葛西善蔵
1887.01.16 〜 1928.07.23
著者としての作品一覧
蠢く者(旧字旧仮名)
読書目安時間:約29分
父は一昨年の夏、六十五で、持病の脚氣で、死んだ。前の年義母に死なれて孤獨の身となり、急に家財を片附けて、年暮れに迫つて前觸れもなく出て來て、牛込の弟夫婦の家に居ることになつたのだ。 …
読書目安時間:約29分
父は一昨年の夏、六十五で、持病の脚氣で、死んだ。前の年義母に死なれて孤獨の身となり、急に家財を片附けて、年暮れに迫つて前觸れもなく出て來て、牛込の弟夫婦の家に居ることになつたのだ。 …
おせい(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
「近所では、お腹の始末でもしに行つたんだ位に思つてゐるんでせう。さつきも柏屋のお内儀さんに會つたら、おせいちやんは東京へ行つてたいへん綺麗になつて歸つたと、ヘンなやうな顏して視てま …
読書目安時間:約5分
「近所では、お腹の始末でもしに行つたんだ位に思つてゐるんでせう。さつきも柏屋のお内儀さんに會つたら、おせいちやんは東京へ行つてたいへん綺麗になつて歸つたと、ヘンなやうな顏して視てま …
哀しき父(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。 四月の末であつた。空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\桜の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつて …
読書目安時間:約13分
彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。 四月の末であつた。空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\桜の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつて …
哀しき父(旧字旧仮名)
読書目安時間:約13分
彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。 四月の末であつた。空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\櫻の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつて …
読書目安時間:約13分
彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。 四月の末であつた。空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\櫻の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつて …
奇病患者(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
薪の紅く燃えてゐる大きな爐の主座に胡坐を掻いて、彼は手酌でちび/\盃を甞めてゐた。その傍で細君は、薄暗い吊洋燈と焚火の明りで、何かしら子供等のボロ布片のやうな物をひろげて、針の手を …
読書目安時間:約12分
薪の紅く燃えてゐる大きな爐の主座に胡坐を掻いて、彼は手酌でちび/\盃を甞めてゐた。その傍で細君は、薄暗い吊洋燈と焚火の明りで、何かしら子供等のボロ布片のやうな物をひろげて、針の手を …
湖畔手記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約44分
たうとうこゝまで逃げて來たと云ふ譯だが——それは實際悲鳴を揚げながら——の氣持だつた。がさて、これから一體どうなるだらう、どうするつもりなんだらうと、旅館の二階の椅子から、陰欝な色 …
読書目安時間:約44分
たうとうこゝまで逃げて來たと云ふ譯だが——それは實際悲鳴を揚げながら——の氣持だつた。がさて、これから一體どうなるだらう、どうするつもりなんだらうと、旅館の二階の椅子から、陰欝な色 …
子をつれて(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
掃除をしたり、お菜を煮たり、糠味噌を出したりして、子供等に晩飯を済まさせ、彼はようやく西日の引いた縁側近くへお膳を据えて、淋しい気持で晩酌の盃を嘗めていた。すると御免とも云わずに表 …
読書目安時間:約35分
掃除をしたり、お菜を煮たり、糠味噌を出したりして、子供等に晩飯を済まさせ、彼はようやく西日の引いた縁側近くへお膳を据えて、淋しい気持で晩酌の盃を嘗めていた。すると御免とも云わずに表 …
子をつれて(旧字旧仮名)
読書目安時間:約34分
掃除をしたり、お菜を煮たり、糠味噌を出したりして、子供等に晩飯を濟まさせ、彼はやうやく西日の引いた縁側近くへお膳を据ゑて、淋しい氣持で晩酌の盃を甞めてゐた。すると御免とも云はずに表 …
読書目安時間:約34分
掃除をしたり、お菜を煮たり、糠味噌を出したりして、子供等に晩飯を濟まさせ、彼はやうやく西日の引いた縁側近くへお膳を据ゑて、淋しい氣持で晩酌の盃を甞めてゐた。すると御免とも云はずに表 …
椎の若葉(新字旧仮名)
読書目安時間:約15分
六月半ば、梅雨晴れの午前の光りを浴びてゐる椎の若葉の趣を、ありがたくしみ/″\と眺めやつた。鎌倉行き、売る、売り物——三題話し見たやうなこの頃の生活ぶりの間に、ふと、下宿の二階の窓 …
読書目安時間:約15分
六月半ば、梅雨晴れの午前の光りを浴びてゐる椎の若葉の趣を、ありがたくしみ/″\と眺めやつた。鎌倉行き、売る、売り物——三題話し見たやうなこの頃の生活ぶりの間に、ふと、下宿の二階の窓 …
椎の若葉(旧字旧仮名)
読書目安時間:約15分
六月半ば、梅雨晴れの午前の光りを浴びてゐる椎の若葉の趣を、ありがたくしみじみと眺めやつた。鎌倉行き、賣る、賣り物——三題話し見たやうなこの頃の生活ぶりの間に、ふと、下宿の二階の窓か …
読書目安時間:約15分
六月半ば、梅雨晴れの午前の光りを浴びてゐる椎の若葉の趣を、ありがたくしみじみと眺めやつた。鎌倉行き、賣る、賣り物——三題話し見たやうなこの頃の生活ぶりの間に、ふと、下宿の二階の窓か …
死児を産む(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
この月の二十日前後と産婆に言われている大きな腹して、背丈がずんぐりなので醤油樽か何かでも詰めこんでいるかのような恰好して、おせいは、下宿の子持の女中につれられて、三丁目附近へ産衣の …
読書目安時間:約14分
この月の二十日前後と産婆に言われている大きな腹して、背丈がずんぐりなので醤油樽か何かでも詰めこんでいるかのような恰好して、おせいは、下宿の子持の女中につれられて、三丁目附近へ産衣の …
父の出郷(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
ほんのちょっとしたことからだったが、Fを郷里の妻の許に帰してやる気になった。母や妹たちの情愛の中に一週間も遊ばしてやりたいと思ったのだ。Fをつれてきてからちょうど一年ほどになるが、 …
読書目安時間:約19分
ほんのちょっとしたことからだったが、Fを郷里の妻の許に帰してやる気になった。母や妹たちの情愛の中に一週間も遊ばしてやりたいと思ったのだ。Fをつれてきてからちょうど一年ほどになるが、 …
父の葬式(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
いよいよ明日は父の遺骨を携えて帰郷という段になって、私たちは服装のことでちょっと当惑を感じた。父の遺物となった紋付の夏羽織と、何平というのか知らないが藍縞の袴もあることはあるのだが …
読書目安時間:約12分
いよいよ明日は父の遺骨を携えて帰郷という段になって、私たちは服装のことでちょっと当惑を感じた。父の遺物となった紋付の夏羽織と、何平というのか知らないが藍縞の袴もあることはあるのだが …
血を吐く(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
おせいが、山へ來たのは、十月二十一日だつた。中禪寺からの、夕方の馬車で着いたのだつた。その日も自分は朝から酒を飮んで、午前と午後の二囘の中禪寺からの郵便の配達を待つたが、當てにして …
読書目安時間:約8分
おせいが、山へ來たのは、十月二十一日だつた。中禪寺からの、夕方の馬車で着いたのだつた。その日も自分は朝から酒を飮んで、午前と午後の二囘の中禪寺からの郵便の配達を待つたが、當てにして …
遁走(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
神田のある会社へと、それから日比谷の方の新聞社へ知人を訪ねて、明日の晩の笹川の長編小説出版記念会の会費を借りることを頼んだが、いずれも成功しなかった。私は少し落胆してとにかく笹川の …
読書目安時間:約24分
神田のある会社へと、それから日比谷の方の新聞社へ知人を訪ねて、明日の晩の笹川の長編小説出版記念会の会費を借りることを頼んだが、いずれも成功しなかった。私は少し落胆してとにかく笹川の …
贋物(新字新仮名)
読書目安時間:約44分
車掌に注意されて、彼は福島で下車した。朝の五時であった。それから晩の六時まで待たねばならないのだ。 耕吉は昨夜の十一時上野発の列車へ乗りこんだのだ、が、奥羽線廻りはその前の九時発の …
読書目安時間:約44分
車掌に注意されて、彼は福島で下車した。朝の五時であった。それから晩の六時まで待たねばならないのだ。 耕吉は昨夜の十一時上野発の列車へ乗りこんだのだ、が、奥羽線廻りはその前の九時発の …
呪はれた手(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
彼が、机の上の原稿紙に向つてペンを動かしてゐると、細君が外からべそ面して、駈け込むやうに這入つて来た。五つになる二女がおい/\泣いてついて来た。——また継母にやり込められたのだ。 …
読書目安時間:約5分
彼が、机の上の原稿紙に向つてペンを動かしてゐると、細君が外からべそ面して、駈け込むやうに這入つて来た。五つになる二女がおい/\泣いてついて来た。——また継母にやり込められたのだ。 …
不良児(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間22分
一月末から一ヶ月半ほど、私は東京に出てゐた。こんなことは今度が初めてと云ふわけではないので、私はいつものやうにFは學校へは行つてゐることと思つてゐた。ところが半月ほど經つて出したお …
読書目安時間:約1時間22分
一月末から一ヶ月半ほど、私は東京に出てゐた。こんなことは今度が初めてと云ふわけではないので、私はいつものやうにFは學校へは行つてゐることと思つてゐた。ところが半月ほど經つて出したお …
浮浪(新字旧仮名)
読書目安時間:約37分
「また今度も都合で少し遅くなるかも知れないよ。どこかへ行つて書いて来るつもりだから……」と、朝由井ヶ浜の小学校へ出て行く伜のFに声をかけたが、「いゝよ」とFは例の簡単な調子で答へた …
読書目安時間:約37分
「また今度も都合で少し遅くなるかも知れないよ。どこかへ行つて書いて来るつもりだから……」と、朝由井ヶ浜の小学校へ出て行く伜のFに声をかけたが、「いゝよ」とFは例の簡単な調子で答へた …
遊動円木(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
私は奈良にT新夫婦を訪ねて、一週間ほど彼らと遊び暮した。五月初旬の奈良公園は、すてきなものであった。初めての私には、日本一とも世界一とも感歎したいくらいであった。彼らは公園の中の休 …
読書目安時間:約6分
私は奈良にT新夫婦を訪ねて、一週間ほど彼らと遊び暮した。五月初旬の奈良公園は、すてきなものであった。初めての私には、日本一とも世界一とも感歎したいくらいであった。彼らは公園の中の休 …
雪をんな(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
『では誰か、雪をんなをほんとに見た者はあるか?』 いゝや、誰もない。しかし、 『私とこの父さんは、山からの歸りに、橋向うの松原でたしかに見た。』 『そんなら私とこの祖父さんなんか、 …
読書目安時間:約7分
『では誰か、雪をんなをほんとに見た者はあるか?』 いゝや、誰もない。しかし、 『私とこの父さんは、山からの歸りに、橋向うの松原でたしかに見た。』 『そんなら私とこの祖父さんなんか、 …
雪をんな(二)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
—— その時からまた、又の七年目が𢌞り來ようとしてゐる。私には最早、歸るべき家も妻も子もないのである。さうして私は尚この上に永久に、この寒い雪の多い北國の島國を、當もなく涯から涯へ …
読書目安時間:約7分
—— その時からまた、又の七年目が𢌞り來ようとしてゐる。私には最早、歸るべき家も妻も子もないのである。さうして私は尚この上に永久に、この寒い雪の多い北國の島國を、當もなく涯から涯へ …
“葛西善蔵”について
葛西 善蔵(かさい ぜんぞう、1887年(明治20年)1月16日 - 1928年(昭和3年)7月23日)は、日本の小説家である。自身の貧困や病気といった人生の辛苦や酒と女、人間関係の不調和を描き、「私小説の神様」と呼ばれた。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“葛西善蔵”と年代が近い著者
今月で没後X十年
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山村暮鳥(没後100年)
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郡虎彦(没後100年)
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