“おとなし”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
音無20.8%
温順18.8%
温和16.7%
柔和8.3%
大人6.3%
柔順6.3%
温柔4.2%
温良4.2%
優容2.1%
從順2.1%
(他:5)10.2%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
無邊のあなたから吹いて來る音無おとなしの風は歳月の樹々を震はせて、黄ばみわなゝく月日をば順々に落してゆく。
落葉 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
音に聞えた音無おとなし名残なごりを見んとて、沢井の道場を尋ねてみたが、竹刀しないの音はなくして、わらを打つ男のつちの音があった。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
惣「うん成程うかえ、能く墓参はかめえりをする、中々温順おとなしやかな実銘じつめいな男だと云って、村でも評判がい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
到底どうせもらう事なら親類なにがしの次女おなにどのは内端うちば温順おとなしく器量も十人なみで私には至極に入ッたが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それでどうしたとお思いになって? あの温和おとなしそうな風来坊が一体どんな男だったとお思いになって?
肇さんはかう云ツて、温和おとなしい微笑を浮かべ乍ら、楠野君の顔を覗き込んだ。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのお話しというのは、ほんとうに有そうな事ではないんでしたが、奥さまの柔和おとなしくッて、時として大層あわれっぽいお声を聞くばかりでも、嬉しいのでした。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
田中屋たなかや柔和おとなしぶりにごまかされて、一つは學問がくもん出來できおるをおそれ、横町組よこてうくみ太郎吉たらうきち、三五らうなど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで代助は、あの大人しさは、羞耻はにかむ性質の大人おとなしさだから、ミスの教育とは独立に、日本の男女なんにょの社交的関係から来たものだろうと説明した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いいえ、大人おとなしい、沢山たんと口もきかない人、そして病人なの。」
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これに一言句ひともんくあるべき処を、姉さんは柔順おとなしいから、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それも手をかけて、おさえたり、据えようとしますと、そのはずみに、油をこぼしたり、台ごとひっくりかえしたりします。さわらないで、じっ柔順おとなしくしてさえいれば、元の通りに据直すわりなおって、が明けます。一度なんざ行燈が天井へ附着くッつきました。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何処どこ流行はやりかと思へば、貴嬢、皆な新橋辺しんばしあたりのぢやありませんか——婦人をんな矢張やつぱり日本風の温柔おとなしいのがいなんて申してネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今まで友達と思っていた鼻が、生前の温柔おとなしさにも似ず余りに無法な方言をするのに驚かされて、巻き添いを喰いはしまいかという極度の恐怖から、かように正気を失ったものと察せられました。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「でも、温良おとなしいわ。あたしこの犬が大好だいすきよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一六六五年再版ド・ロシュフォーの『西印度諸島博物世態誌イストア・ナチュラル・エ・モラル・デ・イール・アンチュ』一四二頁に、土人の家に蛇多く棲むも鼠を除くの効著しき故殺さずと見え、『大英百科全書』四に両半球に多種あるボア族の大蛇いずれも温良おとなしく、有名なボア・コンストリクトルなど、人と同棲して鼠害を除くとある。
而已のみならず、乙姫様が囲われたか、玄人くろうとでなし、堅気かたぎでなし、粋で自堕落じだらくの風のない、品がいいのに、なまめかしく、澄ましたようで優容おとなしやか、おきゃんに見えて懐かしい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そしてそれ以後は私の前では打つて變つて愼しやかに從順おとなしくなつてゐた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
馬鹿野郎め、と親方に大喝されて其儘にぐづりと坐り沈静おとなしく居るかと思へば、散かりし還原海苔もどしのりの上に額おしつけ既鼾声いびきなり。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
『アノ人は面白い人でして、得意な論題でも見つかると、屹度先づ給仕を酒買にやるんです。冷酒をあふりながら論文を書くなんか、アノ温厚おとなしい人格に比して怎やら奇蹟の感があるですな。』と、田川と呼ばれた男がかたり出した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
民弥、猿若、もう駄目だ! おとなしく従いて来るがいい。アッハッハハ飛んでもない奴等だ、そんな小供や小娘に、裏掻かれるような俺達なら、とうの昔に縛られている……さあさあ帰れ従いて来い。……民弥にはおりよく買手が付いた。売るからそのつもりでいるがいい、……ところでチビの猿若だが、呆れた真似をしおったなあ。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気障きざ厭味いやみもない、言語ことばから挙動ものごしから、穏和おとなしいづくめ、丁寧づくめ、謙遜づくめ。
甚麽どんな人だい。」とくと、「一二度逢つたが、至極穏和おとなしい丁寧な人だ。」と言ふ。
その一言いちごんに対しても少しは良心のねむりを覚せ! 真人間の風早庫之助と蒲田鉄弥が中に入るからは決して迷惑を掛けるやうな事は為んから、今日はおとなしく帰れ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わたくし還りません! 貴方がさう酷く有仰おつしやれば、以上還りません。いつまでも居られるからだではないのでございますから、おとなしく還るやうにして還して下さいまし」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)