“温和”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
おとな84.4%
おとなし5.6%
おんわ3.3%
おだやか1.1%
ものやさ1.1%
やさし1.1%
をんわ1.1%
あたゝか0.6%
おとなしゅ0.6%
すなお0.6%
やはらか0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
表の眼だけを見ていると、そのいつも近眼鏡の下に温和おとなしく瞬いていて子供のように円円まるまるしてそこに狡猾さも毒毒しさもなかった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
この時まで主人のあと温和おとなしいて来たのトムは、にわかに何を認めたか知らず、一声いっせい高く唸って飛鳥ひちょうの如くに駈け出した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
右のほおを打つ者あらば左をもたたかせよというがごとき、柔順じゅうじゅん温和おんわの道を説き、道徳上の理想としてこれが一般社会に説かれたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ボーレアがそのいと温和おだやかなるかたの頬より吹くとき、半球の空あざやかに澄みわたり 七九—八一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
と万人に尊敬うやまい慕わるる人はまた格別の心の行き方、未学を軽んぜず下司をも侮らず、親切に温和ものやさしく先に立って静かに導きたまう後について
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と磨いていで礪ぎ出した純粋きつすゐ江戸ッ子粘り気無し、ぴんで無ければ六と出る、忿怒いかりの裏の温和やさしさも飽まで強き源太が言葉に、身じろぎさへせで聞き居し十兵衞、何も云はず畳に食ひつき、親方
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たとへば日本にほん小島國せうたうごくであつて、氣候きこう温和をんわ山水さんすゐがいして平凡へいぼん別段べつだん高嶽峻嶺かうがくしゆんれい深山幽澤しんざんゆうたくといふものもない。すべてのものが小規模せうきもである。その我邦わがくに雄大ゆうだい化物ばけもののあらうはずはない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
肇さんは、かう云ツて、温和あたゝかい微笑を浮かべ乍ら、楠野君の顏を覗き込んだ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
然し晩になると大概校長さんが来ますからその時だけは幾干いくら気嫌きげんえだが校長さんも感心に如何いくらなんと言われても逆からわないで温和おとなしゅうしているもんだから何時いつか老先生も少しは機嫌が可くなるだ……
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この温和すなおな青年の顔を眺めると、三吉は思うことを言いかねて、何度かそれを切出そうとして、かえって自分の無法な思想かんがえを笑われるような気がした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やうやく安心して、やがて話し/\行く連の二人の後姿は、と見ると其時はおよそ一町程も離れたらう。急に日があたつて、湿しめつた道路も輝き初めた。温和やはらか快暢こゝろよい朝の光は小県ちひさがたの野に満ちあふれて来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)