父を失う話ちちをうしなうはなし
こないだの朝、私が眼をさますと、枕もとの鏡付の洗面台で、父は久しい間に蓄えた髭を剃り落としていた。そよ風が窓から窓帷をゆすって流れ込んで、そして新鮮な朝日のかげは青々と鏡の中の父の顔に漲っていた。 おもてで小鳥が啼いた。 「お父さん、いいお …