“おと”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:オト
語句割合
45.4%
12.3%
7.7%
5.9%
5.1%
4.8%
2.6%
1.9%
1.5%
遺失1.1%
1.0%
音響0.8%
0.7%
0.7%
0.7%
0.6%
0.6%
0.5%
0.4%
於菟0.3%
0.3%
0.3%
御父0.3%
0.3%
0.3%
女弟0.2%
0.2%
足音0.2%
阿父0.2%
鯨音0.2%
0.1%
0.1%
烏菟0.1%
雑音0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
大人0.1%
失墜0.1%
0.1%
射落0.1%
御取0.1%
御問0.1%
御執0.1%
0.1%
0.1%
柔順0.1%
0.1%
温順0.1%
0.1%
0.1%
烏檡0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
落失0.1%
落札0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
轟音0.1%
0.1%
阿爺0.1%
陥落0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
そして、あたりはしずかであって、ただ、とおまちかどがる荷車にぐるまのわだちのおとが、ゆめのようにながれてこえてくるばかりであります。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鳥部野とりべの一片のけむりとなって御法みのりの風に舞い扇、極楽に歌舞の女菩薩にょぼさつ一員いちにん増したる事疑いなしと様子知りたる和尚様おしょうさま随喜の涙をおとされし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みちみち孔子と昨夜の老人とをならべて考えてみた。孔子の明察があの老人におとる訳はない。孔子のよくがあの老人よりも多い訳はない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
先んぜられたり、心外、と二人も駈入りて手痛く戦う。氏郷本陣の小姓馬廻りまで、ただ瞬く間におとせ、と手柄を競って揉立もみたつる。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
師の房は、彼を憎んだことも、おとし入れたこともないのに、幼少から今日まで弁海が範宴を憎悪することはまるで仇敵のようである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十万年に一度あらわるる怖ろしい化生けしょうの者じゃ。この天竺の仏法をほろぼして、大千だいせん世界を魔界の暗闇におとそうとくわだつる悪魔の精じゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おとすその評判の塩梅あんばいたる上戸じょうごの酒を称し下戸の牡丹餅ぼたもちをもてはやすに異ならず淡味家はアライを可とし濃味家は口取を佳とす共に真味を
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わたくし元來ぐわんらい膝栗毛的ひざくりげてき旅行りよかうであるから、なに面倒めんだうはない、手提革包てさげかばん一個ひとつ船室キヤビンなか投込なげこんだまゝ春枝夫人等はるえふじんら船室キヤビンおとづれた。
でも、奥さん! 肉親の者が、命をおとした殆ど同じ自動車に、まだ一月も経つか経たないかに乗ると云ふことは、縁起だとか何とか云ふ問題以上ですね。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
遺失おとさん積りで向へ持ってきさえすれば事が済むから、此処は此の儘おだやかにしないと、此のうちも迷惑するから
「でも、私は、間違つて罪におとされたんですもの。先生、あなたも、他の人たちも、みんな、今は私を惡者だと思つてゐらつしやるわ。」
世界中の煙突えんとつと云う煙突をこゝに集めて煤煙の限りなくく様に、眼を驚かす雲の大行軍だいこうぐん音響おとを聞かぬが不思議である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かれここにその姉は、いとみにくきに因りて、見かしこみて、返し送りたまひて、ただそのおとはな佐久夜さくや賣毘を留めて、一宿ひとよみとあたはしつ。
「いいかね、静かにしているんだ。若し騒立てて家へ逃帰ったりすれば、貴女のお母さんは生命をおとすことになるんだよ。解ったかね」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
鶴千代さまというおと君さえおわすのです、もしも御家を横領するとすれば、亀千代さま鶴千代さま、岩沼、寺池の御兄ぎみ方まで、お命をおちぢめ申さなければなりません、戦国争乱の世なら知らず
あなたの社會は少くとも教育のある人間の間にあつたのですから——しかし僕は、人間をよりよく爲し得る職務は品位をおとしはしないと思ひます。
これ悪漢が持てりし兇器きょうきなるが、渠らは白糸を手籠てごめにせしとき、かれこれ悶着もんちゃくの間に取りおとせしを、忘れて捨て行きたるなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ダイナマイトで粉々に砕かれてはつまらぬし、たかが工夫、相手にしたところが自慢にもならない。ここはおとなしく通り越した。
一座の顏觸れに、つばめ太夫の母親のお高が、三年目の歸り新參で、少しもおとろへぬ美しさと若さと藝達者を見せてくれたことは、どんなに人氣を引立てたかわかりません。
森の祖母が八十八で亡くなったのは明治三十九年七月で、ちょうど於菟おとさんと、宅の長男と、二人の曾孫が高等学校へ入学した時でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
聞くともなくそのおとに耳を仮して、目は窓に向かえば、吹きしぶく雨淋漓りんりとしてガラスにしたたり、しとどぬれたる夕暮れの庭はまだらに現われてまた消えつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
青大将にやまかがし、ないしは黒蛇またはまむし、どんな猛々たけだけしい毒蛇でも、妾が使えばおとなしくなり、自由自在に働きます。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いやだよ。御父おとつちやんべい。おほきい御馬おむまつてれなくつちや、彼方あつちかないよ」とこたへた。こゑちひさいをとここゑであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
武蔵を討つのに、尋常にかかっては敗れる、猛獣はわなおとしてるしかないように、奇策を用いねばまたいたされますぞ。その辺のこと、十分、敵をてお考えなされておるかの
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時まで枯木こぼくのごとく立ッていた吉里は、小万に顔を見合わせて涙をはらはらとおとし、小万が呼びかけた声も耳に入らぬのか、小走りの草履の音をばたばたとさせて
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
すでに、かの女は栗鼠の毛皮をつけた女をおとりにして
こんどは、足音おとがすぐまどしたでしました。かれは、そのおとがやさしいから……とおもって、障子しょうじけてみると、おもいもらぬおばあさんが、つえをついてゆくのでした。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「君とこの阿父おとつつあんは厭に鈴木の肩を持つんだね、帰つたらさう言つておくんな。ちつとはこちとらの事も考へてくれつてね。うちのちやんが言つてたよ。貧乏人はやりきれないつて。」
直ぐに其の音を打消す他の響が伝はる。これは不来方城はんの鐘楼から、幾百年来同じ鯨音おと陸奥みちのくそらに響かせて居る巨鐘の声である。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何か云はるツとんおとろしかつだろばツてん、今更、なんも、そぎやんびくびくするこたあなかぢやなツか。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
なんがおとろしかもんか。そん上、あぎやん怪我までしとる人ぢやなツか。あれぎりなんにも云はでん出て行くなんてこたあ、そらあ、いくらなんてちやをかしかばい。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ほんまにおとろしやの、目の子の玉に針さしたりして、えい目もつぶれろぞ思いますけんど、何せ日本でも名高い医者のいうことじゃというし。
大根の葉 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
健が道歩きよって、おとろしい恐ろしい、角の生えたこって牛が駆けつけてきても健は目々が見えんせに角で突かれる。血が出るぞ。恐ろしいなあ。健がめくらじゃったらどうする。
大根の葉 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ほかにも烏檡おと(『漢書』)、𪂬䖘(揚雄『方言』)など作りあれば、烏菟おとは疑いなく虎の事でその音たまたま猫の梵名にく似たのだ。
北インド咀叉始羅たつさしら国の北界より信度しんど河を渡り東南に行く事二百余里大石門をわたる、昔摩訶薩埵まかさった王子ここにて身を投げて餓えたる烏菟おとを飼えりとある
私はエプロンの紐を締めなおすと、陽気に唄をくゝみながら、海底のような階下の雑音おとへ流れて行った。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
こんなカフェーの雑音おとに巻かれると、日記をつける事さえ、おっくうになって来る。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
古来美女たちのその実際生活が、当時の人々からいかに罪され、さげすまれ、おとしめられたとしても、その事実は、すこしも彼女たちの個性的価値ねうち抹殺まっさつする事は出来なかった。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
木村はこれを「本能的掃除」と名づけた。はとの卵を抱いているとき、卵と白墨の角をおとしたのと取り換えて置くと、やはりその白墨を抱いている。目的は余所よそになって、手段だけが実行せられる。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一つ松いく世か経ぬる吹く風の おとの清きは年深みかも
日本の美 (新字新仮名) / 中井正一(著)
弁償いたしますと大人おとなしく出て、すご/\と大阪へ戻って来ると丁度その日は婚礼料理の註文があって目出度い/\と立ち騒いでいる家へ料理を運び
放浪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
しかも、その意地も通らず、桔梗河原でも武名を失墜おとした憤りは、毒焔の如く、玄蕃に生のある限り胸の底に燃えている。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その歩々ほほおとせし血は苧環をだまきの糸を曳きたるやうに長くつらなりて、畳より縁に、縁より庭に、庭より外に何処いづこまで、彼は重傷いたでを負ひて行くならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それには、ひとっていて、下方かほうにたむろしている敵軍てきぐんのようすを偵察ていさつしていたのであります。すると、これを射落おとそうと、てき騎兵きへい軽気球けいききゅうがけて、発砲はっぽうしていました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
「大丈夫だから、御取おとんなさい」としつかりしたひくい調子で云つた。三千代はあごえりなかうづめる様にあとへ引いて、無言の儘右の手を前へした。紙幣は其うへに落ちた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たがひぞとて御優おやさしき御詞おことばわれもしきりにうれしくてたづぬるひとありとこそあかさゞりしが種々いろ/\との物語ものがたり和女そなた母御はゝご斯々かく/\ひとならずやとおもらぬ御問おとまことかぞなんとして御存ごぞんじとへばわすれてるべきか和女そなたれとは兄弟きやうだいぞかしれは梨本なしもというなるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴方様方も御承知の事でございましょうが、一人の子供を二人の母親が争いました時に御奉行様が御執おとりになった御裁きなどは誰もが皆感心したものでございました。
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
雪頽なだれいのちおとしし人、命をひろひし人、我が見聞みきゝしたるをつぎまきしるして暖国だんこくの人の話柄はなしのたねとす。
藤田もとより無謀の攘夷家にあらず、彼は攘夷の決心を以て、二百五十年来腐敗したる人心を鞭撻べんたつし、一旦国家を逆境におとし、以てその復活を計らんと欲したり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
世に美しい柔順おとなしい
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
男だか女だかおとしてから検査しらべた方が早道だと思っちゃったところへ、血だらけの口をしたS・O・Sの野郎が
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お友達を訪ねて行くなどということは、余りなかったけれども、決して温順おとなしい、陰気な子供ではなかった。したがって、じっと書斎に閉じ籠って、書いてばかりいたのだとは思えない。
昔の思い出 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あだごころ君をたのみて身をおとす媚薬の風に吹かれけるかな
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
アストレイの『西蔵チベット記』に、大喇嘛ラマの糞尿を信徒に世話しやりて多く利を得る喇嘛僧の事を載す、蒙古人その糞の粉を小袋に入れ頸に掛け、その尿いばりを食物におとして用うれば万病を除くと信じ
ほかにも烏檡おと(『漢書』)、𪂬䖘(揚雄『方言』)など作りあれば、烏菟おとは疑いなく虎の事でその音たまたま猫の梵名にく似たのだ。
「大変邪魔にするね。糸公、おとっさんが、そう云ってたぜ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それよりもおとなしく婆さんの手下になつて働くんだね。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
無心の口々長閑のどかに、拍子取りつれて、歌は人の作ながら声は天のおと美しく、よくは百ついて帰そうより他なく、うらみはつき損ねた時罪もむくいも共に忘れて、恋と無常はまだ無き世界の、楽しさうらやましく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日没の迫まる頃まで魂を籠め(——まだ幸ひに落失おとさなかつた!)
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
『でも……折角せっかく、あなた様にも、京都へ上洛のぼるおつもりで落札おとしたお金でございましょうに』
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旧物に対する蔑視べっしと、新らしき物に対する憧憬とが、前述のようにはげしかったその当時は、役者は勿論のこと、三味線を手にしてさえも、科人とがにんのように人々からおとしめられたものであった。
明治十年前後 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
似合ふだらうかと言へば、美登利はくす/\笑ひながら、背の低い人が角袖外套に雪駄ばき、まあ何んなにか可笑しからう、目藥の瓶が歩くやうであらうとおとすに、馬鹿を言つて居らあ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
君の贈遺のもろ/\はアキルリュウスもおとしめじ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ガチャリと電話が切れたと思うと、やがて船腹ふなばら震撼しんかんする波濤なみ轟音おとが急に高まって来た。タッタ二ノットの違いでも波が倍以上大きくなったような気がする。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこを文次が、おとしてやる気でとっさに突き飛ばしたから、安兵衛、一枚繰った縁の戸から都合よく階下したの庭へころげ落ちた。いや、何とも大変な騒ぎ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この阿爺おとさんとも言いたいような、親しげな人の顔を眺めて、三吉は意見を聞いてみようとした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たつの刻よりはじまって、うまの刻まで戦いつづけたが、二十余人の多治見勢に、二千の六波羅勢は敵しかね、要害とてない館一つを、陥落おとしかねて持てあました。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
既に彼を存するの風をおとし俗をみだ所以ゆゑんなるを知り、彼を除くの老をたすけ幼を憐む所以なるを知る。是に於て予が殺害の意志たりしものは、おもむろに殺害の計画と変化し来れり。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)