆踊りの話(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
盆の祭り(仮りに祭りと言うて置く)は、世間では、死んだ聖霊を迎へて祭るものであると言うて居るが、古代に於て、死霊・生魂に区別がない日本では、盆の祭りは、謂はゞ魂を切り替へる時期であ …
読書目安時間:約9分
盆の祭り(仮りに祭りと言うて置く)は、世間では、死んだ聖霊を迎へて祭るものであると言うて居るが、古代に於て、死霊・生魂に区別がない日本では、盆の祭りは、謂はゞ魂を切り替へる時期であ …
舞ひと踊りと(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
日本の芸能には古代からまひとをどりとが厳重に別れてゐた。いろんな用例からみても、旋回運動がまひ、跳躍運動がをどりであつた事が明らかである。芸能と言ふより、むしろ生理的な事実について …
読書目安時間:約4分
日本の芸能には古代からまひとをどりとが厳重に別れてゐた。いろんな用例からみても、旋回運動がまひ、跳躍運動がをどりであつた事が明らかである。芸能と言ふより、むしろ生理的な事実について …
まじなひの一方面(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
まじなひ殊に、民間療法と言はれてゐるものゝ中には、一種讐討ち療法とでも、命くべきものがある様である。蝮に咬まれた時は、即座に、其蝮を引き裂いて、なすりつけて置きさへすればよいとか、 …
読書目安時間:約3分
まじなひ殊に、民間療法と言はれてゐるものゝ中には、一種讐討ち療法とでも、命くべきものがある様である。蝮に咬まれた時は、即座に、其蝮を引き裂いて、なすりつけて置きさへすればよいとか、 …
まといの話(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
一のぼりといふもの 中頃文事にふつゝかであつた武家は、黙つて色々な為事をして置いた。為に、多くの田舎侍の間に、自然に進化して来た事柄は、其固定した時や語原さへ、定かならぬが多い。然 …
読書目安時間:約9分
一のぼりといふもの 中頃文事にふつゝかであつた武家は、黙つて色々な為事をして置いた。為に、多くの田舎侍の間に、自然に進化して来た事柄は、其固定した時や語原さへ、定かならぬが多い。然 …
真間・蘆屋の昔がたり(新字旧仮名)
読書目安時間:約28分
この国学院大学の前身の国学院、及び国学院大学で、私ども万葉集を習ひました。その時分ちようど、木村正辞先生といふ、近世での万葉学者がをられまして、私ども教へて頂きました。 その外に、 …
読書目安時間:約28分
この国学院大学の前身の国学院、及び国学院大学で、私ども万葉集を習ひました。その時分ちようど、木村正辞先生といふ、近世での万葉学者がをられまして、私ども教へて頂きました。 その外に、 …
まれびとの歴史(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
こゝに一例をとつて、われ/\の国の、村の生活・家の生活のつきとめられる限りの古い形の幾分の俤を描くと共に、日本文学発生の姿をとり出して見たいと思ふ。私は、まれびとと言ふ語及び、その …
読書目安時間:約12分
こゝに一例をとつて、われ/\の国の、村の生活・家の生活のつきとめられる限りの古い形の幾分の俤を描くと共に、日本文学発生の姿をとり出して見たいと思ふ。私は、まれびとと言ふ語及び、その …
万葉集研究(新字旧仮名)
読書目安時間:約59分
一万葉詞章と踏歌章曲と 万葉集の名は、平安朝の初め頃に固定したものと見てよいと思ふ。 この書物自身が、其頃に出来てゐる。 此集に絡んだ、第一の資料は古今集の仮名・真名両序文である。 …
読書目安時間:約59分
一万葉詞章と踏歌章曲と 万葉集の名は、平安朝の初め頃に固定したものと見てよいと思ふ。 この書物自身が、其頃に出来てゐる。 此集に絡んだ、第一の資料は古今集の仮名・真名両序文である。 …
万葉集に現れた古代信仰:――たまの問題――(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
万葉集に現れた古代信仰といふ題ですが、問題が広過ぎて、とりとめもない話になりさうです。それで極めて狭く限つて、只今はたまに関して話してみます。 玉といへば、光りかゞやく美しい装飾具 …
読書目安時間:約12分
万葉集に現れた古代信仰といふ題ですが、問題が広過ぎて、とりとめもない話になりさうです。それで極めて狭く限つて、只今はたまに関して話してみます。 玉といへば、光りかゞやく美しい装飾具 …
万葉集の解題(新字旧仮名)
読書目安時間:約22分
まづ万葉集の歌が如何にしてあらはれて来たか、更に日本の歌がどういふ処から生れて来たか、といふこと即、万葉集に到る日本の歌の文学史を述べ、万葉集の書物の歴史を述べたいと思ふ。 すべて …
読書目安時間:約22分
まづ万葉集の歌が如何にしてあらはれて来たか、更に日本の歌がどういふ処から生れて来たか、といふこと即、万葉集に到る日本の歌の文学史を述べ、万葉集の書物の歴史を述べたいと思ふ。 すべて …
万葉集のなり立ち(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
一奈良の宮の御代 万葉集一部の、大体出来上つたのは何時か。其は、訣らない、と答へる方が寧、ほんとうであらう。併し、私としての想像説を述べて、此迄人の持つてゐた考への、大いに訂正せね …
読書目安時間:約17分
一奈良の宮の御代 万葉集一部の、大体出来上つたのは何時か。其は、訣らない、と答へる方が寧、ほんとうであらう。併し、私としての想像説を述べて、此迄人の持つてゐた考への、大いに訂正せね …
万葉びとの生活(新字旧仮名)
読書目安時間:約18分
飛鳥の都以後奈良朝以前の、感情生活の記録が、万葉集である。万葉びとと呼ぶのは、此間に、此国土の上に現れて、様々な生活を遂げた人の総べてを斥す。啻に万葉集の作者として、名を廿巻のどこ …
読書目安時間:約18分
飛鳥の都以後奈良朝以前の、感情生活の記録が、万葉集である。万葉びとと呼ぶのは、此間に、此国土の上に現れて、様々な生活を遂げた人の総べてを斥す。啻に万葉集の作者として、名を廿巻のどこ …
三河の山村(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
早川(孝太郎)さんが遠慮をして居りますから私が代つて御話申し上げます。早川さんは、御承知の新興大和絵画会の会員でございまして、そのお描きになつた絵が今度の展覧会で、何やら褒美を受け …
読書目安時間:約2分
早川(孝太郎)さんが遠慮をして居りますから私が代つて御話申し上げます。早川さんは、御承知の新興大和絵画会の会員でございまして、そのお描きになつた絵が今度の展覧会で、何やら褒美を受け …
御国座へ:――江戸狂言の源之助君――(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
芝居への注文が大分出る様ですから、私も尻馬に乗つて、御国座の事を申させて頂きます。あの芝居は何と言つても、源之助が持つて、死んで行く江戸の狂言の活きた記録を頭に印象させる為に行く見 …
読書目安時間:約1分
芝居への注文が大分出る様ですから、私も尻馬に乗つて、御国座の事を申させて頂きます。あの芝居は何と言つても、源之助が持つて、死んで行く江戸の狂言の活きた記録を頭に印象させる為に行く見 …
巫女と遊女と(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
我々は遊郭の生活は穢いものと思つてゐるが、江戸時代の小説・随筆等を読むと、江戸時代の町人は遊郭生活を尊敬してゐる。段々調べてみるとその生活も訣る。遊びにゆく人達は目的は同じところな …
読書目安時間:約6分
我々は遊郭の生活は穢いものと思つてゐるが、江戸時代の小説・随筆等を読むと、江戸時代の町人は遊郭生活を尊敬してゐる。段々調べてみるとその生活も訣る。遊びにゆく人達は目的は同じところな …
水の女(新字新仮名)
読書目安時間:約37分
口頭伝承の古代詞章の上の、語句や、表現の癖が、特殊な——ある詞章限りの——ものほど、早く固定するはずである。だから、文字記録以前にすでにすでに、時代時代の言語情調や、合理観がはいっ …
読書目安時間:約37分
口頭伝承の古代詞章の上の、語句や、表現の癖が、特殊な——ある詞章限りの——ものほど、早く固定するはずである。だから、文字記録以前にすでにすでに、時代時代の言語情調や、合理観がはいっ …
水の女(新字旧仮名)
読書目安時間:約36分
口頭伝承の古代詞章の上の、語句や、表現の癖が、特殊な——ある詞章限りの——ものほど、早く固定するはずである。だから、文字記録以前に既にすでに、時代々々の言語情調や、合理観が這入つて …
読書目安時間:約36分
口頭伝承の古代詞章の上の、語句や、表現の癖が、特殊な——ある詞章限りの——ものほど、早く固定するはずである。だから、文字記録以前に既にすでに、時代々々の言語情調や、合理観が這入つて …
見ものは合邦辻(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
東京劇場の七月興行のよさは「合邦辻」のよさである。これに俊徳丸を菊五郎がつきあつたら、どんなに歌舞妓復興の気運を高めることだらう。「髪結新三」は、菊五郎式の解釈は、富永町の場で急に …
読書目安時間:約3分
東京劇場の七月興行のよさは「合邦辻」のよさである。これに俊徳丸を菊五郎がつきあつたら、どんなに歌舞妓復興の気運を高めることだらう。「髪結新三」は、菊五郎式の解釈は、富永町の場で急に …
民俗芸能の春(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
日本青年館の長い履歴の間に、人は、その多くのよい成績をあげるであらう。だが若し、曾て数年間連続して春秋毎に催した郷土舞踊・民謡の会をあげることを忘れたら、私など、その人の採点法を大 …
読書目安時間:約6分
日本青年館の長い履歴の間に、人は、その多くのよい成績をあげるであらう。だが若し、曾て数年間連続して春秋毎に催した郷土舞踊・民謡の会をあげることを忘れたら、私など、その人の採点法を大 …
民族の感歎(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
斎藤さんの文学や、学問に理会のおそかったことが、私一代の後悔でもあり、遺憾でもある。勿論今の人たちのうちでは、私などが最長い愛読者であるには間違いない。ただその研究・作物を愛する道 …
読書目安時間:約4分
斎藤さんの文学や、学問に理会のおそかったことが、私一代の後悔でもあり、遺憾でもある。勿論今の人たちのうちでは、私などが最長い愛読者であるには間違いない。ただその研究・作物を愛する道 …
村で見た黒川能(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
黒川能東京公演に先だつこと二个月、私は偶然あの村(黒川村)に行き合はせて能及び狂言を見ることが出来た。(本誌前号誌上で話した通りである。)そこで上京公演の日も近いといふことを聞いた …
読書目安時間:約4分
黒川能東京公演に先だつこと二个月、私は偶然あの村(黒川村)に行き合はせて能及び狂言を見ることが出来た。(本誌前号誌上で話した通りである。)そこで上京公演の日も近いといふことを聞いた …
村々の祭り(新字旧仮名)
読書目安時間:約21分
一今宮の自慢話 ことしの夏は、そんな間がなくて、とう/\見はづして了うたので、残念に思うてゐる。毎年、どつかで見ない事のない「夏祭浪花鑑」の芝居である。音羽屋と言ふ人の、今度久しぶ …
読書目安時間:約21分
一今宮の自慢話 ことしの夏は、そんな間がなくて、とう/\見はづして了うたので、残念に思うてゐる。毎年、どつかで見ない事のない「夏祭浪花鑑」の芝居である。音羽屋と言ふ人の、今度久しぶ …
茂吉への返事(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
わたしはこゝで、駁論を書くのが、本意ではありません。そんなことをしては、忙しい中から、意見して下された、あなたの好意を無にすることに當りませう。其に第一、お申し聞けの箇條は、大體に …
読書目安時間:約10分
わたしはこゝで、駁論を書くのが、本意ではありません。そんなことをしては、忙しい中から、意見して下された、あなたの好意を無にすることに當りませう。其に第一、お申し聞けの箇條は、大體に …
桃の伝説(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
「桃・栗三年、柿八年、柚は九年の花盛り」といふ諺唄がある。実りものゝ樹としては、桃は果実を結ぶのは早い方である。 一体、桃には、魔除け・悪気ばらひの力があるものと信ぜられて来てゐる …
読書目安時間:約8分
「桃・栗三年、柿八年、柚は九年の花盛り」といふ諺唄がある。実りものゝ樹としては、桃は果実を結ぶのは早い方である。 一体、桃には、魔除け・悪気ばらひの力があるものと信ぜられて来てゐる …
役者の一生(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
沢村源之助の亡くなったのは昭和十一年の四月であったと思う。それから丁度一年経って木村富子さんの「花影流水」という書物が出た。木村富子さん、即、錦花氏夫人は今の源之助の継母かに当る人 …
読書目安時間:約31分
沢村源之助の亡くなったのは昭和十一年の四月であったと思う。それから丁度一年経って木村富子さんの「花影流水」という書物が出た。木村富子さん、即、錦花氏夫人は今の源之助の継母かに当る人 …
役者の一生(新字旧仮名)
読書目安時間:約31分
沢村源之助の亡くなつたのは昭和十一年の四月であつたと思ふ。それから丁度一年経つて木村富子さんの「花影流水」といふ書物が出た。木村富子さん、即、錦花氏夫人は今の源之助の継母かに当る人 …
読書目安時間:約31分
沢村源之助の亡くなつたのは昭和十一年の四月であつたと思ふ。それから丁度一年経つて木村富子さんの「花影流水」といふ書物が出た。木村富子さん、即、錦花氏夫人は今の源之助の継母かに当る人 …
「八島」語りの研究(新字旧仮名)
読書目安時間:約24分
春のはじめに、私は「八島」を語らうと思ひ立つた。ところは屋島であり、祝つて八島・矢島と言ふやうな字面を何時の代からか、用ゐ出した勝ち修羅物である。 一つは、此国の昔に戻つた気風の漲 …
読書目安時間:約24分
春のはじめに、私は「八島」を語らうと思ひ立つた。ところは屋島であり、祝つて八島・矢島と言ふやうな字面を何時の代からか、用ゐ出した勝ち修羅物である。 一つは、此国の昔に戻つた気風の漲 …
山越しの阿弥陀像の画因(新字旧仮名)
読書目安時間:約31分
極楽の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡来文化が、渡来当時の姿をさながら持ち伝へてゐると思はれながら、いつか内容は、我が国生得のものと入りかはつてゐる。さうした例の一 …
読書目安時間:約31分
極楽の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡来文化が、渡来当時の姿をさながら持ち伝へてゐると思はれながら、いつか内容は、我が国生得のものと入りかはつてゐる。さうした例の一 …
山越しの阿弥陀像の画因(旧字旧仮名)
読書目安時間:約31分
極樂の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡來文化が、渡來當時の姿をさながら持ち傳へてゐると思はれながら、いつか内容は、我が國生得のものと入りかはつてゐる。さうした例の一 …
読書目安時間:約31分
極樂の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡來文化が、渡來當時の姿をさながら持ち傳へてゐると思はれながら、いつか内容は、我が國生得のものと入りかはつてゐる。さうした例の一 …
山越しの阿弥陀像の画因(新字新仮名)
読書目安時間:約31分
極楽の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡来文化が、渡来当時の姿をさながら持ち伝えていると思われながら、いつか内容は、我が国生得のものと入りかわっている。そうした例の一 …
読書目安時間:約31分
極楽の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡来文化が、渡来当時の姿をさながら持ち伝えていると思われながら、いつか内容は、我が国生得のものと入りかわっている。そうした例の一 …
山越しの弥陀(旧字旧仮名)
読書目安時間:約31分
極樂の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡來文化が、渡來當時の姿をさながら持ち傳へてゐると思はれながら、いつか内容は、我が國生得のものと入りかはつてゐる。さうした例の一 …
読書目安時間:約31分
極樂の東門に向ふ難波の西の海入り日の影も舞ふとかや 渡來文化が、渡來當時の姿をさながら持ち傳へてゐると思はれながら、いつか内容は、我が國生得のものと入りかはつてゐる。さうした例の一 …
山の音を聴きながら(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
ようべは初めて、澄んだ空を見た。宇都宮辺と思はれる空高く、頻りに稲光りがする。もう十分秋になつて居るのに、虫一疋鳴かない。小山の上の大きな石に腰をおろして居ると、冷さが、身に沁みて …
読書目安時間:約8分
ようべは初めて、澄んだ空を見た。宇都宮辺と思はれる空高く、頻りに稲光りがする。もう十分秋になつて居るのに、虫一疋鳴かない。小山の上の大きな石に腰をおろして居ると、冷さが、身に沁みて …
山のことぶれ(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
一山を訪れる人々 明ければ、去年の正月である。初春の月半ばは、信濃・三河の境山のひどい寒村のあちこちに、過したことであつた。幾すぢかの谿を行きつめた山の入りから、更に、うなじを反ら …
読書目安時間:約10分
一山を訪れる人々 明ければ、去年の正月である。初春の月半ばは、信濃・三河の境山のひどい寒村のあちこちに、過したことであつた。幾すぢかの谿を行きつめた山の入りから、更に、うなじを反ら …
山の霜月舞:――花祭り解説――(新字旧仮名)
読書目安時間:約49分
まだあの時のひそかな感動は、消されないでゐます。小正月を控へた残雪の山の急斜面、青い麦の葉生えをそよがしてゐた微風、目ざす夜祭りの村への距離を遠く感じさせる笛の響き、其後幾度とも知 …
読書目安時間:約49分
まだあの時のひそかな感動は、消されないでゐます。小正月を控へた残雪の山の急斜面、青い麦の葉生えをそよがしてゐた微風、目ざす夜祭りの村への距離を遠く感じさせる笛の響き、其後幾度とも知 …
山の湯雑記(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
山の蜾※の巣より出で入道の上立ちどまりつつるひそかなりけり 前に来たのは、ことしの五月廿日、板谷を越えて米沢へ出ると、町は桜の花盛りであった。それほど雪解けの遅れた年である。高湯へ …
読書目安時間:約11分
山の蜾※の巣より出で入道の上立ちどまりつつるひそかなりけり 前に来たのは、ことしの五月廿日、板谷を越えて米沢へ出ると、町は桜の花盛りであった。それほど雪解けの遅れた年である。高湯へ …
雪の島:熊本利平氏に寄す(新字旧仮名)
読書目安時間:約41分
志賀の鼻を出離れても、内海とかはらぬ静かな凪ぎであつた。舳の向き加減で時たまさし替る光りを、蝙蝠傘に調節してよけながら、玄海の空にまつ直に昇る船の煙に、目を凝してゐた。艫のふなべり …
読書目安時間:約41分
志賀の鼻を出離れても、内海とかはらぬ静かな凪ぎであつた。舳の向き加減で時たまさし替る光りを、蝙蝠傘に調節してよけながら、玄海の空にまつ直に昇る船の煙に、目を凝してゐた。艫のふなべり …
雪まつりの面(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
一昨々年の初春には、苦しい目を見た。信州下伊那の奥、新野の伊豆権現の雪祭りに、早川さんと二人で、採訪旅行をしたことであつた。さうして、一週間といふもの完全に、小忌人の様な物忌みをし …
読書目安時間:約3分
一昨々年の初春には、苦しい目を見た。信州下伊那の奥、新野の伊豆権現の雪祭りに、早川さんと二人で、採訪旅行をしたことであつた。さうして、一週間といふもの完全に、小忌人の様な物忌みをし …
由良助の成立(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
大星由良助について、我々の持つてゐる知識に、ほんの少し訂正しなければならぬ点がないか知らん。まあ書いて見るが、書く程のことはないやうな気もする。一体、忠臣蔵系統の戯曲は、大体世界が …
読書目安時間:約10分
大星由良助について、我々の持つてゐる知識に、ほんの少し訂正しなければならぬ点がないか知らん。まあ書いて見るが、書く程のことはないやうな気もする。一体、忠臣蔵系統の戯曲は、大体世界が …
用言の発展(新字旧仮名)
読書目安時間:約43分
われ/\は常につくろふとかたゝかふとかいふ所謂延言の一種を使うて居つて何の疑をもおこさぬ。今日の発音ではつくろふもたゝかふも、みな終止形はおの韻をもつたら行長音なりか行長音なりにな …
読書目安時間:約43分
われ/\は常につくろふとかたゝかふとかいふ所謂延言の一種を使うて居つて何の疑をもおこさぬ。今日の発音ではつくろふもたゝかふも、みな終止形はおの韻をもつたら行長音なりか行長音なりにな …
寄席の夕立(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
寄席なんかに出入りするのは、あまりよい趣味ではない。這入るにも、後先を見すまして、つつと入りこんでしまふ。さう言ふ卑屈な心持ちを恥ぢながら、つい吸はれるやうに、席亭の客になつて行く …
読書目安時間:約6分
寄席なんかに出入りするのは、あまりよい趣味ではない。這入るにも、後先を見すまして、つつと入りこんでしまふ。さう言ふ卑屈な心持ちを恥ぢながら、つい吸はれるやうに、席亭の客になつて行く …
漂著石神論計画(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
1柳田先生の民俗学的研究上、一大体系をなす石信仰。今新な回顧の時に達した。 2諸国海岸に、古代より神像石の存在した事実。 3神像石の種類。 a定期或は、臨時に出現するもの。 ┌イ、 …
読書目安時間:約4分
1柳田先生の民俗学的研究上、一大体系をなす石信仰。今新な回顧の時に達した。 2諸国海岸に、古代より神像石の存在した事実。 3神像石の種類。 a定期或は、臨時に出現するもの。 ┌イ、 …
琉球の宗教(新字旧仮名)
読書目安時間:約46分
一はしがき 袋中大徳以来の慣用によつて、琉球神道の名で、話を進めて行かうと思ふ。それ程、内地人の心に親しく享け入れる事が出来、亦事実に於ても、内地の神道の一つの分派、或は寧、其巫女 …
読書目安時間:約46分
一はしがき 袋中大徳以来の慣用によつて、琉球神道の名で、話を進めて行かうと思ふ。それ程、内地人の心に親しく享け入れる事が出来、亦事実に於ても、内地の神道の一つの分派、或は寧、其巫女 …
「琉球の宗教」の中の一つの正誤(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
沖縄に於ける私の最信頼する友人は、学問や人格や、いろ/\な点から別々であるが、第一は、伊波普猷さんであり、その余にはまづ四人が浮ぶ。島袋源一郎さん・川平朝令さん、それから亡くなつた …
読書目安時間:約3分
沖縄に於ける私の最信頼する友人は、学問や人格や、いろ/\な点から別々であるが、第一は、伊波普猷さんであり、その余にはまづ四人が浮ぶ。島袋源一郎さん・川平朝令さん、それから亡くなつた …
霊魂の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約20分
たまとたましひと たまとたましひとは、近世的には、此二つが混乱して使はれ、大ざつぱに、同じものだと思はれて居る。尤、中には、此二つに区別があるのだらうと考へた人もあるが、明らかな答 …
読書目安時間:約20分
たまとたましひと たまとたましひとは、近世的には、此二つが混乱して使はれ、大ざつぱに、同じものだと思はれて居る。尤、中には、此二つに区別があるのだらうと考へた人もあるが、明らかな答 …
わかしとおゆと(新字旧仮名)
読書目安時間:約9分
動詞形容詞一元論のたちばは、おもに、形式のうへにあるのだが、中には、意味のうへにまでも立入つて、其説を主張する人がある。今いはうとするわかしとおゆとの如きは、其屈強な材料なのである …
読書目安時間:約9分
動詞形容詞一元論のたちばは、おもに、形式のうへにあるのだが、中には、意味のうへにまでも立入つて、其説を主張する人がある。今いはうとするわかしとおゆとの如きは、其屈強な材料なのである …
若手歌舞妓への期待(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
歌舞妓びとも、殆完全に交替してしまつた。若手と言はれる人たちの輝き出したのは、同慶である。その輝きは、其人たちの遥か背後から照すものが多い。世間は、其為に見に行くのである。かう言つ …
読書目安時間:約4分
歌舞妓びとも、殆完全に交替してしまつた。若手と言はれる人たちの輝き出したのは、同慶である。その輝きは、其人たちの遥か背後から照すものが多い。世間は、其為に見に行くのである。かう言つ …
和歌の発生と諸芸術との関係(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
私はまづ、縁遠さうな舞踊の方面からはじめるつもりである。 遊部遊部は、終身事ふること勿し。故に遊部と云ふ。(以上、義解の本文)釈に云はく、……遊部は、幽顕の境を隔て、凶癘の魂を鎮む …
読書目安時間:約17分
私はまづ、縁遠さうな舞踊の方面からはじめるつもりである。 遊部遊部は、終身事ふること勿し。故に遊部と云ふ。(以上、義解の本文)釈に云はく、……遊部は、幽顕の境を隔て、凶癘の魂を鎮む …
和歌批判の範疇(新字旧仮名)
読書目安時間:約22分
一「こゝろ」その一 およそ歌を見、歌を作る上において、必らず心得て置かねばならぬ、四つの段階的観察点がある。 此観察点は、元来作者の側にあるものではなくて、読者としての立ち場から出 …
読書目安時間:約22分
一「こゝろ」その一 およそ歌を見、歌を作る上において、必らず心得て置かねばならぬ、四つの段階的観察点がある。 此観察点は、元来作者の側にあるものではなくて、読者としての立ち場から出 …
若水の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約34分
ほうっとする程長い白浜の先は、また目も届かぬ海が揺れてゐる。其波の青色の末が、自づと伸し上る様になつて、頭の上まで拡がつて来てゐる空だ。其が又、ふり顧ると、地平をくぎる山の外線の、 …
読書目安時間:約34分
ほうっとする程長い白浜の先は、また目も届かぬ海が揺れてゐる。其波の青色の末が、自づと伸し上る様になつて、頭の上まで拡がつて来てゐる空だ。其が又、ふり顧ると、地平をくぎる山の外線の、 …
“折口信夫”について
折口 信夫(おりくち しのぶ〈のぶを〉岩橋小弥太によると、本来の読み方は「のぶを」であって、國學院在籍時から「しのぶ」と名乗るようになったという。、1887年〈明治20年〉2月11日 - 1953年〈昭和28年〉9月3日)は、日本の民俗学者、国文学者、国語学者であり、釈迢空(しゃく ちょうくう)と号した詩人・歌人でもあった。
折口の成し遂げた研究は、「折口学」と総称されている。柳田國男の高弟として民俗学の基礎を築いた。みずからの顔の青痣(あざ)この痣から、中学時代は「インキ婆々」というあだ名がついていた。をもじって、靄遠渓(あい・えんけい=青インク、「靄煙渓」とも)と名乗ったこともある。
(出典:Wikipedia)
折口の成し遂げた研究は、「折口学」と総称されている。柳田國男の高弟として民俗学の基礎を築いた。みずからの顔の青痣(あざ)この痣から、中学時代は「インキ婆々」というあだ名がついていた。をもじって、靄遠渓(あい・えんけい=青インク、「靄煙渓」とも)と名乗ったこともある。
(出典:Wikipedia)
“折口信夫”と年代が近い著者
きょうが誕生日(4月2日)
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805年)
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)