漢那浪笛
1887 〜 1939
著者としての作品一覧
哀詩数篇(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
なすによしなき哀れさよ、 早や日数経て、今日の日も 暗がりわたる物おもひ。 水や空なる波の上に、 淋しくかゝる綾雲は、 やがて消ゆべき希望かや。 その希望もて吾が道は、 深海の底の …
読書目安時間:約1分
なすによしなき哀れさよ、 早や日数経て、今日の日も 暗がりわたる物おもひ。 水や空なる波の上に、 淋しくかゝる綾雲は、 やがて消ゆべき希望かや。 その希望もて吾が道は、 深海の底の …
秋 なげかひ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
せちになげける秋の木立に、 青める月の、病めるいぶき。 風のまに/\に、浮びては消ゆる。 哀れ『世』□さま、夢かまぼろし、 水のおもての泡沫と知れど、 『生』はなほも光をすひぬ。 …
読書目安時間:約1分
せちになげける秋の木立に、 青める月の、病めるいぶき。 風のまに/\に、浮びては消ゆる。 哀れ『世』□さま、夢かまぼろし、 水のおもての泡沫と知れど、 『生』はなほも光をすひぬ。 …
秋の小曲(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
◉ 秋の木の葉がふるひ出す、 ものにおびへた眼の色は、 たゞ白びかり——何を見る。 ひら/\と黄葉がちる、 彼れは何処へ?真暗な、 谷へほこらへ——あな消へた。 ◉ 暗い森から鳥が …
読書目安時間:約1分
◉ 秋の木の葉がふるひ出す、 ものにおびへた眼の色は、 たゞ白びかり——何を見る。 ひら/\と黄葉がちる、 彼れは何処へ?真暗な、 谷へほこらへ——あな消へた。 ◉ 暗い森から鳥が …
新らしき悲しみにうつる時(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
うら若かき日の悲しきあこかれ—— 草葉の息吹きかへす甘き馨り、 艶はしき花の笑ひもながめて過ぎぬ。 木の間にさへずる鳥の歌をきく、 悲しみは眼を閉ぢて、暫時やすらひもせし。 されど …
読書目安時間:約1分
うら若かき日の悲しきあこかれ—— 草葉の息吹きかへす甘き馨り、 艶はしき花の笑ひもながめて過ぎぬ。 木の間にさへずる鳥の歌をきく、 悲しみは眼を閉ぢて、暫時やすらひもせし。 されど …
あやしき楽の音(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
かつて、きゝし折りなき楽の音! 今宵、心にしのび入る。 絃はわななき震ひ、 果ては——蒼き涙にむせぶ。 眼に見ゑず、心にとまるメロディよ! 知らず、深き迷ひにいらしむ。 吾れはなつ …
読書目安時間:約1分
かつて、きゝし折りなき楽の音! 今宵、心にしのび入る。 絃はわななき震ひ、 果ては——蒼き涙にむせぶ。 眼に見ゑず、心にとまるメロディよ! 知らず、深き迷ひにいらしむ。 吾れはなつ …
あやどり(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
静けき海のかなた、 日影しのびいる、森の奥に、 彩鳥の声すと、きゝぬ。 その音は、裂けし白玉の 一片にも似て、 いささかの悲しみをやる。 いねがたき夏南国! 浪のよるひるも、起きぶ …
読書目安時間:約1分
静けき海のかなた、 日影しのびいる、森の奥に、 彩鳥の声すと、きゝぬ。 その音は、裂けし白玉の 一片にも似て、 いささかの悲しみをやる。 いねがたき夏南国! 浪のよるひるも、起きぶ …
おびえ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
咲きし華はしぼみて、 わが世は暗がりわたり。 くろめる渦巻きのなか 淋しき、うめきをやする。 そは、冷たき砂のうへに裂けて、 風に泣く片葉□貝にも似たり。 絶えせぬ浪の響き、肉にゆ …
読書目安時間:約1分
咲きし華はしぼみて、 わが世は暗がりわたり。 くろめる渦巻きのなか 淋しき、うめきをやする。 そは、冷たき砂のうへに裂けて、 風に泣く片葉□貝にも似たり。 絶えせぬ浪の響き、肉にゆ …
かの日(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
あまき歓楽の日は、 束の間に決別をつげ…… 物のかたち、淋しき色に濡れて、 墓場の景色をくりひろげぬ。 あたゝかき心の熱の消ゆるに連れ、 唇の感じも少なく、 つめたき空気に、墓なき …
読書目安時間:約1分
あまき歓楽の日は、 束の間に決別をつげ…… 物のかたち、淋しき色に濡れて、 墓場の景色をくりひろげぬ。 あたゝかき心の熱の消ゆるに連れ、 唇の感じも少なく、 つめたき空気に、墓なき …
かの日の歌【一】(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
南の国の黄昏れ、 空は紅き笑ひを残して静かなり。 想思樹の葉のねむたげにうなだれ、 かすかなるうめきをやする。 ああ淋しみ、心をなす、植民地の黄昏! 椰子の並木を縫ひて、 灯火は紅 …
読書目安時間:約1分
南の国の黄昏れ、 空は紅き笑ひを残して静かなり。 想思樹の葉のねむたげにうなだれ、 かすかなるうめきをやする。 ああ淋しみ、心をなす、植民地の黄昏! 椰子の並木を縫ひて、 灯火は紅 …
かの日の歌【二】(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
◉ 音なき秋の空をながめて、 木の葉は淡き吐息をもらし、 色みな、悲しきメロディなり。 時のまに/\泣きすぐる風に、 調べはいたく、狂ひわなゝき、 自然の胸の痛みは、更に深し。 黄 …
読書目安時間:約2分
◉ 音なき秋の空をながめて、 木の葉は淡き吐息をもらし、 色みな、悲しきメロディなり。 時のまに/\泣きすぐる風に、 調べはいたく、狂ひわなゝき、 自然の胸の痛みは、更に深し。 黄 …
かの日の歌【三】(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
◉ 温たかき玉は、君が手より、 すべり落ちぬ。 その玉は他人の手に握られ、 楽しき夢路をたどるなり。 あゝ君は淋しき人なり。 君はいや更に悲しめ! もだへ、苦しむは君のさがなり。 …
読書目安時間:約1分
◉ 温たかき玉は、君が手より、 すべり落ちぬ。 その玉は他人の手に握られ、 楽しき夢路をたどるなり。 あゝ君は淋しき人なり。 君はいや更に悲しめ! もだへ、苦しむは君のさがなり。 …
かの日の歌【四】(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
◉ ささへかねたる苦痛の重さ! 心と肉とは、時ふるへり。 年わかき悲哀とそのきほひは、 何日きゆべき!あわれ迷はしきかな。 人通りの繁き町へゆかむ、 南!旧暦十五夜の黄金の涙を た …
読書目安時間:約1分
◉ ささへかねたる苦痛の重さ! 心と肉とは、時ふるへり。 年わかき悲哀とそのきほひは、 何日きゆべき!あわれ迷はしきかな。 人通りの繁き町へゆかむ、 南!旧暦十五夜の黄金の涙を た …
かの日の歌【五】(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
◉ 気味わるき、 十二月の、ひねもす。 そとには、おやみなくそゝぐ雨、 軒端にみだらなる、なげかひ……… 苦るしまぎれに煙草をすふ。 音なき浪——けむりのなかに、 うす暗き人生は、 …
読書目安時間:約1分
◉ 気味わるき、 十二月の、ひねもす。 そとには、おやみなくそゝぐ雨、 軒端にみだらなる、なげかひ……… 苦るしまぎれに煙草をすふ。 音なき浪——けむりのなかに、 うす暗き人生は、 …
帰省(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
若夏の入江の西に、 萎ゆる帆を静かにたゝみ、 大船の錨なぐるや、 波止場には、吾かなつかしき 南国の男女のあまた、 すゝみよる、艀むかへぬ。 艀より人力車にうつり、 石原を、左右に …
読書目安時間:約1分
若夏の入江の西に、 萎ゆる帆を静かにたゝみ、 大船の錨なぐるや、 波止場には、吾かなつかしき 南国の男女のあまた、 すゝみよる、艀むかへぬ。 艀より人力車にうつり、 石原を、左右に …
玉盃の曲(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ふくよかの顔面あげて 紅潮の浜にさすごと 華やかの笑みひろごりて まなざしの光すゞしく わが胸の奥には深く よろこびの影こそ跳れ わが耳に絃づる歌は 鶯の啼く音をこめね あたたかき …
読書目安時間:約1分
ふくよかの顔面あげて 紅潮の浜にさすごと 華やかの笑みひろごりて まなざしの光すゞしく わが胸の奥には深く よろこびの影こそ跳れ わが耳に絃づる歌は 鶯の啼く音をこめね あたたかき …
暮れ方の窓(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
常に夢見る女のすがた! 夕暮れ方、 しめやかな窓にしのんで来る。 なつかしい想ひは浪のやう…………。 みつむれば、朦ろにかすみ、 ちかよれば、闇のなかにとろけて、 果ては見えなくな …
読書目安時間:約1分
常に夢見る女のすがた! 夕暮れ方、 しめやかな窓にしのんで来る。 なつかしい想ひは浪のやう…………。 みつむれば、朦ろにかすみ、 ちかよれば、闇のなかにとろけて、 果ては見えなくな …
恋しき最後の丘(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
うら若かき頃の、悲しきあこがれ……… 草葉の息ふきかへす甘き香り、 艶はしき花の笑ひもながめて過ぎぬ、 木の間にさへずる、鳥の歌をきゝ、 悲しみは眼を閉ぢて、暫時やすらひもせし、 …
読書目安時間:約2分
うら若かき頃の、悲しきあこがれ……… 草葉の息ふきかへす甘き香り、 艶はしき花の笑ひもながめて過ぎぬ、 木の間にさへずる、鳥の歌をきゝ、 悲しみは眼を閉ぢて、暫時やすらひもせし、 …
心(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
淋しき日悲しき思ひ 吾が心弄し去んぬる。 あわれその心のすむは、 落寞の森の木ぬれか。 きゝなれし歌のしらべも、 今日も又、明日も消ゑゆく。 消ゑ去るを止むすべきなき、 この心、「 …
読書目安時間:約1分
淋しき日悲しき思ひ 吾が心弄し去んぬる。 あわれその心のすむは、 落寞の森の木ぬれか。 きゝなれし歌のしらべも、 今日も又、明日も消ゑゆく。 消ゑ去るを止むすべきなき、 この心、「 …
最後の丘(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
なつかしい丘の上、 棕呂の若葉のそよぎに、小鳥の唄。 傾むきつくす夕月も、 見る/\最後の接吻を残して、 深い々々、海のかなたへ 去らうとする、 なつかしい丘の上に、Kの君を持つ心 …
読書目安時間:約1分
なつかしい丘の上、 棕呂の若葉のそよぎに、小鳥の唄。 傾むきつくす夕月も、 見る/\最後の接吻を残して、 深い々々、海のかなたへ 去らうとする、 なつかしい丘の上に、Kの君を持つ心 …
盃(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
記念のための瀬戸焼の盃、 淋しい日の慰めに、とり出して、 泡盛をつぐ。 器の色も影も変らない、 酒の味ひも、 あゝ思出多き記念の盃。 底に沈んだ私のふけた顔、 ひよつとのぞくと、 …
読書目安時間:約1分
記念のための瀬戸焼の盃、 淋しい日の慰めに、とり出して、 泡盛をつぐ。 器の色も影も変らない、 酒の味ひも、 あゝ思出多き記念の盃。 底に沈んだ私のふけた顔、 ひよつとのぞくと、 …
砂上の低唱(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
満つと見しこの天地は足ずありぬ心を いづちやるも空虚のみ 海の香しめる暁を 今日片時の浜下り 磯の霞に酔ひしれて 哀れ吾が世の夢に泣く 浪路逢かた見渡たして 満潮時を恨み泣く 千鳥 …
読書目安時間:約1分
満つと見しこの天地は足ずありぬ心を いづちやるも空虚のみ 海の香しめる暁を 今日片時の浜下り 磯の霞に酔ひしれて 哀れ吾が世の夢に泣く 浪路逢かた見渡たして 満潮時を恨み泣く 千鳥 …
車室(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
一頭のやせ馬に、 ひかれゆく黒塗りのかた馬車。 乗ひ合は六人、 その中に一人の若かい女。 膝向き合はした客は、 お互に眼をひらめかし、 たゞ無言。 ——疑ひの多き車内だ。 沙漠に似 …
読書目安時間:約1分
一頭のやせ馬に、 ひかれゆく黒塗りのかた馬車。 乗ひ合は六人、 その中に一人の若かい女。 膝向き合はした客は、 お互に眼をひらめかし、 たゞ無言。 ——疑ひの多き車内だ。 沙漠に似 …
棕梠のそよぎ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
黄ばんだ一本の棕梠、 痛ましく裂けた葉のそよぎ。 冷たい秋の空気にふれて、 かなしい秋、調べをきざむ。 淋しい心の華が開き、 灰色の眼をあげて なつかしい譜の鳴る方へ、 絶えず懐ひ …
読書目安時間:約1分
黄ばんだ一本の棕梠、 痛ましく裂けた葉のそよぎ。 冷たい秋の空気にふれて、 かなしい秋、調べをきざむ。 淋しい心の華が開き、 灰色の眼をあげて なつかしい譜の鳴る方へ、 絶えず懐ひ …
小曲二十篇(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
よする年波とゞめかねず、 われや落葉あわれ淋し。 名知れぬ浜に流れ漂ひ、 朽つるその日あやめわかぬ。 白く冷たき浪のたわれ、 目的知らねば運命のまゝに、 浮きつ沈みつ夜を日にかへし …
読書目安時間:約6分
よする年波とゞめかねず、 われや落葉あわれ淋し。 名知れぬ浜に流れ漂ひ、 朽つるその日あやめわかぬ。 白く冷たき浪のたわれ、 目的知らねば運命のまゝに、 浮きつ沈みつ夜を日にかへし …
吸い殻(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
午前七時、 時刻が来たいざ学校へ。 晩秋の市街の上を、 悲しげに風は泣きすぐ。 絶えずしたゝる冷たい鼻汁を、 すゝりつゝ道を通る。 ふとして眼にとまる白い吸い殻、 誰れが手から投げ …
読書目安時間:約1分
午前七時、 時刻が来たいざ学校へ。 晩秋の市街の上を、 悲しげに風は泣きすぐ。 絶えずしたゝる冷たい鼻汁を、 すゝりつゝ道を通る。 ふとして眼にとまる白い吸い殻、 誰れが手から投げ …
つかれ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
淋しき夜の音づれ、 つかれし眼にうつり わなゝき震ふ心は、たゆむ隙なく、 あるかなきかの影にも似たれ。 青める星の空より、 涙ににじむ曲を、地になげかわす、 そはわれに、 耳そばだ …
読書目安時間:約1分
淋しき夜の音づれ、 つかれし眼にうつり わなゝき震ふ心は、たゆむ隙なく、 あるかなきかの影にも似たれ。 青める星の空より、 涙ににじむ曲を、地になげかわす、 そはわれに、 耳そばだ …
ふるさと(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
常によく見る女なれど、 心の欲を云ひいでむ、 また、語るべき機会もなく、 胸もどかしく、過ぎゆくか。 実にも二人がその中は、 砕けちりしく花硝子—— 夕日の国の寂寥に、 絡みて沈む …
読書目安時間:約1分
常によく見る女なれど、 心の欲を云ひいでむ、 また、語るべき機会もなく、 胸もどかしく、過ぎゆくか。 実にも二人がその中は、 砕けちりしく花硝子—— 夕日の国の寂寥に、 絡みて沈む …
古街(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
黄昏時を四五分すぎたあと、 薄闇を縫ふて、紅い々々燈の華が、 冬咲きの仏相花のやうにちらつく。 昔の栄華を夢見る古るい街、 傾むいた軒を並べて、 底深く静まりかへる。 蔦の生へた石 …
読書目安時間:約1分
黄昏時を四五分すぎたあと、 薄闇を縫ふて、紅い々々燈の華が、 冬咲きの仏相花のやうにちらつく。 昔の栄華を夢見る古るい街、 傾むいた軒を並べて、 底深く静まりかへる。 蔦の生へた石 …
まよわし(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
わが思ふ女ありやなしや。 まよわしきかな。 夕暮の窓にもたれて、蒼白き息ふく われも、またありやなしや。 あな、うたがわし。 蚊のなく声を、君がかなしき唄とや きかむ。 柔風の木の …
読書目安時間:約1分
わが思ふ女ありやなしや。 まよわしきかな。 夕暮の窓にもたれて、蒼白き息ふく われも、またありやなしや。 あな、うたがわし。 蚊のなく声を、君がかなしき唄とや きかむ。 柔風の木の …
“漢那浪笛”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)