おと)” の例文
それからお吉は、また二人が餘りおとなしくして許りゐるので、店に行つて見るなり、少し街上おもてを歩いてみるなりしたらどうだと言つて
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ダイナマイトで粉々に砕かれてはつまらぬし、たかが工夫、相手にしたところが自慢にもならない。ここはおとなしく通り越した。
ととさんはナァ、センソウにゆきなさるけん、おとなしゅうして、遊んでいなはり——、ナァえかい?……」
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
私はおとなしく両手を机の上にのせて、灯の光りに眼を走らせていた。私の両の手先きが小さく、慄えている。一本の棒を二人で一生懸命に押しあっている気持ちなり。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
山内謙三は、チョコナンと人形の樣に坐つて、時々死んだ樣に力のないせきをし乍ら、ずるさうな眼を輝かしておとなしく聞いてゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一刻の前をも忘れ、一刻の後をも忘れて、おとなしいお定は疲れてゐるのだ。ただ疲れてゐるのだ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『山内樣よ。』と、靜子はおとなしく答へて心持顏を曇らせる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)