菊池寛
1888.12.26 〜 1948.03.06
“菊池寛”に特徴的な語句
扉
卓子
露西亜
外
刮
妾
韮
誇
暴風雨
硝子
私
四辺
頁
茲
昨夜
呼吸
初心
貴女
浴衣
何
仏蘭西
先刻
寝衣
負傷
潜
介意
袖
艶
芸妓
限
撫
埋
緒
瓦斯
歴々
幸福
温和
楓
暴
湿
之
嫣然
私
室
言伝
媚
交際
家
階下
背後
著者としての作品一覧
TZSCHALLAPPOKO(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
□北原白秋氏の出して居た雑誌の題「ザンボア」は誤つた発音で、実はザンボンと発音するのだ。之で見ると昔からのザボンと云ふ方が正しい、なまじ字を知るは誤の初だとは上田敏先生のお話。 □ …
読書目安時間:約2分
□北原白秋氏の出して居た雑誌の題「ザンボア」は誤つた発音で、実はザンボンと発音するのだ。之で見ると昔からのザボンと云ふ方が正しい、なまじ字を知るは誤の初だとは上田敏先生のお話。 □ …
青木の出京(新字新仮名)
読書目安時間:約44分
銀座のカフェ××××で、同僚の杉田と一緒に昼食を済した雄吉は、そこを出ると用事があって、上野方面へ行かねばならぬ杉田と別れて、自分一人勤めている△町の雑誌社の方へ帰りかけた。 それ …
読書目安時間:約44分
銀座のカフェ××××で、同僚の杉田と一緒に昼食を済した雄吉は、そこを出ると用事があって、上野方面へ行かねばならぬ杉田と別れて、自分一人勤めている△町の雑誌社の方へ帰りかけた。 それ …
芥川の印象(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
今でこそ余程薄れたやうですが、昔は「芥川の脣」と云へば僕達の間では一寸評判のものでした。久米などはよく「芥川の脣」を噂した事がありました。芥川は御承知の通り色白の方であるのに、其の …
読書目安時間:約3分
今でこそ余程薄れたやうですが、昔は「芥川の脣」と云へば僕達の間では一寸評判のものでした。久米などはよく「芥川の脣」を噂した事がありました。芥川は御承知の通り色白の方であるのに、其の …
芥川の事ども(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
芥川の死について、いろいろな事が、書けそうで、そのくせ書き出してみると、何も書けない。 死因については我々にもハッキリしたことは分らない。分らないのではなく結局、世人を首肯させるに …
読書目安時間:約12分
芥川の死について、いろいろな事が、書けそうで、そのくせ書き出してみると、何も書けない。 死因については我々にもハッキリしたことは分らない。分らないのではなく結局、世人を首肯させるに …
仇討禁止令(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
鳥羽伏見の戦で、讃岐高松藩は、もろくも朝敵の汚名を取ってしまった。 祖先が、水戸黄門光圀の兄の頼重で、光圀が後年伯夷叔斉の伝を読み、兄を越えて家を継いだことを後悔し、頼重の子綱条を …
読書目安時間:約35分
鳥羽伏見の戦で、讃岐高松藩は、もろくも朝敵の汚名を取ってしまった。 祖先が、水戸黄門光圀の兄の頼重で、光圀が後年伯夷叔斉の伝を読み、兄を越えて家を継いだことを後悔し、頼重の子綱条を …
仇討三態(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
その一 越の御山永平寺にも、爽やかな初夏が来た。 冬の間、日毎日毎の雪作務に雲水たちを苦しめた雪も、深い谷間からさえ、その跡を絶ってしまった。 十幾棟の大伽藍を囲んで、矗々と天を摩 …
読書目安時間:約33分
その一 越の御山永平寺にも、爽やかな初夏が来た。 冬の間、日毎日毎の雪作務に雲水たちを苦しめた雪も、深い谷間からさえ、その跡を絶ってしまった。 十幾棟の大伽藍を囲んで、矗々と天を摩 …
姉川合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
原因 元亀元年六月二十八日、織田信長が徳川家康の助力を得て、江北姉川に於て越前の朝倉義景、江北の浅井長政の連合軍を撃破した。これが、姉川の合戦である。 この合戦、浅井及び織田にては …
読書目安時間:約27分
原因 元亀元年六月二十八日、織田信長が徳川家康の助力を得て、江北姉川に於て越前の朝倉義景、江北の浅井長政の連合軍を撃破した。これが、姉川の合戦である。 この合戦、浅井及び織田にては …
アラビヤンナイト:01 一、アラジンとふしぎなランプ(新字新仮名)
読書目安時間:約36分
昔、しなの都に、ムスタフという貧乏な仕立屋が住んでいました。このムスタフには、おかみさんと、アラジンと呼ぶたった一人の息子とがありました。 この仕立屋は大へん心がけのよい人で、一生 …
読書目安時間:約36分
昔、しなの都に、ムスタフという貧乏な仕立屋が住んでいました。このムスタフには、おかみさんと、アラジンと呼ぶたった一人の息子とがありました。 この仕立屋は大へん心がけのよい人で、一生 …
アラビヤンナイト:03 三、アリ・ババと四十人のどろぼう(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
昔、ペルシャのある町に、二人の兄弟が住んでいました。兄さんの名をカシムと言い、弟の名をアリ・ババと言いました。お父さんがなくなる時、兄弟二人に、財産を半分ずつに分けてくれましたので …
読書目安時間:約19分
昔、ペルシャのある町に、二人の兄弟が住んでいました。兄さんの名をカシムと言い、弟の名をアリ・ババと言いました。お父さんがなくなる時、兄弟二人に、財産を半分ずつに分けてくれましたので …
アラビヤンナイト:04 四、船乗シンドバッド(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間4分
バクダッドの町に、ヒンドバッドという、貧乏な荷かつぎがいました。荷かつぎというのは、鉄道の赤帽のように、お金をもらって人の荷物を運ぶ人です。 ある暑い日のお昼から、ずいぶん重い荷物 …
読書目安時間:約1時間4分
バクダッドの町に、ヒンドバッドという、貧乏な荷かつぎがいました。荷かつぎというのは、鉄道の赤帽のように、お金をもらって人の荷物を運ぶ人です。 ある暑い日のお昼から、ずいぶん重い荷物 …
ある恋の話(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
私の妻の祖母は——と云って、もう三四年前に死んだ人ですが——蔵前の札差で、名字帯刀御免で可なり幅を利かせた山長——略さないで云えば、山城屋長兵衛の一人娘でした。何しろ蔵前の札差で山 …
読書目安時間:約29分
私の妻の祖母は——と云って、もう三四年前に死んだ人ですが——蔵前の札差で、名字帯刀御免で可なり幅を利かせた山長——略さないで云えば、山城屋長兵衛の一人娘でした。何しろ蔵前の札差で山 …
ある抗議書(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
司法大臣閣下。 少しの御面識もない無名の私から、突然かかる書状を、差上げる無礼をお許し下さい。私は大正三年五月二十一日千葉県千葉町の郊外で、兇悪無残な強盗の為に惨殺されました角野一 …
読書目安時間:約35分
司法大臣閣下。 少しの御面識もない無名の私から、突然かかる書状を、差上げる無礼をお許し下さい。私は大正三年五月二十一日千葉県千葉町の郊外で、兇悪無残な強盗の為に惨殺されました角野一 …
厳島合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
陶晴賢が主君大内義隆を殺した遠因は、義隆が相良遠江守武任を寵遇したからである。相良は筑前の人間で義隆に仕えたが、才智人に越え、其の信任、大内譜代の老臣陶、杉、内藤等に越えたので、陶 …
読書目安時間:約15分
陶晴賢が主君大内義隆を殺した遠因は、義隆が相良遠江守武任を寵遇したからである。相良は筑前の人間で義隆に仕えたが、才智人に越え、其の信任、大内譜代の老臣陶、杉、内藤等に越えたので、陶 …
入れ札(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
上州岩鼻の代官を斬り殺した国定忠次一家の者は、赤城山へ立て籠って、八州の捕方を避けていたが、其処も防ぎきれなくなると、忠次を初、十四五人の乾児は、辛く一方の血路を、斫り開いて、信州 …
読書目安時間:約19分
上州岩鼻の代官を斬り殺した国定忠次一家の者は、赤城山へ立て籠って、八州の捕方を避けていたが、其処も防ぎきれなくなると、忠次を初、十四五人の乾児は、辛く一方の血路を、斫り開いて、信州 …
入れ札(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
人物 国定忠治 稲荷の九郎助 板割の浅太郎 島村の嘉助 松井田の喜蔵 玉村の弥助 並河の才助 河童の吉蔵 闇雲の牛松 釈迦の十蔵 その他三名 時所 上州より信州へかかる山中。天保初 …
読書目安時間:約18分
人物 国定忠治 稲荷の九郎助 板割の浅太郎 島村の嘉助 松井田の喜蔵 玉村の弥助 並河の才助 河童の吉蔵 闇雲の牛松 釈迦の十蔵 その他三名 時所 上州より信州へかかる山中。天保初 …
海の中にて(新字旧仮名)
読書目安時間:約18分
二人の生活は、八月に入つてから、愈々困憊の極に達して居た。来る日も、来る日も彼等の生活は陰惨な影に閉ざされて居た。 敬吉には、おくみの存在が現在の暗いじめ/\とした世界と、明るい晴 …
読書目安時間:約18分
二人の生活は、八月に入つてから、愈々困憊の極に達して居た。来る日も、来る日も彼等の生活は陰惨な影に閉ざされて居た。 敬吉には、おくみの存在が現在の暗いじめ/\とした世界と、明るい晴 …
易と手相(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
自分が、易や手相のことを書くと笑う人がいるかも知れないが、自分が一生に一度見て貰った手相は、実によく適中した。 それは、時事新報社の記者をしている頃だった、久米が二十七歳前のことだ …
読書目安時間:約5分
自分が、易や手相のことを書くと笑う人がいるかも知れないが、自分が一生に一度見て貰った手相は、実によく適中した。 それは、時事新報社の記者をしている頃だった、久米が二十七歳前のことだ …
M侯爵と写真師(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
……君も知っているでしょう、僕の社の杉浦という若い写真師を。君もきっとどこかで、一度くらいは会ったことがあるはずです。まだ若い、二十をやっと出たか出ないかの江戸っ子です。あの男とM …
読書目安時間:約19分
……君も知っているでしょう、僕の社の杉浦という若い写真師を。君もきっとどこかで、一度くらいは会ったことがあるはずです。まだ若い、二十をやっと出たか出ないかの江戸っ子です。あの男とM …
応仁の乱(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
天下大乱の兆 応仁の大乱は応仁元年より、文明九年まで続いた十一年間の事変である。戦争としては、何等目を驚かすものがあるわけでない。勇壮な場面や、華々しい情景には乏しい。活躍する人物 …
読書目安時間:約16分
天下大乱の兆 応仁の大乱は応仁元年より、文明九年まで続いた十一年間の事変である。戦争としては、何等目を驚かすものがあるわけでない。勇壮な場面や、華々しい情景には乏しい。活躍する人物 …
大阪夏之陣(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
夏之陣起因 今年の四月初旬、僕は大阪に二三日いたが、最近昔の通りに出来たと云う大阪城の天守閣に上って見た。 天守閣は、外部から見ると五層であるが、内部は七重か八重になっている。五階 …
読書目安時間:約16分
夏之陣起因 今年の四月初旬、僕は大阪に二三日いたが、最近昔の通りに出来たと云う大阪城の天守閣に上って見た。 天守閣は、外部から見ると五層であるが、内部は七重か八重になっている。五階 …
大島が出来る話(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
苦学こそしなかったが、他人から学資を補助されて、辛く学校を卒業した譲吉は、学生時代は勿論卒業してからの一年間は、自分の衣類や、身の廻りの物を、気にし得る余裕は少しもなかった。 学生 …
読書目安時間:約20分
苦学こそしなかったが、他人から学資を補助されて、辛く学校を卒業した譲吉は、学生時代は勿論卒業してからの一年間は、自分の衣類や、身の廻りの物を、気にし得る余裕は少しもなかった。 学生 …
屋上の狂人(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
人物 狂人勝島義太郎二十四歳 その弟末次郎十七歳の中学生 その父義助 その母およし 隣の人藤作 下男吉治二十歳 巫女と称する女五十歳位 時 明治三十年代 所 瀬戸内海の讃岐に属する …
読書目安時間:約16分
人物 狂人勝島義太郎二十四歳 その弟末次郎十七歳の中学生 その父義助 その母およし 隣の人藤作 下男吉治二十歳 巫女と称する女五十歳位 時 明治三十年代 所 瀬戸内海の讃岐に属する …
桶狭間合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
天文十八年三月のこと、相遠参三ヶ国の大名であった今川氏を始めとし四方の豪族に対抗して、尾張の国に織田氏あることを知らしめた信秀が年四十二をもって死んだ。信秀死する三年前に古渡城で元 …
読書目安時間:約26分
天文十八年三月のこと、相遠参三ヶ国の大名であった今川氏を始めとし四方の豪族に対抗して、尾張の国に織田氏あることを知らしめた信秀が年四十二をもって死んだ。信秀死する三年前に古渡城で元 …
小田原陣(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
関東の北条 天正十五年七月、九州遠征から帰って来た秀吉にとって、日本国中その勢いの及ばないのは唯関東の北条氏あるだけだ。尤も奥羽地方にも其の経略の手は延びないけれど、北条氏の向背が …
読書目安時間:約20分
関東の北条 天正十五年七月、九州遠征から帰って来た秀吉にとって、日本国中その勢いの及ばないのは唯関東の北条氏あるだけだ。尤も奥羽地方にも其の経略の手は延びないけれど、北条氏の向背が …
恩讐の彼方に(新字新仮名)
読書目安時間:約46分
市九郎は、主人の切り込んで来る太刀を受け損じて、左の頬から顎へかけて、微傷ではあるが、一太刀受けた。自分の罪を——たとえ向うから挑まれたとはいえ、主人の寵妾と非道な恋をしたという、 …
読書目安時間:約46分
市九郎は、主人の切り込んで来る太刀を受け損じて、左の頬から顎へかけて、微傷ではあるが、一太刀受けた。自分の罪を——たとえ向うから挑まれたとはいえ、主人の寵妾と非道な恋をしたという、 …
女強盗(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
隆房大納言が、検非違使(警視庁と裁判所をかねたもの)の別当(長官)であった時の話である。白川のある家に、強盗が入った。その家の家人に、一人の勇壮な若者がいて、身支度をして飛出したが …
読書目安時間:約11分
隆房大納言が、検非違使(警視庁と裁判所をかねたもの)の別当(長官)であった時の話である。白川のある家に、強盗が入った。その家の家人に、一人の勇壮な若者がいて、身支度をして飛出したが …
恩を返す話(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
寛永十四年の夏は、九州一円に近年にない旱炎な日が続いた。その上にまた、夏が終りに近づいた頃、来る日も来る日も、西の空に落つる夕日が真紅の色に燃え立って、人心に不安な期待を、植えつけ …
読書目安時間:約19分
寛永十四年の夏は、九州一円に近年にない旱炎な日が続いた。その上にまた、夏が終りに近づいた頃、来る日も来る日も、西の空に落つる夕日が真紅の色に燃え立って、人心に不安な期待を、植えつけ …
我鬼(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
彼は毎日電車に乗らぬ事はない。 従つて、電車内の出来事に依つて、神経をいら/\させられたり、些細な事から、可なり大きい不快を買つたりする事は毎度の事だつた。殊に、切符の切り方の僅か …
読書目安時間:約11分
彼は毎日電車に乗らぬ事はない。 従つて、電車内の出来事に依つて、神経をいら/\させられたり、些細な事から、可なり大きい不快を買つたりする事は毎度の事だつた。殊に、切符の切り方の僅か …
蠣フライ(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
汽車が、国府津を出た頃、健作は食堂へは入つて行つた。寝るまでの中途半端の時間なので、客は十四五人もあちらの卓や此方の卓に散在してゐた。大抵は、二三人づれでビールや日本酒を飲んでゐた …
読書目安時間:約4分
汽車が、国府津を出た頃、健作は食堂へは入つて行つた。寝るまでの中途半端の時間なので、客は十四五人もあちらの卓や此方の卓に散在してゐた。大抵は、二三人づれでビールや日本酒を飲んでゐた …
学生時代の久米正雄(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
高等学校に入学すると間もなく教室で、自分の机の直ぐ傍に顔のやゝ赤い溌剌たる青年を見附けた、その青年はASAKAと云ふ字を染めぬいた野球のユニホームを着て居たので、少からず我々を駭か …
読書目安時間:約5分
高等学校に入学すると間もなく教室で、自分の机の直ぐ傍に顔のやゝ赤い溌剌たる青年を見附けた、その青年はASAKAと云ふ字を染めぬいた野球のユニホームを着て居たので、少からず我々を駭か …
形(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
摂津半国の主であった松山新介の侍大将中村新兵衛は、五畿内中国に聞こえた大豪の士であった。 そのころ、畿内を分領していた筒井、松永、荒木、和田、別所など大名小名の手の者で、『鎗中村』 …
読書目安時間:約4分
摂津半国の主であった松山新介の侍大将中村新兵衛は、五畿内中国に聞こえた大豪の士であった。 そのころ、畿内を分領していた筒井、松永、荒木、和田、別所など大名小名の手の者で、『鎗中村』 …
神の如く弱し(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
雄吉は、親友の河野が、二年越の恋愛事件以来——それは、失恋事件と云ってもよい程、失恋の方が主になって居た——事々に気が弱くてダラシがなく、未練がじめ/\と何時も続いて居て、男らしい …
読書目安時間:約28分
雄吉は、親友の河野が、二年越の恋愛事件以来——それは、失恋事件と云ってもよい程、失恋の方が主になって居た——事々に気が弱くてダラシがなく、未練がじめ/\と何時も続いて居て、男らしい …
川中島合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
川中島に於ける上杉謙信、武田信玄の一騎討は、誰もよく知って居るところであるが、其合戦の模様については、知る人は甚だ少い。琵琶歌等でも「天文二十三年秋の半ばの頃とかや」と歌ってあるが …
読書目安時間:約24分
川中島に於ける上杉謙信、武田信玄の一騎討は、誰もよく知って居るところであるが、其合戦の模様については、知る人は甚だ少い。琵琶歌等でも「天文二十三年秋の半ばの頃とかや」と歌ってあるが …
義民甚兵衛(新字新仮名)
読書目安時間:約41分
人物 農夫甚兵衛二十九歳甚しき跛者 その弟甚吉二十五歳 同甚三二十二歳 同甚作二十歳 甚兵衛の継母おきん五十歳前後 隣人老婆およし六十歳以上 庄屋茂兵衛 村人勘五郎 村人藤作 一揆 …
読書目安時間:約41分
人物 農夫甚兵衛二十九歳甚しき跛者 その弟甚吉二十五歳 同甚三二十二歳 同甚作二十歳 甚兵衛の継母おきん五十歳前後 隣人老婆およし六十歳以上 庄屋茂兵衛 村人勘五郎 村人藤作 一揆 …
吉良上野の立場(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
内匠頭は、玄関を上ると、すぐ、 「彦右衛と又右衛に、すぐ来いといえ」といって、小書院へはいってしまった。 (そらっ!また、いつもの癇癪だ)と、家来たちは目を見合わせて、二人の江戸家 …
読書目安時間:約24分
内匠頭は、玄関を上ると、すぐ、 「彦右衛と又右衛に、すぐ来いといえ」といって、小書院へはいってしまった。 (そらっ!また、いつもの癇癪だ)と、家来たちは目を見合わせて、二人の江戸家 …
勲章を貰う話(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
春が来た。欧州戦争第二年目の春が来た。すべてのものを破壊し、多くの人類を殺傷している戦争も、春が蘇ってくるのだけは、どうすることもできなかった。 戦争の荒し壊す力よりも、もっと大き …
読書目安時間:約28分
春が来た。欧州戦争第二年目の春が来た。すべてのものを破壊し、多くの人類を殺傷している戦争も、春が蘇ってくるのだけは、どうすることもできなかった。 戦争の荒し壊す力よりも、もっと大き …
競馬の一日に就いて(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
朝から競馬場へ駈けつける。直ぐに穴場へ飛びこむ。馬券を握ってスタンドへ出る。スタートが切られて、ゴールになって、しかし自分の買った馬は不幸惨敗を喫してしまう。それから曳馬でも見てま …
読書目安時間:約10分
朝から競馬場へ駈けつける。直ぐに穴場へ飛びこむ。馬券を握ってスタンドへ出る。スタートが切られて、ゴールになって、しかし自分の買った馬は不幸惨敗を喫してしまう。それから曳馬でも見てま …
袈裟の良人(旧字旧仮名)
読書目安時間:約22分
人物 渡邊左衛門尉渡。 その妻袈裟。 遠藤武者盛遠。 時代 平家物語の時代。 情景 朧月夜の春の宵。月は、まだ圓ではないが、花は既に爛熳と咲きみだれてゐる。東山を、月光の裡にのぞむ …
読書目安時間:約22分
人物 渡邊左衛門尉渡。 その妻袈裟。 遠藤武者盛遠。 時代 平家物語の時代。 情景 朧月夜の春の宵。月は、まだ圓ではないが、花は既に爛熳と咲きみだれてゐる。東山を、月光の裡にのぞむ …
極楽(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
京師室町姉小路下る染物悉皆商近江屋宗兵衛の老母おかんは、文化二年二月二十三日六十六歳を一期として、卒中の気味で突然物故した。穏やかな安らかな往生であった。配偶の先代宗兵衛に死別れて …
読書目安時間:約14分
京師室町姉小路下る染物悉皆商近江屋宗兵衛の老母おかんは、文化二年二月二十三日六十六歳を一期として、卒中の気味で突然物故した。穏やかな安らかな往生であった。配偶の先代宗兵衛に死別れて …
碁の手直り表(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
我々の倶楽部と云うものが、木挽町八丁目にある。築地の待合区域のはずれに在る。向う側は、待合である。三階建のヒョロ/\とした家である。二階三間三階二間である。家賃は三分して、社と自分 …
読書目安時間:約7分
我々の倶楽部と云うものが、木挽町八丁目にある。築地の待合区域のはずれに在る。向う側は、待合である。三階建のヒョロ/\とした家である。二階三間三階二間である。家賃は三分して、社と自分 …
差押へられる話(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
私は、所得税に対して不服であつた。附加税をよせると、年に四百円近くになる。私は官吏や実業家のやうに、国家の直接な恩恵を受けてもゐないのに、四百円は、どんな意味からでも、取られすぎる …
読書目安時間:約5分
私は、所得税に対して不服であつた。附加税をよせると、年に四百円近くになる。私は官吏や実業家のやうに、国家の直接な恩恵を受けてもゐないのに、四百円は、どんな意味からでも、取られすぎる …
真田幸村(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
真田幸村の名前は、色々説あり、兄の信幸は「我弟実名は武田信玄の舎弟典厩と同じ名にて字も同じ」と云っているから信繁と云ったことは、確である。 『真田家古老物語』の著者桃井友直は「按ず …
読書目安時間:約27分
真田幸村の名前は、色々説あり、兄の信幸は「我弟実名は武田信玄の舎弟典厩と同じ名にて字も同じ」と云っているから信繁と云ったことは、確である。 『真田家古老物語』の著者桃井友直は「按ず …
三人兄弟(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
まだ天子様の都が、京都にあった頃で、今から千年も昔のお話です。 都から二十里ばかり北に離れた丹波の国のある村に、三人の兄弟がありました。一番上の兄を一郎次と言いました。真中を二郎次 …
読書目安時間:約22分
まだ天子様の都が、京都にあった頃で、今から千年も昔のお話です。 都から二十里ばかり北に離れた丹波の国のある村に、三人の兄弟がありました。一番上の兄を一郎次と言いました。真中を二郎次 …
志賀直哉氏の作品(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
自分は現代の作家の中で、一番志賀氏を尊敬している。尊敬しているばかりでなく、氏の作品が、一番好きである。自分の信念の通りに言えば、志賀氏は現在の日本の文壇では、最も傑出した作家の一 …
読書目安時間:約10分
自分は現代の作家の中で、一番志賀氏を尊敬している。尊敬しているばかりでなく、氏の作品が、一番好きである。自分の信念の通りに言えば、志賀氏は現在の日本の文壇では、最も傑出した作家の一 …
死者を嗤う(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
二三日降り続いた秋雨が止んで、カラリと晴れ渡った快い朝であった。 江戸川縁に住んでいる啓吉は、いつものように十時頃家を出て、東五軒町の停留場へ急いだ。彼は雨天の日が致命的に嫌であっ …
読書目安時間:約9分
二三日降り続いた秋雨が止んで、カラリと晴れ渡った快い朝であった。 江戸川縁に住んでいる啓吉は、いつものように十時頃家を出て、東五軒町の停留場へ急いだ。彼は雨天の日が致命的に嫌であっ …
四条畷の戦(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
建武中興の崩壊 中島商相が、足利尊氏のために、災禍を獲た。尊氏の如く朝敵となったものは、古来外にも沢山ある。朝敵とならないまでも、徳川家康以下の将軍などは、それに近いものである。殊 …
読書目安時間:約17分
建武中興の崩壊 中島商相が、足利尊氏のために、災禍を獲た。尊氏の如く朝敵となったものは、古来外にも沢山ある。朝敵とならないまでも、徳川家康以下の将軍などは、それに近いものである。殊 …
賤ヶ岳合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
天正十年六月十八日、尾州清洲の植原次郎右衛門が大広間に於て、織田家の宿将相集り、主家の跡目に就いて、大評定を開いた。これが有名な清洲会議である。 この年の六月二日、京都本能寺に在っ …
読書目安時間:約29分
天正十年六月十八日、尾州清洲の植原次郎右衛門が大広間に於て、織田家の宿将相集り、主家の跡目に就いて、大評定を開いた。これが有名な清洲会議である。 この年の六月二日、京都本能寺に在っ …
島原心中(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
自分は、その頃、新聞小説の筋を考えていた。それは、一人の貧乏華族が、ある成金の怨みを買って、いろいろな手段で、物質的に圧迫される。華族は、その圧迫を切り抜けようとして踠く。が、踠い …
読書目安時間:約29分
自分は、その頃、新聞小説の筋を考えていた。それは、一人の貧乏華族が、ある成金の怨みを買って、いろいろな手段で、物質的に圧迫される。華族は、その圧迫を切り抜けようとして踠く。が、踠い …
島原の乱(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
切支丹宗徒蜂起之事 肥後の国宇土の半島は、その南方天草の諸島と共に、内海八代湾を形造って居る。この宇土半島の西端と天草上島の北端との間に、大矢野島、千束島などの島が有って、不知火有 …
読書目安時間:約30分
切支丹宗徒蜂起之事 肥後の国宇土の半島は、その南方天草の諸島と共に、内海八代湾を形造って居る。この宇土半島の西端と天草上島の北端との間に、大矢野島、千束島などの島が有って、不知火有 …
祝盃(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
久野の家を出た三人は、三丁目から切通しの方へ、ブラ/\歩いていた。五六年前、彼等が、一高にいたときは、この通を、もっと活溌な歩調でいくたび散歩したか分らなかった。 その時は、啓吉も …
読書目安時間:約6分
久野の家を出た三人は、三丁目から切通しの方へ、ブラ/\歩いていた。五六年前、彼等が、一高にいたときは、この通を、もっと活溌な歩調でいくたび散歩したか分らなかった。 その時は、啓吉も …
出世(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
譲吉は、上野の山下で電車を捨てた。 二月の終りで、不忍の池の面を撫でてくる風は、まだ冷たかったが、薄暖い早春の日の光を浴びている楓や桜の大樹の梢は、もうほんのりと赤みがかっているよ …
読書目安時間:約18分
譲吉は、上野の山下で電車を捨てた。 二月の終りで、不忍の池の面を撫でてくる風は、まだ冷たかったが、薄暖い早春の日の光を浴びている楓や桜の大樹の梢は、もうほんのりと赤みがかっているよ …
俊寛(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
治承二年九月二十三日のことである。 もし、それが都であったならば、秋が更けて、変りやすい晩秋の空に、北山時雨が、折々襲ってくる時であるが、薩摩潟の沖遥かな鬼界ヶ島では、まだ秋の初め …
読書目安時間:約35分
治承二年九月二十三日のことである。 もし、それが都であったならば、秋が更けて、変りやすい晩秋の空に、北山時雨が、折々襲ってくる時であるが、薩摩潟の沖遥かな鬼界ヶ島では、まだ秋の初め …
「小学生全集」について(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
新聞の広告でも御承知のことと、思ふが、今度自分は芥川の援助をも乞うて、「小学生全集」なるものを編輯することになつた。 曾て、自分は「小学童話読本」八巻を編輯した。清新にして健全なる …
読書目安時間:約3分
新聞の広告でも御承知のことと、思ふが、今度自分は芥川の援助をも乞うて、「小学生全集」なるものを編輯することになつた。 曾て、自分は「小学童話読本」八巻を編輯した。清新にして健全なる …
小学生全集に就て(再び)(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
小学生全集について、先月も書いたが、今月も少しかきたいと思ふ。 自分は、とにかく此全集には、全力をつくして当るつもりである。自分の担当して居る各巻については、一字一句もゆるがせにし …
読書目安時間:約3分
小学生全集について、先月も書いたが、今月も少しかきたいと思ふ。 自分は、とにかく此全集には、全力をつくして当るつもりである。自分の担当して居る各巻については、一字一句もゆるがせにし …
将棋(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
将棋はとにかく愉快である。盤面の上で、この人生とは違つた別な生活と事業がやれるからである。一手一手が新しい創造である。冒険をやつて見ようか、堅実にやつて見ようかと、いろ/\自分の思 …
読書目安時間:約6分
将棋はとにかく愉快である。盤面の上で、この人生とは違つた別な生活と事業がやれるからである。一手一手が新しい創造である。冒険をやつて見ようか、堅実にやつて見ようかと、いろ/\自分の思 …
小説家たらんとする青年に与う(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
僕は先ず、「二十五歳未満の者、小説を書くべからず」という規則を拵えたい。全く、十七、十八乃至二十歳で、小説を書いたって、しようがないと思う。 とにかく、小説を書くには、文章だとか、 …
読書目安時間:約6分
僕は先ず、「二十五歳未満の者、小説を書くべからず」という規則を拵えたい。全く、十七、十八乃至二十歳で、小説を書いたって、しようがないと思う。 とにかく、小説を書くには、文章だとか、 …
勝負事(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
勝負事ということが、話題になった時に、私の友達の一人が、次のような話をしました。 「私は子供の時から、勝負事というと、どんな些細なことでも、厳しく戒められて来ました。幼年時代には、 …
読書目安時間:約8分
勝負事ということが、話題になった時に、私の友達の一人が、次のような話をしました。 「私は子供の時から、勝負事というと、どんな些細なことでも、厳しく戒められて来ました。幼年時代には、 …
真珠夫人(新字新仮名)
読書目安時間:約9時間40分
汽車が大船を離れた頃から、信一郎の心は、段々烈しくなって行く焦燥しさで、満たされていた。国府津迄の、まだ五つも六つもある駅毎に、汽車が小刻みに、停車せねばならぬことが、彼の心持を可 …
読書目安時間:約9時間40分
汽車が大船を離れた頃から、信一郎の心は、段々烈しくなって行く焦燥しさで、満たされていた。国府津迄の、まだ五つも六つもある駅毎に、汽車が小刻みに、停車せねばならぬことが、彼の心持を可 …
真珠夫人(新字旧仮名)
読書目安時間:約9時間40分
汽車が大船を離れた頃から、信一郎の心は、段々烈しくなつて行く焦燥しさで、満たされてゐた。国府津迄の、まだ五つも六つもある駅毎に、汽車が小刻みに、停車せねばならぬことが、彼の心持を可 …
読書目安時間:約9時間40分
汽車が大船を離れた頃から、信一郎の心は、段々烈しくなつて行く焦燥しさで、満たされてゐた。国府津迄の、まだ五つも六つもある駅毎に、汽車が小刻みに、停車せねばならぬことが、彼の心持を可 …
世評(一幕二場):A morality(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
——よしと云ひあしと云はれつ難波がた うきふししげき世を渡るかな—— 凡て知れず。 路のほとりに緑の草の生えた広場があり、その広場に一群の隊商が休息している。遠景にアラビア風の都会 …
読書目安時間:約9分
——よしと云ひあしと云はれつ難波がた うきふししげき世を渡るかな—— 凡て知れず。 路のほとりに緑の草の生えた広場があり、その広場に一群の隊商が休息している。遠景にアラビア風の都会 …
ゼラール中尉(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
リエージュの町の人で、ゼラール中尉を知らぬ者はあるまい。中尉は、リエージュの周囲にいくつも並んでいる堡塁の一つである、フレロン要塞の砲兵士官である。スタイルの素晴らしく水際立った、 …
読書目安時間:約16分
リエージュの町の人で、ゼラール中尉を知らぬ者はあるまい。中尉は、リエージュの周囲にいくつも並んでいる堡塁の一つである、フレロン要塞の砲兵士官である。スタイルの素晴らしく水際立った、 …
船医の立場(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
晩春の伊豆半島は、所々に遅桜が咲き残り、山懐の段々畑に、菜の花が黄色く、夏の近づいたのを示して、日に日に潮が青味を帯びてくる相模灘が縹渺と霞んで、白雲に紛れぬ濃い煙を吐く大島が、水 …
読書目安時間:約22分
晩春の伊豆半島は、所々に遅桜が咲き残り、山懐の段々畑に、菜の花が黄色く、夏の近づいたのを示して、日に日に潮が青味を帯びてくる相模灘が縹渺と霞んで、白雲に紛れぬ濃い煙を吐く大島が、水 …
大衆維新史読本:07 池田屋襲撃(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
新撰組結成 新撰組の母胎とも云ふべき、幕府が新に徴募した浪士団が家茂将軍警護の名目で、江戸を出発したのは、文久三年の二月八日であつた。 総勢凡そ二百四十名、二十三日に京都郊外壬生に …
読書目安時間:約16分
新撰組結成 新撰組の母胎とも云ふべき、幕府が新に徴募した浪士団が家茂将軍警護の名目で、江戸を出発したのは、文久三年の二月八日であつた。 総勢凡そ二百四十名、二十三日に京都郊外壬生に …
「大導寺信輔の半生」跋(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
芥川が死んでから、はやくも二年半近くになる。彼の死因は、彼の肉體及び精神を襲つた神經衰弱に半以上を歸せしめることが出來るだらうが、その殘つた半近きものは、彼が人生及び藝術に對して、 …
読書目安時間:約1分
芥川が死んでから、はやくも二年半近くになる。彼の死因は、彼の肉體及び精神を襲つた神經衰弱に半以上を歸せしめることが出來るだらうが、その殘つた半近きものは、彼が人生及び藝術に對して、 …
第二の接吻(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間7分
コツコツとかすかなノック。 「お入り!」というと、美智子の眉の長いかわいい顔がのぞき込む。 「村川さん、かくれんぼしない?」 「かくれんぼですか、また!」 村川は、少したじたじとな …
読書目安時間:約4時間7分
コツコツとかすかなノック。 「お入り!」というと、美智子の眉の長いかわいい顔がのぞき込む。 「村川さん、かくれんぼしない?」 「かくれんぼですか、また!」 村川は、少したじたじとな …
大力物語(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
昔、朝廷では毎年七月に相撲の節会が催された。日本全国から、代表的な力士を召された。昔の角力は、打つ蹴る投げるといったように、ほとんど格闘に近い乱暴なものであった。武内宿彌と当麻のく …
読書目安時間:約14分
昔、朝廷では毎年七月に相撲の節会が催された。日本全国から、代表的な力士を召された。昔の角力は、打つ蹴る投げるといったように、ほとんど格闘に近い乱暴なものであった。武内宿彌と当麻のく …
忠直卿行状記(新字新仮名)
読書目安時間:約47分
家康の本陣へ呼び付けられた忠直卿の家老たちは、家康から一たまりもなく叱り飛ばされて散々の首尾であった。 「今日井伊藤堂の勢が苦戦したを、越前の家中の者は昼寝でもして、知らざったか、 …
読書目安時間:約47分
家康の本陣へ呼び付けられた忠直卿の家老たちは、家康から一たまりもなく叱り飛ばされて散々の首尾であった。 「今日井伊藤堂の勢が苦戦したを、越前の家中の者は昼寝でもして、知らざったか、 …
たちあな姫(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
十一月の終か、十二月の初頃でした。私は、その日珍しく社から早く帰って来ました。退社の時刻は、大抵六時——どんなに早くっても五時だったのですが、其日にかぎって、四時頃に社を出たように …
読書目安時間:約22分
十一月の終か、十二月の初頃でした。私は、その日珍しく社から早く帰って来ました。退社の時刻は、大抵六時——どんなに早くっても五時だったのですが、其日にかぎって、四時頃に社を出たように …
田原坂合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
西郷降盛が兵を率いて鹿児島を発したときの軍容は次の通りである。 第一大隊長篠原国幹 第二大隊長村田新八 第三大隊長永山弥市郎 第四大隊長桐野利秋 第五大隊長池上四郎 第六大隊長別府 …
読書目安時間:約21分
西郷降盛が兵を率いて鹿児島を発したときの軍容は次の通りである。 第一大隊長篠原国幹 第二大隊長村田新八 第三大隊長永山弥市郎 第四大隊長桐野利秋 第五大隊長池上四郎 第六大隊長別府 …
父帰る(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
人物 黒田賢一郎二十八歳 その弟新二郎二十三歳 その妹おたね二十歳 彼らの母おたか五十一歳 彼らの父宗太郎 時 明治四十年頃 所 南海道の海岸にある小都会 情景中流階級のつつましや …
読書目安時間:約16分
人物 黒田賢一郎二十八歳 その弟新二郎二十三歳 その妹おたね二十歳 彼らの母おたか五十一歳 彼らの父宗太郎 時 明治四十年頃 所 南海道の海岸にある小都会 情景中流階級のつつましや …
貞操問答(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間44分
七月、もうすっかり夏であるべきはずだのに、この三日ばかり、日の目も見せず、時々降る雨に、肌寒いような涼しさである。 今も、小雨が降っている。だが空はうす白く、間もなく雨も降り止みそ …
読書目安時間:約6時間44分
七月、もうすっかり夏であるべきはずだのに、この三日ばかり、日の目も見せず、時々降る雨に、肌寒いような涼しさである。 今も、小雨が降っている。だが空はうす白く、間もなく雨も降り止みそ …
天の配剤(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
自分が京都に居たとき、いろ/\な物が安かった。食費が月に六円だった。朝が六銭で昼と晩が八銭ずつだった。一日二十二銭の訳なのだが、月極めにすると二十銭に負けて呉れるのだった。素人の家 …
読書目安時間:約6分
自分が京都に居たとき、いろ/\な物が安かった。食費が月に六円だった。朝が六銭で昼と晩が八銭ずつだった。一日二十二銭の訳なのだが、月極めにすると二十銭に負けて呉れるのだった。素人の家 …
藤十郎の恋(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
元禄と云う年号が、何時の間にか十余りを重ねたある年の二月の末である。 都では、春の匂いが凡ての物を包んでいた。ついこの間までは、頂上の処だけは、斑に消え残っていた叡山の雪が、春の柔 …
読書目安時間:約27分
元禄と云う年号が、何時の間にか十余りを重ねたある年の二月の末である。 都では、春の匂いが凡ての物を包んでいた。ついこの間までは、頂上の処だけは、斑に消え残っていた叡山の雪が、春の柔 …
藤十郎の恋(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
人物 坂田藤十郎都万太夫座の座元、三が津総芸頭と賛えられたる名人 霧浪千寿立女形、美貌の若き俳優 中村四郎五郎同じ座の立役 嵐三十郎同上 沢村長十郎同上 袖崎源次同じ座の若女形 霧 …
読書目安時間:約24分
人物 坂田藤十郎都万太夫座の座元、三が津総芸頭と賛えられたる名人 霧浪千寿立女形、美貌の若き俳優 中村四郎五郎同じ座の立役 嵐三十郎同上 沢村長十郎同上 袖崎源次同じ座の若女形 霧 …
鳥羽伏見の戦(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
戦前の形勢 再度の長州征伐に失敗して、徳川幕府の無勢力が、完全に暴露された。この時既に長州は薩摩と連合して討幕の計画を廻らしていた。 温健派の山内容堂は、幕府の命運既に尽きたるを察 …
読書目安時間:約11分
戦前の形勢 再度の長州征伐に失敗して、徳川幕府の無勢力が、完全に暴露された。この時既に長州は薩摩と連合して討幕の計画を廻らしていた。 温健派の山内容堂は、幕府の命運既に尽きたるを察 …
長篠合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
元亀三年十二月二十二日、三方ヶ原の戦に於て、信玄は浜松の徳川家康を大敗させ、殆ど家康を獲んとした。夏 信玄が、三方ヶ原へ兵を出したのは、一家康を攻めんとするのではなく、三河より尾張 …
読書目安時間:約23分
元亀三年十二月二十二日、三方ヶ原の戦に於て、信玄は浜松の徳川家康を大敗させ、殆ど家康を獲んとした。夏 信玄が、三方ヶ原へ兵を出したのは、一家康を攻めんとするのではなく、三河より尾張 …
納豆合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
皆さん、あなた方は、納豆売の声を、聞いたことがありますか。朝寝坊をしないで、早くから眼をさましておられると、朝の六時か七時頃、冬ならば、まだお日様が出ていない薄暗い時分から、 「な …
読書目安時間:約8分
皆さん、あなた方は、納豆売の声を、聞いたことがありますか。朝寝坊をしないで、早くから眼をさましておられると、朝の六時か七時頃、冬ならば、まだお日様が出ていない薄暗い時分から、 「な …
二千六百年史抄(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間53分
今年の初、内閣情報部から発行してゐる「週報」から、最も簡単な日本歴史を書いてくれとの註文を受けた。多くの史学者に頼まず、僕を選んだのは、なるべく大衆に読ませようとの意図からであらう …
読書目安時間:約1時間53分
今年の初、内閣情報部から発行してゐる「週報」から、最も簡単な日本歴史を書いてくれとの註文を受けた。多くの史学者に頼まず、僕を選んだのは、なるべく大衆に読ませようとの意図からであらう …
風雲児、坂本竜馬(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
現存する坂本龍馬の写真を見ると、蓬頭垢衣、如何にも風采あがらぬ浪士と云つた格好である。浜本浩に少し苦味を加へたやうな顔だ。 その近親の談話によると、龍馬が常用してゐた黒羽二重の紋服 …
読書目安時間:約5分
現存する坂本龍馬の写真を見ると、蓬頭垢衣、如何にも風采あがらぬ浪士と云つた格好である。浜本浩に少し苦味を加へたやうな顔だ。 その近親の談話によると、龍馬が常用してゐた黒羽二重の紋服 …
奉行と人相学(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
大岡越前守は、江戸町奉行になってから一、二年経った頃、人相と云うことに興味を持ち始めた。 それは、月番のときは、大抵毎日のように、咎人の顔を見ているために、自然その人間の容貌とその …
読書目安時間:約17分
大岡越前守は、江戸町奉行になってから一、二年経った頃、人相と云うことに興味を持ち始めた。 それは、月番のときは、大抵毎日のように、咎人の顔を見ているために、自然その人間の容貌とその …
碧蹄館の戦(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
鶏林八道蹂躙之事 対馬の宗義智が、いやがる朝鮮の使者を無理に勧説して連れて来たのは天正十八年七月である。折柄秀吉は関東奥羽へ東征中で、聚楽の第に会見したのは十一月七日である。この使 …
読書目安時間:約25分
鶏林八道蹂躙之事 対馬の宗義智が、いやがる朝鮮の使者を無理に勧説して連れて来たのは天正十八年七月である。折柄秀吉は関東奥羽へ東征中で、聚楽の第に会見したのは十一月七日である。この使 …
マスク(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
見かけだけは肥って居るので、他人からは非常に頑健に思われながら、その癖内臓と云う内臓が人並以下に脆弱であることは、自分自身が一番よく知って居た。 ちょっとした坂を上っても、息切れが …
読書目安時間:約9分
見かけだけは肥って居るので、他人からは非常に頑健に思われながら、その癖内臓と云う内臓が人並以下に脆弱であることは、自分自身が一番よく知って居た。 ちょっとした坂を上っても、息切れが …
三浦右衛門の最後(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
駿河の府中から遠からぬ田舎である。天正の末年で酷い盛夏の一日であった。もう十日も前から同じような日ばかりが続いていた。その炎天の下を、ここから四、五町ばかり彼方にある街道を朝から、 …
読書目安時間:約15分
駿河の府中から遠からぬ田舎である。天正の末年で酷い盛夏の一日であった。もう十日も前から同じような日ばかりが続いていた。その炎天の下を、ここから四、五町ばかり彼方にある街道を朝から、 …
身投げ救助業(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
ものの本によると、京都にも昔から自殺者はかなり多かった。 都はいつの時代でも田舎よりも生存競争が烈しい。生活に堪えきれぬ不幸が襲ってくると、思いきって死ぬ者が多かった。洛中洛外に激 …
読書目安時間:約12分
ものの本によると、京都にも昔から自殺者はかなり多かった。 都はいつの時代でも田舎よりも生存競争が烈しい。生活に堪えきれぬ不幸が襲ってくると、思いきって死ぬ者が多かった。洛中洛外に激 …
無名作家の日記(新字新仮名)
読書目安時間:約43分
九月十三日。 とうとう京都へ来た。山野や桑田は、俺が彼らの圧迫に堪らなくなって、京都へ来たのだと思うかも知れない。が、どう思われたって構うものか。俺はなるべく、彼らのことを考えない …
読書目安時間:約43分
九月十三日。 とうとう京都へ来た。山野や桑田は、俺が彼らの圧迫に堪らなくなって、京都へ来たのだと思うかも知れない。が、どう思われたって構うものか。俺はなるべく、彼らのことを考えない …
山崎合戦(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
明智光秀は、信長の将校中、第一のインテリだった。学問もあり、武道も心得ている。戦術も上手だし、築城術にも通じている。そして、武将としての品位と体面とを保つ事を心がけている。 それだ …
読書目安時間:約15分
明智光秀は、信長の将校中、第一のインテリだった。学問もあり、武道も心得ている。戦術も上手だし、築城術にも通じている。そして、武将としての品位と体面とを保つ事を心がけている。 それだ …
よしなし事:〔源内の手紙、原稿料のことなど〕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
父の死に會して家に歸つた折、偶々家に平賀源内の手紙があるのを知つた。手紙は、次ぎの通である。 二白 私數年願置の秩父鐵山も成就仕追々生鐵鋼鐵共澤山出且刀劍にも爲作候處無類の上鋼鐵に …
読書目安時間:約6分
父の死に會して家に歸つた折、偶々家に平賀源内の手紙があるのを知つた。手紙は、次ぎの通である。 二白 私數年願置の秩父鐵山も成就仕追々生鐵鋼鐵共澤山出且刀劍にも爲作候處無類の上鋼鐵に …
世に出る前後(新字旧仮名)
読書目安時間:約17分
「雄辯」から、僕の自叙伝を求められたが、僕には既に「文藝春秋」に半歳に亙つて連載され、其後、平凡社から出た、僕の全集の中に収録されてゐる「半自叙伝」がある。 僕は其の「半自叙伝」の …
読書目安時間:約17分
「雄辯」から、僕の自叙伝を求められたが、僕には既に「文藝春秋」に半歳に亙つて連載され、其後、平凡社から出た、僕の全集の中に収録されてゐる「半自叙伝」がある。 僕は其の「半自叙伝」の …
蘭学事始(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
杉田玄白が、新大橋の中邸を出て、本石町三丁目の長崎屋源右衛門方へ着いたのは、巳刻を少し回ったばかりだった。 が、顔馴染みの番頭に案内されて、通辞、西善三郎の部屋へ通って見ると、昨日 …
読書目安時間:約32分
杉田玄白が、新大橋の中邸を出て、本石町三丁目の長崎屋源右衛門方へ着いたのは、巳刻を少し回ったばかりだった。 が、顔馴染みの番頭に案内されて、通辞、西善三郎の部屋へ通って見ると、昨日 …
乱世(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
戊辰正月、鳥羽伏見の戦で、幕軍が敗れたという知らせが、初めて桑名藩に達したのは、今日限りで松飾りが取れようという、七日の午後であった。 同心の宇多熊太郎という男が、戦場から道を迷っ …
読書目安時間:約32分
戊辰正月、鳥羽伏見の戦で、幕軍が敗れたという知らせが、初めて桑名藩に達したのは、今日限りで松飾りが取れようという、七日の午後であった。 同心の宇多熊太郎という男が、戦場から道を迷っ …
若杉裁判長(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
△△△地方裁判所の、刑事部の裁判長をしている、判事若杉浩三氏は若い時、かなり敬虔なクリスチャンでありました。 が、普通クリスチャンの青年が、社会に出てしまうと、まるきり物忘れをした …
読書目安時間:約21分
△△△地方裁判所の、刑事部の裁判長をしている、判事若杉浩三氏は若い時、かなり敬虔なクリスチャンでありました。 が、普通クリスチャンの青年が、社会に出てしまうと、まるきり物忘れをした …
我が馬券哲学(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
次ぎに載せるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれていないと思うので再録することにした。 一、馬券は尚禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て …
読書目安時間:約5分
次ぎに載せるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれていないと思うので再録することにした。 一、馬券は尚禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て …
私の日常道徳(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
一、私は自分より富んでいる人からは、何でも欣んで貰うことにしてある。何の遠慮もなしに、御馳走にもなる。総じて私は人から物を呉れるとき遠慮はしない。お互に、人に物をやったり快く貰った …
読書目安時間:約3分
一、私は自分より富んでいる人からは、何でも欣んで貰うことにしてある。何の遠慮もなしに、御馳走にもなる。総じて私は人から物を呉れるとき遠慮はしない。お互に、人に物をやったり快く貰った …
翻訳者としての作品一覧
イワンの馬鹿(新字新仮名)
読書目安時間:約57分
むかしある国の田舎にお金持の百姓が住んでいました。百姓には兵隊のシモン、肥満のタラスに馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼでおしのマルタという娘がありました。兵隊のシモンは王様の …
読書目安時間:約57分
むかしある国の田舎にお金持の百姓が住んでいました。百姓には兵隊のシモン、肥満のタラスに馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼでおしのマルタという娘がありました。兵隊のシモンは王様の …
兎と亀(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
兎と亀と、どっちが早いかということは、長い間、動物仲間のうちで問題になっていました。 あるものは、もちろん兎の方が早いさと言います。兎はあんなに長い耳を持っている。あの耳で風を切っ …
読書目安時間:約5分
兎と亀と、どっちが早いかということは、長い間、動物仲間のうちで問題になっていました。 あるものは、もちろん兎の方が早いさと言います。兎はあんなに長い耳を持っている。あの耳で風を切っ …
奇巌城:アルセーヌ・ルパン(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間53分
レイモンドはふと聞き耳をたてた。再び聞ゆる怪しい物音は、寝静った真夜中の深い闇の静けさを破ってどこからともなく聞えてきた。しかしその物音は近いのか遠いのか分らないほどかすかであって …
読書目安時間:約1時間53分
レイモンドはふと聞き耳をたてた。再び聞ゆる怪しい物音は、寝静った真夜中の深い闇の静けさを破ってどこからともなく聞えてきた。しかしその物音は近いのか遠いのか分らないほどかすかであって …
小公女(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間56分
この『小公女』という物語は、『小公子』を書いた米国のバァネット女史が、その『小公子』の姉妹篇として書いたもので、少年少女読物としては、世界有数のものであります。 『小公子』は、貧乏 …
読書目安時間:約3時間56分
この『小公女』という物語は、『小公子』を書いた米国のバァネット女史が、その『小公子』の姉妹篇として書いたもので、少年少女読物としては、世界有数のものであります。 『小公子』は、貧乏 …
白雪姫(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
むかしむかし、冬のさなかのことでした。雪が、鳥の羽のように、ヒラヒラと天からふっていましたときに、ひとりの女王さまが、こくたんのわくのはまった窓のところにすわって、ぬいものをしてお …
読書目安時間:約22分
むかしむかし、冬のさなかのことでした。雪が、鳥の羽のように、ヒラヒラと天からふっていましたときに、ひとりの女王さまが、こくたんのわくのはまった窓のところにすわって、ぬいものをしてお …
フランダースの犬(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間7分
ネルロとパトラッシュ——この二人はさびしい身の上同志でした。 ふたりともこの世に頼るものなく取り残されたひとりぼっち同志ですから、その仲のいいことは言うまでもありません。いや、「仲 …
読書目安時間:約1時間7分
ネルロとパトラッシュ——この二人はさびしい身の上同志でした。 ふたりともこの世に頼るものなく取り残されたひとりぼっち同志ですから、その仲のいいことは言うまでもありません。いや、「仲 …
醜い家鴨の子(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
それは田舎の夏のいいお天気の日の事でした。もう黄金色になった小麦や、まだ青い燕麦や、牧場に積み上げられた乾草堆など、みんなきれいな眺めに見える日でした。こうのとりは長い赤い脚で歩き …
読書目安時間:約21分
それは田舎の夏のいいお天気の日の事でした。もう黄金色になった小麦や、まだ青い燕麦や、牧場に積み上げられた乾草堆など、みんなきれいな眺めに見える日でした。こうのとりは長い赤い脚で歩き …
“菊池寛”について
菊池 寛(きくち かん、菊池 寬、1888年〈明治21年〉12月26日 - 1948年〈昭和23年〉3月6日)は、日本の小説家、劇作家、ジャーナリスト。本名:菊池 寛(きくち ひろし)。実業家としても文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わった。帝国芸術院会員。
生家は高松藩の儒学者の家柄。幼少期より旺盛な読書家であった。京大英文科卒。芥川龍之介などの『新思潮』に参加。
著作に『屋上の狂人』(1916年)、『父帰る』(1917年)などの戯曲のほか、『忠直卿行状記』(1918年)、『藤十郎の恋』(1919年)(のち脚色)などの小説がある。人生観や思想を基盤とした明快な主題を打ち出した、いわゆるテーマ小説が特徴である。『真珠夫人』(1920年)のヒット後は通俗小説で健筆を揮った。
(出典:Wikipedia)
生家は高松藩の儒学者の家柄。幼少期より旺盛な読書家であった。京大英文科卒。芥川龍之介などの『新思潮』に参加。
著作に『屋上の狂人』(1916年)、『父帰る』(1917年)などの戯曲のほか、『忠直卿行状記』(1918年)、『藤十郎の恋』(1919年)(のち脚色)などの小説がある。人生観や思想を基盤とした明快な主題を打ち出した、いわゆるテーマ小説が特徴である。『真珠夫人』(1920年)のヒット後は通俗小説で健筆を揮った。
(出典:Wikipedia)
“菊池寛”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)