渡辺温
1902.08.26 〜 1930.02.10
著者としての作品一覧
ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
居留地女の間では その晩、私は隣室のアレキサンダー君に案内されて、始めて横浜へ遊びに出かけた。 アレキサンダー君は、そんな遊び場所に就いてなら、日本人の私なんぞよりも、遙かに詳かに …
読書目安時間:約7分
居留地女の間では その晩、私は隣室のアレキサンダー君に案内されて、始めて横浜へ遊びに出かけた。 アレキサンダー君は、そんな遊び場所に就いてなら、日本人の私なんぞよりも、遙かに詳かに …
赤い煙突(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
あたしの赤い煙突。なぜ煙を吐かないのかしら?お父さまとお母さまの煙突からは、あんなに沢山煙が出ているのに……) 彼女は七つの秋、扁桃腺炎を患って二階の窓の傍に寝かされた時、はじめて …
読書目安時間:約14分
あたしの赤い煙突。なぜ煙を吐かないのかしら?お父さまとお母さまの煙突からは、あんなに沢山煙が出ているのに……) 彼女は七つの秋、扁桃腺炎を患って二階の窓の傍に寝かされた時、はじめて …
或る母の話(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
母一人娘一人の暮しであった。 生活には事かかない程のものを持っているので、母は一人で娘を慈しみ育てた。娘も母親のありあまる愛情に堪能していた。 それでも、娘はだんだん大人になると、 …
読書目安時間:約14分
母一人娘一人の暮しであった。 生活には事かかない程のものを持っているので、母は一人で娘を慈しみ育てた。娘も母親のありあまる愛情に堪能していた。 それでも、娘はだんだん大人になると、 …
アンドロギュノスの裔(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
——曾て、哲人アビュレの故郷なるマドーラの町に、一人の魔法をよく使う女が住んでいた。彼女は自分が男に想いを懸けた時には、その男の髪の毛を或る草と一緒に、何か呪文を唱えながら、三脚台 …
読書目安時間:約12分
——曾て、哲人アビュレの故郷なるマドーラの町に、一人の魔法をよく使う女が住んでいた。彼女は自分が男に想いを懸けた時には、その男の髪の毛を或る草と一緒に、何か呪文を唱えながら、三脚台 …
イワンとイワンの兄(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
父親は病気になりました。あんまり年をとり過ぎているので再び快くなりませんでした。父親は自分の一生がもうおしまいになってしまったことを覚って、二人の息子を——即ちイワンの兄とイワンと …
読書目安時間:約9分
父親は病気になりました。あんまり年をとり過ぎているので再び快くなりませんでした。父親は自分の一生がもうおしまいになってしまったことを覚って、二人の息子を——即ちイワンの兄とイワンと …
牛込館:映画館めぐり(十)(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
夕方の神楽坂通りは散歩の学生や帰りがけの勤め人なぞでいつもいっぱいである。 私は久し振りで坂を上って牛込館を見に行った。 錦輝館だの豊玉館だの——矢張りそんな時分に栄えた牛込館がそ …
読書目安時間:約3分
夕方の神楽坂通りは散歩の学生や帰りがけの勤め人なぞでいつもいっぱいである。 私は久し振りで坂を上って牛込館を見に行った。 錦輝館だの豊玉館だの——矢張りそんな時分に栄えた牛込館がそ …
嘘(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
雪降りで退屈で古風な晩であった。 井深君の邸に落ち合った友達が五六人火のそばに寄って、嘘吐き——話の話しくらべをした。自分の素晴しい嘘で人を担いだ話や、またはそのあべこべのしくじり …
読書目安時間:約20分
雪降りで退屈で古風な晩であった。 井深君の邸に落ち合った友達が五六人火のそばに寄って、嘘吐き——話の話しくらべをした。自分の素晴しい嘘で人を担いだ話や、またはそのあべこべのしくじり …
絵姿:The Portrate of Dorian Gray(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
倫敦の社交界に隠れもない伊達者ヘンリイ・ウォットン卿はたまたま、数年前にかの興奮から突然姿をくらまして色々と噂の高かった画家ベエシル・ハルワアドを訪れた。そしてその東邦の数奇を凝ら …
読書目安時間:約24分
倫敦の社交界に隠れもない伊達者ヘンリイ・ウォットン卿はたまたま、数年前にかの興奮から突然姿をくらまして色々と噂の高かった画家ベエシル・ハルワアドを訪れた。そしてその東邦の数奇を凝ら …
遺書に就て(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
その朝、洋画家葛飾龍造の画室の中で、同居人の洋画家小野潤平が死んでいた。 コルク張りの床に俯伏せに倒れて、硬直した右手にピストルを握り、血の流れている右の顳顬には煙硝の吹いた跡があ …
読書目安時間:約21分
その朝、洋画家葛飾龍造の画室の中で、同居人の洋画家小野潤平が死んでいた。 コルク張りの床に俯伏せに倒れて、硬直した右手にピストルを握り、血の流れている右の顳顬には煙硝の吹いた跡があ …
可哀相な姉(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
すたれた場末の、たった一間しかない狭い家に、私と姉とは住んでいた。ほかに誰もいなかった。私は姉と二人きりで、何年か前に、青い穏やかな海峡を渡って、この街へ来たのであった。 そして姉 …
読書目安時間:約16分
すたれた場末の、たった一間しかない狭い家に、私と姉とは住んでいた。ほかに誰もいなかった。私は姉と二人きりで、何年か前に、青い穏やかな海峡を渡って、この街へ来たのであった。 そして姉 …
恋(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
* そこの海岸のホテルでの話です。 彼女は女優でした。少しばかり年齢をとりすぎてしまいましたが、それでもいろいろな意味で最も評判のよい女優でした。 劇場が夏休みなので、泳ぎにたった …
読書目安時間:約8分
* そこの海岸のホテルでの話です。 彼女は女優でした。少しばかり年齢をとりすぎてしまいましたが、それでもいろいろな意味で最も評判のよい女優でした。 劇場が夏休みなので、泳ぎにたった …
氷れる花嫁(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
1(溶明)晴れたる空。輝く十字架——教会の屋根だ。 2教会。結婚式——青年とその十五になったばかりの可愛らしい花嫁と。——花と、音楽と。 3春の港に浮べる新造船。 4帆柱の尖端に飜 …
読書目安時間:約4分
1(溶明)晴れたる空。輝く十字架——教会の屋根だ。 2教会。結婚式——青年とその十五になったばかりの可愛らしい花嫁と。——花と、音楽と。 3春の港に浮べる新造船。 4帆柱の尖端に飜 …
四月馬鹿(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
何が南京鼠だい 『エミやあ!エー坊!エンミイ—おい、エミ公!ちょっと来てくれよオ、大変々々!』出勤際に、鏡台へ向って、紳士の身躾をほどこしていた文太郎君が、突然叫びたてました。 『 …
読書目安時間:約18分
何が南京鼠だい 『エミやあ!エー坊!エンミイ—おい、エミ公!ちょっと来てくれよオ、大変々々!』出勤際に、鏡台へ向って、紳士の身躾をほどこしていた文太郎君が、突然叫びたてました。 『 …
十年後の映画界(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
一千九百三十九年一月×日 街裏の酒場「騒音と煙」の一隅に於て、酔っぱらいの私がやはり酔っぱらいのオング君を、十年振りに見出したと思いたまえ。オング君は、一昔前と変らぬリボンをネクタ …
読書目安時間:約7分
一千九百三十九年一月×日 街裏の酒場「騒音と煙」の一隅に於て、酔っぱらいの私がやはり酔っぱらいのオング君を、十年振りに見出したと思いたまえ。オング君は、一昔前と変らぬリボンをネクタ …
少女(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
井深君という青年が赤坂の溜池通りを散歩している。 これは一昔若しくはもっと古い話である。今時の世の中にこんな種類の青年を考えることはあまりふさわしくない。 中山帽子をかぶって、縁と …
読書目安時間:約12分
井深君という青年が赤坂の溜池通りを散歩している。 これは一昔若しくはもっと古い話である。今時の世の中にこんな種類の青年を考えることはあまりふさわしくない。 中山帽子をかぶって、縁と …
勝敗(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
兄を晃一、弟を旻と云う。 晃一は父親の遺して行った資産と家業とを引き継いで当主となった。旻は実際的な仕事が嫌いだったし、それに大学の文科へ入って間もなく肺病にとりつかれたので、海辺 …
読書目安時間:約22分
兄を晃一、弟を旻と云う。 晃一は父親の遺して行った資産と家業とを引き継いで当主となった。旻は実際的な仕事が嫌いだったし、それに大学の文科へ入って間もなく肺病にとりつかれたので、海辺 …
シルクハット(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
私も中村も給料が十円ずつ上がった。 私は私のかぶり古した山高帽子を中村に十円で譲って、そしてそれに十五円足して、シルクハットを買った。 青年時代に一度、シルクハットをかぶってみたい …
読書目安時間:約5分
私も中村も給料が十円ずつ上がった。 私は私のかぶり古した山高帽子を中村に十円で譲って、そしてそれに十五円足して、シルクハットを買った。 青年時代に一度、シルクハットをかぶってみたい …
象牙の牌(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
『…………』 西村敬吉はひどくドギマギとして、彼の前に立った様子のいい陽気な客の顔を眺め返した。西村敬吉はつい一週間程前にこの××ビルディングの四階に開業したばかりの若い弁護士であ …
読書目安時間:約33分
『…………』 西村敬吉はひどくドギマギとして、彼の前に立った様子のいい陽気な客の顔を眺め返した。西村敬吉はつい一週間程前にこの××ビルディングの四階に開業したばかりの若い弁護士であ …
父を失う話(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
こないだの朝、私が眼をさますと、枕もとの鏡付の洗面台で、父は久しい間に蓄えた髭を剃り落としていた。そよ風が窓から窓帷をゆすって流れ込んで、そして新鮮な朝日のかげは青々と鏡の中の父の …
読書目安時間:約7分
こないだの朝、私が眼をさますと、枕もとの鏡付の洗面台で、父は久しい間に蓄えた髭を剃り落としていた。そよ風が窓から窓帷をゆすって流れ込んで、そして新鮮な朝日のかげは青々と鏡の中の父の …
花嫁の訂正:――夫婦哲学――(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
二組の新婚夫婦があった。夫同士は古い知己で隣合って新居を持った。二軒の家は、間取りも、壁の色も、窓も、煙突も、ポオチもすっかり同じで、境の花園などは仕切りがなく共通になっている。 …
読書目安時間:約18分
二組の新婚夫婦があった。夫同士は古い知己で隣合って新居を持った。二軒の家は、間取りも、壁の色も、窓も、煙突も、ポオチもすっかり同じで、境の花園などは仕切りがなく共通になっている。 …
薔薇の女(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
馬車はヴェラクルスへ向けて疾っていた。お客は私と商人のパリロ氏と牧場主のラメツ氏と医師のフェリラ氏とそしてその他に全く得体の知れぬ二人連れの男女が乗っていた。男は鍔広帽子を眼深にか …
読書目安時間:約4分
馬車はヴェラクルスへ向けて疾っていた。お客は私と商人のパリロ氏と牧場主のラメツ氏と医師のフェリラ氏とそしてその他に全く得体の知れぬ二人連れの男女が乗っていた。男は鍔広帽子を眼深にか …
風船美人(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
上野の博覧会で軽気球が上げられた。軽気球はまるで古風な銅版画の景色の如く、青々と光るはつ夏の大空に浮かんだ。 この軽気球はそもそも商店の広告なぞではなく、一時間一円で博覧会のお客を …
読書目安時間:約13分
上野の博覧会で軽気球が上げられた。軽気球はまるで古風な銅版画の景色の如く、青々と光るはつ夏の大空に浮かんだ。 この軽気球はそもそも商店の広告なぞではなく、一時間一円で博覧会のお客を …
兵士と女優(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
オング君は戦争から帰って、久し振りで街を歩きました。軒並のハイカラな飾窓の硝子に、日やけして鳶色に光っている顔をうつしてみました。高価なネクタイだのチェッコスロバキヤの硝子細工だの …
読書目安時間:約7分
オング君は戦争から帰って、久し振りで街を歩きました。軒並のハイカラな飾窓の硝子に、日やけして鳶色に光っている顔をうつしてみました。高価なネクタイだのチェッコスロバキヤの硝子細工だの …
兵隊の死(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
たのしい春の日であった。 花ざかりなるその広い原っぱの真中にカアキ色の新しい軍服を着た一人の兵隊が、朱い毛布を敷いて大の字のように寝ていた。 兵隊は花の香にむせび乍ら口笛を吹いた。 …
読書目安時間:約2分
たのしい春の日であった。 花ざかりなるその広い原っぱの真中にカアキ色の新しい軍服を着た一人の兵隊が、朱い毛布を敷いて大の字のように寝ていた。 兵隊は花の香にむせび乍ら口笛を吹いた。 …
浪漫趣味者として:―― Ibi omnis effusus labor ! ――(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
H——氏と云って、青年の間に評判の高いロマンティストと懇意を得たことがあった。 H——氏は、散歩に出る時の外は、何もしないで、下宿の好ましい調度で品よく飾った部屋に寝ころんでいるこ …
読書目安時間:約10分
H——氏と云って、青年の間に評判の高いロマンティストと懇意を得たことがあった。 H——氏は、散歩に出る時の外は、何もしないで、下宿の好ましい調度で品よく飾った部屋に寝ころんでいるこ …
“渡辺温”について
は、日本の推理作家・幻想小説家。本名は。
渡辺伊太郎・渡辺ツネの三男、推理作家・渡辺啓助の実弟。北海道上磯郡谷好村(現在の北斗市)生まれ。
(出典:Wikipedia)
渡辺伊太郎・渡辺ツネの三男、推理作家・渡辺啓助の実弟。北海道上磯郡谷好村(現在の北斗市)生まれ。
(出典:Wikipedia)
“渡辺温”と年代が近い著者
きょうが誕生日(12月14日)
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今月で生誕X十年
ラデャード・キプリング(生誕160年)
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平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
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徳永保之助(没後100年)
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