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咳
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しわぶき
ふりがな文庫
“
咳
(
しわぶき
)” の例文
幽
(
かすか
)
な
咳
(
しわぶき
)
してお孝が出た。
輪曲
(
わが
)
ねて突込んだ
婀娜
(
あだ
)
な伊達巻の端ばかり、袖を
辷
(
すべ
)
って着流しの腰も見えないほどしなやかなものである。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
土間一杯の
観客
(
けんぶつ
)
も、恐らく左馬之助と同じ心持でしょう、怪奇な蛇の芸が進むにつれて、最早
咳
(
しわぶき
)
一つする者も無かったのです。
新奇談クラブ:08 第八夜 蛇使いの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
咳
(
しわぶき
)
一つする者はない。壇上の博士は時計の秒針を覗き込みながら今正に片手を挙げて九時十二分の合図をしようとする、息詰るような瞬間。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
奸黠老獪
(
かんかつろうかい
)
外交の本家本元ではありながらも、さすがに本館奥まったこの応接間近くは
森閑
(
しいん
)
として
咳
(
しわぶき
)
の音一つ聞えず、表を通る廊下の
跫音
(
あしおと
)
や
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それだのに、紙帳の中の、何んと、今は静かなことだろう! 左門の声も栞の声も聞こえず、
咳
(
しわぶき
)
一つしなかった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
それっきり、跫音も
咳
(
しわぶき
)
もパッタリ歇んでしまったので、思返して部屋へ戻って、毛布の中へ潜込んでしまった。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
「えへん」次の間に、
侍側
(
じそく
)
している
御弟子
(
みでし
)
がございます——ということを知らせるつもりで、軽く
咳
(
しわぶき
)
をした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いましがた私の家の前をつづけさまに
咳
(
しわぶき
)
をなさりながらお通りすぎになったあの方が、だんだんその咳と共に遠のいて往かれるのを、何処までも追うようにして
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
……警護の人々は十四、五人いた、乗物はじかに玄関へかつぎ入れられた、すべてはひっそりと然も手ばしこく行われ、声を立てる者もなく
咳
(
しわぶき
)
ひとつ聞えなかった。
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
広場の
周囲
(
まわり
)
のベンチからは人の
咳
(
しわぶき
)
をする音が聞え、煙草の火のような小さな火が見えていた。新吉は人に疑惑を起させないような歩き方をして女の傍へ寄って往った。
女の首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ゾクゾクと
寒気
(
さむけ
)
が立ち、書院の
火燈口
(
かとうぐち
)
の方を見やると、そこに微かな人の
咳
(
しわぶき
)
の声がします。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
四百あまりも詰まったお客は、
咳
(
しわぶき
)
ひとつだにしない。膝乗り出して聴きいっている。
円朝花火
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
此處
(
こゝ
)
の
主
(
あるじ
)
も
多辨
(
はなしずき
)
にや
咳
(
しわぶき
)
勿躰
(
もつたい
)
らしくして
長々
(
なが/\
)
と
物語
(
ものがた
)
り
出
(
いで
)
ぬ、
祖父
(
そふ
)
なりし
人
(
ひと
)
が
將軍家
(
しやうぐんけ
)
の
覺
(
おぼ
)
え
淺
(
あさ
)
からざりしこと、
今
(
いま
)
一
足
(
あし
)
にて
諸侯
(
しよかう
)
の
列
(
れつ
)
にも
加
(
くわ
)
へ
給
(
たま
)
ふべかりしを
不幸
(
ふかう
)
短命
(
たんめい
)
にして
病沒
(
びやうぼつ
)
せしとか
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それにひきかえ、マカオ博士はなにをしているのか、
咳
(
しわぶき
)
の声さえ聞えてこない。
宇宙女囚第一号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
急に向うの
築土
(
ついじ
)
の陰で、怪しい
咳
(
しわぶき
)
の声がするや否や、きらきらと
白刃
(
しらは
)
を月に輝かせて、盗人と覚しい覆面の男が、左右から凡そ六七人、若殿様の車を目がけて、
猛々
(
たけだけ
)
しく襲いかかりました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
生徒はまるで死んだように静かになって、
咳
(
しわぶき
)
一つせずに息を呑んで居る。
小さな王国
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
喜右衛門はだんだんに待ちくたびれて、それとなく催促するように、わざとらしい
咳
(
しわぶき
)
を一つすると、それを合図のように縁側に小さい足音がひびいて、明けたてのきしむ障子をあけて来る音があった。
半七捕物帳:41 一つ目小僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ト、いひつつ
咳
(
しわぶき
)
一咳
(
ひとつ
)
して、
喘
(
ほ
)
と
吻
(
つ
)
く息も苦しげなり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
そう言えば、全校の二階、
下階
(
した
)
、どの教場からも、声一つ、
咳
(
しわぶき
)
半分響いて来ぬ、一日中、またこの
正午
(
ひる
)
になる一時間ほど、
寂寞
(
ひっそり
)
とするのは無い。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
深沈
(
しんちん
)
たる夜気の中で、とぎれとぎれに
蟋蟀
(
こおろぎ
)
が鳴いている。これで、もうかれこれ四半刻。どちらも
咳
(
しわぶき
)
ひとつしない。
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
場内シーンと静まり返り
咳
(
しわぶき
)
一つするものはない。武者窓から射し込む陽の光。それさえ妙に澄み返っている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この
真摯
(
しんし
)
にして厳粛なる二人の老博士の研究の前には、何かは知らず
咳
(
しわぶき
)
一つ遠慮しなければならぬような、学問の荘厳さを感ぜずにはいられなかったのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それは
咳
(
しわぶき
)
とも何んともつかない物の音であったが、どうも人の気配であった。苦学しながら神田の私立大学へ通って法律をやっている彼は、体に
悪寒
(
おかん
)
の走るのを感じた。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
宗匠頭巾
(
そうしょうずきん
)
の老人とか、医者とか、僧侶とか、町人の旦那衆と云ったような者ばかりが、ひっそりと、墨の
香
(
か
)
の中に集まって、
各〻
(
めいめい
)
、筆と短冊を持ち、
咳
(
しわぶき
)
もせずに俳句を作っているのだった。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
𤢖
(
わろ
)
の正体も
漸々
(
だんだん
)
に判りかかって来た。忠一は
咳
(
しわぶき
)
して又語り続けた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「卓子の向う前でも、
砂埃
(
すなッぽこり
)
に
掠
(
かす
)
れるようで、話がよく分らん、
喋舌
(
しゃべ
)
るのに骨が折れる。ええん。」と
咳
(
しわぶき
)
をする下から、
煙草
(
たばこ
)
を
填
(
つ
)
めて、吸口をト頬へ当てて
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
歩き方がいかにもしとやかで、誰も彼も物をいおうとはせず、
咳
(
しわぶき
)
一つ立てようともしない。しとやかに進んで来るのである。いやいや異様なのはこればかりではなかった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
光長は
咳
(
しわぶき
)
もしないようにして見ていると、少年はすぐ立ちどまって、後の方を見るようにした。ついすると他の大人の盗人があって、
彼
(
あ
)
の小供に用心を見せに来ているかも判らないと思った。
庭の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
皎々
(
こうこう
)
の月も更け、夜気はきわだって
冷々
(
ひえびえ
)
としてきた。いかに意気のみはなお青年であっても、身にこたえる寒気や、
咳
(
しわぶき
)
には、彼も自己の人間たることをかえりみずにはおられなかったのであろう。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
話の切目で、
咳
(
しわぶき
)
の音も途絶えた時で、ひょいと見ると誰の目にも、上にぼんやりと映る、その影が口を利くかと思われる。従って、声もがッと太く渦巻く。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
如来衛門と乾児の者はじっと地面に
蹲
(
うずく
)
まり
咳
(
しわぶき
)
一つしなかった。こうして時が経って行く。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お滝はもう睡ったのか
咳
(
しわぶき
)
の声も聞えなくなった。
狐の手帳
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
隔
(
へだて
)
の襖は裏表、両方の肩で
圧
(
お
)
されて、すらすらと三寸ばかり、暗き柳と、曇れる花、
淋
(
さみ
)
しく顔を見合せた、トタンに
跫音
(
あしおと
)
、続いて跫音、夫人は
衝
(
つ
)
と
退
(
の
)
いて小さな
咳
(
しわぶき
)
。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一座の者も押し黙って
咳
(
しわぶき
)
一つ為る者も無い。——軈て、忠清は斯う云って訊いた。——
赤格子九郎右衛門
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
満堂
斉
(
ひと
)
しく声を
呑
(
の
)
み、高き
咳
(
しわぶき
)
をも漏らさずして、
寂然
(
せきぜん
)
たりしその瞬間、
先刻
(
さき
)
よりちとの身動きだもせで、死灰のごとく、見えたる高峰、軽く見を起こして
椅子
(
いす
)
を離れ
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この時、地を踏む
木履
(
ぼくり
)
の音と、
咳
(
しわぶき
)
の音とを立てながら、一人の老僧が近寄って来た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
咳
(
しわぶき
)
を優しくして、清葉が出窓際の柳の葉の下を、格子へ抜けようとする、とあたかもその時。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
咳
(
しわぶき
)
も立てず物も云わぬ! 訓練されたる薩摩武士、武者押しとしてはまことに堂々、しかも殺気は
鬱々
(
うつうつ
)
と立ち、意気は盛ん、油断はなく、敵の城下を押し通るのに、臆した様子は少しもない。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、横笛が
咳
(
しわぶき
)
する。この時、豆府屋の唐人笠が間近くその鼻を
撞
(
つ
)
かんとしたからである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
声も立てず
咳
(
しわぶき
)
もせず固くなってかたまっている。これが陸上の働きならば
旨
(
むね
)
を奉じて出る者もあろう。ところが相手は空飛ぶ鳥だ。飛行の術でも心得ていない限りどうにもならない
料物
(
しろもの
)
である。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
咳
(
しわぶき
)
さえ高うはせず、そのニコチンの害を説いて、
一吸
(
ひとすい
)
の巻莨から生ずる多量の沈澱物をもって混濁した、恐るべき液体をアセチリンの
蒼光
(
あおびかり
)
に
翳
(
かざ
)
して、
屹
(
き
)
と試験管を示す時のごときは
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
、疑わなければならないようだ。あれだけの人数がはいり込んだのだ。人声のしないはずがない。それだのに人声がしないばかりか、
咳
(
しわぶき
)
の声さえ聞こえない。……
聾者
(
つんぼ
)
になったのではあるまいかな?
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時声を立てられな。もし
咳
(
しわぶき
)
をだにしたまわば、怪しき幻影は直ちに去るべし。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
咳
(
しわぶき
)
一つ聞こえなかった。
行燈
(
あんどん
)
の
燈
(
ひ
)
は光の輪を、天井へボンヤリ投げていた。どうやら風が出たらしい、裏庭で木の揺れる音がした。……いつまで経っても静かであった。人の出て来る気勢もなかった。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その人たちを、ここにあるもののように、あらぬ跫音を考えて、
咳
(
しわぶき
)
を聞く耳には、
人気勢
(
ひとけはい
)
のない二階から、手燭して、するすると壇を下りた二人の姿を、さまで
可恐
(
おそろし
)
いとは思わなかった。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
咳
(
しわぶき
)
一つするものがない。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
村中は火事場の騒ぎ、御本宅は
寂
(
しん
)
として、御経の声やら、
咳
(
しわぶき
)
やら……
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
警官は二つばかり、無意味に続けざまに
咳
(
しわぶき
)
した。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
出家はあらためて、
打頷
(
うちうなず
)
き、かつ
咳
(
しわぶき
)
して
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
捻平この話を、打消すように
咳
(
しわぶき
)
して
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“咳(
咳嗽
)”の解説
咳嗽(がいそう、en: cough)とは、医療分野における症状の一種であり、肺や気道から空気を強制的に排出させるための生体防御運動であり、通常繰り返して起こる気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動である。一般的には咳(せき)という。
(出典:Wikipedia)
咳
漢検準1級
部首:⼝
9画
“咳”を含む語句
咳嗽
咳声
咳払
謦咳
咳枯
空咳
咳嗄
癆咳
咳拂
一咳
咳一咳
打咳
百日咳
癆咳病
御咳
咳入
労咳
咳唾
咳込
小咳
...