“咳”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
せき60.7%
16.0%
しわぶき10.1%
しわぶ3.1%
がい2.7%
しはぶき2.7%
しはぶ2.2%
ぜき1.1%
せきばらい0.9%
つぶや0.2%
ワラ0.2%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
各位は首を捻り、腕組みをし、貧乏ゆすりをし、にわかにせきをし鼻をかみしめて、それぞれ腹蔵なく妙案を開陳したが、やがて口の重い金太が、
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主人はほんとうになつかしいように、うむうむとうなずきながら胡弓に耳を傾けていたが、時々苦しそうなせきが続いて、胡弓の声の邪魔をした。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それが政治家めいた笑ひ方であらう、彼は稍々やや細い身体を反り身になつて豪放に笑ふのだが、途中でいて、苦しさうに身体を曲げたりした。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
私が釣のお話を伺いに出ましたというと、当時同優は持病の喘息の烈しい時で、挨拶よりもきいる方が先で、気の毒なほど苦しそうであった。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
いかに意気のみはなお青年であっても、身にこたえる寒気や、しわぶきには、彼も自己の人間たることをかえりみずにはおられなかったのであろう。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深沈しんちんたる夜気の中で、とぎれとぎれに蟋蟀こおろぎが鳴いている。これで、もうかれこれ四半刻。どちらもしわぶきひとつしない。
そこを通りかかった時、はからずも寒夜にしわぶく声を耳にした、それは橋の下あたりに泊っている舟人の咳であった、というのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
日陰日なたのそこらの地上に、毛虫が這っていた。——耳をすますと、頼政のしわぶきが、庭木の奥の古いむねから聞えてくるほど、そこと母屋は近かった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——で、すぐに自分の座へ戻りかけるかのような物腰に見えた時、秀吉は、がい一声いっせいして、自分の膝に三法師君が在ることを——
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松本はがい一咳いちがいしつ「我が鍛工かぢこう組合の評議員篠田長二君の身上について、一個の動議を提出するんですから、先づ同君にむかつて暫時退席を要求致します」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
平次の説明はあまりにも恐ろしいものでした。六七人の暗がりに立つた人數は、しはぶき一つする者もなく、息を殺して聽き入ります。
老爺ぢいしはぶきひとわざとして、雪枝ゆきえ背中せなかとん突出つきだす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少しく離れゐたりしベアトリーチェは、ゑみを含み、さながらふみに殘るかのジネーヴラの最初のとがを見てしはぶきし女の如く見えき 一三—一五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
もう日暮時で、人里たえた山腹の道を寒さに慄へながら急いでゐると不意に道上で人のしはぶく聲を聞いた。
薫の従者はもう起き出して、主人に帰りを促すらしい作りぜきの音を立て、幾つの馬のいななきの声の聞こえるのを、薫は人の話に聞いている旅宿の朝に思い比べて興を覚えていた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
新泉はそ知らぬ顔をしていたが、悠二郎はてれくさくなってくびでたりそらぜきをしたりした。
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
スポンと栓を抜く、くだんせきばらいを一つすると、これと同時に、鼻がとがり、眉が引釣ひッつり、額のしわくびれるかとへこむや、まなこが光る。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(えへん)とせきばらいを太くして、おおきな手で、灰吹を持上げたのが見えて、離れて煙管きせるが映る。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
妻は頷くと眼を大きく開いたまま部屋の中を見廻した。一羽のからすが、彼と母とのすすく声に交えて花園の上でき始めた。すると、彼の妻は、親しげな愛撫の微笑を洩らしながらつぶやいた。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「衆人熙々トシテ大牢ヲ享クルガ如ク、春、臺ニ登ルガ如シ。我獨リ怕兮トシテ、嬰兒ノ未ダワラハザルガ如ク、ツカレテ歸スル所ナキガ如シ。俗人昭々トシテ我獨リクラキガ如ク、俗人察々トシテ我獨リ悶々タリ。……」學務部長に隨喜の涙を流す吉田の姿が、急に、皮肉でも反語でもなく、誠に此の上無く羨ましいものに思はれて來た。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)